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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第91話☆

1 名前:アリサちゃんのツン期は1日に91回あるの!:2008/12/11(木) 13:24:17 ID:tDM/TiR9
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレです。


『ローカル ルール』
1.リリカルあぷろだ等、他所でのネタを持ち込まないようにしましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

『注意情報・臨時』(暫定)
 書き込みが反映されないトラブルが発生しています。
 特に、1行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えることがあるそうです。
 投下時はなるべく1レスごとにリロードし、ちゃんと書き込めているかどうか確認をしましょう。

リンクは>2


2 名前:そしてデレ期も91回なの!:2008/12/11(木) 13:26:14 ID:tDM/TiR9
【前スレ】
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第90話☆
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1228101067/

【クロスものはこちらに】
 リリカルなのはクロスSS倉庫
 ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/
 (ここからクロススレの現行スレッドに飛べます)

【書き手さん向け:マナー】
 読みやすいSSを書くために
 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5301/1126975768/

【参考資料】
 ・Nanoha Wiki
  ttp://nanoha.julynet.jp/
  (用語集・人物・魔法・時系列考察などさまざまな情報有)
 ・R&R
  ttp://asagi-s.sakura.ne.jp/data_strikers.html
  ttp://asagi-s.sakura.ne.jp/date_SSX.html
  (キャラの一人称・他人への呼び方がまとめられてます)

☆魔法少女リリカルなのはエロ小説☆スレの保管庫
 ttp://red.ribbon.to/~lyrical/nanoha/index.html  (旧)
 ttp://wiki.livedoor.jp/raisingheartexcelion/   (wiki)

3 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 14:20:05 ID:tWwiuAYO
また荒らしか
同一人物?

ともあれ、>>1

4 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 14:28:27 ID:oXUVj7gD
>>3
でしょうね。同じIDだから、
NGワードに登録すれば一掃で、
全然効果ないのになぁ・・・。

>>1

5 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 16:41:43 ID:uIlmJ2tt
>>1
また投下できんうちにスレが終わってしもうたぜ……orz

6 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 16:43:35 ID:IdC+/8Ut
>>5に大いに期待せざるを得ない!!

それと>>1

7 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 17:56:57 ID:TuLQTUIU
>>1
スレ立て、全力で乙です。アリサ自重w


>>5
何勘違いしてやがる・・・90スレは終わっても、まだ91スレが終わってないze!
一番槍、楽しみに待ってます

8 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 20:15:47 ID:RN4RncQ1
別の意味でエロパロ板1のハイペースでスレを終わらせているような気がしますね
ついでにタイトル考える方の苦労もありそうだ

9 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 20:26:17 ID:o8/Ouxpg
>>1乙いいタイトルだ

>>4
しかしスレが異常に早く消費されるのは望ましくないから何とかならないかな

10 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 20:42:59 ID:dXWc1lqy
まずは>>1

>>5にwktkしながら前スレのエロスバルでもう一杯いっとくZE

11 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 21:46:06 ID:kO3PrOCW
>>1

>>3-4 >>9
とりあえず全く話題にあげない事が一番の近道かと
報告して規制とかして貰えるなら別だが
それとスレが早く消費される事に関してはスレ番伸びるし特に問題ない

12 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 22:29:46 ID:o8/Ouxpg
>>11
このスレ的にはスレ番が伸びるのは問題ないけど、エロパロ板全体としてはスレが多く立てばそれだけ他のスレが圧迫されちゃうからね

13 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 22:30:58 ID:oa+lO1E6
ミッドチルダ首都航空隊ってやっぱり首都、譲歩してもミッドチルダが活動範囲であって他の世界にいる次元犯罪者捕まえに出張る事はないのかな
シグナムをエージェント的に別世界で活躍させたいよorz

14 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 22:37:12 ID:TuLQTUIU
八神はやて捜査司令から出向依頼→ヴォルケンリッター集合


15 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/11(木) 23:19:46 ID:d5sD7EWB
>>346
GJ!!!
ウェンディはまだ生き残る可能性あったけどとうとう犠牲者が…
エリオ!絶対囚われの姫助けて仇をとってくれ!

16 名前:554:2008/12/12(金) 00:58:29 ID:xAIxOPJX
お久しぶりです。というかお久しぶり過ぎですスイマセンorz

クリニック・F最終推敲中です。 あともう少しお待ち下さい。

17 名前:554:2008/12/12(金) 01:12:06 ID:xAIxOPJX
どうもこんばんは。 91スレの切り込み隊長は私がつとめさせて頂きます。
私事ですが、佳境だってのにスランプになるものだから困りました。 佳境だってのに書きたくても書けないってのは思いの外辛いです。
さて、毎回恒例の注意書きをば。

・カップリングはジェイル(あえてこう表記)×ウーノ
・スカの性格がかなり変化してます。それについては保管庫にある話を参照して下さい。
・なのはキャラはスカとウーノ以外はフェイトくらいしか出ません。よってほぼオリジナルストーリー。
・「小さな診療所〜」の話はほのぼのでしたが、作風が百八十度変わっております。
・イメージBGMはSuaraさんの”キミガタメ”です。 知らなくても楽しめますが、知っているとより楽しめます。
・NGワードは「キミガタメ」です。

>保管庫管理人様へ
この話はタイトルが変わっていますが続き話です。 お手数ですが、through the nightのスペースに続けて保管をお願いいたします。

それでは原案の73-381氏に多大なGJを送りつつ、投下したいと思います。


18 名前:キミガタメ:2008/12/12(金) 01:12:54 ID:xAIxOPJX
 そこはいつもと変わらない診療所での日常だった。
 受付のカウンターにウーノが座り、奥で何やらガソゴソと音を立てているのがこの診療所の主たるジェイルだ。
 それは平和な日所であり、ウーノの望んだユメでもあった。
 妹達が居ないのが時々寂しく感じられるけれど、それでも彼との生活はウーノの心に安らぎを生み出していた。いつまでもここにいたい。この温もりを甘受し続けたい。そう思っている。
 そんなことをぼんやりと考えていたとき、ふと後ろでしていたガサゴソという雑音がぷっつりと途絶えた。
 何事かと彼の方を振り返ると、彼が要注意人物と危惧していたあの金髪の女がジェイルの前に立ち、目に見えぬほどの早業で彼の懐へ襲いかかる。

「動かないで」

 彼女はそう言うと物々しく光り輝く斧をジェイルの首元に宛てがい、振り返ったウーノをも視線で威圧する。

「ジェイル・スカリエッティ、あなたを逮捕します」

 その声が聞こえると同時に彼と、そして金髪の女もそこから忽然と姿を消した。そこには毛髪一本さえも残されていない。
 診療所の中にはウーノただ一人が残され、先程までの喧騒が嘘のように静まりかえっている。
 やがて、そこにとすん、という鈍い音が響き渡った。彼女の、ウーノの膝が崩れるように折れたのだ。

「……ドクター……! ドクターぁぁぁぁぁっっ!!」


19 名前:キミガタメ:2008/12/12(金) 01:13:27 ID:xAIxOPJX
 決して広いとは言えない診療所の中で彼女の絶叫だけが空気を揺らして音となっていた。




キミガタメ




―――っぁ…………。ゆ、夢?」

 顔に感じる微かな水滴の跡。ウーノは嫌な感触で目を覚ました。
 事が済んだのは昨日ではなく今日。何度も何度も彼を求め、終わりにしようと、躰が持たないと言っても聞かなかった。
 何せ彼の肌に触れられるのはこれで最後。明日の朝日が昇る頃には既に引き離された後だろう。そう思うと、体は磁石のように彼の体を求めていた。
 後処理など構わず寝てしまうほど倦怠感に包まれた夜だったが、それでも不快感などは一切感じず、自分を包み込むのは幸せという名の疲労だけだ。
 何度も何度も吐き出された彼からの温かい贈り物を自分のお腹の中に感じながら、ふと自分の隣の温もりが消失していることに気づく。ものすごく、嫌な予感がした。

「ドクターっ……! ドクター……っ!!」

 二人で掛けていた掛け布団を引きはがすとやはりウーノの姿を探し求める彼の姿を確認することは出来ない。
 ベッドから飛び起き、純白のシーツを剥ぎ取って体を包むと一目散に寝室を飛び出しリビングへと駆けていく。乱暴に開けられたドアは閉じられずそのままだ。

「……ドクターっ! ドクターっ!! ドクター……ッ!!」

 ウーノが凄惨な叫び声を上げるたびに部屋の中が散らかっていく。質素ながらも綺麗に並べられていた家具類は突然のことに平常心を失った彼女によって次々と倒されていく。
 ガラスが割れるような音が部屋中に響き渡ると、小さなタンスの上に置かれたランプの破片がリビング全体に足の踏み場もないほどに撒き散っていく。

20 名前:キミガタメ:2008/12/12(金) 01:14:03 ID:xAIxOPJX
 ウーノの奇行はリビングを他人に見せられないようなものへと変えてもまだ収まることを知らず、更にはその奥の治療室にまで及んだ。すぐに、治療室の床にはメスやらハサミやらが散らばっていった。
 彼の名前を叫びながら、いつもを過ごした治療室を、いつも湿気臭い地下室を、いつも賑わっていた待合室を、彼と過ごした日々全てを探しても、そこに彼の姿だけが見あたらない。
 彼女の瞳からどれほどの雫が零れたのか。そんな些末なことは何の意味も解さない。意味があるとするならばそれは彼女の奇行を計る物差しでしかなく、そこにさしたる意味を見いだすことは出来ない。
 涙でくしゃくしゃになった彼女の顔には絶望の二文字が躍る。深い悲しみに足が縺れ、体は床に投げ出され、それでも彼女は行動を止めることはない。それに理由など有るはずもなく、体の動くままに動いているだけだ。
 ふと、ウーノが待合室に一つだけある長細いテーブルを見やると、そこに一枚の紙切れを見つける。

「……っ」

 その途端、ウーノは診療所のドアを乱暴に開け放つと一目散に丘を降りていった。身に纏っているのは簡素なシーツ一枚なのにも関わらずである。
 ドアに吊された来客を知らせる鈴が衝撃の余韻でちりんちりんと悲しげな音を奏でる中、それまで締め切られていた診療所にそのドアから冷たい風が川の水のように流れ込んでくる。
 そのいたずらな風が机に無造作に置かれていた一枚の紙を床へと落とす。ゆっくりと、ゆらゆら揺れるように紙は床へと落ちていき、止まった。
 その紙には「すまない」というただ一言だけが、見慣れた癖のあるあの字体でしっかりと書かれていた。



     □     □     □     □     □     □



 時はお昼を過ぎて少し経った頃。
 フランス人形のような金髪の美しい女生と、少し草臥れた印象を持つ白衣の男が、町一番と有名な旅館の前で何やら話し込んでいるようだった。
 表情から一見して和やかな談笑に見える二人だが、その中に秘めたるものは覚悟という確固たる意志によって二人の間に殺気混じりの緊張感が生み出されている。


21 名前:キミガタメ:2008/12/12(金) 01:15:51 ID:xAIxOPJX
「……言っていることがよく分かりませんが」
「私がナンバーズの頭を弄っていたと言えば、彼女は助からないかと先程から聞いているではないか」

 フェイトは面食らっていた。
 今までの彼の雰囲気は、陰湿という単語が最もよく当てはまるような不気味かつ恐ろしいマッドサイエンティスト、という認識がフェイトの中で出来上がっていたのだが、今日は何かが違った。
 怪しい風貌や人を見下したような目つきなどは相変わらずだが、その醸し出している雰囲気が柔らかいのだ。そして何より、彼の話すその内容。
 あろうことか、彼は自分の身を投げ出してまで助手であるウーノの身の安全を欲してきたのである。
 彼の主張はこうだ。事件に加担させていたナンバーズは自分が精神操作を加えていたために自分に付き従ったのだと。そうすれば、彼の罰と反比例してナンバーズ達の処遇はより緩やかになっていくだろう。
 かつての、プレシア・テスタロッサに付き従っていた頃の、フェイト・テスタロッサと名乗っていた自分自身がそうであったように。

「その可能性は充分にありますけど……」
「だったら何故そこまで迷うのだ。キミは仮にも法の番人だろうに」

 首を傾げながら一向に話の進まないフェイトに苛立ちを募らせるジェイル。
 彼女はジェイルの言うとおり、迷っていた。
 無論、それは可能な手段ではあるし、ナンバーズ達を弁護するネタとしてはこれ以上のものは無い。
 しかし、それを申し出たのは弁護する側のフェイトではなく、むしろ良いように利用されるだけのジェイル・スカリエッティである。フェイトにはそれが分からなかった。

「何故あなたはそこまでして……」
「悪いか?」

 見るからに不機嫌なその顔から放たれたその一言に、プレッシャーのようなものをフェイトは感じた。
 なおもフェイトを睨み付けるその眼孔には確固たる決心があった。

「彼女が大切なんだ。どんなことをしてでも彼女を助けたい。その為にこの身が滅びようとも、私は一向に構わない」


22 名前:キミガタメ:2008/12/12(金) 01:17:01 ID:xAIxOPJX
 彼の科白の後、木々を揺らす風の音以外の音が全て消失する。場には沈黙という静かな空気が二人の間を支配する。
 やがて耐えきれなくなったのか、ジェイルが大きく笑い出した。しかし、いつものような人を小馬鹿にしたような笑いではなく、腹の底から笑っていた。

「可笑しいかい? そう、私は可笑しいんだ。何が私をここまで変えてしまったのだろうねえ……クククッ」

 彼の笑いは言ってみれば、自分自身への嘲笑だ。
 自分の身を捨てて彼女を助けるという選択肢を選んだ以上、彼の自由や人権は一切保証されないだろう。それこそ、永久凍結という可能性も充分にあり得る。
 研究のみに力を注いでいればここまでの厳罰は下らなかっただろう。希有の科学者であるジェイル・スカリエッティに科学発展の側面から何らかの有用性が見いだされて、最低限の生活くらいは保障され、何もすることもなく平和な毎日が送れていたかもしれない。
 だが、茨の道を選んで平穏を捨てたのは彼自身だ。彼は自分という存在も含めた全てを捨てたのだ。
 フェイトはその嘲笑とも撮れる微笑を聞いた後、優しく微笑みながら言う。

「私は、可笑しいとは思いませんよ?」
「ほう、そうかい。理由を聞かせて貰おうじゃないか」
「自分の全てを投げ打ってでも大切にしたい人が居る。それって素晴らしいことだと思います」
「フッ、そうかい」

 今度は嘲笑ではなく、優しい笑みがジェイルの口からこぼれた。
 彼は捨てたのではない。護ったのだ。一方通行ではあるが、残された者は辛いが、それでも護ったのだ。
 それは単なる自己満足なのかも知れない。だが、そこに彼は生きることの意味を見いだしていた。
 私が出来る最後のプレゼント。こんな形になってしまって本当に済まないな。彼は心の中でそう彼女に詫びた。

「それで、私にお節介を焼いているキミはどうなんだい?」
「……もうとっくの昔に終わっちゃいましたよ。先にゴールインされちゃいました」
「まあ、頑張りたまえ。きっと、キミにもそんな人が現れるだろうさ」
「出来れば、貴方みたいな人が良いです」
「私か? 止めておいた方が良いと思うぞ。苦労するのはそちらだ」
「そこまで一途に想ってくれるなら、どこまでもついて行っちゃいそうです」
「引き際は大切だぞ?」
「もちろん、分かってますよ」


23 名前:キミガタメ:2008/12/12(金) 01:17:49 ID:xAIxOPJX
 ふふふっ。ははっ。穏やかな笑い声が丘の麓で詠われていた。
 彼と彼女は犯罪者と執務官。相対する存在のはずなのに、周りからは鳥のさえずりさえ聞こえる。
 フェイトが最初にジェイルに会ったときの不信感は、既に心の中から消え失せていた。
 やはり、彼も人間なのだ。いくら作られた存在と言えども、心は人間そのものであり、生きているのだ。
 それはスバルにも、ギンガにも、エリオにも、ヴォルケンリッターのみんなにも、ナンバーズのみんなにも、そして私にも言えることだ。
 私たちは生きている。どんなに泥臭くても、必死でも、醜くても、私たちは生きているのだ。
 作られた存在であろうと無かろうと、自分たちはみんなと同じように生きているんだ。ただ、生まれ方が少し違っただけで、紛うことなき人間なのだ。
 フェイトは満足そうに深い紅に染まった自らの瞳を静かに閉じると、薄く目を開いてジェイルに問う。

「本当に、良いんですね?」
「ああ、これで良いんだ。彼女が助かるなら、これでいい」

 その問いに彼も満足そうに頷いた。フェイトはバルディッシュを起動して捕縛用のバインド構築に取りかかる。
 全ては解決した。ジェイル・スカリエッティの逮捕という最高の結末を持って全てを終えることが出来た。
 そのはずだった。

――――ーッ!! ドクター……ッ!!」
 
 体に纏うのは薄いシーツが一枚だけ。ほぼ全裸と言っていい彼女の瞳からは大粒の涙が流れて止まることを知らない。
 その唯ならぬ様子にフェイトも目を見開く。
 しかし、ジェイルはそれに微動だにすることもなく、それどころか振り向こうともしない。

「何をしに来た」
「……ぁ、……はぁ、はぁ……ど、ドクター……」

 肩で呼吸する彼女に容赦のない一言が浴びせかけられる。
 先程までフェイトと談笑していた時の和やかな空気は、もはや影も形も失われていた。

「言ったはずだ。君など愛していないと。私は君が有能だからここまで連れてきたと何度言えば分かる」


24 名前:キミガタメ:2008/12/12(金) 01:18:52 ID:xAIxOPJX
 罵詈雑言を放つジェイルの背中を見つめる形でウーノがその場に立ちつくしていた。瞳に溜まった雫はまだ止まらず、茶色の地面にぽつぽつと黒い斑点を落としている。
 一見して酷いことをしているように思うかも知れない。しかし、フェイトはウーノからは見えない彼の苦痛に歪むその表情を見逃してはいなかった。

「ドクター」
「何だね」

 極めて機械的な会話。しかし、その中に何らかの感情がひしめき合っているとフェイトは感じた。

「もう、いいんです」
「……っ」

 ウーノには聞こえないくらいの小さな音であったが、フェイトははっきりと見ていた。彼が喉をごくりと鳴らし、静かに息を呑んでいたことを。

「あなたがそこまで言うなら、私はここに残ります。でも―――

 ウーノは後ろを向いたままのジェイルの正面に躍り出て、彼の胸の中へ飛び込んだ。
 柔らかな弾力を持つ彼女の胸が彼の胸との間に挟まれて形を歪ませる。彼女の腕は頭一つ大きい彼の頭へと瞬時に回されていた。
 それと同時に自らの顔を彼の顔へと導き、唇を合わせる。長いとも短いとも分からないその時間が過ぎると、彼らはゆっくりと唇を離した。

―――嘘は吐かないで欲しいです。最後まで嘘でお別れは、したくありません」

 涙混じりの声は時折掠れ、聞き取りづらい。
 しかし、そんなことは関係なかった。ジェイルはウーノの肩に腕を回し、きつくきつく、抱きしめる。彼が顔を埋めるウーノの肩に一滴の雫が落ちる。
 ウーノも目を瞑り、されるがままにしている。彼らには何の言葉もいらなかった。ただ、存在があればそれで良かったのだ。
 彼らは数分の間、そうして抱き合っていた。

「これから残酷なことを言う。罪人の戯れ言だと思って聞いてくれて構わない」


25 名前:キミガタメ:2008/12/12(金) 01:19:39 ID:xAIxOPJX
 やがて、抱き合ったままながらジェイルはウーノに向き直り、笑顔で目を合わせる。
 その顔は晴れ晴れとしており、彼の中で何かが弾けたのは言うまでもなかった。

「君には生き延びて欲しい」
「はい」
「どんなことがあっても、君には生きていて欲しい」
「はい」
「私のことなど忘れて、幸せになって欲しい」
「…………」

 そこだけは口ごもるウーノにジェイルは優しく微笑んだ。

「そう言っても聞かないだろうと思ったよ。誇らしき我が妻ウーノよ」

 困ったような微笑へと表情を微妙に変化させ、とても人間らしい仕草でふふっ、と笑った。

「無理なら仕方がない。ただ、君には生きていて欲しい。それだけは約束してくれ」
「……っ……わかり、ました……」

 ジェイルの仕草や表情からもう時間はないと分かっているのだろう。いったんは止まった涙がまた溢れ出ていた。
 ウーノはもう一度ジェイルの胸に自らの体を預け、顔を胸にすりつけて泣いた。ジェイルの来ているいつもの白衣が湿って使い物にならなくなってしまっているが、それも今日までのこと。
 ジェイルはそんなウーノの頭を優しく撫でている。髪をくしで梳くように、彼女の長く綺麗な髪がジェイルの指で裂かれていく。
 ウーノは嫌がりもせず、むしろ喜んでいるようだった。大粒の涙を流しながら、むせび泣きながらである。
 やがて、ジェイルはウーノの頭から手を放し、ウーノもそれに合わせて体をジェイルから離す。
 全ては終わったのだ。そして今は、その決断の時。


26 名前:キミガタメ:2008/12/12(金) 01:20:22 ID:xAIxOPJX
「さあ、頼む」

 ウーノが悲しそうな目で見つめる中、ジェイルはフェイトの眼前に両手首を合わせて差し出す。
 もうとっくに覚悟は出来ていた。その決意が思わぬ乱入者の侵入によって少し削がれてしまっただけで、それは何一つとして変わってはいない。
 悔しそうに唇を噛むジェイルと、その後ろで大粒の涙を流しながら肩を落とすウーノ。
 フェイトはただ、そんな二人の様子をじっと見つめ続けていた。


                                                    to be continued.....






27 名前:554:2008/12/12(金) 01:24:58 ID:xAIxOPJX
イメージBGMはSuara:キミガタメ、もしくはSound Horizon:<ハジマリ>のChronicleをどうぞ(ぇ
さて、挿入歌がSuaraさんの「キミガタメ」ってなわけで、少し向こうの作品を意識してます。
薬師のシャマルさんとか盲目のティアナさんとか出そうかと思いましたが、さすがに止めました。 ここで出しちゃうと一気にギャグになってしまいますし。

さて、残り一話ですよ。
正直言って、こんなに長い長編を書いたのは初めてで、書ききれるか不安でしたがどうにか書ききれそうです。
このお話はもう少し続きますので、楽しみにしてくださっている方はもう少しお待ち頂ければと思います。

それでは原案の73-381氏に多大なGJを送りつつ、投下を終わります。


28 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 01:55:41 ID:Dkn2bGmM
前スレ26-111氏
遅くなったりスレ跨いだりしましたがGJ!
氏の小説は本当に本編とつながっていると思っています。
紫電一閃にブースト型フェイク・シルエット。
もう疑う余地はなし!そしてエロがまた…
スバルにティクビ責められて喘ぐエリオがエロく、攻め立てつつどこか優しくするスバルもまたエロし。
このままじゃキャロにも襲われてしまうのか。だがそれでも(ry

29 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 07:39:43 ID:yE1OUSUJ
>>27
GJ!待ってましたぜw

クスハって中原だったのか…

30 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 09:17:58 ID:CBdRi7By
ユズハニャーンが泣いている…

31 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 09:36:33 ID:a4jM0SvP
クスハはキャロですw

32 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 12:36:46 ID:WKNiXGId
GJ!!!
続きが気になります!

33 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 12:57:14 ID:4yieVeIL
うひょう! GJだああ!!

相変わらずウーノ姉さんかわええ、こんな嫁さんいたら堪らんぞほんとwww
しかしドクターは御用になりそうでさあ大変、人情刑事フェイトの選択やいかに? 次回も目が離せんぜよ!

34 名前:73-381:2008/12/12(金) 15:38:52 ID:0TtLn7B2
>>27
とうとうここまで・・・・ああ、ジェイル良い人過ぎだよ。
自分一人で自主するなんて。
GJでした。ジェイルがいなくなったから日常の象徴だった診療所が散らかっていく(壊れていく)。
このへんなんだかグッときました。

35 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 18:33:03 ID:nu2kyABq
前野狗氏GJ!
個人的には全員生き残っての勝利かと思っていただけにショックがでかい…
エリオは間違いなく責任感じてしまうだろうな
ジュニアもきっと…


36 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 21:43:35 ID:Vjv34r6Y
GJ!!です。
うーん、せつないなぁ。
ただ、こんだけせつない感じを出していて、フェイトが確保し、
実刑までの間に、また飄々と脱獄していたら笑うw

そういえば、リリなの世界にも義手や人工臓器などの肉体の欠損を補うものは珍しくないレベルで、
それを戦闘用にするってのが珍しいみたいだが、義手や義足をデバイスにする奴とかはいないのだろうか?
普段は普通の義足だけど、セットアップすると両足の義足が戦闘用へ変化とか。
頑丈に作れば、アームド並の強度で戦闘機人を超えた腕力や脚力になりそう。
低ランク魔導師が努力で超えられないなら、体を改造してしまえばいいや高ランクが更なる力を求めてと狂気の果てにやるとか。

37 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 22:05:21 ID:eFDhomv4
クロノが執務官になって初めての任務で、そんな技術が絡んだ話を考えたことがある。>>36

非エロかつ、とてつもなく救いのない話になったんで、即ゴミ箱行きになったけど。

38 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 22:06:06 ID:ffeubqih
>>36
腕や足だけを戦闘用義肢に変えたって、もげて終わりだ。
接合部が出力に耐えられないと意味がない。そのためには結局義肢以外の部分も強化しなきゃならん。
全身義体化した方が手っ取り早いよ。

39 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 22:07:39 ID:r51vTwQN
>>36
シリアスなプロット考えてた時にそんな感じの敵役考えたことならあるよ
丸腰と油断させていきなりドカンみたいな

ただ後者はともかく前者は本人が望んでも倫理的な問題がありそうだからなあ
少なくとも健常な自分の手足をデバイスに改造するのは管理局が認めなさそう

>>27
GJです
あと1話・・・最後まで見届けます

40 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 22:08:21 ID:r51vTwQN
すまん、ageてしまったorz

41 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 22:26:51 ID:voSfBTOn
四肢代用して強くなる
同じような事考えてる人いて嬉しいな、そう言う話考えるよね

42 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 22:33:30 ID:Vjv34r6Y
>>37>>39
サイボーグは皆の夢ですって事かw
個人的には、弱者のままでは我慢できない諦め切れなかった人が力を求めてってのが燃える。
高ランクとかは倫理的に不味いし犯罪だという考えで、低ランクは力を初めから持っている奴には理解できないって、
高ランク魔導師と低ランク魔導師の溝みたいな。
空が飛びたいが飛べない者は、魔力で空気を圧縮して噴射し、それを使い反作用で跳んだり、ホバーとか、
攻撃では蹴りが直撃後に噴射口から空気弾を放ち、追撃みたいな。
パンタローネやターンXの腕みたいなギミックも面白そうな気がして、妄想が止まらんw
>>38
一応、ベルカ式のポピュラーな魔法で得物の強度とかを魔力強化するらしいんだけど、それで間接部を強化とかじゃ駄目かね?
あとは、全力稼動が破損の原因なら壊れないようにリミッターを掛ければいいし。本気の時や背水の陣の時、リミッター解除で破損無視の代わりに、
とんでもないパワーやスピードとか。そういえば、リカバリーってデバイスは出来なかったっけ?簡易修理みたいな。

43 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 22:35:10 ID:Dkn2bGmM
遅レスですが野狗氏GJ。
オットー…
そして次回の予告タイトルがすごく不安
皆助かってくれ!

>>27
GJ。
一方でこちらのジェイルはいい人なのに…

44 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 22:56:11 ID:RMXOYwIy
>>42
関節を強化しても、関節に付随する生身の部分からちぎれる
ってこと
自分の腕だけが秒速1Kmで動いたら間違いなく腕だけが飛んでいく
士郎正宗の攻殻機動隊やアップルシードとか読んで見ると面白いよ

45 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/12(金) 23:17:27 ID:Vjv34r6Y
そこら辺は見逃してくれw
それ言い出すと、創作で凄まじい義手義足で戦うキャラがみんなそうなっちゃうからwww


46 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 00:08:08 ID:wyFwnIP0
レンズマンの様に手の甲に埋め込むとか。

47 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 00:36:22 ID:49YOAoMl
なんていうか、機械が剥き出しってのがよくて。
ダイモンズへイトやARMSのサイボーグたちとか見ていると、妄想を抱かずにはいられないw
スカ博士なんかは、戦闘機人みたいに外観は完璧な人間で機械パーツも体内に収納し、体から機械パーツが出るなんて、
凡人が作る凡作だなんて思っていて見下しているけど、凡人というか力を持たない人間の狂気は凄まじく、
自ら望んで外観、倫理を無視で改造され、人間から人外になろうとする者と、それに答えて新兵器や新理論の研究の為に実験体の弄り回す科学者の、
悪意の結晶はナンバーズ以上の性能を発揮するとか。
スバルやギンガ、社会復帰しているナンバーズなんかは、こいつらの考えなんか理解できないだろうから、対比というか会話させたら面白そうでw

48 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 00:49:40 ID:yBbA9JL7
>>47
ゼスモスは魔法で代替できそうだけどなぁ。

49 名前:詞ツツリ ◆265XGj4R92 :2008/12/13(土) 00:52:15 ID:eo9mcWCP
どうもお久しぶりです。
ちまちま作品は書いているんですが、筆が乗らない ORZ

なので、気分転換にちょっとリンディの調教ものを一発単品で書きました。
タイトルは「甘党艦長の調教」です。

投下してもよろしいでしょうか?


50 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 00:54:25 ID:DSEuzepd
レッツゴー

51 名前:詞ツツリ ◆265XGj4R92 :2008/12/13(土) 00:56:04 ID:eo9mcWCP


甘党艦長の調教


 そこには一人の芳しいまでの雌が縛られて、荒く息を吐いていた。

「おねがぃ」

 淫らな声だった。
 それは息を飲むほど美しい女。その髪は溶き透かしたエメラルドを糸のように紡ぎ上げたかのごとき極上の翡翠色の髪、艶やかなそれを並みの男は触れるだけで吸い付き、魔性の如き艶に酔いしれるだろう。
 その肌は丹念に磨かれた玉のように美しく輝き、触れれば生まれたての赤子のような柔らかい感触に悦楽を覚えるに違いない。
 それらを持ち合わせる女は如何ほどの美貌か、想像は簡単だが、現実はそれを超越する。
 美しい女である。
 まるで気まぐれに人の皮を被り、地上に舞い降りた女神のような美しい美貌。
 凛として整った目つき、精密なまでに計算されつくした鼻の高さに、皺一つ無い顔の造形、見入るだけでむしゃぶりつきたくなる紅い唇、それらを象徴するのは深い深い見るだけで吸い込まれそうな美しい瞳。
 常時であれば天に愛された女神の如き美貌を誇る彼女。
 だがしかし、その頬は赤く染まり、舌は荒く獣のように突き出されて、湿った息を交互に吐き出す。
 はぁ、と。はぁ、と。
 熱の篭った息を吐き出す、獣のように。
 そして、その荒々しい獣のような彼女の肢体は縛られていた。
 何に? 光の鎖だ。
 バインドと呼ばれる拘束術式。名高き魔導師である彼女でさえも振り解けない完璧極まる鎖。
 彼女の肢体は腕を縛られ、足を縛られ、その胴体を締め付けられている。
 だが、それが美しくも浅ましい淫猥なる光景だと一目見れば分かるに違いない。
 類まれなる美貌の持ち主は淫らな体つきをしていた。
 大きく張り詰めた乳房は一度の出産を終えてより大きく膨らんだものに違いない。冷たい床にひしゃげ、潰し、淫らに揺れ動かすその衣服の下の双球は彼女の夫である男に何度吸わせ、揉まれ、性交と獣欲の対象になったのだろうか。
 そして、そのほっそりとした腰から下に突き出たのは臀部。大きく淫らな体つきをしたその尻は目に映る男たちの目を釘付けにし、その尻を思う存分がままに蹂躙し、押し開き、その中の聖域と魔界を犯し尽くしたいと願われるだろう。
 その女神の美貌と悪魔の肢体を持ち合わせる彼女を冷たい床に押しつけ、狂わせているのは誰か?

「……うるさいよ」

 それは冷たい言葉だった。
 見上げるリンディの視線の上には一人の青年が椅子に座り、優雅に足を組んでいた。
 誰が知ろうか。
 それが己の生んだ子だということに。
 深く削り取られた黒水晶のような黒髪に、夜闇を思わせる深い黒の瞳を浮かべた青年。
 長年の戦いでどこまでも鍛え上げられた体に、誰もが引き寄せられるその冷たくても柔らかい雰囲気を放つ人間。
 クロノ・ハラオウン。
 眼下に転がるリンディ・ハラオウンの実の息子である人物であり、その体を拘束した張本人だった。

52 名前:甘党艦長の調教 ◆265XGj4R92 :2008/12/13(土) 00:57:00 ID:eo9mcWCP

「おねがい……クロノ、ちょうだぃ」

 懇願する。
 己の息子に。
 這いずる芋虫のように近寄り、器用に這い上がりながらも声を上げて――

 パシンと冷たく痛々しい音が響いた。

「あっ!」

 頭部を叩いた白い塊、それが積み重ねられた書類による殴打だと気付いた彼女は再び床に転がった。
 べしべしとハリセンのように書類で叩かれる。
 その度にぶるんと乳房が揺れる、スカートの裾が翻るが――クロノは見もしない。
 淡々と新聞を読みながら、コーヒーを啜る。

「……今日も事件が多いな。後でユーノの奴に資料を請求するか、まとめて請求してやれば少しは奴も休暇が取れるだろう」

 その代償として地獄の苦しみがあるだろうが、知ったことは無い。
 クロノはそんな人間だった。
 実の母親にすらも必要があれば冷徹。
 その恐ろしさをリンディは知っていた。彼の機嫌を損ねれば己の身にさらなる危機が迫ることも分かっていた。
 けれど、耐えられなかった。

「おねがい……クロノ……アレをちょうだぃ……」

 リンディは悶えながらもすすり泣いていた。
 声を殺し、必死に情けを求めていた。
 数秒、数十秒、数分。
 新聞紙の数ページを読み終わり、コーヒーを飲み干して、クロノはゆっくりと振り返り。

「しょうがないなぁ」

 酷く面倒くさそうに告げて、ポケットに手を突っ込み、一つの白い塊をぽいっとリンディに投げつけた。
 かーんといい音がしそうに額に命中し、痛いと泣き声が上がる。
 そして、床に転がったそれをリンディは必死ににじり寄りながらも噛み付いた。ぺちゃぺちゃと数回舐めた。必死に舐めた。舐めて、舐めて舐めて舐め尽して――

「ね、ねぇ、クロノぉ」

 涙目で鼻声すらも上げて、リンディが見上げて告げた。


53 名前:甘党艦長の調教 ◆265XGj4R92 :2008/12/13(土) 00:58:00 ID:eo9mcWCP

「こ、これ……甘くないんだけど」

「ハッカだから」

「ぅ、うわーん!!」

 泣いた。
 リンディが泣いた。だけど、クロノは気にしなかった。
 パチッと指を鳴らし、ついでにちゃんと通信コールを押しながら。

「エイミィか? ブラックコーヒーが切れたからお代わりを。ああ、あと艦長用に黒酢ジュース持って来てくれ。ノンシュガーで」

「ひ、ひどぃ。ひどすぎるぅうううう!!」

「艦長。今日も甘くない精進料理ですよ、喜んでください」

 ニコッとクロノが微笑む。
 それが悪魔の顔にリンディには見えた。





 先月、虫歯を拵えて、さらには糖分の取りすぎで医者に警告を受けたリンディ・ハラオウン。
 その糖分カット生活、14日目のある日のことだった。


54 名前:詞ツツリ ◆265XGj4R92 :2008/12/13(土) 00:59:44 ID:eo9mcWCP
投下完了。

え? これのどこが調教ものだって?
調教と書いてしつけと読む。
タイトルに偽りはありません。

リンディさんは文字通り甘やかすと付け上がるので甘くなく躾けます。
ありがとうございましたー!




55 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 01:07:06 ID:49YOAoMl
GJ!!です。
砂糖依存症だw
1gが数万円する白い粉より、甘い白い粉のほうが好きですかwww


56 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 01:13:36 ID:DSEuzepd
GJ!!
最初めっちゃ騙された、普通にエロいSSかと思ったわwww
なんというタイトル詐称、氏は確実にドSだね、ウン。
まあそれはともかく、リンディさんが大変いやらしゅうございました。
やっぱ人妻のエロさは半端ねえわ。



しかし、タイトルが某氏のSSと被ると感じたのは俺だけかwww

57 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 01:29:50 ID:DNv7omTi
だ、騙されたぜ・・・
素敵な作品ありがとう。
やっぱ人妻サイコー

58 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 02:13:41 ID:yBbA9JL7
>>54
畜生、ズボンのベルト緩めて読んじゃったじゃないかw
調教ものって言われたら、あっちを連想するじゃないか、このGJめ。

>>56
この場合は仕方ないよ、リンディさんを端的に表した表現なんだし。

59 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 04:12:52 ID:iy5WT6UY
wikiに保管された作品の削除依頼ってこちらでいいのでしょうか。
自分で(自分の作品を)削除しようとしてもできないのですが……

60 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 07:46:08 ID:mCMFnmbD
wikiの編集権限は初代管理人殿と、有志で志願した司書の方々にしか無いぜ

兄弟の作品が消えるのは惜しいが、執筆者本人の判断なら仕方無い
ここで著者名と作品名を挙げれば対応してくれるはずだよ

61 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 09:37:42 ID:fV6/ZbYO
>>54
詞ツツリ氏GJです!
やはり人妻とは良いものだ…
恐らくリリなのに出会わなければ俺が人妻萌えに目覚めることはなかったでしょう。

62 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 09:38:28 ID:fV6/ZbYO
ageてしまったorz

63 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 11:02:32 ID:/isNPGQf
くっ、最初の一レスで期待してしまったが……
裏切られてすがすがしいぜ
GJ

64 名前:孤兎狸 ◆kotorixGkE :2008/12/13(土) 11:25:26 ID:iy5WT6UY
59です。
>>60
申し訳ない。教えて下さってありがとうございます。

一応本人証明にトリを。
自HPにすべて掲載済み&同人誌収録のため「狐兎狸」の全作品の消去をお願いしたく。
wiki管理の方々、お手数かけますが宜しくお願いいたします。
スレ住民の皆様今までお世話になりました。

65 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 20:34:29 ID:tULHzLGN
プロジェクトFって子宮いるのかな
スカリエッティは逃げるの考えて子宮使っただけかねぇ

66 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 20:38:58 ID:uyspiVHV
コピー云々は自分からばらさずに黙ってた方が色々と面白いネタだったんだがねぇ

67 名前:B・A:2008/12/13(土) 21:46:45 ID:yBbA9JL7
投下に来ました。
今回は結構難産でした。徹夜しちゃった。


注意事項
・非エロでバトルです
・時間軸はJS事件から3年後
・JS事件でもしもスカ側が勝利していたら
・捏造満載
・一部のキャラクターは死亡しています
・一部のキャラクターはスカ側に寝返っています
・色んなキャラが悲惨な目にあっています、鬱要素あり
・物騒な単語(「殺す」とか「復讐」とか)いっぱい出てきます
・名前のあるキャラが死にます
・チンクとヴァイスが好きな人には鬱です
・まさかの主人公が登場しない回
・主人公その1:エリオ(今回、出番なし)
     その2:スバル(同じく、出番なし)
・今回の主役:チンクとヴァイス
・タイトルは「UNDERDOGS」  訳:負け犬

68 名前:UNDERDOGS 第十一話@:2008/12/13(土) 21:48:47 ID:yBbA9JL7
暗闇に包まれた部屋の主は、頭からシーツを被ったまま、ベッドの上にうずくまっていた。
何かに怯えるように震えていた彼は、こちらの存在に気づくとベッドの上から転げ落ちながら床を這いつくばって近づいてくる。
通路の照明に照らされた顔は土気色で、頬は飢餓にでもあったかのように痩けている。いつもの歪な笑みを浮かべることすら、
今の彼にはできないようだ。それほどまでに、ヴァイス・グランセニックは追い詰められていた。

「ラグナ・・・・・」

縋りつくように、ヴァイスは手を伸ばしてくる。チンクはその手を無言で掴むと、震える彼の体を引き寄せるように抱きしめた。
聖母のように、慈しみを込めて。これで最後になるのだからと、腕の中の温もりを余すことなく噛み締める。

「ラグナ・・・・怖いんだ。俺の中に、俺の知らない俺がいる。自分自身が信じられないんだ」

「・・・・・・」

「あの時、俺は敵の管制官に銃口を向けた。女だった・・・・・・橙色の髪の、見たことない女だ。
けど、俺はそいつを知っているんだ。覚えていないはずなのに、知っているんだ。
ティアナ・ランスター・・・俺はあいつの名前を知っていた。俺はあいつに、あいつに・・・・・」

胸に顔を埋めてむせび泣くヴァイスの告白を聞き、改めて彼の精神が限界に近いことをチンクは実感した。
だから、チンクは兄妹ごっこを終わらせることにした。これ以上、彼を騙し続けるのは不可能だ。

「ヴァイス、ここから出よう」

突然、名前を呼び捨てで呼ばれてヴァイスは驚いたようにこちらの顔を見上げてくる。

「ラグナ?」

「すまない、私はお前を騙していた・・・・・・私は、ラグナ・グランセニックではない」

「な、何だよ、冗談は止してくれ・・・・・」

「冗談などではない。原因は不明だが、お前はここ数年分の記憶を失っているんだ。
そのせいで私を妹の「ラグナ」だと思い込んでいたんだ。私は、お前を傷つけぬために妹を演じていたに過ぎぬ」

「う、嘘だ。俺をからかっているんだろう。騙されたりなんかしないぞ。お前は間違いなく俺の妹のラグナだ。
その目の傷が何よりの証だ。その目は俺が・・・・・俺が? 俺が・・・ちが、俺は・・・・けど、だったら・・・・・・」

「ヴァイス!」

混乱するヴァイスを一喝し、チンクは彼の頬に手を添えて淀んだ2つの瞳をまっすぐに見つめる。
本当はこんな風に傷つけたくはなかった。けれど、このまま自分と行動を共にしていたら記憶と現実の齟齬にもっと苦しむことになる。
ここにいること自体が、彼のためにはならないのだ。だから、今は心を鬼にしなければならない。

「ヴァイス、「ラグナ」が失明したのは右目だったか? よく思い出すんだ、眼帯は左目に付けていたはずだ。
そもそも、どうして失明したんだ? 事故か、病気か、それとも・・・・・」

「嘘だ!」

とうとう耐えきれなくなり、ヴァイスはチンクを突き飛ばしてベッドの中へと潜り込む。

「嘘だ。そんなのはデタラメだ。俺が、俺がミスなんてするはずない。俺がラグナを傷つける訳ない。俺が、俺が・・・・・・」

断片的に蘇った記憶に苛まれているのか、ヴァイスは子どものように喚きながら頭を振って現実を拒絶する。
自分が至らなかったために大事な家族を傷つけてしまったのだ、その気持ちもわからない訳ではない。
自分なら、きっとその場で自害する道を選んでいただろう。


69 名前:UNDERDOGS 第十一話A:2008/12/13(土) 21:49:44 ID:yBbA9JL7
「辛いのはわかる。だが、事実なんだ。ここにはもう、お前の居場所はない。
お前の隣にいるべき女性は、私ではなく本物のラグナ・グランセニックだ」

その言葉を口にした瞬間、胸を締めつけられるような痛みにチンクは顔を俯かせた。
できることなら今すぐヴァイスの胸に飛び込んで、慰めてもらいたい。彼の優しい言葉を全身で受け止め、
幼子のように甘えたい。きっと今なら、今までよりもずっとうまく「ラグナ」を演じることができるだろう。
けど、それは抱いてはいけない気持ちだった。自分は偽物、ずっと彼を側に繋ぎ止めていてはいけない。
彼の帰りを待つ本物のラグナ・グランセニックのもとへ、帰してやらねばならないのだ。

「どうして・・・・・・・どうして今更、そんなことを言うんだ。ぎこちなかったけど、うまくやってきたじゃないか。
どうして、お前の兄でいさせてくれないんだ?」

「私は、お前を失うことが怖い。このまま戦いが激しくなれば、いつかお前を守ってやれなくなるかもしれない。
ひょっとしたら、私が死ぬことでお前を悲しませてしまうかもしれない。そんなのは嫌だ。
だから、これは妹としての私からの最後のお願いだ」

懐に忍ばせていた赤い宝石のイヤリングを取り出し、ヴァイスの手に握らせる。
「ラグナ」の誕生日にヴァイスがプレゼントしてくれたイヤリング。
これもまた、自分が持っていて良いものではない。これを持つべきなのはヴァイスの帰りを待っている本物の「ラグナ」だ。

「お前の帰りを待っている人のところに帰って欲しい。そして、自分の手でプレゼントを渡すんだ」

「俺の・・・・帰りを・・・・・・・」

「彼女はずっと待っている。クラナガンの自宅で、行方不明となったお前の帰りをずっと。
兄が生きていることを、彼女はずっと信じて待ち続けているんだ。
3年間、ずっと1人で・・・・・・・・兄なら、その孤独を癒してやってくれ」

どことなく引きつったような笑みは、今のチンクからすれば会心の出来であった。
こんな風にずっと笑っていたかった。過保護な兄の世話を焼き、兄の不器用な愛情に微笑む日々。
失う恐怖とは無縁の穏やかな生活。
叶わない理想に、チンクは目を潤ませる。
泣いてはいけない。わかっていても、雫が頬を伝う。
嫌だ、失いたくない。
本当はずっと手元に置いておきたい。
自分だけの兄でいて欲しい。
でも駄目なんだ。
彼を最も傷つけているのは、欺瞞と憐憫で塗り固められた偽物の平穏を与えてしまった自分なのだ。
戦闘機人チンクがラグナ・グランセニックである限り、彼はずっと傷つき続ける。
だから、例え辛くても彼には記憶を取り戻し、元いた場所に戻ってもらわねばならない。

「頼む・・・・・・・お願いだよ、お兄ちゃん」

「・・・・・・・・・・・」

無言で、ヴァイスは頷いた。
手にしたイヤリングをギュッと握りしめ、俯いたままジッと自分の手を見つめている。
やがて、ゆっくりとベッドから這い出すと、剣山の上に着地するかのように、恐る恐る立ち上がった。
まだ迷いはあるようだった。それでも、彼は最初の一歩を踏みだそうとしている。
なら、自分の役目はその背中を後押しすることだ。偽物の妹でも、まだできることはある。

70 名前:UNDERDOGS 第十一話B:2008/12/13(土) 21:51:19 ID:yBbA9JL7
「行こう、外の世界に」

差し出した手を、ヴァイスは無言で握ってくれた。
握った手は震えていて力も弱々しかった。
足もふらついていて、歩くのがやっとの状態だ。それでも、彼は前を向こうと最初の一歩を踏み出してくれた。
それが嬉しくもあり、悲しくもあった。
別れの時間が迫っていることを否が応にも実感させられる。
しかも、最後の時間をゆっくりと楽しんでいる暇さえ残されていない。
ゆりかごの内部はリアルタイムで監視されている。恐らく、自分がヴァイスを連れ出そうとしていることは既にばれているはずだ。
ドクターがこちらの造反に気づいて行動を起こす前に、ヴァイスを地上に逃がさねばならない。
2人は足早い部屋を後にすると、巡回中のガジェットの目を搔い潜って転送ルームへと向かった。
ゆりかごが衛星軌道上にある以上、地上に降りるためには転送か緊急事態用の脱出ポッドを使うしかない。
ただし、後者はおいそれと使用できないようになっているので、ヴァイスを逃がすためには転送ルームに向かう以外に方法がないからだ。

「はぁ・・・・はぁ・・・・・」

「ヴァイス、大丈夫か?」

「あ、ああ・・・・・・少し堪えただけだ。これくらい、何ともない」

そう言っても、ヴァイスの顔はかなり辛そうだった。肉体ではなく精神的な疲労がまだ治りきっていないのだ。
アインヘリアル戦でのフラッシュバックが、予想以上に彼の精神を追いこんだ証拠だ。

「後少し、頑張ってくれ」

「ああ。女の子相手に泣き言なんて、言ってられねぇ」

「その意気だ。さあ、行こう」

ヴァイスの背を押すように手の平で叩き、チンクは再び走り出す。
直後、目の前を赤い糸のようなものが駆け抜けた。
咄嗟にブレーキをかけ、その場に踏み止まる。ふわりと前に浮いた前髪の何本かが赤い糸にぶつかり、
剃刀で切られたかのように細かくなって宙を舞った。

「ヴァイス、下がれ!」

ヴァイスを庇うように立ち、糸が飛んできた左側の通路を睨む。
暗闇の向こうに誰かが立っていた。
その人物は足音を立てながらゆっくりと近づいてきて、こちらの驚愕に歪む顔を目にしてほくそ笑む。

「その男をどこに連れて行く気だい、チンク?」

「ドクター・・・・・・・」

そこにいたのはジェイル・スカリエッティその人だった。
彼はいつものように怪しい笑みを浮かべながら、掲げた右手のグローブ状のデバイスを下げる。
すると、チンクの眼前に張り巡らされていた赤い糸が透けるように消えていった。

「その男を連れ出す気かい?」

「・・・・はい、その通りです」

「それはまずいなぁ。多少の自由は認めていたが、解放するというのなら話は別だ。彼はこちらの内情を知っているからね」

赤い糸が宙を走り、ヴァイスの体を拘束しようとする。
すかさず、チンクはヴァイスを突き飛ばしてバインドから逃し、きつく四肢を拘束されながらも叫ぶ。


71 名前:UNDERDOGS 第十一話C:2008/12/13(土) 21:52:46 ID:yBbA9JL7
「転送ルームに行け!」

「け、けど・・・・・・・・」

「行くんだ! クラナガンでお前の妹が待っている・・・・・頼む!」

「・・・・・・・・」

奥歯を噛み締め、顔を俯かせながらヴァイスは脱兎の如く駆け出した。
ドクターと2人きりになったチンクは、即座に四肢に力を込めてバインドを破り、スティンガーを構えながら油断なく造物主と対峙する。

「今までも、彼を外に連れ出していました。今更、何故邪魔をするのですが?」

「監視はしていたさ。やろうと思えばいつでも殺すことはできた。それをしなかったのは、君のためだよ、チンク」

「では、彼はやはり・・・・・・・・・・」

「そう、君のメンタルケアのために黙認してペットのようなものさ。君は戦士としては一流だが、如何せん精神面に問題を抱えているからね。
有り体にいえばセンチメンタリズムだ。戦いの中で非情になれるのに、私生活ではとことん甘い。だから、精神の均衡を図るものが
必要だった。それがゼスト・グランガイツであり、ナンバーズであり、あの男だ」

「ならば、私の心を消してしまえば良かったでしょう。コンシデレーション・コンソールを使えば、それができたはずだ」

「確かにその方が楽だったかもしれない。けれど、私は君のおかげで研究に1つの方向性を見出せたんだ。
知っての通り、人間の感情には潜在能力を引き出す不思議な力がある。量産型戦闘機人は不確定な要素を取り除く意味もあって、
あえてそれを排除しているが、私自身はこれに興味を抱いていてね、何とかして制御できないものかと考えていた。
そのために試作品であるナンバーズには感情を残したんだ。研究のためにね。だが、君よりも若いナンバーの娘達は、
私の因子を埋め込んだことで、程度の差はあれ全員が精神に何らかの偏りを見せている。クアットロの残虐性などその最もたるものだ。
あれでは駄目なんだ。感情は揺れ動かなければ力を引き出さない。プラスからマイナスへ、マイナスからプラスへ。
違うベクトルへ動く時にこそ、感情の真価は発揮される。そこで、私は因子を持つクアットロと因子を持たぬ君をほぼ同じ時期にロールアウトし、
比較実験を行った。結果は、言わずもがなだ。クアットロは1つの感情のみが突出し、一方の君は理想的なバランスで人間性を育んでくれた」

「だから、5番以降のナンバーズにはあなたの因子がないと?」

「そうさ。有機的な感情と無機的な機械の融合。それこそが理想的なんだ。けれど、感情が豊かになれば今度は不安定さも増えてくる。
驕りや油断が起き、モチベーションによって結果が左右される。そこで今度は、意図的に感情を抑えてみることにした。
クアットロが意見しなくても、最後発組はそのコンセプトで創り出されただろうね。とにかく、これで不確実性は減ったし、
感情の確実なコントロールという1つの目標も立った。最終的にはパーソナリティをねつ造し、
それを空の人体に走らせることで望むままの人間を生み出すこと、それが現在の私の目標だ」

その言葉に、チンクはゾッとするような寒気を覚えた。
彼が口にしていることは、つまりは人間の人格をプログラムに見立てて自由に書き換えることを意味している。
それは後付けの洗脳とは根本から違う、人間の根幹に手を加え、精神そのものを塗り替えてしまう悪魔の所業だ。
そこには自ら学び、育んできた感情が存在しない。あるのは他人より与えられた偽りの感情と、それに違和感を抱くことなく生きる自我だ。
今の自分が抱いている、ヴァイスを愛おしいと思う感情すら、実感の伴わない虚像と化してしまう。
ある日を境に自分が消え、別の自分がそれを疑うことなく新たな「チンク」となってしまう。


72 名前:UNDERDOGS 第十一話D:2008/12/13(土) 21:53:54 ID:yBbA9JL7
「わかりました。どうやら、私はもうあなたにはついていけないようです」

「ほう、ではどうすると言うのだい? あの男と共に地上に降りるかい? 降りたところで君の居場所はそこにはない。
そんなことは君自身が一番わかっているだろう? それとも、彼の妹を殺して自分が成り代わるかい?」

「愚かだドクター、あなたは何もわかっていない。夢という欲望に取り憑かれたあなたは、
クアットロと同じく欠落者だ。私はあなたのようにはならない。あなたを倒して、私は自由になる!」

「そんなことをしても、君の犯した罪は消えない。後ろ盾を失った君を、世間の者達はどう見るだろうね? 
このゆりかごから降りるということは、そういう意味だ」

「それでも、あなたの成そうとする夢よりは何倍もマシだ。これは私自身で決めた、私だけの答えです」

立て続けにスティンガーを投擲し、更にスカリエッティの背後にも無数のスティンガーを出現させる。
自分を生み出してくれた父を傷つけることは心苦しい。だが、彼の目的を知ってしまった以上、
生かしておく訳にはいかない。人間の感情の尊さを謳いながらも、彼の成そうとしていることは
それを否定することに他ならない。だから、過ちを犯す前にせめて娘としてここで彼の息の根を止める。

「IS発動」

着弾したスティンガーが爆発し、轟音が通路を震わせる。
立ち込める煙で視界が真っ白に染まる中、チンクは油断なく残りのスティンガーを引き抜いて気配を探る。
手応えはあったが、彼の気配はまだ消えていない。この煙に紛れて、こちらの隙をジッと伺っているはずだ。
刹那、白煙を引き裂いて金色の双眸が姿を現した。すかさず、チンクはスティンガーを投擲、
ランブルデトネイターを発動して彼の至近距離で爆発を起こさせる。しかし、スカリエッティはまるで堪えた素振りを見せなかった。
見れば、衣服が破れているだけで逞しい体には傷一つついていない。

「なに・・・・・・」

「研究者だからといって、実戦が弱いと考えるのは浅はかだよ。
己を過信して敵の実力を見誤る。また、悪い癖が出たね」

「くっ・・・・まだだ!」

更にスティンガーを投擲するも、スカリエッティはそれを素手で弾いてチンクに接敵、
そのまま強烈なボディーブローをお見舞いし、彼女の体を壁に叩きつける。

「粉々に壊すのは簡単だが、私に刃を向けた罰だ。しばらくは泣き叫んでもらうよ」

無防備な腹部に、スカリエッティは容赦のない蹴りを叩き込む。
二度、三度、蹴られる度にチンクの体は痙攣し、逆流した胃液が口の中いっぱいに広がる。
そして、首を掴まれて持ち上げられると、思いっきり顔面を壁に擦りつけられながら投げ飛ばされた。
摩擦で眼帯が千切れ、光の失った右目が露になる。

「ううぅ・・あ・あ・・・・・・」

「くくくっ、さすがは私の娘だ。これだけ痛めつけても泣き言1つ言わないなんて。
さて、お仕置きはこれくらいにしてあの男を追わなければいけないな。地上に逃げられると探すのが大変だ。
君の再調整は彼を始末してからにしよう」

ほくそ笑みながら、スカリエッティは走り去ったヴァイスを追おうと踵を返す。
だが、痛みに呻きながらもチンクはスティンガーを投げ放ち、彼の進行を阻止しようとする。
足を爆破されたスカリエッティはその場で転倒、表情を引きつらせながら、自分を傷つけた娘を見やる。


73 名前:UNDERDOGS 第十一話E:2008/12/13(土) 21:56:06 ID:yBbA9JL7
「不意打ちとはいえ、私に傷を付けるとは・・・・・・まだ教育が必要なようだね、チンク」

「行かせませんよ。これが妹としてあいつにしてやれる、最初で最後の孝行です」

決意に彩られた瞳を携え、チンクは残る力を振り絞ってオーバーデトネイションを放つ。
倒せなくても、ヴァイスが逃げ切るまでの足止めさえできれば良い。
しかし、そんなささやかな願いもスカリエッティの右手から放たれた砲撃によって無残にかき消されてしまう。
たった一撃で、全てのスティンガーが撃ち落とされてしまった。そして、威力が減衰することなく伸びた
赤い閃光はチンクの小さな体を易々と吹き飛ばし、下半身を消滅させる。

「がはっ・・・・・・」

震える手でスティンガーを抜こうとするが、スカリエッティはその手を踏み潰し、
まるでボールを蹴るかのように上半身のみとなったチンクの体を大きく蹴り飛ばした。
背中に衝撃が襲い、視界が乱れる。
彼の戦い方はただ闇雲に力を振り回しているだけだ。それなのに、こちらの攻撃がまるで通用しない。

「そこまで必死になるというのなら、良いだろう。彼を調整し、君の兄として迎え入れよう。
そうすれば君は永遠にあの男と共にいることができる。彼は物言わぬ人形になるだろうが、
別に構わないだろう? さあ、裏切り者として屈辱の中で死ぬか、私に再び忠誠を誓うか、選ぶんだ」

「・・・は・・・・ない・・・・・・」

「何だね、よく聞こえない?」

「あいつは、渡さない!」

チンクの腰部で爆発が起こり、彼女の体がスカリエッティ目がけて吹っ飛んでいく。
蹴り飛ばされた時に、こっそり落としておいたスティンガーを爆発させてその衝撃を利用したのだ。
ロケットのように宙を舞ったチンクの手には最後のスティンガーが握られており、
造物主の肉体を直接切り裂かんと振り下ろされる。しかし、その腕は赤い糸によって雁字搦めにされ、
スティンガーの切っ先は僅かにスカリエッティの鼻先に届かなかった。

「まだ諦めきれないか。いい加減にしないと、私も本気で怒らねばならなくなるよ」

「あなたにだけは、屈したくない」

「そうか、残念だ」

拘束した腕をも切断され、チンクの体が達磨のように床の上に転がされる。
両手を失っては、もうISを使用することはできない。残されたのは切断された手が握っている最後のスティンガー1本のみ。
だが、最後の悪あがきとばかりにそれを至近距離で爆発させたにも関わらず、スカリエッティは無傷のままほくそ笑んでいた。
あまりにも常識外れな防御出力に、チンクはうすら寒い恐怖すら覚えた。しかし、それとは別に安堵にも似た感情も芽生えていた。
このまま成す術もなく、自分は殺される。だが、時間は十分に稼いだ。今頃は、転送ルームに辿り着いたヴァイスが地上に
降りているところだろう。自分は、十分役目を果たしたのだ。


74 名前:UNDERDOGS 第十一話F:2008/12/13(土) 21:57:01 ID:yBbA9JL7
(ヴァイス・・・・・お別れだ・・・・・・・・)

己の死を悟り、チンクは静かに瞼を閉じる。
瞬間、空気を引き裂く音が耳に届いた。





足を縺れさせながらも長い通路を走り抜け、ヴァイスは転送ルームの前に辿り着いた。
次元航行艦に積まれているような大がかりな装置だが、動かす分には問題ない。
例え構造を理解できていなくても、使い方さえわかれば装置は滞りなく稼働する。
転送先の座標の設定が唯一の問題だったが、幸いなことにクラナガンの次元座標は武装隊にいた頃に教え込まれたので覚えている。
これで、地上に降りることができる。
クラナガンにいるという本物の妹に会えば、失われた記憶が戻る。
記憶の齟齬による苦しみから解放される。
だが、思いに反して彼の足はピクリとも動かなかった。

「良いのかよ・・・・・・・このまま、あいつを放って俺だけ地上に降りて、
何食わぬ顔で妹と再会して・・・・・・・それでそいつの顔をちゃんと見れるのかよ!」

フラッシュバックした過去の記憶がヴァイスを苛む。
過去に同じようなことがあった。大切な妹の目を誤射し、その事実が恐ろしくなって罪から逃れて、
話し合おうとする妹を拒絶して自分の殻に閉じこもっていた。
自分の致命的なミスだと知りながら、それを認めるのが嫌で責任も果たさずに言い訳ばかりしてきた日々。
挙句、今度は大事な後輩の目まで誤射してしまった。
今、逃げだしたらまたそれを繰り返すことになる。
自分可愛さに3年間も尽くしてくれた女を犠牲にし、彼女のことを忘れて新しい生活を送る。
そんな厚かましい行為が許されて良いはずがない。

「けど、俺は・・・・・・・・」

手の震えが止まらない。
誤射の記憶を取り戻したことで、彼の精神は余りにも不安定になっていた。
狙撃は体力や技量よりも精神力がものをいう。こんな状態では、また大切なものを誤射しかねない。
ならば逃げるのか?
忘れてしまえば良い。
あんな女、最初からいなかったと思えば良いんだ。
何も変わらない。
自分の罪から逃れ続けてきた今までと、何も変わらない。

『どう生きるか、どう戦うか、選ぶのはお前だ』

誰とも知れぬ男から言われた言葉が脳裏を掠める。
言葉に感じられる力強さから、自分はその男を尊敬していたのがわかる。
顔も思い出せないこの男の言葉で、自分は一度はストームレイダーを手に取って過去と向き合おうとしたはずだ。

75 名前:UNDERDOGS 第十一話G:2008/12/13(土) 21:58:20 ID:yBbA9JL7
「そうだぜ、旦那。俺の生き方は俺が決めなきゃいけねぇんだ」

蘇るのは、彼女と共に過ごした3年間の記憶ばかり。
子ども扱いされると憤慨し、大人ぶった態度を取ろうとしてもうまくいかずに笑った記憶。
刃物の扱いはうまい癖に、料理は壊滅的に下手だったことをからかうと本気で泣かれた記憶。
他愛もないことを延々と喋り続けた穏やかな時間の記憶。
過去の記憶に苦しんで、彼女の抱かれて眠った記憶。
照れると顔が真っ赤になるのが、とても可愛いと思った記憶。
誕生日プレゼントのイヤリングを渡した時の、ぎこちない笑顔の記憶。
何度思い出そうとしても、ラグナ・グランセニックとして思い浮かぶのは彼女のことばかりだった。
かつて、自分が誤射してしまった本物の「ラグナ」の顔は靄がかかったように曖昧でうまく思い出せない。
それが全てを物語っていた。
自分にとって、妹はただ1人。

「妹を見捨てて逃げるなんて、兄として最低だ。ここで逃げても何も変わらない、また間違いを繰り返す。
そうだろ、ストームレイダー!」

《Yes, my friend》

起動したストームレイダーを手に、ヴァイスはもと来た道を逆走す。
手の震えは、いつの間にか治まっていた。





「痛・・・・」

浅葱色の魔力弾の直撃を受け、スカリエッティの体がグラリと揺らぐ。続けて飛来した魔力弾の連射が
バランスの崩れた体を嵐のように責め立て、吹っ飛んだ体が床の上に倒れ込む。
ダメージを与えられないまでも衝撃で体がもんどりを打っている。
ヴァイスだ。彼が戻って来て、スカリエッティを狙撃したのだ。

「ラグナ!」

「ヴァイス・・・・・来るなぁっ!」

叫んだが、遅かった。起き上がったスカリエッティが右手を一閃させ、魔力弾を撃ち出す。
狙撃のために地に伏していたヴァイスは避ける間もなかった。

「ヴァァッイス!!」

「これは、罰だ・・・・・・そして、彼に止めをさすのは君だ」

スカリエッティは、懐から無線式のボタンを取り出した。
それが何なのか、言わなくてもわかる。自分に施されたコンシデレーション・コンソールを起動するためのスイッチだ。
あろうことか、自分の手でヴァイスを殺させるつもりなのだ。

「ま、待って・・・・止めてください、それだけは・・・・・・・・」

「いいや、限界だ」

無情にも、親指がスイッチを押さんと折り曲げられる。
だが、スイッチは背後から飛んできた魔力弾による狙撃で撃ち砕かれ、衝撃で親指があらぬ方向にねじ曲がる。
スカリエッティの苦悶の悲鳴が響き渡り、倒れているチンクから数歩後ずさる。
直後、駄目押しとばかりに打ち込まれた魔力弾が心臓を捉え、彼の体は通路に倒れ込んで動かなくなった。


76 名前:UNDERDOGS 第十一話H:2008/12/13(土) 21:59:49 ID:yBbA9JL7
無情にも、親指がスイッチを押さんと折り曲げられる。
だが、スイッチは背後から飛んできた魔力弾による狙撃で撃ち砕かれ、衝撃で親指があらぬ方向にねじ曲がる。
スカリエッティの苦悶の悲鳴が響き渡り、倒れているチンクから数歩後ずさる。
直後、駄目押しとばかりに打ち込まれた魔力弾が心臓を捉え、彼の体は通路に倒れ込んで動かなくなった。

「ヴァ、ヴァイス・・・・・・・・」

下半身を失い、片腕だけで這いずりながらチンクはヴァイスのもとへと向かう。
どうして戻ってきたのか、どうして自分を助けたりしたのか。それも気になるが、
一番の気がかりは彼が無事かどうかだ。スカリエッティの一撃は明らかに致命傷だった。
そんな状態で狙撃を行った、それだけでも奇跡のようなものなのだ。
急がなければ。彼の命の灯が消え去る前に、何としてでも彼のもとに。





チンクが通路を這い進む傍ら、倒れていたスカリエッティは痛む体を労わるように起き上がると、
懸命に愛する男のもとに向かおうとする娘に目をやった。
均整の取れた美しい肉体には、やはり傷一つついていない。デバイスによって強化された肉体と、
堅牢なフィールド防御魔法によって守られたこの体を傷つけることなど、並の戦士では不可能なのだ。

「だが、今の狙撃は正確に私の心臓を捉えていた。いや、それを言うなら撃ち込まれた全ての魔力弾は、
人体の急所ばかりを狙ったものだった。その技量には素直に脱帽だ。そして、傷ついてもなお私を
撃った意地に免じて、娘と共に死ぬことを許可しよう」

とどめを刺そうと掲げていた右手を降ろし、踵を返して管制室を任せているウーノを通信で呼び出す。

「2人の遺体を回収し、私のラボへ運んでくれ・・・・・・・残っていればね」

『わかりました。それと、ノーヴェがそちらに向かっていますが?』

「捨てておいて良い。それと、新しい白衣と救急箱を頼む」

『わかりました、すぐに用意します』

通信が切れ、スカリエッティは歩き出す。
勝利の余韻も敗北感もなかった。あるのは雑務を片づけたという認識だけ。
自らが生み出した娘を手にかけても、彼の心は微塵も揺るがない。
愛していた。
けれど、必要なくなった。
ただ、それだけだった。





「はは・・・・・やった・・・・・」

スコープの向こうでスカリエッティが倒れたのを見て、ヴァイスは引きつった笑みを浮かべる。
状況はいつかと同じ、大切な女を避けて敵を狙撃するというもの。
自分はこれを二度も仕損じてしまった。けれど、今度は成功させた。
あの女だけはどうしても守りたかった。3年間、ずっと自分を支え続けてくれたあの妹を。


77 名前:UNDERDOGS 第十一話I:2008/12/13(土) 22:00:52 ID:yBbA9JL7
「ヴァイス・・・・・・」

「悪い・・・・・戻ってきちまった・・・・・・」

這い寄ってきた少女の手を取り、こちらに引き寄せる。
たったそれだけの動作が酷く苦痛だった。体温もどんどん下がっていっている。
ひょっとしたら、内蔵がはみ出ているのかもしれない。とりあえず、脊髄は確実にやられているはずだ。

「ヴァイス、どうして戻ってきた? どうして私を助けたりした?」

「お前が、妹だからだ・・・・・・あのまま逃げても良かった。けど、思い出したんだ。
俺は、ずっと妹の目を誤射した事実から逃げていたことに。もう逃げたくなかった。
自分の人生だ、何のために命を賭けるのかくらい、自分で決めるさ」

「だったら、その命は本物の妹のために使えば良いだろう。どうして、私を助けたんだ?」

「言っただろう・・・・・・・俺にとってのラグナ・グランセニックは、お前なんだ。
ちびっこいくせにマセガキで、不器用で照れた顔の可愛い銀色の髪の女の子が、俺の妹なんだ」

「ヴァイス・・・・・・・」

「過去の記憶なんかいらない。思い出せないことは思い出せなくて良い。俺はお前がいてくれれば、それで良いんだ。
偽物だなんて言うなよ。お前は、俺の妹だ・・・・・・・妹で良いんだ。だから、こいつはお前のものだ」

自室を出る際に渡されたイヤリングを、朦朧とする意識の中で彼女の耳に取り付ける。
誕生日プレゼントのために、カタログと睨めっこして購入したアクセサリー。
これは妹だからプレゼントしたのではない。彼女への感謝の思いがあったから、渡そうと思ったのだ。
誰が何と言おうと、彼女は自分の妹だ。

「ヴァイス・・・・・お兄ちゃん・・・・・ありがとう、私は凄く幸せだ・・・・・世界一幸せな妹だ」

「ああ・・・・・笑っているのか? もう、よく見えねぇや・・・・・なあ、お前の・・・・名前・・・・・」

柔らかな頬に触れていた手から力が抜ける。
最愛の妹の名を知ることなく、ヴァイス・グランセニックはその波乱の生涯に幕をを閉じた。





ノーヴェがそこに駆けつけた時、既に事は終わった後だった。
ドクターはそこにおらず、血塗れで息絶えたヴァイスを上半身のみとなったチンクが抱きしめている。
その耳には、彼からプレゼントされた赤い宝石のイヤリングが眩しく輝いてた。

「チンク姉!」

「ノーヴェか。すまない・・・・姉は、先に逝く」

今にも消えてしまいそうな弱々しい声で、チンクは言う。
その声には、いつもの力強さは微塵も感じられなかった。

78 名前:UNDERDOGS 第十一話J:2008/12/13(土) 22:02:22 ID:yBbA9JL7
「どうして・・・・・どうしてドクターに逆らったりしたんだ!? あんなことしなければ、こんな目には・・・・・・・」

「私は、自分の我を通したんだ。お前にもあるだろう、通したい我が。だが、ドクターの夢が叶えばそれもなくなってしまう。
譲れない思い、果たしたい願いが奪われてしまう。ノーヴェ、お前はゆりかごを降りるんだ。
ここにいては、何れお前も私と同じ目にあう」

「そんなことより、ドクターに修理してもらおう。謝ったらきっと許してくれるよ」

「そして、感情を消されて戦うだけの機械に改造されるんだ。そんなのは嫌だ。私は、やっと心を持てたんだ。
この感情を消されるなんて、我慢できない。こいつの体も渡さない・・・・・私が全部持って行く」

「嫌だよ・・・・・ウェンディもいなくなって、チンク姉まで・・・・・あたしを置いてかないで・・・・・・・」

「安心しろ、お前は1人じゃない。姉がいる・・・・・・・・本当の、血の繋がった姉が・・・・・・・」

「血の繋がった・・・・・・姉?」

「タイプゼロ・セカンド・・・・・・スバル・ナカジマだ。お前と同じ遺伝子を基に生み出されたクローン。
それが、お前の姉だ」

「あいつが・・・・・あいつが、あたしの・・・・・姉・・・・・・」

「ノーヴェ、生きるんだ。姉の分まで・・・・・そして、自分だけの人生を・・・・・・・」

「チンク姉・・・・・はっ!?」

チンクの手にスティンガーが握られているのを見て、ノーヴェは後ろに大きく跳躍する。
直後、衝撃が通路を駆け抜け、安らかな微笑みを浮かべた姉と狙撃手の体を炎で包み込んだ。

「チンク姉!」

飛び散った姉の破片を呆然と見つめながら、チンクはその場に膝を突いた。
全部持って行くとは、こういうことだったのだ。誰の手も届かないところ。
それはつまり、この世からの完全な消滅に他ならない。

「戦闘機人は、戦うための兵器・・・・・・・・・」

ずっとそう教え込まれてきた。けれど、本当に戦うためだけに存在するのなら、感情なんかいらないはずだ。
そして、ドクターはいつでもそれを自分達に施すことができる。心がなければ、姉を失った悲しみに涙することもないだろう。
その代わり、スバル・ナカジマとの戦いで見出せた喜びも感じられなくなる。
それはとても良くないことのような気がした。

79 名前:UNDERDOGS 第十一話K:2008/12/13(土) 22:03:30 ID:yBbA9JL7
「わかったよ、チンク姉・・・・・・・何が正しいかは、あたしが決める」

自分だけの人生。それは、成すべきことを自分で決めることだ。
自分の果たしたい望みはスバル・ナカジマとの決着。
それを果たすためにも、自分の意思で行動しなければならない。
何が正しいのかを見極めるために、ノーヴェは転送ルームへと足を向けた。





稀に見る寒波がクラナガンを襲い、所用で外出していたラグナ・グランセニックは
上着を抱きしめるようにして吹きつける風に堪えながら帰宅した。
照明の消えた自宅は冷え切っていて、出迎えてくれる者などいない。
ラグナは無言で照明のスイッチを入れると、エアコンを点けてテレビの電源を入れる。
たまたま映ったチャンネルがニュース番組で、テロリストが管理局の施設を襲撃して破壊したというニュースが報道されていた。
ここ最近、ミッドチルダのあちこちのこのような事件が起きている。

「物騒だなぁ・・・・・・・」

年若い少女が一人暮らしをするには、今のミッドチルダは危険すぎるかもしれない。
この前だって、過激派が市外の研究所を襲撃して罪のない研究員を拉致していくという事件が起きたばかりなのだ。
彼らの魔の手がいつ、自分に向けられるかわからない。出身世界の身内からは、危険だから戻って来いと催促が来ている。
だが、それでもラグナはクラナガンを離れるつもりはなかった。この家は兄と共に暮らした思い出の場所なのだ。
それを手放してしまうことは、彼女にはできなかった。
それに、兄はまだ生きているかもしれない。地上本部の知り合いが、兄らしき人物を管理局関連の施設で見たと言っていたのだ。
もちろん、問い合わせてもヴァイス・グランセニックなる人物など知らないという解答しか得られなかったが、
その後も何度か見かけたとの情報もあり、ラグナは思い出の詰まったこの家で兄の帰りを待ち続けることにした。
理由があって帰ってこれないのなら、自分は静かに帰りを待つだけだ。

「お兄ちゃん、早く帰ってこないかな」

再会したら、まずお話をしよう。
失明して以来、関係はぎくしゃくしていたが、きっとまた昔のように仲良くできる日が来るはずだ。
また兄と分かり合える日が来ることを信じて、ラグナが静かに再会の時を待ち続けた。
その日が、二度と訪れないとも知らずに。






                                                         to be continued

80 名前:B・A:2008/12/13(土) 22:06:49 ID:yBbA9JL7
以上です。
この物語は、エリオとスバルが主人公です。
まさかのノー主人公の回に作者もびっくりだ。
それもチンクとヴァイスだけでストーリーが進むなんて。

81 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 22:17:37 ID:39zwzjry
GJ!
ラストのラグナの言葉がものすごい哀愁を…

82 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 22:26:01 ID:bt4s/3/l
GJ
チンクとヴァイス、盛り上がっただけに悲しいです。
でもこれはこれで美ししいと思えてしまいます。
ただ、土壇場でのジョジョネタはちょっと……

83 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 22:35:22 ID:/isNPGQf
GJ!

チンクはヴァイスの分も生きて欲しかったな……。その逆でも……
で、私が言うのも何ですが、最近のスレでのナンバーズがみんな可哀想過ぎる……
誰か、明るく楽しいナンバーズを……




84 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/13(土) 23:47:03 ID:uyspiVHV
>>83
つまり明るく楽しい(クアットロ視点から見て)ナンバーズですね

85 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:11:25 ID:3jiGgp3P
B・A氏GJ!

さて、がんばってこちらも投下します。
まあ、枯れ木も山のにぎわいって事で。

魔法少女リリカルなのはIrregularS 第九話です。(全十三話予定)

捏造まみれです。
SSX前提です。
あぼんはコテで


レス数18

86 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:12:01 ID:3jiGgp3P
             1

 どうして、私はこんな目に遭っているの?
 愛する人を奪った、憎い女のために?
 私を騙して連れ回していた機械仕掛けの半人間たちのために?
 助けて、お母さん。
 助けて、エリオ。
 助けて、ガリュー。
 助けて、ゼスト。
 助けて、セイン、ウェンディ、オットー、ディード、ウーノ、トーレ、ノーヴェ、ディエチ、チンク、セッテ。
 助けて、エリオ。
 助けて、キャロ。
 エリオ……エリオ、エリオぉぉおお!!!
 痛いよ。痛いよ。
 やめてよ、お願い。
 やめて、クアットロ。
 やめて、ドクター。
 痛いよぉ、痛いよぉ。
 やめて、やめてぇ。
 どうすれば、やめてくれるの?
 ………
 うん。なんでもやる。だから、お願い。やめて。
 転送魔法……座標……ロストロギア……
 わかった。わかったよ。だから、やめて。
 もう嫌なの、痛いのは嫌なの。嫌。嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌

「あら♪ もう壊れたのかしら、このお人形さん」
「脆いものですね、人間など」
「親子揃ってドクターの実験道具になれたなんて、名誉なことですわ♪」
「さてと、そろそろ僕の言うことを聞いてくれるかな。可愛いルーテシア。僕のお人形さん」



                      魔法少女リリカルなのはIrregularS
                        第九話
                      「ガラスの人形が砕けるように」

87 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:12:36 ID:3jiGgp3P
             2

 殺気立つ戦闘機人二人を、エリオは目の当たりにしていた。

「もう、これ以上は我慢できねえ! あたしは一人でも行く。あんたがなんと言おうと、オットーとウェンデイの仇を討つ!」
「断りなど、必要ありませんよ、ノーヴェ姉様。私たちは行くだけです。臆病者の意見など、耳にする必要すらありません」

 ノーヴェの剣幕の前には、スバルが立ちはだかっていた。

「落ち着いてよ、ノーヴェ。ローヴェンの居場所だってまだわからないんだ」

 止めようとするスバルの手を、ノーヴェは冷たい視線で振り払う。

「スバル、お前にはわかんねえよ。あたしたちの想いなんて」
「なんでだよっ!」

 ノーヴェが一瞬怯むほどの勢いでスバルが叫んだ。

「どうしてだよっ! そりゃあ、ノーヴェよりはウェンディとのつきあいは短かったよ。オットーとのつきあいはもっと短いよ。
でも、ウェンディはあたしの妹だし、オットーはあたしにとっても大事な仲間なんだよ!!」
「それでも、おまえにはわかんねえよっ!!」
「ノーヴェ!」

 そして、ディードの前には、

「駄目だよ、ディード。落ち着いて。お願いだから」
「例え陛下のお言葉でも、これだけは譲れません」

 ヴィヴィオが断固とした表情で両手を広げて立っていた。

「ディード、陛下じゃないよ……ヴィヴィオだよ。オットーにたくさん遊んでもらったヴィヴィオだよ……」
「だったら、命じてください。陛下と一緒に遊んでいた、優しかったオットーの仇を討てと、憎むべきハーヴェストを、
ローヴェンを、クアットロを討てと、この私に命じてください、聖王陛下の名において仇を討てと命じてください」
「嫌だよ。そんなことできるわけない。それは、ディードに死ねって言うのと同じだよ」
「構いません。オットーと同じ場所へ行けるのなら」
「行っちゃ駄目なんだよ!」
「行かせてくださいっ!」
「二人ともいい加減にしろ!」


88 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:13:13 ID:3jiGgp3P
          3

 背後からの一喝に振り向くノーヴェ。
 チンクが、今まで見たことのないような厳しい目で二人を睨みつけていた。

「姉の教えたことをもう忘れたのか、ノーヴェ。部隊における規律は何よりも重要だと教えたはずだな」
「だけど、チンク姉……あたしは、悔しいんだ。ウェンディも、ガリューも、ルーテシアも……今度はオットーまで。
みんな……いなくなっちまう……」
「お前がいなくなれば私はさらに哀しい。スバルもギンガも、そして父上も、母上も同じだ。それがわからんお前でもないだろう」
「でも……」
「仇は討つ。絶対にだ。しかし、それは今ではない。そうですね、隊長」

 チンクの最後の言葉はエリオに向けられていた。そして、チンクの登場にも振り向かず、ただ俯いていたディードが顔を上げた。

「仇を討つんですか?」

 同時にスバルとヴィヴィオもエリオを見ていた。二人の目が、ディードと同じことを尋ねている。

 エリオは無言で五人を見渡す。

「仇討ちはしない」

 その言葉に、ノーヴェがガンナックルを稼働させる。

「ざっけんなぁあああっ!!!」
「だが、決着はつける」
「なにぃ?」
「倒し、捕らえ、裁判にかける。俺たちは管理局の部隊だ」
「ルーテシアとキャロが殺されても同じ事が言えるのかよっ!」
「ノーヴェっ!!」

 チンクが咄嗟にノーヴェの前に出た。しかし、その頬を叩こうとした手がエリオに捕まれる。

「隊長?」

 エリオはチンクに答えず、ノーヴェを見据えていた。射抜くような鋭い視線がノーヴェを捉える。

「言えないかもしれん。だがな、ノーヴェ、もし最悪の事態になって、俺が復讐だけを考えるようになったら。
……構わないから俺を殺せ、殺してでも止めてくれ」

89 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:13:48 ID:3jiGgp3P
         4

「その言葉。私が受けます」

 セッテが姿を見せた。
 ディードによって連れ帰られたセッテは、当面ここにいることを約束していた。相手と場合によっては戦力となることも承諾しているのだ。
 見ようによっては怒りにも見える鋭い視線が、エリオに向けられている。

「トーレは言った。私たちが勝利すれば、それはトーレの勝利だと。だから、私はトーレの勝利のために貴方の指揮下に入ろう。
そして、貴方が我らをないがしろにしたときは、私が貴方を殺す」
「結構だ。その条件に従って俺の、いや、遊撃隊指揮下に入って欲しい」
「了解した」

 そしてセッテはつかつかと、ディードとノーヴェの間に歩いていく。

「ノーヴェ、ディード。死んだ姉妹の仇を討ちたいのなら、指揮には従うべきです。トーレとオットーを倒した相手に、単独で勝てる気ですか?」

 チンクは、静かに手を下ろした。
 戦力として考えれば、セッテの存在は頼もしい限りだ。ウェンディ、ガリュー、オットー、と空戦系ばかりが欠けたバランスも少しは改善できる。

「……わかりました」

 ディードの言葉に、ノーヴェも渋々振り上げた拳を降ろす。

「しかし、隊長。敵の潜伏している場所をどうやって見つけるつもりですか」
「策はある。少し、待っていてくれ。それから……」

 エリオはケーシェンでの事件を一同に思い出させる。

「出動自体はあるかも知れない。準待機のままでいてくれ」

 やや強引に、エリオは解散命令を出していた。
 不本意ながらも去っていく一同を見送ると、エリオは壁に掛けられている写真に目を留めた。発足時に撮った写真だ。

「……ウェンディ、ガリュー、オットー……」

 そしてキャロ、ルーテシア、トーレ。
 机を殴りつけようとして、思いとどまった。それでも、やりきれない想いは消せない。荒々しく、椅子に座り込んで天井を見上げる。
 もう泣き言は言わない。そう誓ったはずだった。自分に誓ったはずだった。

「エリオ」

 視線を降ろすと、スバルが居残っていた。

「スバルさん?」
「ほんの少しだけ、六課を思い出してみようか」

 スバルが微笑んで、エリオの横に立った。

90 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:14:22 ID:3jiGgp3P
     5

「エリオ、大きくなったよね」

 そして、座ったままのエリオを抱きしめる。

「シャマルさんみたいな事はできないし、ましてや、フェイトさんになんてなれない。だけど、これくらいはできるよ。
だから今は遊撃隊の隊長じゃなくて、六課のエリオに戻ってもいいよ」

 エリオの手が、スバルの背に伸びた。

「スバルさん」
「うん」

 抱きしめられ、エリオは自分がそのころに戻っていくのを感じていた。
 まだ、何もできなかった頃。誰も救えなかった頃。今ならわかる。あの時、ルーテシアを救ったは自分ではない。
キャロであり、ガリューであり、ルーテシア自身だったのだと。
 救ってみせる。そう誓ったはずなのに。
 守ってみせる。そう誓ったはずなのに。

「……みんな、自分の想いで戦っている。それを守るなんて、エリオの傲慢だよ」

 責めてはいない。スバルの口調は優しかった。

「ウェンディだって、オットーだって、守りたいものがあるから戦ったんだ。あたしだって、守りたいものがあるのなら戦うよ」

 強く抱きしめ、そのまま時間が流れていく。

「……これ以上は、キャロに怒られちゃうからね」

 スバルは身体を離した。エリオは座り込んだまま、照れているように俯いている。

「あたしは、エリオのお姉ちゃんのつもりだからね」

 エリオは笑った。

「それって……」
「当然、ウェンディよりもノーヴェよりも下の弟だよ」
「やっぱり」

 スバルは親指を立てて、部屋を出る。
 この騒ぎに参加しなかったディエチが気になっていた。チンクに従うわけでもなくノーヴェに賛同するわけでもなく。
 やはり、ジュニアと一緒にいるのだろうか。
 ふと、足が止まる。

「……これ以上は、キャロに怒られちゃうからね」

 この場合、ディエチを怒る人なんていない。
 考え過ぎかな、とも思ったけれど、スバルはディエチを探すのをやめる。
 スバルが自分の部屋に戻る前に食堂に寄ったとき、非常招集がかかった。


91 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:14:55 ID:3jiGgp3P
          6

 溢れ出すように増殖するコピーの群れ。それは軍と呼ぶにはあまりにも無秩序だった。群れと呼ぶしかない集団だった。
しかし、その破壊力だけを考えるなら、そこらの軍組織などは足元にも及ばないだろう。
まさに、触れるもの全てを喰らい尽くす軍隊蟻のような集団なのだ。
 接近戦は問題外、絶対的な両差の前に圧倒されて終わるだろう。ただ、アウトレンジからの砲撃で数を減らすしかない。
そしてそれも、決して安全策ではないのだ。
 どこからか転送されてくるフェイクマザーは、出現と同時に辺りにコピーをまき散らす。
そして、出現された地区は致命的打撃を受けることになる。
 ガンナーズの砲撃。ライナーズの制圧。クローラーズの蹂躙。
 転送を封じてしまえば侵攻自体があり得ない。それは当然の発想だろう。しかし、全ての街に転送魔法の対応策を用意することは事実上無理だ。
ならば、出現と同時に部隊を派遣して初期の内に叩いてしまうしかない。それが管理局の取り得た対策だった。
 初期対応の遅れによる犠牲は仕方ない。いや、現実にそれを取り戻すことは不可能なのだ。
 その事実は管理局の情報統制にもかかわらず一般市民の間に広がっていく。
 見捨てられる。一般市民の反応はただその一つに収斂されていた。
 最初はほんの小さな火種。しかし、見捨てられるという恐怖と不満は徐々に広がっていく。火種が大火災となるのも、時間の問題だろう。
 この瞬間も、フェイクマザーの転送はどこかで行われているのだ。
 その一つの対応が今、遊撃隊に任されたところだった。駆けつけたスバルとノーヴェが先頭に立っている。
 フェイクマザー周辺に密集するコピー群を二人は睨みつけていた。
 まずは、スバルが動く。

「行くよ、ノーヴェ!」
「おうっ!」

 ウィングロードが伸びると、その横をエアライナーが追走する。
疾走するスバルは右へ、対応するノーヴェは右へ身体を傾け、それぞれの足場も傾き始める。
 傾きはすぐに限界を超え、二人はほとんど地面と垂直になった力場の上を疾走していた。

「表裏!」

 スバルの気合いにノーヴェが声を被せる。

「一体!」

 ウィングロードとエアライナーのそれぞれ裏が重なり合い、一体化する。そして、力場の真ん中を軸に横回転。捻れた道が螺旋のように延びていく。

「メビウスシュート!」

 リボルバーマグナムとガンナックルがうなり、二人の前に立つ者を巻き込むように弾き飛ばす。
 メビウスシュートは敵陣へとぶつかり、蠢いていたコピーたちを弾き飛ばし、小さな空間、すなわち突破口を開く。
 スバルとノーヴェは一旦別れ、左右に散りながらそれぞれの塊へ切り込み続ける。

「バレットイメージ、ボム」

 開けた空間に撃ち込んだディエチの弾丸が中空で破裂する。

「ディバインバスター!」

92 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:15:33 ID:3jiGgp3P
         7

 そして、ヴィヴィオによるなのは譲りのディバインバスターが炸裂。そこへチンク、ディード、セッテが突っ込んだ。
 ランブルデトネイターが制圧空間をさらに広げ、ツインブレイズとブーメランブレードが屍の山を築きあげる。
セッテとディードは、まるで互いに見せつけるかのように撃破数を競っていた。
数こそが、敵を葬った数こそがトーレへの、オットーへの手向けになると言わんばかりに。
 そして、開けきった空間をエリオが駆け抜ける。
 その反対側、それぞれ半周して背後へ回ったスバルとノーヴェが再びメビウスシュートを展開する。
 前後からの挟撃。ストラーダによるフェイクマザーへの一撃。それで終わりだ。
 フェイクマザーさえ破壊すれば敵の増殖はない。残るは掃討のみとなる。
 フェイクマザーの残骸を確保し、スバルとノーヴェに合流しながら、エリオは隊員の様子を確認した。

「掃討の命令はいらないか」

 セッテとディードの手は止まらなかった。何も言われずとも、残ったコピーを駆り立てている。

「中止命令の方が無茶だろうな」

 ノーヴェが訝しげに言う。

「本当に、敵の居場所がわかるのか? 目星はあるのか?」

 エリオの答えを待たず、ノーヴェは拳を苛立たしげに残骸に打ち付けていた。

「このまま続けば、消耗するのはこっちだ。疲れ果てたところに本体が出てきたら、あっさりと負けちまうぞ。ああ、あたしは待つさ。
チンク姉が待てって言うのならいつまででも待ってやる。だけど、ディードとセッテは長くは待たねえぞ」
「長く待つなら、失敗だ」
「失敗って、何かやってるのか?」
「ルーテシアがむざむざ捕まるだけと思うか?」

 ノーヴェは首を傾げる。ディエチとジュニアからの話を聞く限り、想定外の展開のために捕らえられたとしか思えないではないか。

「俺は、ルーテシアを信じている。そのうえ、キャロも一緒なんだからな」
「だけどさ」

 ノーヴェは、誰もが気付いていながらあえて口には出していないことに言及する。

「フェイクマザーの転送、見覚えのある魔法だぜ?」
「ルーテシアがAMF下にいない証拠だな」

 即座に答えるエリオを、信じられないものを見た目つきで眺めるノーヴェ。

「お前、そこまでわかってるのに……ルーテシアが寝返ったとは言わねえけど、明らかに強制されているんじゃねえのか。いったい、何をされてるんだよ!」
「敵がスティンガーを使ったら、お前はチンクを疑うのか?」

 ノーヴェは二の句が継げなかった。
 エリオの言うとおりだった。
 ノーヴェがチンクを信じるというのなら、エリオがルーテシアを信じてはならない理由などない。

93 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:16:06 ID:3jiGgp3P
         8


 一糸纏わぬ姿で後ろ手に縛られたルーテシアが、転送魔法を強制的に発動させられていた。
 発動する度に、準備されたフェイクマザーが一つ一つ消えていく。
 転送魔法の発動、その前後だけ痛みは消えるのだ。
 確かに魔法自体は封じられていない。しかし、大規模な魔法を使うほどの精神集中は事実上不可能だった。
今のルーテシアにできるのは、せいぜいインゼクトを呼び出す程度だろう。白天王どころか、地雷王ですら今は呼び出せない。
 そして、キャロはただ放置されていた。キャロに痛みは与えられていない、ただし、召喚魔法を使おうとすれば話は別だ。
ルーテシアと同じ苦痛に苛まれることになる。つまり、自らの意志で苦痛を呼び込まなければならないのだ。今のキャロは、自らの意志でヴォルテールを喚び出すことはできない。
 そして今のキャロには、何の危機もないのだ。ただ、牢獄から出られないだけ。命の危険は何もない。だから、ヴォルテールが現れることはない。
 切り札である召喚竜、召喚蟲のない二人には、脱出の術はないのだ。
 キャロはただ、ルーテシアの苦痛を少しでも減らすための世話をするしかなかった。
 そして、その様子を楽しそうに見ている三人。 
クアットロがルーテシアの状態をローヴェンに伝えている。
 予想通りと言うべきか、ルーテシアは命じられた以外の魔法を使っていた。

「とはいえ、この程度の魔力だと、召喚できるのはインゼクトのみですわ。脱出には使えません。考えられるとすれば、情報の流出だけどぉ……。
どう思う? ハーヴェストちゃん?」
「魔力が微弱すぎて、召喚できる時間も限られます。情報など伝える暇はないでしょう。
そもそも、インゼクトは情報を伝達する機能などほとんど持っていません」
「召喚先は?」

 ローヴェンの問いに、ハーヴェストが答える。

「多くは遊撃隊ですが、精神集中が難しいようで、ランダムに召喚先が散っていますね。遊撃隊以外には複数回召喚された場所はありません」
「無様なあがきねぇ。裸まで晒して、恥ずかしいお嬢様だこと♪」
「また一つ、ロストロギアが転送されました」
「あら♪ また一つ、街が消えるのね」
「そろそろ管理局側も対処を覚えてきているようです」
「じゃあ、パターンを変えようか。次は、はやてとなのは、それからガンナーズ、全魔力を砲撃に替えて、最後はSLBだ」
「転送一回で街が一つ。楽な話ですわね♪ ただ、苦しむ姿か見られないのが残念ですわぁ」
「連中を始末した後なら、いくらでも見られるさ。今は消耗させておこう」


94 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:16:38 ID:3jiGgp3P
          9

 セインは、日課となった面会に来ていた。

「ウェンディ。ジュニアがドーターズとボードの修理を終えたよ。早く使ってあげないとみんな寂しがってるよ」
「ガリュー。お嬢様はまだ見つからないんだ。だけど、エリオは絶対に見つけ出して助け出すよ。だから、早く直って迎えなきゃ駄目だよ」

 そして、新しく並んだ二つのポッドへと。

「オットー。ディードもセッテも貴方のおかげで無事だよ」
「トーレ姉様。お久しぶりです」

 ハーヴェストはオットーとトーレの身体を残したまま帰っていった。
 それが密かに回収され遊撃隊に届けられたのは、ディードがセッテを連れ帰った翌日だった。連れ帰ったのはウーノだった。
 そしてウーノは、静かに投降した。管理局ではなく、遊撃隊に。
 セインは、車椅子を押しているウーノに振り向いた。

「ウーノ姉、もういいよ」
「それじゃあ、ラボに戻りましょうか。ところで、貴方の身体はいつ治してもらえるの?」
「ポッドに入ればすぐに治るんだろうけど、あたしは自由の身でいないと拙いから」
「クアットロに捕らえられるから?」
「そう。クア姉が本物のディープダイバーをコピーできるようになったら、戦力差が開きすぎるからね」

 ポッドの中では、襲撃を受けたときにどうしようもない。意識さえ保って自由の身でいれば、逃げることに徹したセインがが捕まる心配はない。

「そろそろ……」

 言いかけたウーノが止まる。

「どうしたの、ウーノ姉?」
「ガリューさんが呼んでるわよ」
「え?」

 セインはガリューを見上げた。特に今までと変わったところなど見受けられない。

「よく見なさい」
「よく見ろって言われ……あ」

 動いている。目が、いや、瞼が動いている。そもそもガリューには人間と同じ意味での瞼は必要ない。しかし、強烈な光から目を守るためのカバーとして、外骨格による可動膜が存在しているのだ。

「あれはいったい……」
「あの頃、お嬢様は内緒話をよくしていたものよ。ガリューさんとの他愛のない内緒話をね」


95 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:17:14 ID:3jiGgp3P
      10

 ウーノは思い出すように目を閉じた。

「私もドクターも気付いていたわ。きっと、ガリューさんも私たちに気付かれていることを知っていたでしょうね。内緒だと思っていたのはお嬢様だけ」
「あの瞼が?」
「暗号の一種よ。瞼を動かす回数がその暗号になっている」
「お嬢様がそんなことしてたんだ」
「よく悪口を言っていたわよ」
「え? 誰の?」
「さあ。眼鏡とかチビとか、根暗双子とか能天気とか、誰の事かしら」
「うわぁ……」
「ドクターは面白いから放っておけって……お嬢様には甘いところがあったから」

 ということは、今のガリューは何を伝えようとしているのか。

「何かの数字……ああ、座標ね、だけど、データが足りないわ」
「ガリューは、どっからそのデータを」
「ガリューは瞼の開閉の回数で暗号を伝えたのよ。そしてルーテシアは、遊んでいるふりをしてガリューに暗号を伝えていたのよ」

 セインはルーテシアの昔の様子を思い出そうとしていた。ルーテシアが遊んでいたと言っても、ウェンディや自分がちょっかいを出していた記憶しかない。
一人で遊んで……

「……インゼクト?」
「そう。インゼクトの数を暗号にしていたのよ。お嬢様は、クアットロの目を盗んでインゼクトを召喚しているようね。それも、何度も」
「だけど、召喚がばれてないわけないと思うけど」
「ばれてもいいのよ。インゼクト自体には何もできないのだから。苦し紛れで召喚して、時間切れで何も伝えられずに消えた。
そう思っているでしょうね。あの子のことだから」
「だけど、暗号はインゼクトの数そのもの……」
「そう。これで、クアットロの鼻をあかしたことになるのかしら?」

 ならなければならない。セインはそう思った。

「だけど、データが足りないわ。それに、ここにばかり召喚していたら、いくらクアットロでも怪しむでしょうね」
「余所に召喚すればいい。お嬢様の知り合いなら、いくらでもいる。その人の目の前に現れたインゼクトの数だけ聞けば、暗号は解けるんでしょう?」
「ええ」

二人は、ラボへと急ぐ。
 フェイト、はやて、なのは、そしてティアナ、騎士カリム、ゲンヤ、次々と報告されるインゼクトの目撃証言。
 ウーノは、これだけあれば特定できると断言した。
 そして、一つの座標が導き出される。
 帰還したエリオに早速伝えられる。
 エリオはすぐにその座標を本部に送った。

96 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:17:50 ID:3jiGgp3P
    11

「出動準備だ。全員、出るぞ。シャマルさん、一緒に来てくれますね?」
「勿論。向こうでは、きっとはやてちゃんも合流するわ」

 セッテとノーヴェが待ちかねたように隊長室に姿を見せる。

「わかってる。命令待ちだ。事が事だけに、俺たちの部隊だけで出張ることはないだろう。
できるだけ正面に回してもらえるようにはするつもりだから、待っていてくれ」

 そして数時間後、本部からの命令が下される。


 待機命令
 すぐにエリオは理由を尋ねた。
 その答えも即座に返ってくる。


 要は、作戦の邪魔ということだった。
 座標地点は幸運なことに無人世界。ならば次元航行艦隊で軌道上から艦砲射撃。それでおしまいだと上層部は判断したのだ。
 終わるわけがない、とエリオは判断した。おそらく、向こうでははやてやクロノが同じ事を具申しているに違いない。
 ゆりかご戦のときも、次元航行艦隊の派遣を察知して、その展開よりも早く軌道上に出るという作戦をとっていたのだ。
今回に限り次元艦隊の存在を忘れているとは思えない。確かに、居場所を知られたとは思っていないだろう。
 しかし、艦隊の展開にどれほどの時間がかかると思っているのか。
クアットロとローヴェン、そしてハーヴェストがフェイクマザーの一台を持って逃走すればそれで全てが振りだしに戻るのだ。
 拠点破壊はこの際どうでもいいのである。
 やるべき事は中心人物の確保である。
 そして、エリオは言外の答えを聞き取った。

「遊撃隊の戦闘機人がクアットロのように裏切らないとどうして言えるのか?」

 あまりにも単純すぎて、エリオには答えられない。答えるとすれば、エリオに言えることはただ一つ。

「彼女たちは信用できます」

 それだけなのだ。

「妻と恋人を捕らえられた隊長の行動を信用しろと?」
「君たちは、監視下に置かれているのだよ?」
「勝手な出撃は反乱と見なす」
「名目は待機だが、事実上の謹慎と思ってくれて構わない」


97 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:18:29 ID:3jiGgp3P
       12

 疑いは今に始まったことではない。その兆候はすでに気付いていた。
 補給があからさまに遅れていた。細かい作戦には支障がないが、ローヴェンとの決戦と考えるのならば充分な補給は必要だった。
まずは、魔力のカートリッジがない。そして燃料も底をついている。言ってしまえば、備蓄の食料すらほとんどない。
修理用の資材はドーターズとボードの修理で使い切っている。残っているのは戦闘中応急用の資材だけだ。

「買い物に行くか」

 ここまで来て逆に口調から緊張感の消えたエリオの言葉に、スバルは笑う。

「あ、あたしはチョコポッド」
「……ま、食料もいるな」

 チンクが首を振った。

「冗談はさておいて、金で買えるものは何とかなるとしても、カートリッジはどうにもならん」

 シャマルはカートリッジを作れるが、基本的にベルカ式対応である。純正ミッドチルダ式デバイスのヴィヴィオにとっては使いづらい。
そのうえ、量産も期待できない。
 さらにディエチのようにデバイス化した武装には、カートリッジがそれなりに必要になっている。

「資材だって、市販されているものは使いにくい。そもそも、買いに行けば監視員とやらにバレバレだ」
「関係ねぇ。今すぐ出撃だ。補給があろうがなかろうが、あたしは行くぞ」

 ノーヴェとセッテは新しい戦闘服を着込んでいた。

「これ以上待てという指示には従えない。ハーヴェストの居場所がわかったのなら、私は行く」
「セッテ、ノーヴェ!」
「例え、ウーノ姉様の言葉でもです」
「あたしは反対だよ。復讐する。だけど、それは自殺するって意味じゃない」
「ディエチ、てめぇ!」
「ノーヴェ。ウェンディやオットーは、貴方に死んで欲しいと思っているの? 違うよ、仇を討ってほしいのと死んで欲しいのとは違うよ」
「……いいさ。てめえはジュニアと恋人ごっこでもしてろ。あたしは誰がなんと言っても行くからな!」

 笑い声が聞こえた。
 誰もいない部屋の隅。

「クアットロ!?」


98 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:19:09 ID:3jiGgp3P
       13

 全員が構える。

「ちょ、ちょっと待った。ごめん、驚かせてごめん。ノーヴェが相変わらずだから、つい、ね」

 声に気付いたスバルが駆け寄った。

「ティア!」

 部屋の隅、オプティックハイドを解いたティアナが立っていた。

「やっほー!」

 飛びついてティアナの手を取り、振り回しかけて、スバルは制止される。

「ストップストップ! あたしはギンガさんじゃないんだから、あんたに本気で振り回されたら死んじゃうわよ」
「あは、ごめん。でも、ティア、どうしたの?」
「こっちの状況を聞いてね。補給物資持って駆けつけたわけ」
「補給物資って、ティアが?」
「まさか。建前上補給しないって訳にはいかないでしょう? 補給は準備していたけれど、輸送のミスで届かなかったっていうシナリオが準備されてたわけ。
だから補給物資だけを頂いてきたのよ」
「ああ、それで……」

 スバルはそこでようやく、ティアナの後ろで所在なさげに立っている男に目を向けた。

「ヴァイスさんも」
「……スバル。お前、ティアナが何も言わなかったら最後まで無視する気だったのか?」
「あ、いや、そんな、それは別に」
「人がせっかく危険な橋を渡ってヘリ飛ばしてきたってのによぉ…」

 ヴァイスのわざとらしい嘆きを余所に、ティアナはエリオに詰め寄った。

「とにかく、ヘリに積んでる荷物をとっと降ろして。カートリッジに資材、食料、必要になりそうなものはたいがい持って来たわよ」
「ありがとうございます。しかし、どうやって?」

 監視されているというのはハッタリではない。ヘリの出入りすらも見張られているはずだ。

「補給物資は書類の操作で何とかなったわ。その辺は本部付きのグリフィスさんが何とか誤魔化してくれているはずよ。あとは、得意技でね」
「ティア、そんなに?」

 思わず驚きの声を上げるスバル。ヘリ一台が監視の目を隠れて飛ぶ。そこまでの幻術をティアナが使えるというのは初耳だ。

「敵を欺くにはまず味方から。あたしの幻術の限界は、例えスバルやエリオでも教えられないわよ」

99 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:19:44 ID:3jiGgp3P
       14

 肩をすくめて、エリオはジュニアに補給のチェックを命じた。

「これで準備は整った。礼を言いますよ。あと、できればお願いが…」
「ヘリなら置いていくぜ」

 ヴァイスが答える。

「元々そのつもりで半分かっぱらってきたようなもんだ。好きに使ってくれ。優秀なパイロット付きだぜ」
「パイロットって、ヴァイスさんが?」
「当然じゃない」

 ティアナが言い、ヴァイスがうなずく。

「待ってください。これは僕たちの戦いです。お二人にはそんな命令は出てないでしょう?」
「おい。それを言うなら、おめえらだって出撃命令は出てないだろうよ」
「監視がついているのは本当よ。のこのこ出撃したら、反乱扱いで帰る場所がなくなってるわよ」
「それじゃあ、どうして補給なんか」
「言ったでしょう? 敵を欺くにはまず味方から」

 まさか、とスバルは呟いた。
 ウーノがうなずく。

「なるほど。戦力にならない私とセインだけが残り、出撃しないメンバーにすぐ臨時休暇を出せば、執務官の負担はかなり減らせますね」
「さすが、スカリエッティの秘書さんだ。わかってらっしゃる」

 ヴァイスは恐ろしげに言う。そして、ティアナは誇らしげに胸を張った。

「早く支度しなさい。あんたたちの帰るところは、私が守ってあげるから」

100 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:20:27 ID:3jiGgp3P
          15

 ヴィヴィオはデバイスをじっと眺めていた。
 レイジングハートとバルディッシュのそれぞれ一部を受け継いだデバイス、デュアルストライカー。

「行けるよね、ストライカー」
「Yes,Lady」(はい、お嬢様)

 早く、ストライカーにmasterと呼ばれたい。それがヴィヴィオの密かな目標でもあった。
今のところヴィヴィオがマスターであるのだが、その力が充分ではないためか、未だにLadyと呼ばれているのだ。

「まあ、お父さんとお母さんのマスターがそれぞれなのはさんとフェイトさんだから、その辺りはシビアかもよ」

 と言ったのはシャーリィである。
 ヴィヴィオは戦いに出向く前にデバイスに語りかけているのだ。

「残れ」

 とエリオには言われた。

「おそらく、この戦いでは君を守る余裕はない。だから残れ。ティアナさんと一緒に俺たちの場所を守っていて欲しい」
「私は、遊撃隊の一員じゃないんですか?」

 もし、戦力として足手まといになる、その判断なら残して言ってくれて構わない。いや、残されるべきだろう。
しかし、例え一撃でも相手に放つ砲撃を増やすことができるのなら、連れて行って欲しい。
 ヴィヴィオはそう訴えた。
 エリオはただ、うなずいて配置を伝えた。
 ディエチと二人での砲撃支援である。後方支援ではない。その余裕などこの人数ではあり得ない。砲撃支援の後、近距離射撃に切り替えて突入するのだ。

「行こう、デュアルストライカー」
「Lady,You win with me」
「うん」


101 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:21:02 ID:3jiGgp3P
       16

 ヘリに乗り込むのは、ヴィヴィオが最後だった。
 すでに、先頭要員以外は全員建物から退去している。このヘリと新しい補給物資は、退去した者たちにも内緒だ。
 ティアナとヴァイスもヘリに乗り込む。ティアナはギリギリまで幻影でヘリを隠した後、すぐにここに戻ってきて隊員の幻影を発生させるのだ。
戻ってくるためのバイクもきちんと用意してある。
 一方では、ウーノとセインの見送りにエリオが応対していた。

「ティアナさんの幻影だけでいつまで保つかはわからない。ちょっとでも疑いをもたれて中に入られたらアウトだからな」
「そのときは、私に幻影を被せてもらえれば何とかします。それに音声だけなら誤魔化せますから」

 そう言うとウーノはエリオと同じ声を出す。驚くエリオ。

「それに、視察をお願いしてあるからその間は時間が稼げるよ。まあ、これは、ウーノ姉のアイデアだけど」
「視察だって?」
「騎士カリムにお願いしたんだよ。あと、うまくいけば陸からゲンヤさん、海のハラオウン提督も。
露骨に身内で回すのは拙いかも知れないけれど、直接見られるよりはマシだからね」

 ウーノがエリオの手を取った。

「エリオさん。偽のドクターと、偽のナンバーズを止めてください」

 偽のドクターはわかる。しかし、偽のナンバーズとは…

「姉妹をあっさりと殺してしまうような女を、私は姉妹とは思いません」
「ハーヴェスト一人……じゃないんですね」
「偽のナンバーズは、二人です」
「わかりました」

102 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:21:42 ID:3jiGgp3P
          17

 ヘリの存在は、すぐに知られた。いや、元々隠す意志はない。
 そんな時間はないのだ。
 ローヴェンは笑う。こんなに楽しいことはない。まさか、正面から雌雄を決するなんて。

「……転送は中止だ。全ロストロギアを配置しろ」
「切り札はどうします?」
「当然、準備だ」
「わかりましたわ」

 クアットロを準備に向かわせ、ローヴェンはストラーダを手にした。

「ハーヴェスト、出るぞ。お前の標的はわかっているな?」
「私はナンバーズを狩るために作られました」
「そう。僕は……そうだな、おぼっちゃまと決着をつけるか」


103 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:22:22 ID:3jiGgp3P
            18

 次回予告

ディエチ「あの時、あたしたちがやってしまったこと。その本当の罪に気付いたのは、ジュニアと出会った後だった。
 なのはさんにとってのヴィヴィオの存在の重さは、きっと私にとってのジュニア以上なのだろうと気付いてしまった。
 だから、私は嬉しい。私はやっと、罪を贖うことができるのだから。
 あたしは誓っていた。生涯に一度は、ヴィヴィオを助けてみせる、と。
 今が、そのときなんだ。
 ジュニア、お別れです。
 次回、魔法少女リリカルなのはIrregularS 第十話『ディエチの微笑 ヴィヴィオの涙』 僕たちは進む。IRREGULARS ASSEMBLE!」

104 名前:野狗:2008/12/14(日) 00:22:57 ID:3jiGgp3P

 以上、お粗末さまでした。


 中書き
 Q:なんでルーテシアは裸で縛られているんですか?
 A:書き手の趣味

 あと、デバイスの英語は笑って許してください

105 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 00:33:28 ID:IjCNNIg/
GJ、だが「買い物に行くか」と見て
エリオが軍放出品ストアーにブルドーザーで突っ込む光景が脳裏に浮かんで吹いた

「いったい何が始まるんです?」
「第3次大戦だ」

106 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 01:09:36 ID:72+gzp2e
B・A氏、スカリエッティGJですね。
クアットロがやるとえげつないんですが、スカがやると爽やかなのは何故?
どんどんやっちゃってっください。
この分だと、エリオとルーテシア以外、全員死亡というリリカル世界初の偉業達成か?
そうなると新シリーズ「魔法騎士リリカルエリオ」始動ですね。

野狗氏GJ
いよいよ決戦ですね。


両氏の作品で活躍するナンバーズが絡んでない作品を書いてますが、7章で120枚
という所まで来ましたが、全13章予定なので、まだ投下できません。
というか、このすばらしい流れに棹を差すのはKYの極みです。
楽しくROM専します。

107 名前:サイヒ:2008/12/14(日) 02:02:21 ID:w9tUKYtc
みなさんGJだが、今スレまだエロがないよエロが。

ということでクロノ×カリムの投下など。
いつもは不倫ばっかりな俺のクロカリですが、今回はかなり違うんで以下の注意書きどうぞ。

・ミッドチルダでは多重婚が法律で認められているという設定。
・そしてクロノはエイミィ、フェイト、カリムと結婚。

ではどうぞ。

108 名前:第三婦人のささやかな悋気:2008/12/14(日) 02:03:15 ID:w9tUKYtc
 初めて間近で眼にしたXV級戦艦は、とてつもなく大きかった。自分の見知っている戦艦の数倍は大き
い。圧倒されるような気分で、カリムはしばし言葉を失った。

「管理局内でも一、二を争う大きさですよ。前にハラオウン提督の旗艦だったアースラと比べて、縦横両
方二倍の大きさがありますから」

 案内役となってくれたアレックスというクルーが説明してくれる。
 内部に入ってからも、あちこちのエレベータを上ったり降りたりで目当ての場所までなかなかつかない。
もしこれ以上大きな戦艦が建造されるなら、それこそ内部移動にテレポーターの設置を検討せねばならな
いだろう。

「しかし騎士カリムがクラウディアに来るのは初めてでしたか? 意外ですね」
「そうですね。いつもはクロノ……提督が教会に来られますし。私も忙しくあまり教会を離れられない身
ですから」

 それ以外にも、理由があった。クラウディアにはたいていの場合、カリムと同じぐらいクロノの身近な
女性がいるのだ。微妙に顔を合わせづらく、カリムは自分から避けていた。

「それで提督は、今どちらに?」
「艦長室ですよ。今は夕食後の休憩中じゃないですかね」

 なら仕事の話だけではなく、少しぐらいは私的な会話もできるだろう。ここしばらく航海に出ており会
えなかった愛しい人との会話を思えば、それだけでカリムは口元は綻んだ。
 今日の用件は、書類を届けてクロノの返事を聞いてくるだけの仕事である。使い走りの修道士でもでき
そうな仕事を、わざわざ自分で引き受けた甲斐はありそうだった。
 だがその笑みは、艦長室の前まで来たところで強張る。
 ちょうど艦長室から出てきた人物がいた。長く伸ばした金髪の毛先を黒いリボンでまとめた特徴的な後
姿は、クラウディア所属の執務官フェイト・T・ハラオウンに他ならない。

「あっ!?……き、騎士カリムにアレックス!? どうしてここに……」
「…………先月の合同捜査にかかった実費の件についてですが、なにか」

 二人を見たフェイトはひどく狼狽した。視線が落ち着きなくさ迷い、手はばたばたと襟元やら裾やらを
身づくろいする。頬や首周りがほんのり染まっているのは、きっと予想外の人物に出会った驚きによるも
のではない。
 さらにカリムの眼は、フェイトが振り向いた時に翻った髪の下、首筋に赤い鬱血したような痕があるの
をばっちり目撃していた。
 カリムの機嫌は急転直下で転落していき、視線がひとりでに険しくなる。

「あ、あ、あのっ……私急ぎの仕事があるから……これで」

 あたふたとフェイトは逃げるように去っていった。後ろではアレックスが、あっちゃあ、と顔を覆って
呟いていた。
 それらの一切を無視して、カリムは艦長室に踏み込む。

「カ、カリム!?」

 中では中で、部屋の主であるクロノがフェイトとそっくりなリアクションを見せてくれた。
 部屋には漂っているのは、生臭い雄と雌の匂い。そしてクロノの提督服の襟元は乱れており、なにより
も、首筋にフェイトと同じ赤い斑点のようなものがある。
 それらを眼にしたカリムは、教会騎士としての立場を一瞬で捨て去り、彼の伴侶の一人として頬を引き
つらせながら口を開いた。

「教会に来る時間は無いのに、フェイトさんといやらしいことをする時間はあるんですね、クロノ」

109 名前:第三婦人のささやかな悋気:2008/12/14(日) 02:04:24 ID:w9tUKYtc
          第三婦人のささやかな悋気




 ミッドチルダで多重婚が認められていることに、特に深い理由はない。
 まだそれこそ王や皇帝による統治が行われていた古代から、王族間だけでなく民間でも当たり前のよう
に男性が複数の女性を娶ることは行われており、それが現在にも続いているというだけのことである。
 新暦に入ってからも一夫一妻制を提唱する宗教や政治家が幅を利かすことは起こっていない。そもそも
聖王からしてあっちゃこっちゃに子供をこさえた逸話を残しており、伝説の三提督の一人であるラルゴは、
今もなお孫より若い息子や娘を数ヶ月に一人のペースで量産中である。
 象徴や重鎮がそんな具合だから、聖王教会も管理局も男女の恋愛に関してはひどくルーズなものだった。
 もっとも、多くの妻を持つということはイコールして養う口が増えるということであり、誰もが誰もし
ているというわけではなくかなり少数派な部類にはなる。
 しかし法律的に認められていることは確かではある。だから、誰それが複数の嫁を持ったと聞いて「い
やいや、お盛んなことで」と冷やかす者はいても、あからさまに誹謗中傷の的にされることはない。


 ただし、世間的に認められているのと、当事者が割り切れるかは、また別の問題である。



          ※



 提督室に一切の会話は無かった。
 カリムは出されたコーヒーに口もつけず、カップの中の水面に眼を落としていた。
 クロノはクロノで、眉間に深いしわを刻んだままカリムの持ってきた資料に眼を通している。読む速度
がずいぶんと遅いのは、じっくり内容を吟味しているからではないだろう。
 たぶん今ここにクルーが来れば、即座に回れ右して退散するぐらい重苦しい雰囲気。
 この空気を作り出したカリムからして、正直なところ数分前からやり直しをしたいとすら思っていた。

(…………本当にどうしたものかしら)

 カリムの世間的な立場は、教会騎士や管理局少将といったものの他に、クロノ・ハラオウンの第三婦人
というものがある。正妻はエイミィ・ハラオウン。第二婦人がフェイト・T・ハラオウン。
 皇帝のハーレムではないので、結婚した順序に正妻、第二、第三と決まっていくだけであり、妻の間で
上下の差は無い。
 しかし、カリムは他の二人に対して軽い対抗心のようなものを感じていた。
 フェイトとエイミィは十年以上の知り合いであり、結婚前から姉妹のように仲睦まじかったと聞いてい
る。
 他方カリムはといえば、二人とろくに会話したこともない。フェイトとは機動六課時代に仕事上で数回
話しただけ。エイミィに至っては、結婚式の前と当日にどうぞこれからよろしくと挨拶した程度である。
 ほとんど知らない女性が夫と肉体関係にあるというのは、なにやら寝取られているような気がしてあま
り面白いものではない。
 そういう普段の嫉妬心が長らく会えなかった間に増えていき、そこに偶然とはいえクロノがフェイトと
抱き合っていた直後に出くわしたせいで、つい痛烈な皮肉を飛ばしてしまった。

110 名前:第三婦人のささやかな悋気:2008/12/14(日) 02:06:21 ID:w9tUKYtc
(いっそのこと、あのまま怒り狂ってた方がましだったのかしら)

 それはそれで、自分が徹底的に狭量な女になり下がるだけだが。
 一つだけましなことがあるとするなら、クロノが見苦しくあれこれ言い訳や謝罪をしなかったことであ
る。自分が愛した男には、常に毅然としていてもらいたい。
 とりあえず間を置き直そうとコーヒーをすすってみたら、カリムの苦手なブラックのうえに冷めたくなっ
ており逆に気分が落ちた。
 どうにも流れが悪い。

(これは諦めて出直した方がよさそうね)

 そう思いつつも席を立つ踏ん切りがつかないままでいると、読み終わったらしくクロノがとんとんと書
類の端を叩いて揃えた。

「この件に関しては承りました。問題ないようですので、会計課に回しておきます」
「はい、お願いします」
「さて、それで」

 クロノがきっちり締めていたネクタイを緩め、言葉遣いも変えた。

「すまない。なかなか君の所に行ってあげられなくて」

 だから今すぐ教会に行って今晩は泊まっていく、と続けば理想的なのだが、そんなわけがなかった。

「そして、まだしばらく行けそうにない。仕事がかなりあるし、それが終わってからもエイミィの番だ」
「その割には暇そうでしたね」

 いけないと分かっていても、つい皮肉が口を突く。

「…………勤務中はフェイトとああいうことばかりしているわけじゃない。ごくごくまれに、だ。部下の
眼があるし、何より不公平になる。僕はクラウディアに、フェイトの近くにいる時間が一番長いんだから」
「…………」
「もし誰か一人を特別扱いするなら、僕はその相手とだけ結婚している。……あんな光景を見た後じゃ、
信じられないかもしれないが」
「いいえ、分かっています。あなたがそういう人だということは」

 そしてそういうところも含めてクロノという男を愛したから、彼の唯一の人になれないことを知ってい
てなお、妻となることを望んだのだ。
 ただ、分かっているのと納得するのは別次元の問題である。
 ここらが引き下がり時かと思いつつ、胸の内のもやもやした部分が多少強引な手を使わせた。

「けれどクロノ、女性にとって愛しい人の顔が見られる場所にいるということは、それだけでもう特別扱
いなんですよ」

 椅子から立ち上がり、カリムは机を回り込んだ。

「だからといって、フェイトさんと別れろとか提督を辞めてくれとはもちろん言いません。…………けど、
今日ぐらいは私も特別扱いしてください」

 座ったままのクロノに、カリムはそっとしだれかかる。
 間近から覗き込む漆黒の瞳。唇どころか顔のあらゆる位置でも触れ合えそうなぐらいの距離で、カリム
はそのまま肯定の気配が出るのを待つ。
 数秒にも数分にも思われる沈黙の後、クロノは観念したように瞼を閉じてそのまま唇を重ねてきた。
 触れるだけの、互いの温度を確かめ合うかのような柔らかな口づけ。だがすぐに、どちらからともなく
舌を伸ばしあっていく。
 唇を離しても、舌先で舐め合い、空中で絡ませ合う。
 濃厚なキスを交わす二人だが、カリムはもっと先まで進むつもりだった。
 抱擁の手を強め乳房から腿までをぴったり密着させることで、キスだけですます気はないと伝えてやる。
ただ、少しだけ残しておいた理性が一旦キスを止めさせた。

111 名前:第三婦人のささやかな悋気:2008/12/14(日) 02:08:02 ID:w9tUKYtc
「クロノの仕事が忙しいなら、大人しくこのまま帰ってもいいんですよ」
「……正直仕事は徹夜でも厳しいんだが」

 ちらりと閉じていた眼を開けるクロノ。

「カリムがこれ以上したいと思っているのなら、なんとかするさ」

 気遣いに溢れた言葉に微笑み、自分の仕事のこともきれいさっぱり忘れて、カリムは徹底的にクロノに
甘えることに決めた。



          ※



 艦長室と呼ばれる部屋は、実際には数個の部屋が集まって構成されているもので、執務をする部屋以外
に風呂場なども付いている。
 そのうちの艦長が就寝する部屋で、カリムはクロノの股間に顔を埋めていた。
 ファスナーの間から出ている赤黒い肉の棒には、わずかに湿気が感じられる。舌を這わせれば、酸い味
がした。行為の後にクロノの性器を口で洗ってあげる時と同じ味。
 しかし今付着している残滓は、自分ではなく別の女性のものである。正直舐めるのもあまり好ましくな
いが、そのまま挿入されるのはもっと御免こうむる。カリムの内側を汚していい体液は、クロノの唾と精
子だけだ。
 カリムの心にあるフェイトやエイミィに対する対抗心はささやかなもので、時折クロノに皮肉を言って
いれば紛れるぐらいのものである。
 しかしクロノと交わり本能だけの存在になる時には、自分でも嫌になるほどこうして表に出てきてしま
うのだ。

「んく、んぷ……ん、んっ」

 喉の奥まで咥え込み、舌を巻きつけ念入りに擦っていく。ぐちゅぐちゅという音が、自分の口内から耳
に入ってきた。
 酸素が足りなくなり肺が苦しがるが、それ以上に一月以上会えなかったクロノが足りない。いっそう舌
の動きをカリムは強めた。
 いつも以上念入りに舌で清めていくうち、苦味が混じり出す。洗うだけでなく、準備も万端整っていた。
 一度口から出して手で優しくしごきつつ、カリムはクロノの上に跨る。騎乗位の体勢だが、まだ挿入す
るわけではない。

「私だけじゃなくて、クロノも愛してください」

 そっと、カリムの胸に手があてがわれた。大きさを確かめるように指が動いて、胸の形を変える。
 カリムは青色の管理局高官の制服、クロノは提督服のままベッドに上がっている。厚手な上に枚数が多
いのでクロノの優しい手の動きは快感を生むまでには至らない。
 もどかしさを覚え、カリムはクロノの手の上から自分の手を重ねた。乳房を愛するのではなく握るよう
に力を込める。
 途端、響いた刺激に身体の芯が蕩けた。

「んああっ、ん……」

 クロノがいない夜、独り寂しく慰める時と同じぐらいの強さと動き。なのに、全く違う。伝わる官能と
温かさが、全く違う。

112 名前:第三婦人のささやかな悋気:2008/12/14(日) 02:09:42 ID:w9tUKYtc
「カリム、しわになるからせめて服を脱いでから……」
「あら、クロノは着たままでするのが好きなのに?」
「…………エイミィもフェイトも似たようなことを言うんだが、その間違った認識はいったいどこから来
てるんだ?」

 クロノはぶつぶつこぼすが、カリムは半分も聞いていなかった。クロノが口にした二人の名前を聞いて、
先刻までこの場所でクロノの腕の中にいたのは別の女性だったことを、改めて思い出していた。
 嫁達が雁首そろえて相談したわけでもないが、海鳴市の家はエイミィ、クラウディア内とミッドチルダ
の家はフェイト、教会はカリムとそれぞれのテリトリーが暗黙の了解で決まっていた。
 だから本来はフェイトだけが抱かれるはずの寝台の上でクロノと交わることには背徳感と優越感があり、
カリムの心に卑しい悦びを覚えさせ、秘裂を濡らす度合いを速めていた。ほんの少し胸を揉まれただけな
のに、ショーツはもうぐっしょり濡れている。
 股間と脳内が、愛撫して欲しいとじんじん疼いてたまらない。それも指や舌などではなく、もっと直接
的なもので愛してもらいたい。

「もういいですから、早く……」

 カリムの声と顔色だけで身体ができあがっていると分かったのか、クロノは胸に当てていた手を離す。
 カリムはそのまま寝台の上に寝転び、上にクロノが覆いかぶさる先程までとは逆の体勢となった。
 自分で下半身の衣服を脱いでいくカリムだが、全部脱がずに膝の上で止めてしまう。必然的に腿は挿入
に支障が無いぎりぎりしか開かない。
 クロノが怪訝そうな顔をしながら最後まで脱がそうとするが、カリムは首を振って制止する。

「どうせ上は着たままですから、下も履いたままで」

 どことなく憮然とするクロノだったが、従ってはくれた。
 自分も服を脱がずチャックから出した赤く充血した肉棒をカリムの股間に当てる。
 先触れの液同士がくっついて、くちゅりと鳴った。

「いくよ」
「はい……クロノを、ください」

 淫唇が割られ、クロノの太い男根が侵入してくる。
 一ヶ月以上抱かれていなかった身体はきつさを覚え、本能的に嫌がった。
 クロノも硬さに気づいたのか進む速度はゆっくりとしたもので、止めたり軽く揺するようにしたりして
馴らしながら入ってくる。
 クロノにとっては本日数度目になるであろう性交。それでも最奥まで繋がり息をついたクロノの顔には、
はっきりと快楽がうかがえた。
 まだ痛みの方が強いカリムも腰に軽く力を入れて締めると、挿入ってきたクロノの分身がいっそう感じ
られ、心が快感以外のもので満ちた。
 ゆっくりと腰が引かれ、また進んでくる。カリムを気遣っているのか、稼動する幅は小さく、にちゃり
という結合部の音は、耳をすまさなければ聞こえない。なのになぜか、あからさまな水音や嬌声よりも淫
猥にカリムの耳に響いた。

113 名前:第三婦人のささやかな悋気:2008/12/14(日) 02:10:42 ID:w9tUKYtc
「ああっ、これっ、これがずっと欲しかったんですクロノ!」

 よがり、震え、頬を擦りつけたシーツに湿り気を感じた。自分の唾液にしては時間が経っている水気。
 それが何なのか、誰の唾液なのか悟った瞬間、思わずカリムは言ってしまっていた。

「フェイトさんも……こうやって抱いているんですか」

 口にしてしまってから意味に気づいて、はっとカリムの横顔は赤らむ。
 慌てて否定する前に、クロノが耳元に口を寄せてきた。

「教えてあげようか」

 同時に、腰つきが激変した。
 秒もかからず引き抜かれたかと思うと、勢いをつけて一気に叩き込まれる。

「ひああぁぁっ!?」

 敏感な身体の奥が乱暴に抉られる。快感や痛みよりも衝撃でカリムは悶え身をくねらせた。

「ああっ、ク、クロノ、もっと緩めて……!」
「フェイトはこんなふうに、とにかく強くされるのが好きで」

 カリムの言など全く聞き入れてもらえず、ひたすら手荒くクロノは突いてくる。
 なんとか衝撃を逃そうとしても、いつのまにか腰が押さえつけられて思うに任せない。
 だが暴虐とも思える抱かれ方に耐えているうちに、少しずつ痛みが消え電流のようなものが身体を通り
始める。電流は頭に達すると脳を痺れさせ、カリムを喘がせ唇から唾液の筋を垂らさせた。

(あ、はあっ! 気持ち、いいっ……!)

 いつしかカリムは完全にクロノの乱暴な愛し方を受け入れていた。腰に自由が利いたら、自制も何もな
く自分からも下半身を突き上げていただろう。
 また動きが変わった。膣口から子宮口までぴったりと埋め尽くした状態で、抽迭がストップする。
 今度は全くと言っていいほど動かない。

「エイミィは逆に、長いこと繋がってるのが好きだな」

 クロノの言葉は、カリムには半分も聞こえていなかった。
 快感を感じ始めた矢先の静止により、飢餓感が身を灼き尽くす。恥も何もなく腰をくねらせようとする
が、クロノの手は以前がっちりと腰を押さえ込んで許さない。
 卑猥極まる言葉を口に出してねだろうとさえ考えた瞬間だった。クロノの囁きが、再度耳の奥に吹き込
まれる。

「けどカリムはこうやって、あちこち触られながら突かれるのが好きなんだろう?」

 繰り返す鍛錬によって武骨になった指が、表皮の硬さとは対照的に優しく乳首と宝珠を摘む。
 焦らされた後だけに、効果は覿面だった。

「あっ……だめっ! だめですっ、はああんっ!!」

 あっけなくカリムは絶頂を迎えてしまい、びくびくと全身を震わせる。
 クロノの指は止まらず、腰も再度のグラインドを始めてカリムをもっと喘がせようとする。
 敏感な二つの突起が転がされ、子宮口に性器で口づけされる度、カリムは軽く達する。そしてそんなも
のとは比べ物にならない限界が、はっきりと近づいていた。

114 名前:第三婦人のささやかな悋気:2008/12/14(日) 02:11:39 ID:w9tUKYtc
「クロノ、お願い……ふああぁぁ……ですから……」

 力の入らない腕で、カリムは必死にクロノの首を抱き寄せる。

「いっしょに、来てくださいっ!」

 小さく頷いたクロノが、胸と股間から手を離して完全に腰の動きにだけ集中してくる。
 雁まで引き抜かれ、再度埋め込まれる鞭のように激しい動き。
 何度目かの突き入れの時、肉棒が一回り膨らんだ。ついに待ち望んだものが放たれる。
 首を限界まで仰け反らし、上ずった細い叫びをカリムは上げた。

「ああああああぁぁぁぁ!!」

 蕩けた頭にも伝わる、たっぷりと注がれた精液の熱さをカリムは噛みしめながら、子宮に植えつけられ
たことを願うカリム。早く、この人の子供を産みたい。
 快楽に浮かされていたカリムだったが、頭を一つ振って思考を明確にするとこっそり仕込んでいた策を
発動させる。

「ところでクロノ、服が汚れてしまっているんですが」

 胸の部分はしわくちゃだし、ズボンは染み出した愛液で大きな染みができている。
 このまま本局内を歩いたら、ずいぶんと衆目を集めることになるだろう。

「それはカリムが脱がなかったからで……」
「だから」

 言葉を遮り、カリムは極上の笑顔で言った。

「今晩は、ここに泊めてくださいね?」



          ※



「ごちそうさまでした」
「お粗末さまです」

 別に自分が作ったわけではないのでこの言葉はおかしい気もしたが、クラウディア食堂のコックも自分
の部下になるのだからいいか、とクロノは思い直した。
 結局昨夜、カリムはクラウディア、正確にはクラウディアの提督室に泊まっていった。今頃艦内はその
噂で持ちきりだろう。
 もう言いたい奴には言わせておけと半ば開き直ったクロノは徹底的にカリムにサービスすることに決め、
ランチを二人分を部屋に運ばせて二人でゆっくり朝餉の時間を取った。
 食事を運んできたランディのにやにや顔を見た時は、思わず飲んでいたコーヒーをぶっかけたくなった
が。
 ナプキンで口元を拭いカリムが立ち上がる。身に着けた衣服は、染みが目立たない程度には乾いている。

115 名前:第三婦人のささやかな悋気:2008/12/14(日) 02:12:41 ID:w9tUKYtc
「朝ごはんといえばクロノ、前に聞いたお味噌汁という料理。作れるようになったんですよ」

 食べさせてあげたいからなるべく早く教会に来てくれ、という言外の意味ぐらいは、男女の感性にやや
鈍めのクロノにもさすがに分かった。

「今日からしばらくは第九十七管理外世界で過ごすことが決まっているし、いつからとは約束できないが、
必ず近いうちに行くようにする」
「期待しておいてくださいね。それではまた」

 最後にそっと別れの口づけを頬に残し、カリムは去っていった。
 顔を撫でて面映い気持ちになるクロノだったが、いつまでも浸ってはいられない。
 昨日中に片づけておくはずだった仕事が山のようにあった。今日中に終えなければ、クロノは今日も艦
内で泊まりとなってしまう。そうなれば、今度は海鳴で待っているエイミィがつむじを曲げかねない。

「二人だけじゃなくてフェイトもか……」

 近くにいるのに触れ合えないというのはストレスが溜まるのか、航海後のフェイトは過剰なまでにクロ
ノとのスキンシップを求めてくる。こちらも早めに二人っきりの時間を作らなければまずい。

「何人も愛してしまうってのは大変だな」

 それなりに腹は括って三人を娶ったわけだが、想像以上に気力体力精神力に負担がかかる。
 自分と同じく複数人と結婚したユーノ、ゲンヤ、エリオはこのあたりをどうやっているのだろうか。な
にかいい方法があるなら、是非ともご教授願いたいものだ。
 一度嘆息しながらクロノがコンソールを起動させるのとほぼ同じくして扉が開く。
 カリムが忘れ物でもして戻ってきたかと思ったが、違った。扉の向こうにいた人物は、同じ金髪でも瞳
の色がきれいな紅をしていた。
 挨拶もせず入室した元義妹現第二婦人は、無言のまま抱えた書類を机の上に投げ出すように置く。
 そのままじっとクロノを見つめてくるフェイトの瞳には、ありありと不満と嫉妬が現れていた。

「…………朝ごはん」
「えっ?」
「朝ごはん一緒に食べる約束したのに、どうして来なかったのかなクロノ」

 そういえば、昨日抱き合った後にそういう約束をしていたが、直後のカリム来訪で完全に忘れてしまっ
ていた。
 己の不明にもう一度クロノはため息つきながら、フェイトには聞こえないように呟いた。

「うん、本当に大変だ……」



          終わり

116 名前:第三婦人のささやかな悋気:2008/12/14(日) 02:13:34 ID:w9tUKYtc
          おまけ



 久方ぶりに帰ってくる旦那に備えて家の大掃除をするエイミィと手伝いのアルフの元へ連絡が来たのは
昼前だった。

「久しぶりフェイトちゃん。何の用かな?」
『あ、あのねエイミィ。クロノが今日そっちに帰るはずだったんだけど、えっと、体調が悪くて、ちょっ
と帰れそうにないから…………その…………ごめんなさい』

 やたら挙動不審なフェイトは額の辺りに「私が原因です」と書いてあるような顔をしており、いったい
何があったのかはアルフでさえだいたい想像がついた。

「まあ、そういうこともあるよね。クロノ君には無理に帰って来なくていいからゆっくり養生してって伝
えといて。……けどねフェイトちゃん、欲しいのは分かるけどあんまり絞り取らないでくれると、クロノ
君の奥さんの一人としては嬉しいかなー」
『しっ、絞り取るって……!』

 ごにょごにょと言い訳らしきものを口の中で呟くフェイトだが、結局何一つ明瞭な言葉にならないまま
逃げるように通信を切った。

「あんなに顔真っ赤にしちゃって。若いっていいねえ」
「いや、エイミィだってまだまだ若いってば」
「そうかな? 子供産んでから老けたなっていう気が自分ではするんだけどね」

 口笛吹きつつ掃除に戻るエイミィに、アルフは訊ねた。

「あのさ、ずっと訊ねたかったんだけど、クロノが他の女性と関係持ってるの、あんた平気なのかい?」

 一夫多妻制度は身近なものだったし、フェイトがクロノの第二婦人になった時には素直に祝福できたア
ルフだが、もしも恋人であるザフィーラが他に愛する女性を作ることがあったりすれば、自分だったら絶
対に怒り狂うだろう。最低でも狼姿で噛みまくる。
 平然としてるエイミィの心境が、アルフには理解できない。

「そういうとこ、アルフもまだまだ子供だね」
「子供って……そりゃ私の年齢はフェイト以下だけどさ……」
「だったら教えてあげよう」

 えへんと胸を張ってエイミィは堂々と言ってのけた。

「旦那さんがもてまくるっていうのはね、奥さんにとってはけっこう鼻が高いんだよ」

 まるでこの世の真理のように宣言されても、その思考はアルフにはよく分からない。ただそんな発言は、
絶対にフェイトの口からは出てこないというのは分かった。クロノに関してはやたらと独占浴が強いのだ、
あの少女は。
 とにかく上機嫌なまま掃除を続けるエイミィに、聞こえないと知りつつアルフは呟いた。

「誰がなんと言おうが、クロノの正妻はあんたにしか勤まらないよ、エイミィ」



          今度こそ終わり

117 名前:サイヒ:2008/12/14(日) 02:15:01 ID:w9tUKYtc
以上です。
@ブロンド3Pを思いつく。
Aカリムのエロシーンが思い浮かばなくて詰まる。
Bとりあえず不倫キャラとして書いてみる。
C不倫書くのが楽しくなって本来の目的を忘れる。
D書くかもしれないと言ってから一年近く経ちそうなことに気づいて慌てて書き出す。
E今度はハーレム作るような心境のクロノが想像できなくて詰まる。
F「だったらハーレムが日常的な世界観にすればいいんじゃね?」と思いつく。
G試しに一本書いてみた。   ←今ここ

ブロンド3Pは年内は無理ですがバレンタインまでにはなんとかします。

118 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 02:38:04 ID:6WutPaMG
GJ!
エイミィさんの度量の大きさに圧倒されるばかりです。
クロエイ、久しぶりに読みたくなりました。

因みにゲンヤはクイントとはやて、エリオはキャロルーとして、
ユーノは誰と?

119 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 02:42:58 ID:Ov8u/O4l
>>118
なのは、アリサ、すずかあたりじゃね?

120 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 02:45:03 ID:6WutPaMG
>>119
そういうSSって無かったっけ?

121 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 02:58:25 ID:W9jX/8Jg
カリムがエロくて、慌てるフェイトが可愛く、エイミィが何と言うか強いですね。
ユーノ、ゲンヤ、エリオは誰と一緒になっているのか。

122 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 03:12:49 ID:ACbdIGcs
羨ま……じゃなかった、けしからん!
とりあえずこのクロノは一片死んどくべきだな、ウン。

そしてGJ!
なんていうか、もうカリムさんは良い、なんだか知らんがとにかく良い。
ブロンド美女最高だぜ。


123 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 03:23:04 ID:k0pvb+jf
>>104
管理局のお偉い方もちゃんとキャロエリルーの関係を理解していたようで何故か安心してしまった
そして主人公たるもの、頭の固い上司を騙し大切な人達を助けに行く
もう展開的にたまらん!

124 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 08:18:55 ID:72+gzp2e
いい仕事してますね。
うらやましい。
ユーノを巡って、なのはさんが血の雨を降らさない相手と言えばアリサ、すずか以外思いつかんです。
その場合、
ミッドチルダ正妻(制裁)なのは、
97管理外世界人界正妻アリサ 
97管理外世界吸血鬼界正妻すずか
なので無害です。

125 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 10:17:39 ID:w9tgCeHr
エリオの場合、キャロルーに付け加えてヴィヴィオもですね。多分。

126 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 10:26:30 ID:kNLoTM8p
ゲンヤさんの場合はナカジマ六姉妹改めナカジマ六妻ですね。
わかります

127 名前:69スレ264:2008/12/14(日) 11:07:45 ID:uX7HV8gw
業務連絡です。
89・90スレ保管完了しました。
職人の方々は確認お願いします。

>>64
内容消去しました。ページ自体の削除は権限がないのでできませんが。

128 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 12:01:34 ID:ACbdIGcs
>>127
補完業務乙!
特濃リンディ茶で温まりなさい。

つ旦~

129 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 12:15:41 ID:2k8lGBwg
>>80
GJ!!
二人とも夢に甘えるのではなく、現実と戦うと決めた
結果はああなってしまったけどすごく尊い生涯であったと思う
ラストのラグナでもう涙目

>>103
GJ!!
とうとう決戦の始まり
あくまで部下に心配をかけないようにするエリオを見て成長したなあとひとしお
ただローヴェンの切り札…もし人質だとしたらどういう行動をとるのだろうか

130 名前:超硬合金:2008/12/14(日) 18:06:42 ID:lnfGKevy
司書様ご苦労様です。

拙作「体温のはかり方」について、
故にフェイトは、目の下の熊を隠す意味も含めて、〜
の所を
故にフェイトは、目の下のクマを隠す意味も含めて、〜
と修正お願いいたします。


131 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 18:21:02 ID:5s/yjabh
>>117
GJ!
きっとこの時空のクロノには、後々カレルとリエラの他に、
クロードやクロノの実の娘としてのフレイヤが生まれる訳ですね。わかります。

あと、独占浴って独占欲の間違いでしょうか?

132 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 19:30:32 ID:72+gzp2e
>47
良いアイデアをいただき感謝しております。
人外改造というと、個人的には97管理外世界のあの人を招聘してスカ博士の愛娘たちを
潰す為に、戦闘機械人(戦闘機人ではない)や機動刑事型戦闘人を開発する話が浮かん
できました。
やはり「変〜身」とか「蒸〜着!」とかしないと強くなれない凡人vsエリートナンバーズの
死闘ってのは、凡人の血を沸かせますね。

133 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 20:57:27 ID:lgTx4eiB
ジャンパー被った紫の人ですね

134 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 21:07:42 ID:/HorS+Dp
どこから来て〜 そしてどこへ〜

135 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 21:11:14 ID:lgTx4eiB
NANOHA FIGHTS FOR JUSTICE

136 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 22:00:00 ID:hr1iVRcl
>>133
元は緑のジャンパーそんですね

137 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 22:02:23 ID:7UnK6Dml
>>69スレ264氏
保管作業お疲れ様です。お世話になってます。
思えば、43スレで年越しして、現在91スレですか。もう1つ2つスレを建てるとしても、
大雑把に考えて年間消費量約50スレ。一月当たり約4.2スレ。大体、一週間1スレ500Kb消費のペースでした。

・・・stsの本放送終了って、2007年の9月末だったよな・・・?

ともあれ、司書殿に敬礼。お疲れ様でした

138 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 22:10:49 ID:eKBMRGwU
まあ、無駄にスレが流れたのがいくつかあるからなぁ……

139 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 23:23:32 ID:6dgP7jYR
>>132
あ、特オタの端くれとして、物凄く反応してしまうw

けど、戦闘機械人と言ったら、俺の怒りは爆発寸前な某ヒーローの、
敵組織のロボット怪人連中が浮かんでしまうww

そして、機動刑事型と言う事は、電子手帳を翳した状態のまま、
特撮ヒーロー随一の物騒な法律を読み上げながら、ノシノシ迫る、とww

140 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 23:33:03 ID:GkmAlnNF
ナンバーズサーティーン、ギンガナカジマは戦闘機人である。
彼女を改造したスカリエッティは世界征服を企む悪の科学者である。
ギンガナカジマは、人間の自由のためにスカリエッティと戦うのだ!
(ナレーション・中江○司)

141 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/14(日) 23:45:33 ID:xJpVvFlL
>>140
あったね、そういう同人。

142 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 00:00:48 ID:X/1Bsgqs
>>132
私の妄想がお役に立てたようで嬉しいですw
ついでにディードに、同じ二刀で挑んで負けそうなサイボーグがディードに投降を進められた時に、
遊んでられんな、四刀流でいくかと背部から隠し腕デバイスが発生とかもいいw

143 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 00:03:11 ID:rrJeUkuZ
話し変わるが
チンクは外の世界に憧れ?を持っていたようだけど、ぶっちゃけ、管理局にいても戦闘要員だから
ラボにいた時とさして変わらん気が…

144 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 00:16:32 ID:X/1Bsgqs
凄い管理局が黒いとしての仮定で……局側が上手くコントロールさw
我々の元で振るわれる力は正義だよ、ちゃんと自由意志をあげるよって感じで。
モノ知らずだから世界を見せつつ、あなたの振るう力でこの平和を保っていますとか、
やってやれば大丈夫だ、自分の意思で局に残るように選ぶコントロールしてやればいい。
文句言い出したら、自分で選んだんでしょ!って怒ればいいし。
普通なら、本人の希望を聞いてみる感じだろうね。

145 名前: ◆hZy29OoBJw :2008/12/15(月) 00:34:43 ID:7yz7dnbY
さて、週を気持ちよく始めるために、投下しましょうかね……

・出てくる人:ユーノ、なのは、フェイト、はやて
・でも、ハーレムではない……
・先に言っておきます。全国ン百万のはやてファンの皆様方、ごめんなさいww

146 名前:秘密の捜査 1/15:2008/12/15(月) 00:36:43 ID:7yz7dnbY
「そういうことやから、おとなしく脱ぐんや、ユーノ君」
「ここは素直になった方がいいよ、ユーノ」
「ユーノくんゴメンネ…… とりあえず言うこと聞いて。ね?」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
3人に詰め寄られたユーノは閉口した。
そもそもなぜこんなことになったのかというと……

彼は休日を自室でゆっくり過ごそうと目論んでいたのだが、呼び鈴が鳴らされて出た先には3人がいた。
「どうもユーノ君、久しぶりやね」
八神はやては、満面の笑みであった。
その後ろで、フェイト・T・ハラオウンと高町なのはが顔を見合わせ、苦笑している。
「とりあえず、上がらせてもらうで」
「ああ、いいけど……」
3人が入り、扉が閉まる。フェイトとなのはの立ち位置は、ちょうど出入口を塞ぐかたちであった。

147 名前:秘密の捜査 2/15:2008/12/15(月) 00:38:12 ID:7yz7dnbY
「えっと…… みんな、何か用かな?」
先ほどとはうって変わって、はやてが真剣な面持ちで話し始める。
「実はなユーノ君。ウチら今、非常に重要な事件の捜査にあたっとるんよ」
捜査といっても、ユーノの想像とは、まったくの異なるものだった。
「最近局の女子更衣室に、侵入者が出没するらしくてな。
 ま、侵入者ゆうても、ある小動物という話なんやけど……
 驚異の素早さで更衣室の床と、さらに女体の上を駆け回り、
 空調用のダクトから逃げていくそうな…… 恐ろしい話やろ?」
「そ、そうだね……」
「その小動物っていうのが、その…… フェレットだっていう話なんだけど……」
言いにくそうに話すフェイトの言葉に、ユーノは非常に嫌な予感がした。
「フェレットね…… まさか君たち、ぼくを疑ってるってことは、ないよね…?」
恐る恐る彼が確認すると、
「そそ、そんなわけないやろ」
「も、もちろん」
「ゆ、ユーノくんがそんなことするはずないもんね〜?」
彼は唖然とした。
「みんな、フェレットっていうだけでぼくを疑うなんて、あんまりじゃない?
 あれは昔の話じゃないか!」
「当然や! ウチらはユーノ君の味方やで」
3人は大きくうなずく。
「証拠を見せてもらえれば、嫌疑は完全に晴れるよ」
「証拠?」
「局員の1人が侵入者を引っかいて、フェレットは怪我したみたいや。
 身体に傷がないかどうか、脱いで見せてもらえば……」
「断る」
ユーノは即座に拒否した。
やはり疑われているのだという点も不満だったが、女の子3人の前で素肌を晒すなんて…… ありえない。
「やましいところがないんやったら、ええやんか」
「よくないよ! 気持ちの問題だよ」

148 名前:秘密の捜査 3/15:2008/12/15(月) 00:39:16 ID:7yz7dnbY
「弱ったなぁ」
はやては腕組みした。
「任意での捜査は無理やな。これから強制捜査に着手しよか。ハイ令状」
彼女が示した書面には、適当に達筆な字でこう書かれていた。

身体捜索令状
ユーノくんの身体をすみずみまで調べるのは、ウチが許可するで
はやて

「な、なんだよこれ…… 違法捜査だよ! 止めてよフェイト!」
彼は執務官の良心にすがったが、返事はつれなかった。
「正式な話じゃないし…… プライベートな調査まで止める権限は…… ないよ……」
となると、最後の頼みの綱は彼女だが……
「ユーノくんゴメンネ〜、無実だとは思うけど…… ちゃんと確かめて疑いを晴らそう。ね?」
「なのはまで……」
ユーノは諦めて逃走を図ろうとしたが、時すでに遅し、
彼の手足はバインドでしっかりと拘束されていたのであった。
「ひどいよみんな……」
うなだれる彼に、はやてはぐっと顔を近づけて、その眼鏡をスッと取り去った。
「だいたいな……」
至近距離から凝視されて、ユーノはどきりとした。
「なんでユーノ君ウチらよりお肌白くてすべすべなん? おかしいやろ。
 ユーノ君ホンマは女の子ちゃう?」
「いででで」
彼女に頬をつままれながら、ユーノは抗議した。
「どうしてそんな話になるんだよ!」
「これは…… 確認せんとあかんよね……」
彼は、すでに逃げ道がないことを悟ったのであった。

こうして女の子3人の目の前で素っ裸にされてしまったユーノは、涙目だった。
「どうだい…… これで満足かな…? 傷なんか、ないでしょ?」
彼女たちが自分の身体を凝視している。耐え難い状況であった。
「これは……」
はやてはユーノの下半身をしっかり観察していた。そして、
「ユーノ君、ええケツしとるやないの」
と言って、彼の尻の肉をわしづかみ。
「ちょ、ちょっと…!」
ユーノは完全に遊ばれていた。フェイトとなのはは、小声で話している。
「まさかと思っちゃったけど…… やっぱり男の子だよね」
「私は知ってたけどね」
「えっ……」
この状況からとにかく逃げ出したいユーノは必死に訴える。
「ねえ、もういいでしょ? いい加減解放してよ!」
しかし、その願いは聞き入れられることはない。

149 名前:秘密の捜査 4/15:2008/12/15(月) 00:40:10 ID:7yz7dnbY
「ウチはずっと気になってたことがあるんや……
 男の子のオチンチンの裏側は、いったいどうなっとるんや?」
ユーノの顔から血の気が引いた。
まさか、そんなことまで確かめようというんじゃないだろうね?
……ぼくの身体を使って。
「フェイトちゃん知っとる? ぜひ調べるべきやと思わへん?」
「知らないけど…… 調べたほうがいい…… かもね」
「さすがのなのはちゃんでも、わからんやろ」
「そうだね……」
一方的に話が進んでいっているので、ユーノはもう諦めることにした。
「はいはい…… 気の済むようにしたらいいよ……」
「ほな、そうさせていただきます。意外なところに傷があったりするかもしれんしな〜」
準備の良いはやては、持参した医療用のゴム手袋をしっかりはめる。
そして彼のをそっとつまんで、持ち上げた。
「うっ……」
ユーノは歯を食いしばったが……
女の子に大事な場所を触られて、平常心でいろというのが無理な注文であった。
やはり…… というべきか、しっかり勃起してしまったのある。
「ちょ…… ユーノ君、そんなに、硬くしたら、あかんよ……」
「こ、これは意思ではどうにもならないんだよ!」
なのはとフェイトの2人は、その様子を固唾を飲んで見守っている。
なんでこんな辱めを受けなければならないんだろう……
ユーノは泣き出したい気分だった。
「なんや…… 妙な気分になってきたんやけど…… ハァ」
「もうやめてよ!」
はやてが興味深そうに突っつくので、ますます収まりがつかなくなってきた、その時だった。
彼女の端末に着信。
「もう、今ええとこやったのに……」
はやては渋々出た。
「はい。ああ、更衣室の件、それなら…… え? フェレットを捕獲? 背中に傷。
 なるほど、良かったなぁ〜 うん、わかった。ほな」

連絡を受けたはやては、しばし静止していたが、恐る恐る振り返ると、
「うーんと…… まあ、そういうことやから、疑いは晴れたで。
 よかったなぁ〜ユーノ君」
と言う笑顔はひきつっていた。
「ほな、ウチらはこれで……」
「おじゃましました……」
「えっと…… じゃあね」

「3人とも…… どこへ行こうと言うんだい?」

150 名前:秘密の捜査 5/15:2008/12/15(月) 00:41:01 ID:7yz7dnbY
彼の部屋から退散しようとした3人だったが、すでに身動きを取ることは不可能になっていた。
バインドで完全に動きを封じられていたのである。
「ちょ、なんやこれ……」
「体が……」
「こうなったら…… レイジングハート! って、あれ?」
デバイスを手に取ろうとしたなのはだったが、
「お探しのものは、これかな…?」
レイジングハート、バルディッシュ、シュベルトクロイツは、彼の手の中に納まっていた。
「い、いつの間に……」
「みんな…… ぼくをこんな格好にしておいて、そそくさと帰ろうとするなんて…… ひどいよね……」
3人には、ユーノの背後に何か、黒くモヤッとしたものが見える気がした。
「みんなにも同じカッコになってもらうよ。じゃ、とりあえず、脱ごうか」

「えっ……」
「何を言うとるんや」
いきなりの発言に絶句する3人を前に、ユーノは腕を組む。
「ぼくは魔法できみたちの制服をビリビリに引き裂くなんて、そんなことはできればしたくないんだけど……
 いや、待てよ。むしろそっちのほうが……」
着る服がなくなっては困るのと、彼の目が思いのほか真剣だったので、
3人はとりあえず従っておくことにした。
はやては彼を全裸にしてしまったことを多少後悔した。
(おもろいと思ったんやけど…… すまんなぁ、2人とも)
(はやてちゃんだけが悪いわけじゃないよ……)
(こうなったら一蓮托生だよ)
念話で意思の統一を図る3人は、彼に言われるまま一糸纏わぬ姿となった。
その状況を見て、ユーノは言い放った。
「なるほど。フェイト>はやて>なのは、だね」
その発言の意味するところに気づいたフェイトは、慌てて自分の胸を隠す。
「な、なんでそんなことわかるの…?」
「拘束魔法の使いようで、計測もできるのさ」
3人はあきれた。
「いつの間にそんな魔法編み出しとったんや」
「ユーノくん、ちゃんとお仕事してる?」
「失礼だな」
彼は反論した。
「計測器具がなくても手の届かない位置のものを測れるようにと思っただけだよ。その応用」
「ふーん。それにしても…… やっぱりフェイトちゃんやったか。
 何を食べたらそないなるんや? ウチにも教えてもらわんと……」
「べ、別にこれは……」
最下位にされたなのはは噛み付いた。
「ユーノくん! む、胸で女の子を評価するなんて、よくないと思うの」
「してないよ」
彼は首を横に振った。
「客観的な事実を言ったまでだよ。でも敢えて主観的な評価をするなら……」

「3人とも、すごく綺麗だ」

151 名前:秘密の捜査 6/15:2008/12/15(月) 00:42:01 ID:7yz7dnbY
これは不意打ちであったので、思わず3人は固まった。
かなり特殊な状況下ではあるが、悪い気はしない。
「そんなユーノ君。ウチと結婚したいやなんて大胆な……」
「いや、そこまでは言ってないから……」
はやては、ボケで照れ隠しという高度な技で切り抜けた。
「ユーノ、それは女の子のファッションを褒めるときに言う言葉だよ」
フェイトは、その矛盾を追及して自らへの追及を避けた。
「……」
なのはは、何も言わずにうつむいた。
なぜだかよくわからないが、その耳は赤くなっていた。

「ユーノ。確かに私たちも悪かったと思うけど…… もう気が済んだ?」
「ん? 何を言っているんだい?」
状況を終了させようとするフェイトの言葉を、ユーノが遮る。
「きみたちはよくもぼくを弄んでくれたね……
 ピュアなチェリーボーイは大いに傷つきました!!」
それを聞いたはやては、笑いをこらえるのに必死になった。
「ぴゅあ…… ちぇりーやて…… プッ」
「男の純情をばかにするなあああっ」
彼の悲痛な叫びに、はやても口をつぐんだ。
「ぼくだって、治安機関の一翼を担う者としての自負はあるよ……」
このあとの彼の言葉に、3人は絶句した。

「童貞すら守れずして、市民が守れると言うのかあっ!!」

はやては思った。
(ユーノ君、あんたそこまで管理局のことを…… 局と結婚したらええよ…!)
フェイトは思った。
(なんという覚悟…… 局の高官たちにも聞かせたい…!)
なのはは思った。
(何かよくわからないけど…… ちょっとカッコイイかも…!)

すると、はやてを拘束するバインドの締め付けが、強くなる。
「んっ…… ちょっ…… ギブやギブ!」
食い込みが激しい。
「はやて、きみは…… 自分が今どういう立場か、わかっていないようだね」
ユーノはそう言うと、はやてのうなじにフッと息を吹きかけた。
「あぁん…… ユーノ君の…… い・け・ず」
「……ゴホン。ともかく、きみたちはぼくの『オチンチンの裏側』まで見たんだ。
 こっちにも見せてもらうよ」
「な、なにを…?」

「きみたちが無垢なのかどうか、確認させてもらうよ…… 性的な意味で」

152 名前:秘密の捜査 7/15:2008/12/15(月) 00:43:17 ID:7yz7dnbY
「じゃあまずははやて。とりあえず四つんばいになってもらおうかな」
当然、3人は抗議する。
「ウチは乙女やで! そないなことできるかいな」
「ユーノ。いくらなんでも、女の子にそれは…… よくないと思うよ!」
「そうだよ、はやてちゃんがかわいそうだよ」
ユーノはため息をついた。
「ぼくは、かわいそうじゃないって、言うのかい…?」
フェイトとなのはは、何となく反論できない雰囲気になってしまった。
「はやて、今回の言いだしっぺと主犯は…… きみだね?」
「バレとったか…… さすがユーノ君やな」
「それ以外考えられないから」
彼は主犯に反省を促すことにした。
「今回のことを改悛して、自主的に股を開くなら、魔法で強制はしないよ。
 さもないと、M字開脚で前からじっくりと……」
「ああ、はいはい。わかりました…… こうしたらええんやろ?」
彼女は言われるまま、四つんばいになる。
「でも、見んでもわかるやろ。ウチに、浮いた話なんてないんやし……
 って、自分で言うのも哀しいんやけど…… そんな青春時代……」
だんだん残念な気持ちになってきた。
「どうかな? ぼくと親しい査察官殿が、事情を知っているという疑いが……」
「……プッ」
はやては吹き出した。
「ロッサのことか? ないない! そんなわけないやん。
 それはチェリーの妄想の領域やで。あっはっはっ……」

「ヘーックション!」
「どうしました、査察官殿。風邪では?」
「いや、そんなことはないと思うけれど…… どうも妙に残念な気分になってきてね」
「人は体調を崩すと弱気になるものです。早く休んだほうがよいですよ」
「お気遣いに感謝しますよ、シスター・シャッハ」

153 名前:秘密の捜査 8/15:2008/12/15(月) 00:44:23 ID:7yz7dnbY
笑い飛ばしたはやてを見て、ユーノは彼のことが多少気の毒に思えてきた。
「そういうものかな。ともかく、ちょっと拝見……」
ユーノは、はやての持参した医療用手袋をはめる。
「しかし、ウチのを見たかて、チェリーのユーノ君に何がわかるんや?
 比較対象がないやろ?」
もっともな疑問に、
「無限書庫の蓄積をなめてもらっちゃ困るよ……」
彼は答えた。
「知識だけが増えていくタイプだよね」
「経験が伴わないんだよね」
フェイトとなのはがひそひそと話す内容が、ぐさりと刺さる。
が、気に留めず彼は、はやての秘所をぐっと押し広げた。
美しき女体が眼前にあるにもかかわらず、見るだけというのは生殺しである。
その点を彼は、古典的手法で乗り切ろうとした。
「2、3、5、7、11、13、17……」
彼女の薄くピンク色に染まったその箇所は、狭まっていて奥までは見えない様子である。
「なあユーノ君…… もう…… ええか? 
 とんでもなく、恥ずかしいんやけど……」
若干涙目になってきたので、彼は手を離した。
「疑いは晴れたみたいだね、はやて」
はやてはその場にへたり込む。
「ああ…… もうウチ、お嫁に行かれへんのかなぁ……」

「じゃあ次はきみだよ」
フェイトは仕方なく、四つんばいになってお尻を突き出すかたちになる。
「ユーノ。私にもそういう筋の話はないって…… わかるでしょ?」
「どうかな。ぼくと親しい提督閣下が、事情を知っているという疑いが……」
「お兄ちゃんはそんなことしないよ!」
この言葉に彼は反応した。
「おにい…… ちゃん…?」
ユーノは地団太を踏む。
「クロノ、きみって奴は! ああ、君って奴は、あああ……」

「へーっくし!」
「どうされました提督。艦内の温度を上げますか?」
「いや、別に寒いわけじゃないんだが。
 それに、艦隊司令部が最近、省エネに努めろとうるさいからな」
「ああ、ハラオウン総務統括官もそのようにおっしゃっていましたね」
「母も会計課とはずいぶんやり合ったようだが……
 うちの組織もいろいろあって批判されているからな。予算をケチるのも仕方ないのさ」

154 名前:秘密の捜査 9/15:2008/12/15(月) 00:45:24 ID:7yz7dnbY
「ユーノくんも、誰かに『おにいちゃん』って呼んで欲しいの? ヴィヴィオにそう呼んでもらう?」
なのはが言う。
現状、ヴィヴィオには「ユーノくん」と呼ばれているのである。
高町家は母娘揃って「ユーノくん」なのであった。
「いや、それはいいです……」
ユーノは思った。
(なのは、きみはわかっていないね。
 「血のつながらない妹」から『おにいちゃん』と呼ばれることに、価値があるのさ……)
「ともかくフェイトも……」
「う……ん」
フェイトは顔を真っ赤にして恥辱に耐えた。
「なるほど…… ぼくはクロノを少し見直したよ」
とくに異常は見受けられなかったのである。
「当たり前だよ……」
「そうだね。今度からぼくも彼のことを『おにいちゃん』と呼んであげよう」
「……」

「じゃあ次は……」
「わたし…… だよね」
もはや抵抗できないことはわかっているので、なのはは素直に所定の体勢をとった。
「何も隠すようなものはないよ」
「せやな。強いて言うなら…… 事情を知っとるのは、ユーノ君やろな」
はやてが指摘した。
だが、遺憾ながら前述の通り、彼は「事情を知って」はいないのである。
「正直、心当たりは何もないね。だから、ここでもし衝撃の事実が明らかになったら……
 ぼくは1週間ぐらい引きこもったあと、旅に出たくなるかもしれない……」
ユーノが仕事をしなくなったら一大事である。
「なのはちゃん、大丈夫やろな?」
「なのはに管理局の命運がかかってるよ」
「えっと…… それはもちろん大丈夫! だと、思うよ……」
なのはは苦笑した。
「じゃあ、いきます……」
本人よりも、周囲の人間が固唾を呑んで状況を見守るという、奇妙な状態である。
このような成り行きで彼女の股を開かせることになったのは、多少残念ではあったが、
ユーノはそっと押し広げていく。
「41、43、47、49……」
「ユーノくん。49は素数じゃないよ」
「え? ああ、そうだね……」
もともと理数系であるなのはの意外と冷静な反応に、彼は少し萎えた。
「じゃあ、ぼくも明日から仕事をがんばろうかな」
この言葉に、はやてとフェイトは胸を撫で下ろした。
「よかった……」
「さすがや、なのはちゃん」
よくわからない褒められ方に、なのはは苦笑するしかなかった。

155 名前:秘密の捜査 10/15:2008/12/15(月) 00:46:20 ID:7yz7dnbY
「ユーノ。もういい加減放してくれないかな?」
「ユーノ君。ウチらが『ぴゅあ』やと知って、いったい何になるっちゅうんや?」
「そうだよユーノくん。まだ…… 許してくれない?」
3人が難癖をつけ始めたが、ユーノはまだ終わるつもりはない。
「何を言っているんだ、きみたちは。
 女の子に身ぐるみ剥がれた上に、見せ物にされちゃって……
 ぼくの受けた屈辱は、こんなものじゃないんだあっ」

「これからみんなには、『女の子』から『大人の女性』になってもらいます」

また3人は絶句させられた。
「そ、それって……」
「……本気?」
ユーノは何も答えない。
「ゆ、ユーノ君、それはさすがにあかんよ……」
狼狽するはやてを、彼は追及した。
「今回の主犯はきみだったね…… じゃあ、一番重い罰にしないとね」
「ちょ、ちょい待ち。確かに…… 言いだしっぺはウチや。
 調子に乗りすぎたわ…… 反省します。
 ゴメンな、ユーノ君。謝るから…… 堪忍してや、頼む」
「はいはい。前からがいい? それとも……」
また彼女は四つんばいにさせられた。
バインドが締まる。もはや自力で両脚を閉じることは不可能だった。
「ああっ! ごめんなさい…… もうしませんから!」
「はやて!」
「はやてちゃん!」

156 名前:秘密の捜査 11/15:2008/12/15(月) 00:47:09 ID:7yz7dnbY
「……冗談だよ。さすがにそこまで犯罪的なことはしないから」
はやては半泣き状態である。
「うう…… ほんまか?」
「でも…… やっぱりこのままじゃ許せないね。こうしよう」
そう言うとユーノは、自分の手で完全に勃起した自らのものを刺激し始めた。
「ちょっと…… 何しとるんや?」
「ああ、少し待ってね……」
はやてに向かう彼の息が次第に荒くなってくる。
その様子を他の2人が見守る…… 奇妙な光景であった。
「うう…… あっ」
そして、彼の身体からは白いものが飛び出し…… はやてのお尻から背中にかけて、浸していった。
「ああっ…… ユーノ君、あんた…… 最低やね……」
「ありがとう」
なぜか彼は微笑して言った。
「きみと同じくらい、最低になれたかな…?」
「……」

その様子を見ていたフェイトは、どうも妙な気分になってきた。
(どうしよう…… 男の子が射精するところなんて、初めて見ちゃった……)
彼女は生唾をようやく飲み込むと、なのははどうしているのかと、確認する。
「さすがだね、ユーノくん」
なのはは真剣な面持ちだった。
(何がさすがなんだろう……)
フェイトが考えていると、なのはが言う。
「今、まったくバインドが緩まなかったよ」

魔法を使用するというのは、集中力が必要な作業である。
性的な興奮が絶頂に達する瞬間は、魔法を持続させるには最も不適なものであるはずだったが……
「一瞬も魔法が弱まらないなんて、すごいよ。わたしたちも、がんばらなきゃ……」
フェイトは、何をがんばるんだろう…… と思いつつ、
そこまで気を配っていたなのはに感心して、自分ももっと気をつけなければ…… と思った。
「なのはちゃん、フェイトちゃん……
 このほっとしたけど、微妙に悔しくて、腑に落ちない気持ちは…… 何なんやろな……」
はやては肩を落とした。

157 名前:秘密の捜査 12/15:2008/12/15(月) 00:48:01 ID:7yz7dnbY
「じゃあ次は、フェイトだね」
「私を、どうする気?」
ユーノは、今度は彼女を追及する。
「きみときたら! どうしてはやての無茶苦茶な犯行を止めないんだっ」
「そ、それは……」
フェイトは、明確な答えが出てこなかった。
「ぼくは思うんだ…… 一番真面目そうな顔をして、一番スケベなのは、きみだろ! フェイト!」
「ええっ……」
思い切り指を差されたフェイトは心外だった。
「そんなことを言われる筋はないよ」
「じゃあ言うけど…… さっき見させてもらったときだって、
 きみのが…… 一番濡れていたんだよ!」
「そ、そんな…… そんなはずは……」
「まったくもってきみはけしからん娘だね。えっち! スケベ!
 悪い娘はおにいちゃんに言いつけちゃうぞ」
「や、やめてよ……」
そう言いつつも彼女は、詰られることにある種の心地よさを覚えており……
自分でも不思議な気分であった。
「きみにも罰を与えよう。はやてと同じ目に遭いたいかい?」
 それとも…… 『大人の女性』になりたい?」
「それは……」
フェイトは答えに詰まった。
「はあ…… きみは。何を迷っているんだい?
 『どっちもイヤ』と即答すべきところだろう?」
「えっ…… ユーノは…… 意地悪だよ」
「きみは悪い娘だな。悪い娘へのお仕置きは、こうだっ」
そう言ってユーノは、彼女のお尻を平手打ちするという暴挙に出た。
べちんという音とともに、紅葉の形が紅く浮かび上がり……
「ひゃんっ」
彼女は妙な声を上げて、涙目で続けた。
「ごめんなさい…… わたしは…… えっちな娘です……」
「……妙な気分になりそうだから、これ以上はやめるよ!」
扱いに困ったユーノは退散した。
「うう…… このほっとしたけど、微妙に悔しくて、腑に落ちない気持ちは…… 何かな……」

158 名前:秘密の捜査 13/15:2008/12/15(月) 00:49:28 ID:7yz7dnbY
問題は、残るお1人の扱いだが……
正直、なのはをどのようにすればいいか、ユーノは迷った。
あまり手荒な真似はしたくないのだが、
はやてやフェイトはまだしも、なのはには今回のような企てに参加してほしくなかった。
そう思うと、黙って許すわけにもいかない。
さて、どうしたものか……
すると、彼女は思いがけないことを口にした。
「ユーノくん…… ごめんね。ユーノくんが怒るのもわかるよ。
 わたしたちひどいことしたもん…… だから……」

「わたしのこと、好きにしていいよ」

「え…? な、なんて……」
これにはユーノ以外の2人も驚いた。
「なのはちゃん! 何言うとるんや!
 まあ、何ていうか…… まず悪いのは、ウチやし…?」
「そうだよなのは。その…… 私も、悪かったし……」
しかし、なのはは遮った。
「いいの。あんなことしちゃったら…… ユーノくんグレちゃうもん。わたしが何とかしないと」
そして微笑みながら彼に言う。
「わたし、ユーノくんなら…… いいよ。
 ユーノくんは、わたしじゃ…… だめ?」
この言葉は彼の理性を粉砕するには十分だった。
「ななな、何を言ってるんだ! だめなんて……
 今日聞いた中で2番目くらいにありえないよ、そんなの!」
ちなみに1番は、『ユーノ君ホンマは女の子ちゃう?』であった。

なのはにこのように言われて、何とも思わないユーノではなかった。
もう一度、彼女のバインドで縛られた肢体をよく見てみる。
もちろん、一緒に暮らしていたこともあるので、見るのは初めてではないけれども……
その頃に比べれば、随分と女らしくなったものだ。
白い肌を見せられれば、触れたいと思うし、抱きしめたいと思うのは自然であった。
事実、さっき射精したところだが、彼のものはふたたび臨戦態勢となっている……
「なのは……」
彼女もいいと言っていることだし…… いいのではないか?

159 名前:秘密の捜査 14/15:2008/12/15(月) 00:50:28 ID:7yz7dnbY
「ごめん、やっぱりできないや」
最後に勝ったのは、彼の良心だった。
「2人が見ているし……
 なのはを拘束したまま、一方的にするようなことは…… できないから」
彼はそう言って、なのはにかけたバインドを、解いた。

それは一瞬。
彼は足払いを食らい、床に倒れこむ。
何が起きたのか、理解できない。
倒れた瞬間には、全身がバインドでぐるぐる巻きにされていたのだった。
「えっと…… どういう、ことかな…?」
冷や汗が流れる。
先ほどまであらわだったなのはの肌は、堅固なバリアジャケットに覆われていた。
その手の中には、レイジングハート。
彼女は黙って、微笑むのみだった。
「まったく、ユーノ君は人が良すぎるわなぁ」
「ほんと。あんまり良すぎるのも、考えものだよ」
同じくバリアジャケット姿のはやてとフェイトが言った。
「ユーノくん」
なのはが語りかける。
「……はい」
「確かにわたしたち、ちょっと調子に乗りすぎてたよね。ごめんね。
 でも…… 2人にあんなことするなんて、やりすぎだよね」
「……おっしゃる、通りです」
「少し、頭冷やそうか」
ユーノの顔が引きつった。
「しばらくそうしててね。4時間ぐらいたてば、自動的に解けるから」
「よ、4時間!?」
彼は絶望した。
「あああ…… ごめんなさい」
「じゃあねユーノくん」
最後まで、なのはは微笑するだけだった。
怒りや侮蔑の陰が感じられる笑みであれば、どんなにましだったろうか。
ただ微笑する彼女に、ユーノは言い知れぬ畏怖を感じ、
その後姿を見ても、何も言うことができなかった。

「あ、そうだ」
なのはが立ち止まって言う。
「2人の言う通りだね…… ユーノくん、お人好しすぎるかもね」
「……そうかな?」
「でも、ユーノくんのそういうところ、好きだよ」
「そう。それは良かった」
彼は苦笑した。

160 名前:秘密の捜査 15/15:2008/12/15(月) 00:52:20 ID:7yz7dnbY
「さて、どうしたものか……」
3人が帰った後、バインドで巻かれ、芋虫の如くぶざまに横たわることしかできないユーノは悩んだ。
「ああ…… なのははさすがだよ」
気を許してバインドを解いたのが運のつきだった。
彼女は自分を油断させるために、あのようなことを言ったのだろうか。
『いいよ』云々のすべてが方便であったと考えるのは、甚だ遺憾なことだった。
しかし、なのはが逞しくなってくれるのは、彼にとっても望むところである。
「きみはすごいね」
ユーノの中で、彼女に対する畏敬の念は強くなった。
だが、その結果がこれ。
これから4時間、この状態が続くのである。
でも……
彼女たちのあられもない姿。あれを反芻していれば、4時間などあっという間ではないのか?
そのように考えたユーノは、楽観的に過ぎた。
なぜなら、バインドが解けた瞬間、いかにして素早く便所へ駆け込むか……
その一挙手一投足を細部にわたって脳内シミュレートする必要性に迫られたのである。
尿意だけなら、まだよかった。
素っ裸のまま拘束された彼の消化器官は、不調をきたしたのである。
腸に、寄せては返すさざなみ。
それは次第に巨大なうねりへと変化していく。

こうして彼は地獄を見た。

「やれやれ、えろい…… じゃなくて、えらい目に遭ってしもたわ」
「自業自得だよ、はやて」
解放された3人は、忌まわしい部屋を後にした。
「しかし、さすがなのはちゃんや。あんな手でユーノ君をやっつけるやなんて」
「うまい方便だったね。ユーノが乗ってたら…… 危なかったと思うけど」
「まあ、うそは言っていないんだけどね」
「えっ」
絶句する2人をよそに、なのはは思った。
どうしてかよくわからないけれが、2人がユーノにエロいことをされるのを見ると、
どうも胸の中がざわついて、『いいよ』云々のようなことを言ってしまった……
なのはは、2人が彼に身体を預けるさまを、見たくなかったのである。
「……ふう」
とはいえ、彼が言ったとおり、あのような状況でことに及ぶのは、避けるべきだったのだろう。
どうせなら、彼の思うところも、よく聞いてみたい気がするし……
「それにしても…… このほっとしたけど、微妙に悔しくて、腑に落ちない気持ちは……
 何なのかな」
3人は顔を見合わせると、大きくため息をついた。

161 名前: ◆hZy29OoBJw :2008/12/15(月) 00:55:25 ID:7yz7dnbY
以上。
なお、この内容は、昨今の「非処女騒動」等にはなんら関わりがありません。

エロというよりお下品なお話になった……
投下しつつ思ったのは、
フェイトファンの皆様方もごめんなさいww

162 名前: ◆hZy29OoBJw :2008/12/15(月) 01:02:30 ID:7yz7dnbY
ユーノ君には、まだしばらくチェリーのままでいてもらいます

163 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 01:04:47 ID:3MCPhItZ
司書長! 次のお仕置きの時には是非同席をぉぉおおおおっ!!!!

GJ!

164 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 01:08:03 ID:7Td39h7M
>それは一瞬。
>彼は足払いを食らい、床に倒れこむ。
>何が起きたのか、理解できない。
>倒れた瞬間には、全身がバインドでぐるぐる巻きにされていたのだった。

このあたりのなのはさんが戦上手すぎてワロタ

>>162
( 'A`)<まさに外道 GJ


165 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 01:21:20 ID:X1/fsYNi
GJ!ユーノくんの脱チェリー話にも期待してます
それはそれとしてはやての一人称は「ウチ」じゃなくて「私」のはずですよ

166 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 03:19:38 ID:WaQhzHoW
>「童貞すら守れずして、市民が守れると言うのかあっ!!」

革命と恐怖政治の先駆者、市民ロベスピエールの表敬訪問です

 ___,,,_      彡ミ  ミミヾ ヽ Y i r/ 彡,,,三 ミ ミミ,
  /_ |  _     ,彡ミ  ミ;'" "" "'''''"    :::. "'ミ ミ
 /ヽ/ |/     ,彡彡,,;'":: ..............::::::::......:::::.... :.  ヾ ミ,
 _/ |__,,l   彡彡;'"..::  _  :::::::  ..:::__ :::.. ヾミミ
        彡三ミミ, ..::.../;;;,,,"ヽ:::::l  l./;;;;,,"ヽ::..ミ彡三ミミ;,
       彡;;;;;;;;;;;;;Yミ/"l;;;;;;;",,;;;;;;l===l;;;;;;;,,,,, ;;;;l‐-ミY;;;;;;;;;;;;ミ
        ミ;;;;;;;;;;;;;彡/"ヽ;;;;;;;;;;;_/ ::l   ヽ;;;;;;;;;;_/'ーミミ;;;;;;;;;;;彡
 ___    ヾミミミ彡;      ̄ ̄:: ..:l  ::   ̄ ̄   ミミミミ彡
 _|_|_ l |  l l ヽ;;;l::.     r'"..::..::.."ヽ    .::l  ,/,l'
  |  | | |  l l ∂ l::::...   ..::`ーニ ニ−'::..  ..::: l∂/ ,;l   革命における政府の基礎は徳と恐怖である。
 /  | . 、|   ヽ、ヽ....:::l :::...    ____    ..::: l' ::.....,/    徳なくしては恐怖は忌まわしく
           \__,,:l   : .;:rT_|__|__|_Tヽ, .:::: l、._/     恐怖なくしては徳は無力である
           r-―/:ヽ   ''" ̄.............. ̄"'' ::: / ̄r^ヽ  そして、革命における私の人生の基礎は
          /∧ii, :l、ヽヽ   ..::::   ::::   //:://"ヘ 童貞であり続けることである。
.         /,i'iiii, ii, l \ \  ::::::::..     /::/ .::l liiiiii;,ヽ
        /,i'iiiiiiii, ii, l  "'ヽ\ :::::::..............//'"  .:l liiiiiiiii;,ヽ
       /,i' iiiiiiiiiii iii, l   "i "''ー――'" /   ..::l liiiiiiiiiiii;, \
      /,i',;iiiiiiiiiiiiii ,iii l.    l:::::::::::;;;;;;;;;::::/   ...:::l liiiiiiiiiiiiiiii;,ヽ\
    //,iiiiiiiiiiiiiiiiii ii l:::....  l,,,...:::::;;;;;::::/  ...::::::l liiiiiiiiiiiiiiiiii;,,ヽ ヽー-、


167 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 12:41:26 ID:7vLUH38o




















































168 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 12:42:42 ID:7vLUH38o




















































169 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 12:44:09 ID:7vLUH38o




















































170 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 12:54:03 ID:ErR/VYS5
>>104
GJ!!
まさかジュニアまで敵になったりしないよな…
とうとう決戦の時、セッテにはああ言ってたものの、エリオは妻と恋人を辛い目に合わせたロークアをやっちゃっても、よいかと思ってまうんだ

171 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 17:04:45 ID:SrZrYXq9
しかし冷静に考えると妻と恋人ってなんなんだw

172 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 17:24:15 ID:N80A6vdD
(;`−´)(;'A`)「「え、普通じゃないの!?」」


(`−´)('A`)

173 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 18:32:58 ID:W+CjEEIH
>>162
GJです。今しばらくチェリーなユーノに敬礼www

てか、3人にイロイロしている時のユーノは全裸なんd(略

174 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 19:54:50 ID:/LMWOJJX
>>161
朝見たのだが、帰ってくるまで一日中頭からはなれなかったよw
実に変態なはやてとユーノに乾杯。GJ

175 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 21:01:04 ID:m9OqnqTl
>>80
チンク、ヴァイス…
あの世であってもお互いの姿を認めた上で本当の兄妹になって欲しい
全員ジェノサイドのエンドはいやああああああ
ノーヴェとスバルは和解できるのか…いや、できると信じてる!
GJ!!!

176 名前:サイヒ:2008/12/15(月) 21:39:27 ID:w2yYJrpR
>>121
・ハラオウン家
エイミィ、フェイト、カリム
・スクライア家
なのは、アリサ、すずか
・ナカジマ家
はやて、ギンガ、チンク、ノーヴェ、ウェンディ、ディエチ
・モンディアル家
スバル、ティアナ、キャロ、ルーテシア
・スカリエッティ家(十年前)
ウーノ、ドゥーエ、トーレ、クアットロ(いずれも内縁の妻)

・セッテ
トーレ(セッテの脳内限定)
・オットー
ディード

Q  セインさんは?
A  そっとしておいてやってください。


他の家の話もたぶん書く。

177 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 21:42:49 ID:2jxTrT95
>・モンディアル家
>スバル、『ティアナ』、キャロ、ルーテシア

ちょ、グランセニック氏どうしたwww

178 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 21:51:52 ID:2BJJO0l9
>>176
セインさんはシスターシャッハの嫁。


つか、ゲンヤさんが死んじゃうw


179 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 21:55:00 ID:fwSF0BiS
>>177
実は水面下でライフルと槍の大きさ比べがあったんだな。

180 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 22:00:08 ID:WTMSomQM
>>176
楽しみにしてます!

181 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 22:13:39 ID:wYR9KZ34
ゲンヤさん死んじゃうなー。まぁでも老後も安心と考えれば

しかしリアルな話、嫁陣が30後半あたり差し掛かったらゲンヤさんボケはじ(ry

182 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 22:19:21 ID:2rMgel9y
〉Q  セインさんは?
A  シャッハさんと

183 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 22:23:58 ID:N5oEnXWF
ヴィヴィオは素直にスクライア家の娘ポジか?
安心したような残念なような。

184 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 22:24:44 ID:ErR/VYS5
>>171
それがいいんじゃないか!
というか上司達にまで関係ばれてた三人に万歳!

185 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 22:25:07 ID:rrJeUkuZ
ゲンヤって老けて見えるけど
まだ、三十路中〜後半だと思ってる。

186 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 22:35:39 ID:wYR9KZ34
あー、俺若くても40半ば、ヘタすりゃ50から先ってイメージだった
結婚→子作り→養子で、その養子がそこそこ大きくなってる訳だし
回想見る限りは10代で結婚って事もなさそうだったから

187 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 22:38:23 ID:2BJJO0l9
>>183

ヴィヴィオはザッフィーに色目使ってアルフに囓られる。

という夢を見たい。

188 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 22:40:19 ID:fwSF0BiS
子犬フォームなら可愛い画じゃないか。

189 名前:野狗:2008/12/15(月) 22:56:07 ID:2BJJO0l9
 IrregularSの続きを書こうとしたらなんかデンパ来ました。

 フェイトさんが鬼畜です(ギャグ)
 はやてファン、ごめん。

 タイトル「オーディション」
 
 レス数7です
 あぼんはコテで。

190 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 22:56:41 ID:2BJJO0l9
          1

 ヴァイスは、いつも通り寝酒をたしなんで眠りについた。
 なにか、いつもと酒の味が違うような気がしたけれど、気のせいだと思った。

 気のせいじゃなかった。
 気がつくと、見知らぬ倉庫のような一室に後ろ手に縛られて転がされていたのだ。
 部屋は暗くてよくわからないが、自分以外の誰かがいることは雰囲気でわかる。

「誰かいるのか?」
「……その声は……たしか六課で聞いたことがある……」
「はいはい、静かにね」
「今の声……なのはなのか?」
「はいそこ、喋っちゃ駄目」
「フェイトの声!?」
「だから喋っちゃ駄目だって」
 
 鈍い音。そして広がる静けさ。ヴァイスは口を閉じることにした。

(誰だか知らないが、あんたの犠牲は無駄にはしない)

 ライトが煌々と照らされる。目を細めながらヴァイスは、周囲の人間を確かめる。
 ヴェロッサ、ゲンヤ、グリフィス、エリオ、カルタス。全員が後ろ手に縛られている。
 そして頭に大きなコブを作って気絶しているのはハラオウン提督である。
 さらに、部屋の隅には人が一人入れる程度の大きな袋。しかも、もぞもぞ動いている。

「はーい、皆さんこんにちは」

 先ほどのクロノの指摘は当たっていて、そこにいるのはなのはとフェイトであった。

「ではこれから、予選を行うの」
「予選って、なんの?」
「フェイトちゃん、垂れ幕準備」
「ウン、できてるよ、なのは」

 ジャーンというかけ声とともに広げられる垂れ幕。

「輝け第一回、精子提供者オーディション」
「わー、どんどんパフパフ〜〜。なのは素敵〜〜」
「えっと、すいません。なのはさん、フェイトさん、お酒入ってますか?」
「珍しいことに二日連続の休みが取れたので美味しいワインをフェイトちゃんと一ダースほど空けたけれど、この上なく素面なの」
「あんたたち完全に酔ってるよ!!」

191 名前:野狗:2008/12/15(月) 22:57:16 ID:2BJJO0l9
            2

 ヴィヴィオには弟か妹が必要だと思いました。
 だけど、女同士では子供が作れません。
 プロジェクトFは問題外。
 クローン&戦闘機人? ふざけるな。
 だったら、精子を提供してもらって子供を作ろう。優秀な男性の精子だったら子供も優秀で文句なし!
 何しろ聖王の弟か妹になるわけだから、それなりに優秀な子じゃないと困る。

「というわけで、精子提供者をあまねく募集します」
「いや、これどう考えても強制だからっ! 第一、なのはさんにはユーノさんがいるでしょうに!!」
「それは、語るも涙、聞くも涙の悲劇なの。ねえ、フェイトちゃん」
「うん。初めて聞いたときは私も爆笑したものだよ」
「爆笑かよ!」

 □ □ □ □ □

 一時期、なのはの故郷の次元世界でフェレットとして暮らしていたユーノ。
 しかもなのはとは同居の身。家族には単なるフェレットと思われていたけれど、それでもユーノは幸せでした。
 だけど、家族から見たユーノは単なるフェレットなのです。
 ある日、学校から帰ってきたなのははユーノ不在に気付きました。

「お姉ちゃん、ユーノ君は?」
「ああ、寝てる隙に、恭ちゃんが獣医に連れて行ったわよ」
「え? ユーノ君病気なの?」
「ううん。去勢」
「去勢ってなあに?」
「おチンチンを切り取ること」
「ふーん。そっかぁ……って、えぇええええええっ!?」

 帰ってきたユーノ君は一晩泣き明かしました。でも三日もすれば立ち直りました。吹っ切れました。
 というより吹っ切りました。というより吹っ切るしかありません。
 おちんちん復活の魔法なんて、ありません。ジュエルシードも役には立ちません。
 ジュエルシードに「おちんちん返して」と祈るなんて、恥ずかしくてできません。

 □ □ □ □ □

「いやぁ、何度聞いても笑えるね、この話」
「フェイトさん、あんた人の皮を被った鬼だねっ!!!」
「ううん。皮を被ってたのは、ユーノの切り取ったおチンチンだよ?」
「だれか、この女なんとかしろ」
「無理ですよ」

 エリオがさらっと言った。

192 名前:野狗:2008/12/15(月) 22:57:49 ID:2BJJO0l9
          3

 突然、外から聞こえる怒鳴り声。

「ぐぉるぁ!!! 開けんかい! 中におるのはわかっとるんじゃあ!!!」
「主はやて、お退きください、ドアを破壊します」
「はやてちゃん、落ち着いて」

 ヴァイスは思わずゲンヤを見る。

「……あんな下品な言葉遣いの女なんて知らね。なぁ、グリフィス」
「当然です、あんな下品な部隊長なんて存在しませんから」
「いや、シグナム姐さんとシャマルさんの声も聞こえるんですけど」
「あの、あれだ。そっくりさんだよ。仏像マニアとか、生徒会執行部長とか」
「両方とも女子高生じゃねえか、ハーレムじじい」

 怒鳴り声に続いて、まるでシュベルトクロイツで金属壁を叩いているような音が聞こえてくる。

「ゲンヤさん返せぇ!!! 後はあげるから、ゲンヤさんだけ返さんかーーーい!! ゲンヤさんの種は私のものやぁ!!」
「……はやて、必死だよ。どうする、なのは?」
「もてない女はしつこいの。これだから異性愛者は困るの。仕方ないから、ゲンヤさんは返すの。
考えてみたら、スバルやギンガみたいな大食いが生まれたら困るの」
「今何言うたーーーー!!! 聞こえてるで、なのはちゃんーーー!!!」
「ちっ。地獄耳め。ま、いいの。フェイトちゃん、お願い」
「わかったよ、なのは」

 ゲンヤをぶら下げて、別の出口から出て行くフェイト。
 少しすると外の騒音は止み、フェイトが戻ってきた。

「話はついたよ。後のメンバーは好きにしていいって」

 隊長、ひどすぎます。

「でも、そろそろエイミィも気付くんじゃないかな」
「やっぱり妻帯者はまずかった?」
「うん。いくらエイミィでも、クロノの種は分けてくれないと思うよ。クロノはどうでもいいけれど、エイミィとは喧嘩したくない。ごはん、美味しいから」
「じゃあ、クロノ君もいいや。フェイトちゃんお願い」
「うん」

 提督を抱えて出かけていき、少しして帰ってくるフェイト。

193 名前:野狗:2008/12/15(月) 22:58:22 ID:2BJJO0l9
         4

「さて、残りから選ぼうか、なのは」
「そうだね。あれ? ちょっと待って、フェイトちゃん。知らない人がいるよ」
「……本当だ。間違えたのかな」
「いや、あの、俺、ほら、陸士の……」
「ごめんなさい、知り合いと間違えたみたい」
「いや、知り合いですから。俺、カルタスですから!」
「知らない名前なの」
「ギンガさんと一緒に六課に出向してたでしょ!!」
「ギンガは一人で出向してきたの」
「記憶捏造してる!?」

 あっさり捨てられるカルタス。

「気を取り直して」
「飲み直そうか」
「まだ飲むのかよっ! って、ワイングラスも無しに……ラッパ飲みですかーーー!!!」
「ヴァイス陸曹! あれを見るんだ」
「なんですか、グリフィスさん……って、あれはっ!!」
「ワイングラスとかボトル一気飲みとか言ってる場合じゃないぞ……」
「あれは………紛れもない……」
「ああ、どうみても、ワイン樽だ」
「うわっ、フェイトさんが樽持ち上げた!!」
「飲んでる! 樽から飲んでるよ!!!」
「あんたらどんだけ酒豪だよっ!!!!」
「なのはさん二樽目に行ったぁっあああああっ!!」

「あ、こんちわ」

 壁を抜けてやってきたのはシスター服のセイン。

「なんだか、ヴェロッサ迎えに行って来いって言われたんだけど……。連れて行っていいよね?」
「誰に言われたの?」
「えーと、騎士カリムとシスターシャッハとオットーとディード」
「……セイン、一番下っ端なんだ……」
「ち、違うよ!! 下っ端なんかじゃ……………オットーとディードは腐っても騎士カリム付きだから、シスター見習いのあたしより格が上だとか……」
「あ、セイン、泣いてる」
「泣いてないよっ!! 最近、オットーとディードが本気であたしがお姉ちゃんだって忘れてるとか……そんなこと、全然……ひっく……ない……えぐっえぐっ」
「セインが泣いてるの」
「……ユーノのおチンチン切りほどじゃないけど、これはこれで面白いね」
「フェイトさん、どんだけ鬼畜なんだよ!!」
「あ、エリオくんが目をつぶってなんか呟いてますよ?」
「……フェイトさんは優しい人、フェイトさんは優しい人……フェイトさんは優しい人……」
「確実にトラウマ作ってるな、これ」

 泣きながら、それでもしっかりとヴェロッサを連れて帰っていくセインだった。

194 名前:野狗:2008/12/15(月) 22:58:56 ID:2BJJO0l9
       5 

「さて、残りは三人に絞られたね」

 大地が揺れる。
 巨竜の雄叫びが聞こえる。

「なのは、何か聞こえた?」
「なんにも」
「いや、どう考えてもヴォルテールの雄叫びと、地雷王の地震ですよ!?」
「つるぺたロリっ子に参加の資格はないの。帰ってもらうの」
「馬鹿なっ! つるぺたは正義! ロリっ子は人類の宝ですよ!」
「……グリフィス君にも帰ってもらおうか」
「そうだね。ロリは死すべきだね」
「ロリは死すべきなの」
「どうせ鬼畜眼鏡だしね」
「それ別次元ですから!!!」

 ヴァイスは冷や汗をかいていた。この調子だと、残るのは自分。
 キャロとルーテシアがエリオを奪回し、ロリ鬼畜眼鏡が追い出されたら残るのは自分だけである。
 この二人に精子を提供するのは勘弁である。男には男の意地がある。
 男として。
 兄として。
 兄として。
 兄として。

 …………シスコンですけど何か?

 誰もいない空間に問うてみたとき、壁が崩れて外の空間が見えた。
 そこには、ヴォルテールとフリードとガリューと地雷王と白天王がひしめき合っていた。

「エリオ(くん)を返して!」×2

 なぜかグリフィスが満足そうな、慈しむような目で二人を見ていたりした。


195 名前:野狗:2008/12/15(月) 22:59:31 ID:2BJJO0l9
      6

 結局、グリフィスとヴァイスが残されていた。

「ロリは困るね。立たないよ。私たちの魅力が通じない相手だよ」
「……十年前なら見事に通じてたのに……」
「そうだね。あの頃なら向かうところ敵なしのロリだったよね」
「天真爛漫。影有りトラウマ持ちパツキン露出狂。さらにはマニアックな車椅子少女萌え兼関西弁少女萌えまで」
「なのは、それ違うよ、露出狂じゃないよ。まじまじと見られたら恥ずかしくて、ちょっと気持ちよかっただけだよ」
「フェイトちゃん、それを露出狂って言うんだよ」
「知らなかったよ。さすがなのはは物知りだね。ご褒美にワインもっと飲んでいいよ」
「もう飲んでるの。それにしても、永遠のロリータ騎士ヴィータなら魅力が通じてたのにね」

 ここでグリフィスが激しくうなずき、レイジングハートで殴られる。

「このロリ野郎はどうするの?」
「シャーリーが欲しがるかも知れないよ」
「じゃあ命は助けようか」
「そうだね」
「じゃあ、こっちは?」

 ヴァイスは後じさりしようとするが、縛られていてはうまくいかない。

「待て。俺はあれだ。ほら、男としては色々あれなんだ」
「精子提供者にはなりたくない?」
「そんな得体の知れない実験に……」
「直接体内に提供するとしたら?」
「是非協力させてください」

 バルディッシュで殴られた。

「やっぱり男は獣だったね、なのは」
「うん。よくわかったよ。保険を準備しておいてよかったの」 

 残った袋を開く二人は、そこから最後の犠牲者を引きずり出す。

「さあ、女同士でも子供作れる方法を開発してもらうの」
「無理だとか言ったら、クローン百体作って全部神経繋いで百回殺すからね?」
「ごめんなさいごめんなさいこめんなさいこめんなさい…………」

 引きずられていくスカリエッティの姿を見ながら、ヴァイスの意識は薄れていった……

196 名前:野狗:2008/12/15(月) 23:00:09 ID:2BJJO0l9
        7

 翌日。酔いの覚めた二人の二日目の休暇は、関係方面への謝罪に費やされたという。

 ちなみにその数年後、本気で開発したスカリエッティによって、女同士でも子供が作れる方法が確立されたという。

197 名前:野狗:2008/12/15(月) 23:00:44 ID:2BJJO0l9
 以上、お粗末様でした。

>>マニアックな車椅子少女萌え兼関西弁少女萌え

 ………僕じゃないですよ……違うデスよ?


198 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 23:16:57 ID:h9n0WSXr
野狗様GJ
それにしてもユーノ哀れw
そしてスカさん、いい仕事してますね。
もちろん女×女がいけるなら男×男もOKなわけで クロノ×ユーノ成立ですね。

199 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 23:20:01 ID:qBccm7yc
GJ

>「ギンガさんと一緒に六課に出向してたでしょ!!」
>「ギンガは一人で出向してきたの」
>「記憶捏造してる!?」

しかし記憶捏造してるのはお前だwしてないよw

200 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/15(月) 23:53:07 ID:2rMgel9y
>>198
ただし子供は尻から出る

201 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 00:54:35 ID:lFjzeGDO
GJ!!です。
誤りに来た二人を見る眼が皆、ロアナプラ在住のヤル気満々の人達のドブ川のそこより粘っこく、
どす黒い瞳な感じがするw

202 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 00:57:21 ID:lFjzeGDO
GJ!!です。
誤りに来た二人を見る皆の眼が、ロアナプラ在住のヤル気満々の人たちの、
黒以上に、さらにどす黒い邪悪を孕んだ眼をしてそうだw

203 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 00:58:11 ID:lFjzeGDO
連投スイマセン。

204 名前:アルカディア ◆vyCuygcBYc :2008/12/16(火) 02:13:43 ID:1DaJ+JXr
なんだか、突然思いついて30分程でSS、というより小ネタを書いてしまいましたので投下してみます。
エロ……じゃなくて、微エロと非エロの間くらいで。

205 名前:アルカディア ◆vyCuygcBYc :2008/12/16(火) 02:18:37 ID:1DaJ+JXr
 星の綺麗な夜だった。
 ルーテシアは静かな眠りに就いている。
 ゼストはその夜も淤血を吐いて噎せ込んだが、ルーテシアの眠りを妨げまいと、それを飲み込んで堪えた。
 
「ほら、旦那、口元ぬぐって……」

 アギトはゼストの意を酌んで、静かに飛んで看病をした。

「済まぬ、世話をかけるなアギト―――」

 ゼストは短く礼を言うと、悩ましげに眉を寄せたまま眠りについた。
 その苦しげな寝顔を、アギトはじっと見つめる。
 ……アギトの知る限り、ゼストはあらゆる面で禁欲的な生活を続けてきた。
 酒も煙草も嗜まず、美味な食料が手に入ってもすべてルーテシアとアギトに分け与えてしまう。
 眠りすら満足にとれず、こうして今も苦しんでいる。
 アギトは寝顔を見つめながら、せめて夢の中ぐらいはその荷を降ろして欲しいと切に願った。
 だが、自分は与えられるものなど何一つとして持ち合わせていない。
 在るのは、ゼストとルーテシアに救い出されたこの身一つだ。
 ―――ならば、この身だけでも捧げよう。
 アギトはそう思い立ち、ゼストが絶って最も久しいだろう快楽をプレゼントすることにした。
 静かに服を脱ぎ捨て、変身魔法で等身大に化ける。
 ゼストの腰のベルトを緩め、子供の傷を摩るように優しく愛撫する。
 次第にゼストの雄の部位が、その機能に従って隆起していく。
 十分と判断したアギトは、その上を跨ぐように立った。
 アギトは悲しげにゼストを見下ろす。その巌のような顔は、眉根を寄せて厳しげのままだ。
 そっと、ゼストの上から腰を落し、結合させようとした瞬間。

「その必要は無い、アギト」

 重々しい声が、それを留めた。

「起きてたのかよ、旦那!?」
「いや、宿痾のようなものでな。人肌が近づき過ぎると自然と目が冴えるのだ」
「旦那、それは、この……」
 
 言い訳のしようが無い状況に慌てふためくアギトの頭を、ゼストはそっと撫でた。

「アギト―――俺は、童貞だ。
 武に生きた青き頃は、己の修行の妨げにしまいと女色を自ら禁じていた。
 知己を得て騎士として働くようになってからは、色事を思う暇も無く職務に没頭してきた。
 酒も女も、暖衣飽食も要らなかった。ただ、あいつの目指すミッドの平和の礎になれさえすれば良かった。
 こんな俺に想いを寄せてくれた女性もいたが、全て己には不要と割り切り、鑑みもしなかった。
 だから、そんな上等なものは、俺には必要無い」


206 名前:アルカディア ◆vyCuygcBYc :2008/12/16(火) 02:19:23 ID:1DaJ+JXr
 アギトは返答すら出来ず、懐かしいものを回想するように語るゼストの顔を見つめていた。
 そういえば、この男の昔語りを聞くのは、これが初めてではないだろうか。
 そんな、自分の信ずる道を早足に駆けてきた男の人生の結末に、一体何があったのだろうか。

「旦那、あたしは―――」
「言ずともいい、アギト。お前の誇りを汚してまで、この死に掛けの伽を勤めようとしてくれた情けには感謝する。
 ―――だがそれは、矢張り俺には不要なものだ。
 お前はそんなことより、早く己に合う良い主を見つけて―――」

 ゼストが再び吐血した。ルーテシアを目覚めさせまいと、押し殺して咳き込む。
 慌てて、アギトはその口元を拭う。
 情けじゃあない! 誇りを汚してなんていない! そう叫びたかった。

「お前ももう眠れ、アギト。……どうやら、今夜の俺の側には閻魔の遣いが座っているらしい。
 そう急かなくても、用事が済めばこちらから出向いてやるというのに、気の早いことだ。
 お前は、あちらでゆっくりと眠れ。俺は今夜は、こいつと……」

 ゼストは、再び独りきりの眠りに落ちていった。
 その寝顔は悩ましく、到底夢の中で安息を得ているようにも思えない。
 ―――夢の中程度なら、助けになれると思ったのに。
 裸のまま、アギトは声を押し殺して静かに泣いた。
 変身魔法を解除し、元の大きさに戻る。
 人肌でゼストを目覚めさせぬよう、体に布切れを巻きつけ、静かにゼストの隣に潜り込んだ。
 果たして、ゼストは目覚めなかった。
 ゼストの厳しい寝顔を見上げながら、そっとアギトは瞼を閉じる。
 ―――認めたくないが、ゼストがもう長く無いのは解っている。
 自分は、ゼストにとって只の旅の道連れに過ぎないことも解っている。
 それでも。
 
「あたしは、最後まで側にいるからな、旦那」

 夢うつつにそう呟いて、アギトは眠りに落ちていった。
 星の綺麗な夜だった。 

207 名前:アルカディア ◆vyCuygcBYc :2008/12/16(火) 02:21:39 ID:1DaJ+JXr
一レスで終了するミニSSにしたかったのですが、途中で断念。修行不足です。
一回の投下で、最大で何レスくらいまで許されるのでしょうか?

208 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 02:30:39 ID:FvMA3qbY
多い分には何レスあっても構わない

209 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 02:44:21 ID:65rBrYnd
1回で20レスくらい使ってる人もいるし、たいていの長さなら大丈夫だと思う。

210 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 03:12:26 ID:onqSmMHs
短いがGJ!!
ってか旦那、童貞なのにカッコよすぎる!
少しくらい色欲に耽っても罰は当たらんちうのに……もったいないのう。


あと、氏のSSならどんだけ長くても構わないというのが私見です。
ってか、最近は氏の書く鬼畜眼鏡が中毒化しつつあって、次回が早くも待ち遠しいでありますwww

211 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 10:47:09 ID:OG8l+j92
>>186
遅レスだけど、
個人的には、クイントが二十半ばで殉職ってことで、ゲンヤもそん位の歳だと仮定すると
スバギンを十一年前に保護して、そん時は二十前半、んで本編(十一年後)→三十中〜後半ってことにならない?

212 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 10:56:57 ID:AykYud7g
>>207
とりあえず、1連投は10回以内にね。バイさるさんで規制されちゃうから。
支援要請あれば幾らでもするぜ!

213 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 12:07:08 ID:Mtu+ggj6
>>211
あの顔で三十路半ばから後半はどんだけ老けてても流石にないと思うぞ…
ちなみに基準を挙げると、SSXキャラだがスバルの上司が36歳

214 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 12:26:59 ID:FvMA3qbY
カリムやスカの年齢を考慮するにゲンヤが80歳を越えていても俺は驚かない

215 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 12:57:43 ID:UMlWDmZz
>>211
さるさん規制は、現在のところ解除されているらしいですよ。
ttp://tail.s170.xrea.com/wiki/st/index.php?%CD%D1%B8%EC%BD%B8%2F%A4%CF%B9%D4

20レスを越える連投になると2時間規制(バーボンハウス)を喰らう可能性がある。
これを喰らうと、丸2時間は書き込みも閲覧もできなくなる・・・「20」って言う数字を大体の目安と考えて良いんじゃないですかね?



216 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 13:05:55 ID:9gOWykR2
>>207
GJ!
本当にかつての部下を守りきれなかったことを悔やんでも悔やみきれない思いでいるんだろうなと感じました

217 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 13:44:57 ID:FvMA3qbY
>>215
支援すりゃいいだけだし特段目安とかはいらないんでね?
容量どんだけ超大でもどんとこいなスタンスでおk

218 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 15:56:17 ID:lFjzeGDO
無印や二期の時になのはだけじゃなく、オリキャラだが彼女が通う学校の新任教師も魔力持ちだったら面白そうな気がするw
教師という性質上、生徒(なのは)が危険な事をしようとするのを止めたり、二期終了後になのはやフェイト、はやてを管理局へスカウトしようとするリンディと世界の考え方の違いで議論したり、
何だかんだで、管理世界に行ってあっちでも、教職免許を取って教育者になるけど、魔法が使えるという事で魔法学校へ赴任するが、カリキュラムで戦い方というかシューターの使い方的なものを、
教える授業とかがあって凹むとか。(第二次大戦時の教師の苦悩に似たようなの)

219 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 16:11:52 ID:HSa5lkxy
魔法学校に雇われておいてそれはわがまますぐる。
嫌なら、普通の学校に就職しろ。

220 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 16:25:52 ID:lFjzeGDO
まぁ、一例でw
一般の小学校とかで銃の撃ち方や槍の使い方を教えないし、そうゆう面から見て、
今後、制御も出来ずに魔法を暴力の手段として使われるのを避ける為のものとしては理解しているけど、はぁっ気落ちする感じとか。
仮に、未来のエリート(魔法が使えるということはアドバンテージっぽいし)が、管理局に少しでも、関心を持つようにちょっとそうゆう、
子供が魔法や管理局に憧れるようなものが挟んであるのを、違う世界から来たから気づくなどがみたいなぁってw
まぁ、そうゆう自国の国を意識させたり、仮想敵国を作って一致団結するやり方は地球にもあったなぁとかんじるとかw

221 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 16:48:23 ID:HSa5lkxy
さじ加減の難しいSSになりそうだ。
正直、俺だったらその設定からは逃げる。あるいはヘイト上等で正面からガチで書くか。

222 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 18:03:31 ID:H4pl26qo
学校教練とか配属将校とか調べると面白いと思う。

223 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 19:11:50 ID:lFjzeGDO
そうか、個人的には次元の平和を守る為には才能のある子供を戦場へ送り込むのは仕方ないって思考の人に、
ここは管理外の地球という星の一国家の日本であり、この世界の常識では、教師は生徒を……いや、大人は子供を守るものなんですとか、
言っている事は青いけど、平和のために送り込むのは仕方ないと諦めて、他の手段を考える事もしなかった人が多少感化されるとかみたくて。
今すぐには当然不可能だけど、数十年後の為に、少しずつ何か変えようと戦う管理局側の人とかもみたいし。


224 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 19:40:14 ID:bJYATABf
年齢云々はリリカル世界最大の不自然な点だからなぁ。
ぶっちゃけ小学生な年齢の子供に戦闘やらしてることについては「そういう世界なんだふーん」で済ましとくのがいいと思う。
魔法「少女」と銘打ったからそういう年齢にしたってだけの製作所サイドの都合だろうし。
突っ込みだしたら戦闘行為どころか、十歳のエリキャロが書類仕事やってるってだけで「嘘つけやw」になる。

225 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 19:54:31 ID:lFjzeGDO
そうだよなぁ、この関係の問題扱うと角が立つんだよなぁ。
なんていうか、アンチ要素が入るけど深い作品が読みたいと思っちゃうんだw
あと、教師によるなのは達弄りwSTSでは、無印時に二十台だとしても、三十台ぐらいだしw
新人に、三人娘のちっさいころの話をするとかwあとは、ティアナ撃墜後に教師に相談とか。

226 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 20:06:42 ID:08s5lmYP
ID:lFjzeGDO
とりあえず少し自重しようか
っつーか>>218以降が全部自演に見える……さすがに気のせいだと思うが……

227 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 20:21:34 ID:w6zjcywF
色々捏造して妄想もといプロットを膨らませるのも大事だぜ兄弟
ここはそのためにあると思う


もっとフリーダムなくらいで丁度良いと思う俺は間違いなく二次創作中毒

228 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 20:43:13 ID:08s5lmYP
妄想や捏造は一向に構わないと思うけど
彼は一人で白熱しすぎかな、と
それに言い方は悪いが一行一行が長くて目障り……

あと>>218以降はやっぱ書き方似すぎな気が
句読点率異常に上がってる上にこうも似てるとどうにもね

229 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 20:50:00 ID:lFjzeGDO
申し訳ない。
自分以外の書き込みがあると、ヒートアップして書き込みすぎた。

230 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 21:01:11 ID:65rBrYnd
若干スレ違いだが

ハーヴェイがプレイ中に魔法でなのはの記憶からなのはの好きなプレイの
刺激記憶を顕在化して擬似的に10P状態を作り出す

とか何となしに思いついた。
思いついただけで筆力無いけど。

231 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 21:08:46 ID:OG8l+j92
クロススレみたく雑談スレ作るのもなぁって感じだし。

232 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 21:14:06 ID:FvMA3qbY
>>231
お前は何を言ってるんだ

233 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 21:14:37 ID:23iqdNNm
最後は話書けるか書けないかだし別に今時分は自演しようが何しようがどうでもいいだろう
書くなら書く、書けないなら妄想垂れ流しただけでした、で終わり
話書いて面白ければ反応返ってくる、反応がなくても泣かない

234 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 21:57:12 ID:v8owbQVF
とりあえずチン○要員増やそうぜ!

いまのところエロ有りオリジナル相方でちゃんとラヴラヴでエロエロな関係が出来上がってるのは

・トーレ
・クアットロ
・ウェンディ
・リンディ
・シャマル
・スバル

くらいか?
フェイトさんのお見合いはまだだったはずっていうか非エロだったorz
(なお保管庫のタグ検索なので抜けてるのありましたらすみません)

235 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 22:06:51 ID:Renq6gmB
>>チン○要員増やそうぜ!

つまり、長年暖めていたオットーふたなりネタの解禁の時ですねっ!

あれ? なんか双剣持った少女が飛んできた……

236 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/16(火) 22:43:36 ID:93o3ZNGH
>>234
チンク姉が分裂するとな

237 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 00:36:29 ID:fUx5l/ru
性戦(誤字に非ず)用ガジェットを開発すれば万事解決

238 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 01:45:13 ID:4FAzrOmj
>>237
そのネタ、「ソープ・ナンバーズ」シリーズで、
既に書かれていなかったっけ?

239 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 02:17:56 ID:jfhA8PzE
>>238
もっとだ!
もっと戦火(SS)を!!
んで思いついたのが膣内洗浄機能搭載型GD!

・以下即席妄想

「ふッ……くぅっっ!!」

 ジュルジュル
 ジュジュー〜〜……

「あ、ああァ〜〜……はあ、あ、明日のOFFはゼストとの一緒なんだ。だからちゃんとキレイにしないと……」

 スイッチを強に。
 チンクの膣に咥えられたGDの数本の細いホースは、洗浄用の液体を出しつつ、もう一本で強烈に吸引をはじめる。
 穢れた膣内を少しでもキレイに……

「アッ、アッ、ああああぁあ〜〜〜ッッ!?」

 アクメ。人外の快楽でチンクは達した!
 きっとあの人は汚れてても、他人の精液まみれになってても優しくしてくれる。
 
「うう……、ぐぅ……」

 ゼストのことを思うだけで涙が溢れてくる。
 今の境遇。ソープ・ナンバーズの売れ筋ランク1位。
 その幼き外見ゆえ、引く手に数多。
 GDの洗浄機能が次のフェイズに進む。
 極細化したホースが子宮口から子宮内に入り込み、欲望のはけ口の洗浄に入る。
 子宮を内部からの刺激により、感じながら、達しながら、涙が溢れてしまう。

「ゼスト!ゼストォ!!あああああぁぁーーーー……」

 悲しみを孕んだオーガズム。あとどれくらい繰り返せば済むのだろう……。


《続き書くかも》

240 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 02:46:26 ID:ihMlZzkC
チンクがソープでナンバーワンとか、どんだけミッドはロリコンだらけなんだwww

241 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 08:30:48 ID:BTgErooV
>>240
まあデバイスからして男じゃなく幼女じゃないとマスターに認めない変態だからなぁ

242 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 16:36:22 ID:iXUXTjbE
20以降はババァ扱いなのかもな
ヤな世界だ

243 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 16:39:56 ID:ISJ0Owzr
16歳で熟女、18歳でババアと言われるってコラが有ったな

244 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 16:40:00 ID:IJZTC5NJ
でも19で魔法少女が名乗れる世界だぜ

245 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 16:53:49 ID:U/SJdiIX
そして一定年齢を過ぎると、外見が変わらなくなる

246 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 16:58:58 ID:HjUGbb2O
>>240
ヘルス起動六課でもエリオとヴィータが指名率2トップっていうネタがあったなw

247 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 20:08:26 ID:v50v6+4D
>>245
パパンの理想世界だよな
書き手としては、年相応の外見のおばちゃんとか欲しいんだけどな正直

248 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 20:12:34 ID:a8uPnhi+
>>245
と言うより年の取り方がまるでサイ○人

249 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 20:26:05 ID:8B5dRlrO
>>247
ミゼット、コラード校長がいる。

250 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 20:33:18 ID:WIl/LRvo
>>249
それはおばちゃんじゃなくておばあちゃんだろw

251 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 20:37:41 ID:wWF2A52c
彼女達は90才

252 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 20:40:06 ID:WIl/LRvo
sageろ

253 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 20:48:40 ID:jELlG6P8
>>251
少なくとも75歳以上の人は旧暦を知っているんだよな。
戦前の人みたいに。

254 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 20:51:35 ID:G2xukZIt
誰かミゼット、コラードで抜ける者はおるか!

255 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 20:53:39 ID:cxpZpL6C
>>253
ちょっとでも知っていると言えるのは80過ぎからじゃね?

256 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 21:00:10 ID:vfJaV06c
>>252
なんか最近たまにageたまま謝りもしない人いるねー。
sageも知らない新参なのかもだけど。

257 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 21:09:59 ID:8szBlM7J
携帯からのレスで入れ忘れたりってのもあるんじゃね?
PCで専ブラ使ってたりしたら残ってるけど。
まあ、sage忘れを謝らない理由にはならんがな。

258 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 21:34:41 ID:sgcsY74j
Janeで設定したら、sageてないレスは最初から見えなくすることもできるぜ
夏はかなり役立った

259 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 23:13:05 ID:v50v6+4D
エロパロってsage推奨なだけでsage必須じゃなかったような……
いや、そりゃ流れの速い板じゃないし、sageるのはマナーだ、それは確かだが
sage忘れたヤツはもれなく全員謝れ、ってのもちょっと変な話じゃないか?

260 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 23:31:57 ID:sgcsY74j
いや、そりゃキャロみたいな小さな胸じゃないし、触れないのはマナーだ、それは確かだが
手が滑ってついつい胸に触れてしまったヤツはもれなく全員謝れ、ってのもちょっと変な話じゃないか?

とエロオが言っております

261 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 23:33:05 ID:GNsbsguB
>>260
そこは謝っとけよwww

262 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/17(水) 23:49:31 ID:Psqi2/g9
まあエリオなら、フェイトさんの胸に触ってもまだ笑って許してもらえるんだろうな

263 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 00:03:10 ID:/JqTmttd
むしろ、その事で怒るのは、夜天の主ぐらいなもんです

264 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 00:05:56 ID:ID2SuBKg
ふにっ。
エリオ「すすすすみませんフェイトさん!」
スバル「うわー、エリオってやっぱりラッキースケベだね」
フェイト「急いでいるのは分かるけど、ちゃんと前を見なさい」

はやて「フェイトちゃんの胸に顔をうずめるなんて……あの胸は私の胸やのに……」

265 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 00:20:43 ID:qe+dcshg
>>264
なのは「はやてちゃん、エリオ。少し、頭冷やそうか……」

266 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 00:32:05 ID:DwzKVZoT
フェイトとヴァイスとかの組み合わせのエロSSって書かれないかなぁ。
デートをしているのなら前に見たことが歩きがするのですが。
戦闘のコンビとしても中々いいですし。フェイトが速度を生かした強襲と撹乱などで敵を足止めして、
その隙にヴァイスが狙撃w

267 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 00:32:40 ID:fyJzQHrg
ヴィヴィオ「(ぽんぽん)あれ〜ユーノくん胸ないよぉ…」
ユーノ「ボク、これでも一応男なんだよ、ヴィヴィオ…」

268 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 00:40:01 ID:WF19fAmu
>>266
その組み合わせだとヴァイスが腕からカマイタチ飛ばしそうだな

269 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 01:07:35 ID:BcE+I1dV
>>263
むしろエリオが夜天の王のおっぱい揉んだ時の反応が気になる
はやてなら笑ってもっと揉むか〜となりそうだが、低確率で感じてしまうと

270 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 02:53:25 ID:4hDyyG70
>>266
彗星のやつだっけ

271 名前:B・A:2008/12/18(木) 03:56:06 ID:SZl6Q/4t
>>269
実は免疫なくて、思わず引っ叩いてしまったり、と言ってみる。



投下いきます。



注意事項
・非エロでバトルです
・時間軸はJS事件から3年後
・JS事件でもしもスカ側が勝利していたら
・捏造満載
・一部のキャラクターは死亡しています
・一部のキャラクターはスカ側に寝返っています(その逆も然り)
・色んなキャラが悲惨な目にあっています、鬱要素あり
・物騒な単語(「殺す」とか「復讐」とか)いっぱい出てきます
・名前のあるキャラが死んでいきます
・無数に乱立する死亡フラグ
・主人公その1:エリオ
     その2:スバル
・今回の主役:チンクとヴァイス
・タイトルは「UNDERDOGS」  訳:負け犬

272 名前:UNDERDOGS 第十二話@:2008/12/18(木) 03:57:01 ID:SZl6Q/4t
スカリエッティが自室でチンクによって燃やされた白衣を新しいものに変え、折れた親指や踵の治療を行っていると、
ウーノから通信が入った。曰く、チンクとヴァイスの遺体は木端微塵に吹き飛んでおり、回収は不可能であると。

「そうか。彼女のISや彼の狙撃は良いサンプルになったのだがな・・・・・・肉片や髪の毛なんかも?」

『はい、全て燃えております』

「死後も私の好きにはさせない・・・・・か。だが、チンクの基になった遺伝子は私の手元に残っている。
時間をかければ再現も可能だろう。今度はもっと安定した個体になるよう調整しておくべきかな? 
いや、それでは感情が・・・・・それとも・・・・・・・・」

傷の手当てもそっちのけで、スカリエッティはぶつくさと独り言を呟く。
スカリエッティはクアットロのように人間の持つ感情を卑下しておらず、寧ろその可能性を強く買っていた。
火事場の馬鹿力という言葉があるように、強い感情は肉体の潜在能力を大きく引き出す要因となる。
それをシステムとして戦闘機人や人造魔導師に組み込み、自由に操作できるようになれば、
個体の性能を大きく向上させることができるからだ。しかし、長年の研究でそのメカニズムは徐々に解明されつつあるものの、
機械的なシステムへの置換は遅々として成功していない。感情を一方向に固定することはできたものの、
その時の状況によって多岐に変化するパーソナリティをシステム化するには至っていない。

「まだまだ時間が必要という訳か。そのためにも、そろそろ煩わしい邪魔者は排除しておいた方が良いな」

『既にトーレが戦力を展開しており、アレも直に現地に到着します。作戦の開始は、予定通りに行えそうです』

「よろしい。君はいつだってパーフェクトだ、ウーノ」

『ありがとうございます、ドクター。では、私は引き続き例の準備を進めておきます』

「ああ、頼むよ。最も、今回の結果次第では必要なくなるかもしれないがね」

ほくそ笑みながら、スカリエッティはウーノとの通信を切って自身のケガの治療に戻った。
その時、部屋の外で何やら争う物音が聞こえてきた。

『お止め下さい、陛下。そんなことをしても、お母様が目を覚ます保証は・・・・・・』

『うるさい、もうこれしかないんだ!』

『ですが、騎士ゼストの例も・・・・・・・・・』

『私に命令しないで、壊されたいの?』

『で、ですが・・・・・・・』

扉が開き、漆黒の装束に身を包んだ少女が無遠慮に侵入してくる。
サイドポニーに結われた茶髪に燃えるような赤と透き通るような翡翠の色をした目、
年の割に大柄なその体からは、神々しいまでの虹色の輝きが発せられてた。
かつて古代ベルカを支配した王のクローンにしてゆりかごを動かすための生きた鍵である少女ヴィヴィオは、
憤怒にも似た苛立ちの混じった双眸でスカリエッティを見やる。
その手には禍々しい輝きを放つ多面体の結晶が握られており、背後のディエチが不安げな顔でこちらの様子を伺っている。

「やあ、聖王陛下。直接お会いするのは2年ぶりかな?」

「挨拶は良いわ、スカリエッティ。あんたは私の質問に答えるだけで良い」

「これは手厳しい。久し振りに会ったんだ、お茶でも飲みながらゆっくりとお話したいものだがね」

「あんたと話していると反吐が出るわ。私が聞きたいのは1つだけ。このレリックを使えば、ママは目を覚ますの?」

そう言って、ヴィヴィオは持参した結晶を掲げて見せる。恐らく、保管庫から勝手に持ち出したのだろう。
厳重に鍵をかけた上に軽微としてガジェットを配備しておいたのだが、聖王である彼女にとっては障害にすらならなかったようだ。

273 名前:UNDERDOGS 第十二話A:2008/12/18(木) 03:57:43 ID:SZl6Q/4t
「なるほど、目覚めるのを待つのに飽きた訳か」

「質問に答えなさい。できるの? できないの?」

「無論、可能だとも。君が望むのならば今すぐにでも施術に取り掛かろう。
ただし、君が望むような形で目覚めるとは限らないけれどね」

「構わないわ」

「良いね、その執着は実に良い。それで、クライアントはどこだい?」

スカリエッティの言葉に、ヴィヴィオは無言で背後を指差す。
そこには、キャスター付きのベッドの上に横たえられた高町なのはの姿があった。
ゆりかご浮上の際の戦いでヴィヴィオに敗れ、植物状態に陥った彼女が人目に晒されるのは、
実に3年ぶりのことだった。醒めぬ眠りの中でも変わらぬ美しさを保ち続けるなのはを見て、
スカリエッティはまたも面白そうにほくそ笑む。

「よろしい。それで、どんなママをお望みだい?」

「もちろん、私だけを見てくれる、私に従順なママよ」





飛び交う炎と電撃を避けながら、ルーテシアは配下の召喚蟲達に指示を送る。
瓦礫の街を眼下に、ルーテシアは管理局の魔導師と戦っていた。
戦っている魔導師の名はキャロ・ル・ルシエ。彼女が言うにはアルザスの竜召喚師らしく、
使役しているのはフリードリヒとヴォルテールという2匹の竜だ。幻想とも謳われる竜種だけあって、
どちらも強い力を秘めている。だが、それを扱う召喚師の技量はお世辞にも熟練とは言えない。
魔力運用は拙く、一度に使役できる召喚獣の数も自分より少ない。召喚師としての格は、
明らかに向こうが劣る。それでも、彼女は必死で食らいついてくる。
インゼクトを突撃させても強固なバリアを覆って身を守り、地雷王の電撃も使役竜の炎で相殺される。
白天王は、さっきからヴォルテールを足止めするので精一杯だ。
ルーテシアの中で苛立ちが募っていく。
どうしてこの娘は邪魔をしてくる?
自分はただ、母親に会いたいだけなのに。
それの何がいけないことなのだろうか? 母親に抱かれて、愛されて、優しくされるのは子どもの当然の権利だ。
なのに、物心ついた時には自分の側に母親はいなかった。ナンバーズにはドクターがいて、ゼストにも家族はいたらしい。
けれど、自分には家族はいなかった。母親だと紹介された人物は培養槽の中に浮かんでいるだけで、笑いかけてもくれない。
どうすればあの人は目覚めるのかとドクターに聞けば、11番のレリックが必要だと彼は言った。
だからあちこちを旅して、11番のレリックを探して回った。
ゼストとアギトが別行動を取ったために、1人で孤独な夜を過ごさねばならない時もあった。
極寒の夜を毛布1枚で過ごし、消えてしまった焚き火を抱くようにして眠らねばならない時があった。
夜が明けて目を覚ましても、「おはよう」を告げられない寂しさを噛みしめねばならない時があった。
母親がいれば、こんな思いはしなくて済んだ。
寂しいのは嫌だ。だから眠っている母を起こし、抱きしめてもらう。そのために、11番のレリックが必要なのだ。
管理局の地上本部にいけば、きっとそれがある。それを使えば、母を起こすことができる。
なのに、どうしてこの少女は自分の邪魔ばかりする?
こっちの気持ちも知らない癖に、どうしてそんな偉そうなことが言える?
お前には母親がいるじゃないか。優しくて強い、綺麗なお母さんが。
お前には兄妹がいるじゃないか。いつも側にいてくれるお兄さんが。
何があっても自分を守ってくれる、温かい家族がいるじゃないか。
その眼差しは同情なんだろう。
その言葉は優越なんだろう。
その思いは偽りなんだろう。
どうせ、可哀そうな娘だと思って気紛れを起こしただけなんだ。
そんな偽善はいらない。優しくしてくれる人がいる奴なんかに、この寂しさがわかる訳がない。

274 名前:UNDERDOGS 第十二話B:2008/12/18(木) 03:58:21 ID:SZl6Q/4t
同じ召喚師なのに、どうしてこんなにも違うんだ。
自分も彼女も、年はそう変わらない。
なのに、あの娘には家族がいて、自分にはそれがない。
あの娘には温かいベッドと雨風を凌ぐ家があって、自分にはそれがない。
気に入らない。
同じ召喚師なのに。
私の方が強いのに。
いつしか、湧きあがる怒りのままにルーテシアは戦っていた。
インゼクトで睨みを利かせ、地雷王の連携で畳みかける。ヴォルテールも白天王で抑え込む。
目まぐるしく変化する戦場に対応できず、フリードリヒの窮地にキャロ・ル・ルシエのサポートが間に合わない。
それが堪らなくおかしかった。
ほら、本気を出せばこんなにも脆い。
お前なんか、私の足下にも及ばないんだ。
及ばないんだ。
及ばないのに。
及ばないのに、どうして諦めないのだろう?
体はボロボロ、魔法の連発と召喚獣の使役で魔力も底を尽きかけているはずだ。
なのに、どうして根を上げない。
どうして、まっすぐな目でこちらを見つめてくる。
どうして、そんなに悲しそうな目でこっちを見る。
苛立ちが募っていく。
その苛立ちを消すために、召喚蟲達に彼女の抹殺を命じた。
電撃が、魔力砲が、インゼクトの突撃が、一直線に彼女を襲う。
だが、地雷王の電撃はフリードリヒの火炎放射で遮られ、白天王の魔力砲はヴォルテールの魔力砲で相殺され、
インゼクト達もキャロ・ル・ルシエに撃ち落とされる。
無論、彼女達も無事ではない。防ぎ切れなかった余波がバリアジャケットを焦がし、衝撃が小さな体に襲いかかる。
それでも、キャロ・ル・ルシエはまだ立っていた。
どうして勝てない。
自分の方が強いのに。
戦闘経験も潜在魔力も魔力運用も召喚スキルも、全部こっちが上なのに。
なのに、どうして勝てない。
絶望的な能力差を見せつけられながら、どうして立ち上がることができる。
何故、諦めようとしない。
痛くて辛くて死にそうなのに、どうしてそんなにも必死になれる。
わからない。
こんなにもこの娘が必死になる理由がわからない。
無我夢中で投擲した短剣が彼女の射撃魔法で撃ち落とされる。
ヴォルテールを抑え込んでいた白天王が突き飛ばされ、地雷王がフリードリヒの火炎で焼き払われる。
ガリューは未だエリオ・モンディアルと戦っており、インゼクトでは彼女を倒すことはできない。
勝てたはずだったのに。
こっちの方が、戦力は上だったのに。
私の方が強かったのに。
なのに、勝てない。

『ルーちゃん・・・・・やっと、お話・・・・・・・』

キャロ・ル・ルシエの手がそっと差し出される。
敵意は感じられなかった。
そこにあったのは温かな慈愛。
ルーテシアが求めて止まなかった打算なき愛情。
絶対になくならない、かけがえのない思い。
ほんの一瞬、ルーテシアの中に安堵が芽生える。だが、それはすぐに込み上げてくる怒りと憎しみによって塗り潰された。
何故そうしたのか、自分でもわからなかった。ただ、気がつけば体は自然と動いていた。
地面を蹴って、体ごと彼女の胸に飛び込んでいく。その手には、魔法で生み出した紫紺の短剣が握られていた。


275 名前:UNDERDOGS 第十二話C:2008/12/18(木) 03:58:54 ID:SZl6Q/4t
『ルー・・・・・ちゃ・・・・・・』

キャロ・ル・ルシエの顔が、驚愕の色で染まっていく。
バリアも張れない至近距離からの不意打ち。こちらが肉弾戦の不得手な召喚師ということで、相手も油断していたのだろう。
短剣は彼女のバリアジャケットを易々と貫き、その向こうにある肉を突き刺す感触が手に伝わってくる。
主を傷つけられたことで、フリードリヒが怒りの咆哮を上げるが、すぐに地雷王がそれを黙らせた。
グラリと、キャロ・ル・ルシエの小さな体が地面に倒れ込む。そのままルーテシアは彼女の上に馬乗りになると、
手にした短剣で彼女の体を滅多刺しにした。何度も胴体に短剣を振り下ろし、紫紺の防護服が返り血で汚れていく。
息はとっくに止まっていたが、それでもルーテシアは憑かれたように短剣を振り続け、
挙句の果てには地雷王に彼女の死体の焼却を命じる。
降り注がれた電撃の色の白い肌を黒く焼き焦がし、物言わぬ死体が痙攣するように吹き飛んで壁に叩きつけられる。
そして、戦いは終わった。
単独で転送魔法が使えるのか、ヴォルテールは主を見捨てて元いた次元へと戻っていく。
フリードリヒも最早、大した戦力ではない。適当に痛めつけてその辺に転がしておけば良い。
後は地上本部に赴き、11番のレリックを見つけ出すだけだ。それが見つかれば、念願の母との再会が叶う。
だというのに、どうしてこんなにも虚しいのだろう。
どうして、こんなにも敗北感が胸にわだかまっているのだろう。
チラリと、自分が殺した少女の死体を見る。
小さな体で懸命に魔力を行使していた彼女が立ち上がることは、もう二度とない。
そんなわかり切ったことを再確認しても、震えは止まらなかった。
やがて、キャロ・ル・ルシエの死体が別のものへと変化していく。手足が伸び、肌は黒い甲殻で包まれていく。
驚愕と恐怖がルーテシアを襲う。何故なら、それは彼女が最も信頼する召喚蟲ガリューの姿をしていたからだ。
目の前で横たわっているのは、紛れもないガリューの死体だ。では、自分は今まで何と戦っていたのだろうか。
そう思った矢先、目の前の死体は再び形を変えた。絶え間なく変化していく死体の顔は、男の時もあれば女の時もあった。
大人もいれば子どももいた。人間以外のものもあった。全て、自分がその手にかけてきた者達だ。
いつしか、ルーテシアは自分が犯した罪に耐え切れず、地に膝を突いて絶望に屈していた。
叫ぶこともできない。
逃げ出すこともできない。
この痛みは彼らの怨嗟だ。
この苦しみは彼らの無念だ。
彼らの絶望が、苦痛が、嫉妬が、怨嗟が、憤怒が、断末魔の叫びが鋼の楔となって心臓に打ち込まれる。
息をすることすら、ルーテシアは禁じられた。
いっそその手でこの身を引き裂いてくれと訴えても、肉体を失って怨念となった彼らにそれをする術はない。
だから、罪を見せつけるだけ。己がどれほど罪深い存在であるかを自覚させるだけ。
やがて、死体は自分と同じ紫色の髪の長身の女性へと変わっていく。
言葉も交わしたことのない母、メガーヌ・アルピーノだ。
自分が殺してしまった母。血まみれのその姿に、ルーテシアの精神は軋みを上げて崩壊を始める。
だが、それでも変化は止まらない。
長かった手足は縮んで子どものものへと変わり、髪も短くなって赤い色へと変色していく。
その手には白と蒼の槍、身に纏っているのは足まで届く純白のコート。
エリオ・モンディアル。
最後まで自分の名を呼び続けてくれた少年。
自分と共に、罪を背負って歩いてくれると言ってくれた人。
大切な友達を、自分はその手にかけてしまった。
そこで、ルーテシアの意識は弾かれたように現実に引き戻された。





「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

かけられていた毛布を蹴飛ばし、ルーテシアは飛び跳ねるように半身を起こした。
体が異様に重く、不快な汗が全身を伝っている。視界も水のなかにいるように不安定で、
焦点が定まらない。胸が苦しくて息をするのも苦痛だった。

276 名前:UNDERDOGS 第十二話D:2008/12/18(木) 04:00:08 ID:SZl6Q/4t
(ゆ・・・夢・・・・・・・・・)

まだ覚めきれない意識のまま、ルーテシアは室内を見回した。
無機質な灰色の壁と気休めにも似た淡い色のカーテン。
棚には所狭しと薬品の詰まった瓶が並べられており、奥には手術台のようなものも見える。
混濁した記憶を探ると、答えはすぐに思い出せた。
ここは医務室だ。アインヘリアルでの戦闘を終え、レジスタンスの拠点に連れて来られると、
挨拶もそこそこにここのベッドに寝かされて様々な検査を受けさせられたのだ。
そして、リンカーコアと融合しているレリックの分離と洗脳処置の治療が行うと、検査を行った医務官が言っていたのを思い出す。
試しにそっと胸に手を当てて呼吸を整えてみるが、リンカーコアが生成できる魔力の量は今までよりも遙かに弱々しいものになっていた。
自分にレリックが埋め込まれていたというのにも驚かされたが、それ以上にリンカーコアの微弱な反応が彼女を愕然とさせた。
今まで、自分の実力だと思い込んでいたのは、全てレリックに秘められた膨大な魔力の成せる技だったのだ。
それを失った今、自前で生成できる魔力だけで複数の召喚蟲を同時に使役することはできないだろう。
よくて、2種類までが良いところだ。インゼクトなら問題ないが、地雷王は1体ずつでなければ使役できない。
そこまで考えて、ルーテシアは自分と彼らの繋がりが絶たれていることを思い出した。

「そうだ・・・・死んじゃっ・・・・たんだ・・・・・・・」

口にすると、改めて悲しみが込み上げてくる。
ガリュー、地雷王、白天王、みんな大切な家族だった。
ガリューは小さい頃からずっと自分の側にいてくれた。
地雷王と白天王は、自分自身で名前を付けた子どものようなものだった。
もう、彼らはこの世にはいない。
自分がクアットロに操られ、自滅することを命じてしまったから。
自分が弱くて未熟な足手まといだったから。
全て自分が招いてしまったことだ。

「私の・・・・・・せいで・・・・・・・・」

ふと傍らの卓上を見ると、紫色のマフラーが綺麗に折りたたまれていた。
アインヘリアルの崩壊と共に帰ってきた、ガリューのマフラー。
彼が常に身に纏い、大事にしていたものだ。
そっと手に取ると、そこに込められた思い出がまざまざと蘇ってくる。
柔らかな肌触りを気に入り、玩具にしてガリューを困らせたことがあった。
うっかり飲み物を零してしまい、酷く落ち込ませてしまったことがあった。
戦いで敗れてしまい、針で指を血塗れにしながら縫い直したことがあった。
寒い夜に震えていると、無言で首に巻いてくれたことがあった。
彼がどうして、このマフラーを大事にしていたのかはわからない。
けれど、これにはガリューとの思い出がたくさん詰まっている。

「ガリュー・・・・・・ガリュー・・・・・・・」

あの時、彼は制止を振り切ってアインヘリアルの砲口に飛び込んでいった。
自分にはあれを破壊できるだけの力はない。一撃で沈めるためには、内部の凝縮した魔力を爆発させる必要があった。
自らの命を犠牲にして、彼は自分を守ってくれた。恐らく、召喚蟲だからという理由だけで。
本当は、死にたくなかったはずだ。
彼にだって、まだやりたいことはたくあんあったはず。エリオとの決着も、まだ付いていない。
彼との再戦を楽しみにしていると言っていたのに。
自分のせいで、彼の楽しみを永遠に奪ってしまった。
こんな情けない主なんて見捨てて、逃げれば良かったのだ。
ガリューの飛行速度なら、砲撃の圏内から逃れられたかもしれない。
けれど、彼はアインヘリアルを破壊することを選んだ。
召喚蟲としての務めを果たすために。
主の命を守るために。

277 名前:UNDERDOGS 第十二話E:2008/12/18(木) 04:01:10 ID:SZl6Q/4t
「わかっている。泣いている暇なんて、ないんだ」

ガリューの死を無駄にする訳にはいかない。
彼が命がけで遺してくれた自分の命は、償いのために使われねばならない。
犯してきた罪を背負い、贖罪のために生きる。それがこれからの自分がするべきことだ。
だが、その時は今ではない。スカリエッティがいる限り、自分のような罪深い子どもがまた生まれてくるかもしれない。
こんなにも悲しくて辛い気持ちを味わうのは、自分1人で十分だ。
これ以上、過ちを繰り返させないためにも、スカリエッティの凶行を止めねばならない。
償いをするのは、それからでも遅くはないはずだ。

「ごめんね、ガリュー。私はまだ戦わなくちゃいけない。あの娘とエリオが私にくれた光を、もう誰にも奪わせたくない」

そのためには、力がいる。
失った召喚蟲達に代わる力が。
ベッドから這い出ると、ルーテシアは足音を忍ばせながら医務室を後にした。
目当ての場所はここに来るまでに見ているので、迷うことなく辿り着くことができる。
彼は広い格納庫の隅っこで、丸くなるようにして治療に専念していた。
傷ついてもなお失われない眩き白い羽根。
鋭くも力強い深紅の双眸。
飛竜フリードリヒ。
キャロ・ル・ルシエが使役し、エリオがその任を継いだ雄々しくも美しい竜がそこにいた。

「・・・・・・・・・・・・」

こちらの気配に気づいたフリードリヒが、首を上げて睨みつけてくる。
目に見えた警戒の色がそこにはあった。
主を殺した相手が目の前にいるのだ、それも無理はない。この憎しみもまた、自分が受けるべき罰なのだ。
この子が自分を許してくれる日が訪れることは、決してないだろう。だが、エリオと共に戦うためには彼の力が必要だ。
だから、フリードリヒから向けられる憎悪を一身で受け止め、ルーテシアは彼に話しかける。

「お願いがあるの。私に、力を貸して」

こんな虫の良い話はないだろう。
自分が殺した相手の召喚獣を、自らの使役竜にしたいなどと。
けれど、彼しかいないのだ。今から使役できそうな獣を探すのは難しく、育てている時間もない。
その点、フリードリヒは元々召喚獣なので連携は取りやすい。
それに、今の彼は正規の主を失って能力をフルに出せずにいる。
召喚師である自分が使役すれば、あの娘ほどではないにしろ潜在能力を引き出せるはずだ。
リミッターをかけて小型化し、狭い場所での戦闘も可能になる。
問題は、彼が自分を受け入れてくれるかどうかだ。

「あなたが私を憎んでいることは知っている。主を殺されたのだから、当然だと思う。
炎で焼き殺されたとしても文句は言えない。けれど、私はまだ死ぬ訳にはいかないし、
何もせずにジッとしてもいられない。このままドクターを放っておけば、
私のような子どもがどんどん増えると思う。あなたのように、大切な人を失って悲しむ人も増えると思う。
私は、それを止めたいの。あんな辛い思いは、誰にも味わって欲しくない」

こちらの胸中を覗こうとするかのように、フリードリヒは目を細める。
言葉は通じずとも、彼が何を言っているのかは理解できた。


278 名前:UNDERDOGS 第十二話F:2008/12/18(木) 04:01:45 ID:SZl6Q/4t
『それでは、またエリオが傷つく』

彼が必死になって戦って、ようやく戦いから解放されたのに、今度は自らの意思で戦火に飛び込もうとしている。
それは彼の思いを無下にすることになるのかもしれない。
彼の望みは自分が笑顔でいられること。
罪を償い、新しい自分を始めること。
けれど、エリオはどうなる?
エリオはまだ戦うのか?
目的だけ果たして、今まで共に戦ってきた仲間と別れるなんて真似を彼がするとは思えない。
きっと、これからも戦い続けるつもりだ。だから、せめて近くで彼を守りたい。
足手まといになるつもりはない。自分の足で立って、自分の力で戦いたいのだ。
そして、全てが終わったら受けるべき裁きを受ける。

「3年前、あなたの主の手を取っていればこんなことにはならなかったのかもしれない。
私は罪を償って、エリオやあの娘と仲の良い友達になれたのかもしれない。
けれど、私はその手を振り払った。救われることが怖くなって、あの娘を殺してしまった。
このまま何もせずにいたら、私はきっと後悔するだけで、あの娘の死の責任を取れなくなる。
向かい合わなきゃいけない罪から逃げるのは、もう嫌だ。償うためにも、私は戦いたい。
私はまだ始まってもいないの。だから、新しい自分を始めるために、今までの自分を終わらせるために、
私に力を貸して・・・・・・・あなたの主、キャロ・ル・ルシエの遺志を私に継がせて」

最後の言葉で、フリードリヒのぎらついた双眸が禍々しい輝きを放った。
それでもルーテシアは臆することなく自らの手を差し出し、彼の返事を待った。
ここで彼の鋭い牙に噛み砕かれ、焼き殺されたとしても文句は言えない。
自分は、それだけのことをしてきたのだ。それでも、彼が許してくれるのならまた自分は戦いたい。
キャロの遺志を継ぎ、エリオと共にスカリエッティを倒す。
それは、彼女の偽りない本心であった。
やがて、紅蓮の瞳を携えた飛竜は答えを告げようとルーテシアに顔を近づける。
直後、建物全体が大きく横揺れを起こした。





最初に気づいたのは基地の周辺を警戒していた魔導師であった。
夜空を埋め尽くすように現われた無数の光点と、それを従えるように飛翔する数十人の戦乙女達。
一般人ならばその美しさに見惚れてしまうかもしれないが、彼女達の脅威を十分に知っていた
その魔導師は即座に基地内の司令部に連絡を入れようと念話の準備に入った。
しかし、突如として背後に現れた短髪の女性がエネルギー刃を一閃して魔導師の首を切断し、
念話を妨害する。仲間に危機を知らせることなく倒れた魔導師は、自分が死んだことにすら気づかなかっただろう。
苦もなく見張りを黙らせた女性は、自身の頭部に内臓された通信機のスイッチを入れて空と地上に控えている部下に号令をかける。

「ミッションスタートだ。奴らに平穏な眠りなど与えるな」

彼女の号令で、待機していた砲撃隊が基地の外壁に巨大な大砲の照準を合わせる。
同時に、彼女は空中へと離脱。幾本もの光線が基地の偽装を焼き焦がし、大地を震撼させる。
目障りな警備の連中はこれで一網打尽となり、侵入のための出入り口もできた。
敵は大がかりな作戦を終えたばかりで消耗しており、対応にも遅れが見られる。
その隙を突いて多数の量産型戦闘機人達がガジェットを従え、基地内に侵入していく。
何人かが散発的に銃撃を行ってきているが、魔導師でも戦闘機人でもないただの一般人では彼女達に敵うはずもなかった。
その光景をしばらく見下ろしていた彼女もまた、部下に簡単な指示を出しただけで基地内に飛び込んでいく。

279 名前:UNDERDOGS 第十二話G:2008/12/18(木) 04:04:49 ID:SZl6Q/4t
『目標物以外のものは全て排除しろ』

それが、彼女の下した命令であった。





警戒していなかった訳ではなかった。
基地は何年も前に廃坑となった鉱山を利用して建設し、外壁には可能な限りの偽装を施した。
少ない人員をやりくりして周辺を警戒し、出入りの際は尾行に細心の注意を払ってきた。
落ち度はどこにもなかったはずだ。しかし、油断があったのは事実だ。
命がけの作戦を決行し、管理局に一矢報いたという自負が驕りを招いたのだ。

「奇襲はこちらの専売特許ではないってことか。もっと警戒を強めておくんだった」

「大きな戦いの後で、みんな疲れていたのだから仕方ないわ」

次々と襲いかかってくるガジェットを蹴散らしながら、ディードは答える。
いつもより若干、右腕の反応が鈍かった。奇襲される前に整備を終えることができなかったのが痛い。
正確に動いているつもりでも、僅かに右側に隙ができてしまう。余裕を持って回避できるはずの攻撃が、
着実にディードを追い立てていく。

「ディード、危ない!」

着弾の寸前、割って入ったオットーがライディングボードを掲げて熱線からディードを庇う。
すかさず、ディードはISを起動してガジェットの死角に回り込み、手にした双剣を交差させて鋼の胴体を4つに分解する。

「センサーに反応なし。こちら側に戦闘機人は来ていないようだね」

「そうみたいね。ありがとう、オットー、おかげで助かった」

「ウェンディのおかげだよ。彼女がこれを遺してくれたから守れたんだ」

そう言って、オットーはウェンディの形見であるライディングボードを掲げて見せる。
最後まで分かり合うことはなかったが、彼女がこちらの身を本気で案じていたことは痛いほど伝わっていた。
不運にも敵同士となってしまったが、彼女が自分達の大切な姉妹であることに変わりはない。
例え離れ離れになろうとも、自分達は家族であり戦友だ。だから、見せて上げたいのだ。
自分達が勝ち取った勝利、造物主の束縛から逃れた自由を。
君が咄嗟に守った命は、無駄ではなかったと。

「そうか、ウェンディは逝ったのか」

不意に、底冷えするような冷たい声音が通路に響き渡った。
針のように鋭い殺気に、2人は油断なく身構えて暗闇の向こうを凝視する。
やがて、2人にとって非常に馴染み深い女性が姿を現した。

「姉に刃を向けるのか、オットー、ディード」

「トーレ・・・・姉様・・・・・・・」

現われたのは薄い紫色の髪をショートカットにした長身の女性だった。
彼女の名はトーレ。ナンバーズの3番であり、12人の姉妹の中で最も苛烈で、最も多くの戦いを経験してきた戦士だ。
その強さと豊富な実戦経験に基づく判断力はドクターからも信頼されており、前線指揮官としての役目も負わされている。
彼女が直々に出てきたということは、それはドクターが本腰を入れて自分達の排除を目論んでることを意味していた。

280 名前:UNDERDOGS 第十二話H:2008/12/18(木) 04:05:29 ID:SZl6Q/4t
「かつては共にドクターの夢のために戦ったナンバーズも、今では敵同士か。
そうまでして欲しいのか、自由な生活が?」

「・・・・それは、もちろんです。私は・・・・・オットーを失いたくない」

「僕も、同じ気持ちです。道具として利用されていれば、いつかはそうなる」

「そのためにウェンディに刃を向け、クアットロを見殺しにしたか」

「・・・・・・・・・・」

言い返すことができなかった。それは紛れもない事実だからだ。
あの時、自分達はウェンディを助けることができず、白天王がクアットロに魔力砲を撃つのを黙って見過ごした。
自分達は、大切な家族を死なせてしまったのだ。だが、だからこそ退くことができない。
信念を捻じ曲げることは、犠牲にしてしまった者達を冒涜する行為だ。ここで折れてしまえば、それこそ2人に申し訳が立たない。
何かを成すと決めたからには、それをとことん貫かねばならないのだ。
震える自分の手に喝を入れ直し、ディードは双剣を構え直す。オットーも同じ思いなのか、ライディングボードを片手に持ち直し、
いつでもレイストームを放てるようにエネルギーのチャージを開始している。

「それが、お前達の答えか」

「はい。私達は、立ち止まる訳にはいかないのです」

「退かぬと言うなら、押し通させてもらいます」

「良いだろう。ならば私もお前達と同じく姉妹殺しの罪を犯そう。裏切り者には死を、その覚悟はできているだろう?」

質量すら伴っているかのような殺気がトーレから発せられ、空気がピリピリと振動する。
彼女は本気だ。姉妹だからという理由で情けをかけたりはしない。やると言ったからには、初手から手加減なしの全力の一撃が来る。
勝てるのだろうか。相手はナンバーズ最速にして最強の戦士。自分達が万全の状態であったとしても、勝利できる確率は万に一つだろう。
だが、それでもやるしかない。失われた命を無為にせぬために。そして何より、自分達の自由のために。

「いきます、姉様」

「本気で、いかせてもらいます」

「来るがいい、お前達に本当の戦いというものを教えてやる」





あてがわれた部屋で仮眠を取っていたエリオは、緊急事態を知らせるサイレンの音に叩き起こされ、
寝癖を直す間もなく敵の迎撃に駆り出された。既に動ける者達は、全員が戦いを始めていた。
しかし、襲撃をしかけてきた戦闘機人達は、アインヘリアルを防衛していた者達よりも遥かに手強く、
苦戦を強いられているようである。今はギャレットの指揮で何とか持ちこたえているが、中枢まで攻め込まれるのは時間の問題であった。


281 名前:UNDERDOGS 第十二話I:2008/12/18(木) 04:06:21 ID:SZl6Q/4t
『こちら第03小隊、東側から侵入した敵と交戦するも被害甚大。至急、応援を・・・・・』

「聞いたな、エリオ。お前の方が足は速い、東側の援護に回れ!」

「副隊長は!?」

「この場はザフィーラに任せて遊撃に回る。急げよ、先の戦いの消耗が激し過ぎる」

「了解。いくよ、ストラーダ」

《Sonic Move》

加速魔法を発動し、エリオは共に戦っていたシグナムと分かれて基地の東側へと向かう。
ルーテシアの安否が気がかりだった。シグナムと合流する前に医務室を覗いたのだが、中はもぬけの空だったのだ。
いくらSランク魔導師といえど、召喚蟲を失い、レリックを取り除いた今の彼女では身を守ることもままならない。
敵の襲撃にあってなければ良いのだが。

《止まれ、誰か倒れているぞ》

「えっ? なっ・・・・・」

立ち止まって周囲の惨状を目にした瞬間、エリオは言葉を失った。
まるで暴風でも駆け抜けたかのように壁や床が抉れており、応援を求めてきた第03小隊の隊員達が見るも無惨な姿で息絶えていたのだ。
通信があってから、まだ2分と経っていない。ほんの2分前までは、彼らはまだ無事だった。だというのに、目の前には彼らの死体が転がっている。
ある者は全身を黒く焼き焦がされ、ある者は胴体と首を切断されて、中には原型すら留めていない肉片に成り果てている者もいた。
そして、その死体の群れの中心に立っているのは、漆黒の装束と純白のマントを身に纏い、黒の戦斧を携えた金髪の女性であった。

「そんな・・・・・どうして、あなたが・・・・・」

驚愕のあまり、数歩後ずさる。
ありえない。
彼女は未だ、3年前に負った負傷で寝たきりのはずだ。この場にいる訳がない。
だが、ストラーダの解析は、残酷な真実を告げていた。

《魔力波形・・・・・一致。本人の可能性、91.03%。間違いない、彼女はフェイト・T・ハラオウンだ》





十何人目かの戦闘機人の頭蓋を打ち砕いたところで、とうとうカルタスは地に膝を突いてしまった。
すかさず、敵は動けぬ標的となったカルタスに集中砲火を撃ち込んでくる。咄嗟に横っ飛びして回避を試みるが、
無理な態勢から跳んだせいで勢いが足りず、右腕を吹き飛ばされてしまう。

282 名前:UNDERDOGS 第十二話J:2008/12/18(木) 04:06:53 ID:SZl6Q/4t
「カルタスさん!?」

「構うな、目の前の敵に集中するんだ!」

「けど、腕が・・・・・」

「この程度じゃ死にはしない。それよりも、南側はまだ防衛ラインが築けていない。ここは俺に任せて、君は南側の部隊と合流するんだ」

「そんな、1人でここを抑えるなんて、無茶だよ!」

「無茶でもやるしかない。俺の足では辿り着く前に防衛ラインが突破される。君とマッハキャリバーなら、間に合うはずだ」

「カルタスさん・・・・・」

「行くんだ。大丈夫、君の背中は俺が守る。ギンガと一緒に!」

そう言って、カルタスは左腕のリボルバーナックルを掲げて見せる。
そう、自分は1人ではない。いつも死んだギンガと共に戦っているのだ。
力強く回るナックルスピナーのタービン音は、無念のまま死んだ彼女の慟哭だ。

「行け、スバル!」

「・・・・・持ち直したら、すぐに戻ってくるから・・・・・それまで・・・・・・」

そこから先は言葉にせず、スバルは後ろ髪を引かれる思いを振り切って通路を駆けていく。
1人その場に残ったカルタスは、去っていくスバルの後を追おうとするガジェットの前に回り込むと、
辛そうに息を吐きながら左腕をドリルに変形させた。
右腕を失ったことで、バランス感覚が狂っていた。アインヘリアルでの戦いの消耗も回復し切っておらず、
両足の関節部にもかなりの負担がかかっている。反応速度にも微妙なブレが出始めている。

(そろそろ限界か。不安定な旧式で、ここまでよく保ってくれた)

続々と集結してくるガジェットや戦闘機人を前にして、カルタスは不敵に笑ってみせる。
恐らく、自分はここで死ぬだろう。傷ついた体で、これだけの数の敵を足止めするなど不可能だ。
復讐を遂げることも、大切な女性の妹を守ることもできずにこの命は終わる。

「だけど、俺にだって意地はあるさ。ギンガ、力を貸してくれ。君の妹を守れるち力を」

触手が四肢を拘束し、熱線が鋼の体を焼き、戦闘機人の拳が容赦なく意識を刈り取っていく。
激しい苦痛にカルタスは悶え、人工血液を迸らせながら全ての攻撃をその身で受け止める。
ただの一機も、ここを通さないために。

「さあ、好きなだけ食らうが良い。ただし、1人もここは通さない」

左腕のドリルが、唸りを上げて反撃を開始した。





地上の基地が襲撃を受けているという知らせは、瞬く間にクラウディアへと伝えられた。
アインヘリアル陥落という大金星に浮かれていた彼らにとって、その知らせは正に寝耳に水であった。
現状を把握しようにも、それ以後は強力なジャミングによって通信を阻まれてしまい、
地上で何が起きているのかもわからない。敵の戦力はどれほどのものなのか、アインヘリアル戦に参加した仲間は無事なのか。
様々な憶測が艦内を飛び回り、常に冷静さを要求されるブリッジですら騒然としていた。
そんな中、クロノはある1つの恐ろしい仮説に辿り着いていた。

283 名前:UNDERDOGS 第十二話K:2008/12/18(木) 04:11:26 ID:SZl6Q/4t
「まさか・・・・・・いや、そんなことが・・・・・・・」

「クロノ?」

「ユーノ、これは僕の推測なんだが・・・・・・・」

クロノが口を開きかけた時、通信士のアレックスが騒々しいブリッジ内に響き渡るように、声を張り上げた。

「転送ルームより入電、ティアナ・ランスター二等陸士が帰還。
なお、彼女は負傷しており、現在は医務室で治療中とのこと!」

「ティアナが?」

「通信が使えぬと知り、直接知らせにきたようです。敵の戦力は戦闘機人が概算で120、ガジェットはその倍以上。
現在、動ける者が防戦に当たっていますが、中枢を制圧されるのは時間の問題かと」

「クロノ、迷っている暇はない。すぐに増援を送ろう」

「いや・・・・・・・・」

ユーノを制し、クロノは艦長席から立ち上がって慌ただしいブリッジ内を見回す。
そして、酷く冷たい声音で命令を下した。

「増援は送らない。転送装置のリンクも切る」

「なっ・・・・・彼らを見捨てるのか!?」

「ユーノ、どうして敵がタイミングを計ったかのようにこちらが疲弊している時を狙ってこれたと思う? 
奴らは最初からこっちが本命だったんだ。アインヘリアルもルーテシア・アルピーノも囮、
僕達という魚を釣るために垂らされた餌だったんだ。奴らの本当の狙いは、このクラウディアだ」

「まさか、転送ゲートを・・・・・・・・」

次元間の移動は次元航行艦で次元の海を渡ることと転送魔法による二通りの方法で行うことができる。
緊急を有する場合は後者を用いられることが多いのだが、個人で行使できる魔法では精々数人程度しか転送できないため、
大人数を転送する際は大がかりな機械を用いて行っている。無論、次元航行艦を本拠地としている自分達も円滑な部隊運用のために、
地上の各拠点にクラウディアの転送装置と直通になっているゲートを設けている。
アインヘリアル戦の際も、襲撃を受けている基地のゲートを経由して戦力を送り込んだのだ。
敵はそのゲートを確保し、それを使ってクラウディアに襲撃をかけるつもりなのだろうか。

「十中八九、当たりだろう。アインヘリアル防衛の戦力がルーテシア個人の比重が大きかった理由も頷ける。
向こうはこちらが大部隊を動かさねば倒せないようなギリギリの戦力を用意していたんだ。だから、
数は多くても配備されていたのはほとんどガジェットばかりだった。そして、アインヘリアルを落として
意気揚揚と基地に帰還する後を追いかけ、油断しているところを叩いて、確保したゲートの向こうにいる僕達を襲撃する。まんまと嵌められたよ」

「まさか・・・・・・向こうだってかなりの被害が出たはずだ・・・・・・」

「所詮、スカリエッティにとって戦闘機人は道具でしかないってことさ。
僕達は、彼の神経を相当逆撫でしていたみたいだね」

「冗談を言っている場合じゃないだろ。増援を送ろう、みんなを見捨てる訳には・・・・・・・・」

284 名前:UNDERDOGS 第十二話L:2008/12/18(木) 04:12:19 ID:SZl6Q/4t
「ユーノ、ここでクラウディアを危険に晒す訳にはいかない。この艦が健在であることが、みんなの希望なんだ。
それに、こちらから遅れる戦力もたかが知れている。シャマルは戻るまでまだ時間がかかるし、
僕や君が行ったところで焼け石に水だ。敵に増援が来ないとも限らない」

「そうかもしれないけど・・・・・・・・」

「堪えるんだ。ここはシグナム達を信じるしかない。彼女達なら、きっとこの状況を切り抜けてくれるはずだ」

そう言って、クロノはユーノから視線を逸らす。
その時、ユーノはきつく握り締められたクロノの拳が、痙攣しているかのように震えていることに気づいた。
本当は今すぐにでも助けに行きたいのだろう。しかし、艦長としての責務を放りだす訳にはいかないのだ。
彼にはこの艦に乗船している全クルーの命と、彼を信じて危険な戦いに身を投じているレジスタンスのメンバーの
希望を守る責任がある。
それに気づいたユーノは、もう何も言い返すことができなかった。

「命令は以上だ。転送装置とゲートのリンクを切る」

絞り出すようなクロノの言葉が、ブリッジに響く。反論する者は、もういなかった。
しかし、その旨を転送ルームに伝えようとしていたアレックスは、通信先で異変が起きていることに気づいた。

「艦長、転送ルームが・・・・・・」

「どうした、転送ルームで何かあったのか?」

「は、はい・・・・・転送ルームが、占拠されました。あのセッテという戦闘機人によるものです」

前面のモニターに、固有武装であるブーメランブレードを整備士に突きつけているセッテの姿が映し出される。
整備室で拘束されていたはずなのに、いったいどうやって抜け出したのだろうか。
答えは、反対側の腕が抱きかかえている少女にあった。

「あれは、イクスヴェリア・・・・・・」

スバルが連れてきた客人が、セッテに寄りかかるように支えられていた。
原因不明の昏睡に陥ったと聞いていたが、いつの間にか目を覚ましていたようだ。
状況を考えると、セッテが単独で脱走を企てたと考えるのは難しい。手引きしたのは間違いなくイクスだ。
恐らく、スバルを助けに行くためにセッテを説得したか、そそのかされたかのどちらかだろう。

「クロノ・・・・・・」

「・・・・・・・・・人命には代えられない。ゲートを開け、ただし送り出すのはあの2人だけだ。
その後に予定通り、リンクは解除する。」

憮然と言い放ち、クロノは額に手を当てて消沈する。
いつもながら、ギャンブルに走ってしまう自分が情けなかった。

(でも、信じるしかないだろ・・・・・・・あの2人を)

彼女達が希望の星となることを信じ、クロノはイクスとセッテを戦場へと送り出した。






                                                         to be continued

285 名前:B・A:2008/12/18(木) 04:16:36 ID:SZl6Q/4t
以上です。
ルーテシアの夢にこんなに容量を取られるなんて。
ちょいちょいネタを入れたくなります。
メカルタスに「俺を誰だと〜」とつい言わせそうになった。
ギャグになるので即止めましたが。



それと>>272に誤字がありました。

厳重に鍵をかけた上に軽微としてガジェットを配備しておいたのだが、 ×
厳重に鍵をかけた上に警備としてガジェットを配備しておいたのだが、 ○


です。
保管の際は修正をお願いします。

286 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 08:02:26 ID:q9O1xUWO
【表現規制】表現の自由は誰のモノ【110】
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/news2/1229424540/

287 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 08:58:02 ID:2uu1qYxw
GJ!!
ルーテシアは何とか心が死なずに済んで本当に良かった
しかし動けないはずのフェイトまでが…
エリオがどんな思いを抱くか考えるだけで欝になりそうだ
悲しい姉妹での決闘
カルタスも死亡フラグが凄まじい
でも続きが見たすぎる!

288 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 20:54:46 ID:BcE+I1dV
GJ!
襲撃しているフェイトは以前最後に出てきた偽フェイトか?
展開的にエリオが戦う事になるんだろうけど、本気で戦えるのか気になるところ
イクスも戦線に加わることになり、おそらくスバルにとっての希望となりえるはず
エリルーとスバルは何とか生き残って欲しい

289 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 21:00:08 ID:JLxvm4+N
結局みんなで協力してスカを倒して万歳なんだろ
毎度毎度のパターンだね

290 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 21:15:51 ID:4/8TJxQ7
そりゃ、悪役なんだから倒されるだろ。

291 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 21:25:09 ID:4nswJcTv
>>290
こら、触るんじゃないっ! 調子に乗ってしまうぞ!

292 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 21:30:46 ID:99iz/x9A
GJっした!

ってか、トーレと戦うディード&オットーが超心配だわwww
あの姉はマジ容赦なさそうだからなぁ……なんとか生き残ってくれ。

293 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 21:31:42 ID:D2Ijs98P
そもそもスカは悪なのか?
管理局=正義というのも決めつけじゃないか
ロストロギアとして封印しているのも、管理局に扱えないだけだからだし
その封印魔法を有効につかって秩序を作るなら、スカ=正義も十分通じるぞ

294 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 21:42:51 ID:pZn2nX+V
誰も管理局=正義と決め付けてねーよwww
職人さんがスカを悪役に設定してるだけだ
管理局が悪役の話もスカがいい人の話も投下されてるだろうが

295 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 21:45:06 ID:fYsMI16Z
>>293
よぉ厨二病w

296 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 21:46:17 ID:BDXN/mdu
善悪の判断基準なんて曖昧だが。
少なくとも、法に反することをする者こそが悪と言われるのは、どんな世界でも一緒だろ。
結局、勝てば官軍てことだけどな。

297 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 21:46:53 ID:kkcVZXY5
ハナシがごっちゃになってる。法としての正義/悪と倫理としての正義/悪って別モンでしょ。
で、原作に完全に準拠するなら、sts開始時点でスカが悪なのはどっちから見ても間違いない。

設定レベルから弄繰り回せばまた別で、職人さんたちがそのへんで腕を発揮してくれると
俺たちは大変楽しいと、そういうことだな。
例えば「封印魔法を有効につかって秩序を作る」スカってもう別人28号なワケだが
そりゃーしっかり書きこまれてたら、そういうSSも楽しいわけで

298 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 21:55:14 ID:ydl0WqC/
>>293
単純に問うが。
お前さんが善と判断する基準、悪と判断する基準って、なんなのさw

299 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 21:59:36 ID:P1V/2d/T
そんなことよりディードのオッパイについて語ろうぜ

300 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 22:09:56 ID:4KyOyoMz
そうだ!
我々はディードのオッパイはナンバーズ一位か否かを問わずにどうする!?

そういた“視点”からみれば
>>280のトーレVSディードというのはその実、ナンバーズの最巨乳対決と見て手取れるのではないだろうか?


なんて書き込んではいるが、>>285にGJと送りざるをえない。
もちろんストーリー展開的な意味でだ。

301 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 22:10:15 ID:W+IeyHLr
スカが悪って言われるのは、そう言われるだけの罪を犯してるからだろ……



ディードの乳よりトーレの尻の方が好みなんだが……どうすればいいだろうか?

302 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 22:16:23 ID:99iz/x9A
>>ディードのオッパイ

末の妹だけあって触ればそちらから吸い付いてくるような瑞々しさを持ち、まるでマシュマロのような柔らかい肉質を有する極上の乳房。


と、語ってみた。
っつか、この振りは「ディードのエロSSが見たい」と暗に言っていると捉えてよろしいのか。

303 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 22:19:53 ID:4/8TJxQ7
セインさんのお腹のエロさ(コミック二巻88ページ)を語るものはいないのか……

304 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 22:20:39 ID:0ee8D01X
指名手配される位には悪いコトしてるんだろうさ。



ちなみに、ナンバーズオッパイ祭りの会場はここでよろしいか?

305 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 22:44:19 ID:SZl6Q/4t
>>304
危険なロストロギアの蒐集(多分、盗掘とか強奪)に違法な研究(人体実験、人体改造、クローニング、デザイナーベイビーの作成、機動兵器の開発)、
誘拐、殺人教唆、公共物損壊(列車への攻撃)、盗撮、ドゥーエの諜報活動、質量兵器の保持(本編ではガジェットがミサイルを積んでいる)、土地の無断使用。
多分、税金も納めていない。



絵を見る限り、ウェンディも結構胸があるように思えるな。
更生施設でのシャツ姿はかなり盛り上がっているように見えた。

306 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 22:53:44 ID:eW33JnHL
つか、チンクとセインとオットー以外は結構胸でかいだろ。

307 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 23:00:01 ID:MX5dwCZS
>>305
>多分、税金も納めていない。
時期が時期だけに確定申告に行くスカとか想像してしまってコーヒー噴いたじゃねぇかwww

308 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 23:02:59 ID:XRX8zukk
何故かオレは医者の不養生で必要無いとか手を振ってるのをウーノに引っ張られて
年末健康診断に連れて行かれるドクターを想像した

309 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 23:03:51 ID:40/m0z+M
>>307
ジャンピングフラッシュって初代PSゲーのアロハ男爵思い出した

310 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 23:14:06 ID:AIVbBimI
>>307
ドゥーエは給与明細とにらめっこしつつ、年収が130万ミッドチルダ円を超えないように
レジアスの秘書とか最高評議会のホットメンテナンスとかを適時休むのですね。

311 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 23:46:21 ID:SZl6Q/4t
>>310
「今月も赤字ね、はぁ・・・・・」とため息を吐き、特売のカップ麺で済ませる毎日。
電気代は節約、風呂の残り湯は洗濯に、ベランダには家庭菜園、机の上には特売セールのチラシ、買物は当然自転車で。
容姿はライアーズマスクで誤魔化せるけれど、たまには思いっきりエステやネイルアートを楽しみたいなと思いつつ、
今夜も桶とタオルを片手に近所の銭湯へ。


こんな感じのドゥーエさん?

312 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/18(木) 23:51:18 ID:2lQtBR00
親であるスカは悪いコトして金だけは持ってそうなのになw
仕送りしてやれよスカさんよぉw

なんか、こう、生活感溢れるスカ一家って読んでみたいかも……

313 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 00:00:51 ID:eW33JnHL
>>311
なんかあって、ニュースになったら
「カップめんなんか食って贅沢じゃね?だからスイーツ(笑)は」
とか言われて叩かれそうなドゥーエさんですね。

>>312
ウーノの苦労日記になりそうな気配w
つか、食料調達とかどうしてるんだろうか?買出しに行ってんのかな?

314 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 00:12:05 ID:n9SgBOYJ
「ハァ…いつまでこんな生活続くのかな…」

ドゥーエはトボトボと歩く銭湯からの帰路ため息をついた、吐いた吐息は彼女の心情のように白く夜道を流れた
星空を見上げる、3脳の世話をしながらスパイ活動、空いた時間も教会の諜報に忙殺されている
今年も男っ気無し…クリスマスも近いのに…
司祭のオヤジの相手をカウントに入れてなければだが彼女的にはあれは仕事だった
ドゥーエには自由な時間などなかった、解っていた事ではあったのだが

「チンク達…今頃どうしてるのかしらねーフフ…きゃッ!」

クリスマスの準備をしているサンタ姿の妹達のありえない姿を想像して一人自嘲気味に忍び笑いを漏らしたドゥーエは
空想にふけりすぎ、前を行く人、いや正確には立ち止まって夜空を見上げている青年にぶつかってしまった
あいたたたとしりもちをつき、ふと見上げるとあわてて振り向いた青年がこちらも当惑したように手を出している

「す、すいませんちょっと考えごとしてて…」
「い、いえすませんこちらこそボーっとして…」

慌てて手を取り立ち上がろうとしたら二人とも転んだ、そう彼は非力だったのだ

これがドゥーエと彼、グリフィスとの出会いだった


『星降る聖夜に君と』
あはは









315 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 00:13:26 ID:gNMRZsr3
B・A氏GJ!
相変わらず嵐がいるようですが、お気になさらず続けてください!
どの対決も気になりますが、やはりエリオVSフェイト(?)が気になります。

一方でヴィヴィオの人形と化してしまうなのはもどうなるか…
姉妹どおしの対決は通常で考えればトーレが勝ちそうですが、その辺りも期待してます。

316 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 00:21:26 ID:8FTDf/Ig
この手の生活感のない悪役って、そのへん想像し出すと止まらないんだよな……

317 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 00:31:49 ID:2wnlDOIQ
グリフィスと出会う……何故だ、昔ならそんな事なかったのに、今では悪い予感しかしないwww

318 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 00:45:48 ID:DOc7UgaR
>>317
まだユーノやヴァイスのほうが安全に見えるw

319 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 01:57:55 ID:0h7EQYuT
>>304
ここでキレイなジェイルさんというのを考えた!

・違法な研究と言うが、他者に苦痛を強いるような人体実験等はしていない(ジェイルは天才だからそんなことをしなくいても済んだ)

・ナンバーズは全員孤児や人身売買に掛けられていた少女で、しかも重病を患っておりサイボーク化をするしかなかった。

・スカリエッティのスポンサーが求めていた戦闘機人計画。それにナンバーズ全員は個々人、自ら志願した。

・密かに研究成果を医療企業に流すことで、むしろ医学の向上に貢献。

・ゼスト隊の襲撃もなく、スバルやギンガ、ヴィヴィオを創り出したのはスカリエッティとは別の研究グループだった。

・戦闘機人を普通の人間に戻せるような研究も行っていた。

・最後までプレシアの暴走に気づけなかった事を悔やんでいる。

・3脳にばれない様、ドゥーエを通じてレジアスと今後のことについて話し合った。

・いつでも社会復帰できるよう、ナンバーズを少しづつ研究所の外に出してあげたりしてたら、チンクとゼストが相思相愛の仲になっていた。

・聖王の血を引き、政治的混乱を招くヴィヴィオを“別グループ”から極秘裏に救出しようと動いたが、時すでに遅く移送されてしまっていた後だった。

・“別グループ”真の目的。それは聖王復活によるベルカ王国の再興だった。

・管理外世界から呼び寄せた質量兵器を擁する軍隊にAMFを組み合わせた最悪の戦闘集団を擁する“別グループ”、もとい『聖王の殉教者』、決起。

・地上本部ゼスト隊、ナンバーズ、教会騎士団、本局機動六課は団結し、此処に至って本当の時空管理局機動部隊が誕生。

・最終決戦後、スカリエッティは正式に管理局に投降し数十年に及ぶ逃亡生活に幕が下りる。

・数年後、紛争地帯で医療ボランティアとして働くジェイルとウーノの夫婦の姿がそこにあった。


うん、書きたい物を書き綴ってみた。
チラシの裏なんだ。謝って済まそうとは思わないが、それより>>314の続きはまだであろうか?

320 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 02:45:59 ID:1kM45m0F
>スバルやギンガ、ヴィヴィオを創り出したのはスカリエッティとは別の研究グループだった

揚げ足だが、その3人は本当に別グループが作ったんだ。
ロンド・ベル隊(スパロボ版)ならぬ機動六課というわけか。
幕間のADVパートを本気で見てみたいな。


321 名前:タピオカ:2008/12/19(金) 04:19:35 ID:OP7gLPiu
ちょいと失礼、他の方々のお話読んで燃え上がった思いを文章にしてしまいました。年末で忙しい分際で。



注意事項
・戦闘ものでドカーン!バキーン!ガシャーン!とやりたいのです
・エロいはずがない
・本編終了して約1年ぐらいたってます
・敵組織オリジナルキャラクターで纏めちゃったので大量に厨二病が香るオリジナルのキャラクターをお届けします
・あまつさえオリジナルのロストロギアまで拵える始末なので、酷い捏造をお約束します


322 名前:Name〜君の名は〜:2008/12/19(金) 04:22:01 ID:OP7gLPiu
第一話「Counterfeit Alicia」



後ろへ流れていく夜の風景は、すでに賑やかなものから人気ない淋しいものに変わっていた。
車を走らせて、すでに1時間。もう少しでミッドチルダ北部へと届く位置。
エルセア地方から出発して、予定よりも早く行程をこなしている事になる。
しかし、そんな順調な「お買い者」の道中、スーホの心は穏やかと言うわけではなかった。

実力勝負の裏稼業において、運び屋として数々の仕事をきっちりとこなしてきたスーホだ。
ハンドルを握るの事にも、荷物を運ぶ事にも慣れている。だが、その数々の仕事をともに潜り抜けてきた相棒たちは現在、メンテナンス中。
おかげで研究所から借り受けた普通自動車を、長い手足を窮屈に縮めて運転しなければならない。
ともに苦難を切り抜けてきた相棒たちと、比べてなんと居心地の悪い事か。

そんな肉体的な苦痛を別として、さらにスーホを不安にさせる話が一つあった。
車を走らせてそれほど時間を置かずに仲間から入った連絡で、内容はとても恐ろし物だ。
スーホが「お買い者」をした研究所が管理局の陸士に踏み込まれたというである。
違法研究を繰り返していた悪魔の巣窟だ。不思議でもなんでもないが、あと少し出発が遅れていたらスーホも管理局に拘束されていた事だろう。
追いつかれる事を考慮して、仲間の一人に応援を要請しているが、やはり不安は不安だ。
ちらりと焦燥した視線がバックミラーを覗けば、後部座席に鎮座するボックスが映る。
まるで、精霊でも封印されているかのように厳重な処理を施されたスーホの「お買い者」だ。
いや、彼ではなく、彼が所属している―――

「…? なんだ」

バックミラーの端、奇妙な緑色を得たスーホは視線とアクセルを踏み込んだ。嫌な予感がするのを、意識で自覚する前に体が反応した結果だ。
上がった速度に遠ざかる、その奇妙な緑色を懸命に識別しようとすれば、ようやく分かった。

犬だ。

ゾッと悪寒がしたのと、サイレンの音を捉えたのは同時だった。
回転灯の光をまき散らし、猛スピードで自分に迫る車両が見えた―――管理局!

「やべ」
『そこの車、止まりなさい』

草原で生まれ育ったスーホの優秀な視覚が、前方不注意にも振り返っては向こうの運転席の男と助手席の女を認める。
白いスーツの男はどうか知らないが、女の方は陸士の制服を着ていた。

「ちぃ!」

熟練のハンドル捌きで、高速が出ているとは思わせない右折を披露すれば、

「!?」

スーホが急ブレーキを踏みしめた。
煙るタイヤの跡を残し、車が止まればそこに、先ほど助手席に座っていた陸士の女が立っていた。
すでに陸士のスーツは跡形ない。
戦闘用のボディスーツたるバリアジャケットと、ローラーブーツ。さらに左手に装備しているのはえらく物々しいナックルである。
悪い夢でも見ているような気分になっていれば、追いついた白いスーツの男が停車を終えて後ろを塞いでいた。

「時空管理局、陸上警備隊のギンガ・ナカジマ陸曹です。降車をお願いします」
「ようやくナンバーを確認できた。JANIS社第三研究所の物で間違いないね」

運転席の中でもスーホは悟ってしまった。一瞬で実力行使で切り抜けられない事を。
どちらの立ち振る舞いにも油断はない。
もしかすれば白いスーツの男については読めないが、間違いなく重厚な装備したギンガにねじ伏せられる。
いち早く仲間が迎えに来てくれる事を祈りながら、折りたたむように詰め込んでいた手足を車外に開放した。
高い。ひょろりと背の高い男である。

323 名前:Name〜君の名は〜:2008/12/19(金) 04:23:04 ID:OP7gLPiu
「えー、管理局の人がいったい俺なんかに何の用件で?」
「とぼけずとも、分かっているのでしょう? つい先ほど、あなたが研究所から買い受けた者についてです」
「……」
「まずは身分証の提出を」
「あー、はいはい、えーっと、ライセンス…ライセンス…っとぉ、ありゃサイフどこやったかな…?」

厳しい視線を投げかけてくるギンガだが、しかしふざけた態度を崩さずにスーホはポケットをでたらめに漁る。
すでに白いスーツの男―――ヴェロッサは後部座席のボックスに目をつけているが、意識はスーホに向けられていた。
ギンガもヴェロッサもスーホが車から降りた時点で、もし暴れられたら厄介である事は肌で感じているのだ。

「も、ちょっと待ってくださいね、っと、うわ、レシートすげぇな、おい、全部捨てなきゃ。これなんて先月のレシートじゃねぇか。あ、このレシート要ります? 店に持ってったらポイントつけてもらえますよ」
「…もう結構です。事情聴取のため、同行願います…えっと、お名前は?」
「スーホって言います。趣味はドライブ。特技は馬頭琴。彼女いない歴=年齢で 「いえ、それも車の中でお聞きしましょう」

あからさまに時間を稼いでいるようなスーホを相手に、ギンガが慎重に間合いを取っていたが、強めに出た。

「?」

そんな時だ。かすかにギンガの中の電子の部位にノイズが走る。奇妙な電気的な場が付近に下りている。
そう強い電気ではない。しかしはっきりと感じられ、ふいに辺りを見回せば、

『もし』
「「!?」」

少女が一人、立っていた。
いったい何時からそこにいたのか、忽然としか言い表せない唐突さで3人の傍らに出現している。
白と黒で出来たような少女だ。儚い印象と、妙に虚ろな存在感。
スーホに対応していたギンガはともかく、周囲を警戒していたヴェロッサにさえ気づかれなかったとは明らかに異常だ。
夜の暗がりのなか、さながら幽霊が化けて出たようだが、その場でスーホだけは驚愕ではなく安堵の様相であった。

『管理局の方ですよね? 彼、私のお友達なんですけども、いったいどういったご用件でしょう?』

さらに立ち入って語りかけてきた時、ギンガもヴェロッサもいくつかの事に気づく。
一つ目は、この音声はここに立っている少女から発声されたものではない。
二つ目は、この音声が人間の物ではない。
三つ目は、この少女は人間ではない。
そして四つ目、ヴェロッサとギンガに語りかけて来ているモノの方向は、

「上だ!」

戦闘機人の目が夜空に見た。
鉄の塊の猛禽類じみた鋭い降下を。

「あれは…ガジェットドローンU型!?」

滑らかなフォルム、下部に装備された砲門。月灯りを鈍く照り返すその異様は、確かにJS事件に管理局を苦しめた全翼機に似ていた。
しかしサイズはそれよりも二回り以上大きく、一目でガジェットU型よりも充実した武装を有している。
そして何よりも目を引くのは、左翼に施されたエンブレムだ。
戦闘機にパイロットがペイントするものだが、くっきりと…カボチャが描かれていた。

「よっしゃ、間に合ったぁ! 管理局の諸君、また会おう!」

改造されたガジェットドローンU型の急降下に合わせて、スーホがすでに逃げきった気分で跳躍。
中空の全翼機に捕まるのに、抜群のタイミングのジャンプだったが、

「ぐえ?!」

新緑色のバインドで固定された。
結局、機を逃したスーホは改造型ガジェットドローンU型に捕まる事無く再び地面に落ちてくる。

324 名前:Name〜君の名は〜:2008/12/19(金) 04:23:55 ID:OP7gLPiu
「やぁ、また会ったね」
「…はは、久しぶり。元気だった? 俺はお尻が凄い痛い」

ヴェロッサの爽やかな挨拶に乾燥した笑いしか出ない。
力任せにバインドを破るが、ギンガとヴェロッサにもう驚きによる隙はない。逃げるチャンスを逃し、本格的な焦燥がスーホに浮かんだ。
スーホを回収し損ねた改造型ガジェットドローンU型も、再度上昇して再び降下の機会見定めるような飛翔だ。
そして、一つ閃いたかのように旋回。
それに呼応して、傍らにいたモノトーンの少女が呟いた。

『ねぇ、スーホさん』
「早く助けてくれ!」
『見棄てていいかしら?』
「助けてくれええええ!!」

再び、改造型ガジェットドローンU型が降下の姿勢を見せた。
そこでまた、ギンガが小さな電気の違和感を得る。
静電気的な力がほどけていく感覚。同時に、眼前の白と黒の少女がほどけた。
砂粒のような…いや、それよりも細かく中空に広がっていではないか!

「な、砂…?」
「いえ…これは、灰です。静電気で形作っていたというの…!?」

見る間に辺りに広がっていく微細な灰は、ギンガとヴェロッサの視界を奪うものだ。
水に垂らした墨汁のよに、みるみるうちに空間を席巻。それにまぎれて、スーホも動いた。
しかし、直感的に動いたギンガの方が早い。

「待ちなさい!」

灰にまぎれて、研究所から借り受けた車両のドアノブに、今しも手をかけんとしていたスーホへリボルバーナックルが唸る。

「クソ、おい、「買い者」は諦めるぞ!」
『結構なお金、使いましたのにねぇ…』

ギンガの鉄拳を転がって逃れたスーホが大声でわめきながら、不格好に脚部に力を込めた。
二人の会話に反応して、ヴェロッサが再びバインドを試みようとしているが、この灰の嵐の中で捕縛できるかはかなりきわどい。

そして、スーホの跳躍がなされようとしていた、まさにその時だ。

盛大なブレーキ音が響き渡った。
一般車両である。
管理局も何も、まったく関係ない、一般人の運転するものである。それが右折して間もないこの場で灰の嵐に突っ込んだらしい。
ギンガとヴェロッサの気がそちらに向いたのは一瞬。
しかし、意識をスーホに戻した時には、天空の遥か上空で、機影にぶら下がる人影を見た。
逃した。
という思いは、一般人の車が、おそらくスーホの乗っていた車にぶつかった衝突音にかき消される。

「しまった!」
「人が!?」

ガラスや外装が砕ける音ばかり聞こえるが、未だに収まらぬ灰色の視界にギンガとヴェロッサの額に汗が浮かぶ。
機械部品に対して、異様なジャミング効果のあるこの灰の中、ギンガが生体反応を懸命に探すが、サーチにノイズが走るばかりだ。

やがて、燃料が漏れたのか、火まで上がったのを感じていよいよギンガは青ざめる。
だが、無限の猟犬を展開して周囲の様子を把握しつつあるヴェロッサの方はと言えば、すでに焦りではない感情の中にいた。

「早く助けなきゃ…!」
「いや、待つんだ…あれは…」

二台の車から勢いよく噴き出す炎に、灰色の視界に赤いが差す。
そして、その炎の向こう、夜空に金色の光を見た。

325 名前:Name〜君の名は〜:2008/12/19(金) 04:24:55 ID:OP7gLPiu
気絶した男を抱え、宙を踏む姿。
金髪。
赤い瞳。
金色の、魔力光。

「フェイト…さん?」

子供の頃そのままの姿の、フェイト・T・ハラオウンがそこにいた。



「以上が昨日の夜の顛末です」
「…そうか、買い取った者は逃してしまったのか」

応接室。
おやつの時間を過ぎて幾分か経つ時刻、もうすっかり冷えた茶をすすってシグナムが苦く呟いた。
横ではアギトがふよふよと浮かびながら胡坐をかいている。その表情に、いつもの活気はない。

「これが、スーホの買い受けた者です。幸い、火の中から問題なく回収できました」
「開けられるか?」
「はい」

ギンガがテーブルの上に差し出したボックスに、アギトの眉根が微かに下がる。
それを見ずとも感じたシグナムだが、ギンガに促してロックを解除させた。
衝突事故による炎で、ところどころに焼け跡が見られるが特に問題はないらしい。
魔力による封と電子による封の二重の戒めを解けば、ボックス開閉部のランプが灯り勝手に口を開く。

「…これが」

まるで眠れる姫のように、ボックスの中に横たわっていたのは、赤い小さな少女。
そっと、アギトが目をそらした。
未だ起動をしていないこの少女は、生まれてきてすらいない。アギトに酷似しすぎているその姿は―――アギトのレプリカである。

数年前、ゼストとルーテシアによるレリック探索によりアギトを研究していた施設は破壊された。
それ以降のアギトについては、語る必要はあるまい。
問題は、アギトの研究についてだ。
古代ベルカの融合騎は、希少である。紛い物ではないアギトの存在は特級の価値がある。
貴重なそのサンプルを大体的に共同研究、広く世に貢献するという選択もあっただろう。
しかし、いつの時代もそんな奇特な人間の方が少ない。
アギトを手に入れた施設は、独占的な研究を徹底し、自分たちのみの利益にしようとしていたわけである。

そして、ゼストとルーテシアの乱入により破損されなかったデータの数々が明るみに出る事になった。
無論管理局も介入したが、すでに時遅く古代ベルカを探求する者たちのかなりにアギトのデータが流出した後。
いや、むしろ一部の管理局員は高額でアギトのデータを売った者までいる。

そして時は流れ、JS事件より一年。

流れ出た研究成果はアギトのレプリカにまでこぎつけていた。
ヴェロッサの査察に引っ掛かり、ミッドチルダ西部にいくつかの研究所を抱えたJANIS社に捜査の手が入ったというわけだ。
しかし事はJANIS社第三研究所だけに留まっているわけではない。アギトのデータは各地に散っている。
今回の事は氷山の一角だ。

「現在、スーホとその逃走を助けた改造型ガジェットドローンU型の詳細を調べています」
「そのガジェット、ナンバーズたちも知らないのか?」
「まったく見た事無い形だそうです。スカリエッティに質問できれば一番早いのですが…許可が下りません」
「な、な、ルールーは元気か?」

ふよーっと漂えば、アギトが切り出した。
海上隔離施設を一番早く卒業したのはアギトだ。以降、シグナムの補佐に就くが、まだまだルーテシアたちは更生中である。
くすりと、先生役をやってるギンガは微笑んだ。

326 名前:Name〜君の名は〜:2008/12/19(金) 04:25:47 ID:OP7gLPiu
「ええ、みんな真面目にやってるわ。不良さんが一人卒業しちゃったけど、賑やかよ」
「不良ってあたしの事か!? 一番最初に出てきたんだから優等生だろ!」
「ふふふ、ナンバーズのみんなも元気よ…ウェンディとノーヴェは、ちょっと元気すぎるけど」
「あー…うん。そっか」

ふと、目に見えてアギトが陰った。
ギンガもシグナムも、その理由は知っている。

「まだナンバーズが嫌いか、アギト?」
「あぁ…」

シグナムと視線を合わせず、バツ悪げにアギトがうつむく。
理屈ではない。どうしても、アギトはナンバーズたちが好きになれないのだ。
良い奴らだと、知っている。純粋なのだろうとも、分る。
しかし、でも、どうしても―――

「言葉で説明は、できんか」
「……なんであいつらはそれでいいんだろう」
「なに?」

零れた呟きは、小さかった。
聞き逃したシグナムが耳を向けるが、アギトは大仰に頭を振って両手を振り回す。

「…なんでもねぇ。ナンバーズの連中は、嫌いだ! 餓鬼っぽくて悪かったな!」
「いや…」

困った顔をするギンガとシグナムだが、腕を組んで開き直ったアギトにもう言える事はない。

「困ったわね…じゃあ、あの子の事、アギトは嫌いになっちゃうかも」
「……あの子?」
「失礼します」

計ったように、その声がドアの向こうからかかる。
聞き覚えのある声だ。シグナムにとっては、数年来の好敵手の声。

「噂をすれば、ってやつね。紹介します」

入室してきた者に、シグナムが息をのむ。
10歳を少し超えた年頃だろうか。
子供の頃そのままの姿の、フェイト・T・ハラオウンがそこにいた。
……瞬間、プロジェクトF、プレシア・テスタロッサといった暗いフェイトの過去が脳裏をよぎってシグナムの目が細る。

「ギンガさーん……って、ありゃ、お客さんでした?」
「こちら、さっきの話で事故した方を助けてくれた、カウンター・F・アリシアくんです」
「えーっと…はじめまして、カウンター・F・アリシアです……あのー、どちら様です?」
「アリシアだと?」

327 名前:Name〜君の名は〜:2008/12/19(金) 04:27:28 ID:OP7gLPiu
その名にシグナムが固い反応を示す。PT事件の、かなり深い部分までこのフェイトの生き写しは関係しているらしい。
仔細にその姿を観察していたアギトとシグナムを、赤い瞳が見つめてくる。
特に小さな容姿のアギトに対して、好奇心が色めいていた。

「こちらシグナム二等空尉とアギト三等陸士」
「あー、あー、ギンガさんから話聞かせてもらってます、機動六課のシグナムさんってあなたですか!」

人懐っこい笑み浮かべて子供っぽく声を上げたカウンターは、そっくりではあるが、小さい頃のフェイトとやはり印象が大きく違うものだった。

「機動六課の事も知っているのか…ギンガ、どこまで話したんだ?」
「…シグナムさん、実はこの子、全部知っているです」
「…? 何を、全部知っているんだ」
「自身の出自から、さらには私たちが今まで知らなかったことまでです」
「…詳しく話してくれないか」

シグナムの厳しい目がカウンターへと向けられる。
彼女自身は気圧すつもりなどなくとも、その迫力ある双眸にカウンターが少しだけたじろいだ。
それから、何から話せばいいのか、と一寸だけ困ったような顔をして、ひとつ頷く。

「…まず、私はフェイト・T・ハラオウンさんのクローンです」

シグナムが頷く。一目でそれは理解できる事だ。

「ただ、プロジェクトFで生まれた記憶転写型といった複雑なものではなくて、フェイトさんの遺伝子を使って生まれたクローンの、」
「!?」

カウンターの赤い目が、黄金に染まる。そして、足元に広がる機械の紋様。
シグナムとアギトが愕然とする。見た事のある眼だ。その眼を、知っている。

「戦闘機人です」

カウンターが右手を挙げた。その指先から零れるのは、小さな雷電。
魔力ではないそれはISである。

「電撃を操るIS「フェイト」。電子部品に覿面の効果があるこのISは、スバルさんのISに匹敵して、戦闘機人に効果があります」
「スバル…だと。まさかお前は…」
「そうです。私はギンガさんとスバルさんを造った人間から造られたカウンター・ナンバーズ―――戦闘機人を破壊するための戦闘機人です」




328 名前:タピオカ:2008/12/19(金) 04:34:25 ID:OP7gLPiu
終わりです



「私は吸血鬼の血を吸う、吸血鬼です」
クソガキの頃、とあるお話の登場人物のこんなセリフを読んでちびるほど感動した覚えがあります
多分にそのお話の影響を受け、もはやパクリではないかと指さされんばかりの風呂敷の広げ方ですが…つい勢いで…
さらにはナンバーズ壊すための戦闘機人とか……

野狗氏の後出しですので、どう言われても反論できません、ごめんなさい orz
久しぶりに真面目な話を書きたかったのです orz

329 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 05:34:02 ID:zkCsxjWI
トリブラ?

330 名前:尊ぶべき愚者 ◆xP9o.b17z6 :2008/12/19(金) 08:03:13 ID:D9G61WK+
お久しぶりです。
短いですが「尊ぶべき愚者」を投下します。

・非エロ
・オリキャラ多数、というかメイン。
・独自解釈あり

331 名前:尊ぶべき愚者 二十話  ◆xP9o.b17z6 :2008/12/19(金) 08:07:40 ID:D9G61WK+
 日夜激務をこなしているレジアス中将だったが、その日は更に追い討ちをかけるように面倒な客人を迎える破目になった。
 実は本局の嫌がらせなのでは? と邪推しながらデスクの上に山の様に積み上がった書類越しにその客人を見据える。

「用がないなら帰れ」
「なんだよ。前はさっさと来いとか言ってたのに」

 ソファーにふんぞり返っていた外交官は子供のように不貞腐れて酒瓶に口をつける。

「事前の協議で会談の日取りを決めた上でないと困る」

 第49管理外世界との事を早期に終結させたかったのはレジアスも同様だったが、突然部屋に押しかけられても迷惑なだけだ。
 そんな事は明言するまでもない常識の筈だが、外交官といるとどうも自分の常識が揺らいでしまう。

「まあ、今日来たのは別の理由もあるんだ。ぶっちゃけそっちが本命」

 そう言う外交官の声には今までと異なる感情が乗っていた。
 必至さ、と言うべきか。本局との論戦をする時の自分と似たものをレジアスは感じ取った。

「……何だ?」

 レジアスの声が真剣味を帯びる。
 自前の諜報員からの報告だと外交官の周囲がキナ臭くなっているらしい。
 緊張するレジアスの前で深刻な面持ちの外交官はゆっくりと口を開く。

「金がなくてさ」
「帰れ」

 一言の元に切り捨てる。
 真面目に取り合った自分が酷く間抜けに思えた。
 金がないのは外交官だけではない。
 むしろ、こちらの方が深刻なのだ。
 申請していた予算が却下された事もあり、E計画は遅々として進まない。

「そんな事言わず」

 外交官はソファーから起き上がり、デスクの前までやってくる。
 機密に関わる文章も混じっていたのでレジアスは慌てて書類の山をしまおうとして、盛大に四散させた。


332 名前:尊ぶべき愚者 二十話  ◆xP9o.b17z6 :2008/12/19(金) 08:09:37 ID:D9G61WK+
「ちっ」
「あらら」

 舌打ちしながら椅子から立ち上がり、机の前にしゃがんで書類を掻き集める。
 ふと顔を上げると、外交官がひらひらと落ちてくる紙を一枚、無造作に掴んでいた。

「電子媒体でよくね?」
「黙れ」

 基本的には電子媒体なのだが、今あるのは責任者直筆のサインが必要な書類ばかり。
 なので、外交官が手に持っていた書類を引っ手繰る。
 一瞥して確認すると極秘任務の報告書だった。
 固有名詞を別の言葉に置き換えてあるので、内容を悟られる事はないと思うが失態には変わりない。

「……」

 書類を裏向きにして隠しながらレジアスは自分の意気が下がった事を実感した。
 極秘裏にスカリエッティの拠点を探させているのだが、結果は芳しくない。
 こちらで把握しているものもあるのだが、それはダミーの可能性が高いというのが自分達の見解だ。
 出現しているガジェットの数からして流通関係を漁れば手掛かりくらいは見付かると楽観視していたが、なかなかどうして、巧妙に隠蔽されているようだ。

 この行動が最高評議会に対する背信だという事は理解している。
 それでも譲れない一線も存在する。
 レジアスには今もなお自身を苛む後悔がある。

 かつて、自分のせいで壊滅した部隊があった。
 その内の二人は遺体すら返らず、直後に親族が行方不明になるという事件も発生している。
 特殊な状況ゆえに表立っての調査は出来ないが、それでもミッドチルダの為に殉じた彼等が安心して眠れるようにケジメをつけなければならない。

 スカリエッティは地上部隊には大した事は出来ないと舐めている。
 こちらの忠告は聞いても意見等は重視しないだろう。
 現状はスカリエッティに“協力してもらっている”が、理想は“協力させている”だ。
 独力でアジトでも発見する事でこちらの力を誇示し、少しでも御せるようにしなければならない。
 それが、自分に出来るせめてもの事だ。

333 名前:尊ぶべき愚者 二十話  ◆xP9o.b17z6 :2008/12/19(金) 08:11:34 ID:D9G61WK+
 思考に埋没していたレジアスが意識を外に向けると、何かに気付いたような外交官がまじまじと顔を覗き込んでいた。
 吐く息が生暖かいと不快感を露にしながらも、集めた書類を持って机を迂回して椅子に腰かける。
 スカリッティに関する書類は引き出しの中に入れておく。

「……なんだ?」
「死相が出てる。おまけに女難の相も」

 何を唐突に言い出すのか。
 第49管理外世界の人間は見ただけで分かるのか。
 仮にそうだとしても、レジアスは予言とかそういう類いは一切信用しない事にしている。

「こりゃ一年以内に酷い目に遭うな」
「……」

 ほんの一月前に大剣で背中を斬られたが、それより酷いのか。
 その時の事を思い出すだけで体が痛む。

「そんな訳でこの壺を買わないか?」

 そう言いながら何処からともなく取り出したのは古びた壺だった。
 この手の知識には疎いレジアスだが、とても高価な物には見えない。
 というか、明らかに一度割れて繋ぎ合わせた形跡がある。

「駄目か?」
「駄目だ」
「じゃあ、技術大国である第67管理外世界がその粋を集めて作った最新鋭の防刃ベスト」
「いらん」
「じゃあじゃあ、三百年前の古代遺跡から発掘された紅に輝く結晶体を……」
「いい加減にしろ」

 折角集めた書類が再び散らばる事も気にせず、レジアスは身を乗り出して外交官の頭を叩いた。




334 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 08:12:49 ID:vS0Mu4Qu
誰も期待してないから

335 名前:尊ぶべき愚者 二十話  ◆xP9o.b17z6 :2008/12/19(金) 08:13:54 ID:D9G61WK+
 とある管理世界にある元第23管理外世界の避難民の居留地は異様な熱気に満ちていた。
 照明が完備されている筈の室内では松明が燃え、住人を照らす。
 その服装はミッドチルダの人間とは異なった意匠で、彼等が別次元の住人だという事を端的に表現している。

「管理局への迎合を選ぶとは嘆かわしい」
「聞いた話だと地上本部は先のテロで防衛力が大幅に低下しているという。シェオルを奪還するなら今だ」
「他の居留地とも連絡を取りたいが、もたもたしていては手遅れになる」
「現人神が一人もいない我等にとっては電撃戦に活路があるな」

 彼等は口々に管理局との戦いを叫び、異を唱える者はいない。
 それだけシェオルは大事なものであり、それを管理局に渡す決定をした首長達に対しての失望と怒りがあった。
 管理局に対しては保護してもらった恩はあるものの、故郷を失う原因になった管理局にあまり良い感情はない。

 その時、部屋の隅の通信機に光が宿る。
 申し訳程度に設置してあったのだが、彼等は機械に関して一様に疎いため埃を被っていた。

「何事だ?」

 映し出されたのは管理局の制服を着た赤髪の青年だった。

「管理局に露見したか!」
「待て」

 血気に溢れた一人が立ち上がろうとするが、それをリーダー格の男が制する。

「赤い髪にその顔立ち、もしや……」

 彼は知っていた。
 ある地方に武勇に優れた赤髪の現人神がいた事を。
 その男は十五年に死んだが、彼にはまだ幼い弟がいた。
 風の便りで管理局の局員になったとも聞いていた。

『ご想像の通りだと思います。というか、そんなに兄さんと似てるのかなぁ』

 参ったな、と頬を掻きながらも青年は何処か嬉しそうだ。

336 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 08:15:00 ID:vS0Mu4Qu
つまんね

337 名前:尊ぶべき愚者 二十話  ◆xP9o.b17z6 :2008/12/19(金) 08:15:11 ID:D9G61WK+
「何の用だ? 説得でもするつもりか?」
『そういう返答をされるという事は、やはりシェオルを奪うおつもりですか?』
「当然だ。あれは我等の故郷そのもの。やすやすと管理局に渡す訳にはいかぬ」
『ですが、シェオルは管理局と各地の首長の交渉の末に譲渡されます。行動を起こしても非はこちらにあります』

 リーダー格の男は一旦口を噤むが、すぐに鋭い眼光をモニターに向ける。

「これは、極論するなら意地の問題だ。君の兄達は世界を守る為に戦ったという誇りがある。だが我等には縋れるものが何もない。
 抗う機会すら与えられず、ある日突然故郷を失い、かつて故郷が存在していた証であるシェオルすら手離さなければならない。
 管理局に恭順しようという考えは理解出来るが我々は納得出来ないのだ」

 それに、と誰かが言葉を繋げる。

「二度と返ってこないものがある。それは命だったり、根付ついていた文化だったり、思い出の場所だったりだ」
「今でも居留地にいる者達は絶望に打ちひしがれている。いや、むしろ酷くなっている。故郷の痕跡がどんどん薄れていくからな」
「そして、これから生まれる世代は自分達の故郷を何一つ知らないまま生きる事になる」
「だから我々はシェオルをこの手に取り戻すのだ。自分達の世界は確かに存在していたのだと」

 集団の中から同意の声が上がる。
 それを見る執務官は気圧されたように目を伏せる。
 再度目を上げた彼の瞳には今までと異なる光が宿っていた。

『他人から見ると馬鹿らしいでしょうね。理性的じゃない。まるで子供だ』
「まったくだ。だが、別に理解されようとは思わない」
「望む事はシェオルを奪還して我等の声を管理局に叩きつける事だけよ」
「シェオルがあれば各地に散った同胞も集まる。失ったものも幾分かは取り戻せるだろう」

 話を聞く執務官は喜悦の表情を浮かべていたが、どこか陰りが見えた。

『意気軒昂の所申し訳ないのですが、現在のミッドチルダには厳しい入国制限がされていて侵入はほぼ不可能です。
それに近い内にシェオルは本局へ移送されます。そうなれば手出しは非常に困難』

 集団の中にざわめきが広がるが、執務官の一声がそれを遮る。

338 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 08:16:17 ID:vS0Mu4Qu
容量の無駄だからさっさと帰れ

339 名前:尊ぶべき愚者 二十話  ◆xP9o.b17z6 :2008/12/19(金) 08:16:35 ID:D9G61WK+
『自分がやります』
「本気か? いくら現人神の君でも一人では……それに今は管理局の人間だろう?」

 自分達に加担すれば免職どころか犯罪者として逮捕される。
 管理局内で安定した生活を送る執務官を憂慮するが、当の執務官はゆっくりと首を横に振る。

『自分は今でもあの世界の人間のつもりだし、その事を誇りに思っています』
「……そうか」
『かつての戦いで何も出来ず、先達の死と引き替えに生を与えられた者として彼等の意志を継ぎたい。
彼等が守ろうとしたもの、死と引き換えにしても良いと思わせたものを次の世代に引き継がせ、遺恨を断ち切る為に。
それには管理局という組織を見極めなければならない』
「見極める、か。君の眼鏡に適ったらどうする?」

 言動の中にどことなく消極的なものを感じ、リーダー格の男は懸念を抱いた。
 やはり管理局と戦う事に抵抗があるのか。

『見極めようとするのはあくまで自分個人の意思です。
だから、結果はどうあれ必ず、譲渡に反対した人達の前にシェオルを持ってきます』
「世話をかけるな」
『いえ。自分は理性では首長達寄りですが、感情ではあなた達寄りですから。首長達も内心では譲渡に抵抗を感じていたと思います。
自分が管理局によって失わされた者達全ての代弁者として感情を管理局にぶつけます。
管理局が向き合うか、逃げるかは分かりませんが、融和するにしろ、対立するにしろ、誰かがやっておかなければならない事でしょうから』

 一言一言に籠った決意と覚悟を感じ、リーダー格の男は自然と顔を綻ばせる。
 自分よりずっと年下の男が確固たる信念を持ち、故郷の全ての想いを背負うという。
 それのなんと頼もしい事か。

「了解した。君が我等の代表だ。我等の未来を託す」
『……確かに託されました』

 あまりに大きな責任だったが、執務官はそれを正面から受け止めた。

「そして我等も我等に出来る事をやる」
『ええ。皆で戦いましょう』



340 名前:尊ぶべき愚者 二十話  ◆xP9o.b17z6 :2008/12/19(金) 08:17:46 ID:D9G61WK+
『ゲイズ中将』

 大量に積み重なった書類に目を通していたレジアスを突然の声が呼び止める。
 空中に浮かぶ立体モニターに映ったのは眼鏡を掛けた将官。
 五つの機動部隊を有する古代遺物管理部の部長だ。

『かねてからの交渉の結果、シェオルの所有権を頂きました。明日にも正式に管理局の所有物になるでしょう』
「そうか」
『それに伴い、以前通達していたように廃棄都市を居留地として提供する事になりましたので、再開発の指示を』

 上から目線の言葉にレジアスは渋面を作る。
 簡単に言ってのけるが、それにどれだけの予算が必要だろうか。
 どの業者に委託するかでも一悶着あるだろうに。

『前々から犯罪の温床になると非難が高まっていたのでいい機会かと』
「訓練や試験の場所として使用している」
『まさか、本気でおっしゃっている訳ではないでしょうね? メリットとデメリットを天秤にかければどちらに傾くかは自明の理』
「口で指示を出すだけなら楽でいいな」

 厭味を意に介さず、眼鏡をかけ直す。

『居留地の提供は交渉の結果。それを反故には出来ません。予算もある程度出るでしょう。では』

 一方的に通信を切られ、レジアスは顔を伏せて長嘆する。
 それを励ますでもなく、外交官はマイペースに酒瓶を傾けていた。
 その余裕を妬ましく思いながらも、視線を書類に落とす。
 溜まっている書類は今日中に消化してしまいたい。
 廃棄都市の件は部下を集めて協議する必要があるので後日に回すしかない。

『良かった。まだ地上本部におられましたか』

 先程の部長とは異なる若い男の声が頭上から降ってくる。
 今日は忙しい日だと思いながら伏せていた顔を上げる。



341 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 08:18:13 ID:vS0Mu4Qu
お前みたいなのがいるとスレの質が落ちるんだよ

342 名前:尊ぶべき愚者 二十話  ◆xP9o.b17z6 :2008/12/19(金) 08:18:53 ID:D9G61WK+
「その声は、執務官か。何か用か?」
『ええ、まあ。あのですね、何と言っていいかよく分からないのですが……』

 モニターに映った執務官は困ったよう笑みで頬を掻く。
 まあ、執務官なら部長程困る事はないだろうとレジアスが考えていると、

『今からシェオルを返してもらいに行きます』
「……」

 レジアスはカップを手に取り中のお茶を口に含む。
 オーリスが淹れてくれたものだが時間が経っていた為に冷めていた。
 勿体無い事をしたと反省しながらカップをデスクの上に戻す。

「すまんが、もう一度言ってくれんか?」
『耳が遠くなりましたか? 管理局が奪い取ったシェオルを返してもらうと言っているんです』

 そう言う執務官は今まで見た事のない程に挑発的な表情をしている。
 完全にレジアスを見下し、目には侮蔑の色が籠っていた。

「……誰だ? お前は」
『はあ? 目もおかしくなりましたか?』
「いや、姿形は魔法で容易に偽れるからな」

 訝るレジアスに、執務官は冷めた目をしながら自身の名前と所属が記されたIDカードを見せる。
 それを凝視したレジアスは本人と認め、それゆえ今し方の言葉の意味を測りかねていた。

「私が聞いた限りではシェオルはきちんとした交渉の上で管理局に譲渡されるらしいが?」
『それは一部の人間が勝手に行った事。我々の総意ではありません』

 だから返してもらう、と言葉を繰り返す。

343 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 08:19:43 ID:vS0Mu4Qu
いい加減つまんないからやめろ

344 名前:尊ぶべき愚者 二十話  ◆xP9o.b17z6 :2008/12/19(金) 08:20:33 ID:D9G61WK+
『十五分後にはそちらに着くと思います』
「待ってはくれんか?」
『敵が相手の都合を気にするとでも? では、精々抵抗してください』

 モニターが消え、部屋の中を静寂が支配する。
 同時に緊張が切れたのか、レジアスは椅子に体を深く沈める。
 次から次に起こる問題にさしものレジアスにも疲労の色が見えた。

「本当にやる気か、あいつ」

 外交官は強張った表情で酒瓶の蓋を閉めてテーブルに置くと、大きく溜息を吐く。

「予見していたのか?」
「正面切って喧嘩売るとは思わなかったが、シェオルが本局に移送される前に第23管理外世界の人間が何らかのアクションを起こすだろう事は想像に難くない。
本局の連中も同じこと考えてたから今まで地上本部に置いといたんじゃないかな」
「そうか」
「ここが正念場だな、中将。加害者の使命として正面から向き合わなくちゃ」
「加害者、か」

 以前見た資料では第23管理外世界は管理局が使用したアルカンシェルによって人が住めない世界になったという。
 なるほど。間違いなく加害者だ。
 当時の現場は予断を許さぬ状況であり、発射にも正当性が認められたようだが、被害者には関係ないだろう。

「ある意味、当然の帰結か」
「丁度いい機会じゃないか。シェオルの所有権が曖昧なこのタイミングならよっぽどの事が起きなければ有耶無耶に出来るだろうし。
遺恨を少しでも減らす為にわだかまりは全部吐き出した方がいい」
「他人事だから気が楽だな?」
「そうでもない。第23管理外世界の避難民はうちでも保護してるから、こじれてこっちに飛び火されると困る……っと」

 外交官は肩をびくんと震わせ、言葉を中断する。



345 名前:尊ぶべき愚者 二十話  ◆xP9o.b17z6 :2008/12/19(金) 08:22:15 ID:D9G61WK+
「ちょっと失礼」

 外交官は断りを入れ、内ポケットから振動する通信機を取り出して耳に当てる。
 断片的に漏れ聞こえてくる声は、

「ああ、そうか。いや、何か事件の最前線に立ち会ったみたいで。それで、こっちで保護してた奴等はどうだ? 
なるほど。いや、取り敢えず上の判断を仰ぐべきだろ。勝手に動いて責任取りたくないだろ? とにかく情報封鎖はしっかりしとけ。
うん、それじゃ」

 通信が終了したのか、外交官は通信機をしまってレジアスに向き直る。
 心なしかその表情は暗い。

「各地でも抗議デモや決起集会が起きてるみたいだ。現在は居留地の周辺に留まっているから現地の部隊も様子見に徹しているみたいだが」

 外交官の話を聞きながらもレジアスはある場所へ確認を取っていた。
 応対した人物は誠実な上に優秀ですぐに調べてくれた。

「本局は本局で武装隊を待機させたり、首長達に説得させようとしてるみたいだな」

 何故外交官が現地の部隊や本局の動きを把握しているかを気にする精神的なゆとりは、今のレジアスにはなかった。

「それでどうする? 十五分じゃ迎撃の部隊編成も間に合わないんじゃないか?」
「話し合いで解決する」

 既に管理局と第23管理外世界のトップとの間で交渉が終了しているのだ。
 ここで戦いが勃発すればそれが無駄になる。
 そこには本局に貸しを作ろうとかそういう打算的な考えはなく、純粋に争いを避けたい意思からだった。



346 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 08:23:04 ID:vS0Mu4Qu
十八歳以下はくんな

347 名前:尊ぶべき愚者 二十話  ◆xP9o.b17z6 :2008/12/19(金) 08:23:39 ID:D9G61WK+
「話し合い、ね。それが駄目だったら尻尾巻いて逃げた方がいいな。多分勝てんぜ」
「現在厳しい入国審査が敷かれている。ミッドチルダにいる第23管理外世界出身者は執務官だけだ」
「ブリュメール一人に正面突破されたんだろ? 総合的には奴よりは弱いだろうけど、それでも執務官は強いぞ。
第23管理外世界最高峰の血統だし、多分世界最強だ」

 何だかんだで外交官はこちらを気遣ったのだろうが、一人の人間にすら勝てないという言葉には反感を覚えた。

「地上本部はミッドチルダだけでなく各世界に存在する地上部隊全ての頂点だ。そこが勝てないから逃げますなど言えるものか」
「勝てないなら逃げてもいいだろ。どうせ本局の魔導師がババーンと来てドカーンと解決してくれるさ」

 すぐさま反論しようとしたレジアスだったが、外交官の口調に違和を感じ、慎重に言葉を選んだ。

「……それは、局員の誰かが言っていたのか?」
「そういう発想に至る時点でアウトだと思わないか? まあ、その通りなんだけどさ」
「くっ……」

 思う所はあるが、今はそれ所ではない。
 すぐにやって来る執務官に対処しなければならない。
 モニターを表示して命令を伝達しようとした時、

「中将、人事の件でヴァイゼンの地上部隊から……」

 桃色の髪をした局員が書類の束を抱えて入ってくる。



348 名前:尊ぶべき愚者 二十話  ◆xP9o.b17z6 :2008/12/19(金) 08:25:09 ID:D9G61WK+
「後にするよう言っておけ」
「は、はあ。あの、何か?」
「ああ。至急オーリス三佐を呼び出してくれ」

 怪訝な顔を浮かべながらも、レジアスの様子から緊急事態だと察し、彼女は立体モニターを呼び出して通信を始める。
 それを横目で確認しながらレジアスも当直の部隊への指示を出す。
 だが状況は思わしくない。
 一ヶ月前の事件で負傷した局員が多い。
 けれども、市街地の巡回を怠る訳にもいかないので本部の警備を減らして何とか以前と同じ巡回体制を維持したのだが、今はそれが仇になった。
 持ち堪えられないかもしれないと、胸中に不安が渦巻く。

「給料とか良いの?」
「ええ、まあ……」

 外交官がちょっかいをかけているのが見えたが、注意する時間すら惜しかった。

「ふーん。へえー。ほー」

 外交官は局員の爪先から頭の天辺まで舐めるように見つめるとあくどい笑みを浮かべる。

「中将、この子借りてくぜ」
「あ、あの……」

 外交官が腕を引いて部屋を出て行こうとする。
 流石に止めようとしたレジアスだったが、入れ替わるようにオーリスが入室してきたので、まあいいか、と見逃した。
 退室する間際、局員が執務机に鋭い視線を向けていたが、レジアスがそれに気付く事はなかった。

349 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 08:25:31 ID:vS0Mu4Qu
スレの空気を悪くしてるって自覚持てよ

350 名前:尊ぶべき愚者 二十話  ◆xP9o.b17z6 :2008/12/19(金) 08:26:26 ID:D9G61WK+
以上です
続きは明日にでも

351 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 08:27:26 ID:vS0Mu4Qu
二度とくんな

352 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 08:27:49 ID:ZG6IGyTw
粘着職人アンチの荒らしまだスレに張り付いてたのかよw

>>350
投下乙
言うまでも無いと思うがこういう荒らしは気にしちゃダメだぞ、ファイト!

353 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 08:29:53 ID:ddcyRZoJ
またトリップ変わった?

354 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 08:52:52 ID:M7256rhq
嵐はとっととIDNG登録してスルースルー。
通報したし。

>>350
乙。最近投下が多くていいね

355 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 09:02:41 ID:jKVdKdrz
     _____
   /::::::::::::::::::::::::::\〜プーン
  /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\〜プーン
  |:::::::::::::;;;;;;|_|_|_|_|〜プーン
  |;;;;;;;;;;ノ∪  \,) ,,/ ヽ〜
  |::( 6∪ ー─◎─◎ )〜        / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  |ノ  (∵∴ ( o o)∴)〜      < なのは萌え〜
  | ∪< ∵∵   3 ∵> ムッキー!    \_____________________
  \        ⌒ ノ_____
    \_____/ |  | ̄ ̄\ \
___/      \   |  |    | ̄ ̄|
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|:::::/        | ̄ ̄ ̄ ̄|  〔 ̄ ̄〕


356 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 11:13:23 ID:zFLvV83z
はやての中の人がなにやら大変な事になってまつね

357 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 11:21:36 ID:TGd3A4Oe
中の人などいない

358 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 12:14:56 ID:Gap+nUc9
一部のバカが騒いでるだけw

359 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 12:25:26 ID:SMt2JgV5
× 大変なことになっている
◎ 大変なことにされている

360 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 12:50:36 ID:yGatV1uP
>>328
GJ!!です。
対機人用機人か……ロマンが溢れますねw
作ったのは、三脳が機人を時期戦力にしようとしているのを知っていた反管理局組織なのかな?
アギトがナンバーズが嫌いなのは、正義か悪かはどうであれ、敗北したのに勝者に従順な事に、
隠れながらも再起しようとする誇りというか意地が感じられないからだろうか?


デバイスには、インテリ、ストレージ、アームドと三種類ありますが、
三期ではインテリとアームドを使う強者はいましたけど、ストレージの強者がいない。
ストレージの演算能力の高さを利用して、高速発動スピードによる、一発の破壊力(砲撃とか)というよりは、
手数で圧倒するのを選択する奴とかいないのだろうか?

361 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 14:13:35 ID:1kM45m0F
>>360
はやての夜天の書も一応ストレージだけど、容量多過ぎて検索に時間かかるからなぁ。

多分、敵がAMFで魔法を無効化してくるから補助機能搭載とAIによるアシストが可能なものが支給されたのでは?
実際、ティアナは自作デバイスの時は対AMF弾を撃つのに時間がかかった上に1発でダウンしていたけど、
クロスに変えてからはタイムラグなしな上に消耗も少ないみたいだし。
AMFで無効化されるから半端な火力よりも1発大きな奴が必要だろうし。

ただ、デュランダルには凍結出力を強化する機能が搭載されているらしいから、
ストレージ=ただ速いだけの記憶媒体ってわけでもないみたいだな。
最新式だから?

362 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 19:53:30 ID:yGatV1uP
ティアナが、ストレージでバリアブルシュートを撃つのに時間掛かったのは何でなんでしょうね?
ストレージをマスターレベルまで使いこなせない人はインテリの方がいいのかな?補佐もありますし。
出てきて欲しかったのは、主要人物が一秒間に2発程度の魔力弾が撃てる時に10発から12発ぐらい撃てる人とかw


363 名前:サイヒ:2008/12/19(金) 20:08:26 ID:Mi8Lm4OB
捏造時空ばっかり作る作風なんで、思い切り改変しまくった時空の話など。

死人が色々生きてます。
出来事も大幅に変わってます。
非エロ。居酒屋中将もあるよ。

364 名前:たとえばこんな世界:2008/12/19(金) 20:10:56 ID:Mi8Lm4OB
「ねえねえリニス。あれ何?」
「焼き栗屋の屋台ですよ。こんな朝早くから出てるのは珍しいですね」
「ふぅ〜ん」
「欲しいんですか? 朝ごはん食べたばかりなのに、アリシアは食いしん坊ですね」
「そうじゃないよ。お母さんに食べさせてあげたいなと思って」
「そうですね。プレシアはああ見えて甘い物が好きですから。喜ぶと思いますよ」
「帰る時もまだ焼き栗屋さんがいたら買っていこうね」

 秋も深まり、そろそろ寒気を身に感じる季節。
 リニスとアリシアは長い坂をゆっくりと下っていた。アリシアが通う保育園は、坂の終わりにある。

「じゃあねリニス。お母さんの面倒よろしくね」

 入り口で子供を迎えている保母に挨拶し、アリシアは保育園の建物へと駆け込んでいく。手を振って見
送ってやるリニスに、保母が話しかけてきた。

「それでアリシアちゃんのお母さん、どうなんですか?」
「一進一退です。ここは空気もきれいなので、そのうち外にも出歩けるようになると思いますが」
「来月のお遊戯発表会には間に合わないかしらねえ」
「ええ、たぶん私が来ることになるでしょう」

 言葉を並べ立てていきながら、自分は深刻そうな顔が出来ているのだろうかと、リニスは内心冷や汗を
かいていた。嘘はどうにも苦手だ。
 「喘息系の病気療養のため、田舎に引っ越してきた母子と使用人」ということにしてあるが、病気で出
歩くことができないはずのアリシアの母はその実ぴんぴんしている。
 家の中に引っ込んでいるのは、万が一時空管理局の職員にでも見つかったらとっ捕まるからだ。
 ぼろが出ないうちに話を切り上げ、リニスは歩き出した。
 リニスが事務員として勤めている農協は保育園のすぐそばにある。だがそちらには向かわず、リニスは
下ってきた坂をもう一度上っていく。

「今日こそは、絶対にプレシアにうんと言わせてみせます……!」

 歩を進めながら、決意を新たにするリニス。
 歩いて十分の家に戻れば、悠々と朝寝でもするつもりだったのかプレシアはベッドに寝転んで雑誌をめ
くっていた。
 リニスの顔だけで話題を察したのか、露骨にうざったそうな顔をすると雑誌を置いて顔を背けてしまっ
た。それでも構わずにリニスは言う。

「プレシア、話があります」
「私には無いわ」

 だからとっとと去れと伝えてくるプレシアの視線に怯まず、リニスは怒鳴るような大声で言った。

「いいかげん、フェイトに会ってあげてください!」
「会う必要なんてないわ。ハラオウン家に養育費代わりのことはしてあげたでしょ。ニュースでフェイト
も泣いて喜んでたからいいじゃない」
「ハラオウン家全体にじゃありません。フェイト個人に謝ってください。あなたは、人としてフェイトに
ひどいことをしたんですから」




 かつてリニスはフェイトの魔法教師という役目を終えて永遠の眠りについた、はずだった。
 しかしリニスの意識は無限に続く闇へとは落ちず、再び眼を開けば主人とフェイトがいた。
 まだ遣り残したことがあったかと訊ねるリニスに、プレシアが口を開くより先にフェイトが首を傾げた。

365 名前:たとえばこんな世界:2008/12/19(金) 20:12:13 ID:Mi8Lm4OB
『フェイトって誰? 私の名前はアリシアだよ』

 頭でも打ったのかと心配するリニスだが、すぐに異変に気づいた。
 リニスが目覚めた場所はアルトセイムだったが、周囲の地形などが記憶と微妙に食い違う。目の前のフェ
イトも、しゃべり方や全体的な雰囲気がるで別人のようだった。
 戸惑うリニスにプレシアが答えた。

『あなたが一度死んでから、二十年以上経ってるのよ。この子は…………フェイトの妹みたいなもの』
『その歳で再婚できたんですか!?』
『…………』

 驚くポイントを間違えたらしく、杖でしこたま殴られた。
 たんこぶだらけになった使い魔に主が命じたのは、自分は色々あって時空管理局に見つかるとまずいの
で、リニスが働いて自分と娘を食わせろということだった。

『分かりましたが、質問を一つしていいですか? プレシアはアルハザードへ行くために無茶をやって、
時空管理局に追われるようになったんですよね』
『……大雑把にはそんなところよ』
『そしてアルハザードにもたどり着けた』
『ええ』
『だったら、どうしてアルハザードでずっと暮らそうとしなかったんですか?』
『あんな所、人間の住む場所じゃないわ』

 その一言以外、プレシアがアルハザードについて語ったことはない。
 きっと、死人ですら甦らせることが出来る万能の御伽の国は、それ故のどうしようもない歪みを持って
いたのだろう。
 ともあれ、その日からリニスの苦労が始まった。
 プレシアがアルハザードから持ち帰った宝石を売った金は一軒屋と内装を買った時点ですっからかんと
なったので、あとはリニスが細腕一つで三人分の生活費を工面している。
 色々と苦労はあったものの、定職も見つけられ今はミッドチルダ辺境の田舎町で落ち着いて暮らせるよ
うになった。
 そうなって一段落つくと、どうしてもリニスが気になるのはフェイトのことだった。
 どうしているのだろうとネットで検索してみたリニスは、大きくなったフェイトの姿に家族として感動
し、管理局で知らぬ者が無い敏腕執務官になっていることに元教師として眼を潤ませ、最後にPT事件の
ことを知って椅子から転げ落ちた。
 さらにプレシアを問い詰めることで、アリシアとフェイトの本当の関係、さらにはフェイトにしていた
仕打ちをも知ったリニスは、当然のごとく激怒した。
 それ以来二人は、謝りに行け、嫌だ、の問答を毎日のように繰り返している。

「だいたい私は犯罪者よ。おまけに死人を生き返らせる女なんて、管理局にしてみればロストロギアより
厄介じゃない。執務官をやっているフェイトの前に顔を出せるわけがないでしょ」

 これ以上議論するのが面倒になったのか、プレシアはシーツにくるまって完全にリニスに背を向けてし
まう。
 それでもリニスは食い下がる。

「本当に、会ってごめんなさいと言うだけでいいんです。フェイトはきっと許してくれます。だから……」
「うるさいわね。いい加減に黙らないとまた消すわよ」
「ご自由にどうぞ。その代わり、あなたがアリシアの食費から学費まで全部稼ぐことになりますが、いい
んですね」
「…………生き返ってから性格悪くなったわよ、あなた」

 苛立たしそうに髪の毛をかきながら毛布から出てきたプレシア。
 かといってまともに相手してもらえるかと思えばそうでもなかった。

366 名前:たとえばこんな世界:2008/12/19(金) 20:13:58 ID:Mi8Lm4OB
「時間よ」
「なんの時間ですか」
「あなたの出社時間」

 たしかに家を出るぎりぎりの時間になっていた。
 事が事だけにアリシアには聞かせられずプレシアと二人っきりの時にしかできない話なので、たいてい
はこうして時間切れまで粘られてうやむやになってしまうのだ。

「とにかく、私は絶対にあなたをフェイトに会わせて謝らせてみせますからね!」

 説得の度にお決まりとなりつつある台詞を残してリニスは家を飛び出た。





「人間の情緒の分からない猫ね」

 リニスが出て行った扉をにらんでプレシアはふん、と鼻を鳴らした。

「フェイトが許す? そんなことは分かりきっているわ。私が許されたくないのよ」

 傍らに置いていた雑誌を手に取り、読みかけだった場所を開く。
 雑誌自体はどこででも売っている婦人向け雑誌。プレシアが眼を通している記事のタイトルは『働く女
性特集第三十七回  管理局執務官 フェイト・T・ハラオウンさん』。
 記事の前半はフェイトの略歴や仕事内容。後半は記者の質問にフェイトが答える形式になっている。


――――ハラオウン執務官は孤児院にも多額の寄付をされているとお聞きしておりますが。

『はい、任務で保護した子供達を預かってもらっていますから。預けてそのままで終わりというのもどう
かと思って』

――――子供達になにか一言ありますか?

『私に恩返しをしたいという子が多いんですけど、気にせず子供達にはそれぞれの人生を自由に歩んでも
らいたいです。それともう一つ。生みの親のことを絶対に忘れないでほしいです。どうしようもない理由
があったからこそ、子供を手放すことになったと思うので。この世で、自分のお父さんもお母さんもたっ
た一人しかいないんですから』


 記事を読み終えたプレシアは、丁寧に雑誌を引き出しにしまった。

「……忘れなさい。プレシア・テスタロッサなんていうひどい女のことなんかきれいに忘れて、ハラオウ
ンとして生きなさい。私に、あなたの母親をやる資格はないんだから」

 呟きながら一度だけ目元を擦り上げ、シーツに潜り込んだ。
 眠りに落ちる刹那、二人の娘に囲まれて平和に暮らしている自分、そんな幸せな夢を見るような予感が
した。

367 名前:たとえばこんな世界:2008/12/19(金) 20:14:42 ID:Mi8Lm4OB
          ※




 朝食後、リンディはいつもどおりお茶を淹れていた。
 お湯であらかじめ暖めた湯呑みに新茶を入れる。最後に角砂糖を一個とミルクを一杯で出来上がり。昔
は砂糖を二個入れていたが、糖尿病になったらどうするのと子供達がうるさく言うので減らした。
 ただ、湯呑みの数は昔と違って一つ増えて二個になっている。先月温泉旅行で買った夫婦湯呑み。
 お盆に載せてリンディはリビングへと運んでいく。

「はいお茶よ、あなた」
「ありがとう、リンディ」

 受け取るのは夫であるクライド・ハラオウン。
 つい半年前まで、闇の書に関わる事件により殉職者扱いされていた男である。




 死体は旗艦諸共吹っ飛んだと思われ、空っぽの棺で葬式が行われてから二十年。クライドの復活は唐突
だった。
 ある朝、管理局ゆかりの施設の前にぼうっと突っ立っており、局員が話しかけても反応が無かったので
不審人物としてとりあえず連行されたところ、そこの所長がたまたまクライドの同期で顔を知っていた。
 またその男が粗忽者で「クライド・ハラオウンの幽霊が出た! 嫁と息子に会ったら成仏するだろうか
ら至急よこしてくれ!」と本局に緊急通信を入れたため、事態は一瞬で管理局中に知れ渡る。
 本局へと転送されても相変わらず意識が不鮮明だったクライドだったが、会議室を飛び出して駆けつけ
たリンディの顔を見た途端一気に覚醒し、唖然としているリンディに負けない驚愕を浮かべながら訊ねた。

『リンディ、どうして俺は生きてるんだ?』

 クライドの記憶は旗艦エスティアが爆発してブラックアウトしたところで終わっており、気がついたら
ここにいたということである。
 唯一かすかに思い出したのが、寝台に寝かされており隣に黒髪の女性と帽子をかぶった女性がいたとい
うものらしい。それにしたところで二人については顔も何も覚えておらず、夢かと言われればそうかもし
れないという程度の曖昧なものらしいが。
 二十年の時を経て死人が生き返ったなどというのはそれこそ神話の時代でもなければ起きないような話
であり、こういう異常事態に定番のロストロギア説から、闇の書のシステムの一つ、クライド自身ですら
気づいていなかったレアスキルが発動した等の様々な仮説が立てられ、管理局が総力を挙げたと評しても
過言ではない数ヶ月に渡る調査が行われた。
 結果は、四文字で表せば「原因不明」。
 クローンでもなんでもなくクライド本人であるという以外、何一つとして明確なことは分からなかった。
 散々ニュースだのワイドショーだのでネタにはされまくったが、ともあれ分からんものは分からんとい
うのが管理局全体の意向となり、調査終了後クライドは管理局では生前の階級どおりに提督として勤務し、
それ以外はこうしてリンディと二人で元通り夫婦として過ごしている。

368 名前:たとえばこんな世界:2008/12/19(金) 20:15:51 ID:Mi8Lm4OB
「寒くなってきたな」
「お茶はその方が美味しいわ」

 食後のひと時、クライドと二人で季節や世間について他愛の無いことを語る時間。クライドが一度亡く
なる前にも、よくこうしていた。リンディの大好きな時間の過ごし方。
 二人に懐いているカレルとリエラも、この時間は遊ぼうと言ったりして二人の邪魔をすることはない。
 夫婦の時間に終わりを告げたのは、呼び鈴の音だった。

『こんちわーッス。よろず屋JS社の者ですが』
「あら、早いわね」

 外に立っていた赤毛の元気そうな少女は、ウェンディと名乗った。
 今日は夫婦で出かける予定であり、他の家族も皆出払っているので子守を雇うことにしたのだ。
 リンディは孫を呼んで引き合わせる。

「今日一日、この子達の面倒よろしくね」
「いやあ、可愛らしいお子さんッスね。」
「ふふふ、違うわよ。子供じゃなくて孫なの」
「ああ、それは失礼しま…………へっ? 孫?……いや、だって……えっ? ええっ!?」

 夫婦と孫を交互に見て、信じられないという顔をする。
 リンディの実年齢を知らない人がよく見せるリアクションだった。

「ふふふ、それじゃあちょっと支度してくるから待っててねあなた」

 まだ納得いかない様子のウェンディの相手はクライドに任せリンディは部屋に戻ると、とっておきのよ
そ行きに着替え顔にもうっすら化粧をしていく。
 軽く唇に紅をひきながら、リンディは鏡に映る自分の顔をじっと見つめた。

「確かに若いわね」

 小じわも染みも全く無い顔。化粧水や美白液に大枚はたいているわけでもないのに、肌の張りや白さは
衰える気配はない。自分でも不思議なぐらい、若々しい顔が目の前にある。
 しかし、自分の年齢は紛れもなく四十台だ。そして、クライドの肉体年齢は享年であった二十七歳のま
まである。
 このままいけばきっとリンディが先に世を去り、かつて自分が味わった永別の悲しみをクライドに与え
てしまう。
 いや、それは自分に降りかかってくることかもしれない。
 唐突に生き返ったのだ。また唐突に、例えばこの瞬間に死んでも不思議ではない。
 もしそうなれば、一度戻ってきたはずのかけがえのない人が失われる身を引き裂かれるような悲しみに、
自分は耐えられるのだろうか。

369 名前:たとえばこんな世界:2008/12/19(金) 20:16:32 ID:Mi8Lm4OB
「…………本当に、あの人が帰ってきたのは幸福なの?」

 訊ねても、鏡の中の自分は答えてくれない。
 クライドとの久しぶりのデートで浮き立っていたはずの心は、いつのまにか沈んでいた。
 用意を終えて家を出ても気分は乗らないままだった。

「それで、どこから行くんだい?」
「…………」
「リンディ?」
「…………っ!? ごめんなさい、ちょっとぼうっとしてたわ」

 肩を揺すぶられ、ようやく我に返るリンディ。
 慌てて笑顔を作るリンディの顔をじっと眺めるクライドだったが、リンディの肩に手を回したかと思う
と、強く抱きしめてきた。
 周りにいた人が一斉に振り向いては気まずそうな顔をしてこそこそ去っていくのを眼にして、一気にリ
ンディの顔に血が上る。

「ちょっとあなた! こんな道端で……」
「ひょっとして、俺がまた死ぬかもしれないとか考えてた?」

 図星をつかれて、リンディの身体は硬直した。

「俺だって怖いよ。リンディを失くすのも、自分がまた死んでしまうのも。いきなり生き返ったんだから、
またいきなり死んでしまうかもしれない。……だからさ」

 抱擁する腕が、いっそう強くリンディをかき抱く。

「俺は明日が楽しいか悲しいかなんて考えない。リンディがいてクロノがいてエイミィ達が一緒にいる今
日を、全力で楽しむ。別れが来た時に、絶対に後悔なんてしないように。…………生き返った時、そう決
めたんだ」
「クライド……」
「リンディにもそう思って俺と一緒に暮らしてほしい。…………わがままかな、こんなお願い」
「……そんなことないわ」

 リンディがゆっくりと首を振ると、クライドは腕を解いた。

「そうね。分からない明日より、今日を楽しくする方法を考えた方が、ずっといいわ。……とりあえずは、
思いっきり楽しく昔みたいにデートしましょ?」
「そうだね。それで、まずはどこに行くんだい?」
「特に決めてないわ。あなた検査とかで全然出歩けなかったでしょ。だからあなたの好きな所に行きましょ
う。二十年で色々変わったんだから」
「店構えとかもずいぶん変わったんだろうな」
「最後に行くところだけは決めてるんだけどね。ほら、私達の二つ上の学年で首席だったゲイズっていう
先輩いたでしょ。なんとあの人ね……」

 リンディとクライドは並んで歩み出した。
 二人の足取りは、夫婦の時間を噛みしめるようにゆっくりとしたものだった。

370 名前:たとえばこんな世界:2008/12/19(金) 20:18:43 ID:Mi8Lm4OB
          ※




「あ〜、なんか嫌な夢見たわ……」

 起床一番、ドゥーエは天井を見上げてうめいた。
 つい数秒前まで見ていた夢では、自分は管理局員の服装をしていた。そのくせ同じく管理局の制服を着
たいかにも大物っぽいひげ面の親父を殺し、近くにいたコートの男にぶった斬られたところで眼が覚めた。
 男二人はドゥーエの記憶にない顔で、その割にはやけにリアルを感じる夢でもあったが。

「私が管理局員やってるとか、どういう設定なわけよ?……つつっ、頭痛い……」

 寝巻き代わりである下着姿のまま二日酔いが残る頭を振るドゥーエだが、じわじわとした痛みは芯に残
り続ける。
 昨夜は派遣先の主人が競馬で大穴当てたとかで、職員一同を飲みに連れて行ってくれた。いつもは安酒
しか飲めないドゥーエは、ここぞとばかりに周りが引くぐらいにウィスキーやらワインやらを痛飲した。
飲んでる間はたいへん気持ちよかったが、今では不快感以外のなんでもない。
 とりあえずこういう時は迎え酒だと、ゴミ捨て場にあったのをスカリエッティが修理した冷蔵庫を開け
てみたが、ものの見事にからっぽだった。昨日家を出る前には、たしかに発泡酒を一本残しておいたはず
である。

「……ウェンディかセインの仕業ね。こそこそしないできちんと断ったら飲ませてあげるって言ってるの
に」

 ぶつぶつこぼしながら次善の手段である煙草を喫おうと思ったが、こっちも一本も残っていなかった。
 顔をしかめつつ二度寝しようかと思ったが、頭痛だけでなくむかつきもしてきて寝れそうにない。しか
たなくドゥーエは第三の手である水道水一気飲みをすべく、ジーパンにワイシャツをひっかけただけの格
好で部屋を出る。
 廊下に出たところで、トーレとセッテとすれ違った。二人の手には、派遣先の借り物である某警備会社
の制服がある。

「おはよう、仕事帰り?」
「ああ、この仕事もそろそろ終わる。次は土木作業あたりで探してくれるよう、ウーノに伝えてくれ。あ
あいう仕事なら実入りが良いし身体も動かせる」
「本当に体育会系ね、あなた達二人」
「警備員は基本的に立っているだけだからな。泥棒でも出てくれれば刺激になるのだが……」
「冗談じゃないわ。前の会社みたいに、投げ飛ばした拍子に骨折させたりして警察沙汰になりかけるのは
ごめんよ」
「あれはろくに鍛えてもいないのに他人様の物を盗もうという根性の泥棒が悪い」

 こくこくと頷くセッテを従え、トーレは自室へと消えていった。
 体育会系どころか脳筋だわ、と呟きドゥーエが居間兼食堂に入ると、ウーノがパソコンをかたかた叩い
ていた。

371 名前:たとえばこんな世界:2008/12/19(金) 20:20:05 ID:Mi8Lm4OB
「ウーノ、お金ちょうだい」
「使い道は?」
「お酒と煙草」
「駄目」

 顔を画面から上げもせず、姉はドゥーエの要求を切って捨てた。
 水道水のカルキ臭さと姉のけちっぷりに顔をしかめたドゥーエは、ランクをちょっと下げる。

「煙草は一番安いのにするから」
「それでも駄目」
「じゃあせめて煙草一箱だけ」
「駄目なものは駄目だと言ってるの。今月は余分に使えるお金は全く無いんだから」

 ようやくドゥーエの方を見たウーノは、一緒にパソコンの画面を向けてくる。
 画面の上の表には数字が並んでおり、そのうちの半分は真っ赤だった。遠目で詳細までは読み取れない
が、表が家計簿であり赤い数字が何を意味するかはさすがに分かる。

「だいたいあなたは昨日散々酔っ払ってたでしょ」
「昨日は昨日、今日は今日。それに煙草は一度喫い出したら毎日喫わないと健康に悪いのよ。……はあ、
半年前の芸能界スカウトの誘い、断らなかったら良かったわ。そうすれば今頃、私は押しも押されぬ大女
優で妹達に毎日豪遊させられてたのに」

 演技力には自信がある。その気になれば十代の小娘から八十の老人、異性ですら演じきってみせること
がドゥーエは出来る。容姿も美人であるのは自覚しているし、本格的に芸能界入りすれば大物になれるだ
ろう。
 しかしその道に進むつもりは、ドゥーエには全く無かった。正確には、出来なかった。今の言葉も「こ
のハズレくじが一等だったら良かったのに」という無理を承知な上での愚痴である。
 ドゥーエには、目立つわけにはいかない理由がある。
 自分達十二人の姉妹は、厳密な意味では人間ではなかった。
 稀代の天才にして奇才、ジェイル・スカリエッティによって生み出された、戦闘機人と呼ばれる身体の
パーツを機械に入れ替えた人造人間。
 管理局最高評議会が極秘で開発を進めており、やがては魔導師に代わって戦闘や諜報活動、撹乱に力を
発揮する存在、のはずだった。
 それがウーノ以下数体が完成したところで事態は急変した。

(まさか脳味噌どもが揃いも揃ってくたばるとはねえ……)

 死因は全員脳溢血。
 なんでも戦闘機人計画を任せるはずだった管理局高官が拒否したあげく激烈に最高評議会を批難し、無
礼な言葉に怒り狂った脳味噌どもは血圧が上がりまくり血管ぶち切って死んだとか。
 後援者を一瞬で失ったスカリエッティ一家は、当初の予定にあった十二体だけはなんとか完成させたも
のの、研究施設も何もかもを取り上げられ路頭に放り出されるはめにと相成った。
 その後、数回の会社立ち上げ、倒産、夜逃げ、ダンボールが我が家というループを数回繰り返し、今は
人材派遣会社として世間の隅っこでなんとか細々と暮らしている。
 またウーノが家計簿をにらんで、あれが足りないこれも足りないとぶつぶつ呟き始める。辛気臭くなっ
たドゥーエは、新聞でも読もうと郵便受けに向かう。
 しかし新聞は無かった。そういえば先週から料金が払えなくて止められていたのを思い出す。
 かわりに手紙が一枚来ていた。

372 名前:たとえばこんな世界:2008/12/19(金) 20:21:23 ID:Mi8Lm4OB
『拝啓、ドクターとお姉様方。またまたまたまたまたまた結婚しました。今度は教会を出たところでトン
ズラして最速記録を狙ってみたいと思います。ちょっと遠い場所にいるのでそちらに戻るのは来月になる
と思いますが、お土産お楽しみに〜』

 写真の妹に負けない笑みを浮かべたドゥーエは、引っ返してウーノに葉書を渡してやる。

「よかったわね。またクアットロがカモをひっかけたから、来月は電気も水道も止められなくてすみそう
よ」

 これで自分の煙草代も捻出できると喜ぶドゥーエと対照的に、ウーノはばったりと机に顔を突っ伏して
しまった。

「…………高性能なはずの戦闘機人がただの警備員に子守に料理人……あげくに結婚詐欺師……。いった
い何を間違ってこうなったの……」

 頭を抱えて嘆いている長女に肩をすくめつつ、臨時収入が確定したドゥーエはさっそく酒と煙草買い、
ついでにパチンコにも行こうと外に出た。
 出しなに振り向き、「よろず屋JS社」とセンスの無い社名が書かれた傾いでいる看板を見上げて呟く。

「私はけっこう好きなんだけどね、今の生活。予想外の人生なんて、考え方一つでどうにでも楽しめると
思うのにねえ」

 とはいえ姉の苦労も分からなくはないから、パチンコが当たったら飲みにでも連れて行ってやろうと思
いつつ、ドゥーエはだらだらと都心部への道を歩き出した。




          ※




「ゲイズ先輩、ごちそうさまでした。またそのうち一家みんなで来るからよろしく」
「ありがとうございました」

 最後まで残っていた夫婦の客が帰り、調理場に戻ったレジアスは大きく伸びをした。背骨がぺきぺきと
音を立てる。

「やれやれ、今日は大繁盛だったな。君も疲れただろうディード君」
「いえ、あまり」

 時々手伝いに来てもらう人材派遣会社の少女はそう言うが、心なし肩が落ちており疲労は隠せていなかっ
た。
 今日はとにかく客が多く、料理も酒も普段の倍は売れた。その分だけ忙しくて、二人は店明けから深夜
の今まで水しか口にしていない。
 客に出す料理を大忙しで作る中、ちょっとだけ多く作るようにして鍋の中に残しておいた。それらを手
早く折り詰め二つに詰め込み、ディードに手渡す。

「よくがんばってくれたからサービスだ」
「ありがとうございます」
「君達大家族には少々足りないがな。なんだったら、オットー君と二人だけでこっそり食べてもいいぞ」

 無口な少女が時折口にする一番仲の良い姉妹の名前を出すと、ディードはうっすらと頬を染めた。
 最初はあまりの無表情さからディードに人形めいた印象をもっていたレジアスだったが、やがてほんの
わずかな仕草だが確かに感情が現れていることに気づいた。今ではディードの笑顔や赤面するところを見
つけるのが、レジアスにとって楽しみになっている。
 いつも家族に作っているという料理の腕も申し分なく、なんなら自分の隠居後は店を譲ってやってもい
いと思うぐらい、レジアスはディードのことが気に入っていた。
 何度も頭を下げながら帰路に着くディードを見送り、店内に戻ったレジアスは苦笑した。

373 名前:たとえばこんな世界:2008/12/19(金) 20:22:44 ID:Mi8Lm4OB
「しまった。わしの分を残しておくのを忘れとった」

 仕事が終わった後、晩御飯を一から作るのは億劫なものである。さっきまで他人様の分ばかり料理を作っ
ていた身としてはなおさらだ。
 茶漬けでもかきこんでさっさと寝ようかと考えていると、店の扉が開いた。
 暖簾をしまうのを忘れていたと内心舌打ちしつつ、レジアスは丁寧に頭を下げて断りの言葉を述べた。

「すいませんが今晩はもう閉店…………なんだお前か」
「なんだとはご挨拶だな」

 入ってきた男、友人であるゼストはトレードマークであるコートを脱ぐとカウンターの席に座った。

「まだ飯を食っていないから、腹にたまる物を頼む。酒はビールだけでいい」
「閉店だと言ったのが聞こえんかったのか?」
「俺とお前の仲だ。少し融通してくれ」

 謹厳実直なゼストだが、親友であるレジアスにだけは時たま馴れた部分を見せる。そういうところが、
レジアスは嫌いではなかった。

(ま、ついでにわしの分も作ればいいか)

 数種類の野菜と豚肉を持ってきてフライパンに投入する。お互いの年を考えて油と肉は少な目で、レジ
アスは手早く野菜炒めを大皿山盛りに作った。
 料理と酒を持ってきてゼストの隣に座ると、無言でコップにビールが注がれた。自分もゼストに注いで
やり、かつんとコップを当てて乾杯し、一息で飲む。冷えたビールが、食道から全身へと染み渡った。

「くぅ〜っ! 仕事終わりのこの一杯は何度やってもやめられん」
「まったくだ。残業の後は特にな」

 二杯目からはそれぞれ自分で酌をしながら、レジアスは言った。

「お前の所属、変わるらしいな」
「どうして知っている?」
「メガーヌが来て、また旦那と離れ離れだと愚痴っとった。女房をもうちょっと大切にしてやれ。それで、
今度はどこの所属になる?」
「八神はやてという三佐が作る陸の新部隊だ」
「八神…………夜天の書の主だったか? たしか一回だけここに飲みに来たことがあったな」
「ほう、どんな人物に見えた」
「さて、客と主人以上の会話はしなかったからな。どうとも言い様がない」

 ただ、一緒にいた銀髪赤眼の女性と、この料理が美味しいと一口ずつ交換しているところなど、年頃の
姉妹が仲良く食事しているようにしか見えなかった。
 とてもSSランク魔導師と、かつては古代ベルカに悪名を響かせた夜天の書の官制人格とは思えない二
人だった。

374 名前:たとえばこんな世界:2008/12/19(金) 20:25:07 ID:Mi8Lm4OB
「まあ、悪い人物には見えんかった」

 一口酒を飲んだレジアスは、やや声を潜めて話題を切り替えた。

「ところでゼスト、戦闘機人計画だが、やはり継続されている気配は無いか?」
「ああ、全くもって情報が無い。ティーダも執務官仲間の線から調べているが、そちらも同様だ」
「計画自体が完全に破棄されたのかもしれんな。最高評議会の話だと、八年前の時点で数体は完成しとる
ようだったが」
「案外、今は市井の一市民として暮らしているのかもしれんぞ。クイントの娘達のようにな」
「ならいいが……。すまんな。わしの後始末のようなことをさせて」
「気にするな。管理局員として当たり前のことをやっているだけだ」

 なんでもないことのように答えるゼストだったが、レジアスの気持ちがそれではすまない。疲れた身体
にもうちょっと無理をさせることにした。

「ちょっと待っていろ」

 調理場に入ったレジアスは、今日の料理に使った魚の頭を出す。出汁を取るか粗汁にでもしようかと思っ
ていたのだが、ゼストに振舞うことに決めた。礼というにはささやかなものだが。
 魚の頭に串を打って、遠火で焼きながら表面に酒、味醂、醤油を刷毛で何度も何度も塗っていき、飴色
になるまで焼き上げて、最後に柑橘類で香りをつければ兜焼きの完成となる。
 手間はたいへんかかるが、レジアスの店自慢の一品だった。

「みごとな手際だな」

 焦げないよう串を回していると、いつのまにかゼストが調理場をのぞきこんでいた。

「塗るタレがほとんどこぼれていない。焼き加減も見てる俺にはさっぱり分からん」
「十年も包丁ふるっとれば、これぐらい誰でも出来る。けっこう時間がかかるから、酒を飲んで待ってい
ろ」

 ゼストの姿が消えてから、レジアスは自分の言葉をもう一度繰り返した。

「十年、か……」

 管理局を辞職してから、いつしかそれだけの時間が経っていた。




 かつての職場にレジアスが残した懸念の一つが戦闘機人計画だった。
 人体改造によて高ランク魔導師並の力を持った機人を作成する計画。
 そのプランをかつて管理局少将だった頃、最高評議会がレジアスに持ちかけてきた時、レジアスは本気
で悩んだ。
 成功すれば、管理局の慢性的な人材不足は一気に解消される。海に比べて手薄な陸の戦力も飛躍的に増
えて、犯罪者を取り逃がし悔しい思いをすることも、被害者の慟哭を聞きやりきれない思いをすることも
確実に減るだろう。
 しかしだからといって、法で認められない非人道的な研究に手を出していいのか。
 レジアスは悩んだ。管理局に勤めて二十数年、無遅刻無欠勤だった男が病欠と偽って休みを取り、自室
に籠って食事も取らずに煩悶した。
 そして三日目の朝に、レジアスは決めた。

375 名前:たとえばこんな世界:2008/12/19(金) 20:26:28 ID:Mi8Lm4OB
『我々管理局員は、法の番人だ。その番人が、未来のためと理屈をつけて法を破るなど、けっしてあって
はならん』

 だが、管理局員として、人として当然の結論を出したはずの男に対する最高評議会の返事は冷淡極まる
ものだった。
 思い通りに動かない駒はいらないとばかりに、レジアスの目の前に架けられていた出世の階段は取り外
され、有能な部下達は次々に強引な手段で引き抜かれていき、止めに辺境世界常駐勤務の辞令が突きつけ
られた。
 辞令を引き裂いた勢いで最高評議会に乗り込んで罵倒しまくったあげく辞職願いを叩きつけ管理局の制
服を抜いたレジアスだったが、数日して憤怒が収まると愕然とした。

『わしは、これから何をして生きていけばいいのだ……』

 若い頃から管理局勤め一筋であり、取得した資格も全て管理局にいてこそ役に立つものだ。レジアス・
ゲイズが歩んできた道のりは、四十をすぎてから新しい職を見つけるにはつぶしが利かない人生であった。
 何もしなくとも暮らしていけるだけの貯金はある。だが、朝遅くに起きて布団の中でぼんやりし、適当
に近所を散歩して、また家の中で何もせずにいるうち夜が来る一日は長すぎて、レジアスにとって苦痛で
しかなかった。
 結局、自分では決められなかった第二の人生を決めたのは、今は亡き妻の一言であった。

『あなた昔はよく手料理振舞ってくれたわよね。あれ、すごく美味しかったわ。だから料理人になってみ
たらどうかしら?』

 その一言に曖昧に頷いて、翌日からレジアスは料理学校に通い出した。
 たぶん、料理人だろうが散髪屋だろうが大工だろうがなんでもよかったのだ。それぐらい、当時のレジ
アスは腑抜けていた。
 しかしそれが切欠となって、ミッドチルダの片隅で居酒屋を開いている自分がここにいる。
 客の応対をしたり料理のアレンジや盛り付け方を工夫することは、犯罪者を相手にするのとは別物の苦
労と充実感があった。時折様子を見に来る娘も、病で倒れるまで手伝ってくれた妻も、調理場で包丁を振
るうレジアスに眼を細めて喜んでいた。
 今の生き方は楽しいと、胸を張って断言できる。
 しかし日常の一時、ふっと胸に去来する思いがあった。
 焼き上がった兜焼きを運び、ゼストの隣に腰掛けたレジアスはぼそりと呟いた。

「…………なあ、ゼスト。わしは、これでよかったのか?」

 組織の上層部にいる以上、きれいごとだけではやっていけないなど承知していたはずだ。清濁併せ呑む
だけの器量を、あの時自分は持つべきではなかったのか。
 そうすれば今頃、戦闘機人は社会に認知されあらゆる部隊に配置され、犯罪は激減し、頑是無い年齢一
桁の少年少女が戦闘に出なければならない世界があったかもしれないのだ。
 あの日の自分は正義というきれいな言葉を盾にして、本当に行うべき努力を怠ったのではないか。自分
が全ての泥を被ることで、後の平和の礎を作り上げる。それこそが正しかったのではないか。
 レジアスが漏らした一言だけで、長年の友人は裏に隠れた思いを読んだのだろう。酒を飲む手を休めた
ゼストは言った。

376 名前:たとえばこんな世界:2008/12/19(金) 20:27:14 ID:Mi8Lm4OB
「レジアス、お前は未来をどこまで分かる?」
「未来、か……」

 管理局に勤めていた頃、数年先を見越した方策をいくつか立案したが、一年後には予測していなかった
なんらかの事情により、細部の変更を余儀なくされたものだ。時には計画自体を取り消さざるを得なかっ
たこともある。
 いや、そもそも年単位ではなく、妊娠したと妻に告げられた時も、娘が恋人を家に連れてきた時も、数
分前まで全く予想していなかった。

「全く分からんな。国営の天気予報も、教会の『預言者の著書』ですら外れるのだから、わしら一般の人
間に未来が見えるはずもない」
「そうだ、明日のことなど誰にも分からん。過ぎ去った過去から分岐した未来が正しかったかなど、それ
こそ神でもなければ知れない。だから過去をいつまでも引きずらず、選んだ今を精一杯生きてることで明
日に備える。それが人の在り方だと俺は思っている」

 実直かつ無骨な友人らしい、地に足のついた考え方だった。

「気にするだけ無駄、ということか」
「そして今のお前は、居酒屋の親父だ。だったら次元世界や管理局の行く末よりも、仕事に疲れ飲みに来
た客を癒す手立てを考えろ。それが、お前の選んだ道なのだから」
「なら友人として、その仕事を手伝ってもらおうか」

 一度厨房へ引っ込んだレジアスは冷蔵庫に入れておいた料理を取り出し、軽く温め直してからゼストに
出した。

「冬から出そうと思っている料理だ。感想を聞かせてくれ」

 瓜科の野菜に挽肉と唐辛子を混ぜ、醤油や酒を充分染み込ませるまで煮た料理である。
 一箸口につけるゼスト。何度も噛みしめ、眼を閉じて味をじっくりと舌で感じている。

「なかなか美味い。だが、酒の肴よりは飯のおかずだな。もうちょっと薄味にしたらどうだ? 唐辛子も
減らした方がいい」
「寒くなるから暖まっていいかと思ったんだが。どうせ薄味にするなら、煮るのではなく餡かけにでもし
てみるか」
「新しい職場で落ち着いたら、同僚を連れて飲みに来る。それまでには完成させておくんだな」
「おう、お前の疲れが吹き飛ぶぐらい美味い料理にしてみせるわい」

 もう一度レジアスとゼストはコップを打ち合わせて、それぞれの誇れる仕事に乾杯した。




          終わり

377 名前:たとえばこんな世界:2008/12/19(金) 20:28:53 ID:Mi8Lm4OB
以上です。
プレシアがアルハザードで得たのは死者蘇生じゃなくて時間転移魔法。
過去にあるものを現代に転移させてるとかそんな感じの謎魔法。
そうでもしないと色々無理が出ると投下中に気づいた。

初代リィンも書きたかったんですが「私は生きているべきではないのだ」的な方向の話しか思いつかなかった。
あと俺の中でドゥーエは、仕事に真面目分を全部投入するので普段はひたすら駄目人間。


以下没ネタ。
ハーレム時空の前振りにしようと思ってたんですが「ブロンド3Pの前振りのそのまた前振りってなんだよ」と思ったんでやめた。



「フェイトは好きな男の妾をやって楽しく生きてるんでしょう」
「妾じゃありません。第二婦人です! あなたがアルハザードにいってる間に法律が変わって重婚は許可
されたんですから」


「こんにちはウェンディさん。僕はカレル・ハラオウンといいます。今日はたぶん兄弟や友人達が相当に
迷惑をかけると思いますが、僕も全身全霊を尽くして止める側に回るのでどうか一日我慢して……」
「おーいカレル。お前んとこの弟と妹、またフェイトさんとカリムさんのどっちが美人かでどつきあいの
喧嘩してんぞ」
「さっそくか!」
「あーっ! お兄ちゃん鬼ごっこで幻影魔法使うの反則だよ!」
「うっさい。お前だってローラーブーツ使ってるだろう」
「だったら召喚魔法もいいよね。いっちゃえフリードリヒU世!」
「……負けてられない。黒天王召喚」
「もう鬼ごっこ関係ないよ! 助けてお兄ちゃーん!!」
「…………よくもリエラを泣かせたな。君達全員、氷結魔法で頭冷やそうか!!」
「もしもしウーノ姉! 手の空いてる姉妹全員ヘルプ頼むッス! あたし一人じゃ絶対無理ッスーー!!」


『拝啓、愛しのドゥーエお姉様。その他のお姉様方と妹達。ついでにドクター。これが私の書く最後の手
紙になりそうです。今回は相手が悪すぎました。あの男の正妻は鬼です悪魔です魔王です。「ユーノ君を
裏切ったら世界の果てまで追い詰めるよ」という言葉に嘘はありませんでした。こうしてる間にも奴が、
奴が…………ピンクの魔力光がああああぁぁぁぁ!!!!』

 手紙の末尾には明らかに妹とは違う筆跡で、赤黒く鉄錆の匂いがする文字が書かれていた。

『お わ り な の』

378 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 21:17:51 ID:3q+sSO3T
>>377
なんだこの感動の一大巨編はッッ!!
特にレジアス!
お前は死者十数人発生させるのを未然に防いだことを自覚しないことがまた……


あと特に没ネタに期待せざるを得ないw

379 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 21:45:05 ID:AU6701Je
確かウェンディって、JS通販の配達もやってたような………
使いっぱが似合うなぁ………

380 名前:554:2008/12/19(金) 22:00:17 ID:BE/lxzxm
>>307-319
うっはwwwww何その面白そうなネタwwwww
真っ白なジェイルさん書きとしては書いてみたい、というか、書かせて!

とりあえず、短編で何本か書いてみます。期待しないで待っててください。

381 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 22:01:46 ID:BZ+eNOF+
>>377
さすがなのは様GJ!
現在書いている作品では、ナンバーズが更生中で全く出てきませんが
次の作品では、ナンバーズを出したいですね。

ところで、他の作品のオリキャラを自作に登場させるってのはまずいんですかね?

具体的に言うとアレックス・ゴードンとエーリッヒ・カウンタック・マクラーレン三佐です。
こういう場合、作者さんに断りを入れるのが筋だと思うんですが、方法がわからなくて
なお元キャラの立ち位置を変えるつもりはありません。

382 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 22:10:59 ID:n9SgBOYJ
まずくはないと思うよ(おうかがいたてれば)、個人的には好きじゃないけど

383 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 22:15:53 ID:2wnlDOIQ
>>サイヒ氏
なんという幸福な世界、これが正史でも良かったwww
しかしナンバーズ、そんなに家系が苦しいならもっと他にやるべき仕事があるだろ。
ソープとかソープとかソープとか!!!!

まあともかく、GJっした、これは良い幸福世界。


>>381
とりあえず、ここで作者氏に向けて質問レスを入れて、返答を待ってからで良いと思う。
そういう三次的なSSは前にもあったので、作者氏からOK貰えば書いても問題なし。

384 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 22:56:26 ID:BZ+eNOF+
>>383
 アドバイスありがとうございます。
 >>そういう三次的なSSは前にもあったので、作者氏からOK貰えば書いても問題なし。
 背中を押していただき感謝しております。

385 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 23:19:02 ID:wg0jSPag
>>285
GJ。
皆死亡フラグが立ちすぎていて怖すぎる…
エリスバ主人公二人組は何があろうと生き延びて明るい未来を作ってくれ…

386 名前:7の1:2008/12/19(金) 23:40:32 ID:BZ+eNOF+
わさび様、フェイト執務官のパートナーとしてエーリッヒ・カウンタック・マクラーレン三佐を自作に登場させたいのですが
       ご許可いただけないでしょうか?トクサイで陸の守護神という立ち位置を変えるつもりはありません。
       ただ話の関係上、新しい一年の始まりのユーノ×なのはイベントがないと言う点と養子になったキャロとエリオ
       が自然保護隊で働いている(stsの後日談)点が違っているのですが、ご許可いただければ、現在、手術を終えて
       自宅で静養中のフェイト執務官の見舞いをしていただく予定です。


387 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/19(金) 23:43:03 ID:OP7gLPiu
>>377
GJ!
おもろかった
ここまで突き抜けて全員生きてれば清々しいね!
プレシアとドゥーエとレジアスが可愛かった
辞表叩きつけるレジアスタン超モゑル

388 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 00:11:46 ID:/Uf3bYcv
そういえば、ガリューとアギトってユニゾンできんのかな?
正直言うと、ガリューが火炎を使いながら戦う姿とアギトと、
キャッキャッウフフしている新カップルが見たいだけだがw

389 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 00:14:24 ID:ojRNDk9P
ユニゾンって古代ベルカ式特有デバイスだから無理なんじゃね?

390 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 00:15:22 ID:pTWdwiwx
甲殻類だけに熱したら赤くなるんじゃね?

391 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 00:18:12 ID:+wqbiXOh
ちなみにGも赤くなるよ。

392 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 00:24:26 ID:86/xYEAr
召還蟲だし、無理じゃね?

393 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 00:24:49 ID:/Uf3bYcv
>>389
修正パッチ追加じゃ駄目かね?w
>>390
真紅のガリューを見たくないか?



394 名前:83スレ260:2008/12/20(土) 00:32:28 ID:b4h7iKBc
エリオ×キャロ
エロ無し、ちょいアブノーマルなSSを今から投下します

395 名前:変態カップル 1/2:2008/12/20(土) 00:33:47 ID:b4h7iKBc
「ふんふんふ〜ん」
暖かな陽射しと柔らかな風の中、キャロが部隊の荷物を整理している。彼女が所属する自然保護隊は任務の性質上、衣服の類が多くなるため部隊で管理することになる。
「あれっ?」
キャロが衣服の山と格闘していると、一つだけ他と違う手触りのものを掴んで引き抜く。長方形の形状に膝より上の丈、そして防護機能があるとは思えない薄い生地。
キャロが手にしたのは男性用の下着、それもサイズからして持ち主は自分と同年代であろう。この条件に該当する者はこの部隊に一人しかいない。そうやってパズルを組み立
てるように符号を一つ一つ合わせていき、一つの結論に辿り着いたキャロは顔を真っ赤に染める。
「あわわわわわ……!!」
慌てて手を上下に振ってみるがなんの解決にもなりはしない。
「とりあえず落ち着かなきゃ」
キャロは深呼吸をして体内の空気を入れ替えて上昇した体温と心拍数を鎮めると、冷静になった頭でこれからすべきことを考えていく。

「エリオくんに返さなきゃいけないけど今は任務中で会えないし…エリオくんが帰ってきたら渡してあげよ!!」
そういって結論を出すと、キャロはそのまま自室へと戻っていった。

「うーん」その晩、キャロは自室で一人呻っていた。その手には先ほどの下着が一枚。昼間に持ち帰ったものの、結局エリオに返す機会がなく今に至っている。
キャロは自室のベッドに横たわりエリオの下着を観察していた。特別な意図はなく、ただ好奇心からくるものだった。両手で持ち縦横に引っ張ったり、逆さにしてみたり…
「こっちはどうなってるんだろう…あっ…」
その時手元が狂ってエリオの下着を落としてしまう。キャロの支配から離れたそれは重力に従って自由落下する。そしてゆっくりとキャロの顔に舞い降りた。
その瞬間キャロは全身を暖かく包まれたような気がした。今持っている下着は普段エリオの身体を包んでいるものであるこれを使えば間接的にエリオを感じることが出来る。
キャロの中で天使と悪魔が大喧嘩を始めたが最後は悪魔が勝利をし、下着を顔に押し付けた。


396 名前:変態カップル 1/2:2008/12/20(土) 00:34:35 ID:b4h7iKBc
「エリオくん、エリオくん」
キャロはここにいない少年の名を呼びながら行為に没頭する。先ほどよりも強い雄の匂いが鼻腔を突きぬけ、脳天を揺さぶる。その刺激かキャロにとって余りに甘美で、
注意力と判断力を奪うのに充分だった。

「キャロー、いるー?ミラさんが呼んでる、よ…?」
「エリオくん!?」
キャロは驚き声の方向に身体を向ける。その瞬間、キャロの中で何かが割れる音と共に時が止まった。部屋に入ってきたのは件の少年エリオである。
そしてキャロはエリオの下着を顔に押し付けて匂いを嗅ぐという変態的行為に耽っていた。

「エ、エリオくん!どうして急に!!」
「えっと何度かノックしたんだけど…」
キャロは途端に冷静になり下着を後ろ手にしまうが、行為の瞬間を見られた以上最早弁解は不可能である。そのせいか答えるエリオの声もどこか上ずっている。
羞恥の差はあれど互いに見たくない・見られたくない場面を見られたのだから当然である。

「えっと、これはその」
キャロが目を泳がせながら弁明を試みるが緊張からか上手く言葉にならない。未だにキャロの手にエリオのトランクスが握られていることがそれを何より物語っていた。
「最初はすぐに止めようと思ったんだけどこうしてるとエリオくんにギュッてされてる感じがして嬉しくなっちゃって」
「えっ……」
キャロの告白スレスレの言葉にエリオは顔を自身の髪と同じくらい赤く染めた。

「キャロ」
エリオが目の前の少女の名を呼び近づく。
キャロは自分の行為を非難されると思い身体を強張らせるが、予想に反して暖かい感触に包まれた。
「エ、エリオくん!?」
全身を包み込まれて体温が上昇して心臓も早まる。果ては喉がからからになり、言葉も上手く出てこなかった。

「僕がこうしてればそれはいらないよね、それともキャロは嫌?」
「…嫌じゃないです…」
キャロは自ら腕を回して問いかけを否定する。
エリオも抱きすくめる力を強くして互いの吐息を感じられる程接近する。
そのまま二人は倒れこみ夜明けまで過ごすことになったのは別の話。

おまけ
翌朝二人で任務に向い、ミラに「今日からはあんたらを同じ部屋にしてあげましょうか?」
と言われて揃って顔を赤くしたのも別の話ということで…


397 名前:変態カップル あとがき:2008/12/20(土) 00:35:28 ID:b4h7iKBc
エリオが紳士なんだか変態紳士なんだか分からない状態になってしまいました。
ピュア故に暴走しちゃうキャロはやっぱいいですね。
二人が朝まで何してたかって?それはご想像におまかせします。



398 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 01:41:02 ID:1XIhuHvc
>>397
乙!
キャロが某変態仮面になるのかとオモタw

399 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 01:48:37 ID:bYjDQdy6
GJ。
さすがキャロさんだ。
変態行為に突っ走っても、しっかりとエリオの心をゲット!
この後当然のように毎日お互いの感触と匂いを感じるのですね

400 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 02:18:26 ID:8Ml8ISX+
そしてある日、紫色の髪の毛を発見してしまうんですね

401 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 06:00:21 ID:vDaGttEF
GJ!!
キャロかわいいよキャロ
当然二人は朝までふかーく愛し合っていたに決まってる
そしてその様子を詳しく見たいと思うのもしごく当然の事!

>>400
こうなるとキャロの瞳からハイライトが消えてしまうなw

402 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 07:29:52 ID:V8IV86SN
GJ!いいよキャロ。エロなしでも十分にニヤニヤしてしまった。
短編1本おとします。

403 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 07:32:03 ID:V8IV86SN
ある日の聖祥大付属小学校。
放課後となり、部活や委員会の用事の無い生徒は下校を始めていた。
そんな中、なのは、すずか、はやては校門でアリサとフェイトを待っていた。


「ごめん、遅くなって!」
そう言ってアリサとフェイトが学校から出てきた。


「まあまあ、別にそう待ってへんよ」
はやてはそんな事気にするなとでもいいたいのか、手をパタパタ振った。

「先生のバカチン!教室まで運んだ資料が重かったのなんの。わざわざクラス委員呼び出さないで、帰りの会の時、気を利かせて
持ってきてくれればいいのに!」
アリサはそう言って、資料を運んでくたびれた両腕をストレッチするように伸ばす。

「私も遅れてごめん。国語の事で少し聞きたいことがあった・・・から」
そう言ってフェイトは、恥ずかしいのか顔を赤らめ、少し落ち込こんで顔をうつむかせる。

おそらく今日の午前中にあった国語のテストの点数を気にしているのだろう。
最近4年生では詩や散文、さらには簡単な古文が出てきており、難易度がぐっと上がったのだ。

フェイトが恥ずかしがった理由を察してか、すずかは言う。
「・・・フェイトちゃん、日本語なんて普段の生活で少しづつ慣れていくから大丈夫だよ」
「せやで、フェイトちゃん頭ええんやし。すぐにリカバリーできるはずや」


「ああーもう!何かスカッとしたい!!」

そして暗い雰囲気を吹き飛ばすかのようにアリサは大声を上げる。

404 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 07:33:07 ID:V8IV86SN
そんながアンニュイな気分でいると、なのはが4人の一歩先に飛び出てみんなに向かい合った。

「あのさ、もし良かったら、私の家に来ない?お父さんとお母さんが新作のパフェ考案したの。何て名前だったか忘れたけど
すごくおいしいの!」

なのはの言葉に真っ先にはやてが反応した。
「本当なん!?ええ感じや!翠屋のレシピを研究できるまたとないチャンスやで!!」

「いいわね。それ!!途端に気分がスカッとしたわ!!」
「でも、なのはちゃん、本当にいいの・・・?」

「にゃはは。大丈夫だよ、すずかちゃん。考案したのはいいけどネーミングから注文するひとあまりいなくて。お父さんもお母さんも
腕をふるえて嬉しいと思うし、それに何より・・・」


そうしてなのははフェイトの方に笑顔を向ける。
「何より・・・フェイトちゃんには笑顔でいてほしいから」


「なのは・・・」
そうしてフェイトは少し感動してなのはを抱きしめた。それに驚くなのは。
「ちょ、ちょっと、フェイトちゃん!?(は、はやてちゃん。私フェイトちゃんを変なこと言っちゃったかな?)」

「(ムフフ〜相変わらず、口説き上手やななのはちゃんは)」
なのはとはやての念話を察したのか、すずかは苦笑した。


そんなフェイトにアリサが「ビシッ」と指をさす。
「全く、フェイトは相変わらず涙もろいんだから。ここはパフェで全部忘れちゃいなさいよ。それに、今度またテストとか暗いこと
考えてるとハゲちゃうわよ!」

「えっ・・・!?ええ!?」
フェイトは驚いて金髪のロングヘアーに手を載せる。

そんなやりとりをみてすずかとはやては笑った。
「安心しや。アリサちゃんの冗談や」
「さあ行くわよ!なのはもフェイトも、早くしないと置いてくわよ!!」


「フェイトちゃん・・・行こう!」
なのはは手を差し出した。

「・・・うん!」
それに笑顔で握り返すフェイト。

そうしてなのはとフェイトは3人を追って、海の見える丘を2人は降りていった。

405 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 07:34:10 ID:V8IV86SN
以上になります。ageてしまい、申し訳ありませんでした。

406 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 08:30:22 ID:P01IfF2e
>>405
GJ! いい仕事してるねぇ

407 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 09:33:34 ID:650y0KQ0
>>405
 GJ ほのぼの話は良いですね。

408 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 18:21:33 ID:OG8F8pLU
>>328
遅レスながらGJっス。
シリアスな連載モノを読むと自分も書きたくなる気持ち、わかります。
しかしスーホとか懐かしくて吹いてしまいますw
そのうちスイミーとかも出てくるのかしらん・・・

あと>>314の続きが読みたいぜ兄貴

409 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 19:05:56 ID:d7zBXEr/
>例えばこんな世界
幸福世界楽しませてもらった。…ただ、そうするとリィンUいないんだな。
途中で脳味噌の死因に吹いたりしたが、途中でふと思いついて
『作中の出来事全てに関わった誰か』の、末期の夢っていう
フィルターかけて見たらうっかり涙が滲んだ。

あとピンクの魔力光があああには盛大に吹いたw


エリキャロもほのぼの小学生も良かったがインパクトで↑のに感想w


410 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 21:04:26 ID:hlkOdwYx
>>377
ちと遅レスながらGJですwww
あと最後の一文の後
『半年後…そこには第一婦人の素晴らしさを熱く語るクアットロの姿が』
などと言う電波を受信したのは濡れだけでは無いはずwww

411 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 21:14:04 ID:tDgUwmSh
ふと思った。
エリキャロが、自然保護隊ではなく、一旦管理局をやめて学校にかようとなったら
どうなるか。

ミッドの学校に行くか、それとも海鳴の学校に通う(フェイトが忙しいのでリンディたち
に預かってもらって)か。

412 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/20(土) 21:21:30 ID:lSKHdrCd
投下オッケーですか?

413 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:32:09 ID:lSKHdrCd
ふむ。珍しく誰もいないようで。
十分経ったから投下します。


 魔法少女リリカルなのはIrregularS 第十話です。(全十三話予定)

捏造まみれです。
SSX前提です。
あぼんはコテで


レス数19

414 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:32:46 ID:lSKHdrCd
         1 

 はやては笑っていた。そのつもりはないのだけれど、ついつられてしまう。
 小さなジュニアが、シャマルに抱かれて笑っているのだ。

「しゃまう〜」
「ああ、ジュニアはホンマに、シャマルによう懐いてるな」
「うふふ。はやてちゃん、この子、うちの子にしちゃいましょうか」
「うーん。それもええかな。シャマルの子にしてまう?」

 成長促進の細胞を与えられているのか、幼年期の成長は早い。一年もすれば、立派な少年になっているだろう。得た栄養を無駄なく成長につぎ込んでいるのだ。
 そして少年あるいは青年で成長は一旦ストップして通常のものになるはずだった。少なくとも、スカリエッティ自身の成長パターンはそうだったらしい。
そのクローンであるジュニアが違うという道理はないだろう。
 普通に託児所に預けるには、ジュニアの持つ背景は危険すぎる。さらにはどんなアクシデントが起こるかは想像もできないのだ。
 そのジュニアが何故ここにいるかというと。責任の押し付け合いどころか怒号すら飛び合う、議論という名の口喧嘩に業を煮やしたはやてが、
自分が預かると言い出してしまったのだ。
 かつての聖王の例からか、預かること自身はあっさりと認められた。幸い、今の情勢ではヴォルケンリッターや、
今ではナカジマ六姉妹となっているチンクたちの総員に出動がかかることはない。それでも手が足りなくなれば、聖王教会の三人を呼び出してもいいのだ。
何しろスカリエッティジュニアである。セインたち三人にも世話をする権利、あるいは義務があるだろう。
 ところがその計画は速攻で頓挫した。なにしろ、子供の世話をした経験者がいないのだ。
 ゲンヤとて、ある程度大きくなってからのギンガとスバルしか知らない。しかも女の子だ。
 医師としての知識でシャマルが責任者となってしまったのだが、結果的にはそれが正解だった。ジュニアは、すぐにシャマルに懐いたのだ。
 そんなある日、ジュニアに会うために勢揃いしたナンバーズの前に現れたのは、大泣きで走り回るジュニアだった。

「何があったんや? なんかえらい泣いてるけど」

 ギンガに確認して怪我や病気の類ではないと知っていたはやては、わざと尋ねていた。

「そ、それが」

 ジュニアを追いかけながら、ヴィータが呆れて言う。
 その顔もやはり、ニヤニヤと笑っている。

「シャマルのやつ、ジュニアにご飯食べさせたんだ」
「ふーん。え? ご飯って……シャマル、自分で作ったんか!?」
「だって、お腹空いたって……」
「あかん、あかんよ、シャマル。それだけはあかん」

 一口食べたジュニアは泣き出して、逃げ出してしまったのだ。事情を知ったスバルが試し食いして、顔をしかめてしまうものを。

「そ、そんなにひどいんスか……」

 驚くウェンディにスバルがうなずく。

415 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:33:22 ID:lSKHdrCd
          2

「正直、あたしも食べたくない」
「スバルが食べないとすると、相当なものだな……」
「……塩と砂糖を本気で間違える人が、現実にいたなんて……」
「それはひどい」

 真剣な顔のチンクに、シャマルが抗議した。

「ひどい、チンクちゃん」
「事実だろう? シャマル」
「うう」
「あ、ジュニア」

 ディエチは、転びそうになったジュニアの肩を抱いて引き留めた。

「ほら、危ないよ。もう走り回るのはやめようね」
「……」

 ジュニアはディエチを見上げる。

「……?」
「ディエチだよ」
「じえち?」
「ディエチ」
「じえち。じえちーー!」

 ディエチにしがみついて、また泣き出してしまう。それを抱き上げて、ディエチは頭を撫でた。

「ほら、泣かないで、ジュニア」
「じえち……」

 抱っこされたまま、しばらくすると泣き疲れたように眠るジュニア。

「おお、シャマル以外に抱っこされてんのは新鮮やな」
「あ、あの、母さん」
「ん? なんやの。改まって」
「ご飯の作り方、教えてください」
「ご飯って……ディエチ、作れるやん」
「ジュニアのための、子供用のご飯です!」

 はやてはニッコリ笑った。

「よっしゃ。任せとき!」



                         魔法少女リリカルなのはIrregularS
                              第十話
                      「ディエチの微笑 ヴィヴィオの涙」


416 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:33:57 ID:lSKHdrCd
          3

 その次元世界の惑星には見渡す限りの海が存在していた。典型的な海洋世界だ。地表の99パーセント以上が海。残りが各地に点在している島なのだ。
 ヴァイスの操縦する大型輸送ヘリは、その内の一つの島に向かっていた。
 そしてヘリの中では、エリオが全員をゆっくりと見渡している。
 これからの戦いに、細かい作戦などない。とエリオは言う。
 その言葉に異を唱える者はなかった。
 為すべき事は至ってシンプルなのだ。
 ローヴェン、クアットロ、ハーヴェスト。この三人を倒す。フェイクマザーを使用する元凶がいなければ、コピー部隊ならば通常部隊で対処は可能だ。
 邪魔者は打ち払い、叩きつぶす。そして遊撃隊の全力をただ三人だけに向ける。
 いかな小手先の作戦も、圧倒的な兵力差の前には意味がない。だからこそ、策を弄することなどない。敵陣深くへ侵攻し、親玉を倒す。それしかないのだ。
 ただし、敵の出方はある程度予想できる。
 間違いなく、クアットロは出てこないだろう。前線に出るのはハーヴェストとローヴェン。
 ローヴェンは自分との決着をつけに来る。その強烈なまでの予感がエリオにはあった。

「先行してるガジェットからの映像が来たぞ」

 ヴァイスがそう言うと、空間にホログラムが投影される。
 思った通り、コピーが無数に蠢いている。そして、その増加の様子から中心地はすぐにわかった。

「クアットロ。そしてキャロとルーテシアが捕らえられているのもおそらくここだ」

 とにかく貫く。貫いて風穴をこじ開け、中身を引きずり出す。全てはそこからだった。
 少しでも中心に近づく。そして友軍が来た瞬間、突破する。

「隊長。友軍は本当に来るのか?」
「はやてさんとクロノさんやゲンヤさんが上層部を説得している」
「そうか、心強いな」

 チンクは援軍などあてにはしてない。そう言っているような気がしてエリオは少し笑った。

「第一撃は例のパターンで行く」

 スバルとノーヴェのメビウスシュート、ディエチとヴィヴィオの砲撃、そしてセッテ、ディード、チンクの突撃、エリオの突貫。

「ただし深追いは無しだ。表面を削るか、できれば個々のコピー群の中心、フェイクマザーを叩く。それを何度も続けて、弱いところから潰していく」
「俺たちはどうする?」
「ヴァイスさんとシャマルさんはジュニアと一緒に敵の陣営を分析してください、脆い部分が見つかるようならそこに突撃します」

 エリオはもう一度一同を見渡す。


417 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:34:28 ID:lSKHdrCd
        4

「包囲されることだけは絶対に避けろ。一対一である限りコピーには負けない。数に押されることだけは絶対に避けろ」

 チンクはエリオの言葉にうなずくと、背後の姉妹たちに振り向いた。
 もう、自分から言うべき言葉は何もない。隊長の言葉は皆に通じている。

「いい天気だな」

 ふと、ヘリの外を見る。
 この世界の天候はいつもこうなのだろうか。いや、今日はきっといい日なのだろう。
 何故かチンクには、確信があった。

「……ヘグルーッメフ・クァク・ジャジヴァム」
「チンク? 何か?」
「いや、なんでもない」

 とある管理外次元世界の言葉。まだナンバーズと呼ばれていた頃、トーレに実戦訓練として連れて行かれた先で使われていた言葉だ。
勿論、エリオはこの言葉を知らない。
 しかし、その言葉を聞き取ったセッテが、チンクを見てうなずいていた。セッテはトーレに教えてもらったことがあるのだろう。
ああ、トーレならきっとこの言葉を覚えただろうな、とチンクは思う。
 それほどこんな日、こんな時には相応しい言葉なのだ。これ以上の言葉をチンクは知らない。

「忘れるな。俺たちは孤立無援じゃない。援軍は必ず来る。はやてさんたちがミッドチルダにいる限り、必ず軍は来る。玉砕の必要なんてないんだ」
「援軍なんていらないね。あたしたちだけで終わらせてやるんだよ!」

 ノーヴェが拳を打ち付けると、ディードとセッテがそれぞれの獲物を試すように持ち上げた。

「その通りです」
「我々は進む。三人を倒すまでは」
「倒せるのなら、倒してしまってもいいさ。誰も困らん」

 エリオの言葉に全員がうなずく。

「そろそろ、着地するぜ? 地上組はさっさと支度しろよ」

 ヴァイスの言葉を合図にエリオとスバル、ノーヴェ、ディエチ、チンクが支度を始めた。
 空から出るのがセッテとディード、ヴィヴィオ。ヘリに残るのがジュニアとシャマルである。
 それぞれがそれぞれの方法で戦闘に臨もうとしている。

「ヴィヴィオ、落ち着いてね」

 ディエチがヴィヴィオに声をかけていた。


418 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:35:00 ID:lSKHdrCd
         5

「あたしはすぐ下にいるし、シャマルさんもジュニアも傍にいるから」
「大丈夫だよ。私だって。……私だって、ママみたいになってみせるって決めたんだから」
「ヴィヴィオはなのはさんじゃないよ」
「ディエチ?」
「ヴィヴィオはヴィヴィオだから。なのはさんみたいになろうと思わなくていい。ヴィヴィオは、ヴィヴィオになればいいんだよ」
「私が……私に……?」
「Lady, She is right. You are not Your mother.」

 デュアルストライカーの相槌に笑うディエチ。

「ほらね」
「私は、私か……。うん」
「それじゃあ、後でね」

 ディエチはヘリを出た。
 地上組が全員出ると、ヘリは再び上がっていく。

「セッテとディードが出たら行くぞ。スバル」
「わかってる。途中まではチンクも一緒だね?」
「ああ、よろしく頼む」

 敵の陣営を確かめたエリオが顔をしかめる。

「素直には行かせてくれそうにないな」
「当然だろう。妨害は想定済みだ」

 チンクの言葉に苦笑するエリオ。

「そりゃあ、そうだ」

 その言葉を待っていたかのように、突然フェイクマザーが出現する。
 本拠地らしき場所を中心にして集まったコピー群。それを前にしたエリオたち。そしてさらに、その背後に出現するフェイクマザー。

「魔法反応はありませんでしたよ!」

 悲鳴のようなジュニアの叫びが通信機を通して聞こえる。

「魔法じゃない。手品だな」

 エリオはフェイクマザーが地下から現れるのを見ていた。単純かつ古典的な伏兵。地面の穴である。

「挟撃はごめん被るが……」
「背後の敵を討てばさらに伏兵がある、と考えるべきだな」

 チンクの分析にうなずくエリオ。

「セッテ、ディード、ディエチ、ヴィヴィオは今現れた敵を迎撃!」

419 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:35:30 ID:lSKHdrCd
          6

 空への伏兵は、魔法かISを使わなければ不可能である。空の部隊が伏兵にあうことはない。
 間髪入れずエアライナーとウィングロードが発動する。

「ストラーダ、セットアップ!」

 チンクとエリオは、それぞれノーヴェとスバルの後ろについて駆け始める。

「表裏一体!」
「メビウスシュート!」

 飛び降りる二人、一瞬の間を空け、

「セッテとディードの突撃分、カバーしきれるのか?」
「カートリッジには余裕がある」

 ストラーダにカートリッジをたたき込むエリオ。
 メビウスシュートによって開けられた穴へ、スティンガーを投擲するチンク。

 ISランブルデトネイター

 爆発の余波冷めやらぬ中へ躍り込むエリオ。ストラーダを腰だめに構え、腰を落として一気に時計回りに薙ぐ。

「紫電一閃!」

 電撃を帯びた横薙ぎの穂先が、掠っただけでも対象を吹き飛ばすほどの力とともに周囲を圧倒する。
飛ばされたコピー機人は放電を浴びせられたかのようにギクシャクと踊りながら、次々と粉砕されていく。
 以前の紫電一閃とは違い、明らかに一対多を想定して練られた技であった。
 そしてさらに、

「うぉおおっ!!」

 エリオの魔力が電撃へと変換され、

 THUNDER RAGE

 電撃が片側に並んだ機人を根こそぎ吹き飛ばす。
 エリオの立つ位置を中心にできた空間。まるで真空状態に吸い寄せられるように集まるコピー機人。
 キリがない。
 そう判断したエリオはチンクに合図して跳ぶ。

 SONIC MOVE

 発動寸前にチンクはエリオの手を取った。
 二人が包囲から抜ける瞬間、その向かい、フェイクマザーを中心とした反対側でスバルがディバインバスターを放つ。

「一台沈黙! 次行くぜ!」

 再びのメビウスシュートで周囲を蹴散らしながら帰ってくるスバルたちに合流する二人。
 そのとき、エリオは見た。
 
「チンク、ここ、任せていいか?」


420 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:36:00 ID:lSKHdrCd
           7

 エリオの唐突な問いに、しかしチンクはうなずいた。

「任せろ」
「頼む」

 エリオはその場から飛び出し、地面に降り立つ。
 再びのSONICMOVEで、視認した場所へと接近する。そこは、コピー機人の戦いから本の少し離れた海辺。
 その前に並んでいるのは、コピーフェイトたちとライナーズ。

「……一対一だと思っていたが」
「せめて母親もどきにいたぶられるんだ。感謝しろ」

 コピーフェイトの中心で、ローヴェンが微笑んでいた。

「僕は、確実に勝ちたいんでね」
「別にいいさ。正々堂々は求めてないよ。お前の中にそんな思想があるとも思っていない」
「よく知ってるな」
「スカリエッティのまっとうな部分は、全部ジュニアの中さ」
「弱い部分がな」

 二つのストラーダが向かい合う。

「彼はただの残り滓だよ」
「俺はそうは思わない」
「なるほど、仲のいいことだ。さすがは、残り滓同士」
「プロジェクトFの残滓か? 言われ飽きたよ」

 ローヴェンは笑った。嫌な笑い、とエリオは感じる。

「また気付いてなかったのか?」
「戯言だろ、どうせ」
「はははっ。フェイト・テスタロッサと同じ、電気の魔力変換資質。本気で偶然だと思ってたのか?」

 放電が空中を走る。
 オゾンの匂いが辺りに充満し、二人を囲み始めていたライナーズが次々に破壊されていく。

「……僕の方が資質は上のようだな」
「何が言いたい」
「シンプルなことだ。僕は君の……そしてフェイト・テスタロッサの完成形なんだよ」

 コピーフェイトが動いた。

「母親もどきに嬲られて、死ね。マザコン野郎」



421 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:36:33 ID:lSKHdrCd
          8


 層の薄い場所を見つけ、撃ち込み、斬り込む。
 一旦外へ出ると、今度は外側から同じ事を。
 次はまた内側から。
 それを繰り返すだけで、面白いように敵影は減っていく。
 そして、その一団に指示を出しているのはヴィヴィオだった。

「反転!」

 囲みを破ったセッテとディードが、振り向いて今し方突破したばかりの敵陣を背中から強襲する。そして、そこへ撃ち込まれるヴィヴィオとディエチの砲撃。

「ヴィヴィオ、方位056マーク4」

 ISによる観測データを告げ、ディエチは自分の標的を狙う。視認距離ではヴィヴィオはディエチには及ばない。
遠距離砲撃はディエチの観測に頼った方が命中率は高いのだ。

「ターゲット発見、破壊する」

 セッテがブーメランブレードをフェイクマザーに投擲する。
 また一つ破壊されるロストロギアのコピー。
 その様子をヘリの中からシャマルとジュニアが見ている。

「気になるわね」
「ええ」

 二人は周囲の状況と戦況表示板を順に睨み続けていた。

「奴ら、狙いはなんでしょうか」

 次々と敵が落とされていることに間違いはないが、その攻撃パターンは一向に変わる気配がない。

「これじゃあ、突破されるためだけに出てきたようなものです。まるで、シューティングゲームだ」
「ゲームのように経験値が稼げれれば良かったのにね」
「稼ぐ?」

 ジュニアは、シャマルの軽口に何か引っかかっていた。

「ジュニア、モニターを見て」

 ディエチからの連絡にジュニアはモニターを見た。コピー機人に成り代わるように姿を見せたのはコピーはやてとコピーなのはだ。
 瞬間、ジュニアは戦況表示板に周囲のセンサー結果値を照らし合わせる。

「……ディードさん、セッテさん、ディエチさん、ヴィヴィオ! 固まっちゃ駄目だ!」

422 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:37:03 ID:lSKHdrCd
            9

 ジュニアの見たデータをのぞき込んだシャマルは、数秒遅れて事態を理解した。
 コピーとの初バトルの再来だった。落とされたコピー機人を贄としたスターライトブレイカー。そのためのコピーなのはである。
 しかし、この時点でのジュニアはまだ気付いていなかった。本来のフェイクコピーの力にしては、コピーの数が少ないこと。
 それには理由があった。クアットロはフェイクマザーのプログラムを書き換えていたのだ。
 量を減らし、質を上げること。外見を少しでも似せるために。具体的には、少しでも長い間、ヴィヴィオを動揺させるために。
 ジュニアから状況の予想を知らされ、ディエチは撤退予定のの方向に目を向ける。離れた場所で、セッテとディードも同じ方向に目を一瞬留めた。
 撤退に問題はない。決断を下せばすぐに向かっていける方向だ。何の障害も現時点では存在していない。

「撤退に問題ない」

 3人はほとんど同時に答えるが、ヴィヴィオの返事だけはない。

「ヴィヴィオ?」

 ディエチはヴィヴィオのいるはずの空を見上げる。
 そこには、デバイスを構えたまま動かない姿があった。

「ヴィヴィオ!」

 バインドか? とディエチは思った。しかし違う。ヴィヴィオの周りにはいかなる魔法の反応もない。
 ディエチはISと連動した目でもう一度ヴィヴィオとその周辺を観測する。
 状況は変わらない、ただ、敵群が迫りつつあるだけ。
 そして気付いた。今、ヴィヴィオに対するように近づいているのはコピーなのはだということに。

「……助けて、ヴィヴィオ」
「……ママ? なのはママ?」
「違うの。私はコピーなの……でも、ヴィヴィオ……なのはママだよ」

 同じ声、そして同じ顔。見慣れた、聞き慣れた顔と声。
 大好きな人の姿。どうしても追いつきたい、そして守りたい人の姿。

「助けて、ヴィヴィオ」

 ゆっくりと近づくコピーなのは。

「なのはママ……」
「戦いたくない、こんなの嫌……ヴィヴィオと戦いたくなんかないよ……」
「ママ……」

 ヴィヴィオは、構えていたデュアルストライカーの頭を垂らしてしまう。
 この場の意味を、ヴィヴィオは忘れた。今目の前にいるのは、今助けを請うているのはなのはママ。その想いだけが膨れあがっていく。
 すでに戦意は失われつつあった。

423 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:37:37 ID:lSKHdrCd
        10

「Lady! Hold me, Please hold me!!」
「駄目! ヴィヴィオっ!!」

 デュアルストライカーとディエチの叫びは届かない。
 ヴィヴィオに語りかけるコピーなのはのさらに背後、離れた位置でデバイスを構えるコピーはやてに斬りかかるセッテ。しかし、次の瞬間、
コピーなのはがデバイスを構えた。
 語りかけながら、コピーは砲撃の準備を整えていたのだ。
 ディエチがイノーメスカノンを垂直に傾ける。その視界の隅にアウトレンジから入り込む、金色の死神。
 ディエチは迫り来る死を心から振り払う。

「逃げて! ヴィヴィオ!」

重なる別の叫び。

「逃げて! ディエチさん!」

 ディエチは叫びの主に心で詫びていた。
 ……ごめん、ジュニア……
 ディエチはコピーなのはを撃つ。同時に無防備となったディエチの身体に食い込む黒の刃は、コピーフェイトのデバイスだった。

「糞野郎!」

 わずかに遅れ、ヴァイスの狙撃がコピーを吹き飛ばす。
 そして、目の前のコピーによる避けられない砲撃を受ける直前、別の砲撃によって散っていく姿を見るヴィヴィオ。

「ママ!」

 反射的な叫びとは逆に、心は「違う」と叫んでいる。自分を狙ったコピーはママではない、と。そして、自分を救ったディエチが刻まれる姿を、
次の瞬間目にすることになる。
 叫びにならない悲鳴をあげ、ヴィヴィオは急降下した。

「ヴァイスさん! ヘリを!」

 ヴァイスの狙撃が呼び水になったように、ライナーズの残存機人がヘリを襲う。
 ディードが咄嗟にヘリのフォローに入り、ヴァイスとシャマルも攻撃に転ずる。そして、ジュニアは主のいないライディングボードを構えていた。
ジュニアのデバイスでもライディングボード単体のみの操作は可能なのだ。
 今にも飛び出しかねないジュニアを抑えるシャマル。

「ディエチの所へはヴィヴィオちゃんとセッテが行くわ。貴方が飛び出しても、被害を増やすだけ。落ち着いて、戦況を考えなさい」

 何も言わず、ジュニアは唇を噛みしめた。


424 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:38:07 ID:lSKHdrCd
        11

「シャマル先生よっ! こっちもそろそろ保たねぇ! ヘリを降りるぞ」

 ヴァイスがバックパックを持って操縦席から姿を見せる。

「着地はしない、いい的になるだけだ。地表近くまでは自動で行くから、そこで飛び降りるぞ」

 そして外へ向かい、

「ディード! 俺たちが降りてもしばらくヘリといろ! こっちの準備ができるまで奴らを引きつけてくれ」
「わかりました。でも、そろそろ難しいです。コピーの砲撃が集まってきました」

 ガンナーズの集中砲火がヘリに浴びせられている。この段階で撃墜されていないのが不思議なほどだった。
さらには、クローラーズがヘリに向かってエアライナーを伸ばしているのだ。

「わかってる、とにかく、一秒でも時間を稼いでくれ」

 一分もしない内に、三人はヘリを飛び出した。その後を追うようにディード。誤魔化して時間を稼ぐ以前に、ヘリそのものが炎上を始めているのだ。
これでは囮にはならない。

「撤退場所があるのなら早く移動を。この数を食い止めるのは限界に近いです」

 数体のコピーセッテと同時に斬り結びながら、振り向かずに叫ぶディード。
 三人は急いであらかじめ目的としていた岩陰へと向かう。戦闘が始まる前に、ヘリを軽くするために補給物資を投下した場所だった。
 ボードとストームレーダーの射撃で応戦しつつ下がる三人。シャマルはシールドで二人を守り、ときには敵の射線上に姿を出した敵にバインドを仕掛け、
同士討ちを誘っている。
 だが、それも多勢に無勢。
 あまりにもコピー機人の数は多すぎた。
 そして、敵はコピー機人だけではないのだ。

「くそっ」


425 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:38:37 ID:lSKHdrCd
           12

 悪態をついたヴァイスの目に映るのは、六枚翼と金色の髪。

「ここではやてさんにフェイトさんか……。先生?」
「なんです?」
「俺、先生、ディード、ジュニアの順であってるかい?」
「ええ」
「だったら、ディードをジュニアにつけて、俺らはこの辺りに縛り付けてもらおうか」
「ヴァイスさん? 何を」
「今度は守る。そう言ってるんだ。なぁ、先生」

 シャマルは笑った。
 コピーフェイトとコピーはやてが正面から飛んでくる。

「ストームレイダー! すまねえが最後までつきあってくれよ!」
「Yes, Master」

 ディードがその横に立つ。

「二人より三人の方が生き残る確率は高い」
「だったら、三人より四人だ!」

 ジュニアがボードを構えていた。

「……人がせっかくかっこつけてるのに、台無しにしてくれるな、おめえら」
「どうせなら、四人でかっこつけましょうよ」
「ジュニアの意見に賛成」

 シャマルは三人の背後を庇うように立つ。

「四人で頑張りましょう。はやてちゃんが増援部隊を引き連れてくるまで」

コピーフェイトのデバイスが黒の刃となって唸りをあげる。
 そして、コピーはやては呪文の詠唱を始めた。
 

426 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:39:43 ID:lSKHdrCd
            13 

 コピー群の中心近くの地面に見つけたハッチは、明らかに地中へと続いている。

「あからさまに罠臭いね」
「でも、コピー連中がここから出てきたのは確かに見た」
「出入り口には間違いないが、罠もある、と思った方がいいな。単純だが効果的なのは、閉鎖空間での挟み撃ちか」

 チンクの言葉にノーヴェはうなずいた。

「あたしとスバルがここを固める。ここからは何人たりともと通さねえ」

 閉鎖空間での戦いに特化しているのがチンクのISだ。突入役が当たるのは当然と言っていいだろう。

「いや、二人が突入しろ。ここは私が守る」
「チンク姉、いった……」

 ノーヴェが口を閉じて構える。その寸前、スバルが飛来した何かを振動破砕で弾き飛ばしていた。
 いきなりの振動破砕。それを使わなければならない、とスバルに感じさせたものがあるのだ。そしてその勘は正解だった。

「今の……咄嗟で振動拳を使ってなかったら、多分右腕持って行かれてたと思う」
「……触った感触はレイストームでいいのか?」
「うん。かなり近かった」
「そうか。セッテとディードの報告通りだな」

 スバルとノーヴェはフロントアタッカーの位置に。そしてチンクがガードウィングの位置に。
 誰の指示でもない。三人がそれぞれの特性を考えると、自然とその位置に収まったのだ。

「なるほど。今のが戦闘機人殺しの“振動破砕”ですか」

 コピー群をかき分けるようにして姿を見せるハーヴェスト。

「しかし、弾くのが精一杯のようですね」
「……トーレとオットーの仇!」

 ノーヴェが走ると、即座にスバルが併走する。


427 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:40:18 ID:lSKHdrCd
     14

「表裏一体!」

 叫びが合図だった。無意識に二人は呼吸を合わせ、ウィングロードとエアライナーを展開する。

「メビウスシュート!」

 ISレイブレイズが発動し、ハーヴェストはその場を動こうともせずに迎え撃つ。
 回転球から放たれる光条が二人の螺旋を回避し、その背後へと吸い込まれるように消えていく。
そして力場に併走し、メビウスシュートの移動速度よりも早くスバルとノーヴェの背中に近づいた。
 スバルが背後の気配に気付き、強引に技を解除、振動破砕の拳を振るう。同時に、ノーヴェは回転球にガンナックルで射撃。
 光条を退け、着地と同時にスバルは振り向くと再びノーヴェと並び、今度は地上を駆け始めた。

「左!」

 叫ぶスバルに合わせ、ノーヴェは右へと走る。自分を挟むように別れた二人にハーヴェストの注意が向いた直後、打ち合わせのなかったチンクが動く。
同時にスバルがディバインバスターの準備。
 チンクはスティンガーを投げつけ、そのまま前進。
 ISランブルデトネイター
 回転球の表面が爆発。そしてそこへスバルがディバインバスターを放つ。しかし、突っ込もうとしたノーヴェは表情をゆがめ躊躇する。

「無傷なのかよっ!?」

 もう一度、と叫びかけたノーヴェはおぞましい感覚に身をよじる。瞬間、空間が削られた、ような気がした。
 ノーヴェは見た。いや、何も見えない。あるべき位置からそれはなくなっている。
 ノーヴェの左腕が。
 そこには、笑うハーヴェストの姿。そして、切り刻まれた宙に舞う自らの左腕。
 高速で急接近した回転球に斬り飛ばされた左腕だとノーヴェが気付くのは、数瞬の後だった。

428 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:41:01 ID:lSKHdrCd
         15

 ディエチを抱きしめるヴィヴィオを、セッテは見下ろしていた。

「……逃げますよ、陛下」
「ディエチが……」
「置いていっていいよ、ヴィヴィオ……ううん、置いていって。さあ、セッテ」

 セッテはちらりとディエチを見ると、ブーメランブレードを構え直した。

「私は、トーレを失った。もう、これ以上は嫌だ」
「……駄目だよ、セッテ。陛下を助けないと」
「二人とも、助ける」

 ヴィヴィオはディエチを担ぎ上げた。

「ごめんね、ディエチ。私が馬鹿だったから……」
「違いますよ、ヴィヴィオは優しいだけ。それを利用したクアットロが汚いだけ……」

 コピーの知恵ではない。クアットロの策だとディエチは確信している。

「だから……」
「黙って、ディエチ」
「……ここでヴィヴィオが負けたら、あたしが無駄に死んでしまう」
「ディエチは……死なないよ」
「ヴィヴィオを守れたから、あたしは満足です」
「どうしてっ!」
「あたしは誓っていたから……ジュニアが大きくなる姿を見て、ようやく気付いた……あたしは、なのはさんに取り返しの着かないことをしてしまうところだった…
…だから、ヴィヴィオを助けるの。あの時の自分が許せないから……」
「許してる……もう、そんなのとっくに許してる! 私も、なのはママも!」

 ディエチは微笑んで、首を振った。

「ありがとう……でも、私が私を許せないから」
「駄目! ここでディエチがいなくなったら、私が、ジュニアに取り返しのつかないことをしてしまうんだよ!」
「ジュニアに……」
「ディエチは、ジュニアのママなんだからね!!」
「私が……ママ?」

 なんて温かい言葉なんだろうか。とディエチは思った。
 ああ、そうか、そうなのか。
 強いはずだ。
 高町なのはは、この気持ちを抱いてゆりかごに向かってきたんだ。
 自分やクアットロが勝てなかったわけだ。
 勝てるわけがなかったんだ。
 だから……
 ジュニアがママと呼んでくれるのなら……
 ……生きなければならない。
 目を上げると、セッテが飛び立つところだった。そして、ヴィヴィオがデュアルストライカーを構えている。


429 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:41:34 ID:lSKHdrCd
         16

「……ディエチには、指一本触れさせない」

 コピーの群れ。十重二十重に囲む群れ。

「……イノーメスカノン、ファランクスモード」

 生き延びねばならない。
 ディエチは、立ち上がった。

「少し、数が多いね……」

「今、減らします」

 聞き覚えのある声と同時に、雷が降り注ぐ。

 Thunder Fall

 ヴィヴィオが振り向いた。その瞳が歓喜に輝く。

「……あ、………」

 金色の雷、あるいは疾風の雷神。
 その名は、フェイト・テスタロッサ・スクライア。

「よく頑張ったね、ヴィヴィオ、ディエチ」
「フェイトママ!」
「お前が援軍か」

 セッテが睨みつけるようにしてヴィヴィオに並んだ。

「うん。セッテもありがとう」
「ありがとう?」
「ここまで、一緒に戦ってくれて」
「私は……」
「この事件が終わって、それでも私と戦いたいというのなら、私はいつでも応じるよ。だけど今は、一緒に戦って欲しい」
「わかっている」
「ヴィヴィオ、ディエチを運んで。セッテ、一緒に飛べますね?」
「どこへ?」
「ジュニアと合流します。向こうにも、助っ人が行っているはずだから」

430 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:42:09 ID:lSKHdrCd
      17

 燃え上がるコピー群。
 シャマルは当然だというように胸を張る。

「さすがね。だけど、来るのが遅いわよ、将」
「文句があるのなら、私は帰るぞ」

 ヴォルケンリッター烈火の将、シグナムがレヴァンティンを鞘に収めながら言った。

「凄い……これが、ユニゾンしたシグナムさん」
「ジュニア、シャマル、体勢を立て直すぞ。テスタロッサと合流して、押し進む」
「はやてちゃんは?」
「主は援軍の編成に手間取っているらしい。束縛のない私たちの方が手っ取り早かったというわけだ」
「このまま、勝てる程、甘くはないでしょう?」
「当然だな」

 当たり前のように、シグナムはヴァイスに答えた。

「量の優劣は変わりません、それに……」

 シグナムはジュニアの視線にうなずいた。

「軍師の見解に相違を唱えるようでは、シャマルとは長年つきあえないからな」
「どういう意味よ」
「そういう意味だ。さあ、ジュニア、掛け値ない意見を頼む」
「ハーヴェストやローヴェンに勝てますか?」
「その質問は今のところは撤回するべきだな」

 シグナムが再びレヴァンティンを構えた。

「ここを切り抜けることができるかどうか。まずはそこからだ」

 ライナーズ、ガンナーズ、クローラーズ、そしてコピーフェイト、コピーはやてが再び増殖している。コピー戦闘機人に至っては、あからさまに不完全ディープダイバーをかけて、密度を増しているのだ。
 一人倒せばその数倍が押し寄せる。
 まさに、見える空間のほとんどが敵の姿だった。
 敵が増えた、という表現では生ぬるい。まさに、「敵の密度が増した」としか表現できない状態なのだ。

「数で押し込むか……無粋きわまりないな」
「ええ」

 ディードがうなずき、ツインブレイズを構える。

431 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:42:58 ID:lSKHdrCd
      18

 チンクの策にノーヴェとスバルは乗った。
 幸か不幸か、鋭利に切り裂かれたためにノーヴェは左腕を失ったショックが少ない。ただ、使えなくなっただけ。しかし、戦力のダウンは否めない。
そこでチンクが、策があると二人に告げたのだ。却下する理由など全くない。
 いつの間にか下がってハッチを開けていたチンクに従い、二人はハーヴェストから距離をとる。

「二人とも、ハッチの内側に入れ。私が合図したら飛び出すんだ」
「よくわかったよ、チンク」
「……すまんな、スバル」
「何言ってんだ? 二人とも」

 ノーヴェが入り、スバルが続いた。
 そして、チンクはハッチを閉める。
(……すまん、ノーヴェ)
 心中でそう言うと、チンクはハーヴェストに向き直る。

「……ヘグルーッメフ・クァク・ジャジヴァム」

 とある次元世界の誇り高き戦士の言葉を、チンクはまた呟いていた。
 勝てるあてのない相手にも決して怯むことなく立ち向かい、戦いでの死を名誉と考える戦士集団の言葉。
 ふと、チンクは空を見た。
 ……ああ、いい空だ
 ……今日は、死ぬには良い日だ



432 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:43:33 ID:lSKHdrCd
    19

 次回予告

チンク「私は罪深い。クイントを殺した私を、スバルとギンガは姉妹として認めている。私にとってそれは、あまりにも甘美な針のむしろだった。
 詰ってくれた方が楽だったのかも知れない。
 憎んでくれた方が楽だったのかも知れない。
 しかし、私を憎む者はいなかった。私を詰る者や誹る者から私を守ろうとしたのはスバルでありギンガであり、父上だった。
 私はいつの頃からか悪夢にうなされるようになった。
 ノーヴェ、お前にはそれを知られたくなかった。私は、お前の前では頼れる姉でいたかった。
 それも、これまでだ。
 クイント、これでやっと私は、貴方の元へ謝りに行けるのだな。
 次回、魔法少女リリカルなのはIrregularS 第十一話『チンクの夢 ノーヴェの現実』 僕たちは進む。IRREGULARS ASSEMBLE!」


433 名前:野狗:2008/12/20(土) 21:44:44 ID:lSKHdrCd
以上、お粗末様でした。


「ヘグルーッメフ・クァク・ジャジヴァム」
 ……大好きなんですよ、この人たち。

434 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 01:11:38 ID:hWD5GAFj
>>433
GJ!
いよいよチンクか…と寂しくなってきますね、次回予告が容赦ないな
ライトニングの増援は予定調和と言われようが熱くならざるを得ない

ディエチのママっぷりは死にかけてるときが旬

435 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 01:18:59 ID:NBMjlkD1
>>410
オレも想像した
相手はユーノだった。・・・メガネつながりか?

436 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 08:26:11 ID:k6VeY1/U
最近、ほんとにageる人増えたなぁ
いや、同じ人がage続けてるだけなんだろうけど
このスレだとsageは最低限のマナーみたいな感じでずっとやってきてるんだから
ageちゃったら謝るとかは守ろうよ

……本気でsageって何?な人がいるかも知れんので言っとくけど、書き込む時はメール欄にsageって入れてからにしてって事な

437 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 09:00:39 ID:o61ItgJ0
>>397
Gj!!
この甘さがたまらない!
純情エリキャロごちそう様でした。ええ変態でも純情すぎます

>>433
Gj!!
チンク姉とノーヴェが果てしなくやばい
というか全員ピンチだ
クアもローヴェンも明らかに、相手が戦いにくい人間のコピーをぶつけにきやがる…
エリオは何とか隊長を責務を果たすためにも戦い抜いてくれ

438 名前:タピオカ:2008/12/21(日) 17:36:20 ID:hWD5GAFj
お邪魔します!


注意事項
・戦闘ものでドカーン!バキーン!ガシャーン!とやりたいのです
・エロいはずがない
・本編終了して約1年ぐらいたってます
・敵組織オリジナルキャラクターで纏めちゃったので大量に厨二病が香るオリジナルのキャラクターをお届けします
・あまつさえオリジナルのロストロギアまで拵える始末なので、酷い捏造をお約束します

439 名前:Name〜君の名は〜:2008/12/21(日) 17:39:46 ID:hWD5GAFj
第二話「Frankenstein's creature」



「戦闘機人を破壊するための戦闘機人…?」
「そうです」

アギトの反芻に、カウンターの瞳が厳しい黄金から優しい赤いに戻っていく。
そして電撃に軽く焦げた空気の香りの中で、シグナムが疑問を差し挟んだ。

「ナンバーズを倒すために造られたという事は、ジェイル・スカリエッティについても知っているのか?」
「はい、割と詳しい事まで教えてもらいました」
「……それでは、機動六課とは別にスカリエッティと戦っていたと?」
「いいえ」

さらりと首を振ったカウンターだが、アギトが小首をひねった。
スカリエッティとは協力態勢ではあったが、無論カウンターと言う名前は聞いた事もない。
それどころか、ギンガやスバルについてもほとんど後から知らなかったし、そもそもスカリエッティさえ彼女らの制作者を知らないはずだ。

では、カウンター・ナンバーズとして造られ、ナンバーズ迎撃をせずに、

「何をしていた…?」

世に出てくるのが、遅すぎる。一年前のJS事件でこそ舞台に出てくるべき、このカウンター・F・アリシア。
なぜ、事件終結して日が経った現在なのか、理解に苦しむ。

「実は私がカウンター・ナンバーズとして造られた事や、ジェイル・スカリエッティと言う人物、ナンバーズと言う存在を知ったのが一年前なんです」
「では、JS事件が起こっている頃、自分が生まれた理由を知らなかったと?」
「その通りです。パパはそれまで、そんな事教えてくれずに、普通に私を育ててくれて、強い魔導師になれるように鍛えてくれたんです」
「パパというのは…育ての親か?」
「はい。そして、ある意味、本当の親でもあります」

意味ありげな含み笑いがカウンターに浮かんだ。およそ幼さが残るカウンターの雰囲気なのだが、さらに悪戯っぽい。
そしてそんな楽しげな表情は、話をする人物に対して強い愛しさを感じさせた。
そんな勿体ぶったカウンターの後を引き取るようにギンガが説明を加える。

「カウンターくんを育てた男の名前は、トライア・N・グールハート―――アリシア・テスタロッサの実の父です」
「! では、プレシア・テスタロッサの伴侶だった男か」
「おい、誰だよプレシアって? アリシアってこいつの事じゃねぇのか?」

カウンター・F・アリシアを指さして、アリシア・テスタロッサとの関連性に頭が絡まるアギトだが無理はない。少し、話が出来過ぎて複雑になってきた。
そんなアギトを手で制しながら、

『どうもややこしい話になってきている。念話でかいつまんだテスタロッサの昔話を教えるが、ギンガとカウンターの話も聞き逃すな』

シグナムが思念で語りかけてくる。
そうして、カウンターの話と同時にシグナムの話も二重に「聴き取る」ため、アギトが神経を削って黙りこくってしまった。

「私を育ててくれている時は、インビジブルマンってお名前だったんですけど……でも、トライア・N・グールハートさんの写真は間違いなくパパでした」
「ちなみにこのトライア・N・グールハート氏は戸籍から以前に勤めていた会社の雇用記録を含め、自身のあらゆる個人データを抹消して、現在行方が知れません」
「どういう事だ?」
「えーっと、正直、私もパパの事、よく分からないんですよ。
プレシアって奥さんやアリシアって娘さんがいたのは、お話してくれたんですけど、仕事についてや自分の事はあまり教えてくれませんでしたから。っで、一年ほど前、修行の課程を終えた私に、出生について全部話してくれてから…いなくなっちゃいました」
「当然ですが、プレシア女史の知り合いや学生時代の知己は彼を覚えていましたので、昔の事についてはおよそ分かってます。
そして、いつから行方が知れなくなったかもカウンターくんの発言と合わせて把握できました。カウンターくんを育てていた時期、すでに彼はこの世の自分の記録を消し去っています」
「…成程。だから透明人間か」

自分のものであれ個人の記録を抹消するともなればすでに犯罪だ。
しかし、このトライアという男、なぜこんなわけのわからない経歴なのか?

440 名前:Name〜君の名は〜:2008/12/21(日) 17:42:10 ID:hWD5GAFj
「それで、この一年、私、まず働いて衣食住を確保してからずっとパパを探してるんです。「インビジブルマンさんを探してください」って管理局の人にはお願いしてたんですが…そもそもそんな人いないってずっと取り合ってもらえなくて…」
「それで戦闘機人やフェイトに縁があるギンガと出会って、いろいろと分かったというわけか」
「はい、パパの本名知ったの今日です」

カウンターがうつむいた。この一連の流れの中、カウンターがトライアについて話すときの嬉しげな顔から、その敬愛の度合いは良く分かる。
それだけに、父親のいない一年の淋しさも幾分か見て取れる。想像できる。

「そして、私も自分の生みの親の名前を知ったのも先程です」

ギンガの声に硬度が増した。

「ドクター・フランケンシュタイン」
「私はその男の人に造られて、パパが保護してくれたんです」
「今、各方面に問い合わせていますがまだ情報はありません。この名前も偽名かもしれませんし、時間がかかると思います…」
「カウンターとギンガ、スバルの経緯…似ているな」
「…私もそう思いました。結局、カウンター・ナンバーズとして造られたなんて知らずにJS事件を終えてしまいましたが」
「知らずとも良かった事だ。ドクター・フランケンシュタインとやらがどういう人物か知らないが、お前たちが生まれた理由が、そんなくだらない事でいいはずがない」

この場にいない、見た事もないドクター・フランケンシュタインを言葉で切り捨てればシグナムが不機嫌そうに腕を組む。
戦闘機人を造る技術ではスカリエッティに並ぶようだが、気に喰わない男である。
復讐か正義か。ナンバーズを破壊したいという源がいったいどんなものかは分からないが、それを一つの生命の理由づけにするなど烈火の将には許せない。

そこでふと考える。
では自分は?
やはり、「戦うために生まれた異形」ではないか?
―――否。
「護るために生まれた騎士」である。
断じて、戦うための力ではない。
そして、守護騎士を運命づけられた事の是非も、もはやどうでもいい。
護りたいものが存在し、護れる力を持っている。それが全てだ。

誇り高いシグナムは、だからすでに朽ち果てた「夜天の魔導書」であった頃の記憶さえも、空白のままで仕方ない事だと割り切れている。
つまり己を造った者たちも忘れ去ったままで、いいのだと…

「ドクター・フランケンシュタインとやらがお前たちを造った、その動機まで分からんか、カウンター?」
「流石にそこまでは…ただ、パパならきっと知ってると思うんです。ドクター・フランケンシュタインとお知り合いだったみたいですし」
「ですので、犯罪者として逮捕するためにも、ドクター・フランケンシュタインについて知るためにも、そしてカウンターくんのためにも、トライア・N・グールハート氏を捜索しようと思っています」

ギンガが新しく開始しようとする捜査について語りながら、アギト・レプリカを再度ボックスに封じていく。
魔力と電子の二重ロックを確認すれば、ようやっと今回シグナムをこの陸士108部隊隊舎に招いた理由まで話が辿り着く。

「と言う訳で、カウンターくんの健康診断兼パーツにドクター・フランケンシュタインの手掛かりを期待して、本局まで連れて行ってあげてください。すでにマリーさんに連絡は入れてあります」
「体のパーツが手掛かりになるのか?」
「スカリエッティみたいに、流石に名前まで入ってはいないでしょうが、製品番号が刻まれていたりしますから、いくらか捜査の目安になります」
「私自身に刻まれていた型式はタイプF・サードです」
「カウンターくん、そこまでは…」
「いいんです、もう全部喋っちゃいましょう」

どこか恥ずかしげになってしまっているギンガが難色を示した。
ごにょごにょと言いよどむタイプゼロ・ファーストを横に、カウンターが朗らかに自分の胸に手を当てる。

「シグナムさん、今まで出会った戦闘機人に男性体はいましたか?」
「…いや、全員女だ」
「そう、機械の体と肉の体を併せるには女性体の方が都合がいいんです」

ちなみに高い魔力を持つ人間の割合も女性の方が多い。
古来より巫女や魔女といった人種や単語があるが、統計を取らずとも昔から人は経験でそうなのだと理解をしていたようだ。

441 名前:Name〜君の名は〜:2008/12/21(日) 17:43:33 ID:hWD5GAFj
「それでは、つまりお前には2人の姉がいると?」

しかしカウンターは力なくゆるく頭を振る。

「…いえ、すでに自壊しています。自分の電撃で自分を滅ぼして」
「それは…」
「戦闘機人を破壊するための力は、上手く使わないと自分に返り得ます…機動六課の時、スバルさんもそうだったと聞いています」
「ああ」

苦い思い出だ。
ギンガを拉致された時のスバルの憤怒。
自身どころかデバイスまでズタズタにした姿を、シグナムは鮮明に思い出せる。

「自壊してしまった二体の失敗を反省して、ドクター・フランケンシュタインは『混ぜた』んです」
「…混ぜる? 何をだ」
「男の子を、混ぜました」
「…?」
「私、『ついてる』んです」
「……………………………………………………………………!?」

ちょっとの間、何を言っているのか理解できなかったシグナムだが、気づいておもっくそビックリしてる。
それに一拍遅れて、今の今まで静かだったアギトも大口開いて驚いていた。
その表情が愉快だったのか、それともあるいは自嘲だったか…カウンターがくすりと口角吊りあげた。

「半陰陽というやつです。クローンはオリジナルと同等の性別でしか作れませんが、女性寄りの半陰陽にはコントロールできたようです。そうして、私の中の『男性』が邪魔をして、自分を滅ぼすほどの電撃を抑制できたというわけです」
「そ、それはまた乱暴な方法だな…」
「私もそう思います」

苦笑するカウンターだが、悲しげな陰が瞳によぎる。

「ですので、そんな珍妙な技術を本局で詳しく調べようというわけです」
「あ、あぁ……分かった…えぇっと、それから、このアギトのレプリカも処置を保留する意味合いで、本局に封印するのだな」

まだまだカウンターが「男の娘」と言う事実に困惑しながら、シグナムが強引にテーブルの上の赤い少女に話題をねじる。
昔のフェイトと見分けがつかない容姿で『ついている』、などと言われ、複雑すぎる気持ちだ。

アギト・レプリカを封印したボックスをシグナムへ手渡しながら、ギンガがアギトを盗み見た。
娘とも言えるような、レプリカの少女を起動もさせずに封印し続ける……はたしてどんな心境なのか。
その想いを共有も予想も出来ないギンガが歯がゆさを感じていれば、今の今まで黙りこくっていたアギトが口を開く。
その眼は恐いほどに真剣だ。
ただ、レプリカに向けられてではない。

「おい、カウンター、話は大体分かったけどよ、聞きたい事がある」
「…はい?」
「私が念話でおおよその事をアギトに伝えた。何も知らなかったのでな」
「ミドルネームのFってなんだ?」
「フェイト、です。タイプFのFも、フェイトさんにちなんだFです。パパの娘さんのアリシアちゃんにも、そのクローンさんのフェイトさんにも負けないぞー! …って意味で、自分で考えたんですよ」

カウンターがにこりと笑って、自信ありげに自分のネーミングの由来を語る。

嘘―――と言いかけてアギトは言葉を飲んだ。
カウンターの笑顔の裏にアギトは固くて冷たい何かを感じた。これが別の話題における心理ならば、おそらくカウンターの笑顔が嘘と見抜けなかっただろう。
しかし、しかしだ。
今回だけは、アギトの心が多分にカウンターの裏側をざらりと感じ取る。
ちろりとアギトの胸の中に赤い火が鎌首もたげた。赤い赤い、怒りの火。

442 名前:Name〜君の名は〜:2008/12/21(日) 17:44:50 ID:hWD5GAFj
「自分で考えたのかよ…」
「そうなんです、パパ、あんまり素敵な名前つけてくれませんでしたから…」
「そうかよ……自分で…」

静かで重いアギトの声に、怒りが含まれている事をシグナムとギンガがようやっと気づく。
そして、ギンガは海上隔離施設において何度かこの種のアギトの怒りを感じた事があったはずだ。
パパとの思い出を回想しながら理由を付け足すカウンターへと、アギトがさらにもう一つ声をかけた。

「……お前、自分の事好きか?」

一寸だけ、カウンターがきょとんとした。
2、3度だけ目を瞬かせ、それから満面に花のような笑顔浮かべてこう言うのだ。

「大っ嫌いです」



「おっと失礼」

ぶつかってしまった小さな女の子を転ばせぬよう優しく支えてやりながら、柔らかく微笑みかけてやる。
最上階にあるこの展望ラウンジには、少し遅めの夏休みを船旅で満喫する家族も多く、したがって子供も多く見かけられた。
乗客が立ち入れる最下階には小規模カジノが設置されているが、10にも満たないであろう女の子にはこの展望ラウンジの方が楽しいのだろう。

クルーズ客船「ティターン」がベルカ自治領の港から出航してすでに三日。
明日、ミッドチルダ西部と北部をつなぐ港を経由する全五日の航程は半分以上を消化している事になる。
排水量は八万トンを超え、全長370mのこの船はいわゆる豪華客船と呼ばれるものだ。

展望ラウンジより見える海の遥かかなたに日が落ちて数時間。
夕食を済ませて茶と談笑を楽しむ者たちで人口密度の増した展望ラウンジの事である。少しよそ見をしてしまえば女の子にぶつかるのもやむを得ない。ましてやエロゲ発祥の美少女アニメが下敷きならばなおさら女の事の衝突率は上がろうというものだ。

「す、すみません!」
「いやぁ、僕もよそ見をしてしまって申し訳ない。怪我がなくて何よりです」

少し腰を折って女の子と視線の高さを調節していれば、頭のどこかで何かが引っかかった。
どこかで見た事がある気がする。
まじまじと女の子を見つめていれば、全く同じように、女の子もこちらを見つめてくる。
彼女の顔にもこう書いてある―――どこかで見た事がある気がするです、と。

「あのぅ、どこかでお会いした事ありましたっけ?」

初対面にしては不自然に長い時間見つめあっていれば、痺れを切らしたように女の子が声をかけてくる。

「あ、いや、失礼。僕もお嬢さんをどこかで見た事がある気がしたんですが…多分、記憶違いですね」
「! わたしも、あなたの事、どこかで見た事がある気がしてるんです! 偶然です!」

443 名前:Name〜君の名は〜:2008/12/21(日) 17:46:09 ID:hWD5GAFj
オーバーリアクションで両手を上げる幼い女の子は懸命に記憶に検索をかけるが、どうもヒットはないらしい。
そんな二人へと、新しい声がかかる。

「リインちゃん、夕食は一つ下の階のレストランにしようってはやてちゃんが……あら?」

おっとりした声だ。
入ってきた第三者もやはり女性だが、ふんわりとした美女である。

「どちら様かしら?」
「さっきぶつかってしまった方なんですけど…あの、どこかで会った気がして…」
「それはうちの子が失礼しました。お怪我などはありませんでした?」
「いえ、僕の方は全然。お母さんでしょうか?」
「……違います」

がっくりとうなだれた美女、ヴォルケンリッターの頭脳たるシャマルはとても悲しそうに目を伏せた。
やっぱり自分とリインちゃんではそんな風に見えるかしら、と頬に手をあてる。
一方、そんなシャマル、そしてリインの姿にパズルが解けたような閃きが舞い降りてきた。
痛恨のミスをしたような驚きにわななきながら、少し声量が上がってしまう。

「そうだ、思いだした! リインフォースUさんとシャマルさん! 機動六課の!」
「まぁ、私の事まで御存知でしたか」

はやて、なのは、フェイトと言った特に見栄えのする元六課の隊長陣はメディアに取り上げられた事がいくらかある。
そして、そんなはやてのパートナーとしてリインも何度か紙面に顔を写しているが、シャマルにまでスポットが当たった事はないはずだ。

「知り合いにマスコミ関係者がいまして、お顔を拝見させてもらった事があるんですよ。ミッドチルダを救った部隊の方々ですからね、覚えていました。いやぁ、実際に見ると一層お美しい。あ、あの、握手してもらっていいですか?」
「あはは…私は医務を担当していて実際に戦ったわけじゃないんですけど…」

しかし、しっかりと握手に応じるシャマル。
きちんと、その赤い目を見つめて苦笑した。
そしてやはり彼女もこう思うのだ。

(あれ……どこかで会った気がする?)

いや、会ったというのはおそらく正確ではない。誰かに似ている?
不思議そうに、やはりシャマルもリインと同じくまじまじとその顔を見つめてしまう。

「では八神元部隊長もこの船に?」
「ええ、仕事が終わった帰りなんですけど、ちょっと贅沢な骨休めをしながら帰ろうと思い立ちましてこの船に」
「そうでしたか、そのようなプライベートでは立ち入ってしまうのは野暮になりますね」
「いえ、同じ船旅をしている縁です、よろしければご一緒に夕食なんてどうです…えっと…ミスター?」
「あっと、これは失礼しました」

感動と興奮冷めぬ様子で金髪が乗る頭をかいては、人懐っこい笑顔を拵える。

「僕はインビジブルマンと申します」








444 名前:タピオカ:2008/12/21(日) 17:47:52 ID:hWD5GAFj
お邪魔しました!

445 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 18:21:29 ID:HEL1yTRB
>>444
タピオカ氏GJでした。相変わらず表現が上手くて嫉妬

てかアリシアは付いてるのに非エロとは是如何に
ってわけで是非エロも、あと旅の標の後編もお願いします

446 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 19:12:57 ID:QV0wDBSC
>>タピオカ氏
GJでした。

というか、トライア・N・グールハートで吹いたw
トライアングルハートのもじりですね。わかります

447 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 21:00:29 ID:Vhr7+mxT
相変わらずこのスレは面白いけどエロが少ないなw

ごらんの有り様だよ!

448 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 21:04:33 ID:KesKngR2
>>447
魔法少女つながりだから許されると思ったら大間違いだ。
さっさと巣に戻れ。

449 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 21:38:08 ID:UzzeSo3T
??)

450 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 21:39:53 ID:QHXBMGh7
>>449
えっとな。>>447の「ごらんの〜」は最近マイナスの話題で有名になった某魔法少女エロゲの象徴的言葉なんだ。
で、>>448がそのネタに反応したと。

451 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 21:43:09 ID:6E2LgEyQ
俺、オマエラに隠してたことがあるんだ

無印のころ幼女幼女って騒いでたけど、実は巨乳も大好きなんだなァ……

452 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 21:46:20 ID:UzzeSo3T
>>450
ナルホド

453 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 21:51:39 ID:3lleEJft
>>451
つまり一番の大好物はロリ巨乳とな?

454 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 21:52:57 ID:6E2LgEyQ
>>453
いやいや、なんというの、機能特化?

455 名前:B・A:2008/12/21(日) 22:58:44 ID:gEd1toII
そしてこの状況で非エロを投下しにきましたが、良いですか?

456 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 23:03:41 ID:Vhr7+mxT
どうぞどうぞ

457 名前:Foolish Form ◆UEcU7qAhfM :2008/12/21(日) 23:05:33 ID:d9Y1+kFU
……被ったorz

お先にどうぞ〜

458 名前:B・A:2008/12/21(日) 23:08:36 ID:gEd1toII
>>457
も、申し訳ない。
では先に行かせてもらいます。


注意事項
・ユーノ×フェイト
・その陰で、クロノ×なのは
・非エロです
・闇の書事件から1年後
・フライング気味のクリスマスネタ
・恐らくは使い古されているであろうベタな内容
・タイトルは「聖夜をあなたと」

459 名前:聖夜をあなたと@:2008/12/21(日) 23:09:18 ID:gEd1toII
シャワーを終えてバスルームから出てきたユーノは、自分以外に誰もいない室内を見回してため息を吐いた。
今日は12月24日。彼の友人であるなのは達が暮らす地球ではクリスマス・イブと呼ばれる日で、
家族や親しい友人、恋人と一緒に過ごす日なのだそうだ。もっとも、元を正せば神様の誕生日らしいのだが。

「今頃、クロノは楽しくやっているんだろうな」

冷蔵庫から買い置きのジュースを取り出し、プルタブを起こしながらぼやく。
彼はこの日を恋人であるなのはと過ごすために、3ヶ月も前から休暇を押さえていたらしい。
先週、資料請求のために無限書庫を訪れた際の彼はまるで幽鬼のようであった。
曰く、仕事が片付かないので5日ほど寝ていなかったのだそうだ。ちなみに、新記録らしい。
そうして、オーバーワークの果てに掴み取ったクリスマスデートを、彼は満喫しているのだ。
それに引き替え、自分はどうだ。
折角のイブの夜を、1人で寂しく過ごしている。
別に一緒に過ごす相手がいない訳ではない。彼には、フェイト・T・ハラオウンという立派な恋人がいる。
最近になってやっと手を握れるようになったばかりで、まだキスもしたことのない初々しい関係ではあるが。
本当なら、彼女と一緒にイブの夜を過ごすはずだった。柄にもなく情報誌を読み漁り、夜景の綺麗なレストランや
喜んでくれそうなプレゼントも探していた。だが、そんなささやかな努力は徒労で終わってしまった。

『ごめん、仕事が入って24日は駄目になっちゃった』

急な任務で遠方に出かけなければならなくなったらしい。
予約したレストランも一緒に見ようと思っていた映画のチケットも夜景の見える展望台も、
全部無駄になってしまった。
仕事と恋人のどっちが大事なんだ、と駄々を捏ねるほどユーノは子どもではなかった。
言える訳がない。申し訳なさそうに頭を垂れ、今にも泣き出しそうに肩を震わせている彼女を責めることなど、
自分にはできなかった。

(けど、本当は・・・・・・・・・)

一緒にクリスマスを過ごしたいと言いたかった。
女々しい独占欲にユーノは自己嫌悪に陥る。
フェイトだって辛いはずなのに、まるで自分が一番惨めであるかのように思っている自分がいる。
彼女のためにデートプランを考えて、彼女のためにプレゼントを買って、彼女のために休暇を取って。
全て台無しになってしまったことを、全部彼女のせいにしている。
フェイトは何も悪くないというのに。

(寝よう・・・・・・・)

起きているから変なことを考えてしまうのだ。
こういう時はさっさと寝てしまうに限る。
目を覚ましても彼女とは会えないけれど、気持ちの整理くらいはつくはずだ。
そしたら、溜まっている遺跡関連の資料に目を通すなり、街に出かけて適当に散財して憂さ晴らしをすれば良い。
そんな自虐的なプランを練りながら寝室に行こうとすると、唐突に来客を告げるインターホンが鳴った。
夜も更けて日付も変わろうとしている時に訪ねてくるとは、非常識な客だ。
無視しようかとも思ったが、意味もなく苛立っていたユーノは文句の1つでも言ってやろうと玄関に向かった。

「はい、どちらさ・・・・・」

「ユーノ」

凛と響く涼やかな声に、ユーノの思考が停止する。
一瞬、これは夢なのかと自分の目を疑った。何故なら、目の前に任務中のはずのフェイトが立っていたからだ。

460 名前:聖夜をあなたとA:2008/12/21(日) 23:09:53 ID:gEd1toII
「フェイト・・・・・・」

「良かった、まだ起きててくれて・・・・・・」

「どうして、仕事が入ったんじゃ・・・・・・・」

「予定よりも早く終わってね、転送魔法で帰ってきちゃった。
本当は、個人での次元転送ってよくないんだけど・・・・・・・会いたかったから」

「フェイト・・・・・・」

ほんのりと頬を染めながら俯くフェイトがあんまりにも可愛くて、ユーノは思わず彼女の小さな体を抱きしめてしまいそうになる。
しかし、指先が触れる寸前で拒絶されるのでは、という恐怖が生まれ、手を引っ込めてしまう。

「ユーノ?」

「何でもない。僕も会いたかったよ、フェイト」

微笑み、フェイトを部屋に招き入れて冷蔵庫にしまったばかりのジュースを彼女にも振る舞う。
茶菓子くらいは出したかったが、生憎切らしていてしまっていた。夕食も局内の食堂で済ませたので、
フライドチキンもクリスマスケーキも買っていない。無論、こんな遅い時間でもどこの店も閉まっている。

「折角フェイトが来てくれたのに、何にも出せなくてごめんね」

「気にしないで。私、何か作ろうか?」

「ははっ、そもそも材料がないから」

「もう、またレトルトで済ませたの? 体に悪いから自炊してって言ったのに」

「し、仕方ないじゃないか。無限書庫の仕事が忙しくて、部屋に帰っている時間だってほとんどないんだから」

「病気になっちゃったらどうするの? もう、本当にユーノは私がいなきゃダメなんだから」

「面目ありません」

言って、どちらからというでなく笑みを零す。
クリスマスに恋人同士がするような会話ではない。
まったく、クロノやなのはのようにうまくはいかないものだ。

「おかしいな、もっと色々と言いたいこととかあったはずなのに。ユーノの顔を見たら頭の中ぐちゃぐちゃになっちゃった。
ずるいよね、ユーノは。私の気持ち、こんなにも引っかき回していくのはユーノだけなんだよ」

コツンと、フェイトは自身の額をユーノの胸に預ける。
触れている部分が何だかとても熱かった。
まるでそこから、フェイトの気持ちが流れ込んできているかのようだ。

「ユーノ・・・・・大好き・・・・・・」

「フェイト・・・・・・そうだ、出かける用意して」

「え・・・・・ユーノ?」

「見せたいものがあるんだ」

そう言って、ユーノは自室に戻って外出着に着替える。そして、準備を終えたフェイトの手を取ると、
局のトランスポーターを使ってクラナガンへと繰り出した。冬の寒さは切りつける刃のようで、
ユーノは無意識にフェイトの体を自分に密着させていた。フェイトはほんの一瞬、驚いて身を固くしたが、
すぐに緊張を解いてユーノの腕に自分の腕を絡めてきた。

461 名前:聖夜をあなたとB:2008/12/21(日) 23:11:04 ID:gEd1toII
「ねえ、どこに向かっているの?」

「すぐにわかるよ」

悪戯っぽく笑い、ユーノは少しだけ歩を早める。
ミッドチルダにはクリスマスという習慣がないため、地球と違って街路に電飾やモールなどの飾りつけはされていないが、
すれ違う何人かは仲睦まじく腕を絡める恋人達であった。しかも、みんな2人が進んでいる方向から歩いてきている。
その流れの先には、真新しい展望台があった。どうやら、ユーノはそこに向かっているようだ。

「ほら、どうだい?」

「わあ・・・・・・」

展望台からは、クラナガンの夜景を一望することができた。
真っ黒なキャンパスに点々と輝くネオンや街灯、ビルの窓から漏れた照明の光や車のテールランプ。
それはまるで、夜の海で月明かりを照り返す真珠の群れであった。吸い込まれるような美しい光景に、
フェイトは言葉を失って見惚れている。

「きれい・・・・・・」

(君の方が綺麗だよ、なんて言えないか)

心の中で苦笑して、ユーノはフェイトの隣の手すりにもたれかかる。
この展望台は情報誌を読み漁っていた時に見つけたもので、夜景を楽しめるように夜間も営業している。
ただ、客自体はそれほど多くなかった。眺めは綺麗だし格安なのだが、雑誌での扱いは割と小さめで隠れた穴場という奴だ。

「あ・・・・ユーノ、見て」

「雪だ・・・・」

ガラスの向こうで、チラチラと白い粒が街に降り注いでいる。
その幻想的な光景に、周りにいた他のカップル達も窓に駆け寄って雪に彩られていく街を見つめている。
不意に、ユーノはむず痒さを覚えて鼻をすすった。

「寒いの?」

「へ、平気・・・・くしゅん! ご、ごめん・・・・・え、えっと・・・・・・ティッシュティッシュ・・・・」

「もう、ムード台無し」

「本当にごめん」

「しょうがないなぁ・・・・・はい」

「うん?」

フェイトがずっと提げていた紙袋から取り出された包みを受け取り、ユーノは首を傾げる。
彼女の顔を見ると、包みを開けてと目が訴えていたので、黙ってシールを剥がして包装を破る。
盛大に紙を破る音に周りの人達が注視してきたが、ユーノは気づかなかった。


462 名前:聖夜をあなたとC:2008/12/21(日) 23:11:41 ID:gEd1toII
「これ、マフラー・・・・・・・」

「その・・・・プレゼントは手作りが良いって、母さんが・・・・・・」

「フェイトが作ったの?」

「うん、夏頃から・・・・・・こういうのって初めてだから、あんまり上手にできなかったけど」

「そんなことないよ、ほら」

包みから取り出したマフラーを、首に巻いてフェイトに見せる。
多少、編み目が雑で歪になっているが、そこにはフェイトの愛情がたっぷりと詰まっていた。

「あったかいよ、フェイト・・・・・ありがとう」

「よかった・・・・・」

「そうだ、僕もプレゼント・・・・・ああぁっ!?」

素っ頓狂な叫びに、何人かの客が迷惑がって展望台を降りていく。
それに気づいたフェイトがユーノを窘めるが、ユーノはそれどころではなかった。
忘れてしまったのだ、フェイトに渡すはずだったクリスマスプレゼントを。
今日は渡せないと思って棚にしまってしまったのが仇になってしまった。

「ごめん、プレゼント忘れちゃった。その・・・・・と、取ってくる」

「ううん、良いよ」

フェイトは駆け出そうとしたユーノの腕を掴み、自身のもとに引き寄せる。
そして、ほんのちょっぴり照れながら、首を彼の肩に預けるようにもたれかかった。

「プレゼントは、もう貰っちゃったから」

「フェイト?」

「ユーノが私へのクリスマスプレゼントだよ」

その言葉に、今度はユーノが赤くなる番だった。
背中にむず痒さを覚え、顔は熱を帯びているかのように熱くなっている。
気の利いた言葉の1つも思い浮かばなかった。
フェイトもフェイトでそれっきり黙り込んでしまい、気まずい沈黙が2人を包み込む。
その時、傍らから可愛らしいくしゃみの音が聞こえてきた。

「くしゅん」

「大丈夫?」

「う、うん・・・・・大丈夫」

「・・・・・・・・・・ちょっと良い?」

苦笑しながら、ユーノはフェイトから貰ったマフラーをひと巻きだけ解いてフェイトの首に巻きつける。
少しだけ長さが足りなかったが、体を密着させれば何とかなりそうだ。さすがに、このまま動くのは無理だろうが。

463 名前:聖夜をあなたとD:2008/12/21(日) 23:13:41 ID:gEd1toII
「これなら、寒くないかな?」

「うん、あったかいね。ユーノの隣は、本当にあったかい」

頬を染めながら、フェイトは再びユーノの肩に頭を預ける。
眼下には、白く染まっていく幻想的な街並みが広がっていた。

「メリークリスマス、ユーノ」

「メリークリスマス、フェイト」

そのまま2人は、気が済むまで夜の街を眺めていた。


                                                      おわり

464 名前:B・A:2008/12/21(日) 23:15:40 ID:gEd1toII
以上です。
ユノフェで何か書こうと考えている内に思いついたネタ。
時期が時期だし、ベタでも良いかなって。
とても10歳のやり取りには見えませんが。

ネタが浮かべば次はエロいの書きたいなぁ。



>>457氏、譲っていただいてありがとうございました。

465 名前:Foolish Form ◆UEcU7qAhfM :2008/12/21(日) 23:23:47 ID:d9Y1+kFU
GJでした!
畜生、マフラーで暖かくなったのは身体だけじゃなく心もかよ。
なんて初々しいカップルなんだ!
……しかし、フライング過ぎるぜ兄弟。
こちとらまだクリスマスネタのプロットも考えてないのに(ぁ



ちなみに、投下しようと文章整形してたので、
これは丁度いいインターバルだと思ってますよ。
何より、先に宣言したのはそちらですし。

申し訳ないですが、諸事情で1時頃にはこちらの作品を投下したく思います。
私の投下後も気にせずB・A氏の感想をどうぞ。

466 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/21(日) 23:29:07 ID:gWxUCgmD
>>465
では、お言葉に甘えさせて頂きます・・・。
>>464
GJですっ・・・・・・!!!
この組み合わせが大好きなアッシにとっちゃ一足早いですが
最高のプレゼントでっす。初々しい2人も良いですがエロエロな方も期待しております!
最後にもう一回GJ!!

467 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 00:32:05 ID:cGbvlLpx
GJ!!です。
私がいないと駄目なんだからなんて言いつつ、
実はいなくなられたら一番駄目になってしまうのはフェイトっぽいw


468 名前:Foolish Form ◆UEcU7qAhfM :2008/12/22(月) 01:13:08 ID:9rhTovuu
さて、1時になったので投下します。

前スレではみんな砂糖吐いてくれてありがとう。
でも吐きすぎて糖分が不足してると思うんだ。

という訳で新しいSSを書いてきたぜ(`・ω・´)

・ユーノ&なのは 非エロ
・闇の書事件から*年後(ご自由に想像して下さい、実は作者も考えてなry)
・前作と繋がってたりなかったり。いわゆる一つの前日譚。



イメージ曲は榊原ゆいの「恋する記憶」↓ つべにはなかった(´・ω・`)すまん
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm4672379

ではでは、投下開始です。

469 名前:お休みはノー・プラン(前編) 1/5:2008/12/22(月) 01:17:36 ID:9rhTovuu
冬。
「あったかいねぇ〜」
「そうだねぇ」
こたつ。
「ミカンがあるとうれしいねぇ〜」
「さっき食べ尽くしちゃったね……」
週末。
「戸棚に入ってるけど……誰か取ってきてくれないかな、ユーノ君?」
「それはちょっと難しい相談だね、なのは」

特に誰といわずとも、三種の神器が揃ってしまえば、のんびりゆったりこたつむりと化す。
それが日本の素晴らしい伝統であるということを、高町なのはは恋人のユーノ・スクライアと共に身体で感じていた。
「あ」
そういえば、となのはは思い出す。
「どうしたの?」
「今日、アリサちゃんたちが来ることになってたんだ」
「……そういえば」

久々に予定が合って、ミッドへの出向生活から休暇を取って戻ってきた海鳴。
ユーノもお邪魔して、徹底的にまったりと高町家で過ごしていた。
そしてその二日目、久方ぶりに友人であるアリサやすずかと一緒に遊ぶことになっていたのだった。
「フェイトちゃんもはやてちゃんも、もう向かってるだろうね」
時刻は既に十時前。
ハト時計がきっかり鳴き始めた瞬間、アリサがやって来るだろう。
「早くシャワー、浴びてこないと。ユーノ君も一緒に行く?」
安寧の地を出でて、なのはは下着を取りにクローゼットへ向かう。
後ろでは、ユーノもこたつのスイッチを切って立ち上がる気配がした。
再び聖地に帰るのは、夜になるだろう。

階段を一つ降りる度に、ルンルン気分が高まっていく。
「どこに行こうかな、こっちは今どんな映画やってるんだろ?」
まったくのノー・プラン。
何もいらない。ただ、皆で集まって騒ぎたいだけ。
久しぶりに集まった仲間。
アリサがベルを鳴らす前に、急いでシャワーを浴びよう。

***

ユーノは思う。
「いっしょにお風呂はいろ」というなのはの言葉。
いつもならそんなことは断固拒否――だった。
今は違う。一分一秒でも、なのはの傍にいたい。
そんな想いが、苦しいくらいに甘く心を締め付けてくる。

470 名前:お休みはノー・プラン(前編) 2/5:2008/12/22(月) 01:19:07 ID:9rhTovuu
お互いの気持ちを確かめあった日。
きっかけは些細なこと。
長く辛い書庫の仕事を一段落させ、なのはと夕食を共にした時。
理由は、誘った瞬間にはなかった。
けれど、気付いたら夜景の綺麗なレストランに誘っていた。

そして、なのはの横顔を見ていたら、
「好きだ」
思わず、言ってしまった。
「……え?」
入念な準備をして、むしろキザな台詞を吐こうとしたのではない。
その場の乗りと勢いで、つい言ってしまった訳でも、ない。
本当に、心の中で思っていたことが、何かの拍子に口から出てしまった。
そんな感じだった。
「僕は、なのはが好きだ。つ……付きあってくれないか」
なのはが好きだ――それだけだった。他にゴテゴテと言葉を継ぎ足したくない。

言った瞬間に、顔が熱くなるのが分かった。ドキドキと心臓が鼓動を刻んで、息が苦しくなる。
時間が何倍にも引き伸ばされるのを感じた。
一分か、一時間か。
答えを予想するには頭が沸騰しすぎていて、何も考えられなかった。

だから。

「……はい、喜んで。ありがとう、ユーノ君」
なのはが、応えてくれた。
「不束者ですが、よろしくお願いします」
想いが、届いた。
「え、えと、その……」
『ありがとう』、その一言を飲み込むのに、しばらく茫然としていた。

471 名前:お休みはノー・プラン(前編) 3/5:2008/12/22(月) 01:20:24 ID:9rhTovuu
その日からだ。
気まずく、恥ずかしいだけのひとときは、こそばゆくも大切な瞬間になったのは。
周りに何度小突かれただろうか、もう覚えていない。
クロノなど、顔を合わせる度に皮肉を言われた。
しかし、それが却って心地よかった。
誰も彼も口が笑っていたから、祝福していてくれているのが分かった。
「僕は、なのはを幸せにするよ」
力強く宣言した一言がまた、大いなる皮肉へと繋がっていったのは、また別のお話。

***

なのはは思う。
「あの時、魔法に、ユーノ君に出会わなかったら……」
どうなっていたのだろう。
普通に小学校、中学校、高校と出て、大学にも行って、翠屋を継いでいたり……か。
魔法を目の当たりにして、PT事件や闇の書事件に関わって。
そして気付いたら、隣にはいつもユーノがいた。
単なる巻き込まれ、ではなかったと思う。
こうなる運命を待ち望んでいたから、神様が叶えてくれたんだと信じている。

傍にいるのが当たり前になってから、しばらく経ったある日。
管理局に外部の手伝いとしながらも、週に三度も四度も通いつめていた時。
ユーノに、食事へ誘われた。
「あの、ほら、ちょうど君も仕事が終ったみたいだし、僕も今の仕事が一段落ついたから、その……」
混乱したように歯切れの悪い言葉。
「その、今夜、一緒に食事でもどうかな、って」
時は二人を離れ離れにせず、いつものユーノであり続けてくれた。
「うん、いいよ」
それが嬉しくて、なのはは思い切り強く頷いた。

いつかは自分から言おう、想いの丈をぶつけよう。
そう何となく思っていたら、突然向こうから言われてしまった。
「好きだ」
ユーノから、告白された。
たった、それだけの言葉。でも、それだけに何よりも強く、なのはの心に響いた。

「ごめん」って言われたらどうしよう。
好きって気持ちが迷惑だったら、どうしよう。
自分の気持ちを伝えるのに、少し臆病になっていた。
友達のままでいてくれるならまだいい。
もし告白してしまったことで、お互いが話しづらくなってしまうのなら……
そんな不安が心を埋めていて、中々「一歩」が踏み出せなかった。

472 名前:お休みはノー・プラン(前編) 4/5:2008/12/22(月) 01:21:20 ID:9rhTovuu
だから。
ユーノの言葉を受け取った時、たまらなく嬉しくなった。
同じ気持ちだったと知ったから。
「……はい、喜んで」
男の子がリードしてくれる、それは小さな夢だった。
「ありがとう、ユーノ君」
けれど、今叶った。
「不束者ですが、よろしくお願いします」
一緒に、歩いていこう。
この手を、離さないでいよう。

***

「ユーノ君、背中流してあげるね」
高町家の風呂場は、一軒家だけにそれなりの広さがある。
「ありがとう、なのは」
だから、そこで二人が一緒にいることくらい、大したことではなかった。
「ユーノ君……大きくなったよね。初めて出会った時はわたしと同じくらいだったのに」
なのはが改まってまじまじと見る。
「僕も男だからね」
「にゃはは。いつの間に追い越されちゃったんだろうね」
「それだけ、僕らがずっと一緒にいた、ってことさ」

ユーノと運命の出会いを果たしてから、もう何年も経つ。
今はもう、お互いの望む道へと踏み出そうとしている。
けれど、それはどこかで絡まっているから、見失うことはないだろう。

温かいお湯をかけて、泡をキレイさっぱり洗い落とす。
「ありがとう、なのは。代りに僕もなのはの背中、流すよ」
「ええっ、いいよ、そんな……」
「いいから、いいから」
ユーノは立ち上がってなのはと入れ替わり、ボディソープを背中に広げていく。
「なのはの背中は、丸いね。僕とは大違いだ」
「わたしも、女の子だから」
はにかんだように笑いながら、なのはが言う。
「そういえば、こうやって二人でお風呂に入るの、久しぶりだよね」
「そうだね。昨日も、なんだかんだで一緒じゃなかったし」
昨夜は仕事帰りに軽く着替えをまとめてこっちに来ただけ。
休暇前日とあって、あちこちからよこされた仕事はいつもの倍はあった。
「今日からは、しばらくなのはと一緒にいられるね」
「……うん。ちょっとでも、離れていたくないよ、ユーノ君」
「僕もだよ、なのは」

473 名前:お休みはノー・プラン(前編) 5/5:2008/12/22(月) 01:22:29 ID:9rhTovuu
なのはもユーノも、どちらともなくキスを交わした。
小鳥がついばむような、軽い軽いキス。
ふんわりとせっけんの匂いが漂ってきて、身体がぞくり、と反応する。
「これ以上はダメだよ? アリサちゃんたちがなんて言うか……」
銀色の架け橋を唇に作って、弱気に注意する。
「分かってる……分かってる」
大丈夫、大丈夫と、ユーノは鋼の精神を奮い立たせているようだった。
「──うん、もう大丈夫」
振り切るようにシャワーを全開にしてなのはに浴びせると、ユーノはさっさと湯船に飛び込んだ。
「さ、先に髪、洗ってていいよ」
なのははそれが何だかおかしくて、クスリと笑ってしまった。
ユーノがちょっとふくれっ面になって、それからお互いに忍び笑いを漏らした。

***

「で、説明してもらおうじゃないの」
十時を回ることたっぷり十分。
否、普通はたっぷりと言わないのだろうが、アリサにはたっぷりだった。
「二人揃って風呂に入った。そのせいで遅れた。それはまぁ、いいでしょう」
「ア、アリサちゃん……」
「すずかは黙ってて」
「はい」
一言で全てを封じると、アリサは詰問を始めた。
「でもねぇ、なんでそれで幸せそうなのよ!? 普通逆でしょ!」
「あのね、アリサちゃん、お昼はおごるから、ごめんねって……」
「あぁっ、もうっ、そうじゃない! もう遅刻なんてどうでもいいの!!」
アリサは、八つ当たりしたい気持ちだけが無性に心の中を暴れ回っていた。
だが、それを直接的に言うのも何だか気が引ける。
「大体アンタたちはねぇ、どうして四六時中いちゃいちゃいちゃいちゃベタベタベタベタ……」
「えっと、それは関係ないんじゃ……」
「大有りよ! じゃあそれは何よそれは?」
アリサの指差す先には、ユーノの腕──となのはの腕。
まるでツタか何かみたいに絡まっているようで、ナイフでもない限りは引き裂けないだろう。
「きぃーっ! なのは、ユーノ、アンタらにはもう限界までおごらせるからね! 覚悟しときなさい!!」
行くわよ、と肩をいからせて、のしのしと先頭に立ってアリサは歩き始めた。

「……あれはアリサちゃんじゃなくても怒るわな。フェイトちゃんは何とも思わないの?」
「私は、二人を祝福してるから。二人の幸せを見守るのが、私の幸せだよ」
「フェイトちゃんも大人やなー。『幸せ』っちゅうか、ただのバカップルにしか見えへんわ」
親友のすずかにも止められなかったアリサ。
フェイトとはやては、空気のごとくその場に突っ立って事態を見守るしかなかったのだった。

474 名前:Foolish Form ◆UEcU7qAhfM :2008/12/22(月) 01:28:46 ID:9rhTovuu
えっと……うん。
被ったのが時間だけじゃなくてテーマも、ってのがタイミング悪かった。
猛烈に反省している。

ちなみに前編になったのは、クリスマスSSを書きたかったから。
そんな訳でスレのみんな、クリスマスは続行だぜ!!
後編はコミケ直前くらいに。

前回に比べて甘さは控えめ。
二人がらぶらぶになったきっかけを書いてみました。
甘酸っぱい青春の想い出をどうか、みんなに届きますように。



それではイブの日までお待ち下さい。
読んで下さった諸氏に、百万の感謝を。

475 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 01:32:40 ID:7TcKufeO
>>474
GJ、だがクリスマスは倒産しました。11条ではなく連邦破産法7条による倒産、清算です。

エ、エッチ描写に期待なんかしていないんだからねっ!

476 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 01:36:39 ID:6tfBjUP+
GJッス! この爽やかな甘さ、しっかとこの胸に届きましたよ〜〜!!

477 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 02:00:49 ID:RO5rKZJv
>>464>>474
この優しい甘さに最高のGJを

478 名前:477:2008/12/22(月) 02:02:32 ID:RO5rKZJv
sage忘れました。
申し訳ございません。

479 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 06:25:23 ID:3NM6k+lg
>>474
GJです!!
爽やか甘々なユーなのに砂糖以外の何かも吐きながらニヤニヤしてました。
自分も何か書きたい衝動に駆られました。

480 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 07:00:22 ID:RbgGA4A/
>>464>>474
なんだこの甘甘ラッシュww
口から砂糖が出過ぎて俺を低血糖にする気か!!
お二人ともGJ!

481 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 08:40:25 ID:Z20w/xK+
>>433
またナンバーズの中で犠牲者が出てしまうのか…
彼女達は家族を助けたいとも思ってるはずなのに
チンク、ノーヴェの戦い
そしてエリオとライナーズとの戦い
どれも目が離せません
GJ!

482 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 11:47:57 ID:ts7uILwj
ディルド装備のロリフェイトがリンディを後ろからいてこます話はまだかのう

483 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 12:38:15 ID:RucfIh04
>>468
ニコニコなんか張るなカスが

484 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 12:50:12 ID:IjiA82eQ
別にそこまで言わなくてもいいだろうに

485 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 12:52:45 ID:RucfIh04
自演乙
SSもつまらないしここもレベルが落ちたな

486 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 13:06:14 ID:KhA6XALv
釣り針でけーよw

487 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 13:50:34 ID:9OMtWuLP
>>484
>>483は言い過ぎかもしれんが、実際にニコだろうがつべだろうが動画サイトを張るのはどうかと思うぞ?
別に職人のイメージ曲に興味もないし、そんな情報もいらない
あとユーなの自体がいらね

488 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 13:51:18 ID:JmETQxiO
ageてる時点で分からないか
そいつはスルー対象だ

489 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 13:53:59 ID:cCvnadsx
>>487
自演乙
↓以下スルーで何事もなく感想かエロい話頼んだ

490 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 14:03:08 ID:XDAxUb9J
>>464
GJ!
やっぱり裏ではクロノがなのはの後ろを掘(ry

491 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 14:30:47 ID:dIXT5JsC
そろそろ泥沼エリキャロルー三角関係を頼む

492 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 15:09:20 ID:Wdb6HxMG
ナンバーズおっぱい祭はいつ開催しますか?

493 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 17:09:07 ID:QoQih28p
>>491
そういやユーなのフェで泥沼ってのは数本あったけどその三人だと無いな。
というかヤンデレ化するのはなのはかフェイトに集中してるような。

494 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 17:28:00 ID:RucfIh04
【低脳】ハニ◆myu/b.bSk2について【老婆】
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/tubo/1213074570/503n-

505 : ◆hZy29OoBJw :2008/09/06(土) 12:24:37 ID:mZJUNi4SO
意味がわからんどー!



495 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 19:01:54 ID:R4jmkX9t
エロオ・モンデヤルによるキャロルー調教を誰か書いてほしい。
あの二人性的な事には無知そうだし

496 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 19:59:13 ID:yUn3Fww8
いや、皆さん甘甘ラッシュでGJです。
ユーなの非エロを書いてますが、現在10章目(全14章か15章予定)です。


497 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 20:11:35 ID:owxvQO1j
しかし普段から非エロが多いがこのスレはいつにも増してエロ成分がないな。

498 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 20:21:39 ID:eOvyE5K8
………つまり、エロが欲しいとな?

499 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 20:26:08 ID:evxzVnbp
ディードのおっぱい! おっぱい!

500 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 20:54:33 ID:uPZPPbaN
>>496
宣伝はやめようね。少なくともここはアンタの日記帳じゃない。
興味ない人間にとっては、予定聞かされても困るだけだ。

それが嫌なら、自サイトなり何なり作って内輪だけで楽しめばいい。

501 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 21:15:57 ID:VM16PNLt
ここまで全て俺の日記


ミゼットタンのオッパイマダァ-?

502 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 21:21:26 ID:eOvyE5K8
ここまで全部闇の書。

お前らは蒐集されたことにまだ気付いてない。

503 名前:69スレ264:2008/12/22(月) 21:25:02 ID:8IBlLPWi
>>205
>>403
題名をできれば付けていただきたいのですが。

504 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 21:26:55 ID:SltCWva7
>>501
おまw流石にそれはw
せめてはやてのバックに着く代わりにヴォルケンズの体を要求する三提督くらいにしとけよ
そうすればミゼット×ザフィーラも可能だし

505 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 21:39:23 ID:fFTY1uDB
>>498
少しネタを考えてみた。
クロノがユーノを掘るネタしか浮かばなくて、凹んだ。

506 名前:アルカディア ◆vyCuygcBYc :2008/12/22(月) 21:59:26 ID:4SJYMQho
>>503
大変失礼致しました。投下というより小ネタのつもりでしたので、題名をすっかり忘れていました。
「星霜夜話」でお願い致します。ジャンル分類はお任せします。
それでは、お手数をお掛けしますが宜しくお願い致します。

507 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 22:03:21 ID:PofPqy92
陵辱マダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン


508 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 22:22:44 ID:0dVAlzV4
>>501
瞬間的に若返る覆面の戦士ですね

509 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 22:46:00 ID:p+Af15a8
なぜかタキシード仮面が頭に浮かんだ。
あのバラどうやって刺さってるのやら

510 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 23:00:12 ID:4ydjgCSI
>>491
>>495
どちらとも…すごく…見たいです

511 名前:サイヒ:2008/12/22(月) 23:21:47 ID:QoQih28p
エロは色々書いてるからもうちょっとバトルに付き合ってね。
というわけ次世代話五話。

以下注意書き。

・「8 years after」の続編となります。そちらを読んでいないとさっぱり分かりません。
・本編終了二十年後。原作キャラの年齢はキニシナイ!!
・結婚してる人とか子供作ってる人がいっぱい。
・オリキャラの登場率が余裕で原作キャラをオーバー。
・くたばったはずの人が生きてます。
・SSXと戦闘機人の就職先が違います。
・全十四話予定。全編通して非エロ。

512 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/22(月) 23:22:29 ID:evxzVnbp
寧ろキャロルーによるエリオ性奴調教with触手をだな

513 名前:あの日見上げた空へ:2008/12/22(月) 23:22:45 ID:QoQih28p
 戦局がバラスの思い描いた通りに進んだのは、最初の数時間だけだった。
 当初は予想以上に順調だった本局の制圧も、クロノ・ハラオウン自らが最前線に立って以降、ぴたりと
進撃が止まってしまった。無理押ししたところに反撃を食らってこちらに被害が出ている始末である。
 地上でも現体制側は奇襲の混乱から徐々に立ち直りつつあり、進撃速度が鈍っている。
 さらに、バラスの思惑を超えて暴走する部下が出始めていた。

「レインの部隊はまだ殺傷設定を解除しているのか?」
「はい、こちらの制止を完全に無視しています。それどころか影響を受けて、他にも殺傷設定を解除する
部隊が数隊出ています」

 レイン・ガルロン。「皆殺しのレイン」という呼び名の通り、犯罪者に対して殺傷設定を解除すること
に何の躊躇も持たない男であり、同時に極めて強力な魔導師でもある男。
 犯罪者に対して微塵も容赦を見せない男であり、数年前にテロリスト組織四十七人が立て篭もるビルに
一人で突入しほぼ全員を殺害して無傷で出てきた事など、未だに悪い意味で語り草となっている。
 功績よりも罰がはるかに多い男で、管理局が人手不足でなかったらとっくに免職されていただろう。
 どの部隊に行っても持て余されていたところをバラスが拾い上げ、クーデターに際しては戦闘能力と経
験を買って部隊を一つ任せたのだが、檻から出された餓虎のように片っ端から元同僚達を殺しまくってい
る。

「もう一度制止の通告を出しますか?」
「いや、逆だ。全部隊に殺傷設定解除の許可を出せ」

 バラスの発した命令に、オペレーターだけでなくブリッジの全員がこちらを向いた。全員の表情に迷い
がある。

「次元航行部隊が戻ってくるまでが勝負の全てだ。戦線の遅れを取り戻すにはそれしかない」

 百万回行おうとしょせん訓練は訓練。模擬戦では優秀な戦績を修めた者が、実戦で掠り傷を負ったり同
僚が戦死しただけで動転して使い物にならなくなるのはよくあること。こちらが殺傷設定を解除すればそ
れだけで怯む部隊は出てくるはずだ。

「いいか諸君。ここで管理局の手ぬるい方針を変えなければ犯罪者は増加していき、遠からず管理局シス
テムは崩壊する。そうなれば、新暦以前の次元世界同士の戦争すら起こる戦乱の時代に逆戻りだ」

 強張った顔をしているクルー一人一人に眼を合わせていきながらバラスは静かな、しかし志を込めた言
葉で語っていく。

「今ここで、我々が変えるしかないのだ。犠牲は、全て必要な犠牲だ。そして我々の企てが失敗した瞬間
に、無駄な犠牲となる。始めてしまった以上、我々は断じて敗北してはならないのだ」

 バラスの激に、全員が眼に決意の色を宿らせて頷く。

(しかしこれでも地上本部陥落が間に合わなければ…………その時は、これを使うしかない)

 バラスの座っている指揮官席に設置されたボタン。指紋認識システムにより艦長にしか押すことが許さ
れていない、主砲の発射スイッチ。
 戦艦ヴァンガードの主砲を地上本部に撃ち込む。バラスの考えている最終手段がそれだった。
 撃ったが最後、地上本部どころかグラナガンの五分の一は余波で吹き飛ぶ。試算ではじき出された予想
死者数が読み上げられた時、その場にいた者達は皆青ざめた顔になったものだ。
 それでも、いざとなればためらわず実行するだけの覚悟をバラスは決めていた。

(罪は全て、わしが背負えばいいだけだ)

 管理局中興の英雄などと呼ばれたいと、バラスは一度たりとも思っていない。大量虐殺者の悪人と歴史
に記されてもいい。
 ただ自分は、この先百年でいいから犯罪が少ない世界の礎を作りたいだけだ。
 そのためには、ここでどれだけ大量の血を流すことも厭わない。

514 名前:あの日見上げた空へ:2008/12/22(月) 23:25:00 ID:QoQih28p
(……レジアス、お前も戦闘機人計画を認めた時、こんな気持ちだったのか?)

 二十年前非業に倒れた友に、バラスは心の中で問いかける。
 答えは無い。代わりにバラスの耳に聞こえてきたのは、オペレーターの怒鳴り声だった。

「東南東から敵数二! フェイト・T・ハラオウン執務官とその使い魔です!」
「特に魔導師を集中させることはない。バリアを突破されそうな大魔法を使いそうな時だけ、全力で阻止
しろ。Sランク魔導師だろうが、ヴァンガードの前ではハエのようなものだ」

 モニターに写った天高くそびえる地上本部をバラスはにらみつける。
 あと一歩、手を伸ばせば届くところまで、勝利は来ているのだ。



          ※



「砲撃来ます!」

 オペレーターが叫ぶより早く、艦全体に激震が走った。
 ブリッジにいる何人かが席から転がり落ちる。はやても提督席から落ちかけたがなんとか踏ん張った。

「損害は!?」
「軽微! しかしバリアの出力下がってます。もう三発……いえ、二発食らえば……」
「ルキノ、回避運動これまでいじょうに気張ってや」
「了解! もう一発も当てさせません!」

 ロングアーチ時代と異なり艦の舵を握る役についている古参の部下は、元気の良い返事をする。しかし
ブリッジ全体を覆っているのは緊迫と焦燥感だった。
 ミッドチルダでクーデター勃発の報を受け任務先から急行したはやて率いる艦隊が遭遇したのは、クー
デター派の戦艦による問答無用の攻撃だった。
 相手の数はこちらの半分より少し多いぐらい。まともな戦闘をやれば二時間とかからず殲滅させられる
が、はやては部下の艦に攻撃を許可せず回避防御に専念するよう厳命を下した。
 数隻だけでもいいから突破させミッドチルダへ到達させようと手を講じているのだが、相手はいざとなっ
たら戦艦をぶつけてでも止めるという意思をはっきり見せているため、思うに任せない。

「シグナムとアギトは?」
「敵艦に突入後、連絡がありません。…………あっ、ヴィータ二佐とリィン三尉が別の敵艦への侵入に成
功したそうです」
「よしっ」

 撃沈策を取らない以上、魔導師が相手の艦に乗り込んで制圧していくという気の遠くなるぐらい時間が
かかる方法しかない。あと半日はかかってしまう。そして他の次元世界に赴いている艦隊が戻ってくるに
は、さらに時間が必要だった。

515 名前:あの日見上げた空へ:2008/12/22(月) 23:25:44 ID:QoQih28p
「八神提督、やはり我々も攻撃すべきです!」

 副艦長の進言に、はやては努めて冷静な声で答えた。

「あかん。攻撃は威嚇射撃のみ。それ以上は絶対に不許可」
「目の前の相手に手加減している間に本局が落とされたら本末転倒じゃないですか!」

 そんなことはがなり立てられなくても分かっている。それでも、ここで本格的な砲撃戦を始めようもの
なら、死者の数は百や二百ではすまないことになるのは明白だった。

(どんな素晴らしい未来の設計図引こうが、実際に組み立てるのは人なんや。その人を犠牲にして、なに
が理想の管理局の姿や……!)

 犠牲を強いるような手段を部下に取らせるバラスのやり口に激しい怒りを覚えると共に、管理局員同士
での殺し合いなど絶対にはやては許容するつもりはなかった。

「どんな凶悪犯罪者相手でも、私達は絶対に殺傷設定を解除せえへん。それと同じや」
「ですが!」
「信じるんや。本局にも地上にも、エースとストライカーが何人もおる。私達が到着するまでの間、一日
ぐらいやったら絶対に持ちこたえてくれる」

 半分は、自分に言い聞かせているようなものだった。
 第一報以降、連絡は入らない。向こうの様子は全く把握出来ておらず、ただ相当に大規模だということ
しか分からない。
 かけがえのない家族も大切な友人もすでに死んでいるのではないかという不安が襲ってくる。
 顔も知らない造反者達の生死などどうなろうがいいから、一刻も早く駆けつけたい。何度も浮かんでく
る思いを振り切り、ひたすらはやては死人を出さずに突破する方法を模索し続けた。

(信じてるで、なのはちゃん、フェイトちゃん、クロノ君。どれだけえらいことになってても、絶対なん
とかしてくれるって)

 祈りにも似た思いを浮かべるはやてに、今度はオペレーターが怒鳴った。

「緊急入電! 犯罪者収容所がクーデター派の一味と思しき相手の襲撃を受けているそうです!」
「どこの収容所!?」

 オペレーターが読み上げた名前を聞いた瞬間、はやては思わず冷静さをかなぐり捨て椅子を蹴飛ばす勢
いで立ち上がってしまった。

「そんな……あそこにはあの男が……!!」

516 名前:あの日見上げた空へ:2008/12/22(月) 23:26:25 ID:QoQih28p
          ※



 重たい音を立てて、正面の大扉が上がっていく。
 この牢獄に収容されて二十年目だが、スカリエッティが眼にするのは二回目の光景だった。看守や面会
者なら、別の小扉から入ってくる。
 一回目は自分が収獄された時だった。ならば二回目は、自分が出される時以外にはあり得まい。

(…………さて、いったい何が始まるのかな。私の罪状が死刑に変更され、執行でもしにきたかね)

 自分に訪れるかもしれない死の危険すら淡々と考えるスカリエッティだったが、扉が開ききるのをまた
ずして飛び込んできた人影を眼にした時には、明晰な頭脳は一瞬停止してしまった。

「ドクター!!」

 走り寄ってくるのはスカリエッティと同じく投獄され、二十年近く顔を合わせていない長女だった。

「ご無事でしたか!? ああ……こんなにおやつれになって……」
「……ウーノ、君はどうやって……」

 数ヶ月ぶりに発した声はかすれており、自分のものとは思えなかった。
 いつもの落ち着き払った物腰を完全に放棄し、泣きじゃくりながらスカリエッティに抱きついているウー
ノは問いに答えてくれない。
 仕方なく、ウーノに続いて入ってきた人物にスカリエッティは問いかけた。

「それで、君は誰だね?」

 その人物は顔を仮面で隠していた。バリアジャケットの胸元が僅かだがふくらんでおり、女性であると
いうことはわかる。両手にトンファーのような特徴的なデバイスを持っていた。

「あなた達の救出に来た者です」

 冷えているというよりも機械的な口調で、女性は分かりきったことを言った。声の高さからして、まだ
少女と呼んでいい年齢らしい。

「私は助けてくれと誰かに言った覚えは無いんだが。君の所属、もしくは主人は誰なんだ」
「その質問に答える権利を私は有しておりません。ですが、私の主人にあなた達の救出を依頼した、あな
たのご息女の名は答えることは出来ます」
「私の娘……か。クアットロが脱獄でもしたのかね」

 やたらと持って回った台詞を耳にしてスカリエッティが思い浮かべたのは、四女の顔だった。
 ウーノの格好は自分と同じ囚人服。スカリエッティよりほんの少しだけ先に救出されていたのは明白で
ある。
 トーレやセッテなら、他人に頼むより早く自分で直接来る。
 更生した娘達なら、そもそも脱獄計画など企てない。
 だが仮面の女は、相変わらずの棒読みのような口調で、スカリエッティが全く予測していなかった名前
を挙げた。

「いえ、二番目のご息女、ドゥーエ様です」

517 名前:あの日見上げた空へ:2008/12/22(月) 23:28:05 ID:QoQih28p
          ※



 男の吐く息が急速に細くなり、身体からも力が失われていく。
 それでも、シャマルは治癒魔法をかけ続けた。
 しかしついに男の眼から光が消える。最後に誰かの名前を呼んで、男は死んだ。

「……ごめんなさい」

 眼を閉じ、力が及ばなかったことをシャマルは謝る。
 しかしほんの数秒で死体の乗ったベッドを離れ、すぐに別の重傷者へと向かった。
 号泣したり心から悔やむ贅沢など、今のシャマルに許されてはいない。
 負傷者が運び込まれて野戦病院となっている地上本部一階ロビーは、血の匂いと負傷者の呻きで溢れて
いた。一段落ついたらシャマルも戦線に向かおうと思っていたが、とてもそんなことが出来ない数の負傷
者の数だった。
 手足が折れている者。頭を割られて血を噴き出しながら運び込まれてくる者。臓物が腹の傷からはみ出
ている者。惨々たる有様が展開されていた。怪我を見慣れているはずの医師ですら、血臭に耐えられず嘔
吐している者がいる。
 しかも、負傷者の大部分は無力な民衆であるのがやるせない。避難時に転んだところを群集に踏みつけ
られたり、流れ弾を食らったりした者達ばかりだ。
 負傷者だらけの光景は、嫌でもシャマルに古代ベルカ時代の戦場を思い出させた。あれから数百年、人
は進歩して生命の尊さを知ったはずなのに、同じことが繰り返されている。
 次の重傷者は女性で、両足の腿と肩に傷を負っていた。一つ一つは致命傷ではない。しかし血を失いす
ぎており、顔色は青白く瞳が焦点を結んでいない。

「とにかく意識だけは強く持って。眠ったら、あなたは死んでしまうわ」

 シャマルの声にも、女性はのろのろと頷いただけだった。
 とにかく血を止めなければいけない。腿の傷は塞げるが、同時に肩も治すのは無理である。もう一人、
治癒魔法の使い手がいる。

「誰か一人こっちに来てください!」

 近くにいた職員の一人が駆け寄ってくる。そばまで来てからようやく、それがギンガとカルタスの娘、
ルカであることにシャマルは気づいた。

「ルカちゃん大丈夫? 無理はしないで休んでいていいわよ」

 思わずシャマルがそう言ってしまったほど、間近で見たルカの顔は病人のように蒼白だった。傷口に当
てた魔力光も弱々しく、明らかに魔力が枯渇寸前まできている。
 だがルカは魔法を止めぬまま、ゆっくりと首を振った。

「シャマルお姉ちゃん言ってたよね。治癒魔法の使いすぎで死んだ人はいないから、怪我人にはありった
け使ってあげなさいって。だから私、気絶するまでやるよ」

 ルカは家族の中では例外的にひ弱な娘だった。とにかく気が弱くて自分の意思をはっきり出すことが少
なく、母親がシューティングアーツを教えようとしても人を殴ったら相手もこっちも痛いからと嫌がり、
魔法も同様の理由で治癒や転移など完全に戦闘と縁の無いものしか覚えようとしない。
 それでもいざという時の芯の強さはやはりギンガの娘で、血は繋がらないとはいえはやての孫だった。
 戦況がどうなっているかは分からない。心配してもどうにもなりはしない。
 ただ今の自分がやるべきことは、無心になって失われていようとしている命をこの世に引きとめ続ける
だけだ。
 傷が塞がる。女性はふらふらしながらも、なんとか意識は保っていた。

518 名前:あの日見上げた空へ:2008/12/22(月) 23:30:38 ID:QoQih28p
「水や食事はとってもいいですけど、動き回るのと眠るのは絶対に駄目です。それさえしなければ、あな
たは生き延びられます」
「……ありがとう……ございました……ううっ」

 女性が顔を覆って涙を流す。助かったことへの嬉し涙なのか、亡くした誰かを思い出しての悲しみの涙
なのか。
 一度だけ肩を抱きしめてあげ、シャマルとルカは次の患者へと向かった。



          ※



 味方の最後の魔導師が袈裟懸けに切り伏せられた。
 敵にデバイスを突きつけられるより早く、レヴィアは手を頭上に上げて抵抗する意思の無いことを示す。

(これはもう、どうしようもないわね……)

 友人達からは逃げ足だけは速いと評されるが、走るのが速いのではなく逃げる機会を掴むのが上手なだ
けである。
 そして今回は、機会も何もなかった。
 敵の部隊が見えた途端、大薙刀型のデバイスを構えた一人が眼にも止まらぬ速度で突出してきたかと思
うと、こちらの部隊の魔導師二人があっという間に切り倒された。
 敵の魔導師は、実戦に縁が無いレヴィアでも知っている男だった。
 レイン・ガルロン。陸士隊に属するSランク魔導師。性格はともかく、戦闘能力については誰もが認め
ざるを得ない実力を有している男である。
 戦闘能力皆無なレヴィアでは、逃げることすら無理な相手だった。
 レヴィアと同じ部隊所属で戦闘能力を持たない局員が、次々にバインドで縛られては転がされていく。
自分の前にもレインが立つが、何を思ったのかレヴィアの顔をしげしげと見つめた。
 気圧されそうになりながらも、レヴィアも逆ににらみ返す。噂から獰猛な殺人に快楽を覚える類の男を
想像していたのだが、顔はむしろ優男の部類だった。ただ、局員を切った時も今も表情にほとんど動きが
なく、細い眼の奥に泥のような重く暗い光があった。

「お前、レジアス・ゲイズの孫娘だな?」

 黙っていると、いきなり頬を張り飛ばされた。目の前に火花が飛ぶが、なんとか踏ん張って倒れるのだ
けはこらえた。

「とっとと答えろ。殺すぞ」

 チンピラ同然の台詞だが、実際に目の前で殺人を犯した男が言うと迫力が段違いだった。
 乾いた喉になんとか唾を送り込んで、レヴィアは答える。

「……はい、私は故レジアス・ゲイズの孫、レヴィア・ゲイズです」
「バラス提督はゲイズ中将とは盟友だった。この義挙が成功すれば、ゲイズ中将が思い描いていた政策を
ほとんどそのまま実施する予定だ。それに故中将の孫としてお前も加わることを提督は望んでいる」
「……つまりそれは」
「今ここで、我々に与しろと言っているのだ」

 クーデター勃発と首謀者の名前を聞いた時に、レヴィアが思い出した幼い時の記憶が再び甦る。
 物心ついた頃から祖父の命日の度に家を訪れ、遺影の前で涙を流し辛いことも多いだろうがしっかり生
きなさいと頭を撫でてくれた人。
 その優しい人の名前が、バラスだった。
 心が揺れる。
 バラスはクロノと意見が合わず対立することが多かったため、ハラオウン家に恩を受けた自分が接触す
るのはまずいだろうと判断して連絡すら取らなかったが、幼き日の手の暖かさはずっと覚えている。
 おまけに子供の時から願っていた祖父の夢を叶えるという悲願への近道が、目の前にある。
 理想と信念が、頭の中で激しくぶつかり合う。
 レヴィアは眼を閉じて頭の回転を全て止め、最初に心に思い浮かんだことを口にした。

519 名前:あの日見上げた空へ:2008/12/22(月) 23:33:09 ID:QoQih28p
「あなた達は殺傷設定を解除して局員を殺しています。、民衆にも被害が確実に出ていますよね。バラス提
督やあなた達にはそれについてどう思っていますか」
「しかたのない犠牲だ」

 レインは微塵も逡巡せずに言い切った。

「変革に犠牲はつきものだと、あらゆる世界の歴史が示している。そしてお前達が今の体制を信じている
のと同じぐらい、俺達は自分の信念が正しいと信じている。だから何度でも言おう。しかたのない犠牲だ
と」

 言葉とは裏腹にレインの口調になんとしてもやりとげなければ熱気はなく、教えられた題目を読み上げ
ているような気がした。
 それでも、どこか淀みを抱えた暗い瞳に、迷いの色は全く見えない。きっとバラスに直接訊ねても、答
え方は別であれ「しかたのない犠牲」と言うだろう。
 だからレヴィアも、何の躊躇もなく迷いを振り切ることができた。

「だったら、私は死んでもあなた達の仲間にはなりません」
「ほう、なぜだ」
「きっと祖父も、レジアス・ゲイズも同じことを言ったんでしょう。これは管理局の未来のためにしかた
のないことだって。……しかたがないって言って、最高評議会の言いなりになって、戦闘機人を作って、
親友を見殺しにして、最後にはスカリエッティに背かれて死んだんです」

 祖父の事跡は、幼い頃から追い続けた。
 オーリスやはやてに訊ねて、祖父のやっていたことは裏の裏まで全て知っている。
 子供の頃に想像の中で思っていた陸の大英雄レジアスと、実際にレジアスが犯した罪との差に衝撃を受
け、本気で寝込んだことすらある。
 そして、全てを知った上でレヴィアは自分が取るべき道を決めた。

「レジアス・ゲイズは英雄だったかもしれません。けど、最後は全部間違えていたんです。……そうやっ
て祖父が間違えた姿を知ってるのに、私まで同じことやってしまったら、いったいあの世でどんな顔して
祖父に会えばいいんですか! だから私は、絶対にしかたがないなんて言葉でごまかしたりしません!」

 心の中の全てを叫び切って息を乱すレヴィア。
 しかしレインは冷たい眼をしたまま表情一つ変えず、口元に冷笑を浮かべただけだった。

「偽善者のハラオウンに育てられただけのことはあるな。ずいぶんときれいなだけの言葉を並べる」
「偽善でけっこうです。私は出来ない理由ばかりを挙げて安直で乱暴な方法に走る現実主義者より、無理
だと分かりきってても方法を探し続ける偽善者でありたいですから」

 ハラオウンの名を出した時、一瞬レインの顔に憎悪が走った気がした。しかしそれは一瞬にして拭った
ように消え、また無表情に戻る。

「後方に連れて行け。後で人質ぐらいには使えるかもしれん」

 レインと他の部下達は走り去っていった。
 一人残された女性の部下だけが、レヴィアを背中から小突いて歩かせる。

(逃げられるチャンスね)

 両手にバインドをかけられているだけで、身体のほとんどは自由である。運動神経皆無な自分が逃げ切
れるかどうかかなり微妙なところだが、レインの様子からして逃げても殺されるということは無さそうだ。
やってみる価値はある。
 それに、できることならバラスとは顔を合わせたくない。
 三つ始めたら走り出し、そばのビルに逃げ込むとレヴィアは決めた。後ろの相手に気取られないように
して大きく息を吸う。

520 名前:あの日見上げた空へ:2008/12/22(月) 23:34:33 ID:QoQih28p
(一つ……二つ……みっ!?)

 まさに走り出そうとした瞬間、膝裏を蹴り飛ばされて前につんのめった。
 受身が取れずレヴィアはもろに頭をアスファルトに打ちつけてしまう。平手打ちをされた時の数倍の衝
撃に、目の前が一瞬真っ暗になった。

「ずいぶん威勢のいいこと言ってくれたじゃないの。レヴィアのくせに」

 護送の女が、いやらしい笑みを浮かべてレヴィアの身体を踏みつける。
 レインにばかり気を取られていて思い出せなかった。この女は昔レヴィアをいじめていた一人で、士官
学校で再会してからも何かと絡んできた女だ。

「あなた昔から気に食わなかったのよ。犯罪者の孫の分際で偉そうな態度して、すぐにハラオウンや八神
の後ろに隠れて。…………ずっと、こうしてやりたかったわ」

 醜悪に歪んだ唇から、残酷な言葉が飛び出す。

「殺傷設定、解除」

 わざとらしく区切りながら、女はデバイスに命じる。駆動音一つしなかったが、デバイスから撃たれる
弾が人を傷つけうる物にとなったことを、レヴィアははっきり理解した。
 魔力光が集束されたデバイスの先端が額に突きつけられる。
 死が、文字通り目の前にある。恐怖で思わず涙が浮かびかけた。

「あはは、いい気味ね! 昔みたいに土下座したら許してあげてもいいわよ?」

 この上なく楽しそうに高笑いする女性。
 それを見て、逆にレヴィアは涙をこらえて思い切りにらみつけた。
 ここでこんな馬鹿に屈して泣いたが最後、自分はハラオウン家に預けられる前の弱くて卑屈に謝ってい
る自分に戻って死んでしまう。
 あの世でレジアスに会っても恥ずかしいことがないよう、精一杯胸を張って死んでやる。
 レヴィアが怖がらないのを見て、女は舌打ちした。

「ほんと、最後の最後まで生意気な女……!」

 発射音が路地に鳴り響いた。
 頭を打ち抜かれても痛くないんだな、とレヴィアはただ思った。
 死んだというのに、やけに意識は明確だった。けれどもうすぐかき消すように、この世からレヴィア・
ゲイズの意思は無くなるのだろう。
 せめて、消えるまでの間をなにもかも覚えていようと思った。
 女の顔も、ビルの間も、空の色も、はっきり見えている。
 いつまでも見えている。

(…………死んで……いない?)

 唐突にレヴィアが理解した瞬間、女の眼がぐるりと反転して白くなり、棒切れのように倒れた。
 事態が全く読み込めないレヴィアの耳に、遠くから聞こえる戦闘音に混じってバラバラという騒音が近
づいてくる。
 すぐにヘリが一機、空から舞い降りてきた。

521 名前:あの日見上げた空へ:2008/12/22(月) 23:35:24 ID:QoQih28p
「おいお嬢ちゃん生きてるか!? だったら早く乗れ!」

 ヘリから身を乗り出して怒鳴っているのは、元機動六課のスナイパーの人だった。手にはライフル型の
デバイスを携えている。

「…………助かった、の?」

 この人が空から狙撃してくれたおかげで生きていられたのだとようやく理解した瞬間、全身の力が一気
に抜けた。
 この場を友人どもに見られなくてよかったと思いながら、レヴィアは手を差し出した。

「すいません。手を引っぱってください。腰が、抜けました」



          ※



 道端に放置されていた負傷者を担ぎこんでいたヴァイスが、最後の一人と一緒にヘリへ飛び込む。

「おっしゃ全員乗せたぞアルト、出せ!」
「後ろの人達、しっかりつかまってて!」

 急速にアルトはヘリを離陸させる。衝撃はかなり少なかったはずだが、後ろでごろごろと人の転がる音
がする。ちらりと振り向けば、腰を抜かしていた少女がひっくり返っていた。
 しかし速度を落としてやる暇はない。ぼやぼやしていて敵の魔導師に見つかりでもすれば、図体がでか
くてヴァイスの狙撃以外に攻撃方法が無いヘリなどいい的だ。
 ビルにぶつからないぎりぎりの速度でアルトはビルの谷間を縫って飛ぶ。

「ヘリの操縦上手くなったな。もう俺より上だろ」
「機動六課を出てからずっと操縦桿握りっぱなしですから」
「俺はずっと撃ってばっかりだったよ。な、ストームレイダー」

 愛機に語りかけるヴァイスの様子に動揺は無い。妹を誤射したというトラウマは、完全に克服しきった
らしい。
 レーダーだけでなく目視も使ってアルトが周囲の状況を把握していると、眼下の道路を特徴的なオレン
ジと青の頭が走っているのが見えた。
 束の間、ティアナと呼ぼうか奥さんと呼ぼうか考えたが、呼び慣れた方にした。

「ヴァイス三尉、ティアナとスバルが近くにいますが、援護に回りますか?」
「やばそうな状況なのか?」
「今は特に戦闘状態じゃないみたいですけど……」
「ならいい。あいつの性格知ってんだろうが。行ったら眉吊り上げて怒鳴られるぜ。私は大丈夫だから他
に回ってくださいってな」
「変わってないんですね、ティアナ」
「ああ、機動六課時代から何も変わってない、ひたすら頑固でまっすぐな奴だよ。……それにな」

 ふっと、シニカルにヴァイスは笑った。

「旦那としちゃ悔しいが、今日は俺より息の合った相棒が隣にいるんだ。心配する必要は、どこにも無ぇ
よ」

522 名前:あの日見上げた空へ:2008/12/22(月) 23:36:20 ID:QoQih28p
          ※



「ほんと、子供の時に覚えたことは忘れないものね」
「何のこと?」
「あんたとの連携よ」

 隣を走るスバルにティアナは言った。
 機動六課解散から職場がばらばらになった。スバルとは時たま同じ任務につくことはあったが、そんな
ことは一年に一回あるか無いかだった。
 それでもスバルが何を考えどう動こうとしているか、自分がどう動けばいいかが目配せ一つで伝わる。

「当然だよ。だって、あたしとティアは相性抜群だもん!」
「……何恥ずかしいこと堂々と言ってるのよ」
「あー、ティアってば照れてる。顔赤いよ」
「うっさい!」

 本当に昔から何一つ変わらない相棒である。

「さてスバル、あたしはここら辺の部隊を……」
「スバルさん! ティアナさん!」

 懐かしい声に、二人は振り向く。空を飛んでくるのは、見知った白竜だった。背には、かつての機動六
課フォワード陣であるエリオとキャロ、それに二人の娘であるエリーが乗っている。
 それだけではない。向こうの通りからも走り寄ってくる数人の姿があった。
 先頭を駆けるのは色合いの異なる二種類の紫髪の女性。一人は足にローラーブーツを履いており、もう
一人は背後に三匹の召喚蟲を従えている。少し遅れて、同じ色の髪をした少年がついてくる。ギンガとルー
テシア、それにスバルの甥であるタイガだった。
 ルーテシアに付き従う三匹はガリューに似ているが、甲殻の色と首に巻いた布の色が違う。話に聞くガ
リューの息子達だろう。

「モンディアル家にナカジマ家、ほぼ勢ぞろいね」
「あたし達もいるッスよ」

 上空から舞い降りてきたのは、ライディングボードに乗ったウェンディとディエチだった。

「聖王教会が増援に来たの?」
「それがなんか上の方が揉めてるみたいで、全然騎士団が出動しないんでこっそり出てきたんッスよ。あ
たしとセインは平の修道士だから、後でお説教の一つも食らえばすむッスよ」

 気楽そうに言うウェンディだったが、そんな簡単にいくわけがない。事件後、最悪聖王教会からの放逐
もありかねない。
 そしてそのことをきっとウェンディも分かっている。

523 名前:あの日見上げた空へ:2008/12/22(月) 23:37:25 ID:QoQih28p
「……ウェンディ、もし聖王教会追い出されることになったら、あたしの家に来なさい。セインと一緒に
一生面倒見てあげるわ」
「毎日夕飯にビールつけてもらっていいッスか?」
「ワインでもOKよ」

 一瞬場の空気が和らぐが、交友を深めているような状況ではなかった。
 相変わらずクーデター派の進攻は止まらず、この瞬間にも地上本部が陥落していてもおかしくはないぐ
らい状況は予断を許さない。
 それでも、ティアナには確信があった。

(この事件、絶対に勝てるわ)

 楽観的な性格とは程遠い。
 今回の事件はまだまだ予断を許すものではなく、全滅の危機に陥ってもおかしくない。
 それでも、ティアナは確信していた。
 かつてのJS事件を彷彿とさせる今回の騒乱。しかしJS事件を解決した機動六課メンバーのほとんど
に加えて、敵対していた戦闘機人に、新しい力であるエリーとタイガ、ガリューの息子達がいる。
 これで、負けるはずがない。

「時間が惜しいです。ティアさん指示をください」
「あんたの方が階級は上でしょエリオ」
「機動六課フォワード陣のリーダーはティアさんですよ」

 冗談ではなく真顔で言うエリオ。
 大きく頷いたティアナは、矢継ぎ早に指示を出した。

「集まったばっかりだけど、固まってても意味が無いわ。分けるわよ。……エリオ、キャロ」

 呼ばれた二人が一歩前に出る。

「あんた達二人は一緒にフリードで飛び回って、命令出てない部隊をエリオの一佐権限で片っ端からまと
めて行きなさい。集結地点はここ」

 デバイスに表示させた地図の一点を指差す。

「ルーテシアは、先にエリオ達が集まる周辺の敵を一掃して防衛ライン引く準備を」
「ティアさんは?」
「私とギンガさん、それにちびっ子はこっちで同じことやるわ。ウェンディとディエチは遊撃。やばそう
なところ見つけて援護に回って。……それでスバル、あんたには一番大事なことやってもらうわ」
「ヴァンガードに突っ込むとか?」
「飛べないあんたにそんなこと頼むわけないでしょ」

 地図の上を指でなぞって、地上本部を中心とした円をティアナは描いた。ティアナとエリオが防衛ライ
ンを引く場所も、その上に入っている。

524 名前:あの日見上げた空へ:2008/12/22(月) 23:39:03 ID:QoQih28p
「ここに防衛ラインを築くという命令、通信がまだ途切れてるから戦ってる部隊全部に走って伝えてきて。
どこから出た命令かって訊かれたら、クロノ少将からだって言えばいいわ」
「ちょっと待ってティアさん、クロノ少将からそんな命令出てるんですか?」
「出てません。私の独断です」
「そんなことして平気なんですか!?」
「平気なわけないでしょ。事件が無事終っても私は越権行為で執務官クビね、確実に」
「そんな……どうしてティアナさんそんな無茶なことを……」
「エリー、私はね、執務官をやりたいから時空管理局にいるわけじゃないの。一人でも多く人を助けたい
からこの仕事をしているの」

 ここまで管理局側が苦戦を強いられている大きな原因の一つは、通信撹乱により全体的な指示を出す者
がおらず、各部隊の連携が取れていないのがだ。
 せめて一箇所に固まることさえできれば、あと丸一日は防げるとティアナは確信していた。
 それだけの時間防ぎきれば必ず次元航行部隊が帰ってくる。
 部隊が各個撃破されて被害が増えるのが防げるなら、自分の職などいくらでも賭けてやる。

「だからってティアナさん一人が全部被るなんて」
「ほら、そんな議論は後回し! とっとと全員言われた通りの配置につきなさい!」

 怒鳴りつけるとエリオ達が弾かれたように駆け出す。
 背を向けるスバルにだけ、ティアナは呼び止める。

「……分かってるかもしれないけど、あんたが一番危険なところよ。だけど絶対に死ぬんじゃないわよ」

 スバルの役目は一見ただの伝令のようでいて、実際は戦闘地域をいくつも突っ切って駆け回らなければ
ならない。エリオと二人で組ませるかとも考えたが、防衛線構築のためには部隊指揮能力のあるエリオが
必須だった。

「絶対に大丈夫だよ。JS事件の時も平気だったんだから、今回も大丈夫。……そうだ。これが終わった
らさ、元機動六課の全員で集まってパーティーしよ」
「……別にいいけど、あんたそれって」
「絶対約束だから。……だからティアも絶対死んで破ったりしたら駄目だよ!」

 子供のように手を振り、すばるは駆け去っていった。

「……ギンガさん、ああいう戦闘中に終わった後の約束するのって」
「……俗に言う死亡フラグね」
「よけいに心配になったじゃない馬鹿スバル」
「大丈夫よ。どんなこと言おうが平気な顔して危ないところから帰ってくるのがスバルなんだから」
「そうですね」

 ギンガと二人で頷き合い、ティアナ達も部隊をかき集めに走った。



          ※



 トウヤ、クロード、ロウの三人は、グラナガン西部市街地で戦闘を繰り広げていた。
 戦況不利と見たのか、一人が背を向け飛び去ろうとする。

「逃がすなトウヤ!」
「分かってら!」

 トウヤはバックステップで対峙している相手から大きく距離を取る。
 魔法を組み上げると同時にカートリッジをロード。手の上にサッカーボール大の鉄球が浮かび上がる。
 地に置いた鉄球を渾身の力でトウヤは蹴り飛ばした。

525 名前:あの日見上げた空へ:2008/12/22(月) 23:42:51 ID:QoQih28p
「フリーゲンシュゥゥト!!」

 姉に教わった魔法は、みごとに敵の後頭部に直撃。一発で撃墜に成功した。
 素早く元の敵へと構えなおすトウヤだったが、すでにクロードに倒されていた。ほとんど同時にロウも
自分の相手を倒し手早くバインドで縛り上げている。
 これでこの近辺にいたクーデター派は三人で一掃したはずだ。
 深呼吸を繰り返すトウヤに、ロウが近寄ってくる。

『怪我、今のうちに治すから』
「ここだけ塞いでくれ」

 多少深く切られた肩をトウヤは差し出す。手を動かすのに支障は無いが、血が流れ続けている。
 傷が暖かな魔力で包まれ塞がっていくのを感じながら、トウヤは懐から煙草を出してくわえた。

「おい、次はどっちに行きゃいいんだクロード」
「少し待て、戦闘状況を整理する。……君も僕の指示ばっかり聞いてないで少しは自分で考えろ」
「俺は見える範囲以上の戦場は考えないことにしてんだよ。頭が混乱する」

 その代わり、二つの眼で見える局地戦では何一つとして見落とさない自信がある。
 それに目の前以外のことを考えれば、嫌でも父親と義兄のことに頭が向いてしまう。
 八神家とナカジマ家の家族の大半は自分で自分を守れる力はあるが、ゲンヤとカルタスの二人はただの
人間である。そしてゲンヤは、杖が無いと歩行に支障をきたす年齢になっている。無事避難所までたどり
つけたかも分からない。
 数週間前、父と出かけた時に勧められて買った煙草と、義兄からもらったジッポをトウヤは見つめた。

(頼むから、これが形見分けなんてことにはなってくれるなよ、親父にカルタスのおっちゃん)

 今すぐ二人の下へ駆けつけたい誘惑を煙草を深く喫うことで断ち切り顔を上げると、クロードはデバイ
スに表示させた市街地図ではなく、天空を鋭い瞳でにらんでいた。
 燃え立つような赤眼が捉えているのは、空中に浮かぶ巨大な船。騒乱を巻き起こした張本人が居座る戦
艦ヴァンガード。
 ふっと笑って、トウヤは煙草を踏み消した。
 自分もクロードも、性格と戦闘技術が攻撃系だ。引いて守るより、突っ込んでぶちのめす方が性に合っ
ている。

「行こうぜ。ヴァンガードに」
『こんな大乱戦、首謀者をどうにかしないと終わりっこないよ』

 二人の言葉にも、クロードは動こうとしない。
 シューティングアーツとベルカ式剣法の差はあれど、並んで研鑽し合った仲である。戦闘に限れば、ク
ロードが何を考えているかトウヤは相当なところまで読める。
 クロードが迷っているのは、ヴァンガードに向かうか市内の防備に回るか、どちらにすべきかだろう。

「市民を守るか大将首獲りに行くか。どっちが正しいかなんてこの状況で分かるかよ。お前が行きたい方
に行きゃいい。俺とこいつは、逃げ出すっていう以外ならどこにだってついていくぜ」
「……そうだな。迷っているのが一番の無駄だ」

 束の間二人を見つめ、はっきりとクロードは頷いた。
 普段は無駄に長々と考え込むことが多いクロードも、戦闘となれば決断は素早い。

「ジョワイユーズ、届くかどうか分からないが、後方に一報入れておけ。これより我ら三名、ヴァンガー
ド攻撃隊に加わる」
「ゲイルキャリバー、飛んでる二人に絶対遅れるんじゃないぞ」
『ガーディアンファング、策敵を最大範囲で』
『『『承知!!』』』

 いつもより高揚したデバイスの声が消えるより早く、塵風だけを残して三人は突き進んだ。


          続く

526 名前:サイヒ:2008/12/22(月) 23:44:54 ID:QoQih28p
以上です。
バラスとクーデター派は幕末の過激派志士をモデルにしてます。
俺がなんとかしなきゃ国が潰れるとか本気で考えちゃう人とそれに同調した仲間は、
正義を根拠になんだってやれてしまうんだろうなというイメージ。


設定上はティアナ、シャッハにも子供いたり。
武器で分かるとおり、ドクターとしゃべってるのがシャッハの養女だという裏設定。
さすがにこいつらの描写まで入れてる暇はなかったんで名前すら出せませんでしたが。
どうやってもCランクにしかなれない正真正銘の凡骨ティーダ・グランセニック君はどっかで出したい。


次回の次世代話は、俺が書くたぶん最初で最後のエリキャロメイン。
エリオとキャロは大好きだけど本気で書きにくいから困る。

527 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 00:00:05 ID:Z20w/xK+
>>491
俺もずっとエリキャロルーの泥沼見たいと思ってたぞ同士よ!

>>サイヒ氏
GJ!!
ティアナの死亡フラグにワロタ
うん、全員無事に生きて帰って来ると信じてるぞ
そして細かいことですが、>>524で「すばる」と平仮名表記になってる所がありました。
エリキャロの話も楽しみにしてます。
更にルーも割り込ませて(ry

528 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 08:47:31 ID:SRIc6qZx
大昔にここに投下されたなのはがフェイトを鞭でしばくって話
副題とかわかる人いますか
保管wikiは作品数多すぎてさがせなかった
3、4、5スレ目ぐらいだったと思う

529 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 10:00:55 ID:VAm56zz5
>>433
遅レスですがGJ!
ディエチママ…そしてチンク姉…
しかしローヴェンはスカリエッティとは性格こそ似てるが、言葉遣いはかなり過激だな
それだけにクアットロとの外道カップルさがより際立ってるが

>>526
GJ!
駄目だ、どうしてもガリューの子供三人見てると豆腐だか何かをエッフェル塔(?)に買いに行ったガリューパパンが思い浮かぶ
ティアナが言ってた通り、現在揃ったメンバーなら最強すぎる
自分もエリキャロ大好きなので次週に期待+エリルーも別にあると蝶期待

530 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 12:13:35 ID:Bz8HBLDJ
>>527
エリキャロがルーを巡って喧嘩を繰り広げる話ならプロットはあるんだがそれでいいかな?

531 名前:サイヒ:2008/12/23(火) 13:23:49 ID:/RnAWcHR
>保管庫司書の皆様

保管する際に以下の誤字訂正お願いします。

>>116の最後の方
「クロノに関してはやたらと独占浴が強いのだ」
の「独占浴」を「独占欲」。
>>524の中程
「子供のように手を振り、すばるは駆け去っていった」
の「すばる」を「スバル」に。


>>131>>527
誤字指摘ありがとうございます。

532 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 14:26:04 ID:RDsoSfJb
>>464
暖かで甘いお話GJでした!! ベタ?何を仰るんですか、このなシチュは王道の直球ド真ん中って言うじゃないっすか。
>>474
GJです。こちらも甘々ですね〜、アリサご愁傷様・・・・・
後半のほうも楽しみに待っております!!


533 名前:タピオカ:2008/12/23(火) 15:27:43 ID:MDPmt2ax
ちわ、お邪魔しますね。
着々と話の内容に酸味やえぐみが滲み始めてるのが書いてる自分自身で分かるりますなぁ。

本編であり得ないシーンを思いつく→その再現のためにギミックや小道具をたくさん盛り込む
と話を作るんですが、小道具の説明がスマートじゃないのが原因で香ばしくなり始めるのです。
話を構築する経験と技術がないからやるせないね!


注意事項
・戦闘ものでドカーン!バキーン!ガシャーン!とやりたいのです
・エロいはずがない
・本編終了して約1年ぐらいたってます
・敵組織オリジナルキャラクターで纏めちゃったので大量に厨二病が香るオリジナルのキャラクターをお届けします
・あまつさえオリジナルのロストロギアまで拵える始末なので、酷い捏造をお約束します


534 名前:Name〜君の名は〜:2008/12/23(火) 15:29:18 ID:MDPmt2ax
第三話「光の卵」


「美味しかったなぁ」
「美味しかったです」
「食べたなぁ」
「食べたです」
「お腹ぽんぽんで、こうやってまったりしてるとええ気分や」
「まったくです」

ベッドの上のシワひとつなく整えられたシーツに寝転がり、はやては満足げにお腹を撫でた。
いや、お腹を撫でたというのは正しくない。
正確には寝転がるはやてのお腹の上に寝転がる、妖精サイズのリインの髪を撫でたのだ。

豪華客船「ティターン」の第4階層から第7階層は客室となっており、はやて一行はスウィートでのチェックインとなっている。
ミニスウィートから始まるこの船の客室等級で言えば下から2番目なのだが、それでも驚くほど質が良い。
ベルカの設計を汲む客船が多いミッドチルダ北部に船籍を置くという事は、つまり格調高い事に繋がると聞くが噂に違いないサービスだ。

「あかん、このままやと寝てまいそうや。早くお風呂入らんと」
「牛さんになっちゃうですね」
「そうや、牛さんになってしまう。急いで入るで、ダッシュやリイン」

お腹の上の祝福の風へと危急を告げる声色の特別捜査官だが、その肉体はリイン撫でる指以外ピクリとも動かないし動く気もない。
まだまだ食後の満腹にだらだらとしていたいのである。

「うーん、でも任務を完全にこなしたわけじゃないのに、こんなにとろけててええんやろか…」

そんな幸福な怠惰を貪っていれば、ふと夢から醒めたかのようにはやてが呟く。

はやて、シャマル、ザフィーラ、リインフォースUがミッドチルダ北部に赴いたのは1週間前だ。
目的はとあるロストロギアの確保。
はやてのレアスキルが捜査に便利であるわけではなく、シャマルのサポート能力が役立つわけでなく、ザフィーラの強さが必要な任務と言うわけではなかった。
今回確認されたそのロストロギアは危険性も重要性も低いどころか皆無と言っていい。
ミッドチルダを救った英雄がする仕事とは言えないものだ。

しかし、はやてがこの捜査を強く希望した理由は、件のロストロギアの生まれた発端に依る。

まずは、例えばの話をしよう。

大切な人が殺される。それも、なんら殺される理由もなくである。
それが天災であればきっと悲しみに明け暮れるだけかもしれない。事故ならば涙しかないかもしれない。

しかし、しかしである。
例えば殺した者に明確な人格があれば。
例えば殺した者が大量に、無差別な被害を与えているのならば。
あらゆる感情の中にきっと「憎しみ」が芽を出すだろう。

さて、闇の書と呼ばれたロストロギアがあった。
その名は侮蔑と怨嗟が込められた呪詛と変わりなく、本来の名は誕生の意味が改変されていく過程で見失った。
このロストロギアが数多の世界に残した結果は全て同じ。すなわち破壊の一言でしかない。
まだ闇の書が太古の遺産ではなかった頃、その破壊から星の数ほどの不幸が生まれた。

闇の書により絶望と悲哀に溺れる者たち。
さて、そんな者たちに憤怒を覚える者がいて、不思議だっただろうか?

反撃を。
敵討を。
復讐を。

535 名前:Name〜君の名は〜:2008/12/23(火) 15:31:15 ID:MDPmt2ax
見つけ出す。探し出す。突き止める。絶対に逃がさない。
星の数ほどの不幸のうち、一握りの人間が立ちあがりその身を復讐に捧げる。
野放しにできない。これ以上の不幸を食い止めるために。愛した者たちの痛みを返す。あってはならない存在を消去する。
闇の書が暴虐の限りを尽くせば尽くすほど、復讐者たちは増えていった。

だが潜伏期間が長く、しかも神出鬼没の闇の書だ。
かなりの者は闇の書を発見する事叶わず寿命で逝く事になる。
その無念を受け継いで、どうにか幾人もの戦士たちが闇の書へ至る事もあった。
しかしその末路と言えば、あるいはヴォルケンリッターに、あるいは融合を果たした闇の書のマスターに返り討ちにされるという悲惨なもの。

いや、それなら復讐を果たせずも生き残れた者もいて、運がよかったかもしれない。

―――あるいは、再びの悪夢を、闇の書に蠢く闇に今度こそ呑み込まれる者さえいたのだから。

無理だ。辿りつけない。倒れていく。死んでいく。失っていく。
闇の書の破壊により不幸になった者たちの復讐は、届かない。

志半ばで老いや病で死んでいく復讐者たちは、だから己たちの復讐を、人ではなく闇の書と同じモノに託そうと思い立つ。

こうして「光の卵」と呼ばれる事になるロストロギアが造り出される。

その機能は優秀な死者のリンカーコアの収集および、そのリンカーコアを利用した魔法生命体の製造。
そして生み出された魔法生命体は闇の書を攻撃するプログラムを組み込まれる事になる。

死ぬとリンカーコアは消滅する。
これは魔法と呼ばれる技術の確立以前にすでに当然である知識であった。
それゆえ、ヴォルケンリッターは優秀な「養分」を殺さぬ事に苦慮し続けてきた。

だが、しかしである。
死が確定した瞬間と、リンカーコアが消滅するまでのわずかな時間。
その観測さえ困難な刹那に、光の卵は手を突っ込んだ。
超々広域に網を張り、急速に輝きを揺らげるリンカーコアの感知と共に、それを捕縛する。
そして、ヴォルケンリッター、あるいは管制人格の魔力を察知しては捕らえたリンカーコアを攻撃手段として卵から孵す。

無論、時代を経たリンカーコアをみすみす闇の書に取り込ませぬような処置もしてあったが…結局これは無駄に終わった。
光の卵から生まれた魔法生命体が有するリンカーコアには、バグプログラムが組まれたウィルスが仕込まれている。
このウィルスが仕込まれたリンカーコアを闇の書が取り込めば、闇の書にバグを発生させ、機能に不全を起こす事を期待されたものだ。
が、すでに壊れた魔道書。
その狂った機能に、さらなる腐敗が混ざろうとも結局は無意味であったという。

このようなプロセスを踏む、光の卵なるロストロギアが大量に造られてはかなりの次元世界にバラまかれているのだ。
いつの日か、いつかの時代に死んだ誰かの優秀なリンカーコアが復讐を成就してくれる事を祈って。

―――結局、あのクリスマスの日より、光の卵と呼ばれるロストロギアは存在の意味を失う。

だがロストロギアはロストロギア。
死ぬ者からリンカーコアを収集するといった、現在では再現不可能な技術を用いられたこれは貴重と言えば貴重だ。
さらに中に死者のリンカーコアが保存された物もあるのだからあるいは研究材料に、あるいは好事家のコレクションになり得る。

かくして、もはや稼動する事がなくなった光の卵を管理局で悪用に漕ぎ付けられぬように保管した方が良いと話が纏まっているのだが、いかんせん全てを回収するには数が多く、広域にばらまかれすぎてた。
見つかった物だけを回収しようという半端な態度なのだが、こんな姿勢の管理局の中に張りきって取り組む女がいた。

最後の夜天の王、八神はやてである。

闇の書の最後の主としてけじめのつもりでこのロストロギア回収に強い申請や希望をしていたのだ。

536 名前:Name〜君の名は〜:2008/12/23(火) 15:32:13 ID:MDPmt2ax
こうして10日前に、違法なルートでいくつかの光の卵がミッドチルダ北部に流れるのを管理局が補足した折、エージェントとしてはやてが急行した。
そのサポートがリインフォースU、シャマル、ザフィーラと言う構成だ。
強すぎる戦力だろうと見積もられ、しかもミッドチルダ北部にははやてに友好的な教会関係者が多々いるのだから豪華すぎると難色を示された。別の任務に従事しろ、と言われたわけである。

しかしはやては譲らなかった。故、捜査に期限を決められたわけである。

実際に捜査を始めると鬼のようなスピ−ドで取り締まりが完了した。
大多数の光の卵を確保し、取引しようとしていた人間を検挙。シスター・シャッハの手伝いもあったが、決められた期限の半分も使っていなかった。
だがしかし、いかんせん早過ぎたのかもしれない。
事故でもあったか、それとも他の理由かは知らないが本来あるはずだった光の卵のいくつかが現場に届いておらず、それきり行方を見失う。

結局、残りの期限ではそれを追うのは不可能と判断。
軽く落ち込んでいたはやてに、シャマルが船旅で気晴らししながら帰りましょうと提案。
煮え切らず、ギリギリまで粘る気ではあったが、冷静に計算も出来たはやては豪華客船「ティターン」に乗船する事になる。

「…今回は仕方無かったです。時間制限があったですから」
「せやけどなぁ……ほんまに残りの光の卵、どこに行ったのやら…」
「でも、光の卵が悪用される事なんてあるですか?」
「んー、可能性の問題で言えば、やろうと思えばできるかな。例えば光の卵の中にあったリンカーコアを利用して、魔力光で人を識別するシステムを騙したり、光の卵の中にあったリンカーコアを魔力炉として使ったり。死んだ人の一部やから、やったらあかん事やねんで」
「光の卵というより、その中にあるリンカーコアの方が重要なんですね」
「せやね。ま、それでもあんまり破壊活動につながる悪用方法はないと思うし、大それたことになりはせえへんと思うねんけど…」
「光の卵が孵って、中から出てきた人がはやてちゃんを襲って来る事はないですか?」
「はは、むしろ…私を襲ってくれてもええから、光の卵が孵る事態が起こって欲しいなぁ…」

寝転がった姿勢、天井を見上げながらはやては天井以外の何かを淋しげに見つめていた。
光の卵が孵るという事は、初代リインフォースが存在しているという事…
はやてにとっては、たまらなく素晴らしい事。
それに遅まきながら気づいたか、リインもしんみりと黙り込んでしまっている。

「あ、そうや、そう言えばリインとシャマルが見た誰かに似てる人ってどんな人なん?」

あの後、インビジブルマンはシャマルの夕食の誘いを断った。
なんでも、この船の次の寄港で人と会う約束があり、仕事が絡んでいるから連絡を密にしなければならないらしい。
この豪華客船に乗る人間の中でも、もちろん仕事に関係する者も多いから仕方ないが、一目見たかったとはやては思う。

「優しい人だったですよ。金髪で赤い目で、とってもフェイトさんに似てたです」
「へー、フェイトちゃんを男の人にしてダンディにした感じ?」
「ちょっぴり年齢は高いですけど、グレアムさんみたいじゃなかったですよ。とってもにこにこしてるです」
「うーん、あと2日あるし、また船の中探検して探してみよか」
「はいです」

結局、はやてとリインはこのまま眠ってしまう。
ザフィーラがかけてくれたシーツにくるまり、お風呂は朝一番に浸かる事になる。

537 名前:Name〜君の名は〜:2008/12/23(火) 15:33:08 ID:MDPmt2ax


「金毘羅船々 追風に帆かけて シュラシュシュシュ♪」
「まわれば 四国は 讃州 那珂の郡♪」

手をつないで歌いながら前を歩くリイン、はやて。それに続くシャマルとザフィーラ。
品良く調度品が並ぶ通路で異国の歌を口ずさみながら仲良く歩く姿など、いかにも貴族風貌な老夫婦が振り返って微笑んでしまうほど和やかなものだ。

この船が出航して4日目の朝である。
無事、ミッドチルダ西部と北部をつなぎ合わせる港の経由を済ませ、積み下ろしと新たな乗客の受け入れを滞りなく終わらせては順調に海路をなぞって行く。

「四国? それじゃあ、その歌は日本の歌なの、はやてちゃん?」
「そう、金毘羅って神様の歌。この金毘羅さんはなぁ、航海の守り神やねん」
「ですから縁起の良い歌ですよ」

第97管理外世界の一大陸のおける神将の一角が、遠いミッドチルダの地にいるはやてたちにご利益をもたらしてくれるかどうか怪しいものだ。

「……ていうか、「ティターン」って言う船の名前がなぁ」

しみじみと、窓の外の波を眺めながらはやてが溜息。
寄港の際、港の向こうに久々に陸を見たが、それももう彼方である。空と海の清々しい青が目に染みる。

ティターン―――第97管理外世界において、氷山にぶつかって沈没してしまった豪華客船の代名詞と言える船とその語源である。
ミッドチルダやベルカと第97管理外世界で、神話のあらすじや神々の名前にいくつか共通したところがあるのは入局間もない時代は驚いていたものだが、こんなところでこんな名前が船の名前として出会うとは思いもよらなかった。

「さ、到着や。お風呂にのんびり浸かり過ぎたけど、良い感じに人が減ってるかな」
「向こうの窓際の席に行きましょう!」

さて、いささか朝食には遅れている時刻。
夜天の主と祝福の風の背中流しっこで進軍に滞りが生じたが、船の最上階にあるレストランにようやく攻撃を仕掛ける時機を掴んだ。

シャマルが人数分のチケットをスタッフに差し出せば、「ティターン」に7つあるレストランの中でも、もっとも高い位置での食事だ。
レストランと銘打たれてはいるが、どちらかと言えばカフェのような軽い明るさのある店だった。
洒落た内装とテーブルや椅子の眩しい白色が相俟って、朝の海を眺めるのに相応しい雰囲気だ。

だからそんな店内で、くたびれた金髪を見つけるのはそう難しい事ではなかった。

「インビジブルマンさん」

窓際の二人席で、コーヒーすすりながらぼんやりと水平線を見つめる赤い目がシャマルの声に振り向く。
そのにこやかな顔がまずは、「おぉ」と口を開き、瞳が忙しなくはやて、リイン、シャマル、ザフィーラを映す。

「おはようございます、シャマルさん、リインフォースUさん。そして、八神はやてさんですね? はじめまして、インビジブルマンと申します。ご勇名は常々うかがっておりまして―――あなたのファンです」
「はじめまして、八神はやてです。シャマルとリインから話は聞いてましたが…」

立ち上がりざま、生真面目に腰を折ってから差し出された手を握り返し、はやては思う。
確かに似ている。
フェイトと重なる。
そっくりさん、という似方ではなく、まるで……親子だ。

シャマルやリインと同じように、やはり驚きを隠せずにはやてもインビジブルマンの顔をじぃっと見入ってしまっていた。
その視線に照れたような顔したインビジブルマンは、次にザフィーラに手を差し出した。
ポーカーフェイスだが、やはりザフィーラも驚いているのがはやてたちには分かる。
無骨な掌がインビジブルマンの痩せた手を握った。

「ザフィーラだ」
「ザフィーラさんでしたか、あの蒼い…………………………え゛」

538 名前:Name〜君の名は〜:2008/12/23(火) 15:33:55 ID:MDPmt2ax
名を繰り返せばインビジブルマンの脳裏によぎる蒼い狼の姿。
しかし眼前には筋骨隆々のいぶし銀である。
一寸、固まって、しかしそこから思い出すものがあった。

「そうか、使い魔さんなのですか?」
「……守護獣だ」
「え、あ、す、すみません」

むっつりと腕を組んで、近場の席へとザフィーラが座り込む。
インビジブルマンは慌てた様子だが、無論機嫌を悪くしたというわけではない。
4人席ではなく6人席のひとつに座ったのがその証明で、一緒に食事をしようと誘う意図があったのだろう。

「獣の状態で乗船してもよかったから、実際、その状態で乗船したんですけどね…」
「子供たちがたっくさん集まってきたですからやめちゃったんです」
「これから朝食なんですけど…食べ終わっちゃってます?」
「いやぁ、僕、朝は食べない生活をしていまして…」
「あ、それ駄目ですよ、朝に食べて元気な一日にせんと。と、言う訳で、どうです、御一緒に?」
「ふふ、それではお言葉に甘えちゃいましょう」

はやての手招きに、インビジブルマンがいそいそと自分のカップを手に着席。
ザフィーラが肉を使った重い料理を頼んだ以外は、他の全員がサラダや海産物、パンといった軽食を注文、しばしの間、談笑の時間が出来るのだった。

「いやぁ…リインとシャマルから話は聞いてたんですけど、インビジブルマンさん…似てますね?」
「それは、フェイト・T・ハラオウンさんにでしょうか?」
「ええ、親子みたいや」
「僕も、ミッドチルダの南方出身なんです。もしかすると、どこかで血がつながってるかもしれませんね」

冗談交じりに話すインビジブルマンだが、
そんな理由では根拠として薄弱すぎると思わざるを得ない。
さて、もう少し突っ込んで話をしていいものだろうか、と予想以上にフェイトに似た顔立ちで驚きに染まった脳を懸命に働かす。
が、先に唇を開いたのはインビジブルマンだった。

「八神さんは管理外世界の出身でしたよね?」
「第97管理外世界なんですけど…流石にご存じないでしょう?」
「スイス、ドイツ…イタリア、フランス…」
「!」
「私が知っているわけではないのですが、医者をやっている知人がスイスという国の出身なんですよ。いくらかお話を聞いた事があります。ただ、八神、と言うのは…今挙げた国の名前ではないですよね?」
「世界地図の隅っこの方にある島国出身なんです、日本、って国なんです」
「日本…日本……日本……えぇっと、確か―――そう、確か、かぐや姫と言うお話の?」
「イ、インビンジブルマンさん、いろいろ知ってるんですね」
「知人の医者と言うのが、昔話が好きなやつでして」
「はやてちゃんも文学少女でしたもんね」
「いやぁ、昔は本読むぐらいしかできひんんかたったから…」
「あ、と、は……そうそう、魚が美味いと聞きました。スシ…だったかな。セキトウガエシ、ホンテガエシ…?」
「あとは、スキヤキバンザイ、フジヤマゲイシャ、ですよ」
「こらこらリイン、嘘言ったらあかんよ」
「あれ、これ前にはやてちゃんに教えてもらったですよ?」
「お、一番手間かかりそうなザフィーラの料理が先に来たなぁ」
「ごまかさないでください!」

笑いが起きる。

さて、しばしの談笑で時間をつぶし、料理がいくつか運ばれてきたころ合いだ。
決して主よりも先に手をつけようとしないザフィーラの横に座る、みんなの勧めで先にサンドウィッチを頬張るリインの横に座る、インビジブルマンの前へとパスタの皿がテーブルに配膳されれば、何かが震える音。

「おや…ちょっと失礼しますね」

539 名前:Name〜君の名は〜:2008/12/23(火) 15:34:39 ID:MDPmt2ax
インビジブルマンからである。
内ポケットから携帯端末を取り出せば、席を立って少し離れてから耳にあてた。

「はい、もしもし…あ、準備が整いました? そうですか、はい、分りました、すぐに向かいます、はい」

見えない通話相手へとインビジブルマンが数回頭を下げて返事をすれば、すぐに切る。
そしてテーブルへ申し訳なさそうに戻ってくれば、

「スミマセン、僕、これからビジネスの話をしに行かなければならなくなりまして…」
「まぁ、それは仕方ないですね…」
「リインさん、僕の分のパスタ、食べますか?」
「え、食べてから行かないですか?」
「う〜ん、相手方は偉い人ですから、僕みたいな下っ端は早く行かなくちゃ駄目なんですよ」
「そうですか…」
「よければおやつの時間当たりにでも、一緒にお茶を飲みませんか? そう難しい話をするわけではありませんので、昼過ぎには商談も終わっていると思います」
「はい、喜んで。展望ラウンジなんかで落ち合うのはどうでしょう?」
「いいですね、それでは失礼しますね」

日溜まりのように笑んではインビジブルマンがいそいそとレストランを後にする。
痩せた背中を見送れば、はやての料理がやっとやっと来た。
それに手もつけず、料理の湯気の向こう、インビジブルマンが去って行ったのを見つめる視線を固定したまま。

「……」
「はやてちゃん、食べないんですか?」
「ん、いや、ちょっと…」

何拍か考え込むような仕草をしてから、はやてが思いついたようにポケットに手を入れる。
取り出すのは携帯端末。すぐに番号を打ち込んで、おそらくはミッドチルダに戻って来ているはずの執務官へ連絡を取ろうとした。
コールを待つ間、ザフィーラ、シャマル、リインの視線も料理ではなくはやてに集まる。
やがてコールが途切れ、聞きなれた親友の声。

「もしもし、フェイトちゃん? ちょっと聞きたい事があるんや。インビジブルマンって名前の人間が、今私たちの乗ってる船に―――」





540 名前:タピオカ:2008/12/23(火) 15:35:46 ID:MDPmt2ax
お邪魔しました!

541 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 16:53:15 ID:9RX5Gng8
GJ!!です。
いやぁ、過去は消せない、誤魔化せないって感じの伏線がw
光の卵に取り込まれた人間が復活するなら、相対した事ないような圧倒的な怨念でヴォルケンと夜天の書を
狩りに来るんだろうなぁ。しかも複数個あるなら軍団にもなりそうだ。
管理局が闇の書事件の事を秘匿してるのもさらに憎悪を煽るだろうし。

542 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 17:29:30 ID:5bxMuB2E
>>540
GJです。

はやてが活き活きしてますね。
クリスマスも近い時期にアインス姉さん絡みになりそうで
この後もきたいしてます。

543 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 20:27:54 ID:UOO+H772
今回は、とりあえずあんまし問題なく終われそうですねこのスレ

544 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 20:42:22 ID:FX6/HkyW
それ死亡フラグー!!

545 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 20:44:48 ID:3mFZqc0W
乙です。
怨霊達も各自の性格の不一致とかで争ってたら面白いかも。

546 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 20:55:59 ID:Z7LomKiH
>>526
GJ!
このメンバーで負けるはずがない!
だからこそ、当然死亡者なしで勝つんだぞ!
エリキャロ夫婦話も楽しみにしてます

547 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 20:56:41 ID:9RX5Gng8
闇の書とヴォルケンだけに復讐したい人たちと、
マスターになる事が既に罪だってマスターごと殺すって考える人たちかw
逆にヴォルケンとはやてはいいが、全てのけじめとして夜天の書を壊させて欲しいって一派も少数派ながらいそう。


548 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 21:28:48 ID:RQyfzbsA
次スレたててきますわ

549 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 21:34:10 ID:RQyfzbsA
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第92話☆
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1230035429/l50


550 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 21:40:11 ID:CgY5K9KO
乙!

ところで、一番相手に尽くすタイプって誰だろな?
男女問わず


551 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 21:43:10 ID:9RX5Gng8
フェイトかな?
スカ博士限定だけどウーノも尽くしそう。

552 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 21:44:30 ID:eeCeagkZ
ヴォルケンの面々も一度ハマるととことん尽くしそうだ

553 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 21:46:37 ID:c+aY4OLH
>>550
種族を問わなければバルディッシュだと思う

554 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 22:01:59 ID:M1CkRp0B
実はシグナムは結婚すると尽くすタイプ

555 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 22:25:45 ID:mFqCNHKy
どこまでも尽くすのはガリュー。間違いなし。

556 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 22:25:55 ID:mkJCMnA4
ユーノは尽くしそう
なのはに「御礼はなんでもします!」と言ってたし
実際なのはのためにリンディさんの支持にも背いていた

女性陣だと……シャマルさんかなぁ?
頼んでもないのに食事の世話までしてくれて……www

557 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 22:26:25 ID:ZEMpLzEd
さて……仕事中毒の連中って、案外相手ができれば尽くしそうだけど。
男ならクロノ、ユーノ。女ならなのはら3人娘のあたり。

558 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 22:42:42 ID:FX6/HkyW
原作から変わってなければクロノは超尽くす

559 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 22:47:55 ID:t+hffow1
みんな尽くすタイプだと思うよ
尽くし方がそれぞれ違うだろうけど

560 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 22:49:41 ID:x/mkshKU
9歳'sとのセックスも可能なのがイスラーム

561 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 23:00:43 ID:9RX5Gng8
性的なアブノーマルなお願いは誰が一番聞いてくれるかな?w

562 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 23:03:35 ID:xL+UJBSm
ヴォルケンは現在進行形ではやてに尽くしてるじゃないか

入局間もないヴォルケンが、はやての知らない所ではやての身の安全を盾に
先輩や上司から性的虐待を受けて必死に耐える鬱な話とか読みたいぜ

563 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 23:05:53 ID:eeCeagkZ
>>561
提督乙

義妹さんやヴォルケンズなら掘らせてもらえそうだぞ

564 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 23:09:02 ID:M1CkRp0B
え、全員に掘られるんですか提督

565 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 23:14:17 ID:1+vIOyTf
六課のメンバーではスバルとヴィータ以外は尽くす系だと思う
スバルは尽くすというより懐くタイプだし、ヴィータは何であいつのために
って感じで躊躇してる間に相手が行動しそう

566 名前:鬼火 ◆RAM/mCfEUE :2008/12/23(火) 23:17:47 ID:t65uTJRu
こちらスネーク。
ミゼット・クローベル統幕議長の私室に潜入した。
大佐、指示をくれ。


567 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 23:28:31 ID:t65uTJRu
どうやら大佐は屍になってしまったらしい。
それはともかく、これよりミッションに入る。


【注意】
・触手
・陵辱
・老女

568 名前:ミゼット婆さんと触手:2008/12/23(火) 23:29:35 ID:t65uTJRu
「い、いいいっ……、ひいいっ……!」
ミゼット・クローベルは身をがくがくと揺らしながら、叫んでいた。
陵辱者の肉槍がミゼットの秘芯を何度も何度もえぐる。
ズンズンズンズンズンズン……
ビッグサイズの赤黒い一物が膣路を繰りかえし往復する。
それはミゼットの小柄な体ごと突き上げ、子宮を上下に揺さぶりたてる。
乾燥し、ほとんど閉じてしまっていたはずの彼女の秘裂は、
陵辱者の肉槍によって、大きく限界までこじあけられていた。
ズンズンズンズンズンズン……
彼のストロークは、規則正しく一定のリズムを持っていた。
緩急をつけられたストロークが打ち込まれるたび、
ミゼットの喉から感極まった嬌声があがる。
それは老女と思えないほど甘い、雌の鳴き声であった。
「あン、あ、はああっ」
とうに枯れ果てたはずの蜜壺から、いつしか溢れだした汁。
それが、ミゼットの皺のよった内腿を濡らしていた。
普段は乾燥して、干からびたようになっている肌は、今や、
汗と、触手の出す液体と、ミゼット自身の雌汁とでぬめっていた。

勿論、ミゼットを攻めたてる触手は1本だけではない。
彼女の胸。老化によって萎縮し、垂れてしまった乳を、
無数の細い触手が労わるように、優しく愛撫していた。
スリスリ、モミモミ、クニュクニュ……
この触手は、百戦錬磨の紳士であった。
快感をミゼットの身体から呼び覚ますように、ゆっくりと乳を揉み解していた。
触手が、狙うのは乳首。
触手を器用に枝分かれさせ、黒豆のようなそれを器用に摘む。
すると、ゾクゾクとした快感がミゼットの背筋を駆けあがっていた。
「こんなはず……くっ……やめ……ああぁ……そんなところ……」

569 名前:ミゼット婆さんと触手:2008/12/23(火) 23:30:30 ID:t65uTJRu
とうに失ってしまったはずの性感帯の目覚め。
突然の陵辱に、思考がまわらなくなっているミゼットだったが、
彼女が感じているソレが、性の悦びなのだとは分かっていた。
信じがたいことであるが、枯れてしまったはずの性欲が還ってきたらしい。

触手はなおもミゼットの裸体を擦りまわす。
普段ならば、もっと激しく攻めるのだが、いかんせん相手はお年を召している。
口から侵入して咽喉を攻めることも憚られる。
故に、触手は、じっくりと確実に仕事を進める。
乾燥して干からびた性欲を優しく、それでいて力強く揺り起こす。
「ああぁ……あ、そこぉ……」
干し柿のようなミゼットの尻たぶが、触手の攻めに、悩ましく揺れた。
――このまま、快楽に身を任せてしまいたい。
老境に入り、もう久しく快楽と言うものから遠ざかっていたミゼットにとって、
その誘惑はあらがい難い魅力をもっていた。
それでも、往年の猛者。
伝説の魔導師としての矜持が、快楽に墜ちることをよしとしない。
「くっ……ふうううぅ……んん……」
乳房からの優しく心地よい刺激と、秘芯からの痺れるような快感に、
奥歯を噛みしめながらミゼットは耐えた。

すると、ふいに触手がその動きを止めた。
乳を揉みしだいていた触手はするりとその身を引いた。
やや張りの戻った乳は、それでも重力には勝てずタラリと虚しく垂れ下がった。
しかし、秘芯に打ち込まれた肉槍は抜かれずにそのまま、
ミゼットの膣内を圧倒的な質量で占領していた。
太い杭を股間に打ち込まれたまま、ミゼットは息をついた。
「ハァハァ……」
それは、最初、単なる小休止かと思われた。
だが、しばらくしても触手は動きを止めたままだった。
「…………………………?」
何故、動かないのか。ミゼットはそっと触手を盗み見た。
大きな大木のような触手の本体は、いまだにその手足たる
触手をうねらせているからして生きていることは間違いない。

570 名前:ミゼット婆さんと触手:2008/12/23(火) 23:31:22 ID:t65uTJRu
何故?
その疑問がミゼットの脳内を駆け巡る。
体は火照り、いまだに熱を保ち続けていた。
秘芯をなおも穿ったまま、それでいてピクリとも動かない
胎内深くまで埋め込まれたままの太い杭の存在感。
それが、ミゼットの心をかき乱していた。
先ほどまでの抵抗感はどこへいってしまったのか、
否、頭ではいけないと分かっている。だが、
――欲しい。
そればかりがミゼットの頭を占めていた。
あれほどの快楽を与えられながら、途中でお預けをくらってしまう。
女にとって、それは生殺しであった。

遂に、老女は疼きに耐えられなくなった。
ミゼットは自ら、腰を動かし始めた。
ぐちゅり、ぐちゅりと、みだらな水音が響く。
自らが出したその恥ずかしい音に、ミゼットは顔を歪ませながらも、
腰を振ることをやめようとはしなかった。
「う……ふうううぅ……んんん……」
はしたない。それは分かっていた。だが、止められなかった。
触手によって目覚めさせられていた女の性がミゼットを支配していた。

触手は、ミゼットの求めを理解していた。
だが、触手は膣内に打ち込んだ杭を動かすことはしなかった。
かわりに、1本の触手をミゼットの菊穴にあてがう。
そして、ぐいっと一気にそれを押しこんだ。
「あひぃっ!」
不浄の穴を深々とえぐられ、ミゼットの枯れ木の枝のような喉から、
思わずうわずった声があがった。
尻穴を犯された次の瞬間。
さらに、前の穴の最奥を擦りあげられる。
「はうっ……ああああぁぁぁ……!」
焦らされ、待ちに待った快感に、ミゼットはたまらず、身を弓なりにのけぞらせた。

後ろの穴から、再び触手がうねりながら、その身を深く、深く滑り込ませる。
菊穴を貫いたそれをズルリと抜くと、今度は前の穴から突き上げを始める。
ザクザクと力強く、前後の穴に打ち込んだ。

571 名前:ミゼット婆さんと触手:2008/12/23(火) 23:32:23 ID:t65uTJRu
貫かれては抜かれ、抜かれては貫かれる。
交互に来る快楽の衝動。
それに合わせて、ミゼットの体は前に後ろにと、躍り上がるように揺れた。
口は、池の中の鯉のようにパクパクと開閉していた。
皺のよった頬は緩み、その顔は喜悦のあまり、今にも蕩けそうだった。

ミゼットの前後の穴が収縮し、触手を絞り上げるようにきつく絞まる。
ドクンと触手が脈打った。一瞬、大きく膨れ上がったかと思うと、
触手の先から、熱い奔流がミゼットの胎内に大量にぶちまけられた。
ドブドブビュルビュルビュル……
身体の芯を焼かれるような感覚、あまりの熱さに、
「ああぁぁ熱いぃぃ……いやぁ、なかが焼ける……私おかしくなっちゃうううううぅぅ」
ミゼットの意識は、一気に頂上まで昇りつめた。
一瞬の硬直ののち、総身をブルブルと震わせながら絶叫をあげた。
「イクっ、イクうううぅぅっ!」
宙をかきむしるように悶え、狂ったように叫び続ける。
白濁した触手液がミゼットの股間からとめどなく溢れ出し、床を白く染め上げる。
触手の男汁は、溜まった床面から湯気が立ち上るほど熱い粘液だった。
ミゼットにしてみれば、子宮内に溶けた鉄を流し込まれたかのような熱さだった。
ミゼットの細い体が、陸に打ち上げられた魚のようにビクビクと跳ねあがる。

老女の絶頂シーン。
それは見るものによっては、滑稽と評されるかもしれない。
それは、骨と皮ばかりの貧相な肉体であった。
人はふつう、熟れた果実を好む。
稀に、まだ熟さぬ果実を敢えて好むものもいる。
だが、枯れて萎んでしまった果実を好むものがいようか?
しかしながら、触手はミゼットの身体を、美しいと感じていた。
確かにムッチリとした肉付きの良い体は好ましい。
だが、この経年を耐えた体もまた素晴らしい。神秘的ですらある。

ミゼットは絶頂を終え、糸の切れた人形の如く、くたりと脱力していた。
垂れた乳が、軒先に干された柿のごとく揺れる。
触手は彼女の秘芯を捉えると、なおも炎の如く燃え立っている肉槍を突きこんだ。
すると、たちまちミゼットは白髪を振り乱し、昂ぶった嬌声をあげる。
背を、首を、胸を、あらゆる箇所を包み込むように巻き取ってあげれば、
彼女は、身をよじりながらむせび泣くように鳴いた。


572 名前:ミゼット婆さんと触手:2008/12/23(火) 23:33:26 ID:t65uTJRu
――おお……悦んで……くれているのか……。
触手は嬉しかった。
彼の望みは唯一つ。
あらゆる女性に奉仕し、彼女達を悦ばせること。
それこそが、彼の存在意義。
彼は、ただその為だけに創られた生命。
彼は、それ以外の生きかたを知らない。

だが、彼はこれで満足してはいなかった。
――まだだ……。

ミゼット・クローベルも、かつては強力な魔導師であった。
どんな激戦からも、必ず勝利を携えて帰ってくる戦女神ミゼット・クローベル。
時空管理局黎明期の功労者として生ける伝説となっているのは伊達ではない。
今で言うなら、さしずめ教導隊の不屈のエース、高町なのはのようなものだ。
だが今では、かつての力強さや溌剌とした快活さは失われ、
専ら茶を飲みながらぼんやりと時を過ごすようになっていた。
それは、自然の理として当然のこと。
火は燃えたならばいつかは燃え尽きる運命なのだ。
しかし……、と触手は考える。
燭台の火は燃え尽きる前にこそ、ひときわ大きく輝くではないか……。
彼はミゼットの垂れ乳を愛しそうに絡め取った。
――まだだ、ミゼット。まだ、そなたは真の快楽を識らぬ……。

享楽の夜は続いた。





その後、ミゼット・クローベル本局統幕議長について、
肌のつやが異様によくなった、突然若返った、などと評判が流れた。
さらにそれは、何か若返りの秘術でも使ったのではないか、と憶測を呼んだ。
リンディ・ハラオウン等、管理局の女性陣がそれとなく聞いたらしいが、
本人は茶を啜りながらニコニコするばかりであったという。



END


573 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 23:34:53 ID:t65uTJRu
無茶だったか……?
ラーメン食ってくるノシ

574 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 23:37:22 ID:9RX5Gng8
GJ!!です。
老人の性はなんか見てはいけないタブーを犯した気がして困るぜwww

575 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 23:40:12 ID:uXn7Vulr
>>572
GJは差し上げられないなあ。
GJが欲しければ玄海師範方式で若返ったミゼットを陵辱するSSを書き上げるんだ!!

576 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 23:50:30 ID:8qlospVL
リンディ提督は聞く必要無いじゃないか?
あれはロスト・ロギアか何かを使っているとし

・・・おっとこんな時間に宅配便の様だ。

577 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 23:55:20 ID:SWPChw/R
こちらはJS通販です。ハラオウン様より>>576様に触手凌辱をお届けに参りました。

578 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/23(火) 23:58:11 ID:KFd97J+L
アッー!


その後、>576の姿を見たものはいない…

579 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 00:02:22 ID:9X4I/kjn
>>突然若返った
幽々白書思い出した

580 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 00:19:56 ID:U68Q8jXY
本気のクアットロとか見てみたいなぁ、遊びが過ぎて大抵は死んでいくし。
初めから全力で潰しにかかるのとか。

581 名前:名無しさん@ピンキー:2008/12/24(水) 00:24:10 ID:yWWG0NHW
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
           O 。
                 , ─ヽ
________    /,/\ヾ\   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|__|__|__|_   __((´∀`\ )< というお話だったのサ
|_|__|__|__ /ノへゝ/'''  )ヽ  \_________
||__|        | | \´-`) / 丿/
|_|_| 从.从从  | \__ ̄ ̄⊂|丿/
|__|| 从人人从. | /\__/::::::|||
|_|_|///ヽヾ\  /   ::::::::::::ゝ/||
────────(~〜ヽ::::::::::::|/        = 完 =

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                   ,.-―っ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                人./ノ_ら~ | ・・・と見せかけて!
           从  iヽ_)//  ∠    再  開 !!!!
          .(:():)ノ:://      \____
          、_):::::://(   (ひ
          )::::/∠Λ てノし)'     ,.-―-、   _
______人/ :/´Д`)::   (     _ノ _ノ^ヾ_) < へヽ\
|__|__|__( (/:∴:::(  .n,.-っ⌒    (  ノlll゚∀゚) .(゚Д゚llソ |
|_|__|_人):/:・:::∵ヽ | )r'        ー'/⌒ ̄ て_)~ ̄__ イ
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|_|_| 从.从从:/ |__|::レ:/      ___/ヽ、_/
|__|| 从人人从 ..|__L_/      .( ヽ     ::|
|_|_|///ヽヾ\ .|_|_     /⌒二L_    |
────────       ー'     >ー--'

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        巛ノi
        ノ ノ                  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     ノ')/ノ_ら      ∧_∧       | いきなり出てくんな!!
      、)/:./、      ( ´Д`)      | ビックリしたぞゴラァ!!!
     )/:./.:.(,. ノ)    `';~"`'~,.       \   ________
     \\:..Y:.(  ・ ''    :,   ,. -―- 、|/
_____ 从\、,. ,; .,、∴';. ・  ( _ノ~ヾ、ヽ
|__|_ _(_:..)ヽ:∴:@)       ノ(゚Д゚ #) )
|_|__|_人):|:・:::∵ヽノ)    (_(⌒ヽ''" `ー'
||__|  (::()ノ∴:・/|::|( \    \ \) )        _
|_|_| 从.从从:/ |__|::|ノ   \  ミ`;^ヾ,)∃        < へヽ\
|__|| 从人人从 ..| /:/ _,,,... -‐'''"~   /ー`⌒ヽ、  (( (゚Д゚llソ |
|_|_|///ヽヾ\ ./:/ _ \        /     /T;)   /~  ̄__ イ
─────── ノ (,    \/__/__,ノ|__`つ  ヽ__/
             ´⌒ソノ`

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||__| 从ヽ-i´ ,_ ,_ 'i-'"_|   / ___ _ _ ___/,イ
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