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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第51話☆

1 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 15:10:07 ID:XQ505j5o
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレです。


『ローカル ルール』
1.リリカルあぷろだ等、他所でのネタを持ち込まないようにしましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をしたほうが無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」…「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶことが出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけてください。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントすることが多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

『注意情報・臨時』(暫定)
 書き込みが反映されないトラブルが発生しています。
 特に、1行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えることがあるそうです。
 投下時はなるべく1レスごとにリロードし、ちゃんと書き込めているかどうか確認をしましょう。

リンクは>>2



2 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 15:11:56 ID:XQ505j5o
『リンク』

【前スレ】
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第50話☆
 ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1202259018/l50

【クロスものはこちらに】
 リリカルなのはクロスSS倉庫
 ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/
 (ここからクロススレの現行スレッドに飛べます)

【書き手さん向け:マナー】
 読みやすいSSを書くために
 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5301/1126975768/

【参考資料】
 ・Nanoha Wiki
  ttp://nanoha.julynet.jp/
 ・アリサだもんっ!
  ttp://homepage3.nifty.com/damenahito2000/
 ・R&R
  ttp://asagi-s.sakura.ne.jp/data_strikers.html
  (キャラの一人称・他人への呼び方がまとめられてます)

☆魔法少女リリカルなのはエロ小説☆スレの保管庫
 ttp://red.ribbon.to/~lyrical/nanoha/index.html  (旧)
 ttp://wiki.livedoor.jp/raisingheartexcelion/d/  (wiki)



3 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 15:15:46 ID:P7Zo1Igj
>>1


4 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 15:42:12 ID:uF6Rrjv0
>>1
乙。前スレ、一週間どころか5日もたなかったね。

5 名前: ◆6BmcNJgox2 :2008/02/10(日) 16:16:13 ID:xHtWIhqb
>>1乙です

前回「みんな大好きユーノくん♥」での感想ありがとうございましたorz
もう鬱ネタはやめたほうが良いと言う意見もありましたが…
とりあえず今回は明るめなノリと言う事で…新スレ立って一番手行きます

・みんなで温泉旅行に行きました。
・男湯ではユーノの裸体の余りの美しさに男達がホモに目覚めます。
・女湯ではなのはの裸体にフェイトが興奮したりはやてが乳揉んだりします。
・でも混浴でなのは×ユーノ要素もあります
・エリオは幸せ過ぎて逆に不幸ですけどやっぱ幸福かな?
・ガチホモエロ&レズエロ&普通エロ
・尻注意
・なのはとユーノの二人以外は結構馬鹿っぽい描写あります。了承下さい。

6 名前:温泉の一夜 1 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/10(日) 16:17:30 ID:xHtWIhqb
元機動六課の面々+クロノ&ユーノで温泉旅行に行く事になった。
そして皆を乗せてバスは『時空温泉』と言うミッドチルダの奥地に存在する温泉宿へ向かっていた。
バスの中では早くも皆でカラオケやったりと大盛り上がり。しかし…
「ハァ…。」
「ハァ…。」
なのはとユーノの二人は元気が無かった。何故ならば…そもそもこの温泉旅行は
なのはとユーノの二人だけで行くはずだったのだ。そして………

「ユーノ君お背中流してあげる〜。」
「ありがとうなのは…。」
大自然に囲まれた混浴露天風呂でなのはとユーノ二人きりで裸になって入浴し、
温まりながら背中を流しあったりと共に風情を楽しみ、その晩も部屋の布団の中で…
「なのは…。」
「アッ! ユーノく…アァ〜…。」
そう交わったりと翠屋のケーキ以上に甘くてラブラブな旅行を楽しむはずだった……。

しかし、何処から情報を仕入れて来たのか、なのはとユーノの計画した温泉旅行計画に
乗じて他の者も「いっその事皆で行こうよ」と言い、こうして皆で温泉旅行に行く事になったのだ。
それがなのはとユーノにとって面白いはずが無い。元々二人きりで行くはずだったと言うのに
何故皆に邪魔されなければならないのか。しかもバスの中でもなのはとユーノは
それぞれ離れた席に座らされていたのである。今なのはの隣にはフェイトが、
ユーノの隣にはクロノが座っている。これは絶対にわざとだ。故意に違いない。
二人の仲を邪魔する何物かの陰謀に違いない。
なのはとユーノは溜息を付きながらそう考えるしか無かった。

「どうしたのなのは! もっと旅行を楽しもうよ!」
「う…うん…フェイトちゃん…。」
なのはの隣に座っているフェイトは妙にテンションが高くて、元気の無いなのはを
元気付けようと色々していた。

「おいどうしたんだフェレットもどき! せっかくの旅行だぞ! 元気出せよ!」
「あ…う…うん…。」
ユーノの隣に座っていたクロノもまた妙にテンションが高くて、元気の無いユーノを
元気付けようと色々していた。

7 名前:温泉の一夜 2 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/10(日) 16:18:34 ID:xHtWIhqb
温泉宿『時空温泉』に到着した後もなのはとユーノは元気が無かった。
本来ならば、二人一緒の部屋に泊るはずだったと言うのに……
男女別々に分かれて泊らされたのである。しかもなのははフェイトやはやて達と一緒の大部屋。
ユーノもクロノやヴァイス達と一緒の大部屋である。これでテンションが失われるのも当然。

「それじゃあ皆で早速温泉に入ろうか〜。」
部屋に荷物を置いて早々、皆で温泉に入る事になった。しかしやはりなのはとユーノの
テンションは低い。他の皆が既に用意が出来た後もまだ部屋に残っていた。
「なのはどうしたの? 早く温泉に入ろうよ。」
「ちょっと待って…直ぐに行くから…。」
なのはは急かすフェイトにそう言って部屋に残り…
「おいどうしたんだ? 早く温泉入ろう。」
「先に行ってて…直ぐに行くから…。」
ユーノもまた急かすクロノにそう言って部屋に残った。
「ハァ…。」
それぞれ部屋に残ったなのはとユーノはそう溜息を付くしか無かった。

「ふ〜良い湯っすねぇ〜。」
「まったくだ…。」
男湯ではクロノやヴァイス、そしてザフィーラ(人型)を初めとする男性陣が
絶賛入浴中であった。
「しっかし…エリオの奴もけしからんな…。あんな良い扱いを受けてたのに嫌がるなんてな…。」
「まったくだ…。」
ヴァイスは気に食わない顔で男湯と女湯の間を遮っていた高い柵を見つめていた。

エリオは男湯にはいなかった。「まだ子供だから」そう言う理由だけで女湯に入って良いと
言う事になり、無理矢理女湯の方に入れさせられたのだ。
「だ…だから…ぼ…僕…やっぱり皆と一緒に…男湯の方に…。」
「エリオの歳ならまだ大丈夫だよ。」
「でも僕は大丈夫じゃありません!」
幾多の若き全裸美女達に囲まれ、エリオの股間は何時大爆発を起こしてもおかしくない位に
怒張してしまっていた。男にとってはこう言うのはある意味夢のシチュエーションであるが…
エリオにとっては迷惑この上無い事だった。逆に恥かしすぎる。

8 名前:温泉の一夜 3 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/10(日) 16:20:07 ID:xHtWIhqb
「エリオ君元気出して?」
「う…うあああ…キャロ…。」
特にキャロなど構わずにエリオに絡んで来るのだ。このままではエリオの理性は崩壊してしまう。
その位にまでエリオは追い詰められていた。もはやエリオのモノは爆発寸前だ。
そしてエリオの精神世界の中でも………
『もういっその事犯っちまえよ。男なら仕方ないって。キャロだって何だかんだで許してくれるさ。』
『いやいやダメだ。こう言う時にこそ自分を抑えなければならない。』
と、悪魔の姿をしたエリオ=本能VS天使の姿をしたエリオ=理性の戦いが繰り広げられていた。

女湯でのエリオの苦しみ等知るよしも無く、男湯ではヴァイスを初めとする男性陣が
エリオを羨み…そして恨んでいた。
「畜生…今頃エリオは美女達に取り囲まれてハーレム状態なんだろうな〜…。」
ヴァイスの脳裏にはフェイトに抱かれたエリオが赤ん坊に戻った様に乳首に吸い付く光景が浮かぶ。
そうして妄想をすればする程…ヴァイスはエリオを羨み…憎んだ。
なお、その他色々なエロ妄想に勤しんでいた男達の中で一人ザフィーラのみは
冷静であったのだが……………
「我は主はやての守護獣…守護獣…守護獣のはずなのに………。」
必死に雑念を取り除こうと故意に冷水を浴びたりしていたのだが…
いくらそうやっても頭の中では……
「ほ〜らザフィーラおいで、体洗うたるよ〜。」
と全裸のはやてが手招きしている光景が消えないのだ。彼も男と言う事か…。

そうして一時して…やっと露天風呂にユーノが姿を現した。
「みんな遅くなってごめ〜ん。」
「おう遅いぞフェレットもどき…ってうぉ…。」
あんまりにも遅いユーノの入浴にクロノは軽く注意しようとしたが…直後に絶句した。
「うぁ…………。」
「ど…どうしたんだい? みんな…。」
クロノだけでは無い。他の皆も思わず絶句していたのだ。しかも頬を赤くして……
これにはユーノも首を傾げるが…ユーノは気付いていなかった…………

ユーノ=スクライアの裸体は余りにも美しかった。
女性と見間違えんばかりの整った美しい顔と緑色の瞳…全ての物を
快く受け入れるかの様な優しい表情…すらりとしたスマートな体型…
スベスベの白い肌…それらと相反するかの様に巨大なモノ………
美しい……もはやこれを美しいと表現しなくて何としようか………
しかも露天風呂と言う大量の湯気が立っている環境がユーノの美を
ますます増幅させていたのだ。男ばかりの男湯なのだから仕方は無いのだが、
最初から前を隠す気等無いかの様に手ぬぐいを肩にかけ、モノをブラブラと揺らしながら
一歩一歩湯船へ歩み寄るユーノの姿は…セクシーで…官能的だった………

9 名前:温泉の一夜 4 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/10(日) 16:21:10 ID:xHtWIhqb
「(な…何で僕は赤くなってるんだ…相手は男…それもフェレットもどきだぞ…。)」
クロノはワケが分からなかった。相手は男だと言うのに…何故こうもユーノの
裸を見るとこうも胸が熱く…頬が赤くなってしまうのか…分からない。
だがこれに似た感情を以前にも感じた事があったのも事実。そう。それは『恋』
恋をした時に感じる…感情に似ていたのだ。しかしそんな事はクロノは認めたくなかった。
彼には既に妻子がいる…それでいて何が悲しくて男に…しかも普段からフェレットもどきと
馬鹿にしている相手に恋をしなければならないのか…。頭ではそう必死に考えて
自身を抑えようとしていたのだが…彼の身体は既に興奮し…勃起していた。
「(そ…そんな…まさか…僕はホモだったのか? そんなの嫌だ…何で…ホモなんかに…。)」
クロノは慌てた。そして彼の理性が必死になって自分を抑えようとするが…
彼の本能がそうさせてくれない。彼の本能は……ユーノを求めていたのだ。

だがそれはクロノだけに留まらない。
「(うそだろ……野郎が…こうまで美しく見えるなんて……俺の頭…どうかなっちまったのか…?)」
ヴァイスもユーノの裸体の美しさに…見惚れてしまっていた。何故こうなってしまうのか…
それは彼にも分からない。しかし…ユーノの美しさに見惚れれば見惚れる程…
彼のモノは怒張して行く…。だがそれはヴァイスだけに留まらず…他の男達も同様であった。

ただ…彼等の名誉の為に言わせて貰うと…決して彼等がホモだったと言うワケでは無い。
ユーノがそれだけ…美しかっただけなのだ。

自分自身の美を全く自覚しないユーノは彼等の興奮に気付く事無く、身体を
洗っていたのであったが……その時の仕草がまた美しく…他の男達を興奮させる。
石鹸を付けた手ぬぐいがユーノの足から顔までを優しく滑って行き…綺麗にして行く。
その美しさと…無防備としか言い様の無いユーノの姿を見ていると……
男達はいてもたってもいられなくなり………

「アッ!!」
露天風呂中にユーノの喘ぐような声が響き渡った。何故ならばクロノがユーノの
大きなモノに咥え付いていたのだ!
「クロノ!? 何をしているんだ! ってアァ!!」
慌てるユーノだが…間髪入れずにクロノの舌がユーノの亀頭をペロリと嘗め、
ユーノはまるで全身に稲妻が走ったかのように悶えた。
「クロノ…何で…何で僕のチ○ポを……そんな…ホモみたいな…あぁぁ!」
「ホモでも良い。ホモらしいやり方で…フェレットもどきを…楽しみたい…。」
「ええ!?」

10 名前:温泉の一夜 5 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/10(日) 16:21:50 ID:xHtWIhqb
ユーノは絶句するしか無かった。既にクロノの本能は理性に勝り…完全に
ユーノの美を貪らんとする…雄になっていたのだ。だがそれだけでは無い。
「うわぁ〜…司書長って中々良いケツしてるじゃありませんか…。」
「うあぁぁ! ヴァイス陸曹!?」
何時の間にかヴァイスがユーノの背後におり…その手でユーノのプリプリした
可愛らしいお尻を撫で回す。さらには尻の割れ目の中にまで手を入れ…
その奥の尻菊にまで指を入れてかき回していたのだ。
「アッ! やめ! やめるんだヴァイス陸曹!」
「やめられません……司書長のケツが……あんまりにも良すぎて……。」
ユーノは頬を赤くして叫ぶが…ヴァイスも頬を赤くしてユーノの尻を弄くり続ける。
そして…もう片方の手で己の怒張したモノに石鹸を塗りたくり………
「悪いのは司書長の方ですよ……司書長がそんなに美しいから……美しいから悪いんです!」
「アッ―――――――――――――――――――!!」
露天風呂中にユーノの喘ぎ声が響き渡った。ヴァイスのモノが……ユーノの尻に掘りこまれたのだ。
「良いっす! 最高っす! 司書長のケツ…最高っすよぉぉぉ!!」
「アッ―――――!! アッ――――――!! アッ―――――――――!!」
ユーノ程では無いにせよ大きく怒張したモノをユーノの尻に深々とねじ込んで…
ヴァイスは激しく腰を動かした。予め塗り付けた石鹸が尻とモノを馴染ませ…
ズボズボと音を立てて抜き差し続けられて行く。
「アッ――――――――――!!」
ユーノは喘ぐしか無かった。その間もクロノはユーノのモノを嘗め回していたし…
その上ザフィーラまで発情(?)してユーノの乳首をペロペロと嘗め始めて来ていたのである。
モノ、尻、乳首の三箇所を同時に攻められ…ユーノには何も出来なかった。

時同じく…女湯でも………
「キャァァァァァァ!! フェイトちゃん! はやてちゃん! やめてぇぇぇぇ!!」
「ん…なのは……可愛い……。」
「なのはちゃんオッパイまたおっきなったとちゃうか?」
こちらもなのはが遅れてやって来た形となっていたのだが…そこでなのはの余りにも
美しすぎる裸体を見たフェイトとはやてが興奮し…抱きついて来たのだ。
フェイトは正面からなのはを抱き…唇を奪ったり…股間を嘗め回したりし…
はやてはなのはの豊満な乳房を揉み解し、乳首を指で摘んだりした。
「二人とも止めて! そんな…そんなレズみたいな…。」
「レズでも良いよ。レズらしいやり方でなのはを抱いてあげるから。」
「私もなのはちゃんのおっきなオッパイ揉めるんならレズなんて喜んでなったるよ。」
「え………。」

11 名前:温泉の一夜 6 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/10(日) 16:22:23 ID:xHtWIhqb
躊躇せずにその様な事を言い張ったフェイトとはやてに……なのはは絶句するしか無かった。
そしてなのはは二人にサンドイッチにされた状態で……身体を弄ばれた。
「あ…あ…嫌ぁ…あっ…。」
「なのは…ちゅっちゅ……なのは…ちゅっちゅ…。」
「なのはちゃんのおっぱい…おっきぃ…好きや…。」
なのはは頬を赤くして喘ぎ…フェイトとはやてもまた頬を赤くしながらなのはを弄んだ。

一方エリオもまた……
「や…エリオく…すご……。」
「ハァハァ…キャロ…んぁ…。」
エリオの精神世界における本能と理性の戦いは本能の勝利に終わった。
そして端から見ればキャロと二人一緒に入浴している様に見えるのだが……
湯の中ではエリオのモノがキャロの股間の中に深々と挿入されていたのだ。
しかし…キャロは全く抵抗しなかった。まるで彼女自身もこうなる事を望んでいたかの様に…
エリオのモノを受け入れていた…。そして二人は静かに抱き合う……
こうして何時までも二人で一つになっていたい……そう願いながら………。
その様はほぼ乱交に近いユーノ達やなのは達のそれとは違い…とても幸せそうだった。

風呂から上がった後…食事をしたりその他色々な事を皆で楽しんで…ついには就寝の時間が来た。
故に皆はおのおのの部屋で布団を敷いて眠りに付いていた。しかし…皆が寝静まった
時間に一人部屋から出る者がいた。それはユーノである。
「ハァ…今日は散々な目にあったよ…。」
ユーノは尻を摩りながら悲しい目で廊下を一人歩いていた。
実はあの後…ヴァイスのみならずクロノ・ザフィーラからも尻を掘られていた。
その時の変な感触が今もユーノの尻には残っていたのだ。それだけじゃない。
さらに全身に石鹸を塗りたくったクロノやヴァイスから…
「汚れてしまった君の身体をキレイにしてあげよう〜。」
と、抱き付かれ、纏わり付かれ…絡みつかれた。
なのはにこういう事されるなら幸せだが…男にこんな事されたって
嬉しくも何とも無い。むしろ嫌だ。
「何でこんな目に遭わなきゃならないんだろう…本当なら…。」
本当ならばなのはとユーノの二人きりの甘い温泉旅行になるはずだった。
だと言うのに何が悲しくてホモ化した男達に輪姦されなければならないのか…
それがユーノには悲しくて悲しくて仕方が無かった……。
「まったくもってそうだよね…ユーノ君…。」
「なのは…。」
そこでふとなのはがユーノの前に現れた。彼女もまたユーノ同様に悲しげな目をしていた。

12 名前:温泉の一夜 7 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/10(日) 16:23:28 ID:xHtWIhqb
「もしかして…なのはも…?」
「うん…私は…フェイトちゃんとはやてちゃんから…。」
なのはとしても悲しい事だった。本当ならば今頃ユーノと部屋で二人きりになって…
布団の中で交わったりしていたのかもしれない。だと言うのに何が悲しくて
フェイト&はやてからレズプレイを受けなければならないのか…それがなのはには悲しくて仕方なかった。
「ハァ…。」
「ハァ…。」
二人は互いに溜息を付き合い、何をするでも無く廊下をトボトボと歩いていたのだが…
そこでたまたま混浴の風呂の近くを通りがかった。
「混浴…か…。」
「ねぇ…ユーノ君…入る?」
「え…。」
なのははユーノの着ていた浴衣の袖を軽く引っ張り…混浴の看板を指差す。
「私達が二人きりなのは今だけだよ。なら…せめて今だけでも…。」
「でももう深夜だよ。」
「時間なんて関係無いよ。今入らなかったら…もう後は無いんだよ。」
なのはは涙目になっていた。今度こそ本来の目的を…なのはとユーノの二人きりで
誰にも邪魔される事無く混浴を楽しみたかったのだ。その気持ちを悟ったユーノは…
勿論優しい笑顔で頷くしか無かった。
「分かった。じゃあ入ろうか?」
「ありがとうユーノ君。」
なのはも…嬉しそうに笑顔を見せた。

なのはとユーノはそれぞれ脱衣所で服を脱ぎ…混浴露天風呂へ入った。
大自然を思わせる木々に囲まれ、自然石を集めて作った湯船に天然の温泉が湧き出た露天風呂。
もう深夜なので電灯は付いていなかったが…月明かりのおかげでそれ程暗くは無かった。
「ユーノ君…。」
「なのは…。」
互いの裸を見て二人は互いに頬を赤くした。露天風呂温泉と言う身も心を開放的にさせる
環境のせいなのか…前々からお互いの裸を見慣れている身であるにも関わらず…
互いの裸が普段よりも何倍も美しく見えた。
「なのは…キレイだね…。」
「ユーノ君だって…。」
二人は頬を赤くして見つめあった。互いに見惚れる余り…前を隠す事さえ忘れて…
「それじゃあ…入ろう?」
露天風呂の湯の中へ二人はゆっくりと浸かった。あの時は双方共にレズプレイ&ホモプレイに
持ち込まれて温泉を楽しむ余裕すら与えられなかったが…今は違う。
二人きりと言う状況と…静寂とした大自然の風景…そして温泉の湯が…
二人の疲れた心を身体を癒していた。

13 名前:温泉の一夜 8 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/10(日) 16:24:24 ID:xHtWIhqb
「温かいね…。」
「うん…温かい…。」
お互い肩まで湯に使った状態で…なのははユーノに軽く寄りかかる。
こうしていると…皆に邪魔された事が嘘の様に…二人は幸せだった。
「やっと…本来あるべき形に戻ったね。」
「うん…。」
なのはとユーノは…互いに唇を軽く触れ合わせた。そして一度湯船から上がり…
互いに床に寝そべる形となった。
「ねぇ…ここで…しても良いのかなぁ…。」
「大丈夫だよ。こんな時間…誰もいないよ。それに…多少汚れたってここなら
直ぐに洗い流せるしね…。」
ユーノは仰向けになったなのはの上に覆い被さる様な形で抱いた。
二人はここで交わるつもりだった。本来ならば…宿の部屋でそうするはずだったが…
今は部屋の中には他にも沢山の人がいて出来るはずがない。
それに…大自然に囲まれた露天風呂の中で…生まれたままの姿で
自然と一体化したナチュラルセックス…実に風情があって素晴らしい事では無いか。
「じゃ…じゃあ…ユーノ君…来て…。」
なのはは少し恥じらいを残しながらも…ゆっくりと自らの脚を開いた。
既に大きく怒張したユーノのモノを受け入れやすい様に…なのはは自らの脚を
M字に開く。少し恥かしい事だけど…ユーノとならそこまで嫌と言う程でも無い事。
「じゃあ…行くよ…なのは…。」
ユーノもまた…己のモノをゆっくりとなのはの大きく開かれた股間へ押し付け………
「アアン!!」
なのはの喘ぎ声が露天風呂中に響き渡った。既に何度も交わっていたなのはとユーノだが…
挿入の瞬間。ユーノのモノがなのはの股間の中へ沈み込む瞬間…どうしても声を上げてしまう位
なのはは感じてしまうのだった。
「なのは…静かにして…。あんまり大きな声を出すと…皆が気付いちゃうかも…。」
「ご…ごめん…ユーノ君…。」
二人は慌て顔かつ小声でそう言いあった。とりあえず誰も気付いてはいないようだ。
ならば…二人は静かに身長にセックスを再開した。

「アッ…アッ…アッ…アッ…アッ…。」
「ンッ…ンッ…ンッ…ンッ…ンッ…。」
二人は静かにかつ…激しく交わりあった。ユーノがズコズコと突けば…それだけなのはも
全身をビクンビクンと突き動かす。
「ハッ…ハッ…ユーノ君…愛してる………。」
「ぼ…僕もだよ…ン……ンッ……。」
互いに腰を動かしながら…抱き合い…唇を触れ合わせる。さらに今度は…
なのはもユーノも舌を絡め合わせて…嘗め合わせていた。

14 名前:温泉の一夜 9 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/10(日) 16:25:20 ID:xHtWIhqb
「ん? ユーノ君…見てよ…。」
「え?」
なのはとユーノはある物に気付いた。それは何時の間にか露天風呂に迷い込んだのだろう。
近くの山に住んでいると思われる野生のイタチのつがいの姿だった。
しかも、そのイタチのつがいはなのはとユーノの様に交尾をしていたのだ。
「おかしいな。今はイタチが発情する時期じゃないんだけど…。」
ユーノは首をかしげた。人間と違い動物は発情期にしか交尾をしない。
そして今はイタチの発情期では無い。では何故イタチのつがいは交尾をしているのだろう。
もしかするならば…なのはとユーノが夢中になって交わる様を見ている内に興奮し…
発情期でも無いのに発情してしまったのだろう。そう解釈するしかあるまい。
「でも…あれを見ていると人間も動物も変わらないんだなって思えてくるよ。」
「なのは…。」
人間は文明を手に入れて以降…徐々に野性から離れて行った。
しかし…その根底にはまだ野性と呼べる物が残っているのでは無いか?
なのははそう言いたかったのである。今こうしてなのはとユーノが交わっているのも
野性の名残。動物が雄雌が交尾をする事によって子孫を残すように…人間も男女が交わって
初めて子孫を残す事が出来る。そう言う意味では…人間も動物も全く変わらない。
「私…ユーノ君の赤ちゃん…産みたいな…。」
なのはは優しい表情で…そう呟いた。
「うん…僕も何時か…欲しいね…僕達二人の子供…。」
ユーノも優しく…頷く。

なのはとユーノの交わりは…なおも続いた。
「アッ…アッ…アッ…アッ…アッ…。」
「ンッ…ンッ…ンッ…ンッ…ンッ…。」
二人は絶え間無く、汗だくになってもなお互いの身体を突き動かし…愛し合った。
まるで獣の様。しかし獣でも良い。今この瞬間だけは…獣らしいやり方で交わりあいたい。
なのはもユーノも…そう考えて…交わり続けている内に…夜は明け、日が昇っていた。

宿を出て、帰りのバスに乗り込んだ後も皆はワイワイガヤガヤと楽しんでいた。
しかし…なのはとユーノの二人だけはすやすやと眠っていた。
夜通し交わり続けて…すっかり疲れてしまったのだろう。
だが二人の表情に後悔は無い。むしろ喜びさえ感じられる。
きっと…二人とも良い夢を見ているに違いなかった。
                     おしまい

15 名前: ◆6BmcNJgox2 :2008/02/10(日) 16:26:34 ID:xHtWIhqb
当初は純粋にユーノの裸体の美にクロノやヴァイスが興奮して…って言うガチホモエロが
メインの予定だったのですが…書きながら色々付け加えていく内になのは×ユーノになっちゃいました。
でもこっちの方が良かったかな?

後…鬱はやめたほうが良いと言われましたが…実は
「まさかのユーノ×フェイトになって、ショックでなのはが病む」
と言う鬱展開ネタが用意されていたりします。
少なくともniceboat的な血生臭い展開はありませんから…
近い内投稿さしてくださいお願いしますorz

16 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 16:28:41 ID:6g+yIo4u
なんというガチホモ・・・しかし・・・アリだ!
むしろ好物!GJ!君の勇気に敬意を表する!!

17 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 16:43:46 ID:DylOafcg
マジでぶっ飛んでるなこのSS……っていうか基本ノーマルで同性もありってのは両刀であってガチ(本気)のホモじゃねえだろ。

しかし本当ここに投下されるSSは多種多様だな、毎回驚かされるよ。

18 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 16:48:49 ID:E9spUdXx
>>1乙!
>>15今回はGJ!
やっぱりギャグだと冴えますね

鬱ネタか……
どうもあなたの文はシリアス展開でもなぜかギャグっぽくて軽くて物語に入っていけない気がします
もし鬱ネタを投下するなら投下する前によく文を読み直して本当にシリアスな文になっているか何度も確認した方がいいと思いますよ

19 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 16:52:36 ID:A6P3lJFx
カオス過ぎてフイタ

20 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 17:20:08 ID:fKJ+qesw
>>15
GJだす!相も変わらず、甘いようなぶっ飛んでるような混沌とした内容ですなぁ〜。

>「まさかのユーノ×フェイトになって、ショックでなのはが病む」
貴方のSSでユーノ×なのはに(なのは大好きな)フェイトが病んで壊れるというシチュは数多く見てきましたが
このパターンは珍しいですね。個人的にとても興味があるので、是非とも投下して欲しいものです。

21 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 17:34:24 ID:xLFmfV79
腐女子の気持ちが分かった瞬間でした

ユーノ・ブリジット・瑞穂の御三家は凄まじいと思う

22 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 17:41:35 ID:66ECEify
ギャグがパターン化している感じ
しかもそのギャグ展開をわざわざ出そうとしているためなのか知らないけど
オチとまるで逆行しているし

自然の動物がどうこうとホモ&レズネタ
種を残せない様なことは基本的にやらない


23 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 17:48:04 ID:6g+yIo4u
>>21
まて、こたりょーと準にゃんとCAGEを覚えておくとさらに幸せになれるぞ

24 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 18:01:10 ID:BJ/IqgHn
マシロくんを外すやつは許さないってばっちゃがいってた

25 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 18:31:42 ID:x9Gz/iTQ
>>24
まて、貴様どこの回しもんだww

26 名前::名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 18:39:51 ID:3RVjWMOl
>>15
なんというカオスGJ.
読んでたらケツが痛くなってきた。

27 名前:アルカディア ◆vyCuygcBYc :2008/02/10(日) 18:53:55 ID:uF6Rrjv0
前スレ>>602
ども、Little Lancerの作者です。
拙作からのスピンオフをなさりたいとのお話ですが、私としては異存は有りませんし、大変光栄にも思います。
ただ、Little Lancer自体のプロットは既に完成していまして、その中には現時点(四話)では表に出していない設定もございます。
今後それらが602氏の作品の内容と齟齬をきたすようなことが有っても、一切の責任は負いかねます。
尚、賞賛されるか叩かれるかは御作の出来次第という点は、言うまでも無く他の作品と全く変わり有りませんので、ご了承願います。

28 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 19:14:49 ID:rzTIOc/S
>>15
鬱もの自体は別にいいんだけどさ。
軽い文体で病みや人死にを扱うのはやめたほうがいいよ。
もしそういう内容だったとしたら多分また厳しい意見が出ると思う。

29 名前: ◆Ev9yni6HFA :2008/02/10(日) 20:09:00 ID:Te7rpo+V
「尊ぶべき愚者」の六話を投稿したいと思います

オリジナルキャラ、独自設定を含むのでご注意ください

30 名前:尊ぶべき愚者 六話  ◆Ev9yni6HFA :2008/02/10(日) 20:10:35 ID:Te7rpo+V
「ごはっ」
 二尉の胸が大きく鼓動し、口内に溜まっていた血を吐き出す。
「大丈夫ですか!?」
 慌てて二尉の上半身を抱き起こす。
 気道に血が入ったのか二尉は何度も咳きこんでいる。
「じゅ、准尉か」
 喉元から無理矢理吐き出す弱々しい声だ。
「布、ないか? ハンカチみたいなのでいいが」
「は、はい。ありますが」
 制服の内ポケットの白いハンカチを取り出す。
「何処か痛むんですか?」
 二尉の口から滴る血を拭いながら尋ねる。

「逆だ。殆んど痛みはない。それより、俺の右手とドゥリンダナを縛ってくれ。いつ落としちまうか分かんなくてな」
「何でそんな事を」
「……仕留め損ねた」
「な……」
 言葉の意味が理解出来ず絶句する准尉を無視して二尉はふらふらと立ち上がる。
「ドゥリンダナをぶちこんで砕いたのは確実なんだが、奴のムカムカする魔力が消えてねえ。だから戦いはまだ……」
「無茶ですよ! さっきまで意識なかったでしょ」
「だから足止めが精々だ。お前は本部に戻って守りを固めろ」
「出来る訳ないでしょう!」
「二尉の命令だ。大人しく聞け、准尉」
「っ」
 准尉はこの場で二尉を殴って気絶させたい衝動に駆られたが一つだけ、どうしても気になっている事があった。

「……あの、何でさっきから明後日の方向を向いて喋ってるんですか?」
「……ああ。すまない」
 首を動かし少女の方を向く。
「いいえ。それは私ではありません。それは彼女です」
「……紛らわしい」
 やっと准尉の方を向く。
 そこで気付く。二尉の目は焦点が合っていない。
「二尉、あんた、まさか」
「……細かい事を気にするな」
「握力だけでなく既に視力も失いかけているのか。もっと言えば聴力も危ないな?」
 銀髪の少女が冷静に分析する。
「誰だか知らないが五月蠅いな。
 それと准尉。お前、俺の事を無茶だとか言っていたが、お前が俺の立場だったら同じ事をしているぞ」
「それは……」
「俺とお前の違いは力があるかないか、その程度だ。皆が確固たる意志で自分に出来る事をやっている。
 俺の場合はそれが足止めだっただけの事。だから、さっさと行け。俺の見せ場を奪うな」
 
 黙って聞いていた准尉は長い溜息を吐くと、手にしていたハンカチで二尉の右手とデバイスを結びつける。
「分かりましたよ。じゃあ、俺は死ぬ気で地上本部を守るんで二尉も死ぬ気で足止めして下さいよ」
「任せろ。今の俺なら一分は固い」



31 名前:尊ぶべき愚者 六話  ◆Ev9yni6HFA :2008/02/10(日) 20:11:30 ID:Te7rpo+V
 准尉の足音が遠ざかっていくのを聞きながら、地面に立てたドゥリンダナで体を支える。
 視界が明滅してはっきりしない。
 だが、この身を凍てつかせる悪寒は間違いない。
「もう一度だけ言う。オレの仲間になれ。今ならないと一生後悔するぞ」
 いる。それも目の前に。
「誰がなるか、と言いたいが、一つ聞く。それ次第じゃ考えてやる」
 とにかく時間を稼ぐのだ。戦えば瞬殺される。
「考える気などないくせに。まあいい。何でも聞け」
「お前や最高評議会は何を隠していやがる」
「……別に隠している訳じゃないが。……オレ達が極秘裏に動いているのはミッドチルダに迫る真の敵に対処する為だ」

「真の、敵?」
「ああ。オレが可愛く見えるほど凶悪な相手だ」
「……」
「オレは言葉も通じて意思疎通も出来る。気分次第で他人の味方をする事もある。
 だが、アレはそういうのが一切通じない理不尽の権化のような存在だ」
「……」
「襲われる側に理由はない。あるとしたら、運が悪かった、というくらいか」
「……そんな敵が迫ってるのに何故隠す。市民には教えなくても管理局員には教えていいだろ」
「そいつはオレより凶悪だと言ったろ。正面から戦っても勝ち目は薄い。
 あいつらは一度遭遇しているから骨身に染みているだろう。
 そして、ミッドチルダの人命よりエイドスクリスタルが大事だって言ってなかったか?
 あいつらは次元世界の守護者であってミッドチルダの守護者じゃないからな」

32 名前:尊ぶべき愚者 六話  ◆Ev9yni6HFA :2008/02/10(日) 20:12:24 ID:Te7rpo+V
「……まさか」
 二尉は最悪の考えに思い至った。
 有り得ない。有り得ないが、もし今までの話が本当だとしたら。
「さあ。どうだろうな? 会ってないから分からないが。ただ、このままだとお前達の望まない結末になるのは確かだ」
「そうか。いや、随分と教えてもらって悪いな」
 地面からドゥリンダナを引き抜き、槍のように構える。
「気にするな。どうせ」
 ヴィレオンも剣の切っ先を二尉に向けて構える。
「ここで終わりだ」

 二尉の背中から切っ先が突き出す。
 驚き、混乱する二尉の顔を見ながらヴィレオンは愉悦の笑みを浮かべた。
「馬鹿だな。首を縦に振るだけで良かったものを」
 ケラケラと笑っていたヴィレオンだったが、突然、その視界が真っ赤に染められた。
 状況を把握する時間もなく、右頬に強烈な打撃が与えれる。
 そして一つの言葉が飛んでくる。
「ばーか」

 右手の甲で顔を拭う。
 回復した視力で確認すると血液だった。
 逆流し、口に溜まっていた血を吐き出したのだろう。
「ふん」
 舌で甲に付いた血を舐めとる。

 二尉を確認すると、両手はダラリと下がり、顔も下を向いている。
 死んでいるようにも見えるが握られた左拳が僅かに震えているのでかろうじて生きているのだろう。
 特別な感慨もなく胴体を貫通している剣を引き抜く。
 支えと栓の役割を果たしていた剣がなくなった事で勢いよく出血を始め体が崩れ落ちる。
 この分なら数分で失血死するだろう。
 出来る事なら意識を回復させて苦しみながら死んでいくさまを眺めたかったがあまり時間に余裕がない。
「まあ、愉しかったが」

 呟き、刀身にこびりついた肉片に舌を這わす。
 そこで白い魔杖が目に止まる。
 ボロボロになっているがまだ使えるようだ。
「戦利品として貰っていくか」
 剣を立て、しゃがむと二尉が握っているデバイスに手を伸ばす。

「!」
 咄嗟に指を引く。
 視線を移すと指の皮膚が凍りつき剥がれ落ちている。
「そんなに主が大切か」
 よく観察すると腹の傷口が氷結し出血を抑えている。
 少なくとも失血死する事はないだろう。
「……流石、魔法の杖。化けるのが早いな」
 吐き捨ててその場を後にする。




33 名前:尊ぶべき愚者 六話  ◆Ev9yni6HFA :2008/02/10(日) 20:13:17 ID:Te7rpo+V
「ここにもなしか」
 無限書庫司書長であるユーノ・スクライアは眼鏡を外し目を擦る。
 かれこれ数時間、エイドスクリスタルについての資料を探しているが一向に見当たらない。
 だがそれも当然かもしれない。
 ここに初めて来てから十年になるが未だに全容は不明なのだ。
 当初は司書もおらず物置状態だったので目録も存在しない。
 ここの資料の貴重さを考えれば自分より前に整理しようとする人間がいてもいい筈なのだが。
(まるで意図的に放置してあるみたいだ)

 我ながら妙な発想だと思いながら検索を続行する。

 
 ふと、顔を上げたユーノは本棚の奥にしまわれた一冊の本に気付いた。
 日記のようだが、表紙はぼろぼろで文字を読み取る事は出来ない。
 
 何故、こんな本に気を引かれたのか、疑問に思いながらも手に取る。
 すると、本が光を放ち、文字が直接、頭に刻まれる。

『イ――シードは無理ら――。――――の襲来が間近――――ってその報告は――と言う他ない。
 結局、作――エイ――クリ――ルの――行う事にな――うだ』

『記憶――介にす――デアシード同様に――ドス――スタ――あるものを媒――使う。
 それ――間の――。――――きた――――ごと同――せる必要――る。――に作――秘密裏――――れ――が望――い』

『――――は最初に一つの世――滅ぼ――の余波に――て他の世界――壊する。
 記――調べ――上では――――クリス――は発――――波を防――のみ――われて――』

『エイ――ク――――だ――は守れ――――多――い。
 ど――界を守る――――になる――個人の意――は味方――残して敵――る世――見殺し――――ない――う』

『――――撃を受――世――対して避難――――通達す――定だが戦時中――う事もあり――――信用され――疑問――る』

『――――の襲来――――争の早期終――見込ま――のは皮肉とし――い――――い』



『こ――書き込む――久しぶ――。今日、最悪――告があ――。
 再び――――の襲――予見さ――のだ。――もそ――来する世界と――のが――』




34 名前:尊ぶべき愚者 六話  ◆Ev9yni6HFA :2008/02/10(日) 20:14:42 ID:Te7rpo+V
「ぅ……」
 ユーノの体は全力疾走した後のような熱と疲れを帯びていた。
(今のは)
 果たして何だったのか。夢でも幻覚ではない。
(でも)
 今の内容が全て事実だったとしたら自分は行かなければならない。
 日記を脇に抱えると急ぎ足で出口に向かう。
 しかし、

「困るな。司書長」
 全身をマントで纏った相手が出口を塞いでいる。
 それは、ここから先には行かせないという意思表示。
「好奇心は身を滅ぼす。大人しく遺跡を暴いていれば良かったのにな」
「貴方は、この事を知っていたんですか?」
「まあ、当事者ではないが、大体の事は」
「何故こんな事を秘密にしていたんですか!」
「管理局は存続させなければならないし、我等の子孫は何代も続いていく。
 その為に都合の悪いものは処分したと聞いていたが、まだ残っていたとは。
 折角、無限書庫を整理せずに放置しておいたというのに」
「……」
「さあ、帰ろう。送っていくぞ。それに一人暮らしは大変だろうからお手伝いの一人でも付けようか?」
「そこを退いてください。僕は地上本部へ行く」
 否定を意味する毅然とした言葉。
「残念だ。共犯者になってくれるなら手荒な真似はしないですんだのに」

「もう一度だけ言います。そこを退いてください。こっちも手荒い真似をする覚悟がありますよ」
「面倒だな。わざわざ部下を三人も連れてくる羽目になった」
 男の背後から新しい人影が現れる。
 戦局は一対四。
 だが、負けられない。
 事はミッドチルダの存亡に関わるのだ。
 眼鏡を外しポケットにしまう。
 足元に淡い緑に光るミッド式の魔法陣が生まれる。

「……スクライア司書長は溜まっていた有給を使って遺跡探査に出掛けるそうだ。しばらく連絡は取れないだろうな」
「往きます」
 明かされる事のない戦いが始まった。




35 名前:尊ぶべき愚者 六話  ◆Ev9yni6HFA :2008/02/10(日) 20:15:29 ID:Te7rpo+V
 廃墟となった都市中央でその邂逅は行われた。
 二人とも片手に剣を持ち一人は黒い髪に血臭を、もう一人は赤い髪に死臭を漂わせていた。
「折角ミッドチルダを滅ぼそうと手の込んだ方法を選んだというのに。余計なモノまで呼び寄せたか」
『さっさと道を譲れ。お前と遊んでいる暇はないんだ。それに何だ? 右頬がだらしなく腫れ上がってるぞ』
「つれないな。本来ならあり得ない筈の出会いだ。愉しもうじゃないか」
『口で言っても分からねえ馬鹿だったな。いいぜ、一回だけ打ち込んでこい』
 赤髪の男が担いでいた剣で黒髪の男を指す。
「そうこなっくっちゃな」
 黒髪の男、ヴィレオンは炎のように揺らいだ剣を下段に構え疾駆。
 交差は一瞬。ヴィレオンが駆け抜け赤髪の男は不動。
 ヴィレオンが自分の左肩に違和感を感じると同時に、真っ赤な鮮血が噴き出す。
「……流石は二十三管理外世界最強。出来るなら生前のうちに戦いたかった」
『こんな決闘じみた戦いじゃなかったらそっちの圧勝だったがな』
 男はつまらなげに呟くと最初のように剣を肩に担ぐ。
「実はもう一つ用がある。シェオルの所有権だ。知ってるだろうが二十三管理外世界は既に無人だ」
 問いに赤髪の男は逡巡する様子を見せたが何かを諦めたように肩を落とし、
『この戦いが終わった時、お前が無事だったらお前にくれてやる』
「ほう。やけに素直だな」
『お前が無事ならもとより選択権はない。それに管理局の奴等は何も知らないんだろう』
「大多数は知らない。知っている少数は犠牲を以て事を収めようとしている」
『……善意から発した行動が悪い結果を生むこと事があるように、悪意から発した行動が良い結果を生む事もある、か』
 苦々しく呟くとヴィレオンに背を向ける。
 立ち去ろうとするが、何かに気づいたように一度だけ振り向き、
『勘違いすんなよ? 正当な所有者が現れるまでの仮だからな』

 ヴィレオンは相手の姿が見えなくなる所まで来ると口元を歪める。
「ああ。正当な所有者が無事ならな」



36 名前:尊ぶべき愚者 六話  ◆Ev9yni6HFA :2008/02/10(日) 20:16:29 ID:Te7rpo+V
「……」
 司令部は悲痛なほどの沈黙に包まれていた。
 皆の視線は一様に一人の男に向けられている。
 陸曹は俯いたまま一言も発しない。
「君を責めるつもりはない。だから、顔を上げろ、陸曹」
「中将……」
 顔を上げた陸曹の顔は青ざめ、瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「敵がここに向かっているらしい。罪悪感があるなら防衛に行け」
「……はっ!」
 敬礼し、陸曹は出て行こうとするがそれは叶わなかった。


「夜闇と風を切り裂いて、馬を走らせて行くの誰ぞや?
 それは、子を連れた父親であった
 父は子を腕にしっかりと抱きよせていた
 しかし腕のなか、子供はすでに息絶えていたとさ」

 司令部の扉が開き、局員の襟首を引き摺りながらヴィレオンが入ってくる。
 ヴィレオンは司令部内を一通り見渡すと面白いものを見付けた子供のように嗤い、その局員を片手で放り投げる。
 軽々と投げられた局員は放物線を描きながら落下する。
 その先にあるのは、虚数空間に続く空間の裂け目。
「ちっ」
 室長は慌てて駆け、無事な左手で局員の片足を辛うじて掴む。
「くそ」
「大丈夫ですか!」
 オーリスも加わり二人で引き上げようとする。
「ん、誰かと思えば准尉、お前か」
「はは、どうも」
「無茶をするな」
「自分に出来る範囲で全力出してたらこうなりました」



37 名前:尊ぶべき愚者 六話  ◆Ev9yni6HFA :2008/02/10(日) 20:17:27 ID:Te7rpo+V
「はハ。頑張れよ。落ちてしまえばお前達では二度と帰ってこれないぞ」
 室長達の苦闘を横目で眺めながらヴィレオンは端末を操作し扉を閉める。
 その後、端末を殴りつけ、破壊する。
 そして一歩も動けない局員達を尻目に司令部内を移動する。
「また会ったな。ゲイズ中将」
 赤と金の瞳がレジアスを射抜く。
 陸曹がレジアスを守るようにデバイスを構えるがその体は震えている。
「……ここに来るまでにいた局員はどうした?」
 問いに対してヴィレオンは犬歯をちらつかせ、
「弱かったぞ。あんな奴等で今まで戦うのは大変だったろ」
「舐めんな!」
 助け出された准尉は激情とともにヴィレオンに飛びかかる。
「クッ」
 ヴィレオンは背を向けたまま手を後ろに回し、准尉の腕を掴む。
 そのまま片足を一歩踏み込み後ろから前に振り回すと床に叩きつける。
「舐められたくなかったら敵扱いされるだけ強くなれ」
 全身を強打し呻き声を漏らす准尉を再び放り投げる。

「しかし、昨日と比べると大違いだ。流石、寿命が短い分、進歩が早い」

 どこか満足げに呟くとレジアスの方に向き直る。

「さあ、幕を下ろそう。この場で管理局の敗北を認めろ。這いつくばって命乞いをしろ」
「貴様!」
「そうすれば“管理局員の命”は助けてやらない事もない」
「ふざけるな!」
 犯罪者相手にそんな真似が出来る筈がない。
 それに、わざわざ管理局員の命を強調する辺り、性根が歪んでいる。
「ふざけてなどいない。この瞬間の為にわざわざ回りくどい事をしたんだ。簡単な事だ。
 膝を屈し「私達の負けです。どうか命だけは助けて下さい」と懇願すればいい。ああ、別に靴は舐めなくていい」



38 名前:尊ぶべき愚者 六話  ◆Ev9yni6HFA :2008/02/10(日) 20:19:28 ID:Te7rpo+V
「……」
「そうかい」
 無言を否定と受け取り、ヴィレオンは剣を取り出し、振りかぶり、振り下ろす。
「ぐぅ……」
 剣の軌道は途中でずれ、陸曹の肩に食い込む。
 ゆっくり引き抜かれた剣には赤黒い肉片が付着していた。
「よ、よせ」
「よせ? お前にそんな事を言う権利はない。お前にあるのは黙って見る義務だけだ」
 ケラケラと笑いながら再び振り上げる。
 思考が飛んだ。体が勝手に、しかし自然に動く。
「ぐっぅぁ」
 背中を盾に陸曹を抱き締めるようにして庇う。

「ケラケラ。驚いた。見ろよ、貴様等。身を挺して部下を庇ったぞ。ケラケラ」
 傷口は痛むというより、熱した鉄板を押し付けられたような熱さを放つ。
 それに、驚いた? よく言う。
 あの時、剣を振り下ろす速度は明らかに遅かった。助けに入る事を見越していたのだ。
「ハはハハははハハ。馬鹿な男だ。頑張った所で結末は決まっている。管理局の崩壊という結末はな」
「そんな事は、ない」
「オレ一人にここまで追い詰められる組織なぞ遅かれ早かれ終わるさ。それに……」
「貴様は、侮り過ぎ、だ」
「侮る? この状況では当然だ。このままならシェオルはオレの手中。そっちは満身創痍。一方的過ぎて退屈だ。
 もう一度だけ聞く。ここで皆殺しにされるか自分達の命だけは助かるか、選べ」

「……話に、ならんな」
「そうか? あの餓鬼とは契約するのにオレは駄目なのか」
「餓鬼?」
「そうだよ。何と言ったか。まあ、いい。お前、犯罪者と手を結んでいるだろ」
「……!」
 思考が真っ白になった。言い返そうとしたが言葉に詰まる。
「地上を守るため? 最高評議会の命令だから逆らえなかった? 正義を成すためなら悪になってもいい? ただの言い訳だな。
 違法な手段を使わなくても地上を守る事は出来た筈だ。なのにお前は楽な方に逃げた。
 昔のお前ならこんな選択はしなかったのに。挙句、友を死なせた」
「……黙れ」


39 名前:尊ぶべき愚者 六話  ◆Ev9yni6HFA :2008/02/10(日) 20:20:19 ID:Te7rpo+V
「お前はただ、友が死んで後に引けなくなっているだけだ。
 スカリエッティと手を結ばなければゼストが死ぬ事はなかった。しかし現に死んでしまった。
 今更、手を切っても生き返る訳ではない。過去のやり直しは出来ない。事が終わってからの後悔は死者への冒涜だ。
 ゼストという男がこの道に立ち塞がり死んでいった。ならこの道を進むしかない。それが死者を生かす唯一の方法だと。
 所詮、お前が抱いていた感情など、死者に足を引っ張られて得た錯覚だ。ここに至っても守る必要はない」

 ヴィレオンの瞳が覗いているのは外見ではない。心の奥底、自分自身ですら知らない領域を垣間見ている。
「だが気にする必要もない。当初抱いていた理想が時間とともに変質し劣化するのはよくある事だ。
 なにもお前だけじゃない。それで、返事は?」

 喉がからからに乾いていた。
 怪我のせいか意識が朦朧とする。 
 だが、教えてやらなければならない。
 偉そうにしているあの男がどれだけ滑稽な事を喋っているのか。

「貴様の指摘は一々正しい。心理学者にでもなればいい。確かに私はゼストの死に縛られていたかもしれん。
 だが、ミッドチルダを守りたいという思いは入局した時から変わらない私の意志だ。
 ……むしろ、それを思い出させてくれた貴様に感謝の一つでも言いたい位だ」

 恐らく、自分でも驚くほどふてぶてしい笑みを浮かべていただろう。
「……つまり答えは」
「Noだ。そして覚えておけ。貴様の交渉材料に使われるほどミッドチルダも管理局員も安くはない」
「やれやれ。どうしてあの男もお前も首を縦に振るだけの事が出来ないんだか」
 ヴィレオンが剣を振り上げる。
 レジアスの体から力が抜け瞼が下がってくる。 




40 名前:尊ぶべき愚者 六話  ◆Ev9yni6HFA :2008/02/10(日) 20:21:26 ID:Te7rpo+V
「なっ……」
 
 耳に飛び込んできたのは驚愕の声だった。

 目をこじ開け、状況を確認する。
 そこには予想外の光景が展開していた。

「くっ、貴様ァ!」
「室長、三佐、どいてください!」
 まさに剣を振り下ろそうとしていたヴィレオンに陸曹が肩から体当たりし、そのまま体をもつれ合わせていた。
 バランスを崩したヴィレオンが倒れ込む先は、
「虚数空間だと!」
 落ちれば二度と戻れない時空の裂け目。
「中将、今まで、ありがとうございました」
 一瞬こちらを向いた陸曹はにこりと笑う。
「陸曹!」
 二人の体は床に空いた裂け目に飲み込まれていく。
「人間風情が」
「驕りが、過ぎたようですね」
 ヴィレオンは陸曹を振りほどくが体は完全に虚数空間に落下を始めている。
「り、くそう」
 思い通りにならない体に鞭打って裂け目を覗き込む。


「ケラケラケラケラ」
 悪魔が心底愉しそうに嗤っていた。
「今回は負けだが、オレがここで終わると思うなよ。それとお前達に敬意を表して一つ、教えておこう」
「……」
「オレが消えても事件は終息しない。むしろこれが始まりなのだ。
 そして、未だ何も知らないお前達ではヒトの意志の前に敗れ去る」
「……防いでみせる」
「クックックッ。いずれ思い知る。お前達の敵は人の悪意でなく世界を救おうとする善意なのだとな。
 あの全てを凍てつかせる、時を壊す災害「ヒドゥン」によって」
「「ヒドゥン」?」
「自分達の大切なものを守るために戦う奴等を打ち倒せるのか、じっくり見物させてもらうぞ」
 そこまで言って、ヴィレオンと陸曹の姿は虚数空間に消えていった。





41 名前:尊ぶべき愚者 六話  ◆Ev9yni6HFA :2008/02/10(日) 20:22:35 ID:Te7rpo+V
 一人残ったブリッジで連絡を受けた上級大将は、安堵の息を漏らしたが、すぐに表情を厳しくする。
「テロ対策とはいえ、一般業務の放棄、協議中だった魔道砲台の実戦運用、次元犯罪者との関係も勘付かれ、
 更には所有権が曖昧なロストロギアか。部隊はかなりの損害を出したようだし……荒れるな」
 これから起こるであろう政争に思いを巡らせ、嘆息とともに体をシートに沈める。



 本局内の食堂で一人の男が通信機を耳に当てていた。
 右手にはコーヒーの入った紙コップを持ち、にこやかに笑い、
 一見すれば恋人との会話を楽しんでいるように見えるが、その目はまったく笑っていない。
「はい。詳細は不明ですがシェオルは管理局側に渡ったようです。ブリュメールの生死は未確認。それと」
 足下のケースに目を移し、
「虚数空間に落下したという九つを除けば全て回収しました。……ええ、研究のために各地に貸し出されていましたから」
 ある程度の称賛を期待しての報告だったが、返って来た答えに男は不快げに口元を尖らせる。
「反対派は相変わらずですか。では、一度そちらに戻ります」
 通信を終了した男は機械をポケットにしまうと肩を落とし嘆息する。
「いくつもの世界が終わろうとしているいうのに、そんなに利権が大事か」
 右手に持っていた紙コップが軽い音とともに潰れる。
「敵はヒドゥンではなく人そのものか」
 呟いた言葉は虚しく消える。
 一つの戦いは終結したが未だに争いの火は消えない。

42 名前:尊ぶべき愚者 六話  ◆Ev9yni6HFA :2008/02/10(日) 20:23:32 ID:Te7rpo+V
以上です。
三期が始まった頃はスカは前座であれがラスボスなんじゃないかと結構本気で考えてました。
ジュエルシードもなんかイデアシードと似てるし。
なのはちゃんもハーヴェイもいないが頑張ってくれ、地上本部。

それにしても他の人の執筆速度が羨ましい限りです。

43 名前:前スレ602:2008/02/10(日) 20:43:49 ID:s8JYWYez
>>アルカディア ◆vyCuygcBYc さん
前スレでは不躾な発言をしてしまい申し訳ありませんでした。
また、スピンオフの許可を頂けた事、大変感謝しております。
しかし、あれから考え直した結果、今回のスピンオフ粗筋投下は白紙、なかった事にさせて頂きたいと思います。
考えた粗筋は改めて煮詰めなおし、自分オリジナルの作品としていつの日か投下させて頂きます。

今回は私の発言で、スレを引っ掻き回してしまい深く反省しています。
アルカディア ◆vyCuygcBYc さんをはじめ、スレの皆様には大変なご迷惑をおかけしました。申し訳ございません。

44 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 21:07:06 ID:MYgO8ukV
>>42
リリカルおもちゃ箱ktkr
ユーノ、無茶しやがって(AA略
しかし、悪人の間じゃ虚数空間に落ちたりジュエルシード手に入れるのが流行ってるのかw

45 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 21:32:03 ID:E9spUdXx
>>42
GJです
ユーノに死亡フラグが…
次も楽しみにしています

前スレ>>654GJ!
なのはさんの教導についてくとは…、このお嬢様もただモノではありませんねw
次のお話も楽しみです。
しかし最後の痴漢?の男の子って誰が何をしてたのですか?
もしかして次の主人公だったりw

46 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 21:36:42 ID:gVOKFJzw
>>45
状況からしてエリキャロの最初の出会いを目撃したんじゃねえのか?

47 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 21:40:01 ID:SmdO64BE
>>45
おいおい。困るぜそんな事言われちゃあ……
君だってstsを見てただろう?
空港、女の子を押し倒す、シグナムくれば、
エロオ・モンデヤル陸士殿を思い出さなきゃいかんよ。

48 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 21:48:39 ID:RSZwgtc9
>>45
ヒント:3期開始後、シグナムが空港に迎えに行った相手は?

…つまりそういうことだと思う。若き槍騎士よ、南無(合掌

49 名前:B・A:2008/02/10(日) 22:11:24 ID:v+6kRbh0
>>48
同感です。いや、あるいはシグナムの胸も揉むかも・・・・。




エリオ繋がりで僕の方も投下して良いですか?

50 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 22:14:14 ID:xLFmfV79
ケロロ・ひぐらし・ポケモン・海馬・KANONetc.……相変わらず容赦ないぜ。

ていうかスカ研懐かしすぎwwww25・26話はまだかしら。

51 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 22:14:34 ID:fKJ+qesw
どうぞ、どうぞ

52 名前:B・A:2008/02/10(日) 22:25:54 ID:v+6kRbh0
では、いきまーす。


注意事項
・エリオ×ルーテシア
・非エロ
・本編改編。いわゆるIFというやつです。
・強引な展開や独自の解釈、勝手な捏造が多々含まれます。


53 名前:Ritter von Lutecia 第15話@:2008/02/10(日) 22:28:48 ID:v+6kRbh0
着々と作戦が進行していく中、はやては10年前のことを回想していた。
そう、あの時もこれと似た状況だった。
暴走するロストロギアと、それに囚われた少女。10年前の焼き直しに、はやては何とも言えないもの悲しい気持ちになった。

(あの時は、私が助けられる側やったね)

そして、リィンフォースというたった1人の犠牲によって、あの聖夜は終わった。今、自分がこうしていられるのは、
あの管制人格が自分を犠牲にして世界を守ったからだ。

(けど、今度は違う・・・必ず助けてみせるで、リィンフォース)

決意を胸に、はやてはシュベルトクロイツを握りしめる。
その時、待ちに待った人物からの通信が届いた。

『はやて、聞こえるか?』

その人物の名はクロノ・ハラオウン。フェイトの義兄にして機動六課の後見人。
そして、数少ないはやての能力リミッターを解除できる人物だ。

「クロノ君? バッチシ聞こえるで」

『よし、かなり無茶をやったが、何とか申請は取れた。八神はやて、能力限定解除・・・4ランク承認。
リリースタイム・・・無制限』

「って、本気か、クロノ君!? ここ市街地やで! しかも無制限って・・・・」

市街地では被害を出さないことを最優先せねばならないため、SSランクの魔導師の投入は難色を示される。
しかし、クロノはそれを思いっきり無視し、いきなりはやてのリミッターを、時間無制限で開封したのだ。

『安心しろ、優秀な結界魔導師をそちらに送っておいた』

その瞬間、まるで空間がヴェールに包まれたように色が変わったかと思うと、周囲一帯が世界から隔絶された。
空間を一時的に切り取り、中で何が起こっても外には一切漏れないようにする結界魔法だ。しかもこの結界は、
数名の武装局員が協力して行う強装結界よりも遙かに強力な精度を誇っている。さすがに全ては無理だが、
レリックが1つくらい爆発したとしても抑え込むことはできる強度だ。

『ふぅ・・・・インドアを引っ張り出してまでこき使うなんて、クロノの奴は何考えているんだか?』


54 名前:Ritter von Lutecia 第15話A:2008/02/10(日) 22:30:11 ID:v+6kRbh0
「この声・・・・ユーノ君?」

『やあ、はやて。事情はクロノから聞いているよ』

「聞いているよって・・・・ええの、こんなとこおって?」

『よくないよ。今頃、無限書庫は大騒ぎだ。これが終わったらクロノにはきっちり文句を言わせてもらう』

『まったくだよ、たまたまいたあたしまで駆り出すしさぁ』

今度は別の声が念話に乱入する。どこか斜に構えたような声に、少し離れたところにいたフェイトが反応した。

「アルフも来ているの!?」

『そうだよ、フェイト。ごめんね、勝手に子ども形態解除しちゃって』

「それは別に構わないけど・・・・」

「ここまで来ると、もう同窓会だね」

反対側にいたなのはが苦笑する。
次から次に現れるメンバーは、みんな10年前の闇の書事件の関係者たちだ。あの時は、これだけの面子が揃いながらもリィンフォースを救えなかった。
けど、今度は違う。スバルが、ティアナが、エリオが、キャロが、機動六課のみんながいる。

『そういうわけだから、僕はここで結界の維持に努めるよ。だから、なのはたちは何も気にせず、全力全開手加減抜きで大暴れして良いから』

「OK、ユーノ君・・・・はやてちゃん!」

「よっしゃ・・・機動六課、能力限定解除。みんないくでぇっ!!」





55 名前:Ritter von Lutecia 第15話B:2008/02/10(日) 22:31:40 ID:v+6kRbh0
荒れ狂う魔力の力場は拡大を続け、今や半径数十メートルまでその勢力を広げていた。
その中心にいるはずのルーテシアの姿は魔力の嵐で見ることができないが、
エリオは彼女が苦しんでいる姿をその見えない目で捉えていた。
知らず知らずの内に、ストラーダを握る手に力がこもる。

「エリオくん・・・・・」

そっとその手にキャロの小さな手が重ねられる。

「緊張・・してる?」

「うん・・・・ルーの命がかかっていると思うとね」

強張った顔に笑顔を浮かべ、エリオは言う。
その偽らざる本心を垣間見て、キャロは嫉妬にも似た感情を覚えた。
この期に及んで、エリオはまだルーテシアのことしか考えていない。機動六課のみんなを始め、
多くの人の命がかかっているというのに、彼はルーテシアしか見ていないのだ。半年間、
パートナーとして一緒に過ごした自分のことすら見てくれていない。

「そんなに・・・・ルーちゃんのことが大切なんだ」

「うん。楽しいことも悲しいことも、僕はあの娘と分かち合いたい。一緒に生きていきたいんだ」

「そっか・・・・助けられると良いね・・・・」

きっと、ここにいる全員を犠牲にしたとしても、エリオはルーテシアを助けるだろう。
キャロがそう思った時、まるで不意を突くようにエリオは言った。

「大丈夫。みんながいれば、きっとうまくいく」

それは、自分たちと敵対していた時には絶対に出ることのなかった言葉だった。


56 名前:Ritter von Lutecia 第15話C:2008/02/10(日) 22:34:13 ID:v+6kRbh0
「これだけの人たちが力を合わせるんだ。ルーも、僕たちも、クラナガンのみんなも、全部まとめて救える。いや、救ってみせる」

いったい何が彼をそうさせたのか、エリオは自分が知っていた時よりも遙かに強く、逞しくなっていた。
その溢れる勇気と自信の源が何なのか、キャロはすぐに察することができた。
彼は信じているのだ。仲間の力を、機動六課という存在を。主張の違いからぶつかり合い、傷つけ合った自分たちを信じてくれているのだ。

(わたし、馬鹿だね。エリオくんのこと、信じてあげられなかった)

彼の間違いを正そうとするあまり、彼が何故苦しんでいたのかを考えようとしなかった。わかろうとしなかった。
最も身近にいたはずなのに、いつの間にこんなにも遠い存在になってしまった。
けれど、まだ間に合う。まだ終わっていない。
エリオが離反する時、彼は後のことを全て自分に託していった。
その約束は、まだ生きている。彼が自分たちを信じてくれるというのなら、自分も彼を信じよう。
そして、彼をルーテシアのもとへ送り届けるのだ。

「エリオくん。わたし、エリオくんのことは絶対に許さないから」

「キャロ?」

「エリオくんに裏切られて、とっても悲しかった。とっても辛くて、何日も泣いたんだよ・・・だから、わたしはエリオくんを許さない。
エリオくんを酷い目にあわせたルーちゃんのことも許さない。だから・・・・・・」

そっとエリオの体を抱きしめ、囁くように言う。

「文句を言わなきゃいけないから、2人で必ず戻ってきてね」

これが自分にできる精一杯だ。
本当は行くなと言いたい。
家族みんなで暮らそうって言いたい。
けれど、エリオが一緒にいたいのは自分たちではなく、目の前で苦しんでいるあの召喚師の少女なのだ。
だったら、彼の家族である自分ができることはたった一つ、彼の背中を押してやることだ。


57 名前:Ritter von Lutecia 第15話D:2008/02/10(日) 22:35:27 ID:v+6kRbh0
「キャロ・・・僕は・・・・・」

『・・・・機動六課、能力限定解除。みんないくでぇっ!!』

エリオが何かを言おうとした時、全員にはやてからの念話が届いた。
キャロも急いでエリオから離れ、ケリュケイオンに魔力を通す。
大切な家族を守る力を。
大切な人の思いを貫く力を。
大切な彼の愛する人を救う力を。

「ツインブースト、スピード&マジック! フルドライブ!」

『Boost Up』

詠唱とともに、ケリュケイオンから放たれた桃色の光がストラーダに吸収され、エリオの全身に魔力が駆け巡る。
それは、いつかの戦いと同じ光景だった。ただ一つ違うのは、そこにいるのがルーテシアではなくキャロだということだけ。

「ルーちゃんを・・・・・お願い」

「・・・わかった、キャロ」

ストラーダをウンヴェッターフォルムへと変形させ、エリオは術式を組み上げる。
チャンスは一度。失敗せぬよう、限界ギリギリまで魔力を込める。
自分にはスバルのような大きい火力はないし、ティアナのような射撃と幻術も使えない。
キャロのような召喚なんてもっての外だ。だが、そんな自分にも誰にも負けないものが一つ・・・いや、二つある。

(スピードと・・・・・ルーを思う気持ちだ!)

暴発しそうな魔力を冷静に処理しながら、エリオはスタートの合図を待った。





58 名前:Ritter von Lutecia 第15話E:2008/02/10(日) 22:37:06 ID:v+6kRbh0
エリオの準備は整った。
他のメンバーも配置についた。
限定解除も行った。
全ての準備が整い、はやてはもう一度だけ吹き荒れる魔力の嵐に目をやる。
未だ拡大を続けるそれは、少しずつではあるが確実に暴発へと向かっている。
あまり時間は残されていない。

「けど、こっちの準備も整った。いくで、リィン!」

「はいです!」

「「ユニゾン・インッ!」」

はやての中にリィンが光となって吸い込まれ、同時にはやての髪がプラチナ色に、瞳の色が黒から蒼へと変わる。
そして、手にしたシュベルトクロイツを一回転させ、足下にミッド式の魔法陣を展開する。

「準備はええな、リィン」

『いつでもOKですぅ!』

夜天の魔導書を通じて膨大な魔力が練り上げられ、それがシュベルトクロイツへと集まっていく。

「響け、終焉の笛!」



「アギト、我らも主に後れを取るな!」

「おうよ、シグナム」

「「ユニゾン・インッ!」」

アギトもまた、光となってシグナムへと吸収される。
膨れ上がる自身の魔力に僅かな高揚感を感じながら、シグナムは静かに刃を閃かせる。

「剣の騎士、シグナムが魂。炎の魔剣レヴァンティン! 刃と連結刃に続く、もう一つの姿!」

『Bogenform』

長剣と鞘が連結し、大弓へと姿を変える。

『猛れ、炎熱!』

「駆けよ、隼!」





59 名前:Ritter von Lutecia 第15話F:2008/02/10(日) 22:38:55 ID:v+6kRbh0
「あの召喚師、ルーテシアって言ったっけ」

スカリエッティによって人生を狂わされた少女。望まぬ力に振り回される様は、かつてのはやてを彷彿をさせた。
頭を振って沈みそうになる意識を鼓舞し、ヴィータはグラーフアイゼンを振り上げる。考えるのは後だ。
今は、あの厄介な力場をぶち抜くだけで良い。

「鉄鎚の騎士ヴィータと、鉄の伯爵グラーフアイゼンっ!」

『Gigantform』

一瞬でハンマーヘッドが角柱状へと変化し、見る見る内にヴィータの身の丈をも越える巨大なハンマーへと変化する。
同時に、彼女の手にした鉄球もそれに見合う馬鹿でかい大きさへと変化した。

「轟天爆砕ッ!」



クロスミラージュを構え、ティアナは震える自分を奮い立たせるように呟く。

「落ち着きなさい・・・・今度こそ、必ず当てる・・・・」

未だ実戦では一度も当てたことのないファントムブレイザー。もし、またしくじれば暴走するレリックを止めることができず、
最悪ミッドチルダそのものが崩壊する恐れがある。

『マスター』

重すぎる重圧に押しつぶされそうになっていた主に、クロスミラージュは話しかける。

『不躾ながら、一つ言わせてもらってよろしいですか?』

「なによ、手短にね」

『では・・・・あなたは前にこう言いましたね。ランスターの弾丸は、ちゃんと敵を撃ち抜けると』

あの、ホテル・アグスタでの一件の時だ。魔法を制御しきれずにスバルを誤射してしまった、彼女にとっては苦い思い出だ。

『信じてください。あなたの弾丸は、必ず標的を捉えます』

その言葉で、手の震えがピタリと止まった。
そうだ、自分は1人ではない。1人で撃つわけではない。頼れる相棒がいるではないか。

「そうね・・・・けど、少し違うわ。あたしの弾丸じゃない、あたしたちの弾丸よ」

『同じ意味に感じます』

「違うのよ、色々と」

『考えておきます』

カートリッジを炸裂させ、ブレイズモードへと変形させたクロスミラージュを構える。
その銃口に、最早恐れはなかった。





60 名前:Ritter von Lutecia 第15話G:2008/02/10(日) 22:40:57 ID:v+6kRbh0
「ギア、エクセリオン!」

『A.C.S. Standby』

蒼い翼を羽ばたかせ、スバルは拳を握る。

「マッハキャリバー、少し無茶をするよ」

自分は他のみんなと違って砲撃の射程が短い。だが、今回は安全面を考えてできるだけ標的から距離を取らねばならないのだ。
だから、そのせいで減退する砲撃の威力を補うために、多少の無茶は覚悟しなければならない。

『望むところです、相棒。あなたの全力を、必ず受け止めてみせます!』

そして、鋼の相棒はそんな無茶にもしっかりとつきあってくれる。自分というパートナーに絶対の信頼を寄せてくれているのだ。
だから、自分はその信頼に応えなければならない。

「一撃・・・必倒っ!」



「バルディッシュ・・・ザンバーフォーム、いけるね」

『Yes,sir Zamber form』

シリンダーが回転し、内部で魔力が爆発する。
それを合図に巨大な大剣へと変化したバルディッシュを構え、フェイトは術式を組み立てる。

(エリオ・・・・私も頑張るよ。どんなにも苦しくても前を向いて生きていくから。だから、一緒に頑張ろう)

天空から降り注いだ雷を刀身に集め、フェイトは高々に叫ぶ。

「雷光一閃ッ!」



桜色の魔法陣が展開し、魔力が全身を駆け抜けていく。
エクシードモードへと変化させたレイジングハートを振り上げ、なのはは静かに意識を集中する。
レリックが暴走しているおかげで、この結界の中は魔力で満ちている。これならば、燃料の心配はいらなそうだ。

「いくよ、レイジングハート。泣いているあの娘を助けるために!」

『All right,my master. Starlight Breaker』

周囲の魔力残滓をかき集め、一際巨大な魔力の塊を形成する。
それは、文字通り星をも撃ち落とす砲撃だ。

「全力、全開ッ!!」



7つの光がクラナガンの街を染め上げる。
少年の道を切り開くために。
苦しむ少女を救うために。
そして、ミッドチルダに住む全ての命のために。

「撃てぇぇぇっ!!」

そして、はやての合図とともに、7つの砲撃が一斉に解き放たれた。

                                        to be continued

61 名前:B・A:2008/02/10(日) 22:42:41 ID:v+6kRbh0
以上です。
文字通り同窓会です。出せるだけ出しました。
と言いつつ、まだあの人が一言も喋ってないですけど。ちゃんと次回で台詞は用意してますよ。
ちなみに、今回一番苦労したのはティアナです。彼女だけ決め台詞的なものがなくて。


62 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 22:57:49 ID:uF6Rrjv0
>>61
GJ!!です。必殺技の一斉砲撃ほど燃えるものはありませんね!
キャロが健気で可愛いです……

それにしても、素晴らしい更新速度で尊敬します。

63 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 23:02:50 ID:rzTIOc/S
GJ!熱いねぇ…
ようやくあの一度も決まらない技・ファントムブレイザーが日の目を見るのかw

64 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/10(日) 23:27:02 ID:gVOKFJzw
GJ!
なんというフルボッコタイム!
ところで最近キャロ報われないSS多くてカワイソス…

65 名前:三浦:2008/02/10(日) 23:29:52 ID:otVMPxN3
ああ、前スレになにも投下出来んかった……
アルバ君の戦闘スタイルでここ数日ずっと悩んで、今日の夕方辺りにやっとこさまとまってきた。
身の上話は置いておきましょう。

>>61
自分は一応エリキャロ好きだったのに、エリルーに移行してしまいそうな勢いです。
私もティアナは苦労してます。劇中でも特徴的な技が地味な方だし、いわゆるジ○系ですね。
自分の話の構想で、ティーダ兄さんを殺した犯罪者に遭遇して、
憎しみと殺意で狂った所を、フェイトとヴァイスに支えて貰って立ち直るティアナってのを妄想してます。

66 名前:y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/02/10(日) 23:32:22 ID:dJo2gFMa
投下失礼します

・エリオ隊長の続き
・イフ世界、フェイトさん亡き後、エリオ主人公、嫁ティアナ、最近は主にチンク視点
・エロ無し(入りませんでしたすいません

67 名前:y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/02/10(日) 23:33:12 ID:dJo2gFMa
終わりの始まりA
オットー


時間はチンクの空港の邂逅から3日ほど遡る


「…こんなところに居たんだな」

チンクは暗闇の中、宙に佇んでいた
正確には視界は効く、妙な感覚だが漆黒の中に多数の書物を収めた棚が連なっていた
そこだけが白く不自然なほど綺麗にどこまでも浮かび上がっている
「………」
呼びかけられた方は
無言で傍らの書棚に手を伸ばした、見えない力に引かれて音も無く本が引き出され
その手に収まった

「オットー」
振り向いた気の無さそうな表情は昔のままだった
「…ああ久しぶりだね、チンク」
ここは無限書庫、ミッドチルダにおける知識の宝物殿、チンクはまた一人姉妹と再会していた


 自分宛の簡易郵便、このところずっと考えごとをしていたチンクが
それを受け取ったのはさらにその前日だった、中身はディスク
「………」
光に透かしてそれを見つめるチンク、怪訝な表情で見つめるアリシア、最近隊長はどうも上の空である事が多かった
もともと謹厳な人だっただけに余計に気がかりだった、結局チンクは宿舎の部屋に帰りそれを開封した

中身はほぼチンクの予測どおりだった、差出人はチンクの姉ウーノ
『お久しぶりねチンク…』
そう切り出して始まった、無言で聞き入るチンクの表情がピクリと反応したのは2回だった
すなわち彼女等の従うべき主Dr.スカリエッティが健在だという事
もうひとつが『これ』だった
『…それでできればオットーも連れてきて欲しいの』
「…何?」
 


「なぜ今まで何も言ってこなかった?…」
「……」
オットーは再び宙に浮いたパネルに素早く左右の指を走らせていた
熟練の『司書』の動きである
「オットー」
「別に、聞かれなかったしね…」
さすがに何か言いかけるチンクにオットーはどさりと背もたれに半身に寄りかかり言った

「冗談だよチンク、…僕の方も何かと忙しくてね、お互い灯台元暗しってヤツだろ…」
どちらもお世辞にも社交的とは言えないタイプの二人だった
チンクもチンクで職場と自分の部屋を往復する以外誘われてもほとんど
どこにも行かないタイプだった

「…それにさ、司書の仕事、これが意外に性に合ってるみたいでね、最初は嫌だったんだけど
 最近は面白いよ、書物っては同じものは一つとして無い、それがいい
  …単純な繰り返しの日常よりよっぽどいい」
ポンと古い分厚い装丁のベルカの書物の背表紙を指先でなで、オットーは目を閉じていた
指先から本の内容が伝わってくるかのように

68 名前:y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/02/10(日) 23:34:02 ID:dJo2gFMa
「実際…ほとんど外出する事は無いんだ、生身なら大変なんだろうけど、ホラ僕達なら2,3日寝なくても平気だろ…」

 司書長代行、それが彼女の現在の肩書きらしい
代行というからには代行でない本物が居るという事なのだが、オットーが言うには
彼女にこの仕事を紹介してくれた司書長は今はほとんど年中外で遺跡巡りをしており
一年を通じても数えるほどしか帰ってこないのだそうだ、それでもクビにならないのは、意外に部下の信奉があるのだと言う

「まぁ情け無さそうな優男なんだけどね、見た目、撫で肩だし、でも10は若く見えると思うよ」
今もガードとして付いてる竜召還師と一緒に聖王の離宮跡を探してるんだとか、オットはー再び作業をしながら
後ろ姿で話続けていた
「…そんな事はどうでもいい、それで、お前知ってるのか…?その」
「ああ…ウーノ姉とドクターの事?」
「そうだ」
「興味ないね」
サラリと即答されてチンクは次の言葉に詰まった
戦闘機人である自分達が生きる道は、本来それしか無いのでは無いだろうか?
どうもウェンディといい自分勝手な…ような気がしていた

「…ディードの事は覚えてるな?」
チンクはそう切り出した
一瞬、ピタリとオットーの手が動きが止まり、またすぐに動き始めた
「…当然だろ」
「ディードを殺したヤツがいた陣営の元で働くのに迷いは無いと言うのか?」
フンとオットーは鼻を鳴らした
「無いよ、殺したヤツも一緒に死んじゃってるじゃないか」
まぁ生きてたら殺しに行ってやっても良かったけどね、と
すらりとした足を組むと金で装飾された豪華な装丁の本を膝に置いてパラパラとめくった

「大体それならチンク姉はどうなのさ?」
「何?」
「形式上、自分を倒した相手の部下になってるんだろ今?」
「…………」
チンクは押し黙った、沈黙の下オットーがページをめくる音だけが響いた、やがてチンクは口を開いた

「ドクターの所在が不明だった…だが解った以上ここに居る理由も無い、近日中にここを出る…それが私達の」
「へぇ…義務感なんだ」
それにしちゃ長かったね、ホントは帰りたくなかったんじゃないの?
「お前は行かないつもりなのか?」
応えずにチンクは苦しそうに尋ねた
パタンと本を閉じるとオットーは体ごと宙に浮いたチェアで向き直って溜息をついた
「…さっきも言ったとおりさ、僕は今の生活が気に入っている、ウーノ姉とドクターにはよろしく言っておいてよ」

しばらく見詰め合った、ふ、とチンクが息をついた
「…ああ、解った、ではそう伝えるとしよう、私の妹は奔放な奴が多いということだな」
?と言う顔のオットーが見つめた
その後わずかな会話で現在の情報を交換した

「へぇ…ウェンディ生きてたんだ…結婚ねぇ、ふぅん…」
気だるい目つきで気の無さそうにオットーは呟いた
「これで解ったのは確定が4名、トーレ、セッテ、ディード…」
「ドクターもだろ、あとクアットロ、割とロマンチストだったね、ゆりかごと一緒になんてさ…」

 チンクは修繕カプセル内で後で知った事だが、クアットロは一端ははやてによって救出されたが
脱出の途上その手を振り払って、沈むゆりかごと運命を共にしていた、らしい

「で、目下のとこ確実に存命が僕とチンク、ウーノ姉、…ウェンディと聖王教会にセインね…」
「ノーヴェは脱走したらしいから恐らく向こうだろうな」
「後はドゥーエだっけ?…僕直接会った事無いんだよね」
「ああ、そうだったな、それとディエチだなあと不明なのは…」

69 名前:y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/02/10(日) 23:34:22 ID:dJo2gFMa
「あ、」
オットーがチンクの背後の小さな点に気が付いて視線を向けた、つられてチンクも振り向く
「?」
「来客だ、じゃあねチンク」
見ると点は人型になり、やがてがっしりした体格の男性がこちらに向かってくるのが解った
両手に紙袋と脇にも大荷物を抱えている
「誰だあれは?」
肘をついてページをめくっていたオットーが悪戯っぽく笑った
ふふん
「僕のステディな人さ」
なんとも言えない目つきで妹を凝視する姉にオットーは澄ましてそう告げた
自分が言うのも何だがオットーがそう言う事を口走るのはかなり


「お前はまた…初対面の人にそういう冗談は言うなと言ってあるだろう」
そう言いながら、沈黙したチンクの横にやがてその男が降り立った
「おやおや酷いなあんたも、冗談なもんか、…相変わらずつれない人だな」
オットーは欠伸交じりに言って軽く伸びをする

「くぁ…ふぁーあ……ほぉら、あの時は、さ、僕のことあんなに激しく縛りつけてくれちゃってさ…」
男の逞しい上腕につかまりもたれかかり、指先でいじった
もたれかかられた方はあからさまに迷惑そうな顔をした

「だからそう何年前の…ああ誤解だ、いつものだ気にしないでくれ
 …頼む、これが司書長どのからの伝言と主はやてからの調べものだ」
「解った、解った、そこに置いといて、…ああまったく…僕って意外と尽くすタイプだったんだな
  新しい自分を発見しちゃったよ」
そう言うとオットーは封筒を並べながら含み笑いをした、その顔がふいにクスリと笑った
チンクが知る限りこの子がこんな表情を見せるのを初めて見た

「…ではさらばだ」
 気を取り直してチンクはそう告げた
応えて軽く手を上げ、またデスクに向かうオットーは片手であれこれ男に指示を出している
あれをそこに、そっちはここへ、あ、肩揉んで、などと好き勝手な事を言っている
文句を言いながらも男は本当に肩まで揉んでいる

「………ふっ」
 オットーはオットーなりの長い時間を過ごしていたということか
からかう声と反論する声が閑散とした空間にこだまする、あれはあれなりに楽しいらしいな
ならば仕方無いだろう
チンクは踵を返し、無限書庫を後にした

 遠くなるその背中にオットーは一瞬、何か呟きかけ、そして息をついて止めた
ひらひらと手を振ると、どっかりと座り直しパネルに指を走らせ、傍らの獣頭をペシンと叩いた
「さてとやるか」
「何をする!」
抗議を上げる声を無視してオットーは遠くを見つめていた


70 名前:y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/02/10(日) 23:35:29 ID:dJo2gFMa
終わりの始まりB
二人のドクター


「…どういう事ですか?」

 チンクは空港から伸びるハイウェイを飛ばす車の助手席にあった
亡命は失敗…だがチンクはどこかホッとしている自分に気がついていた
チラリと隣の男の顔を見る、再びその顔はグリフィス・ロウランの顔に戻っていた
「話せば長くなるんですけどね」

 結論から言えばこういう事だった
つまりグリフィス・ロウランはDr・スカリエッティのサポート役だったと
かつて存在した6課創設時から彼はそこにグリフィスとして居たと言う

 適時情報をこちらに流し、スカリエッティ本体ををサポートする、あの6課襲撃時には最大限の効果を上げる事ができた
そもそも事の始まりは偶然だった
 グリフィス・ロウランは6課入隊前の事故を起こし瀕死の重傷を負っていた、内偵の候補を探していたこれを幸いとドクターは手を回し
自分の目、及び保存先として確保してしまった。以来グリフィスとして6課の中で活動を続けていたのだった
そして最終的には狙い通りの結果となった、つまり

「バックアップ…生体システムで?」
チンクは前を見たまま言われた事を鸚鵡返しに尋ねた
ええ
「とまぁ自分以外に言われると、なんともニセモノぽくていやなものですけどね」
グリフィスは薄く微笑んだ

車がトンネルに入った、抜けた時、チンクの隣にいる姿はまたもDr・スカリエッティになっていた
チンクはもう驚かなかった、ドゥーエに使ったのと同じ技術さ、ドクターはハンドルを操りながらそう言った

「が心配はいらない…今や、間違い無く私が正真正銘本物のドクター、スカリエッティ…だよチンク」
確かにドクターそのものだった、チンクが喋らないのでドクターは続けた
「実際上手くいっただろう?12人の娘にバックアップ…か、面白いが…一番大事なデータの保存先を敵に公開すると言うのもね
  ゆりかごで地上本部を攻撃…恐喝、ふふ馬鹿馬鹿しいね…
 何の意味があるだろう…脅してどうする?ただのテロリストだ、おまけに
 それでは世界中から狙われる、おちおち安心して研究など続けられないよ…ではどうすればよいかと言う事だ…」

答えを待たずにドクターは続けた
 偽のバックアップの存在を華々しくアピールしてそちらに世間の注意を引き、本当に大事なデータを隠蔽する
事件は無事解決、この世からスカリエッティという存在自体は消え去った、死人は疑われない

「どうだねチンク?これが最高の結果だ、…おかげで自由に伸び伸びと研究を続けられたよ、依然政府の金を使ってね…
 世間の言うスカリエッティ事件とは、とどのつまり…」
チラリとチンクを眺めた

 『使いづらくなった私をいったん消して、新しい私を再生する』とまぁ、そういうお祭り…計画だったのさ
景色が流れる
 「おまけにほっといても私が野にばら撒いたデータを元に研究したものが各地で優秀な時空管理局によって差し押さえられ
私の元に帰ってくる、資金もタダなら研究期間も大いに短縮できたよ、くっく…まったく理想的な研究環境だったよ」

チンクは考えこんだ、自分達はつまり囮だったのか、いやそれはいい、しかし本人すら囮か
「怒ったかい?でも敵を騙すにはまず味方からと言うからね、…実際この事を知ってたのは別の任務についてたドゥーエくらいさ」
「…いえ、ではウーノ…向こうにいるドクターは一体?」
「ああ…あれかい?あれはね…ちょっとした手違いさ…」


71 名前:y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/02/10(日) 23:36:27 ID:dJo2gFMa
『チンクは彼に押さえられたようだね、オットーも期待できそうにない』
 ピッピッ…
機械に囲まれたホールだった、照明は落とされて、うす明かりの中に画面を見つめる女性の姿があった
 合成された電子音声に、ウーノは画面に振り向いた
「はい…残念ですが、今後二人とは直接交渉の機会を待ちたいと思います…」
画面のドクターは薄く笑った
『いや…あれはもはやDr・スカリエッティの名には値しないようだねウーノ、残念だがそう言わざるを得ない…』
画面の中のドクターは遠くを見るようにに呟いた、やはり問題が出たか、と

「…はい、ですが…まだ協力者として引き止めておく価値があるのでは無いでしょうか?」
『いいやウーノ、私には解るよ、潮時さ、奴は私を消すつもりなんだろう、…もともとは自分の考える事だ
 よく解るよ、今私が今正にそう考えているのだから…因果なものさ」

 画面のDr・スカリエッティは小さく笑った
『だが、あれはやはり生身の限界を知るべきだね…無限の欲望、…フフ…とてもとても…
   …有限の命を持つ、生の者には相応しく無いよ、相応しいのはこの私さ…』
クックック…
画面の博士は嘲笑していた
『最盛期のDr・スカリエッティの脳を完全コピーして再現
    …劣化することの無い完璧な頭脳、無限に増え続ける膨大な記憶媒体
 それらを生身の数千倍のスピードで思考する…奴は結局のところ万が一の場合の保険
…旧式の手動装置に過ぎなかった…私こそが完成形
そう…私はDr・スカリエッティの完成形にして、未来に永劫に存在し続ける者なのだ…』

『奴をデリートする時期がきた…もちろん私に協力してくれるねウーノ…』
ウーノは背すじにぞくりとするものを感じていた、だがこの狂気こそが自分の知っているドクターのはずだ
「はい…もちろんですドクター…」

 何を迷うウーノ、私達は戦闘機人だ、ドクターはその至高の存在への階段を
また一歩昇ったに過ぎない、ウーノは自分に言い聞かせてた

『ではドゥーエを呼んでくれたまえ…そろそろ行動を開始させよう…今回はこの国そのものが我等の基地だ』



「あれは同じところをグルグル回っているだけの存在さ、世界に対して刺激を与え、情報を収集し続ける
確かに研究にはそういったプロセスは必須だが、…それではただデータを収集しているだけに過ぎない
 私の一部…しょせんあれは良く出来たプログラムなのさ…」
「ドクターそれでは…」
「ああ、奴をこれ以上野放しにしておくと私の今の立場まで危うい、残念だが始末するしかあるまい
 …意外かねチンク?私はこう見えてもまっとうな科学者なのだよ、集めたデータは検証しなければならない
 収拾と検証、それの繰り返しさ…今は集めたデータを統合、検証すべき時期、…破壊ばかりしても仕方あるまい」

クックック、男は笑った、その笑顔は邪悪極まり無かった、ただし最低限の破壊は必要だ、そう呟いた

「…無限の欲望を体現する者は生身のものでなくてはならない…生と死、再生と滅びを繰り返す者、フフ…
  混沌をその心に宿す者でなくては…永遠に変わらぬ者など…紛い物に過ぎない…より高い存在へと導く事などできはしない」
沈黙して押し黙るチンク
「ああ、それと一つ良いニュースがあるんだチンク」
片手を伸ばしてチンクの髪を撫でた、驚き、軽くチンクは困惑したドクターがこんな行動をとったのは初めてだった
「ディエチに会わせてあげよう、君の可愛い妹に…」
「ディエチ…」

 チンクはドクターの横顔を眺めていた、ふいに疑問が口をついた
「ドクター、その…その体の元の主の精神は…現在どうなっているのですか?グリフィスとか言う…」
「…さぁ、どうだったかな?、その事はまた後でゆっくり話そう、それより今日はこの後…色んな偉い人達とお話があるんだ
 高町なのは空司令…特機総隊長エリオ・モンディアル…民間からは元陸上2佐八神はやて…ぜひチンクにも参加して欲しい…」

 世界のすべてを巻き込む第2次スカリエッティ事件
歯車はゆっくりと回り始めていた

72 名前:y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/02/10(日) 23:37:20 ID:dJo2gFMa
終わりの始まりC
ヴィヴィオ

広大な空間だった
小さな都市が丸ごと入るかのような巨大な建造ドッグ
そこを見下ろす橋頭、その先端にポニーテールを揺らせたその女性は居た


「隊長、ヴィヴィオ隊長」
呼ばれて騎士ヴィヴィオ高町は振り返った
いつの間にか長身美貌の女性がヴィヴィオの傍らに居た
切りそろえた艶やかな黒髪が印象的な女性だった
「やっぱり、ここに居ましたか」
「うん」
オッドアイの両眼が信頼する副官を笑顔で迎えた
「何度見てもすごいものですね」
「うん、それに…すごく綺麗…まるで全身がエメラルドの宝石でできてるみたい…」
「はい」
「もうすぐできるんだねママの…私達の船が…」

 二人が見下ろしているのは巨大な艦であった
元の名を「ゆりかご」と言う
回収されたその船はクロノの艦隊による集中砲撃により一度地に落ちたにも係らず
その恐るべき自己修復機能が生きていた

放っておくと危険すぎる、と言う事で

 この船を空士隊の本部として再利用を提案したのが高町なのは空司令ヴィヴィオの母親だった
スカリエッティのすでに解析したデータと合わせて、それでも足りない不明部分を
ミッドチルダの最新技術の粋を結集して補い、美しく電飾塗装が施されたその動く要塞、いや
小都市とも言えるほどの巨大な質量を持つ艦、その名を『翠』と言う
なのはがこの艦の建造を推し進めた本当の理由について彼女らが知るのはまだ少し後の事である




「そういえばヴィヴィオちゃんの部隊、翠の専属になるみたいだね」
エリオがパスタを頬ばりながら言った
ちなみに家ではティアナに『喋りながら口に物を入れない!』といつも叱られている
子供の頃はむしろ行儀が良かった方だから、これはあたしが甘やかしちゃったのだろうか…
などと嫁は常々考え悩んでいた、が、エリオとしてはそう言われるような家庭が幸せだったのだが
もちろんナイショだ

隊舎食堂

 エリオは総隊長になった今でも相変わらずここで食事を取っていた
スバルも一緒で隊長となった今も高級な場所よりこちらの方が居心地が良い二人であった
「いいんじゃないのかな?あの隊もずっと立ち居地がいまいち不安定だったし」
 こくこくとぐびーっと大ジョッキで野菜ジュースを一気に飲み干したスバルが応えた
昔より若干飲み方が大人らしくなった、でも総量は結局変わっていない
細い体のどこにあれだけの量が入るのだろう?
エリオの副官兼秘書の少女は感嘆と呆れの中間地点で眺め上官二人を眺めながら
パクリとニンジンの欠片を齧って思った

「治外法権みたいな部隊でしたからねー、あ、で、やっぱりと言うかあそこも隊長達の身内なんですね?」
やや苦い顔でエリオは尋ねた
「やっぱりって…それ君どういう意味…」
 あはは…青い髪の少女は笑って誤魔化した、スバルも何となく笑った、時空管理局で問題が持ち上がると大抵は
なのはさん派、つまりエリオも含まれる巨大人脈にぶち当たるのが常であった
ちなみに当人達は未だにこの人脈の力を自覚していない

73 名前:y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/02/10(日) 23:38:33 ID:dJo2gFMa
 流星騎士団
なのはさんの直属精鋭部隊である
隊員数16名の小さな部隊、メンバーは全員女性だがそれ自体はここ(管理局)では珍しくもない
問題は火力だった

 構成メンバーは直属精鋭の頭に『魔王の』が付くと言われるほど図抜けた戦闘集団だった
現在の隊長はヴィヴィオ高町・聖王
 そもそもこの部隊の発足の原点が彼女だった、血が血だけにヴィヴィオは成人前から
教会の原理派、および穏健派から御神体と崇められ、本人は迷惑していたが、崇拝の対象であった
周りとしては彼女はこのまま聖王教会の庇護に入るものと思われていた

 しかしヴィヴィオ本人はたっての希望で空士の道を選び、反対していたなのはも不承不承それを許可した
納得しなかったのは聖王教会である、聖なる血筋を危険に晒すなどもっての他

 という事で教会各派の代表としてヴィヴィオには
騎士の中でも選り抜きの者が護衛として付く事となった
管理局としても聖王教会との軋轢は望むところでは無く、見て見ぬフリだった
 こうしてヴィヴィオは
訓練生時代からお供を連れて歩く事となる、食事も隊舎も、部屋に至っては豪奢な一人個室だった
これを大層嫌がった本人と、かねてからなのはの考えていた
彼女直属部隊の設立構想が融合して、部隊、流星騎士団誕生の運びとなったのであった


「でもあの部隊ってめちゃくちゃ火力あるんでしょ?いくら聖王教会でもよくそんなに腕利きばっか
集められたね」
3枚目のハンバーグを頬張りながらエリオが言った
「え?エリオ知らないの、聖王教会の騎士は確か4人よ、あとはなのはさんの推薦」
「推薦?へぇ」
「隊長、あそこの部隊が何かと曰くつきなのは隊員のほとんどが正規部隊出身じゃないからですよ」
エリオは少し意表を突かれた
「え?」

 そう、もともと人材が不足していた空士からさらに自分の直属に精鋭ばかり引き抜き…
そんな事を考える人では無かった、なのはの考えていた事はそれとはまるで逆の発想だった

「人が足りないならかつての私達みたいな子を違う世界から探せばよい」
こうして10年の歳月をかけてなのは自身が中心となり探して、…時に勝負して集められたメンバーは
大半がミッドチルダ外世界出身者で固められ、揃いも揃って問題児ばかり、おまけに元犯罪者も大いに含まれていた
 現副隊長からして、単独で地上本部を強襲した戦闘機人だった、ティアナが一敗地にまみれた相手その人だった

集まった綺羅星のごとく(なのはさん視点)メンバーの一覧を見てなのはさん曰く
「ホントにみんな昔のあたしとフェイトちゃんみたい…、頼もしいよねこの娘たち…」
目を細めてそう言われた相手は後見の相談を受けたクロノ提督だったが
全員『ソレ系』のメンバー表を見て、これを承認するのか、と上機嫌でニコニコしているなのはを見て
独り冷たい汗を首筋に流していたと言う


「…よくそれで何も問題起きてないですね…」
私達が言うのも何ですけど、シャマルが呟いた

八神家の食卓

「聞くところによると、ディバインバスター級砲撃、アクセルシューター…は、全員習得済み…」
手ごわいですね、とシグナム
「全員AAAクラス以上みたいやな、んで、ついた仇名が…16人のなのはさん…」
「とんでもねーな…あんまり考えたくねえ」
ヴィータがげっそりした顔で言ってプリンを頬張った、想像したのは出合った当時のなのはが
編隊組んで飛んできて一斉砲撃してくる様だった



74 名前:y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/02/10(日) 23:42:09 ID:dJo2gFMa
 ヴィータは知るべくもなく事実はすでに想像を超えつつあった
なのはがこの部隊のメンバーに積極的に仕込んだのは個々の戦闘能力ではなく
集団戦のスペシャリストとしてのスキルだった

A・C・Sドライバーによる集合編隊、連続突撃
アクセルシューター16×16+ヴィヴィと副隊長はあと2発づつ追加で雨あられ、などなど…

 全力全開本気でヴィヴィオ達を仕込んでいたなのはさんであった
イメージとしては空の重装騎兵団だった、もしくは西部劇の騎兵隊、ヴェトナム戦の航空戦力…
とにかく戦場に現れたら敵が絶望しそうな精鋭軍団、それがなのはが彼女らに求めたイメージだった
ちなみにヴィヴィオはすでに収束型魔法も取得していた

 幸いな事にこの軍団の本気を食らった不幸な犯罪者は今のところ居ない
それを使用するはるか手前でメンバー個々人に全員轟沈されていたのだった

 暇を持て余した彼女らは隊内で連日ガチ勝負を繰り返しさらに個々の性能を高めていたのであった
その中心に居たのが高町ヴィヴィオだったのは言うまでもない
彼女が隊長の地位に居るのは純粋戦闘力の所産であり、副隊長も実力をもってタイマンで倒したヴィヴィオであった

続く






前回エロ入るかもとか言って入りませんでした
次回こそは…
とか言ってなのレンジャーかもしれませんではまたまた

75 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:06:01 ID:lFsLHlP8
GJ
想像するだに恐ろしい…なのは×16
しかし有機無機の違いはあるとはいえスカリエッティのバックアップ同士の争いかあ
規模もでかくてはた迷惑な…

76 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:06:44 ID:mZN1+5fb
>>74
発想のスケールがすごい・・・・クロノの気持ちはもの凄くよくわかる。
2人のスカリエッティ・・・個人的には生身の方を応援したいですが、どっちが勝ってもその先に修羅場があるような・・・。
オットーとザフィーラができているってのも意外な組み合わせだ。また、妙にハマっている感が・・・。

77 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:14:12 ID:IQwhznOu
>>74 GJ
16人のなのはさん・・・たとえスカリエッティ二人が協力しても勝てる気がしないwww

78 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 00:18:58 ID:QAVbkYGv
今回はじめて腰据えて読んだんだけどオットーに萌えたわ。
自由奔放でマイペース。口数少ないながらも男をからかう愛嬌もあり……思わずときめいてしまった。

79 名前:( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc :2008/02/11(月) 00:21:08 ID:6IEiCWQ/
ウェ、ウェウェウェウェンディが結婚!? Σ(゚д゚ 三;゚Д゚)だ、誰だ相手は!? 俺か!?

…………

失礼しました。

注意事項
・もう捏造がもンの凄い事になってます。
・正直アリサ強杉。どこの跳躍系だ。
・今回、前半部分は、A's本編の一部ストーリーの部分をダイジェスト形式にしてます。
・非エロ。ガチバトル。
・あぼーんキーワードは「燃え上がる炎の魔法使い」

80 名前:燃え上がる炎の魔法使い 10-01/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/11(月) 00:21:54 ID:6IEiCWQ/
「話を聞けっつーの!」
『Load Cartridge』
 ズドンッ
 CVK-695Dの尾栓がブローバックし、2発の空薬莢が排莢される。
 ガキィンッ!
 オレンジ色に輝くレイジングハートと、炎を纏ったレヴァンティンが交錯する。
「残念だが、今はそのような暇(いとま)は持ち合わせておらん」
「なら、強引にでも作ってやる!」
「臨むところだ、レヴァンティン!」
『Patronenlast!』
 レヴァンティンがカートリッジを撃発させる。
『Schlangeform』
 レヴァンティンの刀身が等分割され、刃の蛇龍と化す。
「バカのひとつ覚えも良いところね!」
「どうかな」
 ひゅおおおっ
 言って、シグナムの姿が、アリサの視界の中から消える。
 風切り音を立て、レヴァンティンが縦横無尽に舞う。
「烈火の剣レヴァンティン」
「この形態でも、なお切れ味は」
「いや増す」
 シグナムの声の音源が、瞬間的に移動する。レヴァンティンで牽制しながら、高速で移
動している。
 ────でも。
「レイジングハート、準備しなさい!」
『Yes, Revolver set』
 レイジングハートの軸と同心円を描く円周上に、複数の魔力弾が集束する。
「……、そこっ」
 アリサは振り返り、その視線の先にレイジングハートを向ける。
『Divine clasher, Burst shot』
 6発の魔力弾が、次々に発射される。
「何!?」
『Panzergeist』
 レヴァンティンの放つ光が、シグナムの全身を覆う。そこへ、魔力弾が降り注いだ。4
発を回避し、1発をレヴァンティンで凌ぎ、切り裂いて霧散させる。だが、6発目がシグナ
ムに命中した。
「くっ……」
 アリサの魔力弾とシグナムの強化された騎士甲冑、相反する魔力による反応、爆発が起
こる。その爆煙の中から出てきたシグナムは、しかし、無傷とは言い難い状況だった。腹
部やや右寄りに、騎士甲冑に破れ目ができている。
「ちっ、貫(ぬ)ききれなかったか」
 忌々しそうに言って、アリサは構えなおす。
『Schwertform』
「速度はそれなりに自身があったのだが」
 シグナムもまた、片刃の西洋剣へと戻ったレヴァンティンを構えつつ、言う。
「動きじゃ追いつけないけどね、目で追えない速度じゃないわ。もっと速い人、知ってる」
 挑発するように、不敵に笑いつつ、アリサは言った。

81 名前:燃え上がる炎の魔法使い 10-02/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/11(月) 00:22:21 ID:6IEiCWQ/
「なるほど、その者が師という事か」
「まぁね。でも、その人にもまだ上がいるけど」
「ふ、世の中は広いな。魔法の衰退した世界だというのに、剣だけで戦うなら、その者た
ちに勝てる気がしない」
 シグナムも言い、構えたまま、不敵に笑う。しかし、その笑みは、すぐに消えた。
「なお侮りがあったようだな。謝罪させてもらおう」
「気にすんなって言ってるでしょ」
「だが、これ以上は……すまない、殺さない自信がない」
 殺気を感じさせるシグナムの言葉に、しかしアリサの笑みは消えない。
「上等! こっちも手加減してやるつもりはないわ」
『Ray Lance, multi shot』
『Sturmwellen』
 高速弾の射撃が繰り出される。しかし、その次の瞬間には、お互いにその弾道上には、
いない。
 炎の剣戟が、空中で火花を散らした。
 Dec.22.2005(JST)──第86管理外世界。

燃え上がる炎の魔法使い〜Lyrical Violence + A’s〜
 PHASE-10:Zeitgrenze


82 名前:燃え上がる炎の魔法使い 10-02/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/11(月) 00:22:45 ID:6IEiCWQ/

「夜天の書?」
 アリシアの言葉に、誰かが聞き返した。
「夜天の王、古代ベルカの、指導者の1人ね。最初に作られたのは、そいつが高位の魔法
を記録するための、ストレージだった存在。展開時の形態を除けば、アームドデバイスよ
りは、インテリジェントデバイスに近いわね」
 アリシアは、得意げに説明する。
「別に戦闘だけに特化したものじゃなかったようです」
 リニスが、付け加えるように言った。
「それが、なんだって闇の書だなんて言われだしたのよ」
「闇の書、という言い方自体は、聖王大戦でベルカがミッドチルダに下ってから、ミッド
チルダにおいて付けられた呼び方なのよ」
 問いかけに、アリシアはそう答えた。
「夜天の書が転生を繰り返す中で、手に入れた誰かが、今の闇の書と呼ばれるものに改変
した……その内容が、どんなものかまでは、まだ調べている最中なのですが」
 リニスは、そう言って、困惑気な顔をした。
「ミッドチルダでの呼ばれ方や記録からして、悪意あるものであったことは確かですね」
「下手すれば、主自身を食いつぶすような代物かも。実際、事件が起こった後で生存して
いる主人はいない……」
 リニスの説明に、アリシアが付け加えた。
「しかし、デバイスの範疇を越えてないか、この形態は」
「あら、そうかしら?」
 資料を読んでいた誰かの声に、アリシアは意外そうな声を発する。
「自律思考で、使い手にあわせて形態を変えるデバイスなんて、ミッドチルダのインテリ
ジェントデバイスにも伝説的にいくつか存在してるはずだけど。すぐそこにも、ひとつ」
『It’s impolite. I ‘m not a cruel existence like that』
 レイジングハートが、不機嫌そうに「一緒にするな」と言った。

 ────とにかく、完成させちゃまずいわけね。
 アリサは、自ら言ったその言葉を、リフレインする。
 ────シグナム相手に斬り合いで決着は付かないわね、やっぱり隙をついて射撃で落
とすしか……
 そう、炎と炎で凌ぎあいながら、思いかけたとき。
『アリサ大変! フェイトが!』
 念話ごしに、アリシアの悲鳴が聞こえてきた。
「!?」
 その、一瞬、意識をそちらに奪われたとき。
 しかし、仕掛けてきたのは、シグナムではなかった。
「なっ!?」
 気付けば、アリサは、空中に大の字に貼り付けられていた。リングバインド……
「えっ!?」
 その事実に疑問の声を上げかけたとき。
「バニングス!」
 シグナムの声。それは、まるでアリサに注意を促すようだった。
 アリサが驚いて見上げると、青白い魔力弾が、視界を満たした。そして、次の瞬間、ア
リサの意識は、暗闇の中に落ちた。

83 名前:燃え上がる炎の魔法使い 10-04/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/11(月) 00:23:25 ID:6IEiCWQ/

「なんなのよあいつは、ムカツクムカツクムカツクゥゥゥッ」
 ×2。
 それに若干色合いの差異はあるものの、金髪の美少女が2人並んで、手足を振り回しな
がら地団駄を踏む様子は、ある意味シュールだ。そしてやかましい事この上ない。
「艦内とは言えここは一応病室だぞ、ちょっとは自重してくれ」
「これが落ち着いていられるか!」
「そのとーりっ!」
 アリシアが即座に声を荒げて言い返し、アリサは直立不動の体勢から、右手の中指をび
しっと掲げて、それに同意する。
 クロノは、力なく盛大に溜息をついた。
「アリシア、ごめん、心配かけて」
 ベッドの上のフェイトは、アリシアに向かって、しかしはっきりした声でそう言う。
「ううん、フェイトこそ、大丈夫?」
 アリシアは、くるっとフェイトを振り向き、ころっと表情を憂い気に変えて、そう聞き
返した。
「うん……」
 フェイトは、シグナムとは別の世界で蒐集活動を行っていた、ヴィータに対して、端的
に言えば妨害に行ったのだが、そこで、仮面の男の襲撃に遭った。
 射撃で、ヴィータに対して優位に立ったとき、突如、背後から襲われた。そのまま、バ
リアジャケットを貫(ぬ)かれ、リンカーコアを抜き出された。
「今回は『アースラ』が近くにいたおかげで、処置が早かったからね。アリサやユーノの
ように本格的な治療は必要ないよ」
 クロノは、相変わらず淡々とした口調と表情で、言った。
「ふーん」
 アリサは、どこか素っ気無い返事をする。
「それで、あいつの正体は少しは解ったわけ?」
「それが……すまない。皆目」
 アリサが訊ねると、クロノは珍しく、気落ちしたように言った。
「君やフェイトに不意打ちかますような、高ランクの魔導師なら、管理局は大抵把握して
るはずなんだ。なのに、尻尾すらつかめない。大体、何が目的なのかも、解らないからな」
 言い訳がましく、クロノは、言う。
「そもそも、フェイトを襲撃して、20分足らずで、君を襲ってる。比較的近いとは言え、
個人転送で、どうにかなる距離と時間じゃない」
「んー」
 アリサは不機嫌そうに腕を組み、首をかしげる仕種をした。
「ってことは、各々別人?」
「その可能性も考えたが、データからは、骨格上同一人物だと判定されてる。もちろん、
それが全てじゃないけどね」
 アリサが訊ねると、クロノはそれに、否定的に答えた。
 ────高度な変身魔法? いや、それでも複数の人間が同一人物に成りすますのは、そ
の対象にモデルもない限り無理が……待てよ。
『リニス、取れてる?』
『はい、なんでしょう、アリシア?』

84 名前:燃え上がる炎の魔法使い 10-05/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/11(月) 00:23:49 ID:6IEiCWQ/

 Dec.23.2005、7:30──日本国 東京都 海鳴市。
 バニングス家。
 優しげな緑の光を放つ魔法陣が、足元で駆動する。
「よし」
 軽く閉じていた目を開き、ユーノ・スクライアは短く言った。
 コン、コン
「ユーノ、おきてんのー!? 入るわよー!」
 部屋の扉がノックされ、外から、アリサの大声が聞こえてきた。
 ユーノの返事を待たず、アリサは扉を開けて、入ってくる。
「あ、ユーノ」
 魔法陣が展開しているのを見て、アリサは軽く驚いたように声を上げ、ユーノの顔を見
た。
「もう、大丈夫なの?」
 幾分心配そうに、声をかける。
「うん、もう、完全に元通り……ごめん、心配かけたみたいで」
 ユーノは苦笑して、そう言った。
「べ、別にそんな事は、気にしなくていいわよ」
 アリサは、少し顔を紅くしながら、僅かに拗ねたように、言い返した。
「うん、でも昨日の事も……」
 やや俯きがちに、ユーノは言う。
「ちょっとそれ言わないでくれる? 思い出すだけで頭にくるの」
 アリサはユーノを睨みながら、そう言った。
 ────僕がいれば、不意打ちのバインドや砲撃は防げたはずだ。
「何?」
 ユーノの心を見透かしたかのように、不機嫌そうな表情で、アリサは問い質す。
「あ、いやっ……なんでも、ない」
 ユーノは、ビクッと身体を跳ねさせると、そう言って、咄嗟に誤魔化した。
 ────やっぱり、今のままじゃ、駄目だな。

85 名前:燃え上がる炎の魔法使い 10-06/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/11(月) 00:24:15 ID:6IEiCWQ/

 8:20頃────聖祥大附属小学校、3年1組。
「あのね、アリサちゃん」
 HR前のひと時。
 アリサが自分の席に座り、イライラしながら、トントンと指で机を叩いていると、すず
かが、話しかけてきた。
「あに……」
 よ、と、不機嫌そうに言い返しそうになって、アリサはなんとか、自分を抑える。
 すうと息を吸いなおし、こめかみに浮いた青筋を引っ込めてから、改めてすずかを見る。
「なに? すずか」
 その光景を見て、ユーノは困ったように苦笑している。
「うん、えっと……アリサちゃん、私、もう一度はやてちゃんと話してみようかと思って
るんだけど……」
「はやてと?」
 俯きがちに、おずおずというすずかに、アリサはすこしキョトンとして、聞き返す。
 怒りの矛先が仮面男に向いてる最中だっただけに、はやての名前に過剰反応しないで済
んだのだ。
「明日、クリスマスイブでしょ? だから、できたら、はやてちゃんも一緒に、お食事とか
誘えないかなって」
「あ……」
 アリサは、気まずそうに、一瞬視線を背ける。
 その先を、ユーノ、アリシア、フェイト、なのはと走らせて、すずかに戻した。
「そりゃまずいわ、あたしやなのはとシグナム達が遭ったら、その場で戦と、……喧嘩に
なるから」
「そうなの?」
 すずかは困ったように、悲しげな目をして、聞き返す。
「でも、すずかに会ってきて貰う、って言うのはいいんじゃないかな」
 立ち上がって近付いてきたユーノが、そう提案した。
「ふむ、あいつらもすずか1人なら、問答無用で襲いかかったりはしないか」
 アリサも顎を手で支えて、視線を下げつつ、そう呟く。
「はやてに直接話が通るんなら、その方がいいだろ?」
「うーん、すずか、ごめん。1人で行かせちゃうけど、はやてに会ってきて貰えるかしら?」
 アリサが苦笑気味に言うと、すずかは、にこっ、と、満面の笑顔で、
「うん、いいよ」
 と、答えた。
 しかし、その表情は、すぐにまた、曇る。
「はやてちゃん、そんなに危ない事してるの?」
「はやてがって言うか、シグナム達がね」
 アリサは苦笑しつつ、すずかにそう答えた。
「そうなんだ……」
 すずかは気落ちしたように、視線を下げて、小さく言った。
「うん、でも、すずかがはやてに会ってくれれば、それも解決するかも知んない」
 アリサは苦笑顔のまま、そう言った。
「本当!?」
 すずかは、声を上げて、視線を上げる。
「うん」

86 名前:燃え上がる炎の魔法使い 10-07/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/11(月) 00:24:35 ID:6IEiCWQ/
「それに、はやての為でもあるしね」
 アリサの返事に、ユーノが付け加える。
 『夜天の書』を『闇の書』とした、悪意ある改変。
 その全貌はまだ解っていなかったが、少なくともこの先、はやて自身の為にならないこ
とだけは確かだ。
「責任、重大だね」
 ごくん、すずかは喉を鳴らして、決意を秘めたように、そう言った。
「そう言う事」
「まぁ、そんなに気負わなくても良いと思うけどね」
 苦笑したまま言うアリサに、ユーノが付け加えた。
 ガラガラガラガラ……
「はーい、みなさーん」
 教室の扉の開く音がしたかと思うと、担任の教師が、顔をのぞかせ、声をあげた。
「終業式が始まります。講堂へ移動しますから、廊下に整列してください」

87 名前:燃え上がる炎の魔法使い 10-08/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/11(月) 00:25:02 ID:6IEiCWQ/

 11:40頃────
「すずかちゃんが、はやてちゃんの所に行っくれるの?」
「ん、そう言う事になったの」
「うん」
 なのはの問いかけに、アリサが答え、すずかも肯定の頷きをした。
「それで、一応クリスマスってこともあるし、なにかプレゼントを選ぼうかって言う話し
になってね」
 ユーノが言う。
 これにフェイトとアリシアを加えた6人は、制服姿のまま、駅前商店街に向かって歩く。
 小学生が下校途中に寄り道というのは、あまり好ましくないが、まぁこのメンツなら、
誘拐犯が来たところでそいつは斬り倒されるか感電して黒コゲか塵ひとつ残らないかのは
確実である。
 別の方向に危ないような気もするが。
「それなら、私は翠屋のお菓子にしようかな」
 なのはは口元に指先を当てつつ、呟くように言った。
「でも、クリスマスって、この世界の聖者の誕生日なんでしょ? それが何で、プレゼント
とかそう言う話になるの?」
 アリシアは、頭ひとつ近く身長の高い他のメンツを見上げながら、不思議そうに訊ねる。
「それはね、元々クリスマスにはサンタクロースって言う習慣があってね」
 すずかが、説明を始める。
「サンタクロース?」
「そう、赤い服を着たおじいさんがね、クリスマスイブの夜に、世界中の子供たちにプレ
ゼントを配って回るの」
「!?!?」
 アリシアは、目を白黒させる。
「ど、どうやって?」
「えっと、トナカイの引く空飛ぶソリに乗って」
「……!? いや、ソリ型の飛行用デバイス……でも、トナカイってのは……それに、世界中
の子供って、どうやって把握してるの?」
「えっと、どうやって……かな?」
 アリシアに問い返され、すずかは苦笑混じりに、言葉をつまらせる。
「脅威の存在だわ」
 アリシアは腕を組んで視線を下げ、うーんとうなり始めてしまう。
「あの白い蛇みたいな特急と言い、管理外世界が自分たちより遅れてるってのは、ミッド
チルダ人の思い上がりなのね……」
「いや、サンタクロースとロマンスカー一緒に語られても……」
 もともと日本育ちのアリサ、なのは、すずかと、日本にすっかり馴染んでいるユーノは、
アリシアの呟きに苦笑する。
 駅前に出たところで、無限書庫へ行くアリシアと別れる。
『明日か明後日がTime limitだって言ってたわよね』
 アリサは、念話で、すずか以外の3人に話しかける。
『ごめん、今日は私の魔力が回復してないから……』
 フェイトが、申し訳なさそうに言う。
 通りかかったファンシーショップの前で、アリサはショーウィンドゥの中の、デフォル
メナイズされた猫や犬のぬいぐるみがたくさん置いてあるのを、見る。
 しかし、その表情は、硬い。

88 名前:燃え上がる炎の魔法使い 10-09/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/11(月) 00:25:45 ID:6IEiCWQ/
『もしすずかが行っても駄目だったら……』
 フェイトも、重々しく、言う。
『本気でかかるしかないわね、ここの4人と、クロノとで』
『闇の書が完成したってなれば、多分、リンディ提督自身も出てくるよ』
 アリサに、フェイトが付け加えた。
『なのは、解ってんでしょーね』
『え、あ……』
 アリサに言われて、なのはは一瞬、言葉を詰まらせる。
『大丈夫、だよ』
 なのはは言うが、様子を感じたアリサは、念話をフェイトだけに絞る。
『なのはは戦力外だと思ったほうがいいかも』
『そうだね、なのはは優しすぎるから……』
 そう答えるフェイトも、どこか切なげだった。
「どうしたの? アリサちゃん? みんな?」
 重々しい雰囲気に、蚊帳の外に置かれていたすずかが、キョロキョロと4人の顔を見回
す。
「え? あ、なんでもないの。そうだ、あたしははやてへのプレゼント、ぬいぐるみにし
ようっと」
 そう言って、アリサは笑顔を作ると、すたすたと店内に入ってしまった。
「あ、まってよアリサちゃん」
 すずかが、慌ててそれを追い、ユーノやなのは、フェイトも、それに続いた。
「すみません、ショーウィンドゥにある犬と猫のぬいぐるみをください。クリスマスプレ
ゼントで」
 と、アリサは言ってから、
「それと、あの女の子のぬいぐるみもください。別の包みで」
 なぜか一緒に展示されていた、銀色と青の鎧をつけた少女がデフォルメされたぬいぐる
みを指して、アリサはそう言った。これは、シグナムに贈ってやるつもりで。

 ほぼ同時刻──八神家。
「ふぁぁぁ……」
 調度品も少ない部屋の中、ベッドの中で、大欠伸を上げる声を上げた。
「なんや……もうお昼やないか……」
 はやてから持たされた、フリップ式ではない小型の携帯電話を手に取り、そのディスプ
レイの時刻表示を見て、レンはそう呟いた。
「なんや、みんなでお寝坊さんかい。あたしも人の事言えんけど……まぁ、昨日シグナム
達遅かったし、しゃあないか」
 レンは、苦笑して呟きながら、身体を起こそうとする。
 ────ドクン
「!」
 ドクン、ドクン、ドクン、ドクン……
 身体全体を揺さぶるような、異様に重い鼓動、動悸。……動悸? 守護騎士の自分が?
「ちょぉ……これは……」
 ガバッ、と、飛び起きる。
 その時だった。
「シグナム! シャマル! はやてが、はやてがぁっ!!」
 はやての部屋の方から、ヴィータの悲鳴が上がった。

89 名前:燃え上がる炎の魔法使い 10-10/11 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/11(月) 00:26:29 ID:6IEiCWQ/

 翌日────Dec.24.2005。
 バニングス家、アリサ自室。
 携帯電話の着信音が鳴り、アリサは枕元においてある、それを手繰り寄せた。
 フリップを開け、通話ボタンを押す。
「ふぁい……なに……すずか?」
 冬休み1日目、アリサは前日もプレゼントの買い物の後、高町家で美由希や恭也と手合
わせしてきた疲れで、既に昼近いというのに、ようやく目覚めたばかりだった。
 だが。
 電話をかけてきたすずかの声を聞くなり、ぱちっと覚醒し、目を円くする。
「鮫島、車準備しといて! ユーノ!」
 広い家の中をかけながら、そう、大きく声を上げる。
「ユーノ!」
 ノックもなしに、ユーノが宛がわれている部屋の扉を、乱暴に開けた。
「な、なに? アリサ……?」
 読書をしていたユーノは、突然の事に、思わずたじろいだ。
 空は、暗い。
 関東の冬にしては珍しく、深く雲が立ち込めていた。
 ストレッチリムジンが、幹線道路を行くが、年末で車が多く、なかなかスピードも出せ
ない。アリサは神経を逆なでされ、シートに座ってもいられず、セカンドシート越しにフ
ロントガラスから、軽く渋滞している交差点を見る。
『はやてちゃん、昨日、倒れて、病院に運ばれたんだって!』
 八神家に向かったはずのすずかが、アリサに電話をかけてきて、開口一番、そう言った。
 ────まさか、闇の書が……
 信号が変わり、リムジンは発進するが、40km/hにも達せず、次の信号待ち渋滞にかかっ
てしまう。
 日中という事もあり、魔法での飛行ではなく、車を出してもらったのだが、裏目に出て
しまった。
 アリサはもどかしそうに、時折「う〜」と唸る。
 シートに腰を落ち着けつつも、ユーノの表情も険しい。
 ──海鳴市立総合病院。
 ベージュの建物の前に、既に、なのはがいた。傍らに、子供用の、つまり、なのはの自
転車が停められている。
「ごめん、遅れた」
 リムジンの後部ドアを、自分で乱暴に開けると、アリサはばたばたと飛び出し、なのは
に声をかける。それを、後からユーノが追いかけた。
「フェイトは?」
「まだ、来てないみたい」
 アリサの問いかけに、なのはが答える。
「しょうがない、先に行くわよ」
「う、うん」
 アリサがそう言って走り出すと、なのはは少し慌てがちに頷いて、アリサについて小走
りに建物に入った。
『どこの病院!? 部屋まで聞いたの?』
『市立総合病院の、5階の530病棟……ってところだって。部屋までは、解らないけど……』
 エレベーターが上っていく表示を、アリサはその場で駆け出してしまいそうな勢いで、
なのはは不安そうに、ユーノは険しい表情でそれを見ている。同乗している大人の見舞い
客が、小学生だけの3人連れを、不思議そうに見ているが、構ってはいられない。

90 名前:燃え上がる炎の魔法使い 10-11/13 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/11(月) 00:27:00 ID:6IEiCWQ/
「5階! 530は……こっち!?」
 エレベーターを飛び出し、表示を見て、左側に駆け出す。
「こら! 病院の中は走らない!」
 ナースステーションの前を走り抜けると、女性の看護師の怒声が聞こえてきたが、それ
にも構わず、アリサは病棟に入る。
 部屋毎に探すつもりでいたが、それは、不要だった。
「来たんやな、やっぱり……」
 廊下の途中、白いセーターにミニスカートという出で立ちの、しかし、その地球の人種
にはありえない特徴から、すぐにそうとわかる存在。レンが、アリサ達の行く手を阻むよ
うに、立っていた。
「!」
 3人は、気圧されたかのように、立ち止まる。
「せやけど……やっとここまでこれたんや。あと少し、あと少しで全部終わる……せやか
ら、邪魔させるわけにはいかへん」
 レンは言、静かに、しかし、重々しく、相手に響く声で、そう言った。
「な……何言ってんのよ!」
 アリサは、少し怯みかけたが、すぐに強気を取り戻して、声を荒げる。
「『闇の書』が完成したって、はやては救われなんかしない、それどころか、逆かもしれな
いよ!」
「言うてもわからへんようやなぁ」
 アリサの言葉に、レンはすっ、と、右手を上げた。
 その手には、既に、ジルベルンメタリッシュが嵌められている。
「“全部”終わる、言うてるんやで?」
「!?」
 それを見て、反射的に身構えた、次の瞬間。アリサの周囲の光景が、全く別のものに置
き換わった。
 否、アリサ達の周囲が変化したのではない。
「強制転移!?」
 ユーノが、素っ頓狂な声を出した。
 無機質な鉄筋の床、金網のフェンス。しかし、建物の内部ではなく、空には、今にもぐ
ずりだしそうな、低い空が広がっている。どこかの屋上だろうか。
 そして、アリサ達の目前に、シグナムとシャマルの姿。彼女らもまだ、はやてに与えら
れた私服の姿のままだった。
 アリサとシグナムが、お互いに睨み合いつつ、胸元の相棒に手を伸ばそうとしたとき。
「待って!」
 その声が、緊張した空気の中に響く。
「フェイト!」
「フェイトちゃん!」
 既にバリアジャケット姿になったフェイトが、高速で飛来して、その場の空中で停止す
る。空中に立つその姿を見て、アリサとユーノ、なのはが、その名前を呼んだ。
 重苦しい空気を纏った、シグナムとシャマルは、動じない。
「シグナム、シャマル、聞いてください。私達は、こんな事をしている場合じゃない」
 フェイトが言い、続く言葉に口を開きかけたとき。
「だらぁーっ」
「!」
 既に騎士甲冑姿のヴィータが、グラーフアイゼンを手に、フェイトに襲い掛かってくる。
『Defenser』

91 名前:燃え上がる炎の魔法使い 10-12/13 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/11(月) 00:27:25 ID:6IEiCWQ/
 バルディッシュが金色のシールドを張る。グラーフアイゼンの槌とフェイトのシールド
がぶつかり、激しく火花を散らす。
『Scythe form』
 フェイトが構えなおしつつ、バルディッシュの刀具が開き、魔力光の刀身が生まれる。
「レイジングハート」
『O.K. Master』
 アリサは、ネックレスのレイジングハートを掴むと、シグナムを睨みつける。
「これがベルカの騎士のやり方ってわけ? シグナム」
「この期に及んで、言い訳はせん」
 シグナムは黙って、レヴァンティンを手に取った。
「そう」
 片刃の、一体鋳造風の西洋剣を模って、己を構築したレイジングハートを握り、それを
正面に立て、構える。
「この世界にも騎士と呼ばれる人たちがいるわ。Knightね」
 一瞬、アリサの爪先から頭に向かって、炎が走るように、オレンジの魔力光が走る。バ
リアジャケットが展開される。
「ペンドラゴンの末裔、末端に連なる者として、名ばかりの騎士を、叩きのめしてあげる」
 挑発的なアリサの声。だが、その顔に笑みは無く。一方のシグナムも、言葉は無く。レ
ヴァンティンを起動して構えると、騎士甲冑を展開する。
「なのは、早くバリアジャケット展開して!」
「えっ? う、うん」
 待機状態のL4Uを手に握りつつも、逡巡していたなのはを尻目に、ユーノがシャマルに
向けて飛び出す。
「レイ・ランス!」
 ユーノの右手を纏うように、緑色の光の、ミッドチルダ式の魔法陣が展開する。青白い
魔力弾が集束し、シャマルめがけて撃ち出された。
『Schutzfeld』
 ユーノと良く似た緑色の魔力光、ベルカ式の魔法陣がシールドを構成し、それを難なく
弾き返す。
 その閃光とほぼ同時に、シャマルの衣装も騎士甲冑に変わる。
「ラウンドガーダー……シールドスマッシュ!」
 同種のシールドを展開すると、ユーノは飛行魔法の推力をそれに載せつつ、シールド自
体をシャマルに向けて叩きつける。
「ブレイク!」
「えっ!?」
 カッ!
 シャマルの視界を灼(や)く閃光と共に、爆発の衝撃が走る。
 しかし、魔力が対消滅する爆煙が、その残滓の霧と共に晴れた先で、シャマルはクラー
ルヴィントの嵌った手を突き出し、しかしほぼノーダメージで立っていた。
 ────やっぱ、デバイス無しじゃこの辺りが限界か……
 ユーノは思いつつ、次の術式を展開する。
「レイ・ランス!」
 ザッ
 ようやくL4Uとバリアジャケットを展開したなのはの背後で、足音がする。なのはは、
足音に一瞬、びくっ、と背筋を跳ねさせるが、すぐに落ち着きを取り戻す。
「レンちゃん、だったよね」
 振り返って、名前を呼びかける。

92 名前:燃え上がる炎の魔法使い 10-13/13 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/11(月) 00:27:48 ID:6IEiCWQ/
「もう、お話じゃ解決できないのかな」
「無理やな」
 答えに、なのははL4Uを両手で構えた。そこへ、白銀のジルベルンメタリッシュを輝か
せ、レンが飛び掛る。
『Load Cartridge』
 ズドンッ、レイジングハートのCVK-695Dユニットから、2発の空カートリッジが排莢さ
れる。
『Patronenlast』
 ガァンッ、レヴァンティンが、やはり撃発工程を行う。
 静かな炎と烈しい炎、持ち手とは相対するそれを纏ったレイジングハートとレヴァンテ
ィンが、交錯して、火花を散らした。

 僅かに離れた、テナントビルの屋上。
 烈しく交錯する複数の魔力光を確認し、見つめる、2組の双眸があった。
「期は熟せり。行くぞ」

93 名前:燃え上がる炎の魔法使い 10-13/13 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/11(月) 00:35:28 ID:6IEiCWQ/
>>80-92

レス番ミス 今回全13レス(だから長ぇよ)で、>>82は03/13です。

補足・アリサの「ペンドラゴンの末裔」という言い方は、別に直接の血縁関係を示しているわけではありません。
   英国騎士の比喩的表現です。

 でもベルカ騎士はプロイセン騎士がモデルなんですよね。
 で、現在の英国王室(ウィンザー朝)はドイツ系だった利するし。

 さらに厳密に言うと、アングロサクスン系イングランド人はその時代の侵略者の側だったりするし。
 

というわけで、今回は以上です。
展開がA'sまんまになってしまい、期待されていた方申し訳ありません。

ただ、完全燃焼とは言わないまでもこの後ちょろっとだけサプライズあるよ。

94 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 01:06:45 ID:I+Uj0r1C
>>93
って貴方様のアリサは聖杯戦争のあの騎士王の末裔だったのか〜!!?と叫びたくなってしまった。。。
成程そういう意味だったかw
んでは次回のサプライズに期待w

95 名前:( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc :2008/02/11(月) 01:11:26 ID:6IEiCWQ/
蛇足の蛇足
>あの騎士王の末裔
ちなみにご本人が(正確にはご本人の○○○゙○○ですが)登場していたことに気付いた奴はちょっと頭冷やしてきてください。

96 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 01:18:13 ID:4V56d9xq
>>93
ペンドラゴンの末裔、なんとなくそんな感じの比喩かなとは思ったけど
それでも「約束された勝利の剣」のBGMひっさげて極大収束魔法刃をぶっぱなす
騎士王様っぽいアリサさんを想像したのは俺だけでないはず。

97 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 01:18:43 ID:XPGU2t8l
>>95
…頭冷やしてきますorz

98 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 01:20:34 ID:2G2ifXW4
右に同じorz

99 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 01:24:09 ID:4V56d9xq
微妙に分からなかった俺は勝ち組。

ごめ、負け組です。さびしいよ(´・ω・`)

100 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 01:34:29 ID:BHLRYxFx
前スレ、華麗に500kb消費したなw

101 名前:26-111:2008/02/11(月) 01:35:27 ID:ieLhPZLv
夜も更けて参りました
最近、GJなエリオ分が多すぎて、私なんぞが今更ここでエリオ分を投下して良いものか・・・
投下、しちゃいますけどね。結構ガツンと、大型です

・「小さな騎士」の後編になります
・非エロ
・メインはティアナとエリオ
・ガチバトルもあります。というかこっちがメインです
・タイムテーブルは14.6話くらい
・使用レス数28レス

では、投下します

102 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 01:35:33 ID:0blBGMsw
>>99
バルディッシュの持ち主の名前でググると幸せになれるかも。

103 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:36:16 ID:ieLhPZLv
――― ぼやけた意識に、小鳥の囀りが聞こえてきた

(あぁ、朝だ・・・起きないと・・・)

ティアナは、起き抜けの朦朧とした意識の中でそんな風に考えるが、意識とは裏腹に、身体はぐったりと弛緩したままだ・・・このままでは二度寝をしてしまう
どちらかと言えば低血圧気味なティアナではあるが、こんな風に、抗い難い程の二度寝の誘惑に襲われる事は滅多に無い
温かい毛布に身体中で抱き付いたまま、ティアナは重い瞼をこじ開けようとするが・・・

(ん・・・だめ・・・眠い・・・温かいし・・・)

ぎゅっと身体を丸めるように、毛布に顔を埋めようとして



唇や顎の辺りを、ちくちくとした刺激が襲った



(・・・?)

寮とは違って、この部屋は空調がきいている隊舎の客室である。備え付けの寝具は軽くて柔らかい薄手の毛布だった・・・断じて、素肌をちくちくを刺す様な安物では無かった筈だ
抱き締めた感触も、何だか硬い・・・重さを感じない程に軽い上掛けだった筈なのだが・・・?
ティアナは目を開ける・・・重い瞼を強引にこじ開け、



一番に目に入ってきたのは、赤い髪の毛だった
二番目に見えたのは、困り切った青い瞳だった
三番目に見えたのは、真っ赤に赤面した頬だった



抱き締めていた“毛布”の正体は、どこからどう見ても、エリオだった


104 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:36:47 ID:ieLhPZLv
「・・・お、おはよう、ございます・・・」

10代半ばにしては豊かな胸に抱き締められた姿のエリオが、上目遣いに自分を見上げながらそう言った
目は醒めた。一気に醒めた。あれほどに耐え難かった二度寝の誘惑は虚数空間の彼方までぶっ飛んだと言っても良い
しかし、これはどういう事だろう?どういう状況なのだろう?
何故、自分はエリオを、ご丁寧に足まで絡めて抱き締めているのだろうか?
何故、部屋着のシャツが、ブラジャーが少し見そうな程に捲り上がっているのだろうか?

悲鳴を上げるべきか、エリオの身体を突き飛ばすべきか、着衣の乱れを直すべきか、ここは一つ深呼吸でもして冷静になってから行動するべきか、
頭の中で一瞬のうちにアレコレと選択肢が現れ、ティアナはその全てを選び、即座に実行しようとしたが、胸の谷間に顔を埋めている・・・
否、埋め“させて”いる少年の顔を直視してしまい、頭の中が真っ白になった

せめて、この熱烈な抱擁を解いていれば良かったのだが、

「ティアー、エリオー!二人とも朝だよー!今日も寝不足?早く起きないと遅刻しちゃ

訓練服に着替え、準備を万端に整えたスバルの乱入に、ティアナとエリオの思考は完璧に漂白された。ついでにスバルの顔もガキリと凍り付いた
スバルの目には、“乱れた着衣で抱き合った寝姿の二人”としか映らない光景である
ティアナとエリオは、何かしらの弁明を述べようとはするが、お互いにきつく抱き締めた、或いは抱き締められた格好のままである
どんな想像をしているのか、トマトの如く頬を染めたスバルの誤解を解くには、些か説得力に乏しい姿だ。ティアナの背中に滝のような冷や汗が流れた

そんな、限界まで空気を蓄え、割れる寸前まで膨らんだ風船のような、一触即発な雰囲気が満ちた部屋に、

「スバルさん。ティアさんとエリオ君、まだ起きないんですか?」

キャロまでが乱入してきた
彼女はまず、硬直しているスバルの姿を見つけ、続いて、ソファの上で抱き合っている(様にしか見えない)ティアナとエリオの姿を見た

パートナーである少女に見られた・・・エリオの背中に滝の様な流れた

だが、キャロは大きな瞳をぱちぱちと数回まばたかせ、にこっと笑顔を見せた


105 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:37:23 ID:ieLhPZLv
「あ。エリオ君も、ティアさんと一緒に寝てたんだ」
「え?あ、う、うん・・・」
「私も、スバルさんと一緒のベッドで眠ってるんだ・・・誰かと一緒って、温かくて気持ち良いよね」
「そ、そうね・・・」
「それじゃ、ティアさんもエリオ君も、早く着替えないと朝ご飯無くなっちゃいますよ?」

う、うん。わかったよ。り、りょうかい、ありがとね。あ、あはは、それじゃあたしたちはさきにいってようか、きゃろ

「はいっ!スバルさん!」

乾いた返事を返す三人の姿には何一つ疑念を抱かず、キャロは実に元気な返事を返して、スバルと手を繋いで退室していった
スバルとキャロが居なくなり、二人きりになると・・・ティアナはようやく腕の力を緩め、エリオと共にガバッと身を起こした
お互いに真っ赤に赤面した顔を直視できず、気まずい空気が二人の間に流れる・・・視線を逸らした先にあった時計の分針を見て、二人は揃って青ざめた

「え、ええぇぇぇっ!!?ちょ、もうこんな時間!!?」
「うわ、うわわわっ、す、すぐ着替えないと、朝の訓練に間に合わないですよっ!!」

二人は転げ落ちるようにソファから下りると、実況検分はひとまず後回しとすることに決めて、まずは身支度を調えることにした
二人は揃って互いの体温が残る上着を脱ぎ、ズボンに手を掛けた所で、何となく目が合った

エリオは上半身裸の姿で、前屈みになってジャージのズボンを脱ごうとしていた
ティアナは、上半身下着姿で、前屈みになってショートパンツを脱ごうとしていた

「む、む、向こうで着替えますっ!!」

エリオは、前屈みな格好のまま、訓練服の上下をひっ掴むとシャワールームに駆け込んだ
ティアナは頭を抱えて、穴があったら即座に飛び込みたい気分になりながらも、部屋着のズボンを脱いで訓練服のシャツを着込み、半袖を肩口まで捲り上げた
靴下を穿いて、膝当てを縫い止めた丈夫なズボンに足を通

「ティアさん!お待たせしまし

シャワールームから飛び出してきたエリオは、逆再生の様な動きでシャワールームに戻った


106 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:37:55 ID:ieLhPZLv
「・・・・・あああぁぁぁぁっ!もうっ!!」

エリオが悪いわけではない。着替えが遅い自分が悪い
そう言い聞かせながら、ティアナはズボンを穿き込み、ベルトを締め、ホルスターセットとグローブを手に取り、シャワールームのエリオに向けて叫んだ

「エ、エリオ!もう着替えたから、急ぐわよ!!」
「・・・は、はい!!」

怖々と、ドアの隙間から顔を覗かせたエリオだが、ティアナが無事訓練服に着替えていることを確かめると、勢い良く飛び出してきた

二人は部屋を飛び出し、食堂に駆け込んだ。スバルとキャロの姿は見えない。既に朝食を終えて訓練場に向かったのだろうか
ティアナとエリオは、今朝の朝食・・・トーストにサラダに目玉焼きにカボチャのスープと牛乳、というメニューに向かって一度手を合わせ、いただきます、と唱和すると、
サラダと目玉焼きをトーストで挟むと豪快にかぶりついた。3口で完食、新記録である。ぶらぼー
湯気を立てるスープに冷たい牛乳をぶち込んで適温に冷ますと、スープ皿に直接口を付けて一気に飲み干す。行儀が悪いのこの際目を瞑っていただきたい
空になった食器に向かって手を合わせ、ごちそうさま、と唱和。所用時間僅か1分足らずの朝食であった
食器の返却口にトレイを置くと、二人は訓練場まで走る、必死に走る。脇腹が痛いが構わず走る

――― なのはが訓練場に来るまでに、4人で整列をしておくのが決まりなのだ

訓練場まであと200m。スバルとキャロは既に訓練場で待っているのだろう。そして、自分達の100m程前方を歩いている、白いジャケットと明るい髪色のサイドテールに・・・

「「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」」
「え?な、何!?ティアナに、エリオ・・・?きゃっ!!?」

二人は悲鳴を上げ、背伸びをしながら歩いていたなのはの脇を猛然と駆け抜けて、飛び込むように訓練場に駆け込んだ
スバルとキャロの呆れ顔に見守られながら、二人はこれ以上無いくらいの全力疾走に震える膝を叱咤して、何とか整列した
いつも通りのスバルとキャロに、いつもからは考えられないティアナとエリオ
そんな4人の姿に、なのはは首を傾げながらも、

「みんな、おはよう」
「「「「おはようございますっ!!」」」」


107 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:38:28 ID:ieLhPZLv
「うん、今日も元気みたいだね。頑張って行きたいところだけど・・・ティアナ、エリオ」
「「は、はいっ!」」

名前を呼ばれた二人は、びしりと直立不動。なのは“隊長”の手前、ぜぇぜぇと荒い息を吐くわけにはいかず、鼻息が荒くなった
そんな二人の姿に、なのはは少し心配げな表情を浮かべると、

「今朝は、どうしたの?二人であんな風に走って来るなんて・・・?」
「え、えぇ。その・・・えっと・・・」
「す、少し、寝過ごしちゃいまして・・・ごめんなさい・・・」
「・・・一応、訓練開始には間に合ってるけど・・・駄目だよ。時間には気を付けないと」
「「・・・はい」」
「それじゃあ訓練に入るけど・・・二人とも、大丈夫?」

気遣わしげな顔のなのはに、ティアナとエリオは腹の奥に力を込めて、

「「はいっ!大丈夫です!」」

実に見事な、打てば響くような返答をユニゾンで返した

「うん、元気いっぱいだね・・・それじゃ、今日の訓練、頑張っていくよ!」
「「「「はいっ!!」」」」



共同生活4日目は、朝から一波乱の模様であった・・・



○小さな騎士・後編





108 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:39:02 ID:ieLhPZLv
「はい、整れーつ!!」

なのはの号令の下、一同は森林戦設定で構築された訓練場に整列した

ティアナとエリオの間には、訓練開始当初こそ気まずい空気が流れていたが、本格的な戦闘訓練が始まれば、そんな事を気にしては居られない
二人はスイッチを切り替えて、朝の訓練に励んでいた・・・当面の課題は基礎と基本の“すり合わせ”である
センターガードとガードウィング。どちらも広い視野、或いはフットワークは求められる難しいポジションながら、その連携は一昨日とは既に比べものにならない
反省点を列挙されていた、とはいえ、二人は実に見事に互いをフォローし合い、スバルがエリオに妬く程に、巧みな連携を見せるようになっていた

「それじゃあ、今日の午前の訓練の締め括りに、模擬戦を一本やるよ」
「「「「はいっ!」」」」

変則コンビを始めた初日以来の模擬戦である。スバルとキャロはなのはへのリベンジに闘志を燃やすが・・・

「今日は、2on2でやってみようか」
「え?」
「それじゃあ、スバルとキャロのコンビ対私とエリオのコンビ・・・ですか?」
「うん。フリードは禁止にしないと、火力に差が付くかな・・・?」

ティアナの言葉に、なのははにっこりと頷いて見せた
そう言えば、今までフォワード同士の模擬戦はあまり経験が無い・・・スターズ対ライトニングでは、ライトニングが不利な為だが、今は違う

「へぇ・・・面白そう!ティア、エリオ!やるからには負けないからね!」
「上等!こっちだって、負けやしないわよ!」

年長二人は乗り気だが・・・エリオとキャロは顔を見合わせて、少々渋面を作った

「・・・」「・・・」

互いに武器を向け合う姿など、できることなら想像もしたくないのだが・・・意外に、先に拳を握り締めて決心を固めたのはキャロの方だった

「ま、負けないからねっ!エリオ君!」
「キャロ!?あの・・・僕は・・・でも・・・」


109 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:39:33 ID:ieLhPZLv
煮え切らない態度のエリオに、ティアナは後ろから赤毛をわしわしと掻き回して、背中に掌を叩き付けた

「エーリーオ。男の子でしょうが、しっかりしなさい!そんな気持ちで勝てるほど、スバルもキャロも甘くないわよ」
「でも・・・」

エリオの沈んだ姿に、スバルは目を細めて意地悪な笑みを浮かべると、こっそりティアナとエリオに念話を飛ばした

(ね、ティア。エリオ・・・一つ、賭けない?)
(賭けって・・・何を?)
(あたし達が勝ったらさ、“今朝の事”詳しく教えてもらう。っていうのはどう?)
((なっ!?))
(勿論、ティアとエリオが勝ったら今朝の事は秘密。絶対に誰にも秘密って約束するよ・・・どう?)

勿論、スバルは誰かに言いふらすようなつもりは無いのだけど・・・折角の機会なのだ。エリオにもやる気になって貰いたい
そして、挑発めいた彼女の言葉に、エリオは実に簡単に乗ってきた

「・・・わかりました・・・頑張ります!」
「エリオ、絶対に勝つわよ!」

何だかんだでやる気になった4人に、なのはは模擬戦のルールを宣言した
基本はいつも通り、訓練用設定の攻撃が一撃でもクリーンヒットしたら“撃墜”。カートリッジは2発まで。モード2の使用は自由。時間制限も無し
スタート地点も、30m以上の相対距離が有れば、場所取りは自由。先に二人とも撃墜されたチームの負け

ルールを聞いて、ティアナとエリオは森の中に身を隠した
スバルと、フリードは禁止ということになったキャロは、野原にぽつんと立っている


「でも、スバルさん・・・前の模擬戦の時、私が先にやられちゃいましたよね。今回もきっと・・・」
「ダイジョブダイジョブ。ちゃんと考えてあるよ」
「そうなんですか・・・?」
「勿論!頭を使うのはティアだけの仕事じゃないんだよ。お姉さんを信じなさい!」
「あはっ、はいっ!」


「エリオ、良いわね。基本は急襲。スバル相手に正面からぶつかっても勝ち目は無いわ・・・まして、キャロが居るなら尚更よ」
「はい・・・それじゃあ、まずはキャロに狙いを絞って、スバルさんが相手の場合はティアさんが攪乱して、後方に隙ができたら僕が突っ込む・・・それで行きますか?」
「キャロをどうやって守りながら戦うか・・・スバルが、自分の課題について何も考えてないとは思えないけど・・・基本のプランはこれね」
「了解です」
「エリオ、スバルは強いわよ・・・気を付けてね」

110 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:40:05 ID:ieLhPZLv
「4人とも、準備は良いね!」

はい!という4つの返事は、通信で帰ってきた。4人とも、闘志を漲らせた凛々しい顔付きだ
なのはは笑顔で頷くと、通信でそれぞれに開始を宣言した

「レディ―――、ゴ―――ッ!!」

花火のように、薄紅色の魔力光が弾けたのは彼女なりの景気付けだろうか
閃光を皮切りに、模擬戦は始まった



木陰に身を潜ませて、ティアナとエリオは周囲の様子を観察していた
スバルは性格的にも役割的にも、隠密行動はあまり向いていない・・・地上を接近してくるなら、すぐに察知できる筈だ
或いは空・・・ウィングロードでこちらの頭上から索敵しているかもしれない・・・それならば、むしろ好都合だ。後方に待機しているキャロを遊撃すれば2対1にできる
そんな風に考えていると・・・頭上に一筋の青いラインが描かれた。帯状魔法陣の“道”。スバルのウィングロードだ

(・・・好都合ね。エリオ、ウィングロードの発生源の辺りにキャロが居る筈だわ。気付かれない様に接近するわよ)
(了か・・・いぃっ!?)

突如、頭上を見上げていたエリオが頓狂な声を上げた
ティアナは奇声の理由が理解できず、エリオの視線を辿って頭上に顔を向ける・・・そこにはウィングロードを疾走するスバルの姿が・・・

「・・・あの馬鹿・・・どこまで単純なのよ・・・」

思わず、声に出して呟いてしまった
スバルの課題・・・キャロを如何に守りながら戦うか、という点について、彼女は実に単純明快な、しかしそれ故に恐ろしく効果的な答えを見つけていた

スバルは、背中にキャロをおぶっている。ご丁寧にアルケミックチェーンを巻き付けて、振り落ちないようにして ――― そう、要は離れなければいいのだ
変則コンビ初日の訓練の後、隊舎への帰り道で転んでしまったキャロをおぶって医務室に運んだ際に思い付いた、必殺の“おんぶシフト”である


111 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:40:36 ID:ieLhPZLv
(これは・・・いきなり、プランが崩壊しましたね・・・)
(何が悲しくて、ブースト付きのスバル相手に真っ向勝負なんかしなくちゃなんないのよ・・・エリオ、私が幻術と射撃で攪乱する。必殺の瞬間だけを狙って)
(・・・わかりました)
(なるべく低空に引き込むし、オプティックハイドもあげるわ。良いわね。半端なタイミングで仕掛けるんじゃないわよ)

そう告げて、隠蔽迷彩をエリオに施すと、ティアナは茂みの中から飛び出していった



陽光を照り返す、オレンジ色の髪の毛を先に見つけたのはキャロだった

「スバルさん!前方右斜め下!ティアさんです!」

クロスミラージュを構えたティアナが、こちらを狙っている・・・だが、スバルは少しも慌てず、ティアナの姿を一瞥しただけだ

「大丈夫だよ。あれはティアじゃない」
「シルエットなんですか・・・?で、でも撃ってきましたよ!」
「ティアがこんな風に、安直に姿を見せる筈ないよ。乱射なんて真似をする筈もない・・・それより、キャロ。魔力反応はサーチできない?」
「ん・・・やってるんですが・・・完全に魔力を切ってるのかな。反応、出ません」
「エリオの奇襲が怖いんだよね・・・」

そう呟いた瞬間、眼下の茂みから魔力弾が撃ち込まれてきた・・・弾数2発。こちらの挙動を狙い澄ました弾道・・・これは、“当たり”だ、とスバルは決めつけた
即座に展開した防壁にオレンジ色の魔力弾がぶち当たり、火花を残して掻き消える・・・スバルは快哉を叫びながら直滑降の姿で林の中に飛び込んで行った

「キャロ!ブーストお願い!」
「わ、我が乞うは、疾風の翼!蒼穹の拳士に、駆け抜ける力を!」
『Boost Up Acceleration』

ケリュケイオンからのブーストを受けたマッハキャリバーは更に加速し、スバルは前面にシールドを張ると、林の中に隕石の様に落下した
訓練場を揺るがす程の豪快な着地に、もうもうと土埃が上がる・・・その中で、スバルは素早く視線を巡らせた・・・見逃さない。木立の間を、見慣れた後ろ姿が駆けてゆく

「見ぃつけたぁぁっ!!!

マッハキャリバーの車輪は大地を噛み、猛然とキャロをおぶったスバルの身体を疾駆させた
ティアナが振り返る。目が合い、確信を持つ。あれは幻じゃない。ティアナだ、と

「一気に決めるよ!マッハキャリバー、ギアセカンド!」
『All right』

ブースト+ギアセカンドという無茶な加速で迫り来るスバルに、ティアナは顔を引き攣らせながらも、クロスミラージュを構えた
2発まで使っても良いというルールになっているカートリッジ2発を一気に使う・・・惜しいとは思わない。こうしないと、スバルの突撃は僅かも止められない

「クロスファイアー、シュートっ!!」


112 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:41:10 ID:ieLhPZLv
12発の光弾をスバル目掛けて放った。防がれるにしても、足止めくらいにはなる筈だ。そうすれば、幻術を使う隙ができる
フロントアタッカーを相手に真っ向勝負など愚の骨頂。エリオの必殺を導くことが己の役目と割り切って、ティアナは射撃後即座に身を翻す・・・が、

「ケリュケイオン、モード2!ホイールプロテクション!」
『Wheel Protection』

スバルは防壁を何も展開せず、彼女の肩越しに小さな翼を宿したケリュケイオンを突き出し、キャロがそう叫んでいた
渦巻くような形を取った渾身の防壁がスバルの正面に展開され、接触したクロスファイアの魔力弾は悉くが弾き飛ばされた
そして、スバルは一切速度を落とすことなくこちらに向かって一散に突っ込んでくる

躊躇いは、一瞬のこと

「クロスミラージュ!モード2!」
『Dagger Mode』

手中の愛銃を双剣に切り替えると、ティアナはスバルの拳を真正面から受けて立った
自分の展開する障壁は決して頑丈ではない・・・紙の様な装甲を作る為に魔力を注ぎ込むくらいならば、クロスミラージュで受け止める方がまだ幾らかマシだ
スバルの体技はこの3年間ずっと見てきた、いくらかは対応できる自信はある

「せぃやぁぁっ!!」
「くっ!?」

打ち込まれた正拳を交差させたクロスミラージュで辛うじて受け止めた・・・だが、その衝撃に両脚が浮いた。スバルの打撃はそれほどに重い

「こんな拳を正面で受け止めてるなのはさんやヴィータ副隊長って何なのよ・・・!!」

思わず泣き言の一つも呟きたくなるティアナである、顔を上げれば、スバルの追撃が迫りつつあった
身を翻らせた後ろ回し蹴り。マッハキャリバーの踵がこちらの側頭部を刈り落とすような蹴打を繰り出してきた
ティアナは間一髪、身をかがみ込ませてやり過ごし、クロスミラージュの魔力刃で軸足を斬り付けようとしたが、それより早くスバルも後退した
分かり切っていたことだが、やはりインファイトでスバルに勝ち目は無い

(エリオ、狙って!!)


113 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:41:51 ID:ieLhPZLv
念話でそう叫び、エリオからの返答を聞く暇もなくスバルが突っ込んでくる。ティアナも負けじと雄叫びを張り上げ、クロスミラージュをツーハンドで構える
――― 撃った、撃った、撃った
しかし、スバルとキャロの防壁は割れない。当たり前だ、カートリッジも無いのに・・・突撃の足は些かも鈍らない

「でぇりゃああぁぁぁぁぁっ!!!!」
「“エリオ”、今!!」

堅く握った拳を振り上げるスバルに向かってティアナは叫び、それを合図にエリオが突っ込んできた。スバルの左側面、脇腹を狙うストラーダの穂先

「くっ!?来たわねエリオ!」

エリオの動きの速さはキャロでは対応できない・・・そう判断したスバルは打撃モーションを捨て、左から迫るエリオに向かってプロテクションを張る
だが・・・

プロテクションに触れたエリオの姿が、掻き消えた・・・つまり、今のはシルエット・・・ティアナの呼び掛けもブラフ!・・・なら、本命は・・・!!

『Explosion!』

空中に、突撃姿勢を取っているエリオが現れた。後方斜め上、カートリッジの撃ち殻が2つ、ストラーダから弾き飛ばされた
後ろを振り仰いだスバルの頬に冷や汗が伝う。狙い通りのタイミングでエリオが現れてくれたことに、ティアナはクロスミラージュを両手に構えながらにやりと唇を釣り上げる
完全にスバルの不意を突く奇襲が成功・・・ここまでは、ティアナの目論見通りだった・・・そう、ここまでは

「っ!ケリュケイオン!」
『Shooting Ray』

キャロの判断は迅速だった。セカンドモードのケリュケイオンをティアナに向けると、最近ようやく実戦レベルになった射撃魔法を行使する
生成された翼状のスフィアから放たれるのは、高速直射弾・・・ティアナとの距離は2mも離れていない。ほぼ零距離のこの状態で、高速弾を避ける足を彼女は持っていない
決して、キャロの存在を軽く見ていたわけでは無かったのだが・・・ブースト一本槍だと、過小に評価していたということか・・・今更ながら、ティアナは唇を噛み締めた
回避も防御も間に合わない。こちらも射撃で相殺するか?しかし、射撃と幻術を立て続けに行使した今の状態でそれができるか?
ほんの一瞬の迷い。だが、その一瞬の為に、ティアナは結局何を為すにも間に合わなくなってしまった。キャロが叫ぶ

「シュートぉっ!!」


114 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:42:25 ID:ieLhPZLv
その命令を合図に、翼型のスフィアから二条の高速直射弾が放たれ、ティアナの身体を射抜く・・・その寸前、ティアナの身体が掻き消えた

エリオは、最後まで迷った
作戦通りに、スバルを急襲。その一撃で勝負を決めるつもりでカートリッジを2発使ったが、キャロの射撃にティアナが狙われている
エリオは迷った。最後の一瞬まで迷い、その一瞬で行動を決めた

『Sonic Move!』

両手を自由にする必要があった。エリオはカートリッジの魔力を漲らせるストラーダを待機モードに戻し、突撃機動を捨て、高速移動魔法を使い地を蹴った
キャロを背負ったスバルの脇をすり抜けると、キャロが放った高速直射弾:シューティング・レイを追い越してティアナの身体を横抱きにかっ攫う
救出が間に合ったのが自分でも信じられないくらい、それ程にギリギリのタイミングだった・・・撃墜を覚悟していたのか、腕の中のティアナは堅く目を閉じていた

「ティアさん!まだです、まだ終わってません!!」
「・・・?・・・え?あれ?エリオ!攻撃は!?」
「ティアさんが落ちたら、結局勝ち目は無くなります!うわっ!」

撃ち込まれる射撃を避けながら、エリオは逃げに逃げた。ストラーダを待機モードにしている今の状態では、ろくな反撃ができないのである

「カートリッジを2発、無駄遣いしちゃいました・・・状況は、不利です・・・!」
「二人揃ってカートリッジは0。私はそろそろ弾切れが近くて、向こうはまだまだ余力がある上スバルはカートリッジを2発残してる・・・」

笑うしかないくらいに素敵な状況である。最早、勝負が見えたと言っても過言ではない

「頼れるのは、自分の戦技だけってわけね・・・」
「違いますよ、ティアさん。まだ二人なんです。二人いれば、まだ打つ手はあります!」

間近で見上げたエリオの顔は、どこまでも真っ直ぐに前を見ていて・・・不覚にも、頼もしい、と思ってしまうティアナであった



「・・・うーん、妬けちゃうなぁ」

そんな暢気な感想を呟いたのは、勿論スバルである


115 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:42:55 ID:ieLhPZLv
「あのタイミングで、離脱が間に合うとは思わなかったし・・・やっぱり、エリオは強いね」
「はい・・・射撃、当たる気がしません・・・」

スバルの背中で、少し落ち込んでしまうキャロであった

「当たらなくたって、効果はあるんだよ?ティアだって牽制の為に射撃を撃ち込んだりするでしょ?さっきの状況でキャロが援護してくれたのは良い判断だったよ。
あそこで二人とも防御に回ってたら・・・エリオの突撃とティアの零距離射撃に耐えなきゃならなかったからね」
「・・・ティアさんみたいに、うまくできるでしょうか・・・?」
「できるよ。キャロなら大丈夫・・・とは言え、あたしは突っ込まないと何もできないから・・・基本の戦法は変えずに行こう」
「了解!」

スバルとキャロは、再びウィングロードで空に上がった
最初と同じく、空からティアナとエリオの姿を捜索して、キャロのブーストを受けて一気に押し潰す・・・こちらには、カートリッジという余力もある
キャロのブーストもまだ何度か行使できるだろう。そして、ティアナとエリオはカートリッジを使い果たしている筈だ・・・
だが、相手は“あの”ティアナとエリオなのだ。ここは堅実な作戦で叩くのが吉。スバルはそう判断していた



程なく、スバルとキャロはティアナとエリオの姿を発見できた
何を思ったのか、二人は障害物の少ない野原に立っている・・・野原の真ん中に立つエリオから5m程後ろに、ティアナは居た
恐るべき事に、幻影でなく実体である。どう考えても罠としか思えないが、周囲に不審な魔力反応は無い・・・スバル達を堂々と待ち構えているかの様だった
地面に降り立ち、辺りを漂う“決戦”の空気に、スバルは笑う。獰猛に

「・・・やる気だね。エリオ」
「受けて立ちますよね。スバルさん」

上等。そう言わんばかりに、スバルは堅く堅く拳を握り締めた。リボルバーナックルにカートリッジを2発装弾

「キャロ、お願い」
「はい!我が乞うは疾風の翼。蒼穹の拳士に、駆け抜ける力を・・・猛きその身に、力を与える祈りの光を・・・!」
『Twin Boost,Acceleration&Strike Power』


116 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:43:26 ID:ieLhPZLv
カートリッジの魔力、キャロのツインブースト、そして・・・

「マッハキャリバー!ギアセカンド!!」
『All right』

猛然と回転するナックルスピナーが空気を噛んで甲高く噎び泣く。スバルは、己の拳に今まで実戦でも扱ったことがない程の膨大な魔力が注ぎ込まれているのを感じていた
そんな、考えられる限りの自己強化を図るスバルとは対照的に、エリオはただ、その場に立っていた
恐ろしいほどの自然体で、だらりと下げた両手は無手である。ストラーダは未だに待機モードのまま右手首に巻き付いている
彼の後ろでは、ティアナがクロスミラージュを片手で構えてはいるものの、すっかり息が上がっている・・・射撃の援護は、今の状態ならば無視できる範囲だろう

スバルは、狙いを定めるように瞳を細めると、拳を振りかぶった姿勢でマッハキャリバーに命じた

「・・・行くよ!マッハキャリバー!!」
『Here We Go!』
「うりゃああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

マッハキャリバーの車輪が、大地を蹴立ててスバルの身体を前進させた
相対距離は20m程・・・その相対距離を、1秒も掛けずにスバルは駆け抜け、握り締めたナックルの拳を、エリオに向かって叩き付けようとした

エリオは、全神経を集中させて、スバルの挙動を“見て”いた
キャロのブーストに、マッハキャリバーのギアセカンド。直線機動力はきっと凄まじいことになっているだろう。だけど・・・


――― シグナム副隊長ほどじゃない! ―――


エリオの視線は、確かに捉えていた。コンマ数秒で己に詰め寄るスバルと、彼女の拳を
一撃必倒。そんな4字を体現するかの様な、膨大な魔力を帯びた拳撃を前に、エリオは逃げなかった

恐ろしいほどに静かな気持ちで、エリオはスバルの拳を“見切った”

半身に身体をずらし、スバルの拳を避けながら、間髪入れずストラーダに命じる


117 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:43:58 ID:ieLhPZLv
「ストラーダ!!」
『Speerform!』

エリオの手中に、槍に姿を変えたストラーダが現れた
最初から、狙いはこれだった。カートリッジを使い果たしたエリオの力では、スバルのプロテクションは抜けないだろう・・・
だが、全速力で突っ込んでくるスバルに、カウンターでストラーダを繰り出すのならば話は別だ。スバルの速さがそのままこちらの武器となる
古代に於ける合戦の図・・・騎馬を邀撃する長槍の様に、エリオは手中に現れたストラーダを突き出した

が、

「っ!?」
「・・・っぅ・・・危なかったぁ・・・」

ストラーダの穂先は、止められていた
スバルの左手。極小領域、だが最高硬度のプロテクションに愛槍の穂先は食い止められている・・・ついには、完全に弾き飛ばされた・・・!!
仕切り直しとでも言わんばかりに、スバルは再度右の拳を堅く握り締めると、大きく振りかぶり、

「でぇりゃああぁぁぁぁっ!!!!」

エリオに向かって渾身の拳打を繰り出した。弾き飛ばしたストラーダを引き戻す暇など与えない
雄叫びと共に放たれた拳を、それでもエリオは身体を沈み込ませて避けた。そして、そのままストラーダを手放し、彼はスバルの懐に一歩踏み込む

エリオには、最後の切り札があった。ティアナから託された、カウンターが避けられた時の為の最後のカード



エリオは、左手をバリアジャケットのコートの中に突っ込むと、隠し持っていた“クロスミラージュ”を抜いた



スバルは一瞬息を呑んだ。だが、クロスミラージュはティアナのデバイスであり、他人には使えない・・・弾丸を撃てない銃など、鉄屑と同じだ
モード2への変形も、本人の手中にある時しか認証できない・・・ならば脅威ではない。常識的にそう判断したスバルだが、そんな彼女の認識を打ち砕くように、ティアナが叫んだ

「クロスミラージュ、ダガーブレイド!」


118 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:44:30 ID:ieLhPZLv
『Dagger Blade』

ティアナのコマンドを受けて、クロスミラージュはその先端に小さな魔力刃を宿した。見覚えがある、かつてティアナが考案したCシフトの為の奥の手
ストラーダの穂先や、モード2のダガーモードに比べれば、遙かに小さな魔力の刃・・・だが、その刃はバリアとフィールドを斬り裂くことに特化している

ティアナが射撃の援護をしなかった理由が、ようやく理解できた
彼女は、この瞬間に全ての魔力を注ぎ込むつもりだったのだ。視界の隅で、魔力を完全に使い果たしたティアナが頽れる様が見えた

そして、眼下には懐に飛び込んできたエリオが居る。左手に横に寝かせたクロスミラージュを構え、身体ごとぶつかるように彼は飛び込んだ
スバルは、何とかプロテクションで防ごうとするが、ティアナが全身全霊の魔力を込めた魔力刃は、いとも容易く防壁を斬り裂く
キャロの援護も間に合わない。背丈が低いエリオには、スバルの身体が邪魔になって射線が通らない。そして二人の間にバリアを展開するにはもう遅い


どん、という衝撃を感じた時には、もう何もかもが終わっていた


エリオが構えたクロスミラージュの小さな刃は、スバルのお腹に刺さっていた・・・魔力ダメージ、という形の鈍痛が腹部を貫き、スバルの身体はがくりと崩れた
エリオは、倒れ掛かるスバルの身体を支えるように・・・否、スバルの身体を彼女が背負っているキャロへの“盾”としながら、彼女に向かって小さな刃を突き付けた

「・・・ここまで、だよ。キャロ」

目の前で展開された逆転劇が信じられなくて、キャロは言葉も発することができない有様だったが、ようやくのろのろと両手を頭上に掲げて見せた
それを見届けたエリオはにっこり笑うと、そのままぶっ倒れた
スバルはその場にへたり込み、キャロも彼女の背中からずり落ちた
草原に大の字に倒れていたティアナは、既に失神していた

だが、彼女の唇は勝利を確信していたかのように、小さく笑みの形を作っていた・・・



なのはは、そんな4人の姿を空の上から見下ろして・・・実に嬉しそうな顔で、はぁ、と溜息を吐いた


119 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:45:07 ID:ieLhPZLv
結局、完全に息が上がった4人をなのはは一纏めにバインドすると、そのまま医務室まで飛んだ
模擬戦の展開に関しては想像以上で、花丸をあげても良いくらいだったのだが、結果がこれでは午後の訓練もままならないではないか・・・

昼休みを2時間延長してやることを決め、午後3時

シャマルの治療と怪しい薬(シャマル談:ただの滋養強壮剤よ)と普段よりも長い休憩のお陰で、体力はほぼ完全に復活している
魔力についてはもう少し休みたいところだが・・・そうも言っては居られない
4人は訓練場に整列していた。何故か、午後からはなのはだけではなく、副隊長のヴィータに、ライトニング分隊のフェイトにシグナムの姿まであった
隊長陣4人の揃い踏みに、スバル達4人はぴりぴりとした緊張感を感じている・・・

「それじゃあ、午後の訓練に入る前に・・・そろそろ、説明しておこうか。この変則コンビネーションの理由を」

なのはの言葉に、4人は顔を見合わせた。理由・・・?

「ティアナ」
「は、はいっ!」
「どういう理由だと思う?」
「・・・スターズとライトニングがそれぞれ分断された時の為、でしょうか・・・?」
「うん、それもある。でも、本当の理由はね、別にあるんだよ」

頭上に疑問符を浮かべる4人の顔を面白そうに眺め回して、なのはは正解を告げた



120 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:45:40 ID:ieLhPZLv
「それはね、“4人全員の、集団としての連携を高めること”。
今日の午前の模擬戦で、今までコンビを組んでた相手が敵に回って、どう思った?今までとは違う相棒とコンビを組んでて、どう思った?」
「まぁ、敵に回せばやりづらかったし、味方になった奴に関しても最初は戸惑ったんじゃねーか?」

ヴィータにそう言われて、一同は頷いた・・・確かにその通りだった

「敵に回してみて、初めて分かることもある・・・どう?スバル、ティアナ。エリオ、キャロ。今までとは、お互いにパートナーが違って見えるでしょう?」

本来のパートナーと顔を見合わせて、4人はそれぞれ感想を呟いた

「確かに・・・スバルの頑丈さを、改めて思い知りました」
「私も、ティアナの作戦の緻密さに吃驚しました」
「キャロができることがブーストだけじゃなかったのに、驚きました」
「エリオ君の速さ、凄くて・・・怖かったくらいです」
「つまり、そういうことだよ。勿論、スバルとキャロ、ティアナとエリオっていうペアでのコンビネーションの訓練も大事なんだけどね。このシフトの肝は、そこだったんだ」

つまり“味方を知ること”・“集団としての完成度を高める事”が目的だった・・・フェイトの言葉に、一同は頷いた

「まぁ、共同生活を送れという部隊長命令が出されるとは思っていなかったが・・・あれは私の失言だったな」

苦笑を拵えたシグナムにそう言われて、一同は同じように苦笑いを浮かべてしまった・・・最近では、それも結構気に入りつつあるのだが

「さて・・・なのは隊長。そろそろ、次の段階の第一歩ってことで良いんじゃねーか?」
「そうだね。ペアをもう一度変えて、その後からのつもりだっただけど・・・みんなの成長ぶりに、私達みんなウズウズしちゃってね」

にっこりと笑みを浮かべ、隊長陣4名、なのは、ヴィータ、フェイト、シグナムはそれぞれのデバイスを手に、バリアジャケット、或いは騎士甲冑を身に纏った

「4対4の模擬戦をやるよ。ルールはいつも通り。カートリッジ使用、モード変更も自由。制限時間も無し。さぁ、始めよう」



「「「「・・・・・え?」」」」


121 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:46:12 ID:ieLhPZLv
惚けたような顔付きになって、スバル達はやる気全開で身構える隊長陣に尋ね返した。4対4。つまり、ということは・・・

「おら、さっさと構えろ。アタシ達4人対お前等4人+フリードだ。もしお前等が勝てたら、試験無しでAランクをやっても良いぞ」
「作戦を決めたければ3分以内で済ませろ。時間が過ぎたらその場で始めるぞ」

ヴィータとシグナムの言葉に、一同は慌てて顔を突き合わせた

以前までの自分達なら、勝機を探ることさえ適わなかっただろう・・・だけど、今は違う
頼れる仲間達は、どいつも不敵な笑みを口元に浮かべていた

「よし・・・それじゃあ・・・キャロ、私にブースト頂戴。フリードと私の面射撃でフェイトさんとシグナム副隊長を狙って、ヴィータ副隊長を孤立させるわ。
スバル、エリオ。できれば初手の一撃で決めて、キャロは適宜ブーストを行使。私はなのはさんと撃ち合う。
エリオ、厳しいとは思うけど、フェイトさんとシグナム副隊長の、二人共の動きを気を付けて。あの二人の速さで狙われたら、後衛なんて良いカモだわ。
スバルも、ヴィータ副隊長をうまく撃墜できたら、なるべく守りを固めて。なのはさんの砲撃は・・・私が絶対、撃たせない」
「「「・・・了解!」」」「くきゅ!」

ティアナの作戦にスバル達は大きく頷き、颯爽とバリアジャケットを身に纏った
彼らの顔に、恐怖・怯えの影が片鱗も見受けられず、歴戦の猛将が如き不敵な笑みを浮かべていることに、なのはを除く3人は少しだけ驚いた

(へぇ、良い顔するようになったじゃねーか)
(あぁ、これは楽しめそうだ)
(あの、シグナム。これは訓練なんですからね。あまり、ムキにならないで・・・)
(何を言うかテスタロッサ。死合うからには真剣勝負だ)
(・・・あぁ、もう。なのは、何とか言ってよ)
(良いんじゃないかな?あの子達、もうそんなに甘い相手じゃないよ・・・フェイトちゃんこそ、撃墜されたら格好悪いよ?)
(賭けでもするか?もしも撃墜された奴が居たら・・・何か罰ゲームでもやるとかよ。ま、あたしは負けねーけどな)
(良いだろう、乗ってやろう)
(うん、私も良いよ。勿論フェイトちゃんも良いよね?)
(え?え?あの、私は(皆まで言うなテスタロッサ。乗り気なのは分かっている。では、そろそろ始めないか?高町)
(了解、シグナムさん)「それじゃあ、始めるよ!レディー・・・・ゴーっ!!!



――― その日の午後の訓練は、隊舎が震えるほどの激しさだったと多くの職員が語ったそうな ―――


122 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:46:46 ID:ieLhPZLv
隊長戦は、結局0−3で隊長陣の勝ち・・・勝敗に関しては当たり前だが、唯一、ティアナの采配通りヴィータの撃墜には成功していた
クロスファイアとブラストフレアでフェイトとシグナムを牽制し、単騎になったヴィータにスバルとエリオの連携攻撃:ストライクドライバーを叩き込む・・・ここまでは良かった
意表を突かれたヴィータを撃墜・・・しかし、次の瞬間襲い掛かったフェイトとシグナムの連携高速機動を捉え損ねたエリオが撃墜
“ライトニング”。その名の如き速さの二人はそのままスバルを無視してティアナとキャロに迫る。スバルは必死に二人を追うが、背中を見せた敵手をなのはが捨て置く筈がない
薄紅色の閃光を背中越しに確かめた瞬間にはもう何もかもが手遅れだった。ディバインバスターの光芒に飲み込まれてスバルが撃墜
前衛を欠いたティアナとキャロは必死の防戦を試みたが、高速型の魔導師&騎士に距離を詰められては為す術もなく、
ティアナはレヴァンティンに剣先にクロスミラージュを叩き落とされ、キャロは後ろに回り込んだフェイトにバルディッシュで肩をとんと叩かれた

僅か、40秒余りの攻防で、ティアナ達は負けた



「おいこらてめーら!何負けたのににやにや笑ってんだよ!!」

ヴィータの言葉に、一同は身を縮こまらせるが、それでも4人の顔に浮かんだ喜色は消えない・・・確かに負けた。負けてしまった
それでも、敗北の中にあった唯一の勝ち星・・・ヴィータを撃墜できたという喜びの方が、悔しさよりも大きかった

「危ないところだったな。4人にAランクを授与しなければならないところだった」
「うるせーちくしょー!」

苦笑を浮かべたシグナムにぐりぐり頭を撫でられてヴィータは猛抗議の構えだが、烈火の将はその程度の剣幕にたじろぎはしない
そんな様子に、フェイトは仲裁に割って入るべきかどうかをオロオロと困り果て、なのはなそんな3人に苦笑を浮かべながらも、スバル達を労った

「作戦そのものは、悪くなかったよ。まさか、初手でヴィータ副隊長が撃墜されるとは思ってなかった・・・
でも、その後が甘かったね・・・特にスバル」
「は、はいっ!」
「難しい状況ではあったけど、完全に意識がフェイト隊長とシグナム副隊長だけに向いちゃってたよね。あれは駄目だよ」
「はい・・・気を付けます」

なのはの叱責に、スバルはがっくり項垂れた・・・背中から、回避も防御もできずディバインバスターの直撃を許したのだ
フェイトとシグナムが、ティアナとキャロに迫っている・・・そんな状況ではあったが、あんなにも隙だらけの姿を見せていては、やはり落第だ


123 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:47:18 ID:ieLhPZLv
「ライトニングとしては、どうかな?」
「えと、そうだね・・・」

なのはに話を振られて、フェイトは考え込んだ・・・

「最初の制圧射撃は、良かったよ。ただ、私達の接近を簡単に許したのは・・・ちょっと、いただけなかったかな?」
「まぁ、こちらはそのつもりで、初手でエリオを狙ったのだがな・・・ティアナ、モード2にはまだ不慣れなようだな。いずれ、剣術の基礎を教えよう」
「は、はい!お願いします!」

シグナムの言葉に、ティアナはがばっと頭を下げた

「エリオには、ちょっと意地悪だったね。キャロにも・・・自分よりも早い相手と戦うとき、接近を許したときの対抗手段。一緒に考えよう」
「「はいっ!」」

フェイトの言葉に、エリオとキャロは元気良く返事を返す
そして、残るはただ一人・・・隊長陣の中でただ一人、撃墜の憂き目にあった鉄槌の騎士は、実に不機嫌げに唇を歪めて、4人に言った

「・・・なかなか、やるようになったじゃねーか」

言わざるをえなかった

「でもな!今度の模擬戦じゃああんな隙は見せねーからな!覚悟しとけよ!」
「「「「は、はいっ!」」」」
「そんじゃあ今日の訓練はこれで終了だちくしょう!」

ありがとうございましたっ!
という声は、いつもよりも少しだけ高らかに響いた



夕焼けに染まった訓練場で、4人は車座に座って整理体操をしていた


124 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:47:49 ID:ieLhPZLv
初めての“隊長戦”・・・結果は、勿論敗北・・・だけど、貴重な経験だった

「良く考えたら・・・今まで、あんまり“集団戦”って意識したこと無かったわね」
「そうだね、どっちかって言うと、個人戦のスキルに・・・あとは、コンビでの連携。今日みたいなフォーマンセルって、あんまり考えたこと無かったね」

ティアナの言葉に、スバルは頷きながらそう言った
確かに、シュートイベィション等、“なのは一人対自分達4人”という訓練は毎日の様に励んできたが・・・4対4という対戦は、今日が始めてだった

「あんまり、お役に立てませんでした・・・」
「同じく・・・」「くきゅー・・・」

しゅんと小さくなるエリオとキャロとフリードに、スバルは脳天気な笑顔で、ティアナは困ったような溜息で応えた

「役に立たなかったなんて、そんなこと無いよ。ヴィータ副隊長を撃墜できたのは、キャロのブーストがあったお陰なんだもん」
「そうですか・・・?」
「そうだよ。キャロは、キャロの役割をきちっとこなしてたよ。お姉さんはちゃーんと知ってるからね」

スバルの言葉に、沈んだ面持ちだったキャロも、はにかむような笑顔を見せた
花の蕾が開くような、そんな笑顔に、スバルも釣られるように笑顔を浮かべてしまう

「エリオも、きちっとあんたの仕事はこなしてたわよ。まぁ、フェイトさんとシグナム副隊長の2人に狙われたんじゃ仕方無いわよ」
「でも、次はもっと頑張ります。幾ら2対1だったからって、あんなの悔しいですから・・・」
「はぁ・・・やっぱりあんたは小さくても、ちゃんと騎士なのね・・・あ、柔軟手伝ってあげるわ」

呆れ顔で溜息を吐きながら、開脚前屈をしているエリオの背中を押してやるティアナである
そんな姿に、スバルは、ほほぅ、と呟きながら目を細めて見せた・・・そんな相棒の視線に気付いたティアナは、少し頬を赤くしながら尋ねる

「・・・何よ、スバル。その笑いは」
「何にもー?」

すっとぼけた顔で、スバルはそう返した


125 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:48:23 ID:ieLhPZLv
「いつの間にか、ティアとエリオが妬けちゃうくらい仲良しさんになってるのが、ちょっと悔しいかなー。なんてねー」

今朝だってあんなだったしさー。と明後日の方向に視線を向けながらスバルはぼやいた
彼女の言葉に、ティアナとエリオは今朝の事を思い出してしまい、二人は慌ててスバルのぼやきを制した

「ス、スバル!あんた自分で約束するって言ったでしょうが!」
「そうですよ!絶対秘密にするって言ったでしょう!?」
「あ、そだったね。ごめんごめん。でも、まぁ良いじゃん。あたし達しか居ないんだしさ・・・で、実際の所、どっちが先だったの?」

話を全く聞いていないスバルの問い掛けに、ティアナとエリオは揃って「知らないわよ!」「知りません!」という言葉を叩き付けると足早に隊舎に戻ってゆく
そんな、姉弟のような二人の背中を眺めながら、キャロは首を傾げてスバルに尋ねた

「あの、スバルさん」
「ん、どうかしたの?キャロ」
「エリオ君とティアさん、どうしてあんなに怒ってるんですか?もしかして、私が気付いていないだけで何かとんでもない迷惑を掛けちゃってるんでしょうか・・・?」

小さくなるキャロに、スバルはそんなことないよ。と笑ってみせた
ただ、“とんでもない迷惑”という点に関しては、あの光景を目撃してしまった以上、その通りなのかも知れない・・・内心では、そんな風に考えていた



さて、隊舎に戻り、賑やかな夕食を終え、今日も今日とて疲れ切った身体を引き摺って自室に戻ってきた一同である

「さて、エリオ・・・」
「・・・はい・・・」

シャワーも済ませてさっぱりした二人だが、その間の空気は少しもさっぱりしない・・・お通夜な空気が漂う部屋で、ティアナは据わった眼差しでエリオを見据えた

「これだけはハッキリさせておきたいんだけど・・・今朝の事。どうしてあんなことになってたわけ?」


126 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:49:00 ID:ieLhPZLv
ティアナとしては、昨夜エリオに“甘える練習”とか理由を付けて、彼に膝枕をしてやったことは憶えている
結局、エリオはそのまま眠り込んでしまい、自分もうとうとしてしまって・・・気が付けば、今朝だ。エリオを抱き枕代わりにして眠り込んでいた

「あ、あの・・・僕は、夜中に目が醒めて、それで、ティアさんをベッドに運ぼうとしたんですけど、その時に・・・」

目が醒めた理由に関して、具体的には伏せたエリオである。ティアナの胸と腿に顔を挟まれたから、という本当の理由は恥ずかしくて言えない

「その時に・・・何?」
「・・・座って寝てたティアさんを一度ソファで横にして運ぼうとしたんです。その時に、その・・・ティアさんが、抱き付いてきて・・・」

顔を真っ赤にしたエリオの陳述に、ティアナも同じく真っ赤になった
それでも、エリオは“ハッキリさせておきたい”というティアナの言葉に従って、言葉を詰まらせながらも、何があったのかを最後まで言い切った

「起こそうとしたんですけど起きてくれませんでしたし、抜け出そうとしても、両手と両脚で身体を押さえられたからそれもできなかったし、
そうしている内に、僕も眠たくなっちゃって・・・」
「何でそんな状況で寝れるのよっ!?」
「ご、ごめんなさい・・・ティアさん、温かくて、柔らかくて・・・何だか良い匂いもして・・・その、気持ち良くて、つい・・・」

可哀想なくらいに顔を真っ赤にしたエリオの言葉に、ティアナもこれ以上無いくらい顔を真っ赤にしていた
やばい。ヤバイくらいに頬が熱い。顔が熱い。顔どころか、恥ずかしすぎて身体中が熱い
エリオの事は“弟分”だと心の中で割り切っていた筈なのに、どうしようも無いくらいに胸が高鳴って仕方がない

(くっ・・・考えろ、考えるのよティアナ・ランスター・・・こんな調子じゃ、まともにエリオの顔も見れなくなっちゃうじゃないのよ・・・!)

ならば、どうする?
共同生活という体裁はそのままで、一切の接触を無くすか?それが一番簡単な解決策であることには違い無い・・・



――― だけど、それは・・・嫌だ



何故、嫌なのかかはわからないが、とにかく嫌だ。絶対嫌だ


127 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 01:49:32 ID:ieLhPZLv
「あの・・・ティアさん」

エリオから控えめに呼び掛けられて、ティアナは黙考を中断した

「その・・・あれも、ティアさんの言う“甘える練習”の一環だったんですか・・・?」

思わず、言葉に詰まってしまうティアナである
膝枕までは、確かにそのつもりだった。だが、その後、彼を抱き締めて寝入ってしまったのは彼女の不覚なのだ
自分の頭をぽかぽか叩きたい衝動に駆られるティアナだが、そんな彼女に、エリオは消え入りそうな口調で、意外な懇願をした



「もし、ご迷惑でなかったら、その・・・もう少し、“練習”させて貰えませんか・・・?」



「・・・え?」

一瞬、自分の耳を疑ったティアナだが、エリオは確かに言った。“練習”をさせて欲しいと
この場合の練習とは何だろうか?まさか訓練の事なのだろうか?だが、話の流れを考えれば、“甘える練習”のことなのだろうが・・・

「え、ええと、その、あの、昨日、ティアさんに膝枕をして貰って、その時凄く気持ち良かったんですけど・・・その、ティアさんも言ってましたよね。
甘えられるのも悪くないって・・・だから、フェイトさんにも、喜んで欲しくて・・・」

フェイトさんの為・・・エリオにとって、彼の心の大部分を占めるであろう女性の名前に、ティアナの胸は少し痛んだ
要は、“フェイトに甘えるための練習台になってください”と頼まれたような物なのだ。少々、プライドに傷の付く話である
憎まれ口の一つでも叩いてやろうか、と内心思うティアナだが、

「・・・駄目、でしょうか・・・?」

シャツの裾を掴んで、上目遣いにこちらを見上げるエリオの顔に、そんな些細な問題は一瞬で吹き飛んだ


128 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 01:58:19 ID:4V56d9xq
投下終了?

129 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 02:17:03 ID:LoVTucUP
いや、むしろ規制か何かじゃね?
俺もwktkが止まらないつーか中途半端で生殺し状態で非情にもどかしいんだが
とりあえずエリティアかぽーは素晴しい事って事を改めて認識したんだぜGJ


130 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 02:20:41 ID:IQwhznOu
エリティアがいいのはもちろんなんだが、
微妙にorzなヴィータ副隊長もなかなかw

131 名前:名無しさん@ピンキー :2008/02/11(月) 02:22:50 ID:r+7u1DAv
いろんな意味でこのシリーズは反則だw もっとやってください。

132 名前:神風大尉:2008/02/11(月) 02:49:36 ID:/1FfkQ+6
おもしろい!最高〜

133 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 02:56:52 ID:BbtloMy+
>>132
……?
なぜにコテハン?

134 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 02:57:43 ID:7GuFnBAV
GJ作品が多すぎます!!とにかくGJ!!
>>61
必殺技の連発!フルボッコタイム!!
これで興奮度ゲージ限界突破しました!!
そしてキャロ、君は本当に健気で可愛い子だよ・・・でもやっぱり報われないよなあ・・・

y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA氏
GJ!!
相変わらず卓越したストーリーです。
2人のスカリエッティか・・・どちらが勝利しようとも恐ろしいことになるな・・・
それよりも恐ろしいのが16人の魔王様。ああこれまた続編が気になります!

>>127
ちょwこれでストップはきつすぎます。
ニヤニヤが止まらなくなった所でストップは・・・
とにかく支援です!

135 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 04:26:57 ID:ieLhPZLv
そんなこんなで、ティアナとエリオは、今同じベッドに横になっている・・・昨日は膝枕だったが、今日は腕枕である

「あの、ティアさん。重くないですか?腕、痺れちゃいませんか?」
「あのねー、エリオ・・・甘える時はそんな事まで心配しない!べったりくっついてれば良いのよ」
「は、はい・・・こんな、感じでしょうか・・・?」

横に伸ばした腕、肘の辺りに乗ったエリオの頭の重さを感じながら、ティアナは上掛けの中で感じるエリオの少し高めの体温に胸を高鳴らせていた
臑の辺りに踵が当たる感触に、少年の小ささを改めて実感するが・・・思い出せば、今日、自分はこの子に“お姫様抱っこ”をされてしまったのだった

「ねぇ、エリオ」
「な、何でしょうか?ティアさん」

返答は、ガチガチに緊張した声音であった

「・・・誰かにくっついてる時くらいはリラックスしなさいよ・・・それで・・・あの、ね・・・今日は、ありがとう。模擬戦の時、助けてくれて・・・」
「そんなの、当たり前ですよ。パートナーなんですから」
「はは、そうね・・・でも、正直。あんまりエリオが頼もしくて・・・逆にこっちが甘えたくなったらどうしてくれるのよ?」
「えっ!?あ、あの・・・そ、その時は、ご遠慮なく・・・」

ティアナの冗談めかした台詞に、暗闇の中でもわかるほどエリオは頬を赤く染めて、そう返答した
そんな少年に、ティアナは少し意地悪な笑みを浮かべると、枕にしている方の肘を曲げて、二の腕に乗っているエリオの頭をわしわし撫でた

「さ、もう寝ましょう・・・明日は遅刻しないように早起きしないと・・・ふぁ・・・」
「そうですね・・・それじゃあ、おやすみなさい。ティアさん・・・」
「ん、おやすみ。エリオ・・・」

就寝に挨拶を交わし、部屋には静寂が満ちた・・・数分後、エリオは安らかな寝息を立て始め、ティアナはもぞりと寝返りを打った
仰向けから横向きに、腕を枕にして眠っているエリオの方に身体を向けた・・・視線の先には、小さな騎士の安らかな寝顔がある

「・・・マセガキ、甘えんぼ、マザコン、似非フェミニスト・・・私は、あんたなんか・・・」



――― 大好き、なんだから ―――



寝顔の頬に唇を押し当て、ティアナは寝ているエリオの肩口に甘えるように頬をすり寄せる
今は自分に、自分だけに甘えてくれる小さな騎士を掻き抱いて、ティアナは眠りに落ちてゆく・・・

その日、久しぶりに夢の中で兄の姿を見たティアナが、翌朝寝惚けてエリオを「お兄ちゃん」と呼んでしまい、大いに慌てた顛末があったことを、ここに記しておこう


136 名前:小さな騎士:2008/02/11(月) 04:27:33 ID:ieLhPZLv
後日談である
数日後、変則コンビは再びペアを入れ替えることになった。スバルとエリオ、ティアナとキャロのコンビで、こちらは3日間という短期の訓練である
勿論、共同生活というシステムは健在で・・・ティアナは、スバルと相部屋という運びになったエリオに、真剣な顔で忠告した

「良いわね、エリオ。何かあったら大声で呼ぶのよ」
「あ、あの・・・ティアさん?何でそんなに真剣なんですか・・・?」

そんなこんなでエリオを送り出し、入れ替わりにやってきたキャロに3日間よろしく。という挨拶を交わして、その日の訓練の反省点について二人で相談する
そうしていると、隣の部屋から聞き覚えのある声が聞こえてきた


よっし、打ち合わせも済んだし、エリオ。お風呂入ろっか。頭洗ってあげるよ
あ、い、良いですよ。一人で洗えますから
えー、それじゃあたしがつまんないよ。良いから良いから。ほら脱いで脱いで
うわあっ、す、すばるさんっ!?ぬ、脱がさないでください!
じゃあ、あたしから脱ぐー。ふんふふーん♪と、ほら、エリオも脱がなきゃ
・・・あ、あの、その・・・
あぁ、もしかして脱がされたかった?ごめんごめん、それじゃ遠慮無く・・・解剖だーっ!
きゃあああああぁぁっ!!!だ、だれかー!だれかたすけてー!!!
ぱんつめくれー!!


こめかみに青筋を浮かべたティアナは、指先で回していた鉛筆をへし折ると、ちょっとごめんね、とキャロに断って部屋を出て行った
・・・そして、その日の夜


それじゃ、エリオ。ほら、隣おいで
あ、あの、その・・・僕は、ソファで寝ますから
ダーメ。そんな所じゃぐっすり眠れないでしょ?ほら、こっち・・・そんなに照れなくても良いじゃん。ティアとも一緒に寝てたでしょ?
ティ、ティアさんとは、その、何というか・・・
あぁん、もう、可愛いわねー!この、この、愛い奴め♪
わぁぁっ!ス、スバルさん!僕は、その、ぬいぐるみじゃないんですから、苦しいですよっ!


こめかみに青筋を浮かべたティアナは、枕を手に取ると、隣で横になっていたキャロに、ちょっとごめんね、と断り、部屋を出て行った
一人残されたキャロは、

「・・・良いなぁ、エリオ君・・・みんなに構って貰えて・・・」

ヴァリアブルシュート!ぎゃー!という悲鳴を聞きながら、少し斜め上な感想を呟いていたそうな


137 名前:小さな騎士 おまけ:2008/02/11(月) 04:28:14 ID:ieLhPZLv
「は、はやてぇ・・・ホントに、これ着なきゃ駄目なのか・・・?」
「ヴィータ。諦めが悪いよ?模擬戦で負けたら罰ゲームって最初に言うたのはヴィータやろ?」
「そ、そりゃそうだけど・・・」

恨めしげな視線で鉄槌の騎士は夜天の王を上目遣いに見上げた
にっこり笑う彼女の笑顔は、全ての反論を封殺する鉄壁の様にも思える・・・そんな彼女の傍らでは、自分と同じく守護騎士の一人であるシャマルがいそいそと動き回っている

「はやてちゃん、撮影準備完了です。あとは、“モデルさん”のお着替えだけですよ」
「ん、ありがとなシャマル」

うー、と唸るヴィータだが、彼女も騎士である。騎士たる者、二言は許されない
はやてに手渡された、ひらひらでふわふわなドレスを手に、彼女は個室に着替えに行った

先日、初の隊長戦で撃墜されてしまったヴィータの罰ゲームは、はやての発案で、“人気ブランドのジュニアドレスのモデルになる”というものに決定した
ヴィータ本人には内緒だが、撮影した写真はこっそりジュニアドレス専門誌の写真コンテストに送るつもりである
あれこれと憶測を語るはやてとシャマルとリィンである。シグナムとザフィーラは、自業自得とはいえ、少々ヴィータに同情した・・・そして、

「は、はやて・・・こんな感じで、どうかな・・・?」

個室から出てきたヴィータに、一同は言葉を無くした
王侯貴族の花嫁衣装の如く、レースがふんだんに使われた白いドレスは、日頃、粗野で口が悪い鉄槌の騎士を、完璧に小さな姫君へと変身させていた
“騎士”とは思えない程に白く細い肩が覗く袖無しの上着
パニエで大きく膨らんだ、白薔薇の蕾を伏せたようなレースのスカート。腰の後ろで幅広のリボンが大きな結び目を作っている
スカートの裾に隠れる爪先は、ドレスと同じく白い、フリルをあしらったレースアップブーツ。ご丁寧にも靴紐は細いサテンのリボン
毎日、グラーフアイゼンを握り締めている掌は、手首まで丈のある白い手袋に包まれており、可憐な小花で拵えたブーケを手にしていた
頭の上には、白く煙るようなヴェールが掛けられ、その上に小さなティアラがちょこんと乗っている
歩く度に、上着の首元にあしらわれたラインストーンがきらきらと輝き豪奢さを演出する・・・普段は勝ち気な青い瞳まで、淑やかに見えてくるのが不思議である
沈黙したままの一同に、赤く染めた頬を隠すように顔を伏せたヴィータは、消え入りそうな声で懇願した

「は、早く済ませようよ。こんなの・・・は、恥ずかしいんだからよ・・・」

はやてとシャマルは、思わず抱き付きたい衝動をぐっと堪えて、写真撮影を開始した


後日、5つのコンテストに投稿されたヴィータの写真は、全てコンテストで最優秀賞を総ナメにかっ攫い、ジュニアドレス業界に一大センセーションを巻き起こすのだが・・・


「ぶちぬけぇぇぇぇっ!!!!」

“八神ヴィータちゃんを、是非うちの誌の専属モデルに!”というオファーがはやての元に届いていることも知らず、鉄槌の騎士は今日も元気に後輩達を張り倒している


138 名前:26-111:2008/02/11(月) 04:38:04 ID:ieLhPZLv
ボボンハウスに連れ込まれていました・・・(効果:2時間くらい頭冷やせ)
すぱっと最後まで、テンションを維持して読んでいただきたかったのですが・・・悔しいですなぁ・・・
投下が長すぎる私が悪いのですが・・・よし、吊ってくるorz

「小さな騎士」はこれで一応完結、という運びになります
最近のGJなエリオ分との差別化を図りたくて、無茶を承知でエロ展開とか考えたrもしましたが・・・
ティアナとエリオの変則コンビは、サウンドステージ中で少しだけ触れられた部分で、そこだけを抽出して捏造しました
なかなか書いてて楽しいコンビでございました。半端なガチバトルばっかりだったように思いますが・・・

次に書くなら・・・「諜報者〜」の締めですね。保管作業も少し溜まってるし



それでは、スレ汚し失礼しました






139 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 04:52:19 ID:fobN5SlI
ぐうううううっじょおおおおおおおおぶうるううううああああああああああああ!!!
起きててよかった。
どいつもこいつも、可愛い奴らめ。愛い奴らめ。
ティアナもお兄ちゃんっ子からしてもらう側だったのが、弟分にしてしてあげる側になりよってからに。

140 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 06:25:18 ID:fNYpc++C
ヴィータ可愛いよヴィータ
保管作業も作品も素敵すぎるんだぜ

141 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 06:39:32 ID:7GuFnBAV
これで完結ですか・・・
このシリーズ好きだったのでちょい心残りがありますがGJ!!!
ティアナもヴィータも可愛すぎますた。もだえますた!
ああエリティアいいよエリティア!

142 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 07:53:30 ID:21t5ICJp
>>138
GJでした。
ティアかわいいよティア。

ただかなり細かいことですがシグナム→なのはの呼称は名前呼び捨てだったかと。

143 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 08:00:56 ID:QAVbkYGv
ティアナがどんどんアスナになっていく……GJ!

144 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 08:21:29 ID:9xUgzr/H
>>143
iyaaaaaaaa!!!


145 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 08:45:38 ID:n+q0KBwm
>>138
GJ!!
ティアナが可愛すぎて困る!
デレ全力全開のこの状況で、更にスバティアを投下したんですが、いいでしょうか?

146 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 08:51:11 ID:n+q0KBwm
スイマセン、『投下したいんですが』の間違いです。
書き上がったので、もう少し経ったら投下したいと思っています。

147 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 08:53:17 ID:rhBUYe27
>>138
GJ!! なんというツンデレ……

>>145
カマン!!

それにしてもこのスレの速度は異常……

148 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 08:59:24 ID:n+q0KBwm
それじゃあ、投下します。

・時間軸はStrikerSよりもちょっと前。漫画版です。
・原作の捏造があります。
・メインはスバルとティアナですが、基本的にティアナ視点。
・前後編の予定です。
・き、聞いてくれ。今ありのままに起こった事を話すぜ。俺は友情物を書いていたつもりが百合の空気になっていた!
何を言っているのか分からないと思うが、俺も何が起こったのか分からねえ!
脚本家の力とかユリカルなのはだとかそんなチャチなもんじゃ断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ!
・題名は『命がけの友情』です

では投下します。

149 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:03:14 ID:n+q0KBwm
「よおっ……いしょっと!」
スバルが、瓦礫を持ち上げる。その下には足を挟まれて動けずにいた女性が苦痛に脚を歪めていた。
「管理局です! 大丈夫ですか!?」
ティアナが傷つけないように、ゆっくりと女性を引っ張り上げる。
「すぐに安全な場所まで運びます。安心して下さい、もう助かりますよ」
「はっ……はい……」
息も絶え絶えと言った様子で、女性は何とか答えた。だが出血も酷くないし、幸い他に外傷も見当たらない。瓦礫に挟まれたことを除けば、殆ど無傷だった。とりあえず命に別状は無い。
「ティア、この脚じゃ歩けないよ……」
自分達の部隊は分散して事の収拾に当たっている。二人は部隊の中でも特に足が早く、突貫力もある為、かなり奥の方へと移動していた。救護班が来るまで待つには、時間がかかりすぎる。その間彼女を此処へ置いておくわけにもいかない。
ティアナは意を決したように、女性の身体を持ち上げた。
「スバル、そっち持って。私達で外まで運びましょう」
「分かった!」
二人で女性の身体を持ち上げながら、ティアナは別の場所で活動している上官へと思念通話を飛ばす。
『こちらランスター二等陸士です。要救助者一人確保しました。脚を負傷している為、安全な場所まで運びます』
『よし、二階のB通路が比較的安全だ。そこから一旦外まで戻れ』
『了解!』
隊長が言った部分は、建物の破損が殆ど無い、奇跡的に無事なポイントだった。負傷者を無事に外へと送り届けるには絶好の場所である。そうして女性を傷つけないように、しかし可能な限り早く指定された場所へと運んでいく。
その間、スバルは焦燥感に駆られていた。こんなチマチマとした救助活動しか行えない自分たちに。
ここに移動して女性を救助するまで、他の負傷者を何人も見てきた。中には瓦礫に完全に押し潰されて、即死だった者もいた。目を背けたいほどに辛い、しかし現実だった。
何故起こる前に防げなかったのだろう。何故もっと早く来られなかったのだろう。自分達がその瞬間に居さえすれば、こんな事にはならなかったのに……。


150 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:04:38 ID:n+q0KBwm
『スバル』
ふと、声が聞こえた。相棒からの思念通話だ。わざわざ魔法で会話するのは、負傷者を不安にさせない為の配慮だろう。
『な、何?』
『今は、精一杯やりましょう。私も悔しいし、悲しいけど……でも、まだ助けを待ってる人が居るんだから』
ティアナと眼が合う。後悔や同情は、いつでもできる。だが、被災者の救出は、今この瞬間にしかできないのだ。
『……ありがと』
『ほら、前見て。もうすぐ着くから』
『うん』
今までに確保してきた場所を迂回し、階段を降り、通路を渡る。やがて、指定した場所の窓が見えてきた。ガラス張りの窓は流石に地震の影響で割れてはいるが、その他の壁や地面のコンクリートには亀裂も殆ど入っていない。あとは此処から脱出するだけだった。
「よし……スバル、ウイングロードお願い」
「……」
「スバル?」
初めは救助しきれない人々に、未練があるのかと思っていた。
しかし次第に、それが間違いであった事に気付く。確信を持ったのは、スバルがティアナの目を見て力強く言った時だった。
『ティア……ティアのアンカーで、この人を下まで降ろせるよね?』
一瞬、言葉に詰まってしまった。
目を見開いて、相棒を見つめる。マズイ事に、それは彼女が『本気』の時だった。
『アンタまさか……』
『ごめん、私はもう少し奥へ行ってみる』
『バカ! まだ倒壊の危険性はゼロじゃないのよ!』
即座に否定した。心の中で、無理だと叫んでいるような気がする。しかし、言わなければいけなかった。
『うん、でもまだ奥に誰かが居た気がしたんだ……もしいるんだったら、早く行ってあげないと』
確かにスバルが正しい面もあるかもしれない。
だが、独断専行は災害救助においてタブーだ。被災者を救助するという事は、同時に自分も死の中へ飛び込んでいくことである。極端な話、自殺行為とも取れる行為。しかしスバルの眼に、迷いはない。
ティアナは数秒の黙考の後、即座に答えた。


151 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:05:56 ID:n+q0KBwm
『この人を救護班に渡したら、私もすぐに行くから』
ここで言い争いをしている時間は無い。
そして、僅かな時間で彼女を説得できる自信も無い。
こんな所で自分の未熟さを痛感するとは、余り考えたくなかった。
『うん! ありがとう!!』
二人の行動は素早かった。
ティアナが女性の腰に手を回して抱きかかえるように持ち上げる。デバイスから発射されたアンカーを、ビルの比較的丈夫な部分へ打ち込むと、耐久度を確認する。
「ここから降ります。ゆっくりとですから、しっかりと掴まっていて下さい」
「は…はい……」
運ばれてくるまでに、意識も大分回復したせいか、女性はティアナの首に両手を回す事が出来た。最終確認を済ませると、相棒を一瞥する。
『絶対に無茶するんじゃないわよ』
『うん! まかせて!!』
その言葉を聞いてからティアナはゆっくりと、ビルの窓辺から足を離した。アンカーが徐々に下へ、下へと降下していく。
女性のしがみ付く力がそれに比例して強くなっていくのを感じた。ティアナはふと上を見上げる。スバルの魔力反応が奥の方へと一気に移動していくのが分かる。
彼女を案じたのは、その一瞬だけだった。
(お願い、壊れないで……あと少しでいいから……)
比較的安全とは言え、アンカーが打ち込まれた壁が壊れる可能性はゼロでは無い。それこそティアナ本人がスバルに言った通り。
だが、こればかりは祈るしかない。全神経をデバイスと抱かかえた女性に集中させた。
(あと八メートル位……六メートル……)
確実に、地面との距離を縮めていく。これほど長く時間が感じられたのは、人生で初めてではないかと思えた。しかし、幸運の女神は何とか味方してくれたらしい。
壁や建物が壊れる事無く、女性を下に降ろす事に成功した。
アンカーを戻すと、ちょうどタイミングよく向こう側から救護班が来た。
良かった。コレで彼女も助かる。デバイスを腰に挿して、女性を両腕できちんと抱えた。
「もう大丈夫ですよ。今から病院へ搬送します」
「……っ……はい」
神経を張っていたのは、自分以上に彼女かもしれない。張り詰めていた空気から解放され、彼女はまるで電池の切れた玩具のように力が抜けていた。
駆けつけた救護班に彼女を引き渡す。担架に載せられると、すぐさま救急車まで運ばれていった。


152 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:07:22 ID:n+q0KBwm
「ふぅ……」
流石に息が漏れてしまう。任務はまだ終わっていない事を思い出して、さっきまで自分がいた場所を見上げた。
『スバル、こっちは終わったわよ。無事、病院まで運ばれたわ。そっちは?』
少しばかり大変な状況で、一人を救助した。そのことで、ティアナは少し微笑していた。
或いは、心の中で依存していたのかもしれない。
だから一人にさせてしまった。彼女が、何かをしてくれると、信じきっていたから。
自分のパートナーは今までに無い強い魔力と、勢いと、そして真っ直ぐさを持っていたから。
だがそれが間違いだった事に、次の瞬間気付いてしまう。
『……スバル? ちょっと、聞こえてる?』
もう一度、思念通話を飛ばす。だが、返事が無い。
『スバル! 応答しなさい! スバル!!』
何度呼んでも、スバルからの返事はない。
しまった! ティアナは心の中で絶叫すると同時に走り出した。
さっき女性を救助した場所を探す。そこも窓際だった筈だ。だとすれば……
自分がアンカーで降りた部分から二つ上の階。そこがスバルのいる所だ。デバイスを握り締めて狙いを定める。壁が崩れる危険性も忘れ、アンカーを打ち込むと、ティアナは一気にその場所まで自分を引き戻させた。
飛び込むようにして、窓から中へと入る。割れたガラスが腕を掠っていた。そこから血が流れ出る。だが構わなかった。
「スバル! 返事しなさい!! スバル!!」
念話で交信を試み続け、同時に自分自身の声を上げる。先程の救助地点へ戻ると、そこにはスバルが持ち上げた瓦礫の横に大きな穴が開けてあった。
「馬鹿スバル! コラ! 返事しろ!!」
付き合いの長さから、それがリボルバーナックルによるものである事に気付く。デバイスを握り締めながら、奥へ奥へと進む。彼女を一人にさせてしまったことへの責任を感じながら。
「ねえ、返事して! お願いだから! スバル! スバルッ!!」
もはや悲鳴に近かった。混乱する頭を必死に押さえつけ、あふれ出る不安を制御する。
ただ無事を願った。冷静でいることが出来なかった。同じ建物の中だ。造りと間取りはどの階でも基本的に同じ筈だ。
それなのに……それなのに、何故こんなにも通路が複雑になっているのか?
(なんで……なんでこんなに広いのよ!?)
それでも、スバルが進んだと思われるような痕跡は明確に残されていた為、迷うことは無かった。どれほどの時間が経ったか。ビルから女性を抱えて降下する時、味わったばかりの感覚。ゆっくりと流れる時間。
まさか仲間の事で、こんな風に経験するとは思っても見なかった。
それでも、ようやくゴールが見え始める。


153 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:08:36 ID:n+q0KBwm
(……いた!!)
スバルの魔力反応だ。酷く不安定で弱々しいが、それでも間違えるはずが無い。胸の中を安堵感が過ぎった。原因はまだ分からない。しかし生きているのだ。
 
無事に戻ったら、怒鳴ってやる。そう思って、最後の角を曲がった瞬間だった。
 
「スバル!」
「! ……ティア?」
そこは、未だに火の気配が残っている場所だった。そこから直に、スバルの声が耳に響く。
「この馬鹿! 連絡ぐらいしなさい!」
怒鳴り散らして、彼女の声と気配のする方向へと歩み寄る。
だがその時、スバルの叫び声が
「ティア! こっち来ないで!」
「な、何!? 崩れるの!?」 
いきなりの大声に、ティアナは足を止めた。慌てて周囲の状況を確認する。
自分達の防護服にはフィールド形のバリアが張られている。多少煙があるものの、然程危険性はないように思えた。
「そ、そうじゃない……そうじゃないけど、来ないで!!」
依然として叫び続けるスバルを、しかしティアナは無視した。大声を上げるということは、身体は無事と言うことだ。今までの反動からか、ティアナはそれを追求している余裕は無かった。
とにかく、彼女の姿を確認したかった。
「訳のわかんないコト言わないの。今そっちに行くから」
「だ、駄目! 駄目だよ!! 来ちゃ駄目!!」
 
「ああ、もう! グチグチ駄々こねるんじゃ…………」
 
ないわよ!
 
そう続けることは、出来なかった。


154 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:09:35 ID:n+q0KBwm
 
ティアナ=ランスターは、目の前に広がる光景を信じる事が出来なかった。
立ち上る土煙。
むせ返る様な血の臭い。
それに紛れて漂う、何か。
「ス……バル…?」
「……ティア……見ないで……見ないでぇ……」
目の前に倒れこんでいる相棒の姿。
いつもならば考えるよりも身体が先に動くのに、彼女は動かなかった。
手を差し伸べる事さえも忘れて、その場に立ち尽くすしかできなかった。
(なに……コレ……)
この少女の奇天烈さ、呆れる位の意外性は、身に染みて分かっていた筈だったのに。
なのに……なのに、何故、自分は……
「アンタ……それ、何?」
廃ビルと化した焼け跡の中で、少女の叫びがこだまする。
一人が持っていた、手に握り締めていた銃型のデバイス。それが、ガシャンと音を立てて地面に落ちる。
「スバル……」
もう一度、ティアナは彼女の名を呼んだ。
目の前で四つん這いになって、顔だけはこちらを見ていて。
そしてティアナが見つめる先からは、思わず目を背けたくなるような光景があって。
スバル=ナカジマは自分の背中から現れたそれを、必死で隠すまいと身体をよじる。
しかし、それは到底できない話だった。
破けた防護服と、そしてスバルの無残な迄にボロボロになった肌からは、
 
「やだ……やだやだ。お願い……見ないで……見ないでええええ!!」
 
この世にある筈の無い、金属製の回路が、剥き出しになっていたのだから。







155 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:10:53 ID:n+q0KBwm
〜命がけの友情〜





ティアナ=ランスターと、スバル=ナカジマがコンビを組んで、もう相当な月日がたっていた。
既に訓練校は首席で卒業。魔導師ランク試験もDランクを無事に一発通過。ティアナの夢である執務官への道も、一歩ずつ、しかし確実に道を歩んできていた。
そんな二人の初任務が訪れたのは、配属から僅か一ヶ月。ミッドチルダ東部地域に発生した地震により、あるビルが倒壊しかけたのだ。更に連鎖的に発生した火事により多数の被害者が出てしまった。
直ちに時空管理局地上本部は、近隣の部隊に救助と消火活動を命令。応援として、ティアナとスバルが所属する陸士386部隊も、これに出動する事態となった。新人だからと言って、出し惜しみしている理由は無い。
二人の部隊が到着したのは既に消火活動が大方終わった後。彼女達の任務は、生き残った一般市民の救助と、二次災害の防止だった。
 
 
 
「失礼しました……」
スバル=ナカジマの独断専行に関しては、不思議なくらいお咎めが無かった。
彼女のカンが当たっていた、と言うのが主な理由。
あの時、スバルが居た場所に要救助者が一人存在していた。多少煙を吸っていて意識が混濁していたが、命に別状は無い。しかしスバルが見つけなければ、確実に命を落としていたであろう。
その意味で言えば正しかった、と上層部は判断してくれたようだ。但し、ティアナ=ランスター二等陸士が見てしまった物に関しては、絶対に口外無用と念を押された。
それこそ外に漏らせばクビ、と言わんばかりの勢いだった。
(あんなもの見たんじゃ、当然よね)
要するに今回の事は不問にするから、と言う交換条件だったらしい。
(でも一体……何だったんだろう)
報告書を提出した後、ティアナが向かった先はスバルが搬送された病院だった。その途中で考えるのは、当然パートナーの事だ。
魔法といっても、お伽の国の世界ではない。少なくともミッドチルダでは、出来る事と出来ない事ははっきりと区別され、出来ない事の方が多いのが現状だ。そしてティアナの常識では、あの時のスバルは明らかに後者……分かりやすく言えば、ありえない物だった。
「分かるわけないか……」
自分は未だに勉強不足で、世の中に知らないことなど沢山ある。いやそれ以前に、自分が彼女に対して知っている事など、どの位あったであろうか。
(そうよね……あの娘の事、まだ殆ど知らないのよね)


156 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:12:24 ID:n+q0KBwm
知っていると言うのは、おこがましいかもしれない。
例えばティアナの兄、ティーダ=ランスターの事であれば……もうこの世の人ではないが、それでもスバルの十倍近い仕草や特徴は素で思い出せる。
彼女の場合はどうだ。魔法戦闘のスタイルとクセ、性格、家族構成、好きな食べ物……もうネタ切れだ。
(食べ物っつったって……アイスとパスタと、あと何かあったっけ?)
思い出せないのではない。初めから、知らないのだ。お見舞いの品にフルーツを買ってきたが、大丈夫だろうか。その内、ティアナは考えるのを止めた。
(考えたって、仕方ないわね……)
病院のドアをくぐる時には、そういう結論が自分の中で出ていた。何故かは分からないが、昨日見たものに対して冷静に考えている。自分でも驚くほどに感情が出ない。見たショックで、心が麻痺しているのだろうか。
じゃあ、麻痺が解けたら、どうなる? 彼女の前に立って、再び言葉を失うのか?
「……冗談じゃないわ」
吐き捨てるように言って、エレベーターに乗る。
今自分の心の中からせりあがって来た物を、全力で否定した。彼女に対して知らなかったとしても、昨日の出来事が如何に自分に衝撃を与えたとしても、それだけは認めない。
「えっと……第2病棟の906号室」
こんな頑なになっている自分が分からなくて、またそれも否定した。その後も襲いくる悶々とした何かを振り払いながら、ティアナはスバルがいると言われた病室まで辿り着く。
軽くドアをノックすると、そこから聞きなれた返事が返ってきた。
『はい、どうぞ』
ガチャリとドアを開けると、半日ぶりに見るパートナーの姿があった。ベッドから半身を起こしている。
「父さん。どうし……って、ティア!?」
「どう、調子は?」
「ど、ど、どうしてティアがここに!?」
どもった口調で、ティアナを見つめるスバル。そんなに自分がここに来るのは意外な事だろうか。少し腹が立った。
「何? 私がお見舞いに来るのがそんなに迷惑だったのかしら?」
「そ、そんな事ないけど……」
「じゃあ、人の親切は受け取りなさいよ。コレ、ここに置いておくわね」
「あ、うん……」
スバルは小さく答える。ティアナは買ってきたフルーツセットを置くと、近くにあったイスに腰掛けた。
入ってからの最初の言葉から察するに、どうやら別の人物の事だと勘違いしたらしい。


157 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:14:46 ID:n+q0KBwm
ティアナは何を話すべきかと最初思案していたが、その内オーソドックスな質問をひねり出した。
「身体の調子はどう?」
「うん……もう結構平気だよ。すぐに退院できるって」
「そう、なら良かったわ。あ、アンタが助けた人だけどね。命に別状はないそうよ」
「ほんと?」
「ええ。アンタと同じように、すぐに仕事に戻れるって」
「そっか。よかった……」
本当に心から安心しているらしい。だがそれ以上会話は繋がらなかった。
空気が重い。理由は分かっていた。目の前にいたスバルの様子が変なことは、容易に読みとれる。
正直、スバルに関して知らないところは沢山ある。
あの機械仕掛けの背中も、それ以外の事も。
聞くべきなのか、それともスバルが話すまで黙っておくべきなのか。常識で言えば聞かない方が良い。
だが同時に知りたいと思っている自分がいることもまた事実である。それも単なる好奇心であれば、ティアナはそれを死ぬまで押さえ込むつりであった。だがこの感情は……何だろう。彼女は正体不明の物体に迷わされていた。
(今のアンタ見てると……調子狂うのよ)
「ティア」
不意に、スバルが口を開いた。
「ごめんね……」
「え?」
「私の身体、驚いたでしょ?」
突然の言葉に戸惑いつつも、ティアナは平静を装って答えた。
「まあ……多少は、ね」
「無闇に私が突っ込んだからだよね……はは……ドジだなあ」
「もうその話は止しなさいよ。そのお陰で一人助かったのよ」
スバルが救出した人物は、彼女が駆けつけた時にちょうど崩れてきた瓦礫に押し潰されそうになったのだ。
急いで駆けて行ってリボルバー・ナックルで瓦礫は破壊できた。
しかしそれでバランスを失ったのか、別の方向にあった瓦礫がまた崩れて来たのである。被災者を護る方法は、スバル自身が身を持って防ぐしかなかった。
「それは結果論だよ、やっぱり……」
「結果論だって言えるのも、その助けた人がいるからでしょ。上も殆ど言って来なかったし、胸を張れとは言わないけど、気にしたってしょうがないわよ」
一つ一つ、ティアナは冷静に言葉を選んでいた。スバルを傷つけないように、慎重に。


158 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:18:48 ID:n+q0KBwm
「でも、そのせいでティアを驚かせちゃったから……やっぱミスだよ」
「そんなの……」
「ううん。ティア、ホントはとっても変に思ってるよね、私のこと」
ティアナの言葉を遮るように、スバルは声を張って言った。
「……スバル?」
「だって、無駄に馬鹿力だし、ご飯だってありえないぐらいバクバク食べるし、変なところ目白押しだもん」
笑いながら、まくし立てるような口調で喋り捲るスバルを、ティアナは呆然と見つめた。
何を言っているんだ? コレが彼女か?
「別に、私はそんな……」
「だ〜か〜ら〜、気にしなくって良いんだよ、ティアは。いつも口調で言っても構わないって。不気味だとか、化け物だとか」
急に、いつものように笑うスバル。しかし、その内はまるで別人のようだった。
目は下を向いたまま、彼女と合わせようともしない。
「……あ、アンタ……それ、本気で言ってるの?」
「もっちろん! だって私、ティアの事なら結構知ってるつもりだよ。物事は隠し通さないで、ズバズバ言うじゃない。だから今回も遠慮しないでさ、正直に罵ってよ。ティアらしくないよ?」
途端に、ティアナは自分の顔が真っ赤になるのを感じた。
身体中が熱い。今までに感じたことの無い程に大きい、それは怒りだった。
訓練校で同期に陰口を叩かれた時すら、これほど強く憤る事は無かったであろう。猛烈な勢いでスバルの胸倉を掴み上げる。
「アンタ! もういっぺん言ってみなさいよ! 私が何ですって!? ふざけないで! 私が……私がそんなこと言う様な奴に見えるって!? アンタは私を、そういう風に見てたの!!?」
「うん」
「っ……!」
余りにもあっさりとした答えに、ティアナは絶句してしまった。
普段と、口調は変わらない筈だ。それなのに何故……彼女の瞳はこんなにも冷たいのだろうか。
「あ〜もう……分かんないかなあ」
スバルはようやくティアナと目を合わせる。
冷たい……凍っているような瞳。それを見て感じたのは恐怖ではなかった。
深い悲しみだ。ティアナの紅くなった顔が見る見るうちに元に戻っていく。
「もうこれ以上ティアと一緒に居たくないの! コンビ解散したいんだよ!!」
そう言って、掴みかかっていたままのティアナの両手を握り締めると、信じられない力でそれを押し退けた。


159 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:19:59 ID:n+q0KBwm
苦痛に歪むティアナに対して、スバルは怒りを露わにして叫んだ。
「私のあんな姿見られて、一緒にいて欲しいと思う!? 分かったらもう出てって! もう顔も見たくない! 同じ空気も吸いたくない!!」
ティアナの顔が再び真っ赤に染まった。同時に頭の中がその顔とは対照的に白一色になってしまう。
「……そう! ああ、そう! わかったわよ! もう勝手にしなさい!!」
スバルに掴まれた両腕を、これでもかと言うぐらい強く振りほどく。その勢いで、イスから立ち上がると、ドアまで一直線に進んだ。
部屋を出る前に、スバルを一瞥する。彼女は表情を変える事無く、抑揚を抑えて言った。
「……早く、行ってよ…ティア」
「……この……大馬鹿!!」
怒鳴って、叩きつけるようにドアを閉めた。
病院内で騒がない事も、走らないことも当たり前だ。しかしティアナは、そんな常識すら忘れて、エレベーターまで一直線に走り抜けた。
飛び込んで、急いでスイッチを押す。早く、一刻も早く、この空間から抜け出したかった。
エレベーターの扉が閉まると、一瞬身体の浮く感覚の後に下の階へ通り始める。
(バカ……スバルのバカ……バカスバル……)
ティアナの頬を、大粒の涙が零れ落ちた。
とめどなくあふれ出るこの涙を、二十歳にも満たない少女が止める事など出来ようか。
知る筈はない。分かる筈が無い。そんな方法も、気力を生み出す術も、意欲を搾り出す事さえも。
(嘘ついてるの、バレバレじゃない! あんな……あんな芝居、通用すると思ってんの!?)
急にあんな風に態度を変えて、それで騙そうとしていたのか。もしそうだとすれば、本当に究極的なバカだ。
(でも、私も同じようなもんか……心のどっかで、あの娘が泣きついて来るって信じてて……)
スバルの身体の秘密は、結局の所分からずじまいだった。あの娘が何を隠しているのか、おおよその予想は付いても、肝心な所は何一つ知りえないままである。
確かに頼られる事を望んだ。でもそれはあくまで理想だ。
秘密を打ち明けてくれなくても言い。泣かなくても良い。だが側にいて欲しいと、自分達はコンビだと、言って欲しかった。
最悪の形で破られて、それに怒りを感じてしまった。何より、悲しかった。
「うぐっ……ひく……ばかぁ……ばかスバ…ルぅ……」
やがて、ドアが開く。


160 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:20:42 ID:n+q0KBwm
スバルがいた階からたどり着くまで泣き続けていた少女は、嗚咽を抑えながら外へと駆け出そうとする。
前も見えなかった。見たくも無かった。今のティアナにとっては。
だからぶつかる事も、回避できなかった。
目の前にいた大柄な男に、直撃してしまった。
「痛っ!」
思わず当たった部分を両手で押さえ、うずくまってしまう。
急に聞こえた声と感触に、ドアを開けた本人も驚く。
「あっと! すまねえな、大丈夫か!?」
エレベーターのドアを押さえて止めているその人物は、しゃがみ込んでいるティアナを心配そうに覗き込んだ。
「いえ、いえ……大丈夫です、私が不注意でしたから」
痛みも引いてきたので立ち上がったが、相手はまだ心配そうに、自分の肩に手を置いてきた。太い、芯の通った声だ。
「ちょっと見せてみな。痕が残っちまったら大変だ」
「本当に大丈夫ですよ。お気になさらず……」
そう言って、顔を上げると、彼女は少々驚いた。
目の前に立っていた人物……スバルが居るであろう病室から出てきたのは、病院関係者ではなかったのだ。
それが証拠に、彼の着ている制服はティアナにとって最も馴染みの深いものであった。
「おや……お前さん、同業者かい?」
それなりに歳を取った熟年者の顔だ。髪の毛は所々白髪が混じっているが、尚且つ年寄りと言うイメージは無く、身体全体からエネルギッシュな気が溢れている。
時空管理局。それも制服の色からして陸士部隊に籍を置いてあるものだ。
しかも肩に付いている徽章を見ると、それは三等陸佐を表している。
つまり士官クラス。今の自分にとっては上官、それも遥かに高い地位にいると言う事だ。
慌ててティアナはピンと背筋を伸ばして敬礼した。
「し、失礼しました! 陸士386部隊所属、ティアナ=ランスター二等陸士であります!」
「お、おお……陸士108部隊隊長、ゲンヤ=ナカジマだ。宜しくな……ん、ティアナ?」
「本当に、大変申し訳ありませんでした。以後このような……ん、ナカジマ?」
最初、ドアをぶつけてしまった男はいきなりの敬礼に驚いていたが、それ以上に気をひくものがあったらしく、呆然と動きが止まってしまった。
それはティアナの方にも言える事で、二人はお互いに目を丸くしながらその顔を見合っていた。病室の廊下でこんな光景は滑稽以外の何物でもないが、仕方が無い。
「お前さん、スバルのメールに良く書いてある……あのティアナか?」
「スバルがしょっちゅう言っていた……あのゲンヤさんですか?」
娘のパートナーと、相棒の父親。
二人の出会いは、少々奇抜なものとなってしまったのだった。


161 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:21:38 ID:n+q0KBwm
 
 
 
「まあ、何だ。悪かったなあ、折角見舞いに来てくれたってのに」
「いえ、気にしないで下さい。気にしていませんから……」
病院を出た二人は、ゲンヤの居る陸士108部隊の隊舎まで案内された。
別にそこまでいる理由は無かったのだが、同じ部隊のギンガも会いたがっているという話を聞いて、昼食がてら御一緒する事になったのだった。
病室で起こった出来事を、ティアナは黙っていた。
「済まねえな。まあ、侘びといっちゃなんだが、ここのザル蕎麦は絶品だぞ。あ、麺類は好きな方か?」
「ええ、ちょくちょく食べますから……」
厳密に言うと、今二人がいるのは隊舎ではなく、そこから少しばかり離れた定食屋だ。
ゲンヤはここをいつもの食事処としているのだった。
ただ、姉のギンガは栄養が偏るし食費も掛かる事から最近では頻繁に行けなくなって来たと言う。
「とはいっても、俺は料理がからっきしだし、おまけに自炊なんて柄じゃねえしよ……」
「そうなんですか……」
「実を言うとな、ギンガも出来ねえんだ」
「本当ですか!?」
こっそりと内緒の話をするように言うゲンヤに、ティアナは少し驚いた。
「意外です……」
「だろ? 親の俺が言うのもなんだが、結構年下の面倒見も良いし、礼儀正しいからな。ウチの部隊の九割が騙されちまったんだ」
「『ちまった』って、過去形ですか?」
「ありゃ去年の秋ぐらいだったかな……親戚からリンゴが届いたんで、そいつを使ってギンガがパイを焼いたんだよ。作りすぎたっつうから、隊の男連中は喜び勇んで貪り食った」
結果は言うまでもなかった。
下痢と腹痛の危機から難を逃れたのは、事実を知っていたゲンヤを除けば、出向中だったごく一部の隊員と、その時近隣で起きたボヤの消火に向かった小隊が二、三個。あとはギンガの美貌に嫉妬していた女性局員が十数人。
蕎麦を啜りながら、ティアナはその様子を想像して、ちょっと恐い気持ちになった。
「悲惨ですね……」
「まったくだ。幸い一日で全員完治したから良かったがなあ。あの時に召集が掛かったらと思うと、生きた心地がしなかった」
「でも……スバルはそうでもないですよね」
彼女が作った料理を食べさせてもらった事があった。
認めたくはなかったのだが、その味は自分が作ったものよりも上だったのである。
たまに『暴発』する事があったが。

162 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:22:31 ID:n+q0KBwm
「ああ、アイツは小さい時から料理が趣味でな。アイツが局員になったイキサツは聞いたか?」
「えっと、空港火災に巻き込まれたって……」
「それだ。それまでシューティング・アーツは殆どやってなかったから、代わりに料理と菓子作りに凝ってたんだ。だから正直、スバルが局員になるって聞いた時は本気で止めたんだがなあ」
そう言えば、スバルが局員になると家族に言った時に猛反対されたと聞いたが、それにはナカジマ家の台所事情も大きく関与しているらしい。
ティアナは苦笑してしまった。
「でも、止まらなかったんですね?」
「あいつの頑固は故郷の町の中でも屈指のモンだからな。お前さんの事は、スバルからのメールで沢山聞かされていたんだが、迷惑掛けてないかどうか心配してたよ」
「そんなこと無いですよ。私が助けられたことも、一度や二度じゃないです」
自分が助けたことは三度や四度じゃ済まない事は、取りあえず伏せておいたが、嘘は言っていない。
自分が無意識の内に助けられた事は、恐らくスバルに対してやったそれの比ではないだろう。何故かティアナには確信があった。
「私、人よりも不器用だから、他の人よりも頑張らなきゃいけなくて……」
「努力家ってのはスバルから聞いてっけど、そんな風には見えねえなあ」
「いえ、本当なんですよ。魔力も少ないし、要領も良くないですし、周りの雑音も気になっちゃう方です」
そう。だから努力するしかない。
人より何倍も、何倍も。それ故に人間関係で苦労した事は、それこそ一度や二度じゃない。
付き合いが悪いといわれた。がり勉だと罵られた。性根がロクでもないと陰口を言われた。
しかし、それでもここまで来る事が出来たのは、ひとえにパートナーのお陰だ。
「二人で一緒だから、私は大丈夫だったんです。あの娘は誰と一緒でも、それなりに上手く出来ますけど、私はそんなうまく立ち回れません」
「……」
ゲンヤは、ティアナの言葉を黙って微笑しながら聞いていた。
「だから私も出来る限りの事をしてあげたいって思ってます。迷惑を被るぐらい、何でもないですよ」

ああ、そうか。ティアナはようやく理解できた。
スバルの事を何とかして理解したいと思った訳……それは、こういう事だったのだ。
彼女を助けたい。あの子は、どこかで苦しんでいるのだ。
本当の意味で、私達は、友達になりたかったんだ。


163 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:25:06 ID:n+q0KBwm
「……そうか」
ゆっくりとゲンヤは箸を盆において、開いた両手をテーブルについた。そして次の瞬間、彼はガバっと頭を下げた。
「な、ナカジマ三佐!?」
いきなりの行動に、ティアナは混乱するばかりだ。しかしゲンヤは構わずに口を開いた。
「ありがとう」
「え? ええ!?」
「あの娘は……スバルは、本当に良い友達を持ったんだなあ……」
友達。ゲンヤからその言葉を聞いた時、ティアナの胸の中は、何処か暖かくなるのを感じた。
目の前では依然として、ゲンヤは頭を下げている。周りの人も何だ、何だと視線を寄せ始める。ティアナは顔を真っ赤にして答えた。
「い、いえ! 別に、そこまで、頭を下げてもらうほどでは!」
「いや、アンタは本物だ。父親として、改めて礼を言わせてくれ」
たっぷり三十秒位、ゲンヤは頭を下げ続けた。
だが、頭を上げた時に、ティアナは見えた気がした。パートナーの父親の、自分の倍以上生きている目が僅かに赤かった事を。
「ティアナ」
「は、はい!」
初めて名指しで呼ばれた事に、思わずティアナは大声を出して反応してしまう。
「正直、お前さんが、本当にスバルの事を思ってくれているか、不安だった。だが、今の事で決心が付いたぜ」
そう言うと、ゲンヤは制服のポケットから携帯を取り出した。ちょっと待っててくれ、と席を立って、店の奥のほうへと移動する。
「ああ、俺だ。飯を食ったら戻るから、その時にお前も……」
数分間ばかり誰かと会話をして、すぐさま席に戻る。そうして再びティアナと向き合った時、彼はこれ以上なほどに真剣な顔つきをしていた。
「メシ食い終わったら、ちょっくら付き合ってくれ。ティアナに、説明しなきゃ行けねえモンがある」
電話の相手が、スバルの姉であるという事に気付いたのはそれからすぐの事だった。


164 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:26:22 ID:n+q0KBwm
 
 
 
勝気な女の子だった。名前はなんと言ったか……もう覚えていない。
ただ、沢山遊んだ。お互いに無垢で、無邪気で、ただそれだけだった。
スバルは、ただそれだけでよかったのに……。
『こないで!』
「な、何で……?」
『アンタなんか友達じゃない! 近寄らないで!』
「そんな……私達、友達だよ……友達だよ!」
『ひぃ! だから来ないでよ、お化け!』
「お……お化け?」
差し伸べた手を、彼女はまるで病原菌か何かのように払いのけた。はたかれた少女の右手が、赤くなっているのにも気付かない。
「違うよ! 私……私、人間だよ!!」
『うそ! じゃあ、何でそんな手をしてるの!? 何でそんな身体してるのよ!?』
「え……?」
一瞬言われた意味が分からなかった。だが、恐る恐る移した目線の先を見て、スバルは凍りついた。
「な、なにコレ……」
自分の腕は、いつも見慣れているそれではなかった。肩から肘に掛けては肌色の腕がそのままだったが、そこから指先までにあったのは機械仕掛けの腕だ。
鉛臭い、それに酷く重い。不気味な駆動音を上げながら、蠢いている。
自分の身体だとしても、見たくない物だった。それ以前に、これが自分の腕だと、認めたくなかった。
「ち、違うよ! コレは私の手はじゃないよ!」
『あんたの手じゃない! そんな手で私に触って欲しくない!』
「そんな……私は……」
私は……
その先が出ない。咽喉が、動かない。自分は何を言おうとしたのだ?
もがく様に、ただ機械仕掛けの腕を、相手に向かって伸ばす。
『ちょ、ちょっと! 来ないでって言ってるでしょ!!』
「わ、私……私……うあ……う……」
フルフルと顔を振りながら、必死で腕を伸ばす。
その先にある物を掴みたかった。例え涙が溢れて、視界が見えなくなっても……。
相手は怯えながらあとずさる。だがスバルは距離を縮めまいと、喰らいついていた。
『やだ! こないで! こないで! 誰か……誰か助けて!!』
「ち……違うよぉ……私……怖くなんか……お化けなんかじゃ……」
搾り出すように、何とか想いを形にする。

165 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:27:26 ID:n+q0KBwm
一人にしないで。置いていかないで。私は何もしないから。
やがて、女の子の後退が止まった。壁か何かに突き当たったのだ。スバルはほっとして、その娘に手を伸ばして、
『や、止めて! お願いだから止めてええ!!』
ドン、と両の腕で強く突き放された。
その時、スバルにはダブって見えた。
『来ないで!』
自分のパートナーが、穢れたものを見る目つきで、自分を睨み付けているように。
「ティア……」
 
『触らないでよ、この化け物!!』
「!!」
 
違う。
私は……
私は……人間だよ……
私は、化け物なんかじゃない!
化け物なんかじゃ……ないよおおおおおおお!!!!
 
 
 
スバル=ナカジマの夢は、そこで終わった。
「……っ!!」
勢い良く、目が見開かれる。目の前にあったのは、青白い天井、ただそれだけだ。
自分を拒絶したそれではない。かと言って近づきもしない。
ただ一定距離を置いて、そこにあった。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
息が荒い。汗もびっしょりかいている。
呼吸を整えながら、ゆっくりと起き上がった。
「はぁ……」
額を押さえる。頭がガンガン痛んだ。
寝る前まではそんな事無かったというのに。
「変な夢見たせいかな……」


166 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:27:50 ID:n+q0KBwm
おかしいな。自分が悪夢を見るなんて。
こんな身体で、どうして悪い夢なんて見るのだろう。
もしかしたら、自分の存在そのものが悪夢なのではないか。
そんな風にさえ思ってしまった。
「あは……あはははは……おっかしいや……ははは……」
笑いが込み上げてきて、再びベッドに寝転がる。
自嘲が、止まらなかった。
「あはは……ははははは!!」
同時に自分の眼から零れる物を、止める事も出来なかった。
「何で……なんで泣くかなあ!? あはっあははははは!! ……ひく……あは……はは……うっ……ううっ……」
泣く意味なんて無い。
自分は人間じゃないのだ。化け物……そう、あの娘が言ったように、化け物なんだから。
「ごべんね、ティア……ごめんね……ディア……うっ……く……うあああああ!!!」
シーツを握り締めて、スバルはその顔を涙で濡らした。
それから泣き疲れて眠りに再び落ちるまで、少女はずっと泣き続けた。


167 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:30:37 ID:n+q0KBwm
以上です。ティアナがスバルの正体を知ったときの話、と言うことでした。

すいません。全部でスレッドは幾つ、と言うものを書いておくのを忘れてしまいました。
次からはこの様な事の無いように、気をつけたいと思います。

後編は今日中にアップできればと思っております。タイトルの意味は、そこで明らかになる予定です。
それでは、読んで下さった方々、ありがとうございました。

168 名前:命がけの友情:2008/02/11(月) 09:34:27 ID:n+q0KBwm
すいません、追記です。
私はSSについてはそれなりに書き慣れているつもりなんです。
が、2chのこういったスレに関して経験はまったくと言っていいほど無いです。
ですから自分でも気付いていないマナー違反やルール無視があるかもしれません。
そういった場合は教えてくだされば幸いです。よろしくお願い致します。

169 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 09:40:16 ID:6IEiCWQ/
GJ!
まだティアナを、信頼はしているけど信用しきれていないスバル、ってのが切ないですね。

170 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 09:41:06 ID:odCj9URt
>>168
特に大丈夫だと思うけど・・・・・あ、GJ忘れた。GJ!!
というか、アニメ内できちんと描写すべきところだよね、この部分って。
普通に描写なしで終ってゲンナリした思いがあるから、より面白く感じた。

後、この作品終った後に何か別のものを投下するつもりがあるなら
HN作った方がいいと思うぜ、個人的には

171 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 09:57:37 ID:ByETznY5
『命がけの友情』の話、つまり『スバルとティアナ』の話は自分も
此処では無い所で書こうと思っていたので今回のは自分にとっては
とても参考に成ります。

172 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 10:13:56 ID:mqV/DWKj
>>167
あんたのSSを待ち続けてリロードしまっくた結果
腕が腱鞘炎になってしまったので謝罪と賠償を(ry

そしてちょーGJ!
確かにこれはかなりの人が見たかったけど語られなかったエピソードのひとつだよなぁ
スバルはいろんな意味で突っ走っちゃう子だから、ティアナとこういう距離のとり方をしてしまうかも
タイトルの意味が早く知りたいぜ、続き楽しみに待ってる!

173 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 10:41:08 ID:L8To0Phk
ナンバーズ戦闘服の半脱ぎってどうすりゃいいんだ・・・
くそ!おれの学力が足らないばっかりに!学校じゃ教えてくれなかった!今の日本の教育は腐っている!

174 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 11:11:27 ID:QgG42scY
>>138
兄貴オッスオッス!
ティアナの破壊力にメーターが振り切れました。あぁ、かわいいなあ、もう!

>>168
GJ!
久しぶりに切なさ炸裂しました。
後編の展開も楽しみにしてます。

175 名前:246:2008/02/11(月) 11:54:53 ID:SGPCMACA
何とか書き上げた……投下直前にやっぱり納得できず書き直すこと二回。
続き投下させていただきます。
注意

・鬱展開あり
・なのはさんとフェイトさんが病んでいます。
・熱くない戦闘オンリー。

では。

176 名前:君に届けたいただ一つの想い:2008/02/11(月) 11:55:39 ID:SGPCMACA
 改めて思う。彼女達は、本当に強くなった。

「バルディッシュ……!」

 苦楽を共にしたデバイスの名を小さく叫び、フェイトがザンバーの刃を横薙ぎにする。目の前の敵は愛槍で
それを受け、やはり耐え切れずに後退する。だがそれだけだ。すぐさま体勢を立て直し、魔力を送り続ける
パートナーの召喚師の力を以って、再びバーニアを噴射した。
 その反対側には、空を駆けるもう一人の敵。雄たけびを上げ、右手に装着したデバイスが相棒の声に火花を
散らす。
 その一撃なら、フェイトの防御など簡単に打ち砕いてしまうだろう。
 だが、それで終わるほど甘くない。金髪を眼前に迫った拳の風圧で踊らせつつ、寸前のところで避けたフェ
イトがその力の反動と共に彼女の胴体へ容赦なくザンバーの刃を走らせる。
 躊躇う必要はありはしない。彼女はなのはを傷つけようとする敵なのだ。そう、いい訳ではなく心から。
 フェイトの放った一撃は、容易く彼女の胴体を二つに分かち、その生命もろとも断ち切った。

「――――っ!?」

 だが、それを許すほどその幻術使いは易くない。舌打ちと共にフェイトが眼前にいる幻影から距離をとる。
その瞬間、たった今までフェイトがいた場所を橙色の砲撃が走りぬけ、彼女のマントに焦げ目を残す。
 睨む視線の先には地面に肩膝をつき、両の手にデバイスを握る三人目。地上から、正確にフェイトのいた位
置を捉えたその砲撃は、否応無く桜色の砲撃を連想させた。
 ありえない。これをあんな貧弱な砲撃と比べてしまうなど失礼なこと。
 苛立ちを魔力に込め、フェイトが周囲にフォトンスフィアを生成させた。

「ファイア」

 トリガーキーを紡ぎ放たれた雷の槍は敵の横を通りすぎ、その後ろ、風景の一部だった民家へと飛んでい
く。まだ避難は完了していない。日が落ちかけている夕暮れ時。中にはきっと、談笑する家族がいるに違いない。
 それを破壊しようとするフェイトの放ったランサーは、その場にいる全員を硬直させる。一番近くで銃を構
えていた彼女がフェイトに背を向け、ランサーに照準を合わせた。
 その大きすぎる隙に、フェイトの口端が自然と上がる。彼女との距離はやや大きい。だが、自分ならばその距
離を埋められる。愛しいなのはの敵の首を一つ、地面へと転がせられる。
 だから動いた。迫っていた槍騎士の攻撃を潜り抜け一直線に。
 そして、それを止めるたのが轟く怒声。

「馬鹿っ、テスタロッサだけ見てろ! 周りはあたしが護るから気にすんな!」

 上空で民家へ近づくランサーを確認した鉄槌の騎士が、同じ数だけの鉛玉に魔力を込めた。
 ランサーを相殺され、魔力の爆発に視界を悪くさせながらもフェイトは止まらない。怒鳴られ、こちらに視
線を戻した彼女を嘲笑い、ザンバーを上段から振り下ろす。
 それと同時、主に操られ飛翔する白竜が炎弾を吐き出した。それを避け敵を仕留めそこなったフェイトが上
空へと飛翔する。追いかけるように放たれる射撃魔法と炎弾を切り裂いて、荒れに荒れた呼吸で辺りを見渡した。

「いない……!?」

 四人と一匹は確認した。だがもう一人、あの蒼髪の敵が見当たらない。相変わらず攻撃は留まらない。それを
避けながらフェイトが見つけたのは、探していた最後の一人。そして、その目の前にいる大切な人。

「な、なのは……さん……?」

 敵が、彼女の目の前で戸惑っている。
 乱れた服から覗くのは、普段よりも紅くなった彼女の肌。そして、陶酔しながらドロドロになった指へ舌を這
わせているその表情はそれよりも紅い。
 スバルの登場に目を見開いている半裸の彼女に、普段に無い寒気を感じ、怯えたように一歩後ずさった彼女
がそれを見た。

「見るなああああぁぁぁぁぁぁっ――――!!!」


177 名前:君に届けたいただ一つの想い:2008/02/11(月) 11:56:29 ID:SGPCMACA
 ――――永遠があるとは思わない。ただ、長く続くと思っていたソレが壊れるのは、思いのほか早かった。
 必死に繋ぎとめようと両手で幸せを支えていれば普通よりもなお。
 当然だろう。
 両手で支えようとしていたら、彼女の手は繋げない――――。
 それを知りながら、彼女は無言で見ていることしか出来なかった。


魔法少女リリカルなのはStrikerS
―君に届けたいただ一つの想い―
(11)


「くぅっ、こ、この――――アイゼン!」

 スバルの眼前に迫っていた光刃を寸前のところで受け止め、ヴィータが表情を苦渋に歪ませる。グラーフア
イゼンに噛み付いたバルディッシュは、デバイス諸共ヴィータが斬ろうと刃の出力を上昇させた。
 それを受け止めているグラーフアイゼンが主の呼び声に応え、内蔵されたカートリッジを破裂させる。それは、
文字通りヴィータの魔力を爆発させた一撃だった。フェイトが防ぐことは叶わない。
 宙で大きく吹き飛ばされ、だがフェイトは止まらない。体勢を立て直し、なのはの元へ再度高速で突進した。
 それを止めようと、エリオがバーニアを吹かせて近づいていた。速度を上げることでそれをやり過ごし、
フェイトが見たのは橙色の射撃と炎弾の弾幕だ。
 幻術を織り交ぜているのだろう。その数は初発にして無数。
 だが当たらない。紙一重で避け、目の前の炎弾を切り裂き、フェイトが身体を捻りハーケンセイバーを弾幕
に向けた。
 前方に放たれる金色の刃が次々と攻撃を切り裂いていく。それによって生まれた僅かな隙間。それがなのは
への道になる。

「フェイトさん! お願いですから止まってください!」

 フリードリヒに乗り、キャロが叫んでいた。それを無視してフェイトが睨むのはなのはへの道を阻む最後の
一人。
 上空から突進しようとするフェイトをキッと睨み、スバルが拳を握り締める。じっと待ち力を込めての一撃
だ。速度に任せたフェイトの斬撃に決して引けを取らぬ威力を持っている。
 それを証明するかのように、剣と拳が拮抗を保った。

「どけええええぇぇぇぇっ――――!!!」

 だがその拮抗を破るが如く、フェイトが叫ぶ。カートリッジを破裂させ、魔力を爆発させ、感情を沸騰させ
た一撃だ。スバルではまだ耐え切れない。

「ぐっ……!?」
「スバル、大丈夫!?」

 吹き飛ばされ立ち上がるスバルを支えながら、ティアナがフェイトにダガーを突きつける。僅かでも動かせば
容易にフェイトを切り裂ける距離だ。いくらフェイトの速度でもそれは避けられない。
 それを真っ直ぐ見ながらフェイトが嗤う。彼女同様、片手をなのはの腰にまわしながらバルディッシュをテ
ィアナのわき腹にちらつかせ、そっとティアナの耳に息を吹きかけた。

「どっちが早いか試してみようか?」

 ティアナの手が僅かに揺れた。注視していなければ確認できないほどの同様だ。事実ティアナ自身気付いて
はいない。
 ――――だが、その隙が命取り。
 ティアナのバリアジャケットをバルディッシュが切り裂いた。

「ティアナ避けろ!」
「――――っ!」


178 名前:246:2008/02/11(月) 11:57:21 ID:SGPCMACA
 怒声とも言えるヴィータの声に、ティアナが咄嗟にフェイトから距離を取る。それとほぼ同時。降り注ぐ八
つの誘導弾が、フェイトへ向けて放たれていた。
 確認し、フェイトがなのはの腰にまわした手に力を込める。魔力を使わずともなのはを持ち上げることは容
易だ。それほどまでに、以前よりも痩せている。
 そしてこの魔力を使用している状態で、なのは一人抱えたところでその機動は衰えない。

「この馬鹿! やられるところだったんだぞ!?」
「す、すいません!」

 地上すれすれで飛行するヴィータが、ティアナを通り過ぎる直前叫んでいた。その蒼色の瞳が睨むのは、逃
走するフェイトとなのは――――いや違う。ヴィータが睨んでいるのは風に揺れる金色のみだ。
 フェイトを追うヴィータに倣い、スバルがウイングロードを駆け抜ける。背負われたティアナはスバルの肩
越し、翻っているフェイトのマントに照準を合わせていた。
 その上空では、フリードリヒの手綱を握るキャロと、その肩に手を乗せバランスを取っているエリオの姿。
 横目でそれを確認したフェイトが、自分を呼ぶ彼女に笑みを向けた。

「大丈夫、なのはの事は私が護るから」
「私も戦ったほうがいいの?」
「いらない。私一人で十分だよ」

 そんな事はさせられない。なのはが戦うと言う事は、即ちなのはに負担をかける事と直結だ。いつでもそうだ。
彼女の魔法は、誰かに想いを届ける代わりに自分を傷つけるものだったから。
 でももうそんな必要はない。自分がその相手なら、彼女の想いは痛いほどに届いている。故にフェイトは首
を振り、ヴィータ達を振り切ろうと速度を上げた。
 この時間だ。まだ外には大勢の人間がいる。現に空を飛ぶ彼女達を見上げている群集は無数。フェイトはそ
れに構わない。
 ヴィータ達には、それを気にする余裕は無かった。
 ここで捕まえる。もうすぐ六課の稼動期間が終わるのだ。その先に待つのはなのはとフェイトへの武装隊の
投入だ。
 考えただけでも震えてしまう。
 普通の武装隊で叶うはずもないのだ。あるのはきっと、フェイトのよる一方的な惨劇だ。血の海でバルディッ
シュを振るい、それを眺めながらなのはが満面の笑みで笑うのだ。
 そんな悪趣味な光景を現実にさせるつもりは毛頭ない。ヴィータだけじゃない。スバル達も同じだった。
 だから迷わない。多少の怪我など気にしてはいられない。全力でフェイト達を叩き潰して止めるだけ。

「ティア、ここから狙える?」
「当然! あんた私を舐めてるの!?」

 なのはに教えてもらったのだ。フェイトとの距離は50メートルも離れていない。この距離で外したらなの
はに怒られてしまうだろう。
 そう考えて、彼女は笑う。
 なのははもう叱ってくれないだろう。自分達が間違えても、以前のように怒ってくれない。代わりに、バル
ディッシュでさっきのように切り裂かれるだけだ。

「スバル、揺らすんじゃないわよ」
「おーけー! もうちょっと近づくよ!」

 スバルがマッハキャリバーの名を呼んだ。相棒の声に応えたデバイスが更に速度を増し、フェイトとの距離
を近づける。
 当たられるではなく当たる。そう確信した瞬間、ティアナはトリガーを引いていた。

「フェイトちゃん、ティアナが撃ってきたよ?」
「うん、大丈夫」

 後方を確認していたなのはがフェイトの首に手を回しながら、ぼんやりと言った。まるで緊迫していないそ
の声はフェイトへの信頼の証だ。
 無論その信頼には応えよう。
 フェイトが高度を上げて迫っていた弾丸を避け、やや減速した。


179 名前:君に届けたいただ一つの想い:2008/02/11(月) 11:58:05 ID:SGPCMACA
「ちっ! うろちょろと……!」

 速度を落としたことでフェイトを通り過ぎたヴィータが舌打ちを放つ。高度を上げ続けるフェイトを追い、
彼女が見たのは小さな騎士と召喚師。
 スバルの後方。上空を飛んでいた彼らがすばやく反応し、フェイトへ攻撃の準備を始めていた。

「エリオ君、いける!?」
「任せて! キャロ、バックアップお願い!」

 大きく頷いたキャロが腕を交差させる。エリオへと付与するブーストは速度上昇と防御力上昇の二つ。これ
なら、何も気にせずエリオはフェイトへと飛んでいけるだろう。
 エリオが上空にストラーダを構えた。キャロに小さく頷いた後、フリードリヒの背中から飛び降り、バーニ
アを噴射する。
 その速度はフォワード陣最速だ。いや、キャロのサポートがある今フェイトやシグナムに次ぐ速さを誇るだ
ろう。
 それを示すが如く、エリオがフェイトへと近づいていく。フェイトがなのはを気遣っている今、この騎士の
速度は最速だった。
 彼の誠実さを表すような愚直なまでの直進だ。

「なのは、ちょっと揺れるからね」
「うん」

 それをフェイトが片手でバルディッシュを一閃させることで退けた。吹き飛ばされたエリオが地面へと落ち
ていく。
 このまま落ちちゃえばいいのに。そうなのはが呟いて。
 彼女はエリオを受け止めるキャロに、ため息をつきながら視線を送っていた。

「ぼうっとしてんじゃねぇよ!」

 その視線が、その声にハッとなる。見上げれば自分達の上空、ヴィータがグラーフアイゼンを上段から振り
下ろしながらこちらへ一直線に突っ込んでいた。
 フェイトもヴィータの一撃は片手ではやり過ごすことは出来ない。そう判断し、なのはがフェイトの首にま
わした腕に力を込め目を瞑る。
 大丈夫、とフェイトが小さく呟いた。
 フェイトが片手を振るい、周囲にフォトンスフィアを展開させる。トリガーキーと同時放たれた雷の槍に、
ヴィータ思わず目を見開いた。
 その隙だ。フェイトが鉄槌を避け、後方で爆発が起こるのを確認しながら飛翔する。
 その前方。今度はスバル達の攻撃だった。後ろからはフォトンランサーを掻い潜ったヴィータが、雄たけびを
上げながらラケーテンのバーニアを噴射している。
 ヴィータを相手にしている余裕はない。そのままスバルへ突っ込もうとフェイトが加速した。

「フェイトちゃん駄目……!」
「――――っ!」

 その声に咄嗟に反応した。
 身体を捻り、違う方向からの射撃魔法を避け相手を睨む。
 突っ込もうとしていたスバルとティアナの幻影は、フェイトの横を通り過ぎると同時消えていた。

「甘くみんなよ……なのはが育てたんだからなぁ!」

 ヴィータの追撃は、なのはが叫ぶより早かった。
 ヴィータの突進になのはが悲鳴を上げながら地面に落ちていく。バリアジャケットを装着しても間に合わない。
 フェイトが決めたのは、なのはを抱きかかえそのまま地面を堕ちること。

「ぐぅっ……!」


180 名前:君に届けたいただ一つの想い:2008/02/11(月) 11:59:12 ID:SGPCMACA
 フェイトが苦悶の声をあげながら地面に背中を打ちつけ蹲った。フェイトに護られ無傷だったなのはがフェイ
トの名を叫ぶ中、フェイトは応えずになのはを抱きかかえ、放たれた追撃に背中を向けた。
 悲鳴を上げる暇も無かった。フェイトが奥歯を噛み閉めた直後、肉の焼ける音と避ける音が聞え、意識が闇の
中に沈んでいく。

「なのはっ、逃げて……!」
「で、でも……」
「逃げてって言ってるでしょ!」

 フェイトがなのはに向けた、初めての命令だった。なのはがどう受け取っていたかは知らないが、フェイト
にとっては初めての事。
 それになのはが逆らえるはずも無く。僅かな苦慮の後黙って転送魔法を起動させた。

「終わりだな。全部話してもらうからな」

 地に降りたヴィータが後方にスバルを待機させながら、蹲っているフェイトにグラーフアイゼンを突きつけた。
 フェイトがそれを睨み、バルディッシュを支えに立ち上がる。

「私は、どうなったっていい……」

 なのはに背中を向け、バルディッシュを構え静かに呟く。

「でも、なのはには指一本触れさせない」

 傷ついて尚、その意思は砕けてはいなかった。


* * *


 フェイトの身体が宙を舞う。地面に打ち付けられたフェイトへ向かうのは、ヴィータの放つ誘導弾。避ける
事無くそれを受け、それでも彼女は抵抗を続けた。
 避けることはしない。まだなのはは後ろで目を瞑り、転送の準備を始めているのだ。避けてしまったら、な
のはを巻き込んでしまうだろう。
 とにかく、なのはだけでも逃がさないといけない。全てはそれからだ。その後は、なのはを捕まえようとす
る敵を討ち滅ぼすだけ。ここはじっと耐え、なのはが逃げるサポートをすることが最優先。

「ふぇ、フェイトちゃん……」
「だ、大丈夫。なのははそのままでいて」

 地面を転がったとき頭をぶつけたのか、ふら付いて落ち着かなかった。片目を塞いだ流血を拭い、フェイトが
地面に血の混じった唾を吐く。
 まだいける。バルディッシュは砕かれていない。剣が砕かれてない以上、立ち止まることは必要ない。
 バルディッシュを握る手に力を込め、フェイトが跳んだ。狙いはヴィータだ。スバル達を相手にする余裕は
今はない。この戦い、ヴィータがいる内はこちらの劣勢は動かない。

「ちっ、まだやるのかよ……」

 苛立ちを露にしたヴィータがグラーフアイゼンを振るう。バルディッシュでそれを受け止め、フェイトが
ヴィータの小さな体躯を弾き飛ばす。
 そのすぐ後、ヴィータに向けフォトンランサーが放たれた。容赦なく徹底的に。ヴィータ達の持っている意
思はフェイトも同じ事。
 二度となのはに近づかぬよう。そんな事を考えないよう、徹底的にだ。
 ランサーを掻い潜り、ヴィータがフェイトの鉄槌の一撃を放つ。受け止めたフェイトを待つのは、ティアナの
弾丸だ。
 フェイトに直撃する直前、なのはの姿が消えた。フェイトがそれを確認し、口端を吊り上げる。もう防ぐ必
要などありはしない。ここからは、自分の戦い方で彼女を護ることが出来るから。
 とは言っても彼女の身体は既に満身創痍。一番の武器であるスピードも、格段に衰えているだろう。
 ――――だが、それでも。

181 名前:君に届けたいただ一つの想い:2008/02/11(月) 11:59:56 ID:SGPCMACA
 なのはがいないこの場、彼女はどんなものよりも速かった。

「っ……や、やば……!」

 ティアナの攻撃を避け、フェイトがヴィータを吹き飛ばす。バランスを立て直そうとするヴィータよりも早く、
フェイトはバルディッシュを一閃させていた。
 これで終わりだ。ヴィータに速度でなす術は無い。彼女はその戦い方から間違いがちだが、ヴォルケンリッ
ターの中では攻防一体のバランスを保つタイプだ。破壊力こそ六課一とはいえ、速度で勝る筈がない。
 故にフェイトとの相性はそれほど良くはない。負けはしないが、その防御能力から防ぐことをしないフェイト
が相手ではその破壊力を十分に発揮できないからだ。
 彼女の戦い方は八年前まで、あの砲撃魔道師の強固な防御を打ち砕くことだけを考えていたものだったから。

「ヴィータ隊長……!」

 ヴィータでは今の攻撃は防げない。ならば防ぐのはそれ以外の者。
 バルディッシュを受け止めたのはこの場で誰よりも早く駆けつけた、エリオのストラーダだった。

「悪い、油断した」

 立ち上がったヴィータが自分を護った赤毛の少年に、僅かに笑みを見せる。JS事件の前ならば今の攻撃は防
げなかっただろう。それが防げるまでになったことに喜びを隠せないでいた。

「お前ら、まだいけるな?」
「はい!」

 多少なりともダメージを追っているものの、フェイトほどじゃない。まだ戦える。なのはの教導はそういう
ものだった。傷つかないことを第一に考えた基礎を固める教導だ。苦戦を強いるとき一番活躍できるのは彼女
達のようなストライカーだ。エースと呼ばれるものじゃない。

「お前ら何でもいいからあいつを止めろ。とどめはあたしだ」

 フェイトをここで捕まえる。それからなのはの相手をすればいい。恐らく、フェイトのときよりもなのはを
止めるのは簡単だろう。
 そう考えての判断だ。確実に終わらせる為のもの。全て終わらせる。元には戻らないだろうが、それでも出
来る限りこの壊れた物を直したかった。
 それは皆も同様だろう。その意思が、フェイトに対抗していた。
 尚もヴィータに攻撃しようとするフェイトにスバルとエリオが向かい、ティアナがサポートする。フェイト
の攻撃が止まればヴィータの一撃だ。

「――――いえ、ヴィータ隊長はなのはさんとところに行ってください。ここは私達が戦います」

 それを止めたのがキャロの小さな、だが迷いのない澄んだ声だ。
 その少女は真っ直ぐにフェイトを見つめ、自分達だけで戦うと言っていた。

「ヴィータ隊長、行ってください! 私達は大丈夫です!」

 反論する必要がない。
 未だヴィータへと向かうフェイトへ体当たりし、馬乗りになって暴れる四肢を押さえ込んだスバルが、些かも
迷いのない瞳でヴィータへ訴えた。
 何とも頼もしい言葉だろう。ヴィータの顔に自然と笑みが浮かぶのは当然の事。
 即断の後、ヴィータが言うは自分の戦線離脱。そして、彼女達の力でフェイトをとめる事。

「どけ……!」

 だが彼女はそれを許さない。スバルを殴り飛ばして退け、鬼気迫る表情でヴィータへバルディッシュを振
るった。放たれた数え切れぬほどの雷の槍に、ヴィータが転送魔法を起動させようとして歯噛みする。グラー
フアイゼンを構え、全て叩き潰すと決め。

「行ってください!」


182 名前:君に届けたいただ一つの想い:2008/02/11(月) 12:00:39 ID:SGPCMACA
 それを、キャロの普段にない凛とした声が阻んでいた。
 ヴィータの前に立ち、キャロがプロテクションを展開させる。激突した金色の槍の威力に苦渋を浮かべ、玉の
ような汗を浮かべながら、それでも尚両手を突き出しプロテクションへ魔力を送り続けた。
 プラズマランサーが消滅しても変わらない。キャロへ叫びながらバルディッシュを振り下ろそうとするフェ
イトを見つめ、目を瞑る。
 それと同時、槍を持った彼女の騎士が寸前に迫った兇刃を防いでいた。

「ぐっ……す、ストラーダ! 耐えて!」

 ストラーダのフレームが軋んでいる。フェイトの攻撃はストラーダを断ち、エリオを両断しても尚余りある
もの。このまま耐えては負けは必須。
 だが耐えた。フェイトを真っ直ぐ睨み、キャロの魔力を使ってフェイトの攻撃を耐え続けた。
 ――――そして。

「ファントムブレイザー」

 小さく呟いた後放たれた砲撃が、フェイトを直撃した。

「――――っ!!?」

 意識が根こそぎ吹っ飛ばされたかのような衝撃だ。悲鳴にならない悲鳴をあげ、フェイトが大地へと堕ちて
いく。
 涙が浮かぶ瞳が見つめるはただ一点。

「や、やめっ――――行かないでっ! なのはをそっとしてあげて! お願いだから……!」
「悪いけどさ、出来ねぇよ。ちゃんとやったことは責任取らなきゃいけねぇだろ?」

 ヴィータの姿がゆっくりと消えていく。
 ゆっくりと、涙で滲んで消えていく。

「あ……」

 地面に身体を打ちつけたことも忘れ、ただ呆然と見ていた。
 目の前が真っ暗になったことも気付かず、震え続ける拳を握り涙を流して。

「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ――――!!!」

 感情に任せたフェイトの慟哭が、空高く響き渡った。


* * *



183 名前:君に届けたいただ一つの想い:2008/02/11(月) 12:01:25 ID:SGPCMACA
 最初は、本当に雲の上の人だった。追いかけようにも姿が見えず、どこへ向かっていいかも分からない。
そんな、途方も無くただ憧れるしか出来ない人だった。
 それが機動六課へ入隊してから少し変わる。相変わらず雲の上に彼女はいたけれど、そこから手を差し伸べ
てくれていた。そこへたどり着く為に彼女は力を注いでくれていた。
 今その手に触れることが出来るだろうか。そう彼女――――スバル・ナカジマは憧れる存在と同じ場所にいる
彼女を見つめ、自問する。
 答えはさほど悩まずに浮かんでいた。
 同じ場所には立てないだろう。未だ彼女は雲の上。そして自分は地に脚をつけたままだ。
 しかしそれでも、ただ一つこの拳に込めた想いだけは届いている。そんな気がした。

「フェイトさんもう止めましょう? ヴィータさんだってなのはさんを傷つけようとしてるわけじゃ――――」
「スバル言っても無駄よ。ちゃんと止めるって言ったんだから私達で止めるわよ」

 呆然と彼女はヴィータのいた場所を見つめ、何かを悔いるように唇を噛んでいた。先ほどの激情も溢れる涙が
流してしまったのだろう。今はただ、震えているだけだった。
 フェイトを倒すなら今だ。相手がどういう状態かなど気に出来ない。気にする余裕は自分達にはない。

「エリオ、行くよ。ティア、キャロバックアップお願い」

 フェイトが自失している今が最大の好機なのだ。そう、いい訳のように何度も内心で呟き、スバルが拳を固
めた。
 エリオも同様腰を落とし、ストラーダを構えている。スバルとエリオ。二人の突破力ならばフェイトの防御力
は容易いこと。避けないのなら、この一撃で終わるだろう。
 それが分かっているだろうに、フェイトは何もしなかった。
 スバルの額から汗が流れる。突きつけた拳は震え、迷いがないとは言えなかった。

「行くよ」

 それを振り払うようにスバルが走った。全力全開。魔力をありったけ込めた拳だ。痛みを感じる暇は与えない。
エリオも同様。雄たけびを上げながらフェイトへ突進し、ストラーダを振り上げた。

「――――」

 フェイトの口が僅かに動く。こちらには聞えないほどの声量で紡がれたそれが何であるかは分からない。だ
がティアナが咄嗟にクロスミラージュの照準を合わせフェイトを真っ直ぐに見た。
 ――――見ていたけれど、何が起きたかは分からなかった。


184 名前:君に届けたいただ一つの想い:2008/02/11(月) 12:04:27 ID:SGPCMACA
「っ……ストラーダ!」

 エリオが叫ぶ。フェイトのいた場所を通り過ぎ、しかし手ごたえが無かったことに驚愕して。
 振り返り見たのは、二対の剣。

「あっ、ぐぅ……!?」

 そして、フェイトの足元で蹲り痛みに顔をしかめているスバルの姿だ。

「ねぇ、スバル……? スバルはそうやって、なのはを傷つけようとするんだね?」
「ち、ちがいま――――」
「うるさい黙れ」
「――――!!?」

 何かが砕ける音がした。
 見ればフェイトがスバルの右腕を踏み潰し、捻るように力を込めていた。
 ガキン、とスバルのボディを砕く音がする程の力だ。魔力が込められているのは言うまでもない。
 
「あっ、ああっ……や、やめてっ……やめてください……やめて――――」

 それだけで砕かれてしまったのだろう。
 スバルが泣き叫び頭を振りながらフェイトの脚を振り払おうと力を込めていた。人工皮膚から覗く機械部
分は火花を上げ、歪な稼動音を発している。
 それに不快感を露にしたフェイトが、バルディッシュを突きつけた。
 ――――そして。

「い、いやぁ……たすけ、助けてください……たすけ、て――――いやっ、やだっ、やだやだやだやだや
だぁ――――あああああぁぁぁぁぁっっっ――――!!?」
「ひとりめ」

 ゆっくりと、スバルの身体にライオットの刃が食い込んだ。

185 名前:246:2008/02/11(月) 12:05:09 ID:SGPCMACA
以上です。ありがとうございました。
中々戦闘がスタイリッシュになりません。後、燃えません。戦闘描写を甘く見ていました。寒気がする方向で
頑張ります。
そしてスバルは前作同様ちょっとかわいそうな事に。大丈夫、何とか助けます。
ヴィータがなのはの元へ向かい、スバル達が残ったのはキャロをフェイトの近くにいさせる必要があったため。
なのはとフェイトが離れたのも似たような問題です。
次回は最後の鬱展開。
ではまた次回。

186 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 12:33:22 ID:HB4vcmID
GJGJGJGJGJGJ!!!
都築が凄い楽しみすぎて興奮でニヤニヤしてます!

187 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 12:45:06 ID:KG3xw3+j
>>185
(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク
空恐ろしいところで切らないでぇー!

つーか、どうなってるのこのスレ?前スレももう埋まってるし、
昨日の晩から今まで一体何人の職人さんが投下したんだ?

188 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 12:48:51 ID:KSnrNUrA
いやあああスバルうううう!最近心を揺さぶり針を突き立てるSSが増えすぎて嬉しいやら嬉しいやら

189 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 12:49:37 ID:MtruuS18
GJ!!です。
フェイトさん自分で質問して答えは聞いてないw
これも愛の形か。

190 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 12:54:59 ID:vhmxkJu0
>>185
GJ!!
戦闘熱いですよ!しかし…最後のシーンで寒気がしたのもまた事実
次回は最後の鬱展開ですか…果たしてどんな方向に向かって行くのか
期待して待ってます!

191 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 13:16:06 ID:t7cfdJ6j
スレ立て後一日経たずに237kBとか異常過ぎだろ……もっとやってください
そして俺も早く完成させねば

192 名前:246:2008/02/11(月) 13:40:12 ID:SGPCMACA
というか、最後二対てなんだ……orz
申し訳ありません司書の方、下記修正をお願いします。

・最後のレス 四行目
振り返り見たのは、二対の剣
⇒振り返り見たのは、一対の剣。

お手数ですが、よろしくおねがいします。

193 名前:予告編もどき投下します:2008/02/11(月) 14:55:57 ID:u32//Ko8
『自分には、真実を知り、伝える権利と義務がある』

 1人の男のそんな驕りが引き起こした悲劇。
 私達は大切な人を失い…そして誰よりも優しかった彼女は、私達の前から姿を消した。 

 それから6年。十数年の時を経て歴史は…繰り返される。


 新番組:魔法少女リリカルヴィヴィオ


 現在、鋭意製作中!!


えーと、自分にプレッシャーかける為に予告編だけ投下させてもらいます。
本編は完成次第投下します。


194 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 15:46:58 ID:QdgDdE/l
こ、これは・・・・・ここの住人達が期待している第四期なものが来る予感!?
期待して待っている!!

とプレッシャーをかけて見る。
でもまぁ、それほど焦らずに。よい作品であればあるほど製作時間は長くなるものですので。


195 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 15:52:26 ID:VzDdrbhz
フェイトさんがプレシアママン化か!

196 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 15:55:56 ID:CKLwTxws
いや、冥王なのはかもよ?

197 名前:38 ◆KHEtQ2j5Nc :2008/02/11(月) 16:01:42 ID:77tdRHMx
>>193
うわあ……第4期計画書発動ですか……。


……俺と、同じように。



PT、闇の書、JS。
3つの大事件を乗り越えた戦士達は、ようやく休息の時を迎える。
……そう、それは「A's」でも「Strikers」でもない、恋人達の……「Lovers」の物語。

魔法少女リリカルなのはLOVERS

現在、鋭意製作中。

……出来る限り本編キャラでカップリングを作ってます。
まあ、オリキャラだらけですけどねw(男女比的な意味で男のオリキャラ大量生産しないと追い付かない)
オリキャラは名前すら出さずにただ誰と付き合ってる、だけにしていますが。
第1話は遅くとも2/16までには投下可能なはずです。

198 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 16:10:21 ID:t7cfdJ6j
>>197
一歩間違えれば袋叩きにされそうな内容やテーマだな…
オリキャラは叩かれ易いから、本編キャラと組ませる場合は特に扱いに気をつけてくれ

個人的には見てみたい、応援してるぜ

199 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 16:14:06 ID:V0NNtONY
>>197
オリキャラは賛否両論ありますが楽しみにしてます

200 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 16:36:05 ID:fobN5SlI
一期、三期と同じく「JS」を是非盛り込んでほしいものやねぇ

201 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 16:42:42 ID:4V56d9xq
JSが最近「冗談はスパッツだけにしてくださいよ」に脳内変換されるんだ・・・・・・

どうしよう。

202 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 16:45:45 ID:KG3xw3+j
JS?
ああ、Joshi Shogakuseiのことか!

203 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 17:10:33 ID:6TJWVAi4
>>201
>>202
この変態&ロリコンめ!!

しかし、ここんとこみなさん飛ばしてるな、休みとはいえこの密度と量
消費者としては嬉しい限りです、みなさん頑張って下さい。

204 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 17:13:38 ID:BbtloMy+
>>198
オリキャラが叩かれ易いっていうか38自体が過去の行いでアンチだらけだしなぁ……

>>185
GJ!!
毎回猛烈に楽しませて貰ってます。
鬱大好きなので次回の鬱度にwktkして待ってますね!
続きがんばってください!

205 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 17:44:16 ID:SqxlTz1w
>>138
GJです!
かなり楽しみにしていたので完結は寂しいですが、最高に面白かったです。

>>168
GJ!
ティアナいい子、そしてゲンヤさんいい親父、続きが今から待ち遠しい


最近物凄い勢いでスバルやティアナが好きになっていくぜ……

206 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 18:29:46 ID:fobN5SlI
スカリエッティのアジトって風呂あるの?

207 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 18:32:26 ID:6TJWVAi4
>>206
漫画版でナンバーズが入浴しているのであることは確定

208 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 18:33:01 ID:FAO0N2Vh
>>206
温水洗浄施設がラボ内にある。
あと訓練スペースや休憩室みたいなものもある。

209 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 18:34:02 ID:V0NNtONY
魔法で汚れを落とすな装置はあるかもしれない
調整槽につかるとか

210 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 19:41:58 ID:AEhz0fOt
>>185
GJ、なんという鬱……
てか、前作も併せて考えるに、氏の作品は毎度スバルが(色んな意味で)碌な目に合わないっすねw

211 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 19:48:48 ID:QgG42scY
>>185
遅くなりましたがGJです!
作品から溢れ出す、胸を締め付ける様な圧迫感が堪まらないです。
次回のスーパー鬱タイムも楽しみにしています。

212 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 21:11:50 ID:NPVm5k3C
>201
まぁ、トリを変えないかぎりはあぼーんされるので無問題。

213 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 21:24:29 ID:WKeTwd1/
今夜はマターリ気味?

214 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 21:54:24 ID:ha2CNlQv
>>185
うおー毎度面白いっす。
燃えないなんてとんでもない、
ちゃんとバトルに感情が乗ってる感じで好きです。
鬱展開、覚悟して待ってます…!

215 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 21:59:20 ID:t7cfdJ6j
>>213
あれだけの大量投下が有った後だし、チャージ中と予想

216 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:17:41 ID:vyC7za/l
棒担当…………もとい男キャラ列伝


・ユーノ
無印時代からの不滅のエース。
出番が無かったのを逆手に取って妄想しろ。
魔王から数の子までなんでもござれ。でもヤンデレだけは勘弁な。

・エリオ
二代目淫獣。
メインは義母とキャロだが、初代と同じく無限の可能性を胸に今日も誰かとフラグ立て。
年末年始は出番が減っていたが、エロオではなく燃えエリオとして復活しつつある。

・クロノ
結婚したのが響き出番は減った。
それでも別時空で義妹の尻を掘ったり縛ったりと今日も提督は元気です。
ちなみに最後にエイミィさんとのエロが投下されたのは34スレ。

・ヴァイス
はっきりとしたフラグならティアナ・シグナム・アルトとこいつが一番多い。
無茶すればラグナもいける。
エリオと同じく最近ちょっと出番が減り気味。

・ロッサ
ほぼはやて専属。義姉とのエロマダー?
誰かやると思っていたバター犬ネタが未だに出ないのが不思議。

・ゲンヤ
はやてとくっついてる設定のものが多いが、本格的なエロはまだ無かったりする。
むしろ血の繋がらない長女とのエロをちょこちょこ見る。
ある意味一番禁忌性が高い。

・グリフィス
こいつの登場頻度を見てると「出番は大事」という言葉がひしひしと伝わってくる。
はやてにシャーリーにルキノと相手候補は多いんだが……。

・スカリエッティ
気のいいお父さんキャラが定着したせいか、娘達とのエロは少ない。
フェイトさんとくっついたらどうか、と時たま雑談で出たり。

・ゼスト
ナンバーズの相手役を努められる可能性のある数少ない男性キャラ。
アギトもいけるが、サイズが……。

・レジアス
放送時、これだけレジアスメインSSが投下されると誰が予想したでしょうか。
エロは……まあ、相手いないし。

・カルタス
まず名前を覚えてもらうことから始めましょう。
ておあー氏が出さなければ永遠に忘れられていた可能性が高い。

217 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:21:16 ID:iVeK72dV
素晴らしいチンコ要員リストですね、今後のSSの展開に役立ちそうです。

ところでカルタスって誰?

218 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:23:01 ID:ae8Q6FzS
陸士108部隊――ゲンヤの部隊の副官だったっけ? ギンガの同僚、つか上司になるのかね。

219 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:23:52 ID:WKeTwd1/
>>216
ゲンヤとカルタスの存在忘れてたわw
折角なので女キャラ列伝もキボン

220 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:24:19 ID:GDDXno1n
>>216
ザフィーラ…

221 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:24:27 ID:BKKvdz08
そして忘れ去られるザフィーラ

222 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:25:40 ID:21t5ICJp
>>218
二尉だからそうなるな。20代後半。
更正組の頼れるお兄さんポジを獲得。

223 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:27:33 ID:GiDS/R57
>>217
ラッド・カルタス
陸士部隊でのギンガの上官。捜査主任。はやてと面識がある。
はやてからの要請を受けたゲンヤの指示で、ギンガと共に機動六課と共同捜査を張る。
事件後はギンガ・ゲンヤと共にナンバーズ達の更正にも関わっており、ナンバーズ達からは「頼れるお兄さん」扱いで慕われている。(Nanoha Wiki)

らしいよ

俺も出そうかと思ったんだが本編に殆ど出てない癖に5行目みたいな設定があるから逆に扱いにくいんだよな


224 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:29:13 ID:vyC7za/l
・ザフィーラ
ごめん。マジで忘れてた。
相手をした回数は同族のアルフよりもヴォルケンズの方が多い。
変則的にヴィヴィオ、フェイトもあり。
……けっこうこいつ相手いるな。

225 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:29:49 ID:LDJMxS2Z
普通に見たら、カルタスってギンガオンリーだよな。家族繋がりでスバルとかもいけるかもしれんが。
いずれにせよ、カルタスってキャラ特性が掴めるほどの出番がないんだよなぁ。実直そうなイメージはあるけど。

226 名前:B・A:2008/02/11(月) 22:32:27 ID:mZN1+5fb
ゆりかご浮上時は何故かゲンヤの隣にいたという怪現象が起きていましたからねぇ。


40分あたりに投下良いですか?

227 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:36:53 ID:dy7B+HPG
>>216
ロッサはシャッハも?
でもシャッハのエロ見てー

228 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:37:56 ID:GiDS/R57
>>225
出番が少ないだけの脇役なら色々と妄想のしがいがあるけど
カルタスの場合はモブと変わらない、むしろモブの方が印象に残ってるくらいだからな

>>226
ばっちこーい

229 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:40:25 ID:slOJ30Ee
支援を始めようかな

230 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:43:08 ID:9y5gStUK
>>227
シャッハのエロ、いつだったか投下されてなかったっけ?

231 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:43:53 ID:dy7B+HPG
>>230
うん、でも少ない

232 名前:B・A:2008/02/11(月) 22:44:31 ID:mZN1+5fb
では、いきまーす。お話も佳境、というかクライマックス。
そして、ネタ切れに戦々恐々する作者。次のシリーズどうしよう?



注意事項
・エリオ×ルーテシア
・非エロ
・本編改編。いわゆるIFというやつです。
・強引な展開や独自の解釈、勝手な捏造が多々含まれます。

233 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:44:52 ID:V5HK/3cy
>>216
>それでも別時空で義妹の尻を掘ったり縛ったりと今日も提督は元気です。

サイヒ氏の作品かよw
最近見ないけど、やっぱリアルで忙しいんだろうな。
一スレ一作品投下されてた頃が懐かしい。

234 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 22:45:52 ID:21t5ICJp
エロ関係だとなのはとフェイトがやたらと多い。
戦闘機人連中はもう悲しいくらい見かけない。

235 名前:Ritter von Lutecia 第16話@:2008/02/11(月) 22:46:24 ID:mZN1+5fb
結界内で荒れ狂う魔力を肌で感じ、ユーノの背筋に冷や汗が伝った。
暴走しているレリックもさることながら、それと相対している機動六課の面々も各々が恐ろしいほどの魔力を放出している。
前線を退いて10年。最早、そこに自分が入り込む余地などなかった。

(僕にできることは、みんなが気にせず戦えるようにするだけか)

それでも良い。それでも自分は、まだなのはと戦えている。
それが堪らなく嬉しかった。

『アルフ、ザフィーラ、聞こえるかい?』

だから、自分はできることをしよう。
結界、補助と回復、資料検索。そして・・・・・・。





236 名前:Ritter von Lutecia 第16話A:2008/02/11(月) 22:47:39 ID:mZN1+5fb
「撃てぇぇぇっ!!」

はやての合図とともに、7つの砲撃が一斉に解き放たれた。

「コメート、フリーゲンッ!!」

極大の鉄球が打ち出され、うねりを上げて紅の軌跡を描く。

『Sturmfalken』

空間を引き裂くように放たれた紅蓮の矢が黒い嵐に向かって走る。

「ファントムブレイザー!!」

全身全霊を込めて放たれたオレンジ色の砲撃が、狙い違わず標的に向かって突き進む。

「ディバイン・・・バスタァァッ!!」

裂帛の気合とともに、凝縮された青の砲撃が解き放たれる。

「ラグナロク!」

展開されたベルカ式魔法陣から元素の異なる砲撃が放たれ、絡みあいながら白い光をまき散らす。

「プラズマザンバァァァッ、ブレイカァァァっ!!」

金色の閃光が煌めき、振り下した雷の刃が轟音を轟かせる。

「スターライト、ブレイカァァァっ!!!」

膨れ上がった桜色の光が、まるで一条の流れ星のように空を駆ける。





237 名前:Ritter von Lutecia 第16話B:2008/02/11(月) 22:48:58 ID:mZN1+5fb
一点に向けて放たれた7つの砲撃。それは黒い魔力の壁に着弾した先からかき消されていく。
魔力の光は次々に砕け、儚く宙に霧散していく。

「そんな・・・・あれだけの砲撃にも耐えるなんて・・・」

驚愕の表情を浮かべるシャマル。
予想以上の力場の出力に、その場にいた誰もが言葉を失った。だが、それは絶望したわけではない。
必ず撃ち抜くという意思を込めて、自分たちにできる最善を尽くしているのだ。
そして、奇跡はいつも信じた者のもとに訪れる。

『・・・・マスター、力場の歪曲を確認。突入口、開きます』

クラールヴィントからの呼びかけに、シャマルは我を取り戻す。
同時に、7つの砲撃が千切れるように霧散した。
成功した。
今、力場は相殺しきれなかった魔力によって弱まり、ほんの僅かな間ではあるが人が通り抜けられる穴が開いている。

「ギンガ!」

「はい、ウィングロードっ!!」

シャマルの合図でギンガが藍紫のレールを展開する。

「エリオくん!」

「はい!」

『Sonic Move』

飛び乗ると同時に、練り上げた術式を開放する。
母から受け継ぎ、キャロのブーストによって強化された加速魔法。
己が持つ唯一の武器に全てを託し、エリオは疾走する。
風よりも速く、音よりも速く、雷よりも速く、意識すらも追い越して。
加速する。
駆け抜ける。
疾走する。


238 名前:Ritter von Lutecia 第16話C:2008/02/11(月) 22:53:33 ID:mZN1+5fb
『兄弟、前方の魔力反応が増大。衝撃波がくるぞ!』

「!?」

次の瞬間、コンクリートの地面を砕きながら破壊の力場が左右から襲いかかってきた。
直撃コースだ。
減速の許されないエリオにそれを回避する術はない。
だが、触れれば消滅必至の破壊の力がエリオを圧殺しようとした瞬間、藍白とオレンジの障壁がそれを阻んだ。

(え・・・!?)

一拍遅れて、速さに追いついたエリオの意識が自分を守ってくれた人物の姿を捉える。

「盾の守護獣ザフィーラ!」

「使い魔アルフ!」

「「この身に代えて、騎士エリオの盾とならん!!」」

人間形態となった2人の姿が後方に流れていく。
結界の維持に回っていた2人がここにいる理由は至極簡単。ユーノに行けと言われたからだ。
かつての経験から、こういう無茶な作戦には必ずどこかで邪魔が入る。それに対処するために、ユーノは2人に行けと命じたのだ。

「行きな、エリオ!」

「ベルカの騎士の底力、見せてみろぉっっ!!」

(アルフさん・・・ザフィーラ・・・)

2人の声を背中で聞き、エリオは心の中で短く礼を言って、更に意識を研ぎ澄ませる。
リンカーコアを限界まで活性化させ、汲み上げた魔力をストラーダの魔力回路に注ぎ込む。
その時、今度は衝撃波で崩れたビルがエリオの頭上に落下した。
既にアルフとザフィーラは遙か後方。彼を守ってくれる者はもういない。

「とか思ってんじゃねぇだろうな!」

まるでこれを予期していたかのように、ヴァイスがライフル形態となったストームレイダーを構える。
距離が遠すぎて標的が指先ほどの大きさにしか見えないが、彼には大きすぎる的だ。
瞬時にカートリッジをロードし、正確無比な狙撃でビルの破片を撃ち砕く。
スコープの向こうでは、降りかかるコンクリートの欠片をものともせずにエリオが疾走している。

「いけぇっ、そのまま駆け抜けろぉぉっ!!」

ヴァイスだけではない。
なのはが、フェイトが、はやてが、ヴォルケンリッターが、FWメンバーが、ロングアーチのみんなが。
この場を見守る全ての人が、エリオに最後の希望を託す。


239 名前:Ritter von Lutecia 第16話D:2008/02/11(月) 22:55:04 ID:mZN1+5fb
「いけ・・・・」

魔力充填完了。

「いけ!」

ブースター点火。

「いってぇっ、エリオくん!!」

最速まで加速した状態で、エリオはストラーダのバーニアを噴かせて飛んだ。
仲間の声援が力となり、エリオの速度は限界を超える。
そして、黄金の魔力噴射を翼のように羽ばたかせ、力場に空いた小さな穴へと突入した。

「ぐぅ・・・うぁぁぁぁぁっ!!」

ほんの僅かにかすった右腕の痛みを、エリオは叫ぶことで堪える。
そのまま強引に力場を突破し、中心で立ち尽くしているルーテシアの前に躍り出た。

「迎えにきたよ・・・ルー・・・」

(エリ・・・オ・・・?)

ルーテシアの頬を涙が伝う。
意識を奪われ、心が闇に堕ちたと言うのに、ルーテシアは目の前にいるエリオの存在を感じ取っていた。
それはエリオにも伝わったのだろう。彼もまた、まだここにルーテシアがいることを感じ取った。
取り落としそうになるストラーダを左手に持ち替える。右腕はまた折れてしまったようだ。
こんな短い間に何度も骨折を繰り返しては、いいかげん腕が駄目になるかもしれない。
だが、それでも良かった。それで彼女を助けられるなら、腕一本くらいは安い代償だ。


240 名前:Ritter von Lutecia 第16話E:2008/02/11(月) 22:56:30 ID:mZN1+5fb
「少し痛いけど、君1人に苦しい思いはさせないから・・・・」

この魔法に複雑な術式は必要ない。
自らが生まれつき持つ力、魔力変換資質「電気」。それにより、ただ念じるだけで思いを形にすることができる。
一瞬の躊躇の後、エリオはルーテシアの胸にストラーダの穂先を突き刺した。

「ストラーダ・・・・カートリッジロード」

『Explosion』

装填されていたカートリッジが全て排莢され、ストラーダの穂先に電光が纏われる。
本来は広域攻撃のために落雷を呼び寄せる魔法。だが、ベルカ式である自分に合わせて、
この魔法には魔力付与攻撃としても使えるようアレンジが施してある。

「サンダーレイジ」

ストラーダを中心に電撃が迸り、2人の体を包み込む。
強烈な電流にルーテシアの体は痙攣を起こし、エリオもまた視界が明滅して意識が飛びそうになる。

「ぐぅ・・・あぁぁぁっ・・・まだ・・・まだぁぁぁっ!!」

飛び散る意識を気合でまとめ上げ、エリオは残る魔力の全てをストラーダに注ぎ込む。
この程度ではまだ足りない。彼女の体内のレリックを破壊するには、それこそ自分の全てを賭けねばならない。

『駄目だ、魔力が足りない。破壊する前にレリックが爆発する』

「けど・・・これ以上は・・・・・」

手持ちのカートリッジはもうない。
リンカーコアは限界を超えて魔力を汲み上げており、これ以上の供給は望めない。
かといって、力場内部では補助魔法も期待できない。
ルーテシアの内部から噴き出そうとする魔力に、ストラーダの穂先が少しずつ押し戻されていく。
それは、魔力の暴発が近いことを物語っていた。


241 名前:Ritter von Lutecia 第16話F:2008/02/11(月) 22:58:03 ID:mZN1+5fb
「・・!!!!」

万策尽きたかと思われたその時、エリオは背後に気配を感じた。
彼は傷つきながらそこにいた。
最早、子どもでも通るのが難しい小さな穴から、必死で右手を伸ばしていた。
荒れ狂う魔力の嵐に体を引き裂かれ、少しずつ崩壊を始めているというのに、彼はエリオに向かってきている。

「ガリュー!!」

折れた右手でその手を掴む。体中のどこにも痛みがない場所などないのだ。折れていようが関係ない。

「ガリュー、これは・・!?」

手の平に伝わる金属の感触に、エリオはまさかという顔をする。
瞬間、掴んでいた右腕が引き千切れ、ガリューは魔力の渦に飲まれていった。
だが、その覚悟と意思は確かに受け取った。
彼が命を賭けてエリオに届けたもの。それは、エリオがヴァイスのヘリに飛ぼうとした際に落とした、
ルーテシアの魔力が込められたカートリッジだった。

「ううっ・・・おぉぉぉぉぉっ・・・・」

邪魔をする力場を強引に押しのけ、右手をストラーダに添える。だが、段々と右腕に力が入らなくなり、
カートリッジを補充することができない。何とかチャンバーまで持っていければ、後はストラーダが
勝手に飲み込んでくれるというのに。

(ダメだ・・・・もう、力が・・・・・)

不意に力が抜け、右腕が後方へ流れる。だが、それが力場に触れそうになった瞬間、
何者かが手首を掴んでそれを制した。


242 名前:Ritter von Lutecia 第16話G:2008/02/11(月) 22:59:27 ID:mZN1+5fb
「ルー・・・・」

意識を失っているというのに、ルーテシアはエリオの腕を掴んでいた。
そして、ゆっくりとその手をストラーダのチャンバーへ導く。

『Nachladen』

内部駆動が作動し、カートリッジがチャンバーに装填される。すると、ルーテシアは押し返されつつある
ストラーダのでっぱりを掴み、抱きしめるように自らの体に押し戻した。

「ルー!?」

その時、エリオはルーテシアの声を聞いた気がした。
もう、周りの人を傷つけたくないと。
自分はどうなっても良いから、レリックを破壊してくれと。
その願いに、彼女の騎士であるエリオは全身全霊を持って応えた。

「ストラーダ、ルーを苦しみから解き放て! 旧き結晶を破壊しろ!」

『Jawohl』

たった一発。ガリューに託された、最後のカートリッジが炸裂する。
オーバーロードにストラーダのフレームが軋みを上げ、剥がれた外装がエリオの頬を掠める。
金と黒の魔力が視界を埋め、最早エリオには何も見えなかった。それでも、この手の感触と、
目の前にいる少女の気配だけを頼りに己の魔力を駆り立てる。
直後、一際大きな電撃が迸り、ストラーダの柄が真っ二つに折れた。
支えを失い、エリオの体が宙に投げ出される。限界まで魔力を絞りつくしたせいで、指先すら動かすことができない。
受け身も取れず、背中が地面に叩きつけられる。
見上げた空は青かった。
力場が消えたということは、ルーテシアの体内のレリックを破壊できたのだ。
視界の端に、機動六課のみんながレリックを封印しようと駆けまわっている姿が映っている。

「ルー・・・終わったよ」

体に重みが伝わる。
自分の胸に倒れこんできたルーテシアの体を、エリオは辛うじて言うことを聞いてくれた左腕で抱きしめる。
嬉しいはずなのに、エリオの頬を涙が伝う。
終わったのだ。
これで、自分たちの逃避行が・・・・2人だけの時間が・・・・終わったのだ。

                                    to be continued


243 名前:B・A:2008/02/11(月) 23:02:04 ID:mZN1+5fb
以上です。
前回に引き続き、同窓会・・・というか全員に見せ場をという志のもとに書きました。
2週に渡って空気だったガリュー、そもそも今回が初登場というザフィーラも面目躍如と。


>>233
そういえば、某クロフェ大御所サイトでサイヒ氏の名前見ましたよ。本人かどうかは別として。

244 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 23:10:10 ID:OVLrx5BB
>>243

なんかもうGJすぎて言葉がでてこないよ・・・

245 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 23:11:28 ID:behcBxYi
>>216
提督は探してみると前世の嫁も結構頑張ってたりする。
ここじゃ最近は「炎の〜」辺りしか目立ってないけど。

246 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 23:14:19 ID:iVeK72dV
次回以降どう話が転がるのか気になりますね。
しっかしルーテシアがメインのSSとして最高の出来栄えですねこの作品は、個人的にはアニメ本編でもこれくらいの見せ場が欲しかった。

247 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 23:16:08 ID:GiDS/R57
>>243
GJです
本編での微妙さを払拭するエリオとルーをありがとうございます

248 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 23:16:26 ID:BKKvdz08
むしろこれが本編でもいい

249 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 23:28:12 ID:IQwhznOu
>>243
GJです。
次回がエピローグでしょうか?
この大騒動の発端は、不用意なレリックの輸送スケジュールを組んだ管理局の落ち度なので、
交渉次第でルーテシアの責任もかなりの部分が免除されるんではないかと。

必殺技7連発も圧巻ですが、
10年のブランクを感じさせず、増員された上に各自も大幅パワーアップしてる機動6課の
魔力爆発を完全に封じ込めてみせる司書長の結界も恐るべし。

250 名前:233:2008/02/11(月) 23:45:58 ID:V5HK/3cy
>>243
GJです。
某スレで言われてたけど、エリオは実際やり様によっては良い主人公に化けますよね。
だってのに本編がアレだもんなあ……

あと、投下前に割り込んでしまってすいませんでした。

251 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 23:54:09 ID:Hit4u54e
>>243
GJ
ユーノの機転?やヴァイスの援護は二人を褒めるべきなんだろうけど、あれ?はやては?
あらかじめ指示出てたんだろか

252 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 23:56:37 ID:dy7B+HPG
>>249
まぁ、俺の嫁は結界魔道師が本職だからこれ位やってくれるさ

253 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 23:57:38 ID:Hit4u54e
>>252
お前とは一度きっちり話をつけねばならんようだな・・・

254 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 23:58:54 ID:dy7B+HPG
>>253
ユーノキュンが俺の嫁で何か問題があるのか!?

255 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/11(月) 23:59:28 ID:ZK3NJD1i
>>243GJ!
全員に何かしらの見せ場を持たしているところが巧いしいいですね
次がエピローグですかね?
最後まで楽しみにしてます

>>252
そういう発言はキャラスレでした方がいいですよ

256 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:00:13 ID:21t5ICJp
>>252
本職じゃねーだろ。

257 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:02:27 ID:cFSkxxhi
>>252-253
自重しろw

258 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:03:51 ID:vyC7za/l
女性キャラ列伝も欲しいと言われたんで書きました。
あくまで俺の記憶と主観で書いたものなんで、事実と違っている内容もあるでしょうが許してください。
同じ理由で、キャラクターを書き忘れてても許してください。
あまりにも出番無い人(アイナとか)は省いてます。


・なのは
悪魔から魔王へのランクアップが祟ったか、ラブラブよりもネタやヤンデレ化が多い。
戦闘シーンでも本編の過剰補正が災いして扱いにくいという評価が。
それでも出番回数が多いのは流石主人公。
相手はユーノ時々フェイトでほぼ固定。

・フェイト
本編では男っ気がエリオぐらいしかなく、なのフェイ分も少なかった。
しかしここではエリオ、クロノ、ユーノ、なのは、ザフィーラ等々と相手がびっくりするほど多い。
キャラクターとしてもラブラブ、お馬鹿、ショタコン、ヤンデレと多種多様。
たぶんエロの出演数も一番多いのではないだろうか。

・はやて
相手はロッサ、グリフィス、エリオ、ゲンヤ、とフェイトに次いで多い。
しかし関西弁で乳揉み魔なためギャグ要員に使いやすく、オチ担当としての印象が強い。
上記の四人とのフラグも、本当にフラグかと言われたらやや疑問な気がする。
まあ、本編でしっかりフラグ立ったのなんて片手の数もいないし……。

・シグナム
その魔神おっぱいをなかなか使用する機会に恵まれない。
前スレあたりからようやくちょっとエロが出てきた。
バトルSSでは中ボス存在として倒されることが多いのも不幸。

・シャマル
同人腐女子だったり泥棒猫だったりと主以上に汚れ役が多い。
しかしヴォルケンズでは一番目立ってる人。
出番が無いのとどっちがましか。

・ヴィータ
出番が多いがエロは希少。
三期始まってから本当にロリエロがごっそり減ったなぁ。

・リィン
こいつもエロが無い。
初代が健在だったらどうだったろうと、ふと考えてしまう。

・スバル
とにかく周囲に男がいない。
エリオに頼るか、ティアナとのガチ百合に活路を見出すしかないか。
まだ未開拓である姉とのエロという手もあるが。

・ティアナ
SSにおいて三人娘以外では出番やポジションに一番恵まれている気がする凡人。
相手役は男ならヴァイスとエリオ。女ならスバルとなのは。
ファントムブレイザーの命中率の低さに定評がある。

・キャロ
エリオキュン一筋。
本編でしっかりフラグ立てた数少ないキャラなのに、彼氏は義母に走りがちなのが悩みの種。

・ギンガ
お父さん大好き。というか、それぐらいしか相手がいない。
カルタスがいることはいるが、限りなくモブに近いので無理くさい。

259 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:05:18 ID:vyC7za/l
・シャーリー
昔はグリフィスの相手といえばこの人かはやてだった。
しかし本編最終回放映時ぐらいからルキノに負けつつある。

・アルト
ほんの一時期、ヴァイスとのエロがあったぐらいです。
短い春でした。

・ルキノ
この人の台詞思い出せます?俺は無理。
でも設定でグリフィスとくっついてるのがちょこちょこ。エロも最低一本はあった。

・ヴィヴィオ
まだ男の人より狼さんと遊ぶのが楽しいお年頃。
成長モードでユーノパパを寝取りにかかってもいいが、ママに頭冷やされるオチしか見えません。

・ラグナ
声が似ているティアナにお兄ちゃんを託す。

・ルーテシア
ロリが被ってるキャロと熾烈なエリオ争奪戦を繰り広げる……ほど出番あったかなぁ。
「きゃろろろろろろ」ぐらいか?
現在B・A氏のSSで、念願のエリオの正妻を目指して頑張っている。

・アギト
大きさがね……。
リィンと百合はあった。

・ウーノ
ドクターとのエロが一番似合うナンバーズはこの人な気がする。

・ドゥーエ
26-111氏により光を当てられる。
まだラボにいた頃に姉妹の性教育担当とかどうよ。

・クアットロ
スレに輝く悪の星。父親よりも悪役度は高い。
ほとんどないが陵辱担当としても一級品で、あのなのはさんを散々痛ぶったSSもあった。

・チンク
たぶんナンバーズで一番人気は高い。
しかしエロがほとんど無いのはナンバーズの宿命。
それでも他の姉妹よりは多いが。

・セイン、ノーヴェ、ウェンディ、
ナンバーズまだ出番ある組。
エロでは……なにも言うまい。

・トーレ、セッテ、ディエチ、オットー、ディード
ナンバーズ出番無い組。
光明があるとするなら、トーレの尻とディードのおっぱいかなぁ。

260 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:06:05 ID:Az1mIvYL
・カリム
ずーーーーーっとエロが望まれてますがまだほとんどありません。
行けっ、本気を出して提督を押し倒せ!

・シャッハ
サウンドステージ聞いたらロッサと微妙においしい関係なのだが……。

・オーリス
お父さんかその親友とヤッとく?

・リンディ
ザ・シガー氏によって一躍表舞台に躍り出た未亡人。
愛ある職人が一人頑張ればなんとかなるという見本。

・アルフ
やはりザフィーラとしっくりくるのか、あれだけ本編で出番が無くても地味にSSは存在する。

261 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:08:36 ID:97GqB16U
乙かれさん。ただ、フェイト×ザフィーラってあったけ?記憶にないが・・・・・。

262 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:10:16 ID:VkTLr4sZ
>>261
つ サイヒ氏の「湯煙双景」

263 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:10:28 ID:QUpcCjA9
このスレでも精神リンク云々でってのなかったっけ?
話題に出ただけか?同人誌でそういうのがあるのは覚えてるけど。ザフィアルから3pだかに発展する奴。

264 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:11:41 ID:1PW4ON+J
>>258
やっぱりコメントが面白いw

>・フェイト
>たぶんエロの出演数も一番多いのではないだろうか。
おまwww書き方wwwwAV女優みたいじゃねーかwwwww

>・ティアナ
>ファントムブレイザーの命中率の低さに定評がある。
関係ねーwwwwwwwww

265 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:12:29 ID:ZkHSueSe
ティアナも最近不遇だね

266 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:13:27 ID:VkTLr4sZ
すまん、アルフ×ザフィーラと間違えたorz>>261

「ざふぃふぇ!」がある>フェイト×ザフィーラ

267 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:15:17 ID:e8134dGn
>>264
肉便器なフェイトそんと聞いて飛んで来ました

268 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:18:41 ID:Iy4OGhvP
・マリー
メカ担当のメガネっ子、ただそれだけ。
あとは声がシャッハと同じとか、それくらいしか取り柄も出番も無い。
っていうかこいつは何の為にSTSに出てきたんだ? エロパロでも最近ようやく出番が出てきた。

・レティ
リリカルなのは最強のメガネっ子なのに、エロパロでまったく人気が無い、っていうか存在自体が空気扱いな気がする。
やはり夫の存在が明らかにされていないのは痛いようだ、これで夫はどこかの世界に単身赴任中とか言われたら凄い展開になりそうだ。


猿真似で失礼だがこれも加えて頂きたい、そしてレティとカリムのエロは絶対書くから待っていれくれ。

269 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:19:06 ID:Ruaa5wix
しかしこうしてみてると、きれいなキャラって希少になってきたな……

270 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:22:08 ID:97GqB16U
>>259
アギトにはダンナがいるじゃないッスか!!
>>263
タイトル忘れたけどザフィーラ×アルフのエロ有SSで
フェイトとはやてが精神リンクで乱れまくるって作品があったような
>>266
情報提供サンクス!

271 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:28:50 ID:Iy4OGhvP
・エイミィ
一期・二期と続けて出番があってちゃんと結婚してフラグを立派に立てたのに最近(っていうかずっと)エロパロでSS皆無に近い気がする。
やっぱ義理の妹には勝てないのか……気の良いお姉ちゃんどまりの存在でエロは望まれてないみたい。


やべえ、エイミィが完全に忘れられてるよ……誰か思い出そうぜ、って事で追加猿真似パターンですいません。

272 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:32:07 ID:VkTLr4sZ
>行けっ、本気を出して提督を押し倒せ!

ておあー氏の「起動六課のクリスマス」でフェイトと二人がかりで
クロノを押し倒していたような。
まあ、少ないのは確かだよな。

273 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:40:11 ID:YdDCIS1J
              ,r;;;;ミミミミミミヽ,,_
           ,i':r"    ノ(`ミ;;,
           彡     ⌒ ミ;;;i   >>268
           彡 ,,,,,、 ,,,,、、 ミ;;;!    不愉快ですな
           ,ゞi" ̄ フ‐! ̄~~|-ゞ,   私の嫁(マリー)を馬鹿にしないで頂きたい
          ヾi `ー‐'、 ,ゝ--、' 〉;r'   私のビッグマグナムが火を噴きますよ?
           `,|  / "ii" ヽ  |ノ    
  ∧、        't ー―→ )/イ            ∧_
/⌒ヽ\        ヽ、  _,/ λ、       . . //~⌒ヽ
|( ● )| i\     _,,ノ|、  ̄/// / \     /i |( ● )|
\_ノ ^i | _,,..r''''" ノ | \`', /  /  / ̄`''ー | i^ ゝ_ノ
 |_|,-''iつl/´    ヽノ| /\   / 、│     l⊂i''-,|_|
  [__|_|/〉ヽ、  / |/ );;;;/\/   'く    /〈\|_|__]
   [ニニ〉  ',  ヽ. | /⌒| /   ゚/    / 〈二二]
   └―'                        '─┘

274 名前:アルカディア ◆vyCuygcBYc :2008/02/12(火) 00:40:41 ID:q+TQ/oUv
そろそろ、Little Lancer 五話(キャロちゃん槍に挑戦☆編)投下しても良いでしょうか?
一時過ぎぐらいから逝けると思うのですが……

275 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:45:41 ID:kDUty4ML
>>274
半裸待機してます。
いつでもどうぞ。

276 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:47:05 ID:7c/9Ey6i
どうぞ、支援して待ってます。
スカ博士×フェイトとかユーノ×トーレ&ドゥーエとか読みたくなる私は異端なんだろうな・・・。
ギャグでもいいから見たいぜ。過去にスカ×フェイトでひとつだけあったから、その後小ネタで
最狂の親馬鹿コンビになってたがw

277 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:48:36 ID:QUpcCjA9
>>274
OKOK

>>276
ユーノと絡ませる、以前になんで2と3なんだ?2,4じゃないの?

278 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:48:53 ID:Iy4OGhvP
>>273
す、すまねえ悪気は無かったんだ……物騒なモンは仕舞おうぜ。
でもマリーに出番が無いのは本当だろ? これでエロパロ的に活躍させるのは難しいと思うんだが。

>>274
待ってました、是非とも早く投下を。


279 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:49:23 ID:uE7X0u/U
>>276
前者はともかく後者はなー
接点ないなんてレベルじゃない

280 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:51:20 ID:zPJLTg77
>>279
同意
さすがにそこまでユーノ万能選手じゃないよなぁ

して、>>274はマダー?

281 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:52:15 ID:8zXm8NhQ
接点なんてどうとでもでっちあげられるのが二次創作だからな。
後は読んだ人間が納得できるかどうかだが……職人の腕の見せ所だ。

282 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:53:05 ID:bO17Mx99
ドゥーエは情報収集の為無限書庫に潜入とか出来そうだが
それでも無理矢理には違いないしな

283 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:54:28 ID:PNbGgbd+
>>280

>>274のレスよく見ろよwww

284 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:55:38 ID:BBMUDaA9
>>274
しゃがんで溜めながら待機しております

285 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:55:58 ID:Iy4OGhvP
トーレの名前が挙がってトーレメインの話を思いつきそうだ。
もしかして書いたらエロパロ初?

286 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:57:14 ID:zPJLTg77
>>281
まぁ……それも一理あるかも

さて、ユーノの活躍は他のユーノ愛溢れる職人に任せて、
俺は別のキャラを掘り下げる作業に戻ります

>>283
それくらいwktkだって事だYO

287 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:57:14 ID:ZkHSueSe
>>276
スカちゃんとフェイトさんのコンビは良いな、別にエロとか抜きでも大丈夫だ

288 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 00:59:02 ID:Dl+XFCbM
いい人スカリとお馬鹿フェイトなんて組み合わせを受信したんだが……いかん、疲れてるんだな……寝よう……

289 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 01:03:28 ID:tFNTbUGb
お馬鹿なフェイトを見捨てられずついつい手助けしちゃうスカリーが可愛いSSとな

290 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 01:22:10 ID:/RMAByFz
>>167-168
GJ。半分読んだところで既に涙目の俺キモイ

俺の中では正史に組み込まれました><


291 名前:アルカディア ◆vyCuygcBYc :2008/02/12(火) 01:22:10 ID:q+TQ/oUv
Little Lancer 五話です。回想編最終回(キャロちゃん槍に挑戦☆編)です。
何時も通りの、お約束通りの平凡な展開です。      

 注意事項
 ・非エロ
 ・原作IFもの
 ・エリオ主人公(名前は出れども出番が……)
 ・軽くとらは3の設定を流用
 ・やっぱり鬱展開多し
 ・展開の、原作からの矛盾点などは虚数空間へスルーして下さい。
 ・NGワードは「Little Lancer」でお願いします。

292 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 01:22:23 ID:7BC1/EYC
絶望したっ!
俺の嫁(アリサとすずか)が忘れ去られていることに絶望した!!

293 名前:Little Lancer 五話 01/13 ◆vyCuygcBYc :2008/02/12(火) 01:24:16 ID:q+TQ/oUv
 その日の昼食には、ニンジンが入っていた。
 大きな角切りのニンジンがゴロゴロと、ホワイトシチューの中に浮かんでいる。
 うーん、とキャロは形の良い眉を寄せた。
 別段好き嫌いなど無いキャロだが、ニンジンだけはどうしても食べられなかった。
 あの独特の甘みが苦手なのだ。
 フォークの先端に突き刺して、くんくんと匂いを嗅いでみる。

「う〜ん……」

 スプーンで掬えるような小さなものなら、我慢して飲み込めないことも無いのが、この塊はキャロにとって余りに巨大だった。
 かくなる上は、とキャロは思う。

「ねえ、エリオくん、またニンジン―――」

 お願い! のポーズをしながら左隣の友人に振り向き―――
 ―――そこに、誰も居ないことに気付いた。
 そのテーブルには、キャロが唯一人だけだった。
 スバルとティアナは必殺技の特訓があるというので、今日はキャロ独りで食堂に向かったのだ。

「あはっ……」

 自嘲気味の笑みが零れた。
 かちゃり、とニンジンの刺さったフォークが器に落ちて音を立てる。
 キャロはゆっくりと顔を抑えて、待機形態のストラーダの巻かれた右手首を撫でた。

「やっぱり、わたし、馬鹿だ……。エリオくん、もう、いないのに……」

 既に、JS事件の終結から10日余りが過ぎていた。
 だがキャロは、エリオの死を未だに現実のものとして実感できずにいた。
 勿論、頭ではちゃんと理解したいる。思い出す度に泣きもする。エリオの最後は夢にも出る――― 
 それでも、振り向けばそこにエリオが笑っているような気がして……
 エリオの死を再認識させられる度に、キャロはぐすぐすと涙を流すのだ。
 
「きゅくる〜……」

 食事の途中に不意に泣き出したキャロの顔を、フリードリヒが心配そうに覗きこんだ。
 ごしごしと子供っぽい仕草で、キャロは涙を拭いながらフリードリヒの背を撫でた。

「ごめんね、フリード……わたし、ダメだよね。
 いつまでも泣いてちゃ、エリオくん、きっと安心できないから。
 いつまでも泣いてちゃ、ダメだよね」

 そう言って、再びフォークを手に取った。
 一大決心を籠めて、ぐーでフォークの柄を握る。

「きゅくるっ!」

 ボクが食べてあげようか? とばかりに首を伸ばすフリードリヒを、キャロは優しく止めた。

「大丈夫、フリード。わたし、独りでもちゃんと食べられるから。
 ちゃんとニンジン食べられるよーって、エリオくんに見せてあげるんだから」

 そう言って、少女は不器用な手つきでニンジンを口に運んだ。
 フォークの使い方を覚えたばかりの小さな子供のような手つきで、次々と少女の小さな口には少し大きなニンジンを運び、目を瞑って咀嚼しては飲み込んだ。

 ―――そこに小さな救いがあったとするなら、涙が鼻に詰まってニンジンの味を全く感じなかった事だろうか……

294 名前:Little Lancer 五話 02/13 ◆vyCuygcBYc :2008/02/12(火) 01:26:24 ID:q+TQ/oUv
 シグナムは、自動販売機の隣のベンチに座って、ぼんやりと訓練場を眺めていた。
 ぶらりと垂れた右掌の中には、プルタブを開けてもいない缶コーヒーが握られている。
 彼女は、当て所もなく視線を訓練場に彷徨わせている。
 『烈火の剣将』と字される普段のシグナムからは想像もできない緩みようである。

「んったく、何やってやがんだよ、こんな所で」
「……ああ、ヴィータか。何でもない。
 ―――ただ、一休みをしてただけだ」
 シグナムはヴィータの方を振り向きもしない。
 鉄槌の騎士は、戦友の呆けきった姿に嘆息しながら告げた。
「おい、折角訓練場にいるんだ。久々に手合わせでもしようぜ。
 あれから十日ほど、どうも緩んだ空気が流れてていけねえ。
 久々にマジな一本勝負でもして、気を引き締めようぜ」
 ヴォルケンリッターの将の中でも一際図抜けたバトルマニアとして知られるシグナムは、静かに頭を振った。
「やめておくよ。余り……面白そうじゃない」
「ああ!? シグナムてめえ、あたしじゃ相手にならないって言いたいのか!?
 何時の間にかに随分偉くなったもんだよなぁ、シグナムさんよ!」
 喰ってかかるヴィータに、シグナムは気の抜けた表情で再び頭を振った。
「済まない、そういう意味で言ったんじゃないだ……
 今の私は、誰とも楽しく剣を交えることができそうにないんだ……」

 シグナムはそう言うと、静かに席を立った。
 返す言葉も無いヴィータの手の中に、ぽとりと未開封の缶コーヒーを落とした。

「おい! 飲まないのかよ!?」
「体を動かしても無いのに、水分補給が必要になる筈無いだろう」

 そう言って、シグナムは訓練場から去っていった。

「ったく、重症だな、あれは―――でも、フェイトに比べれば随分マシか……」

 ヴィータは苛立たしげにそう言うと、温びた缶コーヒーを一気に飲み干した。


 シグナムの向かった先は、医務室だった。
 ベッドには、輝きを失った、心優しき金の閃光が横たわっていた。
 痩せこけた頬、艶を無くした髪、落ち窪んだ眼―――
 腕には、点滴のチューブが繋がれていた。
 ベッドの隣の椅子には、憔悴しきった表情のアルフが座っていた。
「今、薬で眠ったところなのよ」
 シャマルは、開口一番にそう告げた。
 見るも無残な剣友の姿に、シグナムは目を伏せた。
「……どうしてだよ……どうして、こんなことに……」
 アルフの握り締めた拳に、涙の雫が滴り落ちる。
 
「フェイトちゃん、あれから睡眠も食事も摂ってなかったみたいでね……
 今朝、部屋で倒れててるのをアルフが見つけたのよ……」
「フェイト、食事を摂っても戻してばっかりで、あれからマトモな食事は一度も……
 それに、眠るように言っても、ベットに入ったまま目を開いてずっと宙を見てるんだ。
 何度も……何度もっ!、きちんと眠らなくちゃって、食事とらなくっちゃって、注意したんだけどっ!」
「責任感の塊のような奴だからな……自分が、許せないんだろう」
「―――エリオも、フェイトも一体何をしたってんだよ! 畜生! 畜生っ!!」
 再び、医務室の扉が開いた。
 やってきたのは、なのはとはやてだった。それぞれ見舞いの花束を持っている。
「フェイトちゃんの容態はどないや?」
「見ての通りよ……完全に入院が必要な状態だわ。
 この容態が続くなら、最悪なら命まで―――」
「……フェイトちゃん―――」

 二人は、目に涙を浮かべて変わり果てた親友の顔を見つめた。

295 名前:Little Lancer 五話 03/13 ◆vyCuygcBYc :2008/02/12(火) 01:28:12 ID:q+TQ/oUv
「こんな所で言うのは何やがな」
 そう前置いて、はやてはクアットロの逃亡とスカリエッティの蘇生が確実となったことを告げた。
 なのはも薄々感ずいていたのだろうか、悲しげな顔で頷いた。
「まだ……戦いは終わらないんだね」  
「ああ、そうや。機動六課は当分解散できへん。
 今回の件で、六課は大災害を未然に食い止めた『奇跡の部隊』との風評や。
 スカリエッティに立ち向かう為の神輿に据えるには丁度いいと、上の偉いさんも考えたんやろ……
 それに、どうも陸も偉いさん達は、スカリエッティを相手にするのを嫌がっとる節がある。
 ……レジアス中将の件で裏からスカリエッティに繋がりがあった陸は、スカリエッティを恐れとる。
 まあ、大きなオモチャ空に浮かべた挙句、次元振動起してミッドに落とそうとするようなキチガイなんて、誰も相手しとうないわな。
 でもま、その分、六課はこれからの活動で相当の自由が許されるって話や。
 出力リミッターの任意解除はもちろん、色々なとこで横車が押せるようになったんやで」

 アルフは椅子を蹴るようにして立ち上がった。

「そんなことは、そんなことは、どうでもいいんだよ!
 あいつら、―――エリオ殺してフェイトをこんなにしたあいつらは、まだのうのうと逃げ延びてるんだよな!」
 アルフの掌の中から、肉食獣の爪が延びる。
「仇を、討ってやる……仇、討って、あの眼鏡女の首をフェイトに見せて、少しでも安心させてやる……」
 ベッドから、細く青白い手が延びた。

「……そんなこと、しなくていいよ、アルフ」
「フェイトごめん、起しちゃった!?」
「フェイトちゃん、まだ寝てなきゃ駄目だよ!」

 周囲の制止も聞かず、フェイトはベッドの中で状態を起した。

「エリオの仇は、私、だから……
 あの戦闘機人逃がして、エリオが死ぬ原因を作ったのは、私……
 ううん、私が居なければ、エリオは機動六課に入ることも無かった。
 もし私に出会わなければ、エリオはあんなことにならずに幸せに暮らせた。
 何もかも、私のせい―――
 エリオの仇を討つなら、私を―――」

 誰もがその言葉を否定しようとした瞬間。

「そんな事言っちゃあダメです!!」
 誰よりも早く機先を制してフェイトの言葉を遮ったのは、医務室に飛び込んできたキャロだった。
「そんな悲しいこと、言わないで下さい……っ!
 フェイトさん、わたし、まだまだ子供ですけど、これだけは言えます……
 今のフェイトさんの言葉は、絶対に、間違ってますっ!!
 あの時、エリオくんと二人で言いましたよね?
 もしもフェイトさんが道を間違った時は、わたし達が正しますって!
 だから、今、ここで、わたしはフェイトさんの間違いを正します。
 フェイトさんは、わたし達を見つけてくれました、育ててくれました!
 わたし達、フェイトさんに出会えて幸せでした! 
 わたしがエリオくんと二人で話す時、どうすればフェイトさんに喜んでもらえるかって、そんな事ばかり話してました!
 フェイトさんは、エリオくんの仇なんかじゃありません!
 フェイトさんは、エリオくんの―――わたし達の、最高のお母さんです!
 エリオくんも、絶対にそう思っています!
 だから―――だからお願いします。そんな、悲しいこと言わないで下さい!!!」

 フェイトは、キャロの言葉を唇を噛み締めるようにして聞いていた。
 キャロは、最後にこう告げた。

「わたし……エリオくんの果たせなかった夢を継ごうと思うんです。
 ―――見てて下さい」

 そういって、キャロは右手首のストラーダに手を伸ばした。

296 名前:Little Lancer 五話 04/13 ◆vyCuygcBYc :2008/02/12(火) 01:29:04 ID:q+TQ/oUv
『Set up.』
 キャロの全身が光に包まれる。ストラーダのスピアーフォルムが姿を現す。
 眩い光の中から現れたキャロは―――果たして、エリオのバリアジャケット姿をしていた。
「ストラーダにお願いして、やっとここまで出来るようになったんです。
 見てて下さい、わたし、きっとエリオくんの目指した立派な騎士になりますから―――」
 そう言って真っ直ぐな瞳でフェイトの顔を見つめたキャロは、そこに、本当の恐怖の表情を見た。
「……いや、いやぁぁエリオ、ごめんなさい、ごめんなさいぃ!」
 顔を抑えてのたうち回って泣き叫ぶフェイトは、程なくしてシャマルに鎮静剤を打たれて再び眠りについた。


「……っ、……っっ、フェイトさん、ごめんなさい、ごめんなさい……」

 医務室の外で、キャロはしゃくり上げながら泣き続けていた。

「……キャロのせいじゃ、ないよ」

 キャロの頭を優しげになのはが撫でた。

「そやな。キャロの考え方は立派やし、キャロはフェイトちゃんのこと思っとる優しい子や。
 ただ、今のフェイトちゃんには、ちょびっとだけ刺激が強すぎたみたいやな……」
「わたし、ただ、ただフェイトさんに元気になって欲しかっただけなのに……」
「そうだ、フェイトのせいじゃない……全部、奴らのせいだ」

 アルフが怒りに燃える瞳で立ち上がった。

「止めておけ」

 それを、シグナムが押し止めた。
 
「『―――悲しい過去があろうと、消せない傷痕があろうと、生きる意味を見失わなければ人は強く生きていけるもの』
 ……もう、いつ聞いたのかも覚えていなが、古代ベルカの諺だ。
 今のテスタロッサは、自分の生きる意味を完全に見失っている。
 皆も知っている通り、テスタロッサは誰よりも責任感が強く、そして優しい。
 復讐は、どうあってもテスタロッサの生きる意味には成り得ない。
 テスタロッサは、エリオとキャロの母だからな。
 ……この子達を見ていると、それが、良く解る」

 シグナムは泣き続けるキャロの頭をくしゃくしゃと撫でた。
 子供の頭を撫でることに慣れていないのか、どこか乱暴で握り締めるような、でも優しい撫で方だった。

「テスタロッサが立ち直る為には、テスタロッサが己を許し、己の生きる意味を見つけなければならない。
 我々に出来るのは―――それを見守り、陰から手助けすることだけだ。
 私は、テスタロッサを信じている。
 あいつは―――強い女だからな。必ず、乗り越えられると、信じている」

 アルフが、涙を零して席に着いた。
 シグナムは思う―――あのJS事件の日から、一体どれだけの涙を見たのだろうか。
 はやては思う―――10年前のクリスマス、初代リーンフォースとの別れ。
 あんな悲しみを少しでも減らそうと立ち上げた機動六課。それがどうしてこんなことに。
 なのはは思う―――PT事件の日、母プレシア・テスタロッサに捨てられ、一時は廃人のようになりながらも立ち上がった友人のことを。
 再び、立ち上がってくれることを信じるしかない無力な自分を。

 シグナムは、泣き続けるキャロの頭に手を置いた。

「キャロ、付いて来い。訓練場に行くぞ。
 エリオのような騎士になりたいんだろう?
 ならば―――私が、稽古をつけてやる」

 キャロは涙を溜めた瞳でシグナムを見上げ―――強く、頷いた。


297 名前:Little Lancer 五話 05/13 ◆vyCuygcBYc :2008/02/12(火) 01:29:48 ID:q+TQ/oUv
 シグナムはレバンティンを抜いてキャロに正対した。
 エリオのバリアジャケットに身を包んだキャロは、ストラーダを抱えるようにして構えてシグナムに対峙している。
 言うまでもなく、ストラーダを装備したばかりのキャロなど、シグナムにとっては目も開かない子猫も同然だ。
 喩え素手の片腕だろうと一息の間に勝負を決めることが可能だろう。
 だが、騎士の礼儀として剣を構え、どこからでも懸かって来いと視線で告げる。

「やああぁ!」

 キャロが渾身の力を籠めて突き懸かる―――だが、槍の重量に上体が引きずられ、全身がぐらりと揺れた。
 シグナムがかわすまでもなく、その槍の先端は掠りもしなかった。
 再び、体勢を立て直し、幾度も刺突を繰り返す。
 目蓋の裏に騎士を目指してこのストラーダを執った少年の姿を浮かべ、それに自身を重ねようと突きを繰り返す。
 だが、どれも思い浮かべる少年の姿には遠く及ばず、珍妙な踊りを踊っているかのような無様を晒しているだろうことは容易に自覚できた、
 傍から見ればさぞ滑稽であるだろうキャロの姿を、シグナムはニコリともせず見つめ続ける。
 殆どの刺突は届きもせず、運よく体に触れそうになった一撃は、剣の刃先で撫でるようにして受け流された。
 元々運動神経に劣っており、フォワード陣の中でもフルバックで最も運動量の乏しいキャロである。
 5分も経たないうちに足をふらつかせ、肩で息を始めた。

「どうした? これで終わりか? このざまじゃあ……100年経ってもエリオのようにはなれないな」
「……っ、まだまだです!」
『Sonic Move.』

 ストラーダの高速移動機能を発言させる。 
 途端、キャロは体の全ての均衡を失った。
 移動速度に身体感覚がついていかず、バランスを崩して転倒したのだ。
 手に持ったストラーダで己を傷つける寸前、キャロはシグナムに抱きとめられた。
 目を回して失神したキャロは、シグナムの腕の中で、悔しげながらもどこか満足げな表情を見せていた。
 

 次の日も、その次の日も同様にシグナムに稽古を挑むキャロだったが結果は同じ。
 シグナムには掠る事すら出来ない。
 自滅も同然の形で失神し、倒れてその稽古を終えるのだ。

298 名前:Little Lancer 五話 06/13 ◆vyCuygcBYc :2008/02/12(火) 01:30:49 ID:q+TQ/oUv
「シグナムさん、これはやっぱりちょっと、キャロには無茶なんじゃないかな……」

 ある日、稽古を終えるとなのはとフェイトが連れ立って訓練場に見せていた。

「テスタロッサ、もう体の調子はいいのか?」
「うん、なんとか。
 ……まだ、エリオの名前を聞くだけで、どうしたらいいか解らなくなる。
 足が震えて、胸が痛んで、どうしようもなくなる。
 まだ、私がエリオの為に何が出来るのか……こんな私が居てもいいのか解らないけど……
 キャロを見ると思うんだ。私も、ただ立ち止まってるだけじゃ駄目だって。
 エリオは……もう、……いないけど、キャロの為だけでも、私がしっかりしなきゃって……」
「今は、それでいい。テスタロッサ、ゆっくり、自分の答えを探して行けばいい」

 シグナムはゆっくりと頷いた。
 なのはがボロボロになり気を失ったキャロの頭を撫でる。

「でも、シグナムさん、やっぱりこれは……無茶です。
 こんなトレーニングをしても、キャロにとって利になることはありません」
「シグナム、それについては私もなのはに同感。
 シグナムの指導は、ちょっと、度を越してる」

 シグナムは腕に抱いたキャロの頭を撫でて、顔を曇らせた。

「なのは、テスタロッサ、年長者として、一つ忠告をしておこう。
 ―――確かに、トレーニング効率の話ならば、お前達の言う通りなのだろう。
 お前達は正しい。
 トレーニング効率だけの話じゃない。これまでの戦い、機動六課での活動、お前達は常に正しい道を来た。
 正し過ぎて、私には眩しい程だ。
 ―――だが、この世には、正しさでは救い上げることができないものも有る。
 テスタロッサ、今のお前になら、解るだろう?
 ……今のキャロは、エリオの後を追うことで立っている。
 震える足を押さえて、崩れ落ちそうな体を抱き締めて、今にも泣き出しそうな瞳を歯を食いしばって耐えている。
 エリオの槍を持った時のキャロがどんな顔をしているか、お前達は見ているか?
 きっと、キャロはエリオの槍に縋らなければ、一息の呼吸すらできない状態だ。
 そんなキャロに、どうして無茶をするななどと言える? 
 今の私達にできるのは―――ただ、正面から受け止めてやることだけだ。
 いずれ、キャロが新たな道を見つけるにせよ―――今は、それだけだ」

 なのはとフェイトは、神妙な顔でシグナムの言葉に頷いた。
 最後に、フェイトがキャロの頭を撫でて言った。

「キャロ……がんばってね―――
 私も、お母さんも、頑張っていくからね―――」

 フェイトの顔の陰は消えないものの、彼女は何とか六課へと復帰を果たした―――

299 名前:Little Lancer 五話 07/13 ◆vyCuygcBYc :2008/02/12(火) 01:33:50 ID:q+TQ/oUv
 その日、朝のなのはの教導の模擬戦で、六課のフォワードメンバーの不満が爆発した。
 ガードウイングへの転向を行ったキャロを、ティアナとスバルが戒めたのだ。
「やっぱり、キャロにはフルバックに徹してもらった方がいいよ」
「うん……、キャロの気持ちは凄くよく解るんだけど、あたしもその点はティアと同感かな。
 キャロの能力が一番生かせるポジションは、フルバックだと思う」
「……ごめんなさい」
 キャロは下を向いてしゅんと項垂れた。
「キャロ、あんたの気持ちはとても大切なもの。それはあたし達も解ってる。
 でもね―――あたしたちは、チームなの。
 キャロも自覚してるだろうからズバッと言っちゃうけど―――あんたのガードウイングとしての能力は、エリオに遥かに及ばないわ。
 その反面、フルバックの能力は今までの個別指導の成果もあって、相当なレベルに達してきてる。
 その……エリオが居なくなっちゃって、優秀なガードウイングが居なくなっちゃたのは凄く痛いけど……
 キャロがその穴を埋めようと頑張ってるのは解るけど……あんたじゃ、どうあってもその穴を埋めることはできないの。
 優秀なガードウイングと優秀なフルバックを失って、代わりに役立たずのガードウイングを入れたんじゃ割りが合わない。
 だからキャロ、あんたには優秀なフルバックで居て欲しいの」
 
 キャロは目に涙を溜めて答えた。
「ティアさんの言ってることが、本当に正しいのは、わたしにも解ります。
 わたしが、エリオくんみたいなガードウイングになれてないのは、自分が一番良く解ってるんです。
 それでもっ!
 ……ごめんなさい、わたしは、それでも、エリオくんの目指した騎士になりたいんです」
 いつも素直でもの解りのキャロの、初めての駄々をこねるような物言いに、スバルとティアナは嘆息をした。
「気持ちは、……よく解るんだけどねえ―――」
 ぱんぱん、と手を打つ音がした。
「はい、みんなそこまで」
 六課の教導官、高町なのはがにこにこと笑顔を見せていた。
「今回の事、みんなよく悩んでるみたいだね。
 そうそう、それが大事。なんでも良く考えるのが一番大事だよ。
 今回の件でみんなが気付いたのは、ガードウイングとフルバックのポジションの重要性だよね。
 まず……ガードウイングの重要性に気付いて、それからフルバックの重要性に気付いた。
 今日の模擬戦、コンビネーションも動きもガタガタだったからね」
「―――なのはさん」
「ん〜、正しいのはやっぱりティアナとスバルの考え方かな。
 でも、キャロの想いも尊重してあげたい」
「そこでうちから、ビックリハッピーな解決策や〜〜!」
「八神部隊長!?」

 突然訓練場に顔を出したはやてに、フォワード陣の一同は驚愕した。
 そして、はやてに連れられて現れた少女の姿に、更なる驚愕をした。

「……どうも」
「ルーテシア!?」
「ルーちゃん、どうしてこんな所にいるの?」
「……奉仕活動。本当は、次元世界で更正プログラムを受ける筈だったんだけど、懲役の代わりにここで働かないかって……」
「そーいうことや。今日からこの子、ルーテシア・アルピーノが六課フォワード陣のフルバック、ライトニング5や!
 ……まあ、オトナの事情が色々あって、このルー子をこっちに連れてくるのに時間がかかったんやけど、細かいとこはツッコまんどいてや!  
 みんな、仲良くしてやってな!」

 フォワード陣はぽかんと口を開けたまま、声も無い。
 ルーテシアの足元に召喚魔法陣が回転し、外骨格に覆われた巨体が姿を現す。
 ある種の不気味さを持つ異様をなのはは朗らかに紹介した。

「こちらは、ルーテシアの召喚虫のガリュー。このガリューがサイドウイングに回ってくれることになったの。
 これからは、ルーテシアがメインのフルバック、ガリューとキャロでサイドウイングを守りながら、キャロはケリュケイオンを併用。
 サイドウイングとして移動した先で臨機応変にバックスも行うことになるから。
 これから新しいフォーメーションで、びしばしいくよ〜」

 一同は、冷や汗を垂らしながら今後の苦行を思った。


300 名前:Little Lancer 五話 08/13 ◆vyCuygcBYc :2008/02/12(火) 01:34:27 ID:q+TQ/oUv
 ルーテシアは、キャロに問うた。
 一同が解散し、ルーテシアとキャロの二人きりになった時の事だった。

「……あなた、私のこと怨んでないの?」

 二人の間に、秋口の冷たい風が吹いた。

「ルーちゃん、何、言ってるの?」
「……あの男の子……エリオは、暴走した私のことを止めようとして、ゆりかごに行って死じゃったんだよね?」
「ルーちゃん……」
「……私と戦ったりしなければ、あの子はきっと死なずに済んだ筈」
「やめて」
「……だから、あなたは私を怨んでいい」
「ルーちゃん……やめてっ!」

 キャロの声は悲鳴に近かった。

「わたしは―――きっと、エリオくんも―――ルーちゃんのこと、怨んだりなんてしてないから。
 わたし達はね、ルーちゃんと、お友達になりたかったから戦ったの。
 ルーちゃんを怨んだり、するためじゃ、ない。
 わたしも、エリオくんが死なずに済んだ、もっといい方法があったんじゃないかって思うことが何度もある。
 その度に、どうしようもなくてベッドの中で一人で泣いちゃう。
 それでもね、あの時のわたし達の行動は間違って無かったって、そう思うの。
 死んじゃったエリオくんの為にも、そんな事は言わないで……
 
 それから―――良かったら、わたしと、お友達になって」

 キャロは、ルーテシアにストラーダを手首に嵌めた右手を差し出した。
 ルーテシアは―――その手を、ゆっくりと握り返した。

 その光景をなのはとはやては遠くから眺めていた。
 
「やっぱり、みんな、先に進むしかないんやな……」
 
 本来なら長期懲役に該当するルーテシアとアギトを、このような形で六課に登用したのは、はやての横車である。
 『幼き槍の遣い手』の予言の存在もあり、キャロをガードウイングとして使用するためにも、キャロに類似した能力をもつフルバックの存在は必須だったのである。
 JS事件以来、はやての発言権は大きく向上しており、慣れない『オトナの手段』を使い、二人を登用したのである。

「そうだね。わたし達も、前に進むしかないよね」

 黄昏時、嬉しげにルーテシアの手を握って上下にふるキャロと、困ったような顔をして手を握られるルーテシアの姿を、二人は楽しげに眺めていた。

「んふふ、ルー子の部屋、キャロと同室にしといたで。これから、キャロは寮に帰って二度ビックリや」

 はやては悪戯っぽい笑みを浮かべる。
 六課はゆっくりと、だが着実に、エリオの死から立ち直って行った。

301 名前:Little Lancer 五話 09/13 ◆vyCuygcBYc :2008/02/12(火) 01:35:41 ID:q+TQ/oUv
 ―――はい?、クア姉の話っスか?
 いいッスよ〜 何でもこのウエンディちゃんが答えちゃうっス!
 え? あんまり出しゃばるなって? まぁまぁノーヴェ姉、そう固いこと言わずにっス。
 解ってますって、これも捜査協力の一環ってことっスね。
 ええっと、あたしの知ってることは全部チンク姉の受け売りになるんっスけど……
 え? ならチンク姉に聞く? ああ、ちょっと待ってっス! あたしにも喋らせてっスよ!
 ……さっすがチンク姉、話が解るっス!! じゃあ、チンク姉がそこで聞いてて、間違ったとことかあったら訂正して下さいっス!

 クア姉、一人だけ逃げちゃって今も捕まえてないんっスよね〜
 あはは、ちゃっかりもののクア姉っぽいっス!
 え? 笑いごとじゃない? はいはい、じゃあ話を始めるっスね。

 ええっと、あたし達のナンバーの1番から4番、ウーノ姉、ドゥーエ姉、トーレ姉、クア姉の四人は、産まれからしてちょっと違うんっス。
 この四人は、ドクターの因子ってのを受け継いでいるんっス。
 ん〜ドクターの因子ってのがどういうものか、受け継いでないあたしにはよく解らないっスけど……
 何と言うか、この四人は行動や考え方がどこかドクターに似てる感じがあったっスね。
 ウーノ姉とトーレ姉は軌道拘置所に居るんっスよね。きっとドクターやクア姉も捕まってたらそっちに行ってるっスよ。
 それに、この四人はあたし達ナンバーズの中でも、それぞれ特別な役目を持ってたっス。
 それぞれ教えて欲しい? いいっスよ! 頑張って答えちゃうっス!

 まず、ウーノ姉っスね。
 これはもう知ってると思うっスけど、ウーノ姉はあたし達の中で唯一、全く戦闘をしないドクターの秘書だったんっス。
 ドクターの散髪までしてたんっスよ?
 一番の年上だったっスし、何かナンバーズの中で一番偉い人って感じだったっス。
 誰もウーノ姉には口答えできなかったっス。

 んで、次ドゥーエ姉。
 んと、あたしドゥーエ姉には会ったことがないんで、ドゥーエ姉のことは余りよく知らないんっスよね……
 あたし達の中で唯一死んじゃった人っスしね……
 チンク姉は確か会ったことがあるんっスよね? え? やっぱり顔を合せた程度っスか。
 まあ、ドゥーエ姉はいつも何か特別な任務で外に出てたみたいっス。
 ―――ただ、クア姉を育てたのがこのドゥーエ姉って話なんっス。
 クア姉曰く、敵には怖いけど妹達には優しい人だったらしいっスよ?

 三番目のトーレ姉が、この四人の中では一番解り易いっス。
 ナンバーズの実戦リーダーで、ドクターの信頼も厚くて、多分喧嘩をしたらナンバーズで一番強い人っス。
 トーレ姉が負けちゃったって聞いたときは信じられなかったっスよ!
 そのトーレ姉に勝ったって槍使いの子、そんなに強かったんっスかね?
 凄く厳しい人で、あたしもトーレ姉のことはちょっと怖かったっス。
 ……ただ、よく解らないことがあるんっスよね。
 最後の戦いで、トーレ姉がドクターを放ってクア姉の所に行っちゃった、って話っス。
 トーレ姉は妹達に厳しい人だったっスけど、自分にも厳しい人だったんで、ドクター放ってクア姉の所に行くなんて、ありえないんっス。
 ん? ああ、やっぱりセインもそう思うっスか。
 何か、ドクターとこの四人しか知らないような秘密でも有ったんっスかね?

 あ、ちょっとお茶飲んでいいっスか? 口の中乾いちゃったっス。

302 名前:Little Lancer 五話 10/13 ◆vyCuygcBYc :2008/02/12(火) 01:36:33 ID:q+TQ/oUv
 はあ〜、六課の人が差し入れくれたお茶は美味しいっスね〜
 ……で、いよいよクア姉の話っスね。
 クア姉はナンバーズのサブリーダーで、後方指揮官。
 あたし達の中で、一番自律行動可能範囲も広かったんっス。
 ルーお嬢様の扱いも任されてたみたいっスしね。
 クア姉も一番上のウーノ姉には頭が上がらないみたいだったっスけど―――
 何と言うか、ある意味、クア姉はウーノ姉よりもドクターに近い感じもしてたっス。
 ウーノ姉はドクターの後ろにピッタリついて歩いてるって感じっスけど、クア姉は何時の間にかドクターの隣に立ってるみたいな……
 解るっスか? この感じ?

 クア姉はあたし達の中じゃ珍しくいつもにこにこしてて―――
 ほら、ノーヴェなんていっつもイライラしてて……ああ、そんなに怒らないでっス!
 オットーとディードのムッツリコンビなんて見ての通りっスから、クア姉のスマイルはあたし達の中ではホント貴重だったっス。
 ―――ただ、クア姉はいつもにこにこしてたっスけど、目の奥では笑って無かったんっスよね……
 笑っててそれは本音じゃなくて、軽い口調や態度の下で何か色々考えてて……
 何て言うんっスかね? りち……りちて……でれい、れい―――そうそれ、理知的で冷酷っス!
 さっすがチンク姉! 難しい言葉を良く知ってるっス!

 なーんて言うか、クア姉、本音の部分じゃ妹達をみんな見下してたんじゃないか、って思うこともあるっス。
 ほら、周りのことを自分の―――ええと、何だったっスかね、あのゲームとかに使う、馬の頭とか付いたのもある……
 ―――そうそれ、駒っス!
 駒みたいに見てた気がするっス! 
 さっすがチンク姉! 難しい言葉を良く知ってるっス!
 ……え? その位は知っとけ? 
 もう、ノーヴェは手厳しいっスね……

 んで、クア姉と言えばメガネ、メガネと言えばクア姉っスけど、あの眼鏡伊達なんっスよ?
 知ってました?
 あたし達戦闘機人は、みんな体のあちこちに改造をうけてて、眼鏡なんてしなくても、すご〜く目がいいんっス。
 なのに、どうして眼鏡なんて掛けてるんっスか〜? って聞いてみたことがあるんっス。
 その時も、こっちの方が優しいお姉さんに見えるでしょ〜、とか何とか言ってて、よく意味が解らなかったんっス。
 チンク姉が右目を治さないのと同じで、何かのこだわりだったんっスかね?

 あと、クア姉について知ってること……
 う〜ん……
 あ、そう言えば、クア姉こんなこと言ってたっス!
 弱いものイジメをして、いたぶって苦しむのを見るのが楽しいって……
 あたしも、流石にそれはどうかと思ったっス。
 やっぱり、勝負は勝つか負けるかの相手とガチンコでやるのが一番楽しいっスよね!?
 ああ〜 早くあのティアナにリベンジマッチをかましてやりたいっス……!
 ねえ、あの二人、スバルとティアナっスけど、また来ないんっスか? 

 あれ……どこ行くんっスか?
 え……もう話は終わりっスか? ちょっと待って下さいっス!
 クア姉の話はもう無いっスけど、他にも色々話せること有るっスよ!
 あたしの必殺技、エリアルレイヴの話とか聞きたくないっスか―――

 ああ、行っちゃったっス……
 え? あたしの話し方が下手だからって?
 そんなこと無いっス! ちゃんと、よーてんをかいつまんで話したっス!

 ……はあ、それにしても、クア姉、今頃どこで何してるんっスかねぇ……

303 名前:Little Lancer 五話 11/13 ◆vyCuygcBYc :2008/02/12(火) 01:37:09 ID:q+TQ/oUv
 その夜、女は出産の時を迎えた。
 JS事件から約一月が経過した晩の事である。

 成人男性が丸々入るほどに膨れた腹部は赤く充血し、一つの臓器のように脈打った。
 その異形の腹部を愛しげに撫でながら、女は恍惚とした表情を浮かべる。
 通常の妊婦の出産に見られるような苦痛は、欠片もみられない。
 唯ひたすら、エクスタシーのような恍惚とした表情を浮かべ、時折艶かしい声を漏らす。

 彼女は、全裸で月の下に横たわっていた。
 既に人とも見えぬ畸形の妊婦―――だが、それはどこか毒果のような艶かしさを見せていた。

「あ、ああ、ああああああああああっ」

 女は遂に絶頂の声を上げる。
 膨れ上がった腹部が月の光を浴びて妖しく脈打つ。

 そして遂に―――その腹が破れた。
 理の中に無い妊婦が、理の中に有る出産など行おう筈も無い。
 女の胎に宿った赤子は、その腹を自ら張り破って地に立った。
 それは、雛が卵の殻を破るように―――夜蛾が繭を破って羽ばたくように。

 女の腹を裂いて現れ出でたのは、黄金率の肉体を誇った美貌の男だった。
 男は羊水を振り払うかのように、その長髪を掻き揚げた。
 男は産声すら上げず、鼻から大きく息を吸い込み、自らが再び産まれ出でた世界の香りを嗅いだ。

「あ、ああ……」

 女の瞳から、歓喜の涙が溢れる。
 今、自分は世界を統べる王となるべき人間の母となったのだ。
 男は母である女に、その理知的で冷酷な流し目を送った。

「ただいま。愛しいクアットロ。やはりお前は―――パーフェクトだ」

 女は母性を湛えた微笑みを返す。

「お帰りなさいませ。ドクター・スカリエッティ。この世界は、貴方をお待ちしておりました」

 男は口の端を吊り上げる。

「ああ、本当にこの世界は素晴らしいよ。
 さあ、クアットロ。お前にはこの世界で存分に働いてもらう。
 まず、差し当たっては―――」

 耳打ちをするように、今後の計画を告げた。
 女は目を輝かせた。

「素晴らしいですわ! ドクター! 矢張り貴方は楽園を築かれる御方―――」

 男は苦笑する。

「そう急くんじゃないよ、クアットロ。見ての通り、裸一貫からの再出発だ。
 作戦の決行は―――そう、三年後かな?」

304 名前:Little Lancer 五話 12/13 ◆vyCuygcBYc :2008/02/12(火) 01:37:55 ID:q+TQ/oUv
 時計の針を、少し戻す。
 誰にとっても悪夢でしかなかった、あのジェイル・スカリエッティ事件の終結の時に。
 ―――時を同じくせども、違う世界で―――

 
 その森は、少女の遊び場だった。
 付近の猟師も近寄らない深き森なれども、少女にとっては自分の庭も同然だった。
 黒き木々の香りを嗅ぎ、鳥の囀りを聞き、時折足元で微笑む花を摘む。
 それだけで、少女は楽しかった。
 少女の年の頃は高町ヴィヴィオと同じ程。
 されど、淀みない足取りで鬱蒼とした木々の間を駆け抜ける。
 森は、少女を飽きさせない。
 四季折々、その日その時によって、森は姿を変えるからだ。

 だが、その日、森は奇妙なざわめきに包まれていた。
 普段は無数に感じる獣の吐息も感じられない。
 奇妙に静まり返った森の中で、少女は微かな血臭を嗅ぎ取った。
 あらゆる感覚の敏感な少女だが、こと血臭には図抜けた敏感さを示すのだ。
 彼女は森の奥へと向かい―――それを見た。

 左腕を失い、全身を刻まれた少年が森の広場に倒れていた。

 少女は悲鳴を上げる。
 
「大変!大変! お父さん、お母さん、ノエルさん、大変だよ〜〜っ!」

 少女―――月村雫は、森の畔の我が家へと駆けて行く。
 昼尚薄暗い、ドイツの森を駆けて行く。
 少年の掌の中から、紅い宝珠が零れ落ちたことにも気付かずに―――


305 名前:Little Lancer 五話 13/13 ◆vyCuygcBYc :2008/02/12(火) 01:38:39 ID:q+TQ/oUv
 それから数日が経過した。
 森の中に倒れていた少年は、今は白いベッドの上に横たわっている。
 心配そう見守っているのは、先の少女とまだ年若い夫婦だ。
 夫の名は恭也、妻の名は忍である。付け加えるなら、夫の旧姓は―――高町、と言った。
 夫は頭を抑えて唸る。

「輸血用パックがあったから、なんとかなったものの―――
 それにしても、なんだこの傷は……?
 刀傷? 鋼糸? いや、何時か蕎麦屋で見た麺切り包丁を、もっと薄く細長くしたような刃物か?
 見れば見る程訳が解らない……
 それに、これだけの手傷を負いながら、周囲に血糊の一滴も零さずに森の中に倒れてるなんて。
 ……忍、こいつは、間違いなく、ヤバい件に関わってるぞ」
「でも、見捨てることなんて出来ないわ。
 私達も、関わっちゃったんですもの。……それに、こんな可哀相な目にあってる男の子、放って置ける訳が無いわ」

 そう言って、妻は少年の髪を撫でる。
 少年が、低く呻き声を漏らした。

「あっ、見て! 目を覚ましたよ!」

 少女は飛び跳ねて喜んだ。
 少年は、ぼんやりとした目つきで周囲を見渡した。

「目を覚ましたか―――体の調子は大丈夫か?」
「……ここは、どこですか?」
「無理も無いか……事情は、話せるか? 
 まずは君の名前―――教えてもらえるか?」

 なまえ? とぼんやりした口調で少年は反芻をする。
 そして、さも不思議そうに尋ねた。

「僕の名前―――何ですか?」

 恭也は頭を抱える。無理も無い。発見時には大量出血で心拍は停止直前。
 脳は虚血状態が長く続き、意識が戻っただけでも奇跡に近いのだ。

「おい、まだ動かない方がいいぞ……」

 少年は忠告を無視してよたよたとベッドから立ち上がった。

「?」

 そして、ベッド脇に立てかけてあったモップを手に取った。
 腰を落とし、それを正眼に構える。
 それは、左腕を無くしてなお堂々とした武術の構えだった。
 恭也はふむ、と頷いた。
 
「槍術―――それも和槍じゃない、洋槍の類だな。
 矢張り、その筋の出身か……
 それで、小さなランサー君。君はこれからどうしたいんだ」

 少年の、どこかぼんやりしていた瞳に意志の光が灯った。
 それは、左腕を失い、全身を刻まれ、記憶すら失い、尚失われぬ、魂に刻まれた渇望。
 それを、少年は口にした。

「僕は、―――僕は、強くなりたいんです」


 ―――そして、長い時が過ぎる。


306 名前:アルカディア ◆vyCuygcBYc :2008/02/12(火) 01:39:09 ID:q+TQ/oUv
 ということで、注意事項には載せていましたが今まで登場しなかったとらは関連登場です。
 ご存知ない方の為に補足すると、月村雫は、「とらいあんぐるハート3」の一部のエンディングで誕生する恭也と忍の長女です。
 本当は下に妹と弟も居るはずなのですが、本作では都合上一人娘となっております。 
 月村忍は夜の一族で(月村すずかは血が薄いということで一つ)機械いじりが趣味で、
 メイドのノエル・綺堂・エーアリヒカイトも自動人形というとらはの設定に準拠させています。
 勿論、恭也は御神流の達人ということで。

 ……ただし、恭也は余り表に出すと途端に話が厨臭くなる傾向があるので、(何を今更、という突っ込みは勘弁)裏方に徹する予定です。
 とらはキャラが登場したものの、これからも話のメインはあくまで六課の面々です。
 今後ももう少しお付き合い頂ければ幸いです。

 補足*キャロ萌えを意識してみましたが、やっぱり純情萌えキャラは難しいです。
    ああ、もっとクアットロとか書きたい……っ!

307 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 01:41:36 ID:OM6H3eKw
GJ!しっかし…なんかエラいとこに繋がってきたな…

308 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 01:45:03 ID:7c/9Ey6i
GJ!!です。
このスカ博士とクアットロは間違いなく悪役wすばらしいの一言。
さぁ!失ったエリオのおててになに仕込むw大砲かいwそれとも紅蓮弐式ハンドかなw
真ゲッター2のドリルも捨てがたいw
次回も楽しみにしてます。
>>285
もはやユーノはでなくてもいい・・・あの素晴らしいお尻を素晴らしく表現してほしいですw




309 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 01:52:36 ID:Iy4OGhvP
こう来るか! こりゃこの先が楽しみ過ぎじゃわい!! もうパーフェクトGJを進呈する、どうか受け取ってくれ!!!
とりあえず俺はトラハ一切知らない人だから適度な解説希望です。

>>308
まだなんとも言えないけど書くとしてもエロ入れるか微妙なところです。
でも書いたら新鮮だから是非書きたい。

310 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 01:58:15 ID:Kxy8+Ezm
>>306
奮えたわ。常々、「料理は勝負」の心構えが最強に受け手を盛り上げると思ってるから、ルーやナンバーズ、忍とかの扱いでビックリ箱作るのは素晴らしく思う。
とりあえず今のところ、この板内で一番面白いと思える。GJ。

311 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 02:00:21 ID:TYClSnM1
>>306GJ
キャラの性格の軸がぶれずに描かれている感じがして読んでいて非常に感情移入がしやすいです。
少し泣きそうになったのはここだけの話。
しかしここで御神入門ですか……。あ、でも御神は門外不出だからノエル弟子入りもアリか。
なんにせよ続きを楽しみにしています

312 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 02:04:28 ID:6Eg4cgLz
GJ! まさかここでこう繋げるとは思いもせんかったわ。ここまで続きが気になるSSも珍しい……。

313 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 02:05:37 ID:ZkHSueSe
エリオは生きてると思ってたけどこういう展開か

314 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 02:06:57 ID:kDUty4ML
>>306
GJです!
毎回楽しませてもらっています。

新スカ軍団に追い詰められたキャロの前にそれこそ
『時空を超えて、俺、参上!』
しそうなエリオにwktkが止まりません。

315 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 02:09:19 ID:E9yu51ne
>>314
得物的に「キャロ、僕に釣られてみる?」ですね。
クロススレであったな、このネタ。

316 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 02:14:56 ID:2cKORXEs
>>306
GJです。やはり生きてたエリオ君隻腕の槍騎士の明日はどっちだ!?

腹を破って出てくる美形男性ということで某魔王陛下の兄君と同じ声の
666の獣を思い出したw

317 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 02:34:49 ID:XwrepoHc
>>306
GJ!
とらはは名前しか知らないので戸惑いがないといったらウソですが
(エリオが飛ばされたのは、なのは達の故郷である97管理外世界とはまた別の世界?)
エリオの往く修羅の道もさることながら、ルーテシアが6課入りするということは、
ガリューの参戦はもちろん、ハクテンオーとヴォルテールの共闘も見られるということか?(怖

318 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 02:47:36 ID:nbBQrlxK
ふ、普通に生きてた・・・
キャロのピンチに時空の狭間から顔の一部と腕だけが出てきて
スカの眼球ぶち抜いてクアットロを引きずり込んでいく
漂流教室モンディアルになると思ったのに・・・

冗談です(ぉぃ

むぅ、なんというクオリティ・・・
彼は正統派ヒーローが似合うのぅ・・・
いやはやとてもGJです
執務官という立場でもあるフェイトさんがちと病み過ぎかな?とも思いましたが
身近な人間を失うとこうもなるな・・・と思い直し

まあ無理矢理に仕事をしようとして上手くいかず書類ばら撒いてしまって泣き出すフェイトさんも見てみたいなってそれ観鈴やんけ俺のあほ

319 名前:( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc :2008/02/12(火) 03:19:06 ID:XqKE1tLA
えーあー、そりゃー30分遅刻しましたよ。しましたともさ。
だからっつって9時間労働休憩無しはあんまりじゃありませんか?
ねぇ。

>>306
GJです。
「俺ならここでエリオを地球に飛ばして、士郎か恭也とあわせるんだが
それはないだろうな」と思ってたのに、
そ  う  な  り  ま  し  た  か orz
スミマセンスミマセンモウシマセンユルシテクダサイ or2

注意事項
・もう捏造がもンの凄い事になってます。
・正直アリサ強杉。どこの跳躍系だ。
・今回も、A's本編のダイジェストっぽい感じがしなくもありません。
・非エロ。ガチバトル。
・あぼーんキーワードは「燃え上がる炎の魔法使い」

320 名前:燃え上がる炎の魔法使い 11-01/12 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/12(火) 03:20:05 ID:XqKE1tLA
 ────正直に言えば、俺は、お前の剣が怖い。
 尊敬する師にして親友の兄である剣客は、そう言った。

「あたしの?」
 ────お前の剣は迷いが無い。ただ、まっすぐに。決して、折れず、曲がらず。だか
ら、特別な型や技を持たずとも、何より強くなる。
「でも、あたし、美由希さんにもまだ勝った事無いですよ?」
 ────それは、まだ、お前が、小さいからだ。
「ムッ」
 ────怒るな。事実なんだ。しょうがないだろう。
「……それは、そうですけど」
 ────今のまま、成長して、身体が出来上がっていけば、誰より強い剣を振るうこと
になる。不破でも、御神でもない、お前の剣をな。その時には、俺も、父さんでさえ、お
前には、勝てなくなっているだろう。
「そう……ですかね?」

 正直、越えられるなんて思っていなかった。
 越えようとも思っていなかった。
 だから。

 ────誰より強くなんかならなくたって良い、今、目の前のバカの目を覚まさせるだ
けに必要な力を!

「レイジングハート!」
『Yes, Load Cartridge』
「レヴァンティン!」
『Ja!Patronenlast!』
 炎を吹き上げる魔剣に、己の相棒は燃え盛りこそしないが、炎そのものの鮮やかな光を
帯びる。
 ガキィンッ!
 バチバチバチバチッ!
 レイジングハートとレヴァンティンが交錯し、激しく火花を散らす。
「この世界にも騎士がいるといったな」
 シグナムは、交錯する剣の向こうの、まだ幼い剣客を、険しい表情で睨み、言う。
「ならば、たった1人の、五体も満足ではない少女の望みを砕き、踏みにじるのが、この
世界の騎士道だというのか!?」
「その言葉、そっくりそのまま返すわよ!」
 アリサは、怒鳴る。
「何?」
「アンタ、ホントは薄々感づいてる! こんな筈じゃないって! 何かが違ってるって!
だから、剣に迷いがあんのよ!」
 アリサの言葉に、シグナムの顔には、目に見えて動揺が走った。
 だが、それも一瞬の事。
「言うなぁっ!」
 腕力と体格差に物を言わせ、シグナムはレイジングハートごとアリサを振り払う。
「例えどんな結末が待っていようと、今、蒐集を、主はやての命(いのち)を止める訳には、
いかんのだぁっ」
 勝気でまだ幼いアリサにも、それはわかった。
「剣が泣いてるわよ、シグナム」

321 名前:燃え上がる炎の魔法使い 11-02/12 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/12(火) 03:21:12 ID:XqKE1tLA

燃え上がる炎の魔法使い〜Lyrical Violence + A’s〜
 PHASE-11:Zur heiligen Nacht von Traurigkeit

『Flammeschlag』
「だりゃあぁぁぁぁぁっ」
 ヴィータは、グラーフアイゼンを上段に構え、フェイトに向かって放物線を描くように、
飛び掛ってくる。
「バルディッシュ」
 後ろに退いて時間を稼ぎながら、己の一番身近なパートナーに呼びかける。
『Load Cartridge』
 ドンッ
 CVK-792Aユニットから、空カートリッジが排莢される。
『Wheel Protection』
 ドガァンッ
 バルディッシュが作り出したシールドに、グラーフアイゼンが激突する。その瞬間、そ
の命中箇所で、魔力素を熱変換した大爆発が起きる。
「やった!?」
 ヴィータは、勝利を確信した声を上げる。
 だが、爆煙が魔力の残滓の霧と共に霧散した後、金色の光のシールドには何の変化もな
く、その向こうのフェイトも平然と宙に立っている。
「っな!?」
 ヴィータが目を円くしつつ、慄く。
『Thunder slash』
 バルディッシュのひときわ輝く魔力刀が、グラーフアイゼンと凌ぎあい、徐々に圧して
いく。
「なんで、ここまでして邪魔すんだよ!」
 フェイトに対し防戦するヴィータの目が、鮮やかな青に染まり、憎しみの眼差しで、フ
ェイトを見る。
「この、悪魔!」
「っ……!」
 ヴィータの、泣き声混じりの罵倒に、フェイトは、一瞬、表情を曇らせる。
「……悪魔で、構わない」
 だが、フェイトの動きそのものに、動揺はない。
 ヴィータが急機動で間合いを取った瞬間、フェイトは大きく振りかぶる。
「多くの人の、“こんなはずじゃなかった”未来を変えるためなら、悪魔にでも、死神に
でも、私は、なる」
『Arc Saber』
 バルディッシュの魔力刀が、刀具から外れて、光のブーメランと化し、ヴィータに迫る。
「っくっ……」
 “の”の字を描くように迫るアークセイバーを、ヴィータは正面に捉え、グラーフアイ
ゼンで受け止める。
 ガキィンッ!!
 バチバチバチバチッ!
 アークセイバーと、グラーフアイゼンとが、激しく火花を散らし、凌ぎあう。
「アイゼン!」
『Ja!Patronenlast』
 ガキンッ

322 名前:燃え上がる炎の魔法使い 11-03/12 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/12(火) 03:21:42 ID:XqKE1tLA
 グラーフアイゼンはカートリッジを撃発させる。赤い魔力光がコアからひときわ強く放
射されたかと思うと、グラーフアイゼンがアークセイバーを引き裂き、霧散させた。
 だが。
『Revolver set』
「はっ」
 ヴィータの斜め上方、フェイトは既に、バルディッシュに魔力弾を集束させていた。
「サンダースマッシャー」
『Burst shot』
 お互いに稲妻を走らせながら、6発の魔力弾が、ヴィータに向けて発射された。
「くぅっ、アイゼン!」
『Ja』
 1発、2発、3発、急機動で回避する。
『Schutzfeld』
 4発、5発、シールドで受け止める。6発目は、ギリギリのところを逸れていった。
『フェイト!』
 フェイトの脳裏に、アリサの念話が届く。
『Scythe form』
 バルディッシュが新たに魔力刀を生み出す。フェイトによって振るわれ、飛び掛ってく
るヴィータのグラーフアイゼンと、交錯する。
『このままじゃきりがないわ。シグナムとヴィータ、大技で黙らせよう』
『どうやって?』
 アリサの提案に、フェイトは聞き返す。
『前の時、あたしがフェイトにもやったことあるアレ。アレでヴィータをシグナムに引っ
付けて』
『やってみる』
 フェイトは言い、急機動でヴィータから間合いを取る。
『Device form, Revolver set』
 魔力刀を収納させ、魔力弾を集束させる。
『Thunder Smasher, Burst shot』
 だが、その照準は、甘い。ヴィータは、難なくそれを避けていく。
「このっ!」
 ヴィータは、曲線を描きながら、グラーフアイゼンを手に、フェイトに迫る。
『Revolver set』
 だが、フェイトは構わず、同じ行動を繰り返した。
「バカにすんじゃねーぞっ! アイゼン!」
『Ja, wohl』
 射撃でヴィータを圧倒しようとしているフェイトに、ヴィータは半ば逆上して、襲い掛
かる。
『Flammeschlag』
 ────来た。
 フェイトは、機動を続けつつ、それを単調なものにして、ヴィータの一撃を捉える。
『Defenser, Dual excise』
 金色のシールドを2重に生み出し、受け止めようとする。
「おらぁっ!」
 ズドンッ!
 先ほどと同じように、大爆発が起こる。爆煙がシールドを包み込み、シールドの1枚目
はあえなく砕け散った。

323 名前:燃え上がる炎の魔法使い 11-04/12 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/12(火) 03:22:10 ID:XqKE1tLA
 そして、爆煙が晴れた、その向こうに。
「シグナム!?」
 ヴィータは、素っ頓狂な声を上げる。
「なっ、ヴィータ!?」
 背後に、その声を聞いたシグナムもまた、動揺の声を上げた。
 ビシュッ
 撃ち上げるように、シグナムの左より正面、やや下方から、アリサが射撃してくる。だ
が、その照準は、甘い。
「フェイト!」
『Load Cartridge』
 ドンドンドンッ
 バルディッシュが、立て続けに、3発のカートリッジを撃発させた。
「しまった!」
 シグナムがそう言った時には、既に遅い。
「プラズマサンダーレイジ」
『Dancing』
 バリバリバリバリバリッ
 稲光の嵐が、シグナムとヴィータのいる地点を中心に、空間を薙ぎ払った。
 ドンッ
 シールドを破壊したのか、2人を爆発が包んだ。
「やった、かな?」
 上昇したアリサが、フェイトの傍らによる。2人で、シグナムとヴィータを包む爆煙を、
見下ろす。
 爆煙は僅かな風に乗って流れていく。そして、その向こうに、シグナムとヴィータの姿
は、あった。
「ちっ、シールド爆破して凌いだわね」
 忌々しそうに、アリサはそう言った。
「でも、ノーダメージじゃないよ、2人とも」
 フェイトがそう言った。確かに、2人の甲冑は、すすけ、擦り切れたように、消耗して
いる。2人は、荒い息をしていた。
「よっしゃ、次はあたしが……」
 アリサが、言いかけたとき。
 シャアァァァッッ、ガキィィンッ
「!?」

324 名前:燃え上がる炎の魔法使い 11-05/12 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/12(火) 03:22:38 ID:XqKE1tLA

 突然、床面から生えてきた光の鎖が、なのはの四肢の自由を奪った。
「なっ、これ……っ」
 チェーンバインド。
 だが、それはアリサのオレンジでも、ユーノの緑でもない。青白い彩度の低い色。
「くっ……」
 しかも、使い手の1人であるユーノまで、それに捕らわれている。
 ……にもかかわらず。
「あぅぅっ……」
「なっ、どないなってんのやっ!?」
 2人と対峙していた、シャマルとレンまでもが、同じバインドで捕捉されていた。
「時は来た。今こそ闇の書の復活を」
 その声に、4人ともがその主の方を見る。
 空中に直立した、仮面の男。
「お前は!」
 ユーノが、憎らしげに、男を睨む。
 そして、その手には、金のレリーフの付いたハードカバーの、本。
「なぁっ、闇の書!?」
 レンと、シャマルの、顔色が変わる。
 そして────
「早く済ませろ……時間が惜しい」
「急かすな」
「なっ!?」
「えっ!?」
 ユーノとなのはが、驚愕の声を上げる。
 同じく、チェーンバインドで縛られたアリサとフェイト、シグナムとヴィータを背に引
きずり寄せながら、そいつは、仮面の男に話しかけた。
 それは、もう1人の、同じ仮面をつけた、全く同一にも見える、男。
「最後の蒐集対象は不要となった守護騎士自身。過去にも何度か、そうだったはずだ……」
 闇の書を持つ男は、ページを開くと、シャマルとレンの方へと、それを向けた。
『Sammlung』
 闇の書が鈍く輝き、それと同調するかのように、シャマルとレンから、魔力光が、吸い
上げられるように、身体から漏れ出す。
「いやぁぁぁぁっ」
「ちょぉ、まっ、あたしは……」
 悲鳴を上げる2人。
 人間と異なり、闇の書の守護騎士は、あくまで魔術式によって再現される擬似人格であ
る。実体も、魔力によって再現されているものに過ぎない。その守護騎士が、魔力を蒐集
されれば、どうなるか。
 2人のリンカーコアが萎縮すると同時に、その身体が希薄なものになって行き、最後に
は、足元から霧散して、消滅していく。
「シャマルさん!」
「レンちゃん!」
 バインドに縛られたままのユーノとなのはが、悲鳴のような声を上げる。だが、気がつ
けば、そこに残っていたのは、2人が騎士甲冑展開前に来ていた、私服だけ。それが、ま
るで中の人間が蒸発してしまったかのように────否、まさにそうなって、屋上の床に
崩れ落ちている。

325 名前:193:2008/02/12(火) 03:22:47 ID:O0iTYCfQ
>>306

GJです!
途中まではフェイトちゃんが不憫で『誰か、闇の書持ってこい!フェイトちゃんに優しい永遠の夢を見せてあげてぇ!!』と思っていましたが、少しずつ立ち直りつつあるようで何よりです。
エリオ君も生きていたし、あとは糞悪女と変態ドクターを地獄へ叩き込むだけですね。
これからも頑張って下さい。



リリカルヴィヴィオ、予告編を投下したは良いけれど…ストーリーを読まれたみたいでちょっと後悔。
まあいいさ、ヴィヴィオを冥王の娘として相応しい子にしてしまえば!(半ばヤケクソ

326 名前:燃え上がる炎の魔法使い 11-06/12 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/12(火) 03:23:14 ID:XqKE1tLA
「てめぇらぁっ! シャマルとレンに何しやがるっ!!」
 じたばたと暴れながら、ヴィータが怒鳴る。だが、バインドに四肢の自由を奪われ、身
動きが取れない。背中合わせに縛られたシグナムが、そしてアリサとフェイトも解除を試
みているが、これだけのバインドを同時に繰り出しながら、簡単にはほどけない、驚異的
な拘束力を維持していた。
「ならば鉄槌の騎士、次は、お前だ……」
 闇の書を持った男は、ヴィータにその手を向ける。
「ひっ、あ……うわぁぁぁっ!」
 シャマルやレンと同じように、ヴィータの鮮やかな赤が吸い上げられ、その身体が霧散
して行く。
「アンタ達! こんなことして、ただで済むと思ってんじゃないでしょうね!」
 アリサが、フェイトの背中で暴れる。反対側を向けさせられているので、光景としては、
シュールだ。だが、此方を向いているフェイトも、険しい表情で仮面の男たちを睨みつけ
ている。
 しかし、男たちは動じた風もない。
「このぉぉぉっ、貴様らぁぁぁっ!」
 青い閃光が、彼方から走って来た。人間形態のザフィーラが、闇の書を持つ男に、飛び
掛る。
 だが…………
「ふんっ」
 詠唱もなく、男はホイールプロテクションを発動させ、ザフィーラの拳を難なく阻む。
「ぬぉぉぉっ、おぉぉぉぉっ!」
 飛行魔法の推力を上げ、拳にかかる魔力打撃の出力を上げ、ザフィーラは突進を続ける。
『Sammlung』
 しかし、そのザフィーラを、ホイールプロテクション越しに、闇の書が、吸い上げてい
く。
「うぉぉぉぉぉぉっ!!」
 ザフィーラは悲鳴ではなく、狼の咆哮を残して、消失した。
「一体、何が目的なの、あなた達……っ」
 目尻に涙を浮かべながら、フェイトが低い、しかしはっきりした声で、男達を睨みつけ、
そして、問い質す。
「簡単なことだ。悲しみの連鎖を、今断ち切るため……さあ」
 そう言うと、2人の仮面の男は、おもむろに、自分の手で、仮面を覆った。
「仕上げを、始めるとしよう」
 2人の手が仮面から離れたとき、その顔、そして、肉体の姿、衣装までもが、アリサと
フェイトの2人、そのものの姿に、なっていた。

327 名前:燃え上がる炎の魔法使い 11-07/12 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/12(火) 03:23:45 ID:XqKE1tLA

「!?」
 ドクン。
 イヤな鼓動が、大きく高鳴った。
「な……レン!?」
 自分の影を自称する守護騎士が、自分の胸の中で空洞となっていくような感触を、はや
ては個室のベッドの上で、感じ取った。
「ちょ……シグナム!? シャマル! ヴィータ! ザフィーラ!? レン、レン!!」
 魔力資質はあるがいまだ魔法については素人のはやてだが、守護騎士との思念通話だけ
はできる。
 だが、誰も、呼びかけに応じない。
「何が……」
 呟きかけて、はやてを鈍い光が包んだ。
 “円形の”魔法陣が、はやてを、屋上へと強制転移する。パジャマ姿で、屋上の床に、
へたり込む形になった。
「な……」
「ようこそ、はやてちゃん……」
 薄笑いを浮かべる、2人の、はやてと同じ年恰好の少女。そして、その2人に挟まれる
形で、シグナムがぐったりとしながら、光の鎖に巻きつかれている。
 その顔に、見覚えがあった。
「アリサちゃん」
 すずかが、自分の親友と紹介した少女。シグナムが、戦うのが心苦しくも楽しいと言っ
た相手。
「フェイトちゃん」
 同じく、すずかの友人。曰く、悲劇的な事件を乗り越えてきた子。ヴィータの、グチの
ネタ。
「なんや、なんやこれ、どうなってるんや?」
 状況が全く理解できず、はやては困惑の声を上げるが、2人はニヤニヤと、酷薄そうな
笑みを浮かべて、はやてを見下ろしている。
「はやてちゃん、実はね、アンタは病気にかかってるのよ」
 アリサが、薄笑いのまま、言う。
「闇の書の呪いって言う、病気」
 フェイトもまた、不気味に笑いながら、そう言った。
「でも、もう治らないのよ」
「だって、闇の書は、とっくの昔に……」
「壊れちゃってたから」
 2人は、声をそろえて、はやてにそう告げた。
「な……な……っ」
 はやては、一瞬、息を飲み込み、言葉を失ってしまった。
 だが、やがて、理不尽な状況に、眉を吊り上げ、2人を睨む。
「何言ってるんや! レンや、シャマル達どないしよったねん!?」
 声を荒げて、怒鳴る。
「見当たらないかな……フフフ」
 フェイトが、酷薄そうな笑みで、妙に楽しそうに笑う。
「なっ!?」
 はやては、気付く。屋上の床に、衣服が落ちている。それは、まるで、中の人間が、蒸
発してしまったようで。そして、それは、はやてが、シャマルやレンの私服として、買い
与えたものに、間違いなかった。

328 名前:燃え上がる炎の魔法使い 11-08/12 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/12(火) 03:24:28 ID:XqKE1tLA
「うそ……まさか……」
 はやての顔から、血の気が引いていく。
「さあ、はやてちゃん」
「家族ごっこは、もう、終わりだよ……」
 鈍い光を放つ、2人の各々、外側の手が、シグナムに向けられる。
「ちょぉ、やめて! シグナムに何するん、やめてぇぇっ!!」

329 名前:燃え上がる炎の魔法使い 11-09/12 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/12(火) 03:24:53 ID:XqKE1tLA

 ドガッ
「!?」
 突然の、物理的衝撃に、シグナムはしかし、それで意識を取り戻した。
 ザッ
 少し乱暴だったが、屋上の床に、着陸させられる。
「あ……主はやて?」
「シグナム……」
 はやては、2人の背後から突撃してきた、その主に、視線を移し、見上げる。
「お前は……!」
 それまで、酷薄そうな笑みを浮かべていた2人に、同様が走る。
「あたしの前に出ないで」
 はやてとシグナムにそう言ってから、フェイトが持つそれより、ややなだらかなライン
の刀具を持つ、良く似たデバイスを、フェイトに向けた。
「アンタ、何者?」
「うっ……」
 フェイトは、思わず、たじろぐ。
「フェイトはそんな風に笑わない! 笑えない!! あたしはフェイトの笑顔のために、奇跡
が蘇らせてくれたの。だから、解る。アンタはフェイトじゃない。アンタ、一体何者よ!?」
 “フェイト”を睨みつけ、アリシア・テスタロッサは、怒鳴り声で問い質した。
「ふっ……ふふふふ……」
「あっは、ハハハハハハ!」
 狼狽を見せていた2人だったが、しかし、すぐに、狂気じみた笑い声を上げ始めた。
「この際、構わないかな……母親譲りの魔力、我らが目的の為に」
「なっ!?」
 “フェイト”の言葉に、アリシアはブローバを引き寄せ、構える。
「はやてちゃん……」
 “アリサ”が、はやてに声をかけた。
「闇の書はね、壊れちゃってんの」
「だから、誰も幸せにできない」
 “フェイト”が言い、闇の書を手に、そのページを開く。
『Sammlung』
「ぐぅ……あ、が、あぁぁぁっ、あああっ!?」
 仁王立ちに構えていたアリシアが、突然、胸を突き出して、苦しみだした。
 リンカーコアの光が浮かぶ。その光が闇の書に奪われ、萎縮していく。
「ほら、苦しそうだね……」
「でも、闇の書が完成しても、誰も救われない」
「こんな風に、皆をどんどん苦しませていくの」
「皆を、悲しませていくの」
 はやてを苛むかのように、2人は言葉を紡いでいく。
「主、主はやて! 奴らの言う事に耳を傾けてはいけません!」
 シグナムが声を荒げ、言う。
 はやては、蒐集され苦しみもがくアリシアを見上げ、愕然とし、ガクガクと震えている。
「闇の書は壊れちゃってるから……」
「誰かが闇の書にお願いすると、こうやって苦しむ人を増やしていくの」
「でも、それだけ」
 2人の声に、はやての顔色が、変わっていく。

330 名前:燃え上がる炎の魔法使い 11-09/12 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/12(火) 03:26:01 ID:XqKE1tLA
「ところで、はやてちゃんは」
「何を、お願いしたのかな」
「多くの人を不幸にして……」
 2人は声を揃えて、はやてを問い詰める。
「……どんなお願い、したのかな?」

 歩きたい

                                             自分の脚で

      誰にも縛られず

                                       1人は嫌

                         死にたくない

        あたしのわがまま

「主! 主はやて! 意識をしっかり持って、力に飲み込まれては────」

 シグナムの声も、もう、届かない────

 ドサッ
 意識を失ったアリシアの肢体が、はやての前に投げ出された。

『Vollendung der Sammlung』

 あたしのせい
                                           あたしのせい
          あたしのせい
                                 全部、全部──

              あたしのせい。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 はやての足元で、正三角形の頂点に円、光の魔法陣が展開し、駆動を始める。そして、
それは……黒く、正常な細胞ががん細胞に侵されるように黒ずんでいき、黒い光を放つ。
 すっ、はやての身体が、立ち上がった。
「闇の書よ、封印を解き放て」
『Ja, wohl. meister』
 はやての身体が、急速に成長するように、大きくなっていく。
 髪が伸び、しかし、その色は褪せていく。
 瞳は鮮やかな、滾る血のように赤に染まっていき、しかし、光は吸い込まれ、失われて
いく。
 甲冑とは程遠い、漆黒の衣装が、それを覆っていく。
 その姿は、もはや、はやてのものではなかった。

331 名前:燃え上がる炎の魔法使い 11-11/12 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/12(火) 03:26:58 ID:XqKE1tLA

「くぬぬぬぬっ、このっ、くっ、ぬっ」
 アリサは後ろ手に縛られた手を無理矢理動かしつつ、レイジングハートのCVK-695Dに
2発のカートリッジを、なんとかセットしていく。
 尾栓を閉じる。
「レイジング、ハート!」
『O.K. Load Cartridge』
 チュドォンッ
 外周のクリスタルゲージごと、バインドを吹き飛ばす。
「おらーっ!」
 一度空中でポーズをとった後、レイジングハートを構えなおす。
「フェイト、じっとしてて」
「うん」
『Fire slash』
 フェイトを拘束しているバインドを、切断する。
「アリシア!」
 フェイトが、真っ先に、屋上へと向かった。
 アリサは、ユーノとなのはを拘束しているクリスタルケージを射撃で破壊し、バインド
を切り刻む。
「思い出した……すべて、思い出した」
 アリシアを抱えるその人物が、膨らんでいく、“八神はやてだった”闇を見上げ、立ち尽
くしている。その目から、顎に向かって、涙が伝っている。
「夜天の書……はるかな昔に改変を加えられ、闇の書と、呪いの魔導書と呼ばれるように
なった存在……主を食い潰しながら、転生を続ける狂った魔導器……」
「シグナム……」
 フェイトがシグナムを見上げ、憂いげな顔をして、その名前を呼ぶ。
「だが、遅い。我らがそれに気付いたとき、それはいつも、遅かった。今回もまた、優し
き主を、食いつぶして……」
「あによ、ずいぶんあきらめんの早いわね〜」
 アリサが、呆れたような声を出した。
 シグナムは、反射的に、アリサを見る。
「レイジングハート、悪いけど、アンタにだけは付き合ってもらうわよ」
『Even if you complain it, Master(貴女が望まなくても)』
「ここからがアリサの、本領発揮だ」
 フェイトが、口元に笑みを浮かべながら、そう言った。
「私も行くよ。そうだよね、バルディッシュ」
『That’s right, sir』
「お前たち……」
 シグナムは、アリサとフェイトを見て、少し驚いたような目をする。
「ユーノ、アリシアを頼んでいいかしら? できれば、『アースラ』まで護衛してあげて」
「うん、解った」
 アリサに言われ、ユーノは、アリシアをシグナムから受け取り、よろけるようにして抱
きかかえる。

332 名前:燃え上がる炎の魔法使い 11-12/12 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/12(火) 03:27:26 ID:XqKE1tLA

「終わってしまった……また、全てが終わってしまった。幾つもの命と思いを食いつぶし
て、何度、こんな悲しみを繰り返せば良いのか……」
 “はやてだった”存在は、漆黒に染まる天空を見上げて、そう、静かに呟く。
「終わりになんか、させないわよ」
 足の下から、そんな声が響いてくる。
 だが、それは、アリサの言葉など意にかけないかのように、ゆっくりと顔を正面に戻し、
目を見開く。そして、開いていた両腕を頭上へ。魔力資質がなくても胸が焼けてしまいそ
うなどす黒い魔力を、頭上に集束させる。
「我は闇の書。我の全ての力は、唯、主1人の為に」
「まずい、領域破壊だ」
 アリサの僅かに下側から、フェイトが、その上側、“闇の書”と、アリサの間に割って
入る。
「アリサ、カートリッジ装填して」
 ちらっとアリサを振り返り、フェイトが言った。
「えっ? あ、うん」
 アリサは頷き、バリアジャケットの上衣のポケットを探り始める。
「1発目は、私が防ぐ」
 そう言って、フェイトはバルディッシュのCVK-792Aユニットに、新しいマガジンをセッ
トした。
『Load Cartridge』
 ドン、ドンッ
 バルディッシュが2発続けて、カートリッジを撃発させる。
「今は唯、主の為に……主を拒んだ世界に、永遠の闇を」
 巨大な黒い塊が、爆発するように、膨れ上がった。
「デアボリック・エミッション」

333 名前:燃え上がる炎の魔法使い 11-12/12 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/12(火) 03:30:15 ID:XqKE1tLA
>>320-324,>>326-332
今回は以上です。

レス番ミス。>>330は10/12です。

ヴィータv.s.フェイトと、アリサ&フェイトのコンビネーション戦を入れたかったので、半話分ほど伸びてしまいました。
申し訳ありません。
アリサさんがこの後楽しくSLZ祭りだそうなので、>>325と一緒に頭冷やされてきます。
 λ........

334 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 03:33:01 ID:H2noAzX4
>>333
乙&GJ
バカの目を覚まさせるだけの力をの部分で玄海師範がオーバーラップしてきた

335 名前:193:2008/02/12(火) 03:34:47 ID:O0iTYCfQ
>>333
も、申し訳ありません!
キチンとリロードして、書き込みが無いことを確認した筈なのに…
今回の責任は全て私にあります。
頭を冷やされるのは私だけで十分です。
本当に申し訳ありませんでした!

336 名前:タピオカ:2008/02/12(火) 05:24:03 ID:Kxy8+Ezm
失礼しますね、投下です。

・猫娘と11娘の話
・エロくも何ともない
・捏造が酷い
・時は本編少し前

337 名前:タピオカ:2008/02/12(火) 05:24:49 ID:Kxy8+Ezm
「優しい夢を見れるよう」 結の話 前編


「……というわけで、これがバルキスの定理になります。来週ドクターが用意する試験に出るらしいですからキチンと式を追えるようになっておいてくださいね。では、質問は?」

ふるふると、雁首そろえて左右に振るのはノーヴェ、ウェンディ、オットー、ディード。
プレシアの杖から、どの角度からでも正面できるホログラムで纏めた今日の授業内容を消し、よろしい、とリニスが笑顔。
リニスの部屋である。
そもそもたっぷりと広かった故にか、先生役を請け負ったリニスが戦闘訓練ではなく学問的な講義をする折にはここが通例となっていた。
他にもミーティングルームと言ったそれらしい場所もあるのだが、ナンバーズの生徒の人数的にこのような「塾」の体裁が都合いい。
加えて、たまにお泊まりなる高等な甘えをオットーとディ−ドで炸裂させるもんだから、やっぱりリニスの部屋が一番のようだ。

そう、ナンバーズは甘え始めている。
そもそも誕生より10年と経たない生命として当然ではある事だ。
もともと、ナンバーズ同士でいくつかの依存が見られる。
クアットロはドゥーエ。
セッテはトーレ。
ノーヴェはチンク。
オットーはディード。
ディードはオットー。
師事する者への敬愛もあるが、何よりも彼女らのいくらかは、実はまだ甘えたい。
スカリエッティの色が強い者たちは強い自らを持ち、稼働歴も10年を超える故、クアットロはその実際を計り知れないかもしれないが、事実ではあった。
特によりかかる相手を見いだせないナンバーズもいたりするが、その心の深層には間違いなく母性への触れ合いを期待している。
その対象に、ここでリニスが挙げられて不思議ではなかった。
オットーとディードの仲に割り込むでなく、包み込む。およそこの双子がお互い以外に見出した、心を委ねられる相手はリニスが始めてだった。
生まれてそう経っていない事も得に関係し、オットーとディードが一番懐いているらしい。
そして、同じく最後発組のセッテのみが、やはりリニスを避けていた。それを、トーレが残念そうにしている。

「さて、それでは戦闘訓練と行きましょう」

リニスたちが部屋を後にすれば、訓練スペースはそう遠くない。
戦闘訓練でも、この性質はいい方向に転んだ。
ほとんどの場合、コーチという者は憎まれるほど苛烈な訓練を課した方がいい。どんな者がしても過酷な課題を出すのではなく、訓練者一人一人にあった過酷さの適量を見抜く眼もいる。
リニスは割と鬼コーチだ。ひとまず、担当したナンバーズらに自らの限界を見せるまでは追い詰めてる。
セインをして『ドクターが女の二面性がどうたらって言ってたけど、良く分かったよ』と呟くほどだった。

ここで、つながりある者たちの師弟関係であれば憎まれるほどの訓練でも温もりがある。
そして、リニスの訓練にナンバーズたちは温もりを確かに感じていた。
スカリエッティとして、とても良い拾い者をしたと思っていた。憎まれ役と、好かれ役は多くの組織で分かれている。
トーレの場合、憎まれるといかずとも恐れられてはいた。憎まれ役のする事が出来る好かれ役は、稀有なのだ。

「もう講義は終わったのか」

訓練スペースにはトーレ指揮の下にセイン、セッテ、ディエチがすでにいた。
中空にトーレとセッテ、地上でセインとディエチといった顔だ。セッテはトーレに随分揉まれたか、息が上がっている。

「はい、みんな優秀ですから」
「何よりだ………………………………本当か?」
「なんでこっち見るんスか?!」
「ウェンディも優秀ですよ、チンクから教えを受けていますから、こちらとしてもとても教えやすい」
「ほぉ? 教える者は、教えにくい生徒の方が可愛いと聞いたが」
「それは違います。生徒は全員、可愛いものです」
「そう言うものか?」
「そう言うものです」
「………分かる気がする」

338 名前:タピオカ:2008/02/12(火) 05:25:46 ID:Kxy8+Ezm
神妙につぶやくトーレ。この無骨者も、リニスが来てからこんな表情が多くなった。
セッテにもっと、自分以外に意識が向いて欲しいと思いながら、その実トーレ自身もいろいろな事に意識が向いているようだ。

セッテ、トーレと同じくディードも空へ。
ノーヴェはセインと、オットーはディエチと。
そして、ウェンディは、

「さて、それじゃあ今日も飛びましょうか」

リニスと。

「オスッ!」

ライディングボードを片手で支え、もう片方の手で敬礼。
即座、ふわりと自分で浮力を得るボードへとウェンディが飛び乗った。
一度だけぐらつく足元。スカリエッティ作である、それだけで後は安定する。
だが、

恐い。

その想いを飲み込んで、凛々しく前を向く。
魂をわしづかむ恐怖を、呼気とともに吐き出すイメージ。
一拍、呼吸が止まる。
スタート。
直進。
速度は伸びていき、高度が徐々に増していく。
安定したボードの上、じわじわと不安が鎌首をもたげてくるころ合い、

「ウェンディ」

すぐ後ろから、囁き。
リニス。
ともに、空。同一の速度。ぴたりと張り付くように、リニスがいる。

「うん、大丈夫……大丈夫っス」

不安と恐怖がないまぜになる裡に、それを上回る頼もしいリニスの気配。
飛べる。
飛んでいる。
速度と共に狭まるはずの視界は広く明瞭になっていき、神経が刃物じみて鋭くなっていく。
大丈夫だ。
今、自分は楽しい。

自然、頬が緩んでいく。
まだ、恐い。確かに、恐怖と落下にすくむ心がある。
しかし、ただ背中に感じるリニスの視線。それだけで、今、かつて以上に空が快感となる。
理由はただ二つ。
背を預けられるほどのリニスへの信頼。誰かと一緒に空を飛ぶ楽しさ。

軌道で螺旋を描き、調子にのらない! と怒鳴られるリニスの声さえも、今は楽しかった。



339 名前:タピオカ:2008/02/12(火) 05:26:12 ID:Kxy8+Ezm
実際に飛翔訓練を終えてウェンディが大きく息を吐いた。
アトラクションを乗り終えた気分のように見えるし、例えば他人に迷惑をかけてまで自分が悦楽を享受している事への申し訳なさにも見える。

「まだ恐いの、残っていますか?」
「そう言うわけじゃ、ないっス。リニスと一緒に飛んでる時、すごく楽しい」

真実として、ウェンディはそう思う。
では、リニスは?
そんな疑問を、絶対に口にしない。ウェンディには、春の陽気のような笑顔を崩さないリニスの心底が、良く分かっているから。

「あんな風に飛べるようになったの、リニスのおかげっス……ありがとう」
「お礼を言う相手、違いますよ」
「? どうしてっスか?」
「普通に墜落してメンタル面でまいった人は、ここまで簡単にまた飛べるようになりません」
「あはは、あたしら戦闘機人っ 「ウェンディ!!」

トーレが、ノーヴェが、セッテが、セインが、オットーが、ディードが、そしてディエチが一斉にリニスへ視線を。
明らかな怒気を含んだリニスの大声は、初めて耳にする。
そんな他の全員の視線も気にせず、リニスは怒りではなく悲しみたたえた瞳でウェンディを見つめる。
眼はそらさなかったウェンディだが、うなだれた。

「ごめんなさい……」
「いえ、こちらこそすみません。ただの自己満足に、大きな声を出してしまいました」

ウェンディとしても冗談だった。それでも、個人個人にタブーはある。
リニスのタブーは、人とそうではないモノの境界。その境界を噛み砕いてでも生まれた命は、精神は、人格は等しく愛すべきもの。
きっと最初はプレシアへの反感。そして最後はフェイトへの愛情。

「ううん、そうやって扱われるの、あったかくってあたし嬉しいっス」
「………」

えへへ、と笑うウェンディに、むしろ嬉しそうなのはリニスの方だった。

「それで、なんであたしはこんな風に飛べるようになったんスか?」
「トーレがいたからです」
「??」
「実際に落ちたけど支えられたのでしょう?」
「そうっス」
「だからウェンディは完全に墜落して心身共に折れていたわけではありません。ちょっとした安心で、立ち直れるぐらい心の強さは残っていたんですよ。虚数空間から戻ってきた後も、恐かったけども、空を飛べなくなっていたわけではなかったのでしょう?」
「………わかったっス」

340 名前:タピオカ:2008/02/12(火) 05:27:27 ID:Kxy8+Ezm
真剣そうに聞き入っていたウェンディが、一つ頷く。
そして、地上でセッテにいくらか助言と指示を交えていたトーレに、ふらふらとことこ歩み寄れば、抱きついた。
あまつさえ、トーレの胸に顔をうずめて頬ずりまでする始末。

「大好きっス」
「はぁ!?」
「トーレ姉、大好きっス!」

訳も分からず妹の奇行に、トーレが眉間にしわ寄せていれば、その様子をじっと見つめていたセッテも抱きついてきた。

「……私もです」
「あ、じゃあ、あたしもあたしも!」

セインも混じった。
結局、トーレのゲンコツがウェンディとセインに落ちて振りほどかれる。
セッテにはなぜゲンコツしないの!? と抗議するウェンディとセインを眺めて、ディエチがクスリと零した。

「ウェンディ! そろそろ次の訓練です!」
「オスッ!」

キリリと、眉を吊り上げて、リニスの下に戻ってくる。

「またフォトンランサーっスね」
「そうです。そろそろ弾速を上げちゃいましょう。しっかり避けてくださいね」
「オスッ!」



リニスと一緒に飛んでる時、すごく楽しい。
真実として、ウェンディはそう思う。
では、リニスは?

「楽しいわけが、ないっス!!」

まるで痛みをこらえるようにウェンディが叫んだ。
もう、誰もいない訓練スペース。
あの多人数の訓練の後、ただ一人ウェンディだけが残っていた。
秘密の特訓と言うやつだ。普段のウェンディならば、秘密なぞと言う響きに「格好いいっス」とニヤニヤするだろうが、今は違う。
切羽詰まった様子はリニスと共に飛んでいる時と、かけ離れたもの。

「飛翔魔法に電撃属性の高速直射弾……」

リニスの心を蝕むものの正体を、ウェンディは詳しく知らない。
だが、感じる。
訓練中におけるリニスの笑顔の裏にある苦しみが。

だから、自分は一人で飛べるようにならなければならない。
リニスに負担をかけたくない。
リニスが見上げているだけでいいような飛翔をしなければ。

「やってやるぜっス!!」

341 名前:タピオカ:2008/02/12(火) 05:28:06 ID:Kxy8+Ezm
ウェンディがボードの上に立てば、一度だけぐらついた。
不安。
恐怖。
その負の感情を握り潰すつもりで、拳に力を込めて自らを鼓舞する。
答えるように、ボードが走り出した。
自分が後方に置き去りにされる感覚も、今では恐怖を励起する一要因だが踏ん張りを利かせてしっかり前を見る。
速度と高度の上昇。
寒い気持ちを溶かすため、自分で自分を熱くさせる。
風を切る感覚。
空気の圧力。

「一人でも、大丈夫っス……あたしは……」

言い聞かせるのは、少しずつ心の隙間に染み込む怯えを振り払うため。
風の鳴る音に混じって、リニスの歌が聞こえてくる気がした。
速度はこのボードにおける巡航速度。
ターン。
大きく体を使う。恐ろしくないわけがなかった。今、後ろに誰もいない。
いなくても自分は一人で、大丈夫だ。絶対に。
もっと、もっと速く。
鋭く降下しながら、スピードを追加。
この降下の感触に、またあの歌声が強くなる。

「リニスの歌は、もっと上手っス!!」

グングン速度の出る中、急転回。方向は、上。鳥肌が立つ。自分はここで、落ちた。
プレシアの杖を掴んだ時と同じタイミング。違う。あの時はもっと速かった。
上昇し、再び潜った。もっと、もっと速かった。
少しずつ、心に恐れの色がさし込まれてくる。澄みきっていく視界。興奮していく体。
リニスとの飛翔を経てもはや飛ぶ楽しさを取り戻したウェンディに、ここで恐怖と快感のないまぜになった意味不明の感情が溢れた。

「やれる……」

克服できる。
速度はやはり虚数空間に及ばなかったが、タイミングは墜落した時のターンとほぼ同格。
降下角度90度近く変える。歌の幻聴はひときわ強くなった気がする。
体がすくんだ。奇妙に崩れるバランス。まるで手を引かれるように、落ちてしまいそうな感覚。

「やってやるっス!!」

気力は全開。
無茶で無理な体重移動。それは悪あがきでも何でもない、ボードから振り落とされない為に間違いなく必要な動作たち。
ウェンディの頭ではすでにそのシュミレートは完璧だ。体も動く。すり足でボード滑り、腰は深く、大きく上半身を動か。
ただ、時間だけが足りなかっただけ。
落下の感覚。
落ちる。
また、落ちる。
だから、どうした。

「できる……やれるっス……あたし」

地面に激突する直前、練習さえ繰り返せば恐怖を克服できる手ごたえに、ウェンディは不敵に笑った。
誕生から今まで自分の興味と楽しみだけに飛翔していたウェンディは、他人のための飛翔に喜びを覚えた。

幻聴の歌を耳にしながら、強烈に体が叩きつけられる痛みの中で意識を失った。



342 名前:タピオカ:2008/02/12(火) 05:29:29 ID:Kxy8+Ezm
あ、歌。
歌が聞こえる。
またか。
昨日眠ってる時にも、聞こえてきたな。それで、そうだ、落ちた時の事を思い出すんだ。
これ、夢?
そうだ、夢だ。
落ちた時の、夢。
この歌が聞こえたからあたし、虚数空間を潜ってみたのに。
恐かったな……
うん、恐かった。
今はもう、大丈夫。
あたしはもう、大丈夫だ。
だから、次はリニス……あれ?
これ、夢?
気持ちいい……頭?

「あれ……?」
「おはようございます」

目を開けば、覗きこむリニスの顔。
気を失っていたウェンディの頭は、正座するリニスの太もも。太ももだけども、所謂「膝枕」だ。

「おはよう……」
「一人で飛んだのですね?」
「うん……」
「無茶をしないでください。まだ完全に心が戻ったわけではないのでしょう? 大丈夫ですか?」
「うん……でも、大丈夫っス」

頑丈にできてはいるが、やはり痛みはあった。
高度こそあまりなかったが、速度はかなりのものだったのだ。
そんなきしむ体を丸まめて、ほっぺたをリニスの太ももにひっつける。さながら必殺技でも完成したかのような嬉しさの中で、ウェンディは断言。

「もう、あたしは大丈夫っス」
「……そう、ですか」

ほんの少しだけ、リニスが淋しそう。しかし、穏やかなその顔には嬉しそうな微笑があった。

「リニス、歌ってくれてたんスか?」
「え、は!? あ………す、すみません、口ずさんでいたようです」
「もう、大丈夫。リニスの歌……もっと聞きたいっス」
「本当ですか? 嫌な事、思い出さないですか?」
「うん……もう、大丈夫っス、大丈夫……ちょっと、眠っちゃうかもしれないっスけど」

心地よさげに、ウェンディがまた瞼を閉じていく。
母に抱かれて安心するかのように。
そっと、ウェンディの髪を撫でて、リニスは軽く頷いた。

「分かりました、ゆっくりお休みなさい」

ゆったりとした声。ぬくもりに満ちた声。リニスが穏やかに歌う。

「優しい夢を見れるよう」

それから、ウェンディは幻の歌に惑わされる事はなくなった。






343 名前:タピオカ:2008/02/12(火) 05:34:15 ID:Kxy8+Ezm
終わりです。
とみに、エリオの傑作や炎の戦闘物が読者方に叩きつけられてる中で、「あぁ、俺は必要ないわ」と思わざるを得ませんが、始めたタイングが悪かった。もうちょい、熱気の少ない時期にこの話を思いつきたかった、と腕の悪さを流行が悪い風に言いましょう。

もっとオットー、ディード、ディエチの掘り下げとかをしたがいいのでしょうが、ちょいと11がメインのつもりなのでここでは地の文だけです。
やっぱり腕も頭も足りないわ。

再見。

344 名前:タピオカ:2008/02/12(火) 05:35:44 ID:Kxy8+Ezm
そして、ハイ、また間違えました。
「優しい夢を見れるよう」 結の話 前編
ではなく
「優しい夢を見れるよう」 転の話 前編
です。
またミスか……orz

345 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 06:12:38 ID:TYClSnM1
>>343
何をおっしゃるウサギさん
あなたも実力派定番職人の地位をしっかりと築いてるじゃないですか
やってることだって成長モノで他のSSとは一線を画してるし、毎回続きがすごく楽しみです
GJでした

346 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 09:51:29 ID:BUGdXN+r
>>243
GJ!!
エリルーいいよエリルー!
そして管理局メンバー全員登場!
今回も燃えさせていただきました。

>>306
GJ!!
エリオキター!!!!!
何だかこれまた燃える展開になりそうな気がびんびんしますよ。
続きが非常に楽しみです!

347 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 10:06:52 ID:0xe5gIQp
>>309
やっぱとらハ知ってる人ってこのスレでも少ないのかな
尊ぶべき愚者のヒドゥンやLittle Lancerの月村雫とかが出てきた時にキタ━━━(・∀・)━━━!!ってなった俺は少数派だったのだろうか

348 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 11:42:11 ID:kTHkKS/a
ベルカ式射抜きの再来?

ワクテカ

349 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 13:18:07 ID:RZTvBLMr
今更かもしれんが、prayの2番の歌詞聞いてたら、B・A氏の「Ritter von Lutecia」がなんとなく思い浮かんだ


350 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 14:24:50 ID:TyTSKBuL
>>333
シグナムが生き残ってる…
どんな活躍を見せるのか楽しみです

351 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 14:40:09 ID:7BC1/EYC
>>343
俺は氏の作品好きですよ
日の当たらない脇役メインの話は面白いですしw
ウェンディかわいいよウェンディ


まぁ俺が天の邪鬼な脇役スキーなせいもあるんですがw

352 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 16:11:31 ID:dqqiaP4y
なんというスレの消費速度。このスレは間違いなく一週間どころか四日と持たない…

353 名前: ◆6BmcNJgox2 :2008/02/12(火) 16:29:17 ID:6MG5wQ2x
以前予告した奴を批判上等の覚悟でやらしていただきますorz

・まさかのユーノ×フェイトになって、ショックでなのはが病んで(?)とんでも無い事を仕出かす。
・でもniceboatな血生臭い展開は無いから安心してちょりん
・前述した通り病んだ(?)なのははちょっとおかしくなってます
・鬱的要素もありってだけで決して全編鬱ではありません
・エロ(逆レイプ)
・オリキャラ登場 と言うか後半はほぼオリキャラがメイン

354 名前:なのはなりの復讐 1 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/12(火) 16:29:59 ID:6MG5wQ2x
「え…嘘でしょ…。」
その事を本人達の口から聞かされたなのはは苦笑いするしか無かった。
「冗談でしょ? ねぇ…悪い冗談なんでしょ?」
なのはは苦笑いしながら正面に立っていたユーノとフェイトへ問い掛ける。
しかし…二人の顔は真剣だった。
「ごめんなのは…これは事実なんだ。」
「ごめん…本当にごめん…。」
ユーノとフェイトはなのはに対して申し訳無いと言わんばかりの顔で何度も謝る。
今は謝る以外の事が思い浮かばなかったのだ。

事の発端は、ある日突然ユーノとフェイトが結婚すると言う事をなのはが
二人から告白された事にあった。実はなのはの知らない所で二人は長い間
付き合っていたのだと言う。二人としてもそれが申し訳無くて何度も
謝っていたのだが…なのはには信じられなかった。

なのははユーノの事が好きだった。しかし…表沙汰にユーノの事が好きだと
言うのが恥かしくて…今までずっと『友達』と言う事にしていた。
それがいけなかったのかもしれない。ずっと『友達』と言う事にしていた為に…
ユーノにその気持ちが伝わる事は無く…フェイトに先を越されてしまった。
そしてユーノ自身もまた…なのはより…フェイトを選んだのだ。
これでもしもミッドチルダで重婚が認められているならば…なのはも加えて…
と言う事もアリだったかもしれないが…実際そんな事は有り得ない。
「そんな…そんな…ユーノ君……フェイトちゃん…。」
「ごめんなのは…。」
「ごめん…本当にごめん…。」

「う…うあぁぁ…う…う…ユーノ君…フェイトちゃんと…そんな…ぁぁぁ…。」
ユーノとフェイトが去った後…なのはは自分の部屋で泣き崩れる事しか出来なかった。
「私もユーノ君の事…好きだったのに…好きだったのに…うああぁぁ…。」
なのはは悔しかった。フェイトにユーノを取られた事以上に……
表立ってユーノの事を好きだと言う事が出来なかった自分自身が……。
自分に勇気があれば…表立ってユーノの事を好きだと言える勇気があれば…
この様な事にはならず…ユーノと結婚していたのはなのは自身だったのかもしれない。
しかしもう遅い。ユーノはフェイトと結婚し…共に生きる道を選んだ。
これからもユーノはなのはと接してはくれそうだが…それはあくまでも『友達』として。
なのはの求める様な事は絶対に有り得ない…。それがなのはには悔しくて悔しくて仕方が無かった。

355 名前:なのはなりの復讐 2 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/12(火) 16:30:36 ID:6MG5wQ2x
翌日からなのはは仕事を何日も無断欠勤する様になった。
当然ユーノとフェイトの結婚式にも…なのはの姿は無い。
「なのはがいない事…やっぱり心配?」
「え…あ…その…。」
普段来ている黒めの服とは正反対に真っ白なウェディングドレスに身を包む
フェイトに訪ねられ、ユーノは慌てたがフェイトは笑いながらさらに言った。
「気にしないで、私もなのはの事心配してるから。」
「フェイト…。」
そしてフェイトは少し寂しげな顔になる。
「なのはは周囲の新しい変化に戸惑っているだけ…だから私は信じている。
なのはが自分の力でそれを克服して…新たな幸せを見付けてくれる事を…。」
「うん…。」
一度悲しい境遇から幸せを見付ける事が出来たフェイトだから言える言葉。
「それに…なのはなら他にも良い相手は絶対に見付かるよ。」
なのはには申し訳無いが…あえて厳しくする事によって自発的な
問題解決の道への模索を促す為にユーノとフェイトはなのはの事を考えるのはやめた。
逆に今二人がなのはへ何かしてしまえば…かえってなのはの心を傷付けてしまうかもしれないから…

その後、ユーノとフェイトは互いの思い出を振り返りながら初夜を過ごしたり…
新婚旅行を楽しんだりと甘い日々を過ごした。

ユーノとフェイトが結婚して数週間の時が流れた。そうなってもなお
なのはは管理局に姿を見せてはいないらしい。こうなると流石に心配したくなるが…
だからと言ってユーノとフェイトに何が出来よう。何かすれば逆になのはの
心の傷に塩を塗り込むだけなのかもしれない。だからこそ…心配しながらも
なのはの自発的な回復を祈って…二人は何もする事は無かった。

その日の晩…ユーノは一人自室のベッドにいた。妻であるフェイトは執務官の仕事として
遠くに出張し、数日は帰って来ない。結婚したとは言え…この調子だと
子供はまだ先かな? とユーノは内心思いながらゆっくりと眠りに付いた…が…

「ん…ん…。」
ユーノは夜中に突然目を覚ました。とても寝苦しい。まるで何かが
自分の上に乗っているかの様な重みを感じていたのだが…そこでユーノは気付いた。
「あ!」
「こんばんわぁ…ユーノ君…。」
「な…なのは…。」
何と言う事であろうか、なんとユーノの上になのはが乗りかかっているのだ。
しかも予めバインドがされており、ユーノは身動きが取れない。
当然ユーノは戸惑うが…なのはは嬉しそうな優しい笑みを浮かべていた。

356 名前:なのはなりの復讐 3 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/12(火) 16:31:16 ID:6MG5wQ2x
「な…なのは…こんな夜中に忍び込んで…一体何をするんだ…?」
「さぁ何でしょう?」
ユーノが焦り顔で訪ねるが…なのはは優しい微笑を向けるのみ。
しかし…その優しい微笑が…逆に恐ろしい何かを感じさせるのだ。
こうしてユーノに夜這いをかけ…しかも動けなくしているのは絶対に何かある。
なのはの目的は一体何だと言うのか…
「なのは…何故こんな事をするんだ…。一体何が目的なんだ…。」
「目的? それはね…。」
なのははまたもニッコリと優しい微笑を見せた。だが…それが逆にユーノを青ざめさせる。
「復讐…かな…。」
「復讐!?」
ユーノに悪寒が走った。その上なのははなおもにこやかな微笑みで…かつ
明るい口調なのだ。それが逆に恐ろしさを倍増させているのである。
そして…なのははユーノの首にゆっくりと手をかけた。
「私もね…ユーノ君の事…好きだったんだ。愛してたんだよ。最初は友達としか
思ってなかったけど…何時の頃か…ユーノ君の事…好きになってたんだ。なのに…
よくも私を捨てて…あの女と一緒になってくれたね…許せないよ…。
私はね…ユーノ君が考えている程良い子じゃないんだよ……。私だって怒る時は
怒るんだよ……。私を捨てた報いは………受けてもらうよ……ユーノ君………。」
「う! やめ! なのは! 落ちつ…。」
ユーノは焦った。なのはがやろうとしている事は分かる。ユーノがフェイトと
結婚した事を逆恨みして…こうしてユーノを殺しに来たのだろう。
フェイトの事を『あの女』呼ばわりした点がまさにその証拠であるし…
今だってユーノの首に手をかけている。とするならばこの後やる事は間違い無く
その手でユーノの首を締め上げる。それ以外に有り得ない。しかし…なのはは
そうせずに…逆に手を離してしまった。
「な〜んてね! 自分で言うのもなんだけど…心優しい私はユーノ君の
首を絞めるなんて…そんな酷い事するワケ無いじゃない。
もっとも…あの女が今の私の立場なら絶対にやってたと思うけどね〜!」
「な…のは…。」
その時のなのはの表情…一見すると先程同様に微笑んでいる様に見えるが…
奥底には冷たさを感じる。そしてまたもフェイトの事を『あの女』呼ばわりした事。
間違い無い。一見なのはは優しく、明るく振舞って見せてはいるが…
心の奥底では凄まじい程にまでの憎悪を隠し持っているに違いない。
「だから安心して、ユーノ君が思う存分あの女と愛し合っても私は構わないよ。
子供だって…沢山…沢山産ませてあげてよ。」

357 名前:なのはなりの復讐 4 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/12(火) 16:31:51 ID:6MG5wQ2x
なのははなおも微笑み…明るく言う。しかしその奥に隠された憎悪は変わらない。
一体何が狙いなのか…ユーノは額から汗を垂らしながら…黙り込むしか無かったが…
「でもねでもね、私の目的が復讐って言うのは本当だよ。ただ…そのやり方が違うってだけで…。」
「え? ああ!」
なのはは突然ユーノのズボンを脱がし始め、ついにはパンツにまで
手を伸ばし…股間のモノを露としていた。そしてモノに手を添えて…優しく持ち上げる。
「うわぁ〜…大きくて立派なオチンチン! 凄いねユーノ君!
これじゃああの女もユーノ君にゾッコンになっちゃうのも仕方ないよね!」
なのははユーノのモノを見て喜ぶ。やはり明るく振舞っているが…ユーノには…
『本当ならこれは私の物になるはずだったのに…許せない…。』
その様な声が聞こえて来る様で………恐ろしかった……
「もうあの女とはエッチした? でもまあそれは当然だよね。ユーノ君が
あの女の旦那様になってもう何週間にもなるんだものね。ユーノ君のオチンチン凄いし、
あの女もビッチだからもうエッチな声で喘いでたりしたんだろうねぇ。」
ユーノにはなのはの言葉が嫌味にしか聞こえない。フェイトの事をなおも『あの女』呼ばわりで
あるし…今度は『ビッチ』とまで言い張った。明るい口調でこの様な事を言う位なら
素直に怒って欲しい。怒って…どうして私じゃないの!? とでも叫んで欲しい。
その方がまだいくらか気が楽だ………ユーノはそう思った。
しかし、その間にもなのははユーノのモノを興味深く撫でたり揉んだりしており…
ユーノ自身もバインドによって身動きが取れない。ついにはなのはの手が睾丸に
優しく添えられ…揉み解され………ユーノも勃起してしまうしか無かった……
「うわぁ! 勃起したらますます大きくなっちゃった! それにカチコチに硬いし…
やっぱりユーノ君のオチンチンは凄いや! 何かもうこんなオチンチン挿入されたら
危険日安全日とか関係無く一発で妊娠させられちゃいそうだよね!」
なのはは嬉しそうにユーノの勃起して硬くなったモノを指でつんつんと突付く。
「あの女はこんな凄いオチンチンを何度もオマ○コに挿れられたんだよね。
あ、別に答えなくても良いよ。私は分かってるから。今のユーノ君は
あの女の旦那様だもんね。二人は結婚したんだもんね。私みたいな負け犬が
何を言った所で…それは覆らないもんね。だから気にしないで。
負け犬は負け犬らしく退くから。ユーノ君も思う存分…その大きくて立派なオチンチンで
あの女を…愛して愛して…子供も沢山…沢山産ませてあげてよ。」
その時のなのはの発言…一見ユーノとフェイトの仲を認めて祝福している様にも聞こえるが…
同時に嫌味も見え隠れし…半ば自虐のようでさえもあった。
「でも………ユーノ君には私を捨てたリスクって言うのを背負ってもらうよ。」
「リスク? ってああ!」
なのはは勃起したユーノのモノを摘み上げ…何と己の股間へ押し込んだ。

358 名前:なのはなりの復讐 5 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/12(火) 16:32:47 ID:6MG5wQ2x
「あ! あああぁぁぁ…す…凄いよぉ…。ユーノ君のオチンチン凄いよぉ〜…。」
「うわ! やめろ! やめるんだなのはぁぁ!」
ユーノのモノを己の股間へ押し込んだ瞬間、なのははまるで天にも昇る気分になった
かの様に頬を赤くし…顔を天井へ上げていた。そしてユーノは必死に抵抗するが…
やはりバインドによって身動きが取れない。
「ユーノ君…私も…産むよ…。ユーノ君の子供…産むよ…。」
「え? ええ!?」
なのはの発言にユーノはまたも青ざめた。そして彼の脳裏にはある光景が浮かぶ。
それはなのはが自分もユーノの子を身篭っていると世間に公表し……
『無限書庫司書長が不倫。相手は時空管理局教導官』
と、スキャンダルとなり世間に叩かれた挙句…合法的に破滅させられてしまうと言う光景。
そんな事になれば………ユーノは間違い無く終わりだ………しかし……
「大丈夫だよユーノ君。多分ユーノ君が考えている様な事にはならないから。」
「え…。」
笑いながら言うなのはにユーノも首を傾げるが…なのははなおも明るく振舞い言う。
「さっきも言ったよね。ユーノ君は安心してあの女と愛し合って良いって……
子供も沢山沢山産んであげてって………。」
「……………。」
ユーノは黙ったままなのはの顔を見つめ、なのははこう続けた。
「むしろユーノ君にはそうしてもらわなきゃ困るんだよ。何故私もユーノ君の
子供を産む気になったかって分かる? 少なくともユーノ君が考えてる事とは違うよ。」
なのはは腰を動かし始めながらなおも続ける。
「勿論私個人がユーノ君を愛していると言うのもあるよ。例えシングルマザーになっても…
ユーノ君の子供を産んであげたい。そう言う感情もあるよ。でも…もう一つ目的があるんだ。
それが最初に言った復讐に掛かってくるんだよ。」
「い…一体…ど…どうやって復讐をするって言うんだ……。」
ユーノは恐る恐るそう質問する。どっちにしてもなのはは何かしらの手を使って
復習をする事に変わり無い。ならば…せめてどの様な手段で来るのか位知っておきたかった。
「ユーノ君と…あの女に思い知らせてやろうかな…って思ってね………。
同じユーノ君の子供でも………あの女が産み落としたクソガキなんかより………
この私…高町なのはが愛するユーノ君の為にお腹を痛めて…身を削って産んだ子供の方が…
ずっと…ずぅ〜っと素晴らしくて…優秀だって事をねぇ…。」
「!!」
ユーノはやっと理解した。なのはが言っていた復讐の意味を………。
正式にユーノと結婚したフェイト同様になのはもユーノの子を産み…
その子の方がフェイトの産んだ子より優秀だと言う所を見せ付け…
真にユーノの妻となるべき女性なのはなのはなのだと思い知らさせる事なのだろう。

359 名前:なのはなりの復讐 6 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/12(火) 16:33:33 ID:6MG5wQ2x
「例え子供を産む機械って呼ばれたって構わないよ。子供を産む機械らしく…
私の子宮でユーノ君の子供を育てて……産んであげる。でもその為には
ユーノ君のお精子が必要だよね? だから頂戴? ユーノ君のお精子…沢山頂戴?」
なのはは笑みを浮かべながらさらに腰を激しく動かし始めた。
ユーノのモノと、それを包み込むなのはの膣が激しくこすれ合い…抜いては挿される。
それが何度も繰り返されるのだ。
「うわぁ! やめろ! やめてくれなのはぁぁぁ!」
「や〜だ! 私もユーノ君の子供産むんだも〜ん!」
ユーノが止めるように言っても…なのはは止めない。むしろ笑っている。
なのはは狂っていた。ユーノを愛し…フェイトを憎む余り………
この様な行動に走ってしまったのだろう。もはや狂っているとしか思えない。
「アハ! アハハハ! アハハハハハハハハ!! ユーノ君のお精子! ユーノ君のおせいしぃ!
ユーノ君のお精子沢山搾り取ってあげる! そして産むんだ! この世の誰にも負けない…
世界一素晴らしい……子供を…私が産んであげるんだぁ〜!」
「うわぁぁぁぁ!! やめろ! やめろ! やめてくれぇぇぇぇ!!」
「アハハハハハハ! やぁ〜だ!」
ユーノの悲痛の叫びと哀願も空しく…なのはは笑いながら腰を激しく動かして行った。
そしてユーノは精を徹底的にまで搾り取られた…………。

なのはに精を搾り取られる内に途中で気を失ってしまったのだろう…目を覚ますと
窓から朝日が差し込んでいた。しかしなのはの姿はいない。目的を果たして帰ったのだろう。
だが…疲れを残しながらも何とか無限書庫に出勤した後でユーノはある事実を聞かされる。
それはなのはが朝一番で管理局に辞表を提出し…何処へと立ち去ったと言う事だ。
無論その事実は忽ち皆で騒ぎとなった。管理局の誇るエース・オブ・エースの突然の退職。
なまじ名が広く通っているだけに…皆のショックは大きかった。しかも97管理外世界にある
海鳴の実家にも帰っていないと言うのである。ではなのはは何処へ行ってしまったのか…。
「まさか…これも………。」
ユーノは恐れた。なのはが管理局を辞めて…何処へ失踪した事も、彼女が言った復讐の為なのではと…
あえてユーノとフェイトの目の届かない遠くへ行き、二人に安心して子供を作らせ…育てさせる。
その後でなのは自身もまた何処かでユーノの子供を産み…育て…その子を持って復讐を成す。
それがなのはの目的なのではないかと……ユーノはそう考えるしか無かった。
「そんな…そんな…なのは…復讐なんて…寂しい事…やめて欲しい………。」
自分は取り返しの付かない事をしてしまったのだとユーノは自覚し…頭を抱えた。
しかし何をやっても全てはもう遅い。今やユーノはフェイトの夫なのだ。
願わくは……時の流れがなのはの心の傷を癒し……新たな幸せを掴んで欲しい……
今のユーノにはそう願うしか無かった。

360 名前:なのはなりの復讐 7 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/12(火) 16:34:16 ID:6MG5wQ2x
が…時の流れとは残酷なのか…日に日になのはの事を思い出す事が少なくなって行った。
皆もまた最初の頃はなのはの行方不明にショックを受けていたのだが…
次第に最初の様な元の生活へと戻って行った。人とはそういう物なのかもしれない。

そしてあっという間に十数年の時が流れた…
桜咲く春真っ盛り。今日は時空管理局士官学校の入学式だ。
故に次代を担う若者達が続々と集まっていたのだが…その中に一人の少女の姿があった。
彼女の名は『ユイト=スクライア』その名の通りユーノとフェイトの間に生まれた娘だ。
母親の少女時代を思わせる長い金髪に、父親のそれを思わせる緑色の瞳を持った可愛らしい娘。
彼女もまた父と母の影響か…管理局へ入る道を選んでいたのである。
「私も父さんと母さんみたいに立派になれるか分からないけど…頑張る…。」
ユイトは静かに…しかし内には情熱を秘めて管理局士官学校へ臨んだ。

入学式も終わり、各新入生達は士官学校にいる際の宿泊に使われる寮へと入る。
そこでユイトは運命の出会いを果たす事になるのである。
それは相部屋である寮の部屋にユイトと共に生活する事になった一人の少女。
茶色い髪と緑の瞳を持ち…首には紐にかけられた赤い宝石を下げたユイトとは
また違った意味での可愛らしさを持った娘…。
「私はユイト=スクライア。これから一緒に頑張ろう?」
ユイトは軽く自己紹介し、相手の少女に握手をするべく手を差し出すが…
「スクライア…そっか…貴女が…。」
「どうしたの?」
「い…いや…何でもないよ。私の名前はゆのは…高町ゆのは。よろしくねユイトちゃん。」
「こちらこそ…ゆのは。」
ゆのはと名乗った少女は笑顔でユイトの握手に応じる。しかし…その内には何処か冷たさが秘められていた。

翌日から士官学校の厳しい訓練が始まり…一週間後のささやかな休日。
ユイトは久し振りに父親が勤務している無限書庫へとやって来た。
その時は彼女の父親であるユーノもまた丁度休み時間を取っている最終であった。
「お父さ…いやユーノ=スクライア無限書庫司書長…。」
「ハハハ…今は休み時間だからそんな堅苦しくしなくて普通に父さんで構わないよ。」
今は管理局士官学校生なのだからとユイトも緊張した面持ちで敬礼をし、階級で父を
呼んでいたのであるが…肝心のユーノはその堅苦しさに苦笑いしていた。
「それより…士官学校の方はどうかな?」
「やっぱり毎日の訓練はキツイよ。でも…とてもやりがいもあって楽しい。」
「そっか…。」
ユイトが管理局士官学校に入ると言い出した時はユーノも心配したが…とりあえずは
大丈夫そうでユーノも安心した。

361 名前:なのはなりの復讐 8 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/12(火) 16:38:58 ID:6MG5wQ2x
「それに仲の良い友達も出来たんだ。」
「へぇ…どんな子なのかな?」
そこでユイトが携帯電話に保存したと思われるその友達の写真を見せた。
それは紛れも無く彼女が共に寮で生活する事になったゆのはの物である。
「高町ゆのはって言う名前でね…。」
「あ…この子は…。」
ゆのはの写真を見た瞬間…ユーノは凍り付いた。そして一度は失われていたかつての記憶が蘇る。
「(間違い無い…このゆのはと言う子はなのはの子だ…。なのはは復讐を諦めなかったんだ…。)」
ユイトが紹介した高町ゆのはと言う少女。瞳の色は違うが…紛れも無く昔の…
まだ子供だった頃のなのはそっくりだ。間違い無い。この子はあの時なのはが
ユーノに夜這いを掛けた後で逆レイプして産んだ子供。なのはは十数年の時の流れを
経てもなお心の傷を癒す事無く…ユーノの血を引く我が娘を復讐の為に送り込んで来たのだ。
今のユーノはそう悟るしか無かった…。
「どうしたの? 父さん。」
「いや…何でもないよ。」
ユイトに問われてユーノも少々慌てながらも平静を装うが…彼は考えていた。
「(もし彼女の目的が復讐だとするならば………。)」
そして直後に…ある光景が浮かぶ。それはゆのはがユイトを血祭りに上げる光景…。しかし…
「ゆのはってね、凄く良い人なんだ。」
「え?」
「実はこの間の休み時間の時にも……。」

数日前の昼休み中、ユイトは他の生徒に絡まれた事があった。
「お前の親って両方とも凄いんだって? 羨ましいよなぁ。おかげで苦労なんて無いだろう。」
両親が立派であるが故に…ユイトがこうして他の者から羨ましがられ…憎まれる事も
決して少なくは無かった。今までもこの様な理由で他の者から批判され…悩みの種だったのだが……
「そういう他人を馬鹿にする暇があったら自分の腕磨いた方が良いんじゃないかな?」
「あ…ゆのは…。」
ゆのははユイトを庇った。それどころか…まるで自分の事のように怒ってさえもいたのだ。
それには先程までユイトに絡んでいた者もコソコソと逃げ出してしまう。
「あ…ありがとう…ゆのは…。」
「気にしないでユイトちゃん。私はああ言う自分の努力もしないで他人を馬鹿にしさえすれば
良いって考えてる様な人が嫌いなだけだから…。」
「…………。」
ユイトはゆのはが頼もしく…同時に申し訳無く感じていた。

「そ…そんな事が…。」
ユーノには一体ゆのはの行った行為の意味が理解出来なかった。
そもそも復讐が目的でユイトに接近したと言うのならば…
態々助ける必要は無いはず。だと言うのに何故ユイトを庇うのか…ユーノも
内心驚いていたが……それでもやはり表面的には平静を装いつつユイトへ微笑みを向ける。

362 名前:なのはなりの復讐 9 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/12(火) 16:39:41 ID:6MG5wQ2x
「そっか…良い友達なんだね。」
「うん。だから…私もますます頑張れそうだよ。」
そうして近況報告を終えたユイトは一度帰って行った。

その日の深夜、ユーノは一人無限書庫に残って書類の整理に勤しんでいた。
「ふぅ…やっと終わった。」
書類整理もやっと終わり、左手で右肩をきつそうに揉んでいたのであるが…
そこで突然背後から人の気配を感じたのである。
「誰かな? こんな時間に…。」
「こんばんわ…。ユーノ…お父さん。」
「!!」
ユーノは一瞬震えた。そして背後にいたのは紛れも無く…あの高町ゆのはだったのである。
「その反応…やっぱりお父さんも分かってるんだ。私が貴方の子供だって事…。」
「そ…それは………。」
その場から凍り付いた様に動けず…かすかに震えてさえいるユーノに対し
ゆのははにこやかな笑みをユーノへ向けていた。しかし…その奥には冷たい感情を秘めながら…
そしてゆのははゆっくりとユーノの背後から両肩に手を当てて言う。
「ユイトちゃんって…とっても良い子だね。魔法の方はまだまだだけど…。」
「そ…そうかな……。」
ユーノは苦笑いしながら答えるしかない。だがゆのははユーノの肩を優しく揉みながら続ける。
「お互いの誕生日を確認しあった後で初めて知ったんだけど…私の方が微妙にお姉さんなんだね。
つまりユイトのお母さんがユイトを産むよりも…私のお母さんが私を産んだ方が先だから…
と言う事はお父さんは私のお母さんの方と先にちぎってるって事になるよね……
なのに………どうして私のお母さんを捨てたの?」
「………。」
ユーノは答える事は出来なかった。正確にはゆのはが言っている事は間違い。
恐らくゆのはの母であるなのはは逆レイプの事を教えなかったのだろう。
本当にユーノの妻になるべきなのは自分だと心から信じていた彼女ならあり得る。
そして何よりも…今の彼女には何を言っても無駄だとユーノは分かっていた。
「………………。」
「ねぇ…どうして黙ってるのお父さん? 黙ってたら分からないよ。」
「………………。」
なおもユーノは黙り込んだまま。しかしそうすればゆのはも不機嫌そうに顔を近付けてくる。
これは非情に気まずい。何故か怖い。『実力』と言う点ならばユーノの方が遥かに
勝っているであろうが…何故か勝てる気がしない。そう言う恐ろしさをゆのはから
感じ取っていたのだ。故に…この気まずい空気を払拭する為に…ユーノは話題を変えて見た。

363 名前:なのはなりの復讐 10 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/12(火) 16:40:39 ID:6MG5wQ2x
「そ…そう言えば…なのはは…君のお母さんは元気かな?」
「お母さんなら…もういないよ…。」
「え…。」
ゆのはの顔は急に暗くなり…ユーノも地雷を踏んだと悟った。そしてゆのはは言う。
「お母さんは女手一人で私を育てる為に色々無理もしたからね…。私にはそこを
悟らせまいと明るく…強気に振舞ってはいたけど…………………。」
「そんな…………。」
なのはが既にこの世にいなかった事はユーノにとってもショックだった。
つまり…なのはが亡くなった後…ゆのははずっと一人で生きて来た事になる。
そして彼女の首に下げられたレイジングハートは…なのはの遺品と言う事だ。
「お母さんはとっても厳しい人だったけど…今思うと感謝してるよ。
だって厳しく仕付けられたおかげで天涯孤独になってもこうして生きて来れたもの。
もしかしたら…お母さんはいずれこうなる事が分かってて私を厳しく育てたのかもね。」
ゆのはは明るくそう言い放つ。しかし…その内には何処か悲しさも秘められていた…。
「じゃあ…ゆのは…君はお母さんが天国に行った後も…僕達に復讐する考えは
改めてはいないと言う事かい?」
ユーノが恐る恐るそう質問すると…ゆのはは軽く頷く。
「うん…。だってお母さんにそう教え込まれて育ったし…何よりそれが私の存在意義だもん。
と言ってもお父さんが考えている様な卑怯な真似をするつもりは無いよ。お母さんは違っても…
一応姉妹だもんね。それにユイトちゃんとっても良い子だし…むしろ大好き。
だからユイトちゃんが困ってる時は是非助けてあげたい。けどその代わり…
私は常にユイトちゃんの一歩二歩先を行かせてもらうよ。それが私なりの復讐だから…。」
「…………。」
かつてなのはも似た事を言っていた。彼女の考えた復讐とは………
決して相手を傷付けると言う行為では無い。同じユーノの子供でも……
自分の産んだ子供の方が優秀である事を思い知らさせる。そう言った物だった。
そして今…ゆのはがやろうとしている事もまさにそれ。卑怯な事などせず…正々堂々と
常にユイトの一歩二歩先へ行く事によって…自分自身と母親であるなのはの
優秀さをユーノとフェイトに思い知らせる。それが彼女流の復讐なのだろう。

364 名前:なのはなりの復讐 11 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/12(火) 16:41:24 ID:6MG5wQ2x
「もっとも…お父さんが私の事…お父さんの子供って認めてくれたら…
また話は違ってくるけどね…。それじゃあ私はそろそろ帰るよ。
もう夜も遅いし…明日からまた訓練もあるしね。だから…
次の休みの日にまた会いましょう? ユーノ…パパ…。」
最後だけ何故かユーノの事を『お父さん』では無く『パパ』と呼んだゆのはは
無限書庫を後にし…自らの寮へと帰って行った。

「……………。」
ゆのはが帰った後も…ユーノは暫しその場で黙ったままだった。
彼はその間ずっと考えていた。なのはの事を………
「なのは…君はそうまでして僕を……もはや目的と手段が入れ替わっているじゃないか……。」
なのはが考えた復讐はあくまでもユーノを手に入れる為の手段に過ぎなかったはずだ。
であるにも関わらず……その手段の為に………ゆのはを育てる為に……なのはは自身の命を捨てた…
これが目的と手段が入れ替わっていないとして何としようか………。なのはは…自分の死さえ
辞さない程にまで…ユーノを愛していたのか…ユーノにはそこが…心苦しくて……仕方が無かった。
「おねがいだ……復讐なんてやめて……自分の為に……自分の幸せの為に……生きて欲しい……。」
いくらユイトを直接傷付けないとは言え…復讐は復讐。ゆのはにはそんな復讐の為だけの
生き方なんてして欲しく無い…。事の発端であるユーノが言う立場では無いとは
分かっていても…そう願いたい。そう願いたかった…。

                  おしまい……

365 名前: ◆6BmcNJgox2 :2008/02/12(火) 16:42:10 ID:6MG5wQ2x
なのはが故意に明るく振舞っているが故に逆に怖いと言うのを
表現しようとしたつもりですが…やっぱダメっすかな?
こう言うのも病みの一環って考えてるんですが…

後、今作におけるその後とかは各自のご想像にお任せするとして…
一応最終的にはユーノとフェイトが全てを受け入れて、なのはに対する贖罪も兼ねて
ゆのはを養子に迎えて一件落着とかそんな感じでお願いしますorz

ちなみにおまけ同然の裏設定ですけど…後半部分で描いた『十数年後』の時代においても
リンディさんは全然老けて無いと言う設定で考えてます

366 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 18:13:52 ID:tFNTbUGb
>>365
GJ!
というか、なのはさんカワイソス(´・ω・`)
この世界ではヴィヴィオがどうなってるのか気になるなるです

そして全くふけてないリンディさんは俺の嫁ですね

367 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 19:12:55 ID:0vvnVixv
>>366
何を言っている…
リンディは俺の隣で寝てますが?

368 名前:アルカディア ◆vyCuygcBYc :2008/02/12(火) 19:13:38 ID:q+TQ/oUv
>>317
97管理外世界です。恭也と忍がドイツで暮らしてるてるのはStSの公式設定ですが、結婚してるかとか娘が居るかとかは不明です。
……まあ、時期的は結婚して子供も居るだろうなー、と強引に雫に登場願いました。
この月村一家は本当に脇に使って、とらは設定をご存知ない方でも問題なく読める程度に留めておきたいと思います。

毎回GJを進呈下さる皆様、誠に有難うございます。お陰様で頑張っていけます。

>>343
私も氏の作品を毎度楽しみにしております。
新参の私からすると、安定して投下される氏の作品は良い目標です。
今回も思いつきでウエンディ使ってみたら、その後に氏のウデンディが素敵なSSが投下されて、ちょっと自己嫌悪になりましたw
次回の投下も楽しみにお待ちしています〜

369 名前:26-111:2008/02/12(火) 20:08:36 ID:bqp/jnGJ
>>タピオカ氏
GJ!良質な数の子分をいただきました。ウェンディも良いですが、個人的にはトーレに期待
あと、自虐イクナイ

私も登板25スレ・・・長いようでも、51スレ続いている中の半分にようやく届きそうになりました
まだ半分・・・なんだ、まだまだ私もルーキーじゃないですか。執筆陣諸兄とは今後とも切磋琢磨させていただきたいところです



そして、>>268

――― 俺はぜーんぜん納得いかねぇ・・・なめてんのかァー!この俺の嫁を!!マリー“さん”って呼べマリー“さん”って!!チクショオー 

「諜報者〜」、保管作業と並行してちまちま執筆中です・・・ムツカシイヨエロテンカイ・・・

370 名前:26-111:2008/02/12(火) 22:01:41 ID:bqp/jnGJ
保管庫から業務連絡です
48スレの保管作業を完了しました。執筆陣諸兄は確認をお願いします

( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc氏、39-362氏、保管庫管理人殿、先輩司書殿に相談です
これまで、三次創作の保管に関して、特別に留意すべき事柄は無い様でしたが、
( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc氏著の、「A crossroads of Fate END1.5」は、39-362氏の作品と同じタイトルを冠した三次創作ということでしたので、
ページのリンク等、構成に関して、少々勝手をさせていただきました
ページ構成に関して、著者両氏、管理人殿、先輩司書殿のご意見を賜りたく存じます

勝手なページ構成は、今後の保管業務の妨げになる・・・という意見は至極尤もだと思いますので、是非、一度確認していただきたく

よろしくお願いします


371 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:04:51 ID:6bsOvahy
そういえば ( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc って何て呼べばいいんだろう?
今までは「リリカルバイオレンスの人」とかレス番でごまかしてきたが…

372 名前:B・A:2008/02/12(火) 22:11:11 ID:E9yu51ne
>>371
( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc氏じゃダメなんですか?


20分あたりに投下します。

373 名前:3人家族で50Aを落とす人 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/12(火) 22:17:25 ID:xQVda3jP
「顔文字の人」とも呼ばれた覚えが。

自分からは特に何も。
原著の39-362氏次第かと思います。

374 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:18:19 ID:/jBqIBHT
>306
キターーーー!

と、言うことは、エリオの左腕は自動人形のものに……なんという鋼の槍騎士w
ギミック満載の左腕?
それともエリオの運動性に追従する高性能義手なだけ?
楽しみです。

375 名前:B・A:2008/02/12(火) 22:26:28 ID:E9yu51ne
予告時間が過ぎたので、投下いきます。
「最初に謝ります。アルカディア氏、ネタが被ってすみませんorz」


注意事項
・エリオ×ルーテシア
・非エロ
・本編改編。いわゆるIFというやつです。
・強引な展開や独自の解釈、勝手な捏造が多々含まれます。


376 名前:Ritter von Lutecia 第17話@:2008/02/12(火) 22:28:28 ID:E9yu51ne
エリオの尽力によってルーテシアは助け出され、暴走していた数十個のレリックも無事に封印された。
これにより、ミッドチルダを未曽有の混乱に陥れたジェイル・スカリエッティ事件・・・・通称JS事件は完全に終結した。
今回の一件により、レリック・・・・ひいてはロストロギアの危険性を改めて認識した管理局上層部は、今後の予防と迅速な事件解決のために、
本局と地上本部との間にある軋轢をなくそうという動きも見せ始めている。そして、機動六課のような少数精鋭の専門部隊を本格的に導入し、
その部隊長として現機動六課部隊長である八神はやてを迎えようという話も上がったが、彼女が自身の未熟さを理由に辞退したため、この話はうやむやとなってしまった。
はやての夢と理想が叶うのは、まだ少し先の話である。
一方、機動六課の全戦力を導入させるために奔走したクロノはほとぼりが冷めた後、上層部からこってりと絞られたらしい。曰く、「市街地にSSランク魔導師を投入するとは何事か」と。
この一件により、彼の出世は数年遅れてしまったようだが、彼は特に気にするでなく、今日も今日とて次元世界の平和のために指揮を振るっている。
絞られたといえば、ユーノもまた同僚や部下からこってりと絞られたらしい。曰く、「この忙しい時に仕事を放ったらかして物見遊山とは何事か」と。実際は少し違うのだが、
そんな言い訳は聞いてもらえず、彼は今日も資料検索の仕事に追われている。
事件後、クラナガンは多少の混乱が見られたが、それも数日の内に沈静化した。良くも悪くも、少し前に起こった首都陥落事件が人々の神経を図太く、逞しくしたようだ。
世はこともなし、全てが平穏に戻りつつある。

そして、一ヶ月が過ぎ去った。





377 名前:Ritter von Lutecia 第17話A:2008/02/12(火) 22:29:56 ID:E9yu51ne
最初に目に映ったのは、飾り気のない真っ白なカーテンだった。
風で揺れていればもう少し映えもするだろうに、窓が閉め切られているせいでピクリとも動かない。
窓ガラスに霜が立っているところを見ると、外の気温はかなり低いようだ。
どうやら、ここは病室のようだ。
白い壁と天井。窓には何故か鉄格子が嵌められていて、棚の上には奇麗な花が活けられていた。
少し前まで誰かいたのか、ベッドの横にはパイプ椅子が広げられたまま放置されている。

(私・・・・どうして・・・?)

ぼんやりとした頭でルーテシアは考える。
確か、護送車で隔離施設に運ばれていた。そこから先はよく覚えていない。
心が真っ暗な闇の中に落ちた気がして、そこで記憶は途絶えている。

(けど、すごく嫌なことと・・・・凄く嬉しいことがあったような・・・・・)

不意に、扉の開く音がする。
病室に入って来た人物の顔を見て、ルーテシアはハッと目を見開いた。
赤い髪とネコ科の動物を連想させる利発そうな目つき。
自分とそう変わらない身長。
小柄な割にがっしりとした肩幅。
眼帯で右目が隠れているが、間違いようがない。

「やあ。おはよう、ルー」

そこにいたのは、紛れもなく自分が愛したエリオその人であった。





378 名前:Ritter von Lutecia 第17話B:2008/02/12(火) 22:32:24 ID:E9yu51ne
ルーテシアをレリックから解放した後、エリオは再び病院へ担ぎ込まれた。
限界を超えた魔力行使でリンカーコアが衰弱していたのに加え、全身に電撃を受けたせいで皮膚の大半が焼け爛れ、
右腕に至っては、折れた骨が神経を傷つけているというかなり危険な状態だった。それでも医者が全力を尽くしてくれたおかげで、
エリオは何とか一命を取り留めることができた。しかし、右腕だけは欠損が激しくて形を取りつくろうこともできず、
肩口から切断することを余儀なくされた。
ルーテシアの方は更に重傷だった。電撃による火傷もさることながら、レリックによって無理やりリンカーコアを酷使されたせいで
体のあちこちに機能障害が出ており、入院してからしばらくの間は生命維持装置がなければ呼吸もできない状態だった。しかも、
一ヶ月も過ぎたというのにリンカーコアは回復の兆しを見せず、今のルーテシアはDランク魔導師とそう変わらない魔力行使しかできない。

「エリオ・・・その傷・・・・」

「ん? ああ、君やガリューよりはマシだよ」

パイプ椅子に腰掛け、エリオはシニカルに笑う。
あの暴力的な魔力の嵐に揉まれたというのに、ガリューは生きていた。ただし、上半身だけという極めて悲惨な状態でだ。
専門の医者の話によれば、完全に修復できるまで数年はかかるらしい。そうまでして生き残るのだから、そのしぶとさには敬意を表すしかない。

「私が・・・したんだよね・・・」

「そうだね、君がしたんだ」

エリオは偽らなかった。偽っては彼女のためにならないと思った。
もう終わったことなのだ。だから、彼女は全てを知り、そして始めなければならない。

「どこから・・・話すべきかな・・・・・・」

「・・・・最初から」

「最初?」

「うん・・・最初から・・・・」

全ての始まり。2人が出会ったあの日から。

「そうだね。それじゃ、最初から」

それはあまりに悲しい思い出話だった。
楽しいこともたくさんあったけれど、苦しいことの方がもっと多かった。
ルーテシアを守るために、エリオの心はズタズタに引き裂かれた。
エリオを思うあまり、ルーテシアは再び孤独に堕ちた。
互いが互いを傷つけ合うことで、2人は今日まで生きてきたのだ。そうしなければどちらかの心が折れていた。
共依存の関係だ。
エリオは傷ついた心をルーテシアへの思いで補い、ルーテシアは孤独を忘れるためにエリオにもたれかかるしかなかった。
けれど、それももう終わりだ。
全て終わったのだから、自分たちはこれからを始めなきゃならない。


379 名前:Ritter von Lutecia 第17話C:2008/02/12(火) 22:34:05 ID:E9yu51ne
「そっか・・・・一ヶ月も経ったんだ・・・」

やがて思い出話は、現在へと追いついた。
レリックの暴走。
機動六課の活躍。
この一ヶ月の間に起きた大小様々な事件。
そして、2人に課せられた重い罰。
2人の裁判は既に判決が下されていた。
結果はどちらも有罪。ルーテシアは大規模騒乱罪によって保護観察付きで懲役35年の次元世界への幽閉が、
エリオは管理局局員への傷害と公務執行妨害その他で懲役10年の実刑判決を下された。フェイト曰く、これでも頑張った結果らしい。

「離れ離れになっちゃうんだ」

「うん・・・・しばらくは会えないかな」

ルーテシアの場合、昏睡状態の間に管理局が暫定的に下した処分なので、控訴すればある程度の減刑も
可能かもしれないとフェイトは言っていた。加えて、一ヶ月前のレリック暴走事故の顛末が同情的に捉えられたため、
模範囚として反省を示せば比較的早い段階で仮釈放も認められるらしい。しかし、自分の懲役10年は決して動かない。
自分がしてきたことを考えれば、それは当然の結果であった。

「10年・・・か・・・・」

今まで自分が生きてきたのと同じ時間を塀の中で過ごさねばならないと思うと、エリオは何となく空恐ろしくなった。
だが、次にルーテシアが言った言葉に、思わず笑ってしまう。

「私は35年。おばさんになっているね」

「それじゃ、僕はおじさんだ」

出所して再会した時の光景が頭に思い浮かぶ。きっと、抱きあった瞬間に四十肩でもんどりを打つのだ。
全くもって締まらない光景だ。


380 名前:Ritter von Lutecia 第17話D:2008/02/12(火) 22:35:27 ID:E9yu51ne
「けど、エリオなら・・・おじさんでも・・・格好・・・いい・・・」

不意に睡魔に襲われ、ルーテシアの言葉が途切れる。
少し前まで自力で呼吸もできなかったのに、無理をし過ぎたせいだ。

「疲れているんだよ。少し休んだ方が良い」

「けど・・・エリオと・・・もっとおしゃべり・・したい・・・」

ここで眠ってしまえば、もう会えない気がした。
次に目覚めた時には、また一人ぼっちに戻ってしまう気がした。
落ちそうになる瞼を必死でこじ開け、ルーテシアはエリオを見つめる。
そんな彼女に、エリオは優しく囁いた。

「僕はどこにもいかないよ。ずっと君のそばにいる・・・・・例え離れても、必ず迎えにいく」

「ほん・・・とう・・・?」

「うん。だから、安心してお休み」

ルーテシアの体をそっとベッドに寝かし、その手を優しく握りしめる。それで安心したのか、
ルーテシアは僅かに微笑みながら「約束だよ」と呟き、静かに寝息を立てた。
彼女が眠ったのを確認すると、エリオはその柔らかい髪を優しく撫で、懺悔するように囁く。

「・・・今度は、僕がお別れを言う番だね」

あの時とは逆に、今度は自分が彼女を悲しませる。
せめて、彼女が強く生きてくれることを信じて。

「さようなら、ルー」

ただ静かに、別れを告げた。





381 名前:Ritter von Lutecia 第17話E:2008/02/12(火) 22:37:53 ID:E9yu51ne
病室を出たエリオを待っていたのは、フェイトとキャロとフリード、そして車椅子に乗った、
どこかルーテシアと面影の似ている女性だった。
その女性は、エリオを見るなり頭を垂れた。

「初めまして。メガーヌ・アルピーノと申します」

「アルピーノ・・・ひょっとして?」

「はい、ルーテシアの母です。このたびは、娘がご迷惑をおかけしました」

「いえ、僕にも責任の一端はありますから、おあいこです」

「ですが、あなたの腕は・・・・・」

ルーテシアと関わらなければ、右目と右腕を失うこともなく、犯罪者にもならなかったかもしれない。それは仮定の話だ。
自分はルーテシアを愛し、彼女のために戦い、その結果として右目と右腕を失ったのだ。精一杯やった結果がそれならば、
もう何も言うことはない。潔く受け入れるだけだ。

「僕のことよりも、ルーの方が心配です。彼女はこれから長い時を、無人世界で過ごさねばならないのですから」

「それは大丈夫です。私があの娘の保護観察官をすることになりました。もう、あの娘を1人にはしません」

メガーヌの力強い言葉が、僅かに残った心残りを払拭する。
自分がいない間、あの娘は1人じゃない。
その事実があれば、安心してどこにでも行くことができる。

「ルーのこと、よろしくお願いします」

一礼し、出口へと向かう。
少し頼りない足取りではあるが、しっかりと床を踏みしめて前に進む。


382 名前:Ritter von Lutecia 第17話F:2008/02/12(火) 22:40:37 ID:E9yu51ne
「もう行くの、エリオくん?」

「うん。ここに来られたのも、僕の我が侭だからね」

本来ならば勾留中のエリオがルーテシアの見舞いに来られたのは、フェイトたちが尽力してくれたおかげだ。
本当に、自分は彼女たちに迷惑をかけっ放しだ。
帰ってきたら、何か恩返しをしなければならない。

「フリード、キャロを頼むよ」

「きゅくるー」

「キャロ、みんなによろしくね」

「うん・・・・エリオくんも、元気で・・・」

「お母さんも、あまり無茶しないでくださいね」

「それはエリオもだよ。すぐに無理して体を壊すんだから」

「善処します。それとストラーダには、出所したらすぐに迎えに行くって伝えてください」

「うん。修復が済んだら、まっ先に伝えるよ」

かけがえのない家族に別れを告げる。
名残惜しいが、行かねばならない。
自分がしたことへの責任を果たさねばならない。

「色々と、ご迷惑をおかけしました・・・・・こんな僕と家族になってくれて、ありがとうございます」

涙を悟られぬよう、エリオは背中を向ける。
その背中に向かって、フェイトは聞かねばならぬ問いを口にした。

「エリオ・・・・エリオは、自分を許せる?」

この小さな騎士にとって、それはもっとも難しいことだった。案の定、エリオは
返答に詰まり・・・・ややして、背中を向けたまま、親指を立てた。

「許せません。だから・・・・・戻ってきたら、今度こそルーを守ります」

これが、エリオ・モンディアルにとってのJS事件の本当の終わりであった。

                                to be continued

383 名前:B・A:2008/02/12(火) 22:44:53 ID:E9yu51ne
以上です。
エピローグ・エリオver。果たして、ミッドチルダに少年院はないのか、という議論はできればなしでお願いします。
エリオの右腕損失は中盤辺りから伏線張っていたんですけど、アルカディア氏に先に描写されたん、画面の前で「被ったぁぁっ!?」って叫んじゃいました。
さて、次回はエピローグ・ルーテシアverです。これでこのシリーズも終わりかぁ。

384 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:49:12 ID:k4O0YukS
>>383
GJです!!エリオが本当にかっこいい。何年後になるかわからないけど
ルーと必ず再開してほしいです。

385 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:49:57 ID:Iy4OGhvP
この後の展開が気になります、もう本気で気になります、GJだぜ!
次回あたりで終わりなんですかね?

エリオが酷い目に合うのが昨今の流行と見た、頼む皆もっと苛めてくれ。

386 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 22:55:08 ID:rOh3eT07
どちらかというと性的にいじめてほしい

387 名前:アルカディア ◆vyCuygcBYc :2008/02/12(火) 23:01:26 ID:q+TQ/oUv
>>370
保管作業お疲れ様です。
拙作を保管して頂くに当たり、誤字の修正をお願い致したいのですが、如何致せば良いでしょうか?
恥かしながら、拙作を投下後に見直した際に、膨大な量の誤字脱字・投稿規制に当たって行間を無理に詰めた部分などを発見致したまして、頭を抱えております。
個々の部分の修正をお願い致すのは余りに失礼と存知ますので、ご迷惑で無ければ、何らかの方法で改訂版の原稿を差し上げたいのですが、如何でしょうか。
49スレから飛び入り参加させて頂いた新参で、スレの礼儀も知らずご迷惑をお掛け致します。

>>383
最高にGJです!! 戦いが終わった後のしっとりした雰囲気が素晴らしいです!
ネタかぶりなどはお気にならず。片手損失などはよく有るネタですから。
(……と言っても、なのはエロパロ板でキャラが腕を落とすのが恒例になったら嫌過ぎますがw)
氏のエリオ君は右腕、こちらは左腕ということで仲良くして頂ければ幸いです。

388 名前:B・A:2008/02/12(火) 23:09:02 ID:E9yu51ne
>>387
そう言って頂けると幸いです。
そちらのエリオが今後どうなるのか、氏の作品を楽しみに読ませて頂きます。

389 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 23:18:57 ID:vgVNTUjT
GJ!次回が楽しみすぎる
左腕と右腕右目、どろろの百鬼丸のように作家陣でエリオを奪い合うのですね(違

390 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 23:22:06 ID:0xe5gIQp
次は片足だなw

391 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 23:22:58 ID:xtbptqv1
なんともう400KBか・・・・・最短記録樹立確定だな。

392 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 23:28:52 ID:956bg0ik
アルカディア氏、B・A氏どっちもGJ!
いやぁ〜面白くて連日見に来てしまいます

右腕左腕仲良くってwww
お二人がそろったらエリオ君武器と両腕と右目と記憶まで無くしちゃんですね

393 名前:246:2008/02/12(火) 23:39:00 ID:PuLRbjdM
>>383
GJです!! なんていうか、もう清清しい。
しかし35年と10年か……あるかどうか分かりませんが再開したときの二人が浮かぶようです。
後もうちょい短めになりませんか、とうちのフェイトさんが言っています。
そしてエリオ君の片足は246が貰い受けた。



394 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 23:47:03 ID:5uzvL7Yo
目だ耳だ鼻だ!

395 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/12(火) 23:47:54 ID:5uzvL7Yo
やば、またまたまた上げちゃったorz
すまない

396 名前:保管庫手伝い:2008/02/12(火) 23:49:42 ID:4GgYZj30
>>370
26-111氏、いつもお疲れ様です。
最近ずっとサボってて申し訳ありません、初代保管庫手伝いです。

以前にも似たようなケースがありました。
どなたかが書いた話しを受けて、別の人がその後を続けたわけですが、
その時は長編目次ページに普通にそれぞれのリンクを貼って、
そのすぐ後ろに誰が書いたか明記するだけに留めました。
スレ別著作一覧も、題名は一つで作者名を併記する状態にしました。
18スレの 赤ちゃんの作り方(仮題) の所を見て貰えば分かるかと。

397 名前:39-362:2008/02/12(火) 23:49:52 ID:BDWOBuNv
>>370
保管作業お疲れ様です。
自分も、特に問題ないと思います。


398 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:00:02 ID:+urdWigh
無くなれば無くなるほど強くなるって、シグルイMMお……いや何でもない何でもない。

399 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:02:49 ID:m9jBbEXG
両足を失って機械の義足で最速を目指すとか。世界を縮めたのに感動するとか。

400 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:05:54 ID:CKkaPnrh
あ、246氏!!
先程、君に届ける〜を読ませて頂きました
鳥肌をありがとうと言いたかったけど言う暇なくて…この場をお借りします

素晴らしい小説読ませてありがとうございます
そして続きを楽しみにしてます


401 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:07:38 ID:3xYNmO2C
>>167
・・・催促しているわけではないのですが、ないのですが(´・ω・`)

402 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:08:13 ID:/QY4hOM1
レス付ける間すら与えられぬとは、本当にエロパロは地獄だぜ…

403 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:09:10 ID:u2iW+uls
出所後のエリオである。
http://moepic3.dip.jp/gazo/remod/files/remod25004.jpg

404 名前:26-111:2008/02/13(水) 00:12:01 ID:B/Cut5mA
>>B・A氏
GJでした!次回でラストになりますか・・・完結の形がどうなるのか、楽しみに待っています
思えば、私もエリオの右目を盲目になったフェイトさんに・・・

>>アルカディア氏
「Little Lancer」、楽しく読ませていただいていますよ
誤字の修正についてですが・・・長くなるので、先に結論だけ書いておきます。「任せとけ」←結論

基本的に、固有名詞の間違いは勝手に直します。気付いた範囲で
著者以外からの指摘も含めて、スレ中で申告があった部分も直します
改行などのレイアウトに関しては、場面転換の時に改行3つとか、そんな感じでOK?何かしらの指示をいただけるとありがたいです
勿論、改訂版を用意してもらえるのでしたら、どっかのアップローダーにでも上げていただければそちらで対応しますぜ

なぁ、兄弟。自分の創作物を万全な形で残したい。っていう気持ちは良く分かる。勿論良く分かるんだ
分かるからこそ一言だけ、苦言を呈させてくれ

なるべく、投下前に読み返して確認しようぜ?執筆中に気を付けてみようぜ?

勿論、それでも気付けない誤字はあるし、書き上がった直後の早く投下したいハイテンションな気持ちも理解できる
そこで踏み止まれなんて酷な事は言えない。書いちまったからには投下するのが職人の業だ、自重なんてせずに投下して貰いたい
そして、投下したからには兄弟だ。失礼、迷惑、と気にせずに申告してくれ。こっちは好きで司書をやってる身です。可能な限りはサポートするぜ?

むひひ、照れますな。こういう話は。ともかく、諸兄の作品が納得のいく形で保管できるよう、私は微力を尽くしたいって事です

>>396、先輩司書殿
今の保管庫があるのは、管理人殿と先輩方の力があってこそ。後進の一人としてぼちぼち頑張ります
三次創作の先例を提示していただき、感謝です。今回のケースに関しては、両氏ともに長編であったためにああいう形を取りました
幸い、両氏ともに現状で了解を得られたようなので、このままで行こうと思います

だらだらと長文を失礼しましたー

405 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:13:12 ID:KZpmQZVF
コブラかよ! やべえよ、凄いナイスバディのアンドロイド連れて宇宙を股にかける大活躍か!?

406 名前:26-111:2008/02/13(水) 00:13:21 ID:B/Cut5mA
>>370がなんだかGJなIDだった事に今気付いた
そして今のIDは・・・何を切れというのでしょうか・・・

407 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:21:27 ID:tAGEF9Fu
>>406
cutの後に注目すると5mA
これは電流の単位であることからつまり電化製品の電源をry

408 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:24:56 ID:/QY4hOM1
>>406
ID遊びなら任せろグルァー!
いいか?cutの前に注目するとB
これはOPPAIもしくはSHIRIの形を表しているとみたね!

409 名前:26-111:2008/02/13(水) 00:31:23 ID:B/Cut5mA
>>408
ナ、ナンダッテー!?
cutの後ろの5に注目するなら、数字と言えばナンバーズ。つまりチンク姉のOPPAIもしくはSHIRIを切れと!?
hahaha、切らなくても既に真っ平・・・ん?こんな時間に誰だろう?スマン、来客のようだ。ちょっと出てくる

410 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:43:39 ID:KEA9VxQg
>>409
逆に考えるんだ、兄弟がcutしたから、あんなに真っ平なんだと。
此処で、よくIDを見返してみるんだ。
B(ust)/cut5m(une)A
つまり、チンク姉のバストをカットしてAカップにすることが兄弟に課せられた使命だったんだよ!!<□ランブルデトネイター

411 名前:148:2008/02/13(水) 00:47:12 ID:WPDAQ+Zk
たった今、私の近所で爆発事故が発生しましたが、大丈夫でしょうか?
B・A氏! GJ!! サイコーのエリキャロだアアア!!!

だが……ちょっとまて! まだフォワードメンバーのSSは投下終了しちゃいないぜ!
俺は手札より魔法カードを発動!
このカードは、前に投下されたフォワード人のSSが超GJだった時に限り、新しいフォワード中心の話を追加投下できる!

……スイマセン、マジで調子乗りました。

「命懸けの友情」後編を書き終わりました。投下してもよろしいでしょうか?

412 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 00:49:40 ID:/QY4hOM1
キャモーン

413 名前:148:2008/02/13(水) 00:53:26 ID:WPDAQ+Zk
では投下します。

・時間軸はStrikerSよりもちょっと前。漫画版です。
・原作の捏造があります。
・メインはスバルとティアナですが、基本的にティアナ視点。
・題名は『命がけの友情』です

414 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 00:55:43 ID:WPDAQ+Zk
「てぃあ〜、お願いが有るんだけど……」
訓練校を卒業する、半年ほど前だったか。唐突に、スバルが自分に擦り寄ってきた事があった。
「ジュース代なら、もう貸さないわよ」
「あ、いや、そうじゃなくて、その……座学のレポートで、ちょっと手伝って欲しい所があって……」
「レポート? 昨日提出したじゃない」
「いや、それが、内容が酷いって言われてさ……再提出って事にネ、うん」
「アンタが?」
スバルは見た目と裏腹に、座学の成績は優秀だ。時には自分を上回るほどである。入学したての頃を除けば、ミスらしいミスも無かった為に、意外だった。
それにレポートなら自分も提出したのだが、それほど難しくは無かったはずだ。
「見てくれるだけでいいよ。そこから先は、自分から考えるからさ。お願い!」
「まあ、それ位なら構わないけど……」
両手を合わせて頭を下げるスバルを見て、ティアナは今まで読んでいた教本を閉じた。キッチリ指導しておけば、同じミスはしないだろう。
「えっと……確か、旧暦の質量兵器に関する問題点と考察、だったっけ?」
「うん、そう」
「じゃあとりあえず、最初に提出したのを見せて。何処がマズかったのかを知らないと」
「う、うん……」
レポート、と言うものは別段独創性を見るものではない。
きちんと問題点を把握し、それを提示できているか、はっきりと主張できているか、論点をずらさずに書けるか、そこを見るものだ。
しかし、スバルから受け取った用紙を見て、ティアナは固まってしまった。
「『私は、人間に機械の身体を埋め込むのは反対です。
なぜならそれは人の権利を踏みにじるとっても悪いことだからです。
作った本人にとっても、又作られた人にとっても、いい事は一つもありません。
未だにこういう違法研究が行われているのを見ると、私は悲しいです。この世界で、質量兵器は完全に無くなる方がよいと私は考えます』……」
「私は、それなりにいい事書いてあると思うんだけどな……変かな?」
とりあえず、すっと椅子から立ち上がって、蹴りを食らわせてやった。
そこから倒れこんだスバルに四文字固めを極めてやる。

415 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 00:57:00 ID:WPDAQ+Zk
「ああー!! 痛い! 痛い! キャー! ティアちゃん止めて! 私……私、おかしくなっちゃうー!」
「おかしいのはアンタの脳味噌だ! 何よ、これは!? 何時、誰が、読書感想文出せっつったのよ!!」
その後、十文字固めからエビゾリ攻撃を続けて、ようやく彼女を解放した。
「あのね、アンタが書いてあることは確かに良い事だけど、そんな事このレポートは要求してないの! とっても悪いことなんて、当たり前でしょうが! 『違法研究が良いことです』なんて公に発表する奴がいたら、この世界はとっくの昔に滅んでるわよ!!」
「は〜い……」
「あと、自分の感情も入れすぎ。論文はあくまで客観的に書かなきゃ意味ないの。こんな文章小学生だって書けるわよ」
ひょいと、レポートを摘み上げると、スバルの机に叩きつけた。本当は破り捨てても良かったのだが、そこまでするのは流石に可哀想だ。
「とりあえず、ここに書いたことは全部白紙。一から考え直しなさい。それが今やること」
「うん……」
ガックリとうな垂れて、スバルは肩を落とした。そこまでショックだったのだろうか。
しかし、普段のスバルならこの位自分で気付けるはずなのだ。こんなレポートのイロハぐらい、誰もが知っていることである。
「スバル、もしかしてあんた、どっか調子悪い?」
同室の自分は気付かなかったが、そういう可能性もある。しかしパートナーはあっさりと否定していた。
「え? ベ、別にそんな事ないけど」
「本当に?」
「ホントだよ! もう元気、元気! あ、そうだ、ちょっと喉渇いたからジュース買ってくるよ!」
「あ、ちょっと!」
ティアナの次の言葉も聞かずに、スバルは飛び出した。一人部屋に残されたティアナは、目をパチクリさせながらドアを見ていた。
「何よ……」
その時、余り深く考えはしなかった。スバルの突拍子も無いことはいつもの事だったし、妙では合ったが、それほど重大なことにも思えなかったのだ。
スバルの机の上に歩み寄って、彼女の教本を手に取る。パラパラと捲ると、目的のページが見つかった。
様々な落書きと一緒に授業中も教師が行ったメモもとってある為、何がなんだかさっぱり分からない。恐らく使いこなせるのは本人だけだろう。
エースオブエースと名高い高町なのは教導官でも無理だ。
「あんの、バカ……」
教官に見つかったらペナルティ物だ。戻ったらこの事も注意しなくては。そう心に決めた。


416 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 00:57:38 ID:WPDAQ+Zk
 
この時、メモに紛れて滲んでいた文字に気付いていれば。彼女の涙の痕跡を見逃さなければ、或いは展開は違っていたかもしれない。
 
 
 
「それじゃあ、ギンガさんも、その……戦闘、機人って言う……」
「ええ」
陸士108部隊の隊舎にあるオフィス。ティアナはそこに通された。ゲンヤと二人でこの場所にきたときには、既にギンガが待っていて、二人にお茶の用意をしてくれた。
食事のときに彼女の料理下手を聞かされていた為、少し不安に思ったのだが、とても美味しい。ゲンヤは『十年かけて、これが限界だ』とこっそり耳打ちした。
その時は苦笑していたのだが、彼女も交えた三人での話し合いが始まると、そんな心の余裕は吹っ飛んでしまった。
「今まで黙っていて、ごめんなさい」
心から申し訳なさそうに、ギンガは頭を下げた。ティアナは慌てて手を振る。
「い、いえ! そんな秘密、話せなくて当然ですよ! その……確かに、驚きましたけど……」
正直、身体から衝撃が抜けきっていない。スバルの背中から見えた機械は、障害者用の為に作られた、あくまで補助的なもの程度にしか考えていなかったのだ。それも空港火災で追った怪我が原因ではないかと。
しかし、スバルもギンガも、その身体は予想以上に重大な事が秘められていたのである。
「でも、戦う為の身体って言いますけど……そんな事が出来るんですか?」
「ああ……本来ならサポートするのが目的だがな」
陸士部隊に所属していたゲンヤの妻であるクイント=ナカジマは、戦闘機人関連の事件を追っていた。旧暦から機械などの人工物を身体に埋め込んだ人間に関する研究はあったが、無理矢理に人と機械を融合させるのだから無謀な話だ。
相性の問題や、何より人道に反する行為として成功例は皆無に等しい。スバルとギンガは、その違法研究の捜査中に、偶然保護した子供だった。
「機械はあくまで代用品だ。極端に言えば、入れ歯付けてるジーさんとか、ヅラ被ってる中年も立派に『機人』だよ。勿論戦いに使うなんてのは論外だ」
「だから私達の肉体は……生身の部分が、初めから機械の方に合わせてあるのよ」
「そんな……」
信じられなかった。肉体『を』合わせる……つまり、遺伝子レベルで手を加える。そんな技術を持っていることも、何よりそれを平然と行える人間がいることも。
「首謀者に関して、思い当たるフシは幾つかあって、本局の執務官の嬢ちゃんが動いてくれてはいるが、目ぼしい証拠は挙がってねえ」


417 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 00:58:22 ID:WPDAQ+Zk
「酷い……」
「ん?」
ティアナの中から、沸々と誰にぶつけることも出来ない怒りが込み上げてきた。
人の命を弄んだ、最悪の犯罪だ。少女の両手はワナワナと膝の上で震えていた。
「スバルが……あの娘が、何したって言うんですか! ギンガさんも、そんな事をされる理由なんて……」
「……ありがとう、ティアナ」
ギンガはそんな彼女を見て、穏やかな笑みを浮かべていた。
「昔もね……同じような事があったのよ」
「え? 同じようなこと……ですか」
ギンガは淡々と語り始めた。

その時スバルの正体がばれた相手は、近所の女の子だった。勝気な性格で、スバルとは正反対の性格だったが、それだけに仲が良かった。
バレてしまった原因は、今でも分からない。スバルがその事を頑なに話さなかった。ただ遊んでいる最中に偶然、と言うことだったらしい。
とにかくその日から、親友とさえ思っていた少女の、スバルに対する目は一変してしまった。
「勿論、その娘はまだ幼かったから、戦闘機人とか、そんな事情を知ることなんて出来ない。でもスバルも……あの娘も、相手の心情を察してあげられるほど、大人じゃなかったわ」
相当、酷い事を言われたらしい。結局その少女が遠い地へ引っ越すことで、自体は一応の終息をみた。数少ない救いと言えば、その少女の両親がスバルの身の上を何とか理解してくれたこと。そして同じ立場のギンガが、側にいてくれたことだ。
「その後すぐに女房も死んじまって、一時期とんでもなく塞ぎこんでいてなあ……今は何とか立ち直ってくれたからいいんだが……な」
 
「そう……ですか」
ティアナはようやく全てを理解できた。昨日の建物の中で、ティアナが彼女の正体を見たときの、彼女の怯えた表情。今まで自分の中に封印して来た思い出がぶり返してフラッシュバックしてしまった為に、あんな目をしていたのだ。
子供の頃のスバルは、シューティング・アーツを使う事を極端に嫌っているというのも納得だ。元々戦うために作られた自分の力は、たとえ意識していなかったとしても、相手を傷つけかねない。
例え、その正体を見てしまっただけでも、相手が傷つく。自分も傷つく。
(それで、あの娘は……)
自分を拒絶することは、同時にパートナーを護る手段でもあったわけだ。
不器用で、けれど優しい少女に、ティアナは感謝した。


418 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 00:59:19 ID:WPDAQ+Zk
「その……ショックだとは思うがな。何とか分かってやって欲しい。あいつも、必死になって生きてるからな……」
「知っています……よく……」
ゲンヤは少女の頬を、涙が伝っている事を分かっていたが、そこは黙っていた。代わりに、ギンガがハンカチを取り出して、涙を拭いてくれた。
「私……病室で、あの娘のこと怒鳴っちゃって……でも、ごめんなさい……」
「え? 病室って?」
ティアナは涙を拭きつつ、病室であった事を話した。スバルか自分を拒絶したこと。コンビを解散したいといったこと。それに激昂して、怒鳴り散らして出て行ってしまったことを。
「スバル、そんな事をあなたに言ったの……ごめんなさい、本当に」
「幾らテンパっても、言ったらいけねえことだな」
「いいえ……いいんです。あの娘が私を、守るために言ってくれた……事だから」
暖かい……そう、誰よりも暖かかった。これが人ではない?
嘘だ。だって、この家族は……こんなにも……。
涙を止めた後、ティアナはキリっとした目つきで、前を見た。自分はこんな所で、泣いている場合じゃない。
「……私、もう一回スバルに会って来ます。色々、言いたい事がありますから」
「そうか……頼む」
「私からも、お願い。スバルを……妹をよろしく、ティアナ」
「はい」
力強く頷いて、ティアナは立ち上がる。
「あ、お茶とお蕎麦、ご馳走様でした。今度は、私から奢らせてください!」
最後に敬礼をして、ティアナは部屋を出た。
客人がいなくなったあと、ギンガは父の横顔を恨めしそうに見た。
「父さん、外食は抑えるように言ってあるのに……」
「仕方ねえだろ。娘の親友に、隊舎の食事なんか出せるかって」
「……まあ、いいですけど」
ギンガは肩を竦めて、しかしその顔は笑っていた。
自分には、幸いスバルのようにバレるような事態は無いし、トラウマもない。ただ唯一、この世界で一人きりの妹が塞ぎ込んでいるのを見ていると、まるで自分のことのように辛かった。
だからこそ、今は自分の事のように嬉しい。
その時、廊下の外でドスンと、何かがぶつかったような音がした。耳を欹てると「ごめんなさーい!」と言うティアナの大声と、「こらー! 廊下は走っちゃ駄目なのですよー!」と言う可愛らしい声が届く。
片方はティアナのものだが、もう一つの方も、何処か聞き覚えのあるものだった。


419 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 01:00:34 ID:WPDAQ+Zk
「ん?」
「あの声は……」
二人が廊下へ出ようとすると、ドアが開いて、ティアナと同じ位の背丈の少女が、ひょいと顔を覗かせた。
栗色のショートカットが可愛らしい、ギンガとそう歳も変わらない娘である。
「し、失礼します。二人とも、ここにいると伺ったもので……」
「はやてさん?」
ギンガが目を丸くして答える。目の前に立っていたのは、空港火災の時、緊急時として救援に来ていた、八神はやてだった。
しかし、何処か服が乱れているというか、髪の毛も整っていない。心なしか、息も荒かった。アハハ、と苦笑しながら、はやては頬をかく。
「いえ……さっきそこで、若い局員の娘とぶつかってしもて……」
「もう! はやてちゃん笑っちゃ駄目ですよ! はやてちゃんはもう三等陸佐なんですから、シャキっとしないと笑われてしまいます!」
その隣をフワフワと飛んでいる小さな妖精のような生き物も、二人にとっては顔馴染みだった。彼女が持つ管制用デバイスのリインフォースUである。
「まあまあ、ええよリイン。向こうもなんか急いでるみたいやったし」
リインフォースをみているハヤテをみていて、ゲンヤは苦笑する。彼女と会うのは随分久しぶりだが、まるで変わっていない。
「そっか……そういやお前さんも昇進したんだっけな」
「ええまあ……まだ、新米ですけど」
「その内、父さんに命令する日も近いですね」
想像して、ゲンヤは噴き出し手しまった。自分よりも年下の上官はそれこそ多くいるが、この目の前の少女が自分を指揮すると言うのは、どうにもぞっとしない。
「それで、今日自分の部隊を訪れた理由は一体何でありますか、未来の上官殿?」
「もう、止めてください! 何でそないハイなんですか?」
「はっはっは! 悪い悪い、ちょいとイイ事があってな」
「良いこと?」
リインとはやては、お互いに目を合わせてキョトンとした。一方で、父と娘は笑いあっている。
この時、新部隊のメンバーに関する相談を持ちかけていた八神はやては、二人が笑顔になっている原因を作った少女……ティアナ=ランスターと、そのパートナーであり、娘のスバル=ナカジマのことを聞く。
後にJS事件と呼ばれる出来事への切り札となるのだが、それはまた別の話であった。


420 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 01:01:19 ID:WPDAQ+Zk
 
 
 
陸士386部隊の隊舎……自分の部屋に戻ったティアナは、机の引き出しの上から、一つの写真を取り出していた。実家に帰れば、アルバムの一つや二つはあるが、手元にあるのはこれだけだ。
「一番身近にいる娘一人救えないで……執務官なんて、目指してられますかっての」
病院に電話した所、スバル=ナカジマの姿はなくなっていた。何時の間にか、病院から抜け出していたらしい。
行く所は分かっている。今の彼女が無理をしてまで出て行くところといえば、一つしか思い当たらない。
(まだ私の野望……少しも近づいちゃいない)
一人で歩いていく筈の目標だった。そこからズカズカ近づいて、何時の間にか側にいるのか当たり前になった存在がいる。
多分彼女は、無意識の内に感じ取ったのかもしれない。心の奥底で、ティアナ自身が誰かを必要としている事に。自分の夢の為に、必要な者であると。
 
「お兄ちゃん……ほんの、ほんのちょっとでいいから……今だけで、いいから」
 
私に、力を貸してください。護りたいものが、あります。
 
ティアナ=ランスターは、パートナーのいる場所を目指して駆け出した。その右腕に、自らのデバイスを握り締めて。
 
 
 
スバルは一人、誰もいない通路を歩いていた。不思議な事に、誰ともすれ違わない。
しかし、何も考えたくはない今の彼女にとっては、都合が良かった。
「……」
クラナガンにある管理局地上本部。スバルはその中にいた。手には、病室で認めたばかりの、コンビ解消を求める嘆願書が握られている。
行き先は人事部。書面のみで提出しても良いのだが、それでは時間がかかる。この方が一番手っ取り早い。
人手不足の管理局には、いちいち各部隊に人事部を設置していないのだ。大き目の部隊と、あとはこの地上本部。
(これで、いいんだよね……)
このままコンビを続けていれば、いつかティアナは自分との違いに気付くだろう。最初は些細なほどの違和感だったとしても、やがてそれはどんどん大きくなって行く筈だ。そうなる前に……自分に悪意を持っていない今のうちに、敢えて縁を切ってしまうのが、一番良いのだ。


421 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 01:02:44 ID:WPDAQ+Zk
(大丈夫……ティアは、執務官になるんだもん。私と一緒にいたら、なれるものもなれないよ……)
パートナーの夢を、他ならぬ自分が潰してしまうわけには行かない。
自分の出生についていささか普通でないことは、前から薄々知っていた。
だが確信を持ったのは、自分の腕の中を見た時だった。あの日、破れた自分の人工皮膚から覗く妙な物体……近くにいた友達は悲鳴を上げていた。
それでも、その友達がいなくなっても、姉のギンガが自分と同じ存在であった事が、幾ばくかの支えになっていた。だが、身体の事を他人に言うことはやはり出来ない。
自分の拳は、簡単に人の命を奪える。それだけを理由に、作り出された存在だから。
だから怖かった。化け物呼ばわりされることだけじゃない。この機械仕掛けの腕が、誰かを壊してしまう。そのきっかけは、何時訪れるのか分からない。

空港火災で死に掛けた時は、全く別の恐怖を感じた。死にたくない……自分がこんな風に、惨めに死んでいく、人生が終わる、そんなことは嫌だ。
そう思ったとき、再び自分の中で『人間』だという意識が芽生え始めた。自分は死にたくないと望んでもいい……人間なのだから。
助けてくれた本局の魔導師……今でも憧れているその人の腕に抱かれながら、スバルはそう考える事が出来た。
だから局員を目指した。同じように泣いている人を助けたかった。

けれど、ティアナに見られてしまった時には、幼い時の消し去りたい思い出が彼女を覆いつくした。
目をつぶっていても、開いていても、或いは眠気に身を任せていても、襲いくるイメージは止められない。パートナーが汚物を見るように、自分を拒絶する。どんどん強くなっていく恐れ。自分の身体を支配して、蝕んでいくもモノ。
それを救う手段は、これしかないのだ……。
「うん……これが一番なんだ。絶対に」
 
「何が『絶対に』、なのかしら?」
 
その声に、スバルは身体が硬直した。その先に、ティアナ=ランスターが……パートナーが立っていたのだ。
「ティア……」
彼女の眼は、信じられないほどに真っ直ぐだった。怒りも恐れもない。ただ真摯に自分を見つめている。
あれ程強く突き放した筈なのに、とスバルは思う。彼女の前に立ちはだかったティアナは、スバルに対してゆっくりと言った。


422 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 01:03:42 ID:WPDAQ+Zk
「何処へ行く気?」
咄嗟に、嘆願書を後ろに隠した。なるだけ冷静に、俯いて小さく言い切る。
「……ティアには、関係ない」
「『パートナーのプライドを護る義務がある』
ティアナは微塵も揺るがない。かつて自分が言った台詞を、そっくりそのまま返された。
「アンタは昔、私にそう言った。なら私は、パートナーの未来を護る」
「ティアと私は……もう、パートナーじゃないよ」
「だとしても、友達でしょ?」
「……!!」
平然と、表情を変えずに答える。これが、あの彼女なのだろうか。病室で最後に見た悲しみの顔と、余りにも違う。
「それにね。片方の一存じゃ、コンビの解消は出来ない。アンタが持っているそれを、この先の人事部に提出しない限りね」
ビクリと震えて、隠してある嘆願書をぎゅっと握り締める。だが知っている以上隠しても意味はない。
「早く渡しなさい。それでチャラにしてあげるから」
「……ヤダ!」
「子供みたいなこと言わないの。怒らないから」
まるであやすように語り掛けるティアナ。しかしスバルは、いやいやと首を振り続けた。
「ティア、私が言ったこと聞いてなかったの!? あんな身体見て、何も思わないわけないよ! ほんとの事知ったら、もっと変な目で私を見る! だからもう! 近くに居たくないんだよ!」
「……知ったわよ、本当の事」
「……え!?」
顔を上げる。ティアナはうっすらと微笑みさえ浮かべていた。ただ静かに、スバルに言葉を発する。
「ギンガさんと、ナカジマ三佐にあって、二人とも私に打ち明けてくれた。アンタの身の上は、一応殆ど知ったつもり。どう? これでもまだ信用できない?」
「…それは……」
スバルがティアナの事を拒絶したのは、戦闘機人の正体を知ってしまったとき、あの女の娘の様に自分を見てしまうかもしれない……そんな恐れからだった。
だが正体を知っても、ティアナはそこに立っている。
なら、彼女は……一瞬そんな思いが過ぎったが、振り払うようにその感情を消した。
「うん……やっぱり信用できない」
「何で?」
まるで変化のないパートナーに、スバルは苛立ちさえ覚えてしまった。先程よりも一層声を張って、叫ぶ。


423 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 01:05:13 ID:WPDAQ+Zk
「だって! ティアがそういう風にしているの、今のうちだけだよ! いつか……いつかきっと、私の事を変な目で見る! 絶対、人じゃないって思うようになっちゃう!」
「スバル……」
「今まで信じてきた事が、ガラガラ崩れる音を聞いた事がある!? 私だって……私だって、皆と同じところ、沢山あるよ! 
嫌な事があったら怒るし、怖い事があったら悲鳴上げる! 
お腹も空く! 好きな事も! 悲しい時も! でも……でも、それだけじゃ駄目なの!!」
絞り出すような声。ティアナは、一旦遮られると、黙ってそれを聞いているだけだった。
「皆が私を変な風に見る! そしたら私だって、皆を変な風に見ちゃう! 壊してやりたいって考えちゃう!
……そんな事があったら私……私、自分で自分のこと、許せなくなっちゃう……」
周りは全く同じでなければ駄目なのだ。そういう風に考えてしまう。
そんな人間がいること位、最初から分かっていた筈なのに。
……幼少の思い出が、全てを叩き壊そうとしていた。
「だから、そんな風になりたくないの! ティアと……そんな関係になりたくない!」
「……」
 
いつだったか、レポートで質量兵器に関する事をまとめた時、彼女は一際妙な文章で再提出を喰らっていた。余りに稚拙なものだ。
だが、あの文に込められた想いをもっと早くに理解してあげられれば、こんなことにはならなかった。
いや、それがなかったとしても、昨日の救出作業で、独断行動をさせなければ……。
考えても、考えても、ティアナの中の後悔の念は尽きない。これは、自分の招いたミスだ。だが……だからこそ!
 
「スバル、アンタの我侭には結構振り回されてきたけどさ……でも、これだけは……この我侭だけは、通すわけにはいかないのよ!」
 
そうだ。自分のプライド……誰にも負けない、夢に賭けてでも。
 
「ヤダよ! 通して! 私は……私は、力ずくでも……!」
その時、ガチャっと言う金属音がスバルの耳に届く。ティアナの手には、彼女の自作した銃型デバイスが握られていた。
自分が人事部まで行く事を予測していたのだ。ならば、無理矢理に行くことも、彼女なら考え付くだろう。


424 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 01:05:44 ID:WPDAQ+Zk
だとしても、この狭い廊下で、一対一でスバルを止めるなど無理だ。バックアップがメインのティアナに対して、スバルはバリバリの接近戦タイプ。それも室内ではシューティング・アーツは絶大な力を発揮する。不可能だ。
「ティア……一発二発当たっても、私は止まんないよ」
「誰がアンタに向けて撃つって言ったのよ」
ティアナは至って冷静だ。スバルの前でカートリッジを一発、装填する。
そうして向けた銃口は……
「これはね、こうして使うために持ってきたの」
自分のこめかみだった。

余りの唐突さに、次の瞬間スバルは声が出なくなった。
「ティア……!?」
「殺傷設定にしてあるわ。アンタも知っての通り、このデバイス自作だから、切り替えはいちいち主導でやるしかない。私が引き金引いたら、頭弾けて死ぬでしょうね」
「何で!? バカなこと止めてよ!!」
悲鳴を上げるスバル。だがティアナは微動だにしない。
「私の事を信じてもらえないなら、無理矢理止めるしかないでしょ。でも今の私は、止めるだけの実力もないし、説得する余裕もない。だから運に任せる事にしたの」
「運……」
彼女は……ティアナ=ランスターは、こんな事をする人物ではない筈だ。冗談なのかと一瞬疑ってしまう。
「もし私が生き残ったら、私の勝ち。アンタとの縁はまだ切るなって事でしょうから、その時は黙って従ってもらうわよ。もし私が死んだら、勝手にしなさい」
「そ、そんな……ずるいよ!」
「何が?」
「だ、だって……そんなの勝負じゃない! 引き金引いたら、絶対に死んじゃう!!」
「死なない事だってあるわよ。私が撃つ時に、故障すればね」
確かに、ティアナのアンカーガンは正規のものと違って、かなり歪な作りだ。それ故か、訓練中に壊れる事もしばしばあった。騙し騙し使っていて、その都度修理と改造を続けてきた。
ただし壊れやすいというのは、あくまで失敗が許されない陸士部隊の上での話である。こんな生と死のギャンブルで使うには余りにも無謀な賭けだ。危険すぎるとかそういう次元ではない。確実に死ぬ。
しかしティアナは怯まなかった。
「止めて欲しかったら、隠してるそれ捨てて、二度とこんな事しないって約束しなさい。そうしたら降ろすわ」


425 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 01:06:20 ID:WPDAQ+Zk
「……無理……むりだよぉ……」
ティアナが死ぬ所なんて、絶対に見たくない。しかし、彼女の要求を呑む事が出来ない。
まだスバルは怖かった。自分の中にある、戦闘機人の力が。
「じゃあ、黙ってみてなさい」
ティアナは力を込めて、デバイスを押し付ける力を強める。スバルは見ていられなくなって飛び出そうとする。
しかし、ティアナはそれを一喝した。
「動かないで!」
「っ!!」
「アンタが一歩でも動けば、その時点で私は引き金を引く。目を背けても引くわ。私の覚悟、しっかりと見なさい」
スバルは動けない。
室内戦で強いといっても、それは間合いが近い場合だ。まだスバルの拳が届く距離までは遠い。
当然だ。ティアナは予め、その距離を測って、そこに立っていた。
「なんで……なんで、こんな……止めて……もう……」
お願いだから止めてくれ。スバルの眼がそう語っていた。
自分はこんな事をさせないために、親友を死なせない為に、こうする事を選んだのに。それなのに何故、こんな事になってしまったのか。
 
「スバル……アンタの昔を知って、まったく気にならなかったって言えば嘘になる。それは否定しない」
 
「お願い……お願いだから、そんなことしないで……」
 
スバルの言葉を無視して、彼女は言い続けた。
ティアナの腕は、震えている。彼女も怖いのだ。死の淵に自分で立っているのだから。
「私はアンタみたいに不幸な目にもあってないし、世界中に自慢できるほど、幸せな女の子でもない。中途半端な存在よ」
そうだ、いつでも自分は半端だった。士官学校も、空隊も落第。飛ぶ能力を持っていない今の自分では、執務官になるのは夢のまた夢。
才能がないのは、自分自身が一番よく知っている。この目の前に立っている少女の方が、よっぽど明るい未来が、幾らでも約束されるはずなのだ。
 
「でも……これだけは言えるわ」
 

426 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 01:06:46 ID:WPDAQ+Zk
「ティア……止め、てよ……」
 
スバルの瞳から、一筋の涙が流れる。それを見て、ティアナは確信した。
ああ、やっぱりだ。確信と一緒に、安堵感が胸の中に広がった。
これなら……これなら、自分は死なずに済む。
 
「私は、アンタと一緒にいられることだけは自慢できる。アンタ以上のパートナーはいないって、胸を張って言える。そう言えるだけの時間を、私達は過ごしてきた。それを否定する奴らがいるなら、私はそいつを許さない!」
 
それは、小さな、けれども大きい、宣誓だった。
今までの、そしてこれからのティアナ=ランスターへ。そしてスバル=ナカジマへ。
「あと十秒経ったら撃つわ。その前に、最後になるかもしれない言葉、言っとくわね」
「……やめて……」
 
十……九……八……七……六……
 
「スバル……アンタと一緒で、ホントに楽しかった。もっと素直になれなくて、ごめんね」
「……お願い……止めて……」
 
五……四……三……
 
「もし生まれ変わったら……私も姉妹に入れてちょうだい。その時はきっと、世界中に自慢できるぐらい、幸せになってるから」
 
二……一……
 
「やめてえええええええええ!!!!」
 
 
 
オレンジ色の魔力光が、銃口から溢れ出る。それは本当の人を殺す刃となる事を、スバルは本能的に察した。
ゆっくりと、スローモーションのように、映像が流れる。
ティアナはゆっくりと、引き金を引く。悲鳴と銃声が……、廊下に響いた。
 
 
 


427 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 01:07:22 ID:WPDAQ+Zk
『ねえ、執務官ってどんな仕事?』
小さい頃、自分は兄にこう尋ねた。管理局の部隊の中でも、特に早撃ちの達人と高い評価を受けていたティーダ=ランスターは、あっさりと答えた。
『人を護る仕事だよ』
いつもと同じ回答に、ティアナは頬を膨らませる。何処かはぐらかされた気がするのだ。
だが、彼として大真面目だったりする。それが長所であり短所でもあった。
『お兄ちゃん、いつもそればっかり』
『だって、そういうしかないから……仕方ないよ』
入りたての陸士部隊も、研修先で言った本局の次元航行船も、これから試験を受けようとする執務官にしても。彼は同じ答えしか言わなかった。これまた大目に見れば間違っていないので、幼いティアナはいつもそれ以上は言えないのだった。
『この間、戦技教導の人が来たって言った時だって『自分より年下なのに凄い凄い』って、それだけでしょ』
『いや、本当に凄かったんだよ。まだ中学生くらいなのに、同じ射撃型として感心する。ミッドの生まれじゃなくて、何処かの管理外世界出身と聞いたけどね』
『ふーん……って、そうじゃないよ、お兄ちゃん! 何で同じ事しか言わないの? 皆同じなら、何処でも一緒でしょう』
うーん、と何は首を捻らせた。どうやら本気で悩んでいたらしい。しかし数秒考えた後、笑顔で答えを口にした。
『どんな部隊でも同じじゃないなあ……だって、執務官になりたいと思ったのは、手っ取り早いから』
『……それだけ?』
『ウン。でも、とても合理的だと思う。執務官になると、単独で動いたり、緊急の時には隊長にもなれる権利があるんだよ。だから効率的に人が助けられる』
『お兄ちゃんが合理的とか効率的とか言うのって、気持ち悪い』
『酷いなあ……お兄ちゃん、悲しいよ』
そう言いつつ、ティーダは笑顔だった。ティアナもそれに釣られて笑う。昔から、人柄の良いことで周りから有名だった。和ませる雰囲気があるのだ、彼には。
『でも簡単だろ。お兄ちゃんは大事な人を護りたい。そのために管理局に入った。イザって時に、護りたい人を自分自身の手で護れるのは執務官だ……って、ほら。分かったでしょ』
『うん……』
まだ小さかった彼女には、やはり分からなかった部分も多い。けれど、それでも良かった。
いつもそうしてきた様に、じゃあ、といって何の顔を覗き込む。頼もしい、背の高い、世界で一番格好良くて、強い兄。


428 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 01:08:00 ID:WPDAQ+Zk
『お兄ちゃんの一番大事な人は?』
するとティーダは、その両の腕で最愛の妹を抱きしめて、こう言う。
『君だよ、ティア。ティアを護る為に、僕は執務官になる』
柔らかくて、誰よりも優しい腕に抱えられて。ティアナは満面の笑顔で、兄の肩に顔を埋めた。
今までずっと、二人きりで生きてきた。この世界で二人しかいない、大切な家族。でも自分は……もう、それを護ることは出来ない。
執務官の夢は、己の夢であった。しかし兄の夢が自分を護ることなら、自分は何を護れば良い? 一番護りたかったものは、もう存在しないのに。
長い間、見つけられずにいた答え。でもそれがようやく、見つかりかけている。
 
 
 
「……ははっ……腰が……抜けちゃったわよ……」
自分は……兄の夢の代理人じゃない。同じ事を望んだ、二つで一つの強い夢だ。
ティアナが賭けに勝った時。それは、ティーダの夢が、自分のものになった瞬間だった。
「……ティア……」
ティアナは廊下にペタンとしゃがみ込んで、パートナーを見上げていた。我慢できずに駆け出したスバルは、彼女の手前数十センチの所で固まっている。
アンカーガンが、ティアナの手から零れ落ちる。震える腕は、それをキャッチできない。カシャンと、無機質な音を立てて床に落ちた。
デバイスから、黒い煙が僅かに上がっている。魔力を伝達する回路が耐久度を超えた為、そこからショートしてしまったのだ。
ティアナの予想した通り、この一発で、万に一つの可能性の、故障が発生したのである。魔力の伝達が出来なければ、魔力は固まらずに四散するだけだ。
「もう二度と……こんな事、ごめんだからね……」
「ティア!」
スバルが痺れを切らしたように、ティアナに飛びつく。自分のそれよりも、彼女の身体は震えていた。
「ティアのバカ! なにやってんの!? こんな……こんなの……もう、無茶して……バカ!」
支離滅裂で、言葉になっていない。何時の間にか、スバルの頬は涙で濡れていた。とめどなく、溢れてくる。ティアナが病院のエレベーターで流したように、止める手段を知らないように。
「別にバカな事した覚えはないけどね……それより、ほら」

429 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 01:08:41 ID:WPDAQ+Zk
「あ……」
飛びつく時に落ちた嘆願書を、ティアナは手を伸ばして拾い上げる。震えている両の手で、ビリビリと細かくすり破った。
あっと言う間に、スバルが書いた文章はただの紙の集合体になる。
「これで、コンビ解消はなしよ」
「……ティ……、ティ、ア……ヒック……どうして……どうしてよ……」
「友達だからって、言ったでしょ? 聞いてなかったの?」
「そうじゃ、ないよ……ぐすっ……どうして、私の事、……そん、なに……えぐっ……」
信じてくれるの? そう言いたい。だけど言葉が出ない。
溢れ出る涙が、それを阻害する。眼から出るものだけじゃない。心の底から溢れ出る感情が、スバルを泣かせていた。
これは何だろう? 嬉しさ? 悲しさ? それとも、もっと別の……?
「あのね……私が死ななかったのは、アンタのおかげよ」
「ふえ……?」
震える手をもう一度伸ばして、今度は自分のアンカーガンを掴んだ。一旦しがみ付いているスバルを話して、故障しているデバイスを見せる。
「ちゃんと見ないと分かんないけど……細かい傷が結構あるのよ。さっき調べたから、知っていたんだけどね」
確かにアンカーガンの表面には、削り取ったような跡があちこちに見られた。だがそれだけではない。
中を分解していないスバルは知りえないことだったが、実は内部は想像以上にボロボロだったのだ。
「フレームは基体部分に亀裂が入ってたし、カートリッジを入れる所は歪になっていて、慎重にやらないと弾が装填できない。魔力関係の部分はこの通りよ」
ヒラヒラと、デバイスを振る。だがスバルは、彼女が言った事に青ざめていた。もし、ティアナの言った事が本当だとすれば……それは故障どころの話じゃない。
「ティア! それじゃ……アンカーガンは、暴発するかも知れなかったの!? 故障しても、起こらなくても……死ぬかもしれなかったの!?」
「まあ……その確率は高かったわね」
サラリと流すが、実際は高い所の話ではなかった。上手くデバイスが機能したら、ティアナは死ぬし、もし故障が起こっても、その故障は使用者の死に直結しかねないほどに危険なものだったのだ。
スバルの顔は、再び涙で濡れそうになる。
「そんな……ティア……」
パートナーは答える代わりに、そっと涙を拭いてやる。
「でも……私は死なない自信があった。スバルと一緒にやってきたから」
「私と……一緒に?」

430 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 01:09:12 ID:WPDAQ+Zk
「もし私のパートナーが、アンタの言う通りに化け物だったら、私は死んでたわ。でもアンカーガンは、そういう壊れ方はしないでいてくれた。アンタが私の事を思って、デバイスも極力傷つけないように、壊れやすい事を人一倍知っていて、気を使ってくれたからよ」

確かにそうだ。スバルもローラースケート型のデバイスを持っている。訓練校では持込で、自作だった。だからこそ、その危険性と壊れやすさも知っていた。同じ自作のティアナのデリケートさを分かっていて、常にそれを意識していた。
初めての訓練で、ティアナを自分の馬鹿力で飛ばしてしまった時も、シフトの練習をしている時も、模擬戦の時も、次の授業の予習を二人でする時も、休日返上の自主練も。

「ただの機械人形と組んでたら……こんな壊れ方はしない……もっと粗雑で、滅茶苦茶な壊れ方してたわよ……」
 
そう言って、親友を見る。涙でグシャグシャになってスバルの肩を、そっと抱いてやった。
 
「分かる? スバルと一緒だったから、私は死なずに済んだの。スバルがスバルだったたから、私は今こうして生きていられるの」
 
「私が……私だったから……」
 
「そうよ……アンタが、人間だから。人の心……持ってるから」
 
全てを、許された気がした。
何年分もの優しさを凝縮させたような、静かで涼やかな言葉が、スバルの心に流れ込む。
 
「もっと、自分に自信持って。スバルは、誰かを助けられる人なのよ」
 
「うっ……ぐす……えぅ……ひゃぐ……」
 
「アンタの身体……こんなに暖かいじゃない……アンタの涙……こんなに……優しいじゃない……」
 
「うん……うん……うぅ……ふああああああああん!!」
 
堰を切った様に、今まで以上の涙が溢れ出る。

431 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 01:09:48 ID:WPDAQ+Zk
これが、悲しみな筈があるものか。先程まで自分を混乱させていた感情を、スバルはようやく理解した。
嬉しい。それ以外に何がある。
陳腐な言葉だ。単純な二文字。……でも、でもそれで十分だ。
 
「ごめんね! ごめんねティア!! もう言わないから!! 一緒に居たくないなんて言わないから!! 自分の事、化け物なんて呼ばないから!! コンビ解消したいなんて……絶対に、言わないからぁ!!」
 
その後、騒ぎに気付いた局員が来るまで、スバルは泣き続けた。
もしかすると、それは産声だったのかもしれない。スバル=ナカジマとしての、本当の人としての。だから、始める事が出来た。
二人の本当のコンビとしての日々は……ここからだ。自分も、大粒の涙で顔を濡らして、ティアナは心から、そう思うことが出来た。
 
 
 
 
「とまあ、そんな事があって私はスバルの正体を知った訳なんだけど……うひゃあ!」
機動六課の隊舎。その食堂のオフィスの中で、ティアナは素っ頓狂な声を上げてしまった。
テーブルで向かい合って座っていた三人……エリオとキャロと、アルトが、一斉に涙を流している。少し不気味な光景だった。
「ご、ごめんなさい……なんか、余りにいい話だったものですから……」
「そ、そうかしら……?」
「そうですよぉ……私、ティアさんがそんな事するって知った時、心臓止まるかと思っちゃいました……」
前にもこんな事があった気がする。あの時は、エリオとキャロの身の上話だった。二人がフェイトに拾われて、そこから心を開くまでの経緯を話してもらった時、ガラにもなく号泣してしまったものだ。
JS事件が終わって、隊舎も元通りになった所で、話して置くのもいいかもしれないと思って、三人に語ったのだ。
ちなみに当のスバルはここには今いない。五人分のオヤツと飲み物を買いに、売店まで出ているところだ。彼女は自分も交えて話したがっていたが、そうするとどうしても変な方向に行ってしまうかもしれないので、敢えて止めておいた。
「別に、感動させるつもりはなかったんだけど……」
「いやいや、十分いい話だったよ……お姉さん、感激だ……」


432 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 01:11:04 ID:WPDAQ+Zk
あれ? アルトと私って、確か歳の差は……
キャロとエリオの涙をハンカチで拭ってやりながら、ティアナはふとそんな事を思う。しかし、それはキャロの言葉に中断させられた。
「でもやっぱり……なのはさん達には黙っていた方がいいですよね」
「そりゃそうよ。三人を信頼して話したんだからね」
あの後、本局のお偉いさんと、自分達の部隊の上司に、コッテリ絞られた。デバイスを廊下でぶっ放そうとした挙句、パートナーと言い争っていたのだから。
と言うより、それだけですんで本当に良かった。
本当に自分達は運が良い。もしあそこに通りかかったのがなのはだったら……考えただけでも恐ろしい。
「もしバレたら、頭冷やされるだけじゃすまないでしょうね……」
ティアナがブルリと身体を震わせて、呟く。何処からか寒気がしていた。
「で、でも!」
エリオがガタンとイスから立ち上がる。その眼には、なにやら熱がこもっている。
「もしティアさんが自分の事で悩んでたら、僕も同じ事をしますよ! ストラーダのセカンドモードで、海に飛び込みます!」
「いや、別にそういうことじゃ……」
何やら趣旨がずれているような気がする。あの時はそれしかする事が思いつかなかっただけである。もっと他の方法とか、説得する手段とかは、今なら思い浮かぶ。
しかし、キャロもそれに同調したように、声を張っていった。
「わ、私もヴォルテールを召還して!」
「いや、それはマジで止めなさい!!」
「うんうん……オールフォーワン、ワンフォーオールか……素晴らしい!」
「アルトも変なリアクション取るの止めなさいよ!」
これじゃあ、まるで自分に自殺願望があるみたいだ。自分は死にたくないし、何より自分自身の存在で迷うことは、絶対にないと確信できた。
 
今目の前にいる、仲間たちがいるから。キャロとエリオは、フェイトが聞いたら失神しそうな事を言っている。
一応立場上止めてはいるが……もしエリオがプロジェクトFの遺産である事を再びコンプレックスに持ったり……キャロが竜召還の力を疎ましく思ったりしたら……その時自分は、同じ事をしないと、言えるだろうか。


433 名前:命がけの友情:2008/02/13(水) 01:11:35 ID:WPDAQ+Zk
 
(言えないわね……きっと)
 
その時ばかりは、隊長たちを頼らざるを得ないだろう。護りたいと思うものがある限り、自分はこの先、何度でもデバイスをこめかみに押し付け続ける。命を懸けて、友情と、信頼は護る。それが自分のプライドだ。
シグナムがいつか言っていた事……『命を賭して、護らなければいけない事は、確かにある』……JS事件が終わってから、その言葉の意味を、実感できるようになった。
 
「みんなー!!」
 
「あ、スバルさんだ。スバルさん、今ティアさんから……」
「それどころじゃないよ! 急いでギン姉を止めなきゃ!!」
「え? ギンガさんが来てるんですか?」
「そうなんだよ! しかもお手製のアップルパイ付きで!!」
「んな!!?」
「へ? 何をそんなに慌ててるの?」
「アルト、エリオ、キャロ! 急いで止めるわよ!」
「ティアさん、どういう……」
「いいから! 訳は走りながら説明する!」
「ええ!? 廊下を不用意に走ったら、またなのはさんに頭冷やされて……」
「その頭が再起不能になるかもしれないのよ!!」
 
六課最大の弱点は、戦闘要因の不足である。それを露呈する事になりかねない。スバルとティアナは、魔王級の破壊力を秘めたギンガのアップルパイが隊長陣の口に入るのを阻止すべく、一気に走り出した。
キャロと、エリオと、アルトも、お互いに顔を見合わせて、とにかく後を追った。
 
 
この夢は、誰にも負けない。執務官と言う目標は、手を伸ばせば届く距離まで、近づいてきている。
助けてあげたいと……側にいてあげたい、何より側にいて欲しいと、強く望む者がいる。
それが多くあればあるほど、自分は何処までだって行ける。
「ティア!」
「何よ!」
「私も、自分の身体に使うよ! 振動破砕の力!!」
「こ……このバカスバル!!」
すっ転びそうになって、それでも廊下を走って、ティアナは、それを確信できた。

434 名前:バンパー:2008/02/13(水) 01:17:17 ID:WPDAQ+Zk
以上です。
ケッコウ駆け足で書いてきましたが……どうだったでしょうか?
自分は意識したつもりはないのに、何時の間にか百合な空気に……

ねえ……私の書いてるSS……私の考えてること……そんなに間違ってる?

後、司書の方々、お疲れ様でした! 保管作業を行ってくれるからこそ、我々も書いておくこと出来ます。
なんか本当に申し訳ない気分になってしまいます、自分は書くだけと言うのは……
もう少しネットに関して勉強して、手伝う事が出来ればよいと思っております。
それでは、ありがとうございました。
今後あるかどうか分りませんが、HNをバンパーとしておきます。よろしくお願いします。

435 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 01:23:08 ID:/QY4hOM1
>>434
>ねえ……私の書いてるSS……私の考えてること……そんなに間違ってる?
私はただGJすることしか出来ないんですっ!

ちなみにバッチリ百合スレでも補足されていたことを報告しておこう

436 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 01:24:03 ID:rlm7sP20
スバルは劇中でも二回ほどティアナに告白してるから問題ナッスィン

437 名前:アルカディア ◆vyCuygcBYc :2008/02/13(水) 01:31:27 ID:hSQxm8iz
>>26-111
御返答、誠に有難う御座いました。
矢張り、司書諸兄のお手を煩わせる訳には行きませんので、必要に応じて適当なロダにうpらせて頂きます。
……いえ、遠慮とかじゃなくて、恥ずかしながら、誤字脱字のみならず会話が一行抜けてたり文脈日本語おかしな所がごろごろですので、後世に恥を残さないようにしたいというのが本音の所ですw

御忠告は有り難く肝に命じさせて頂きます。
「アルカディア」というハンドルも誤字を自身に戒めるためにつけたのですが、
それでも誤字を見逃す自身の愚昧さに頭を抱えています。
読んで頂く皆様の為にも、出来る限り誤字脱字を無くした形で発表できるよう、精進させて頂きます。

「Little Lancer」の修正版は5話までは完成していますので、入用の際は何時でも御申しつけ下さい。

>>389〜〜〜
見えたっ! このスレの未来が見えたっ!
ttp://dekubar.blogspot.com/2008/02/blog-post_08.html
(嘘ですごめんなさいごめんなさいごめんなさい……)

>>434
お疲れさまでしたGJ!! この量この速度でこのクオリティ、バンパー氏は化け物か!?

438 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 02:10:27 ID:mdl111ii
>>434
ええ話やないけ〜〜。・゚・(ノД`)・゚・。



で、
この外伝はいつOVA化されるんですか(`・ω・´)?

>>437
(リンク先は見る人を選ぶな〜)

ところでギンガにもスバルと同じような事があったはずだ!
ラッドが「ボクはしにませ〜〜ん!」て叫んで道路に飛び出てトラックに身投げしたり、
ギンガの手料理を全て平らげたり、
裏でギンガやナンバーズの悪口を言ってた野郎を血祭りにあげたり、上官を背中から撃ったりetcetc

あれ?いつのまにかラッド君が黒くなちゃった

439 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 02:13:50 ID:VE3Zx1Zj
>>434
乙、しかしスゲー執筆速度だw
どれ位で書き上げたんだろう?

>>438
ラッド君は設定だとお人良しのみたいだし、それはイメージとは違うなw

440 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 02:14:34 ID:G9qdEHwy
>>438
カルタスが漢な件について。
てか、ギンガの料理ベタって公式設定だったっけ?

441 名前:( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc :2008/02/13(水) 02:18:11 ID:0qC7IrA8
えー、なんでこんなの書けるんでしょうか。私。

注意事項
・エロ。陵辱。ょぅι゛ょ。
・いろいろと無理があります。
・淫獣全力全開。
・あぼーんキーワードは「蟻地獄」

442 名前:蟻地獄 淫獣編 1/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/13(水) 02:19:01 ID:0qC7IrA8
『世界は、こんなはずじゃなかった事ばっかりだよ!』
 知人の某提督の、執務官時代の名言が、脳裏によみがえる。
 まさにその通りだ。
 こんなに自分は苦しんでいるというのに、周囲はまったくそれに気づかない……いや、
それどころか、むしろこの問題に関しては、恵まれているとさえ思われている。
「違う…………」
 くしゃっ、彼の手は、それまでその目でのめり込むように注視していたその雑誌を、つ
かんで丸める。
「違う違う違うこんなんじゃないこんなんじゃいやだぁっ」
 ユーノ・スクライア、19歳……もう2ヶ月弱で20歳。
 血涙流し、彼は心の内を、防音の聞いた自室でシャウトした。

「リアルな女の子とセックスしたいぃぃぃぃぃっ」

 9歳の時、運命的な出会い方をした、同い歳の少女がいた。
 彼にとって、彼女はミッドチルダ式魔法の弟子であると同時に、恋愛感情の対象でもあ
った。
 無限書庫に勤めて彼女との親交を深め、彼女もまた管理局に就職し、より親密な関係に
なっていった。
 お互い、心は通じ合っている……そう思っていた。
 それが、である。
『この子の両親として、これからも2人でがんばって行きたいと思ってます』
 ……養女を指して、同じ頃からの、付き合いある相手と一緒に、インタビューにそう答
えられた時には、一瞬、目の前が真っ暗になった。
 予想外もいいところだ。確かに、その相手は自分と同じくらい昔から、彼女と付き合い
のある人物だが……女性、彼女とは同性同士のはずである。
 しかも、
 ────無限書庫のスクライア司書長との仲も囁かれていますが?
 彼女を芸能人か何かと勘違いしたような、記者の質問に、彼女は、苦笑混じりに、しか
し、サラリとこう答えた。
『ユーノ君? 彼は、いい友達だと思ってます』
 ────終わった。
 その時、まさにユーノは真っ白に燃え尽き、椅子に力なく腰掛けて、数時間ほど、1人
でたそがれていたという。
 もともと四六時中滾っている方ではないが、性欲旺盛真っ盛りの10代後半、興味がない
わけがない。それを、多忙による半ば強制的な禁欲生活に耐えられたのも、彼女が自分と
結ばれるであろうという確信あったればこそである。
 しかし、気がついてみれば、彼女の心で、自分の居場所はその片隅に過ぎず、そして自
分は「ヤラハタ」目前。こんなことが許されていいのだろうか。いやよくない。
 とりあえず、状況の一端を作った某提督の乗艦──最新鋭の巡航IV型『クラウディア』
──には、丹念に織り込み偽装したウィルスを送り込んでおいた。一定距離を航走した後
にその究極兵器──空間歪曲破砕砲『アルカンシェル』──を暴走させて自爆するように
なっているが、まぁ奴の事だから死にはしないだろう。

443 名前:蟻地獄 淫獣編 2/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/13(水) 02:19:23 ID:0qC7IrA8
 さぁもう何もかも投げ棄てよう、そしてはじめよう、新たな性活を、性春を謳歌しよう
!! ……などと意気込んだはいいが、生来の性格に加えて、本来多感な思春期前半を暗い
書庫に引きこもって過ごした彼に、付き合いの浅い女性に気の効いた言葉をかけられるは
ずもなく。
 さりとて身内と呼べる女性はといえば、某使い魔はとっくの昔に別の牡狼とデキており、
某夜天の王には悪い虫が集っており、しかも自分が近づくにはガードが固すぎる、という
か命がいくらあっても足りない。同じ理由でその騎士たちもパスだ。脳天から真っ二つも
脳漿ぶちまけるのも脳改造もまっぴら御免である。
 そして気がつけば、仕事帰りにコンビニでエロ本を買って自分で慰める毎日が続く始末。
 ────いやだ…………いくらなんでも惨め過ぎる。
 世の中に彼より惨めな男性はいくらでもいるのだが、まぁ、そんなことはベラベラ口外
すべきものでもなく。彼はそれを生まれの不幸と呪うまでになっていた。
「っくっ……」
 ふと視線を動かすと、数ヶ月前、表紙に載っていた彼女の写真が目当てで買った雑誌が、
目に入った。
『総力特集・機動6課』
 今にして思えば、この雑誌を買って喜んでいた頃の自分は、どれだけ無邪気で、そして
無様だったのか。
 破り捨てようとして、ふと、視線にあるページが入った。
「…………こうなったら……それでもいいか……っ」
 言うと、彼は、一度はグシャグシャにしてしまったページを開きなおし、記事に目を通
しなおす。

444 名前:蟻地獄 淫獣編 3/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/13(水) 02:20:05 ID:0qC7IrA8

 数日後。クラナガン、機動6課隊舎。
 万国の労働者が秒単位で待ち焦がれる退勤時間が過ぎた頃、ユーノはふらりと、そこを
訪れていた。
「あれ、誰もいないんだ」
 フォワード陣のオフィスに入り、ユーノはわざとらしく呟いた。
「あ、え、と……スクライア司書長」
 まだ、ユーノの胸元にも届かない小さな影が、がたん、と立ち上がり、ユーノを見る。
「ユーノでいいよ」
 ────落ち着け、落ち着け、相手は子供だ。
 ユーノは気さくな年長者を気取り、苦笑混じりのやさしげな微笑で、目の前の少女に言
う。
「なのはたちは自主練?」
 オフィスを見回すしぐさをして、そう訊ねる。答えはわかっているのだが。
 ヴィータ、スバル・ナカジマ、ティアナ・ランスターのスターズと、エリオ・モンディ
アルは、この時間は自主練を欠かさない。高町なのはとフェイト・T・ハラオウンの2人
も自主練か、さもなくばさっさと家に帰って養女の高町ヴィヴィオと3人でイチャついて
るか。シグナムはそのへんで茶をしばいている。
 したがって、この退勤時間間際のオフィスには、彼女──キャロ・ル・ルシエしか残っ
ていない。
 逆に言えば、この時間、キャロだけが確実にオフィスに残っている。ティアナはスバル
に引っ張られていくし、あとは隊長2人含めバトルバカしかいないため、他にオフィスに
詰めている人間がいなくなってしまうからだ。
 もちろん、ユーノは前もってリインフォースIIにお菓子を与えるなどして、この情報を
入手しておいたのである。
「あ、はい、そうです……」
 少し困惑気に、キャロは視線を伏せて、そう言った。
「そうか、残念だな」
 大仰に、ため息をついて、肩を竦めるしぐさをする。
「あ、あの、隊長たちなら、スクライア司書長が来たって言えば、すぐに戻ってくると思
いますが……」
 キャロは困惑気にしたまま、ユーノにそう言った。
「いや、いいよ。別に仕事の話ってわけじゃないし。……そうだ」
 わざとらしく、ユーノはその場で思いついた、と言うように、指を立てる仕種をして、
言う。
「食事に誘うつもりだったんだけど、良ければ、一緒にどうかな?」
「え?」
 ユーノの言葉に、キャロは反射的な感じで、聞き返す。
「私が、ですか?」
「他に、誰かいるかな?」
 ストレートな言い回しは、同年代以上の女性には「ウィットさが足りない」と言われて
しまうのだが、キャロはそこまで気にしない。

445 名前:蟻地獄 淫獣編 4/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/13(水) 02:20:27 ID:0qC7IrA8
「え……でも、悪いですよ」
「良いんだよ。このまま帰っても1人だからね」
 ユーノは、また、肩を竦めて、そう言った。
 正直同じことができれば、彼の容姿からすれば、女性をナンパすることもそれほど難し
くはないのだが、悲しいかな根が初心(うぶ)な彼にはそこまでできる度胸がない。
 キャロが若干10の子供で、しかも知り合いが後見人をしている孤児、と言うことで、半
ば無意識に、強制的に気を落ち着けているのである。
「あ…………」
 しかし、ユーノの言葉に、キャロは幾分寂しげに、視線を俯きがちに下げた。
 ユーノはそれを意識したわけではなかったが、キャロの琴線にひっかかるキーワードが
あったのである。
「って、いきなり言われても困るかな」
 ユーノはいきなり、眉を下げて苦笑した。
 これが演技なら大したものであるが、実のところ、少し気が引けてきたのである。怖気
づいたわけである。
「それじゃ……」
「あ、あのっ!」
 ユーノがそそくさとオフィスを去ろうとしたとき、キャロは、あわてたように顔を上げ
て、視線をユーノに向け、声をかけた。
「お食事……一緒に行かせてくださいっ」
 キャロの申し出に、ユーノは軽く驚いた。
「……いいの?」
「は、はいっ」
 ゴクリ、ユーノは息を呑み込み、昂ぶる気持ちを抑える。
「そ、それじゃあ、待ってるから、準備しておいでよ」
「は、はいっ」
 キャロはどこか嬉しそうに笑うと、着替えに、奥のロッカールームへと移動していった。
 ユーノはその間、オフィスの扉の外側で、彼女を待った。

446 名前:蟻地獄 淫獣編 5/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/13(水) 02:20:47 ID:0qC7IrA8

 そこそこムードもあり、かつ、子供向けのメニューのあるレストランに連れて行く。
 ただし、今日は本当に、食事をするだけ。
 何度か繰り返して、キャロを信用させる。
 それがユーノの計画だった。
 もちろん、なのはやフェイトが、ユーノの事をどう思っているか、聞き出すのも忘れな
い。
「僕のこと、どう聞いてる?」
 3度目の食事の時に、さりげなく振ってみた。
 回数を重ねたこともあり、ユーノの方も気が大きくなってきている。
「えっと、なのはさんには、自分の魔法の師匠だって聞いてます。感謝してるって。フェ
イトさんも、優しくて、いい人だって言ってました」
 笑顔で答えるキャロに、ユーノは満足した。

447 名前:蟻地獄 淫獣編 5/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/13(水) 02:21:11 ID:0qC7IrA8

「そろそろいいかな……」
 4度目の、6課オフィス訪問。
 あまり繰り返しても、なのはとうまくすれ違っていると推測されて、逆効果だろう。
 ユーノは、そう判断しつつ、キャロを誘い出す。
 今回は、自動車を使うことにした。もちろん、思惑があってのことである。
 地球のフィアット500に似た車の、助手席にキャロを乗せ、ハンドルを握る。
「…………どうしたの? キャロ」
 以前のように、はしゃぐ様子のないキャロを見て、ユーノは焦りつつ、訊ねる。
 ────なにか、まずったかな?
「あっ、え!?」
 キャロははっと顔を上げ、きょろきょろと辺りを見回した。
「あっ、えっと、なんでもないです……」
 苦笑して、そう答える。
「それならいいけど」
 ────大丈夫かな。
 少し不安に思いつつ、ユーノは、苦笑を返した。

 そして、いつものように、レストランで夕食を終える。
「えっと……ユーノさん?」
 車が、機動6課隊舎とは別の方向へ走っているのに気付いたか、キャロはどこか不安げ
に、ユーノに訊ねてくる。
「いいから、少しドライブしようよ。明日、非番なんでしょ?」
 ユーノはウィンクしつつ、そう言った。もちろん、ライトニングが明日、非番であるこ
とも、アイスクリームを餌にリインから聞き出している。
「えっと……はい」
 はにかむようにしながら、キャロは答える。
 一方のユーノは、キャロのそんな表情にも気付かない。心臓は高鳴り、鼓動が車のエン
ジン音さえ阻害する。タコメーターを見ていなければ、シフトミスしそうだった。
 そうして、キャロを、機動6課隊舎から、離す。
 クラナガン郊外。市街からは少し離れた場所に、ユーノが目的とする建物が、各々は離
れて、点在する。
「ちょっと、寄り道するよ」
「えっ?」
 ユーノは言い、キャロが答える前に、車をホテルの駐車場へと入れてしまう。
「え、えっと、ユーノさん?」
「いいから、ついておいで」
 車を停め、自分はさっさと降りてしまい、運転席のドア越しに、助手席のキャロを促す。
ユーノが運転席のドアを閉めると、果たして、キャロは助手席から、降りてきた。
「あっ……」
 キャロの手を握り、引っ張るようにして、部屋に連れて行く。

448 名前:蟻地獄 淫獣編 7/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/13(水) 02:21:32 ID:0qC7IrA8
 積極的な抵抗こそなかったが、キャロは不安そうに、きょろきょろと見回しながら、歩
く。
「入って」
 荒くはない、しかしはっきりした口調でそう言って、キャロを部屋に入れさせる。
 後ろ手に部屋の扉を閉め、鍵をかける。
「えっと、ユーノさん、こ、ここって……」
 キャロが言い終えるより、早く。
「っあ、きゃっ……」
 ユーノは、キャロを、ベッドの上に、押し倒した。
「あのっ……ぅ」
 ツーピースの私服を着たキャロの、シャツを右手でたくし上げ、左手をスカートの中に
突っ込む。
「やっ、服が、皺になっちゃいます……っ」
 どこかズレた、そんな言葉を言うキャロに、ユーノはしかし、ニヤニヤと薄笑いを浮か
べる。
「服が皺になる? じゃあ、脱がしていいってこと?」
「えっと、その……ふわっ!?」
 キャロがいくらか逡巡した隙に、シャツを一気にたくし上げ、捲くってしまう。そのま
ま上に上げ、本当に脱がせてしまう。
 ふわっ、と、傍らにある、テーブルの上に乗せた。
「ほら、こっちも脱ぎ脱ぎしようね」
 ユーノは、わざとおどけて言い、キャロのスカートのホックを下ろしてしまう。
 スカートを引っ張ると、キャロは抵抗せず、ずるり、と脱がせることができた。
 ブラはまだつけておらず、白い、アンダー用のキャミソールと、女児用にしては妙に色
気のあるショーツ。
「可愛いよ、キャロ」
「は、ぅ……」
 キャロはふるふると震えて、涙を滲ませながら、ユーノを見る。
 ユーノは、かまわず、キャロのキャミソールの中に手を入れて、その素肌を撫で回す。
「すべすべだ……女の子の肌って、いい触り心地だね」
「!?」
 キャロは、何かに気付いたように、はっとユーノを見る。
 しかし、ユーノはそれに気付いたのか、わざと無視したのか、そのまま、一度手を離す
と、両手で、キャロのショーツに手をかける。
「っや……だめっ……」
 さすがに、キャロは抵抗を見せた。手で股間の大事な部分を隠すように覆い、脚をユー
ノの上半身に絡めて、もがく。
「だめだよ」
 しかし、キャロの抵抗は、逆効果になった、ユーノは、肩でキャロの脚を持ち上げ、ひ
っくり返してしまう。
「っや、ぁ……」
「さあ……見せて、キャロ。キャロの大事なところ……」
 するり、ついにショーツがずり下ろされる。

449 名前:蟻地獄 淫獣編 8/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/13(水) 02:21:57 ID:0qC7IrA8
 キャロは、なおも手で大事なところを隠そうとする。だが、いかにユーノが優男でも、
19歳と10歳。難なくキャロの手をどかし、そこを、視界におさめた。
「やぁぁあぁっ、み、見ないでぇっ」
「へぇ、外からだとシンプルなんだね」
 キャロの悲鳴にも構わず、ユーノはじっくりと、あらわになった合わせ目を、観察する。
「っ、ひっ!」
 キャロの大事な割れ目を、ユーノの指がなぞりあげ、そして、そっと割っていく。
「だめっ、やっ、そんなことしちゃっ!」
 しかし、キャロの肩はユーノの力でベッドに押し付けられており、もがくことすら困難
だった。
「中は複雑なんだ……でも、思っていた程じゃないかな。キャロはまだ小さいからかな」
「っ」
 キャロは、羞恥と、怒りと、恐怖が混じった表情で、真っ赤にする。
「あれ、結構ねばねばしてる……あ、濡れるって、こういうことなんだ」
 不躾に、キャロの花びらを、ユーノの指が擦って来る。刺激された粘膜はたまらず、バ
ルトリン腺液が分泌される。
「キャロ、もしかして気持ちいいの?」
「!」
 涙を湛えた目を、ユーノの言葉に、はっと見開く。
「あはは、そんなワケないか、こんな風にされてて。刺激されると、普通出るんだよね。
保護の役目だから……」
 そういう手合いの本には、間違った知識が載せられているが、そんなものは、無限書庫
司書長にかかれば、ただのバカな戯言である。
「やぁ……もう、やめて……」
 キャロは、いやいやをするように、首を横に振ったが、ユーノの指は、丹念に、キャロ
の外性器を、こねくり回していく。
「キャロはまだ小さいから、外側の分泌液で中に湿らせとかないと、いくらなんでも、痛
すぎるからね」
 そうは言いつつも、ユーノは、実に楽しそうに、指でキャロの花びらを弄び、膣口をく
すぐってくる。
「そういえば、ここって触られると、どうなるのかな」
 きゅっ
「ひっ!?!?」
 キャロの肩が、反射的に跳び上がる。
 クリトリスを、まだ剥けない包皮の上から、乱暴につままれたのだ。
「あく……はっ……」
「あははは、こんなところも、もう、敏感なんだね」
 ユーノは、面白がって、キャロのクリトリスを、きゅっ、きゅっ、と、何度か摘み上げ
た。そのたびに、キャロの体が、跳ね上がるように、暴れる。
「それじゃあ、そろそろ見たいところは見せてもらったし」
 カチャカチャ……金属のぶつかり合う音がする。ユーノは、肩でキャロの脚を開かせた
まま、自分のベルトのバックルをはずし、ズボンを下ろした。

450 名前:蟻地獄 淫獣編 9/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/13(水) 02:22:21 ID:0qC7IrA8
「さすがに、そのままは、かわいそうだからね」
 ユーノは自分の下着まで下ろすと、にちゃにちゃと、何かを捏ねる様な音を立てた。
「それじゃあ、入らせてもらうね、キャロ」
 ユーノはそう言うと、テラテラと光るそれを、キャロの大事な割れ目に、宛がった。
「やっ、そんなこと、むっ、りっ……っ」
 いくらキャロが子供でも、それが何を目的としているのか、直感的にわかった。自分の
中に、それを、入れるつもりだと。
 にゅる、ユーノがキャロの膝を押さえると、何か生暖かい粘液が、ユーノの手からキャ
ロの肌についた。キャロにはそれが何かわからなかったが、いわゆるシリコン系のローシ
ョンだった。
 ずぐぅ……ずっ。
「ひぃっ、あぁぁぁぁぁっ!!」
 キャロは、甲高い悲鳴を上げる。のた打ち回りかけた。
 痛いと言うより、熱かった。熱した火箸を、当てられるかのような感覚。さらに、腹部
にかかる、圧迫感。
「すごい……すごい……、熱い」
「やっっ、や、ひぐっ……ぎぃ……」
 キャロの膣底まで押し込んだかと思うと、ユーノは、そのまま、ずっ、ずっと動き出す。
 ユーノは、キャロの膣に挿入した感覚を味わい、恍惚として、その中を突き上げる。
「くひぃ、はくっ……はっ、はぁっ……」
 キャロはベッドのシーツをつかんで、歯を食いしばり、その痛みに耐えようとする。
 まだ新しい傷を抉るように、硬いものが、お腹の中で暴れまわる。キャロには、そう憂
いう風に、感じられた。
 ────あっ、でも……
 キャロが、その痛みの中に芽生えたそれを感じ取った時。
「はぁ、はぁ……すごい……最高だよキャロ……ああ、女の子の中って、こんなにすごい
んだな……」
「ぁ…………っ」
 ユーノの言葉に、キャロは、苦悶の中に、一瞬だけ、切なそうな声を混じらせる。
「はぁ、はぁ、はぁ……もう、だめだ……出る……っ」
「ぇ、な……」
 何が? そう聞こうとした瞬間。
 ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ……!!
「…………!!」
 熱い液体が、キャロの傷つけられたばかりの粘膜に、ぶちまけられる。黄濁しそうな程
に濃ゆい精液が、キャロの幼い膣内に、放たれる。
「あぐっ……ひっ、ひぐっ……ひっ……!!」
 キャロは、肩をのた打ち回らせて、悶絶する。

451 名前:蟻地獄 淫獣編 10/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/13(水) 02:22:56 ID:0qC7IrA8
 ずるり……
 キャロの中から、ユーノのなえた逸物が、引き抜かれる。
「かはっ、はぁっ……」
 キャロの呼吸の自由が、ようやく戻ってきた。下腹部の圧迫感がなくなり、傷つけられ
た粘膜はまだ異物感を伴ってズキズキと痛み、疼くが、それでも、だいぶ楽になった。
 荒い息をしながら、キャロはぐったりとベッドに横たわる。
「キャロ、いいかい? 今夜の事は、誰にも言っちゃいけないよ? そんな事をしたら、な
のはやフェイトは、困ったことになるだろうし、エリオやスバル達は、君のことが嫌いに
なってしまうかもしれない。いいね?」
 ユーノは、いつもの彼のような、優しげな言葉で、キャロにそう、囁いた。
 キャロは、なぜエリオやスバル達が自分のことを嫌いになるのかは、まったく解らなか
ったが、それでも、これは、言ってはいけない事だと、判断した。
 ただし、そのニュアンスは、若干ユーノ自身とは、異なったのだが、ユーノ自身は、そ
れに気付かない。
「……は……はい……誰にも、言い、ません……」
 荒い息をしながら、キャロは、そう答える。
「よし、いい子だね」
 ユーノの手が、キャロの頭をなでる。体液は、タオルか何かで、拭ってあった。
 キャロは、その感覚に、どこかうっとりしたように、目を細めた。

452 名前:蟻地獄 淫獣編 11/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/13(水) 02:25:34 ID:0qC7IrA8
>>442-451
今回は以上です。

レス番ミス、>>447は 6/10 です。

なんか視点がユーノ視点とキャロ視点が入り乱れてるのがいかんなぁ。
さらっと書いたものとは言え。
で、なんでさらっとこんなもの書けますか俺。やっぱSLBですか?

一応、今回は前後編の前編です。
っつーかタイトルでネタバレしすぎ。

453 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 02:30:48 ID:JS2mrIgj
某ターン氏のペド淫獣を思い出しました。
うん、やっぱり幼女の膣に中出しは最高だね(爽やかな笑顔で

後編も全裸で待ってます。

454 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 02:45:40 ID:VE3Zx1Zj
なんだこの性犯罪者はw



続き待ってます!

455 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 03:07:02 ID:KZpmQZVF
まったく最悪(最高にGJとも言う)だぜ、そして俺はそれこそを望む!

このような幼女蹂躙は最近はあんまり見かけないのでジャンジャカ投下して欲しいと思う。
っていうか投下してください、お願いします。

456 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 03:15:19 ID:yucOTa+I
まさにエロパロ。
GJでした。

457 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 04:53:22 ID:4LYBXG9G
なんで炉利淫獣はすぐ惨劇フラグ立てるん?w
最初は、スバティのどっちかだと思ってたのに
続きを待つ!

458 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 06:21:54 ID:tAGEF9Fu
>>441
OK、淫獣氏ね

あと注意書きはもっとちゃんと書こうよブラザー…

459 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 06:40:05 ID:a96IQlKj
>>458
あのくらいの注意書きだけでも、
作品傾向や出演キャラくらい把握できそうなもんじゃね?

460 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 06:51:10 ID:f4FjClWi
>>459
いや、男側がユーノであるのは分かっても
女側が幼女とあるだけじゃ該当者はけっこういるぞ。
特に今回は陵辱で人選ぶわけだし次回からはちゃんと書いてもらいたい。

461 名前:549 ◆xbn1Z6LB3Q :2008/02/13(水) 07:08:19 ID:Fw5kVRds
>>370
ものによりけり、かな?
1スレの「高町家に引き取られたフェイト 4日目」は、
本筋の虹からの転載分と76氏作成分を1つの目次にまとめ、
95氏の別話分は目次から分けました。

これは旧保管庫の方で、新保管庫も同じようにしたはず、たぶん。
ちょっと今は古い方しか見られないので。


462 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 07:10:36 ID:sCaNweMH
>>458
お前は淫獣氏ね言いたいだけちゃうんかと小一時間(ry

463 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 07:11:50 ID:tAGEF9Fu
>>460
補足トンクスです

>>459
解答を見て漸く題意が分かる、そんな問題の様に
後まで見なければ分からない注意書きに意味があるので?

464 名前:如月 ◆R2l88Tv2WE :2008/02/13(水) 07:20:59 ID:kZ3UI14A
最近ヤンデレとか多くて鬱になりそうなので投下したいと思います。
俺がなのはに求めてるのはそういうのじゃないんだよと声高に叫びたい。
後、淫獣氏ね。

465 名前:如月 ◆R2l88Tv2WE :2008/02/13(水) 07:23:11 ID:kZ3UI14A
魔法が人を殺すのではない、人が人を殺すのだ。

魔砲少女リリカルなのはC ep1/1

まるで世界には自分しか存在していないと錯覚してしまいそうだ、と彼女は思った。
時間の感覚が失せる程に戦い続けている中でふとそんな事を考える。
周囲に山と散らばるのはガラクタと化した機械の兵士。
同じ様に押し寄せてくるのも機械の兵士。
己が相棒に微笑みかけながら彼女はカートリッジをロードする。
背負った弾装から伸びる弾薬帯の駆動音。
彼女が――少女が持つ物としては最早ブラックジョークとしか思えないそれが送り込まれる。
それはミッドチルダとベルカの技術が産み落とした鬼子。
鬼子の名はCMV−0、ミッドチルダ・ベルカ式カートリッジ。
120mmという彼女の腕の太さほどもある馬鹿げた砲弾が、全長5.3mと言う馬鹿げたデバイスに、
4200発/分と言う馬鹿げた速度で、送り込まれる。
空薬莢を真空に散らばせながらその小さな身体を魔力が循環する。
高速で思考を走らせる。世界の基盤を成す物理法則を書き換える為に。
リリカル(想い)でロジカル(論理)を書き換える。
吐く息は白いと言うのにまるで火を吹いているかの様だ。
灼熱の吐息を吐いて飛翔――刹那で音速を越え、弾指で光速に至り、瞬息で光速を越える。
秒速24kp(キロパーセク)の速度で星団外へ飛び出て有象無象の機械兵に砲口を向ける。
後を追って来る機械兵はまるでノロマな亀だ。
あんな速度で誰に追いつこうとしているのだと思わず笑う。
カートリッジをロード、ロード、ロード!
圧縮空間内に貯蔵される実質無限とも言える数の砲弾が無限ではないと咆えるかの様に激しく動く。
おぞましくも美しい桜色の光が収束する。
その収束光景はまるで星の光の様だと誰かが言ったがそれはなんという星だ。
剋目せよ、その光がもたらす破壊を見る為に。
億と迫り来る機械兵を薙ぎ払う――ラゴウの輝きを!

『Starlight Breaker』

光が走る、破滅の意を乗せた光が無明の空間を走る。
真空を蹂躙し空間を破砕し時間を歪曲する天魔の力。
桜色の大瀑布! 1万数千光年という矮小な銀河を丸ごと飲み込む大海嘯!
敵の数が億だからなんだというのだ。これこそが力、これこそが破壊。
この天意に等しい力を前に耐えられる者等ありはしない。
見よ! 極細塵と成り行く機械兵の群れを。
見よ! 億の時を閲した星々が哀れにも消えていく様を。
光の跡になにが残る、何が残れる。
ズタボロになった時空が必死に己の傷を取り繕うと捻れ曲がっているだけだ。
なにも有りはしない。雄大に渦を描いていた銀河すらも最早存在しない。
だが、そんな虚無にも等しい光景を彼女は是とする。
そして白い闘衣を翻し、高町なのはは世界を渡った。
そして最早敵は無しと、高町なのはは世界を笑った。


466 名前:如月 ◆R2l88Tv2WE :2008/02/13(水) 07:53:49 ID:kZ3UI14A
あ、今日はここまでって書き込むの忘れてました。

467 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 08:12:07 ID:7Qxa6y5Z
>>452
最近のエリオやスバルが痛ましいSSとはまた違った形で心を揺さぶられた
ある意味とても痛ましい……グッジョブ……なのか?

468 名前:( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc :2008/02/13(水) 08:15:20 ID:0qC7IrA8
>>458, >>460, >>463
申し訳ありません。

>>460さんの御指摘ですが>>444の19行目まではキャロであることを明記したくなかったので、
注意書きとしては片手落ちになると承知でこのようにしました。

ですがやはり、問題があるようですね。
すみません。

問題を起こした作品なので、この作品はお蔵入りとします。
後編は(少なくともここには)投下しませんので、ご安心ください。

26-111氏他保管庫司書各氏へ。
>>442-451 「蟻地獄 淫獣編」は保管しないでください。
よろしくお願いいたします。

誠に申し訳ありませんでした。

469 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 08:23:44 ID:ZY4XxYe4
あーあ。で>>458は具体的に何が気に入らなかったのさ?
注意書きに何を追加して欲しかったわけ?

470 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 08:26:24 ID:jcuZpLW+
>>469
誰がユーノにレイプされるかだと思う

471 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 08:32:48 ID:n0736ick
>>469
陵辱はいいけど○○が××にやられるのは嫌って言うだけだろ

>>466
何をしたいのかさっぱりわからん。

472 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 08:54:34 ID:Lcd1nlpV
>>468
自粛まではせんでいいと思うが…ただそういう意図があるなら
「理由あってキャラを明記しない」ということ自体を最初に表記しておくべきだと思う。
それが嫌な人はその時点で見ないだろうし。

で、もう次スレか…早い…

473 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 08:56:22 ID:7Qxa6y5Z
アウトラインと詳しく書きすぎたら面白みも半減してしまうだろう
主要なロリも少ないから大まかな検討も付くだろう
人を選ぶって、確かにSSスレはほぼ一方的な供給だが、
劇場の観客じゃあるまいに、やばいと思ったら途中で読み飛ばす事もできように

474 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 10:23:19 ID:asJZ+Jow
現在480kb・・・最短記録だな

そして次スレの季節

475 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 10:26:26 ID:AYuurNe/
>>468
>>473に同意。
まったく注意書きなしで、本編も前振りなしでいきなりそういうシーンから始まってたら、
そりゃ問題かもしれないが、キャラはシークレットでも断り書きは入ってたし、
ターゲットがキャロだと判明してから問題のシーンが始まるまでに
読みたくなければ逃げ出すのに十分な量の前振りも付いてたし、別に問題なかったと思う。
>>472のような断り書きは、あれば新設かな、とも思うが必須とは思わないし、
(後編がもう用意できてるのであれば)自粛の必要も感じません。

476 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 10:38:25 ID:9OlH02L7
>>468
あなたにそれほど落ち度があった訳で無し、烈火のごとく怒り狂ったレスがあった訳で無し、一言謝っただけでも十分だろう
続編の投下自体は、あなたの心のままに任せるとして、いくつかGJとレスがある中で非投下宣言は…な?

477 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 10:38:32 ID:CZnrlAmw
投下して良いと思うよ。

やっちゃいなよユー

478 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 10:40:36 ID:asJZ+Jow
微妙だし、注意書き欲しいという方もイラネって方も、どっちも間違ってないよ。
まぁ>>472のように「ネタバレに付き」とか書いてたらと、思わないでもない。
いっそテンプレに加えるか?

>>475
>読みたくなければ逃げ出すのに十分な量の前振りも付いてたし、別に問題なかったと思う
ただ、読みはじめて、途中で苦手なモノだとわかったら、やはりがっかりするし、
その人にとっては、読んだ分の時間を無駄にしたとか思うかもしれんよ。

479 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 11:02:36 ID:RGMLRA/+
>>B・A氏
GJ!
もうエリオがかっこよすぎます!
このスレの分を一気読みさせて頂いたんですが、熱いし萌えるし言うことはありません!
最終決戦で全員力を合わせて解決するという所もつぼでしたし、体を酷使し続けたつけがきてしまったのも悲しいことですが、仕方がないのかもしれません
ですがそれも全ては愛する人のため!
ぜひルーテシアと再開した後の後日談(ラブラブ生活)もなにとぞお願いします!!

480 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 11:34:00 ID:VE3Zx1Zj
>>468
後編も投下して欲しい(´・ω・`)
貴重な陵辱エロなのに・・・

481 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 12:22:34 ID:RL+K1lwQ
そしてひさしぶりの淫獣全開が見られるのが、楽しみ。

482 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 12:37:37 ID:Qf9BFf5p
>>468
( ゚∀゚)o彡°淫獣!淫獣!

投下して( ゚д゚)ホスィ…

483 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 12:55:52 ID:NnwL8cOK
>>468
私も個人的に続編キボン

あと、司書長がフィアット500っぽい車に乗ってるってのもツボに入りました。
ルパンルパ〜ン!

司書長がルパンで提督が次元で烈火の騎士が五右衛門で教導官が不二子で〜
とかそんな光景が脳裏に浮かんだりしたりしなかったり。

484 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 13:05:46 ID:KZpmQZVF
っていうか次スレの季節じゃね? 用量どれくらいだ?

485 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 13:09:14 ID:tHgvF4yK
個人的には淫獣メインのSSでは久しぶりに面白かったので、投下しないのは残念と言わざるを得ない

486 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 13:11:29 ID:jF5zBRlW
>>465
なんというデンドロなのはさん。
いやゲッターエンペラーか。

487 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 13:19:57 ID:foJzTop1
>>466
GJ!!
なんという強いなのはさんだ!
続きを楽しみにしているぜ!!

488 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 13:26:57 ID:4vzv3a5/
次スレ立ててくる。

489 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 13:29:10 ID:Y2Zw9RRU
まあ続けるかどうかは作者氏に任せるけど今回の対応は過剰反応なんジャマイカ?
問題というほどのものじゃなく要望位だと思うんだが
斜にみた意見かもしれんが
GJ票の方が多かったなか唐突な取り下げ宣言というのは正直誘い受けのように見えるんだが

490 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 13:31:20 ID:4vzv3a5/
立ててきた。

☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第52話☆
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1202876946/

491 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 13:32:24 ID:/apayfKl
>>452
GJ、炉利がきた。だから続きをキボンヌ

>>466
いったいなのはさんに何があってああなった?
世界最後の日とかVSネオなのはとか新リリカルなのはとかあるのか?


ちなみに、現在485kb

492 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 14:02:58 ID:Wxo5pVt9
今回の流れは早いなぁ
3日でほぼ1スレ消化とか職人さま頑張りすぎだろw

493 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 15:49:03 ID:IV4IGNoq
>468
あぼーんに登録したので貴方がどうしようと私にとっては問題ない。

494 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 16:10:36 ID:68UdYos5
>>493
言わないで良い、わざわざ書くな。

495 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 17:15:53 ID:QlaiKd6X
>>493
ここ21歳未満のお子様は書きこんじゃいけないんじゃなかったっけ?

496 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 17:18:30 ID:0jL9IBIs
>>493
NGにしたとか一々ここに書き込むことではない。ガキかお前は。

497 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 18:10:32 ID:Jgq02QPj
>>493
過去数スレ中最悪だな

498 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 18:29:16 ID:Y2Zw9RRU
SSにまるで関係のないレスに対しては
同一論旨のことは一度言えば十分だと思うが
ガキの連れトイレでもあるまいにぞろぞろと(しかも間も空いてるにも関わらず)

499 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 18:34:43 ID:T9ED5/BW
それにしても保管するなってお願いはありなの?
ありなら俺も使えばよかったわ。
これから、注意・批判etc→問題起こしたSSなので保管しねーでください
なんてケースが増えたりしてな・・・

500 名前:26-111:2008/02/13(水) 18:35:19 ID:B/Cut5mA
>>バンパー氏
泣いた・・・GJでは言い足りないけど、他に言うべき言葉が見つからん・・・GJ!
こういう展開って、原作の方で見せるべき展開ですよね・・・良い物を読ませていただきました

司書業も楽しいものですぜ?私もwiki構築に関してはド素人でしたが、少しは使える程度になりました
手順をアレコレ考えて、作業時間を短くできるようになるのが楽しい・・・と思うのは、私だけでしょうか?

>>( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc氏
これは良いエロ成分。GJでした
後編があるなら是非・・・と言いたいところですが、貴兄の判断を支持しましょう

>>アルカディア氏
49スレの保管作業に着手しました。改訂版の用意ができているのでしたらお願いします


丸3日間で次スレが立ちましたか・・・最短記録ですね

501 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 18:59:09 ID:Lw4DT+iE
>>493(=498?)の人気に嫉妬。

( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKcさんは投下のタイミング誤りましたね。
バンパーさんの感動物の後だけに、もう少し余韻に浸りたかった人も多いと思う。
鬱物やギャグ物の後ならスンナリ受け入れられたかと。



502 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 18:59:13 ID:cj/yXkp/
なんだ?
久々に現実だと犯罪なアブノーマルな作品がきて良い刺激になるなと思ったら
色々、論争中? 作品にも注意書きにも問題ないでしょ。誰が出るかということを分からないほうが
良いといった場合の話もありますし、この手の作品ということは伝わるし嫌ならスルーすればよい
個人の嗜好での批判であるならもちろんスルーすればいよい、どうしようもないし

503 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 19:10:51 ID:BNGLlkyq
掲示板はよくも悪くもスルーが基本だしね。
注意書きに関しては特に問題ないと思いますよ。少し敏感に反応しすぎだと思いますが。

個人的には十分楽しめたし、タイトルがかなり妄想を掻き立てられるので、都築を期待してます。

504 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 19:12:27 ID:Y2Zw9RRU
>>501


>>472のような注意書きを入れるならともかくとして
テンプレに可能な限りとは言えカップリングは云々と書いてあるからまあ何とも言い難い

505 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 19:12:37 ID:XR7U7upM
陵辱系が苦手なんでスルーさせてもらった俺からしても、
別に断り書きはあれで十分だったと思うし、
続きを投下することに問題は無いと思います

506 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 19:30:32 ID:L+00F2BL
このスレでエリオが魔改造されてると聞いて飛んできました

507 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 20:43:07 ID:q6iV/4vA
>>506
まだつけてねぇよ、早まるなw

508 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 21:10:44 ID:RGMLRA/+
>>306
ちょい遅レスですがGJ!
良かった!本当に良かった!!エリオおおおおおおおおおおおお!!!!!!
テ・ン・シ・ョ・ンがあがってきた。
続きがめちゃ気になります

509 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/13(水) 21:40:51 ID:GqjhAL5b
>>434
すごい。
異常なクオリティにラーメン吹いた。
もしかしてバンパー氏セブンの正規社員なんじゃないかと疑いたくなる。

510 名前:y=ー( ゚д゚)・∵. ターンA:2008/02/14(木) 00:01:45 ID:scj08R8D
一つ言い忘れが、保管庫管理人様
「幻影の射手」含めて、それから以降、全部同じ話、 『エリオ達の未来』
の小パートです、独立していません
どうかよろしくお願いします
管理の方が大変かと思いますが、大変感謝しております、ではでは今度こそ

511 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 07:37:47 ID:OpWDObt8
こっち埋めとくか

512 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 09:05:52 ID:6cllDpYa
>>260とかに書いてないキャラ考えたんで、埋めに使って下さい
猿真似にすらなってませんがorz


フリード
言わずと知れたキャロの守護龍で、エリオの相棒
戦闘だとエリオとキャロの足として出番は多いが、エロになると途端に姿を消して、二人にしてあげる空気の読める龍
名前からして雄のはずだが、フラグは男のエリオ一本のみで、しかも掘られる
けっこう前に女体化して登場したが、愛しのエリオと結ばれる事なく未完の完結


ガリュー
雄であり漢であり蟲であり女性かもしれない人
フラグはルーにエリオ、それとアギトにメガーヌくらいか
本編で一言も発しないので、中の人を妄想する事ができるため、女体化ガリューとエリオもあったが、やっぱり未完の完結に
メガーヌさんとの濃厚なエロスは見た覚えがあるな
つ触手


メガーヌ
ルーの母でゼストの部下でクイントの同僚と、敵味方両方に親しい人がいた女性
ゼストにガリュー、果てはゲンヤとフラグがあるが、エロはガリューのみ
クイント、メガーヌ×ゼスト見たかったな


ガジェット
主にエロ同人の強い味方、色んな所から触手出して、うにょうにょパラダイスに
でもSSだと凌辱は精神的にかなり堪えるのか、出番無し
ある意味、誰とでも組めるモブではある
サンタ×ノーヴェを妄想したのは俺だけじゃないはず…


513 名前:鬼火 ◆RAM/mCfEUE :2008/02/14(木) 10:17:56 ID:rzWqd6gN
埋めまーす

  /  ̄`> ' ,ニ、 、
      /        ヽ \
    //    |  \ニ>、 ',
    /イ   /|x/| ∧xト|ヽ!トヽ|
     ||イ ・   ・| |〉⌒i   ついにねんがんの
    /^ヽ|∧''  l ̄l '''| l  ,イ    Wiiをてにいれたのですよぉ〜!
   \ .〉 |ゝ、`_´_. ィ| | ∧|
.      ,`| | /'´∧ \l| l/ ヽ
    /'| l∧/| トイ| |    ヽ
.    i  | |〈 ノ | 〉.| |    )

:::::::/           ヽ、   :: ::: ::: :::::::::::::::::::::::::::::::::
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::::l           l  /ノリ ::: : :: ::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::
:::|          /) / ::: : :: ::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::
::l          /イ/| . :. :. .:: : :: :: :::::::: : ::::::::::::::::::
/          / ||/ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄7l::::::::::::::::::::
      i   /_,/i!/ 1/48 WWII / l::::::::::::::::
      l    人  / ドイツ歩兵 /  /::::::::::::::::
     l   / /⌒ヽ 行軍セット /  /::::::::::::::::
     l  /il  |   )      /  /::::::::::::::::
     ll l i! `ー、\___ / n/::::::::::::::::
     lヽ l    |\. \   /⌒〉::::::::::::::::


514 名前:コテ外し忘れた…orz:2008/02/14(木) 10:19:02 ID:rzWqd6gN
@規制対策

            〃´⌒ヽ
     ., -――  メ/_´⌒ヽ
   /   / ̄  ´ヽ ヽ
  ./  ,  /// ト. !  、 丶ヽ
  l  / /(((リ从  リノ)) '
  |  i  l   . ヽノ .V l
  l ,=!  l  ///    ///l l    ねんがんのチョコをてにいれたぞ!
  l ヾ! ', l    ヽ_フ   l l
  |  ヽヽヽ        //
  l    ヾ≧ , __ , イ〃
  li   (´`)l {ニ0ニ}、 |_"________
  li   /l, l└ タl」/|´        l
  リヽ/ l l__ ./  |___________|
   ,/  L__[]っ /       /





::::::::/           ヽ、   :: ::: ::: :::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::/            lハ ::: : :: :::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::
::::l           l  /ノリ ::: : :: ::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::
:::|          /) / ::: : :: ::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::
::l          /イ/| . :. :. .:: : :: :: :::::::: : ::::::::::::::::::
/          / ||/ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄7l::::::::::::::::::::
      i   /_,/i!/ ((・∀・)x)) / l::::::::::::::::
      l    人  /        /  /::::::::::::::::
     l   / /⌒ヽ詰め合わせ/  /::::::::::::::::
     l  /il  |   )      /  /::::::::::::::::
     ll l i! `ー、\___ / n/::::::::::::::::
     lヽ l    |\. \   /⌒〉::::::::::::::::

515 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 10:20:00 ID:rzWqd6gN
@規制対策

          __________________
            /((・∀・)x))((・∀・)x))((・∀・)x))((・∀・)x))/.|
         /((・∀・)x))((・∀・)x))((・∀・)x))((・∀・)x))/ |
.        /((・∀・)x))((・∀・)x))((・∀・)x))((・∀・)x))/'  |
       /((・∀・)x))((・∀・)x))((・∀・)x))((・∀・)x))/'  /
.      /((・∀・)x))((・∀・)x))((・∀・)x))((・∀・)x))/'  /
      /((・∀・)x))((・∀・)x))((・∀・)x))((・∀・)x))/'  /
.     /((・∀・)x))((・∀・)x))((・∀・)x))((・∀・)x))/'  /
    /((・∀・)x))((・∀・)x))((・∀・)x))((・∀・)x))/'  /
    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  /
    |    『((・∀・)x))』詰め合わせ     | /
    |_________________|/

【次スレ】
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第52話☆
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1202876946/l50


516 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 10:21:13 ID:rzWqd6gN
2月14日用


          ヽl   ,、 l/
          〃"ナ'⌒ ~´ヘヘ^
          // ,ハノノソヽソハ
         ハ  ヾl.゚ ヮ゚ノ!.ノ  大きいのいくよぉ〜♪
         ,,r'( ( ∪ー∪ ゝー、_
       ,,r''",;::''".,;::". ;, . ;゙ ''::;.. . ゙ヽ、
     ,r"., ''".. ;";" .   ... ゙ ;. .  .. ゙ヽ.
    r".,::'' ..::''  管理局名物  ,..  '': ; ヽ.
   ,i'..;:''  ., ' .,     :   ;   ''  ,   , ゙i,
  ...!    ,    な, . ;の   は  '     ; , !,
  .l .::  ,    :   ,   : ;:': ,,.  ;:': ;,,:'   ゙l,
  |   ,  す:  ぺ し:  ゃ る ・ チョコ;;': : |
  .l  . ;'  ' '    :  ,;:''`   :;::  "    .  |
  ..l  ': ,  : ;,,   ': ;',      :  ,     ', ! 
   i,  ;  .,  :"   ,,  ;''    . :      ,,...!      (
    ゙i,  ,   :     ,,  ;,,       _,,,....    ,'       .'.^ ⌒`ヽ
     ゙t;,    :     , ,     .       '       (((从从〉. なのはママ
      ゙ヽ. '' ,,   ,  ;,,      :    ,,r'"        |z、゚ヮ ゚zl. すごぉ〜い♪
       ゙''ー、   _,,  ;,,     '" _,,r'"            O ⊂ )
          `'-、,_  ;  _,,,,: r'''"               (__(_ム
~""""~"~""""~"~""""~~""""~"~""""~"~""""~~""""~"~""""~"~"""

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517 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 10:22:17 ID:rzWqd6gN
2月14日用

                  /   /   /               `ヽ、
                   ,′  |   :/ / / /         ヽ \   `ーイ
               l   │  l | /  /   /|  |  l   |\ー 一'´
                |    /l   -| 十! /- イ /  |  |  ,'  j  ヽ  、 ,
                |    l |   W| l /| / |l ,'  / メ/|: /   /ハ: |〜〇:
                |  :/こ|   レ ,|==、|ヾ八{ /xく/ |/  /   | j ′` 
                |  {{^ |   | {::::::l    ィ=トソV  /   :/∨
                |   |ヽ.|   |  ̄`     {:::ノソ/ /   /
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  /   |        緊急告知             |
 /    |                          |
/     レ ¬   2008年度のバレンタインは   r─ 、|
    r'′-┴、                     i⌒ヽ \
    i´  -イ  私の都合で中止にしました。    `ト、\ ヽ


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518 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/14(木) 10:23:58 ID:rzWqd6gN
@規制対策

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