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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第49話☆
- 1 名前:名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 18:02:59 ID:rWN2VI3z
- 魔法少女、続いてます。
ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレです。
『ローカル ルール』
1.リリカルあぷろだ等、他所でのネタを持ち込まないようにしましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をしたほうが無難です。
・オリキャラ
・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)
『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
「1/10」「2/10」…「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。
【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
読み手側には読む自由・読まない自由があります。
読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶことが出来ます。
書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけてください。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントすることが多発しています。
読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。
『注意情報・臨時』(暫定)
書き込みが反映されないトラブルが発生しています。
特に、1行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えることがあるそうです。
投下時はなるべく1レスごとにリロードし、ちゃんと書き込めているかどうか確認をしましょう。
リンクは>>2
- 2 名前:名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 18:03:01 ID:rWN2VI3z
- 『リンク』
【前スレ】
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第48話☆
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1201277819/l50
【クロスものはこちらに】
リリカルなのはクロスSSその42
ttp://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1201770052/l50
【書き手さん向け:マナー】
読みやすいSSを書くために
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5301/1126975768/
【参考資料】
・Nanoha Wiki
ttp://nanoha.julynet.jp/
・アリサだもんっ!
ttp://homepage3.nifty.com/damenahito2000/
・R&R
ttp://asagi-s.sakura.ne.jp/data_strikers.html
(キャラの一人称・他人への呼び方がまとめられてます)
☆魔法少女リリカルなのはエロ小説☆スレの保管庫
ttp://red.ribbon.to/~lyrical/nanoha/index.html (旧)
ttp://wiki.livedoor.jp/raisingheartexcelion/d/ (wiki)
- 3 名前:( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc :2008/01/31(木) 18:13:34 ID:2BA5d9Pp
- >>1スレ立て乙であります。
さぁて久々にこっちを投下だ。
捏造設定が多いのは読んでるほうはアレだろうが、書いてるほうは楽しいぞ!
注意事項
・捏造あり過ぎ
・非エロ
・薀蓄羅列
・バカップル警報発令中
・デレ期突入ツンデレ警報発令中
・あぼーんキーワードは「燃え上がる炎の魔法使い」
- 4 名前:燃え上がる炎の魔法使い 3-01/14 ◆kd.2f.1cKc :2008/01/31(木) 18:14:17 ID:2BA5d9Pp
- 「すみません、遅くなってしまいまして……」
Dec.12.2005────19:56。
日本国 東京都 海鳴市。八神はやて宅。
「気にせんでええよー、ただ御飯温め直さなあかんな」
申し訳なさそうに言うシャマルに向かって、電動車椅子に乗ったはやては、スティック
を操作してキッチンに向かい、鍋のかけてあるガスレンジに向かい、ビルトインタイプの
ガステーブルの操作キーを押した。青い炎が、鍋をあぶる。
「あー、腹減ったー」
「ヴィータ、少しは自重しろ」
少年のように声を上げるヴィータに、シグナムが叱咤のような声をかける。
「まーまー、そんな事いう手もおなか減ったら誰でも我慢できへんて」
後ろに続くレンが、そう言いながら、ザフィーラと共に玄関に上がった。
全員、甲冑のような衣装の姿ではなく、それぞれ私服を着ている。
「どら、はやてちゃん、あたしも手伝おか」
レンはそう言って、キッチンを覗き込もうとする。
「ありがと。でも、ホント温め直すだけやねん。あ、それやったら、みんなお風呂入って
まい」
「はーい」
ヴィータが、声を上げて返事をした。
「でしたら、私が鍋を見ています故、主も一緒に湯浴みをしてらしてください」
シグナムが言い、ガスレンジの見える位置に腰を下ろした。
「あら、シグナムあなたは?」
シャマルが、シグナムに訊ねる。
「食事の後で良い」
シグナムは、きっぱりとそう言いきった。
「そか、それならお言葉に甘えるとしよ。吹きはじめたら、ガス止めたってや」
「承知」
笑顔で言うはやてに、シグナムは短く答える。
「ほしたら、シャマルかレン、悪いけど手伝ってくれへんか?」
「あ、はい」
「おまかせやでー」
シャマルとレンが、はやてに向かう。シャマルが、はやてを抱えあげた。
「お風呂好きが珍しいの」
ヴィータは、肩をすくめる様にして言ってから、はやて達を追って浴室に向かった。
燃え上がる炎の魔法使い〜Lyrical Violence + A’s〜
PHASE-03:Das Gef?hl, Macht zu wollen,
- 5 名前:燃え上がる炎の魔法使い 3-02/14 ◆kd.2f.1cKc :2008/01/31(木) 18:14:38 ID:2BA5d9Pp
- 「…………」
「傷か?」
狼形態のザフィーラが、シグナムに向かって、そう訊ねた。
「ああ」
シグナムは肯定の返事を返すと、視線を一旦ザフィーラに向け、トレーナーの右袖をめ
くった。
そこに、打撲のような痣の跡がある。
「お前の甲冑を貫(ぬ)くとは、たいしたものだな」
「重くはなかったが、鋭い一撃の持ち主だった。剣技も荒削りだが、悪くない。魔力で勝
っていなければ、危なかったかも知れん」
感心したように言うザフィーラに、シグナム自身もそう言って頷いた。それから、シグ
ナムは鍋に視線を戻す。
「管理局が出てきたのは厄介だが……しかし、不謹慎だとは思うが、私はあの魔導師、ア
リサとやらに、少し……いやかなり、興味が湧いて来た」
「ほう?」
険しい表情で語るシグナムに、ザフィーラが意外そうな声を出す。
「お前が個人的な感傷を持つとは、また、珍しい」
「何、ベルカの隆盛華やかなりし頃を、思い出させるということだ」
シグナムが言うと、ザフィーラは狼の姿で、頷いた。
「確かにな」
- 6 名前:燃え上がる炎の魔法使い 3-02/14 ◆kd.2f.1cKc :2008/01/31(木) 18:14:59 ID:2BA5d9Pp
-
Dec.14.2005(JST)────時空管理局本局、中央医療センター。
「はっ」
アリサが眼を覚ますと、そこは、見知らぬ白い天井が支配していた。単調な電子音が、
規則的に繰り返される。強烈な、蛍光灯の白い照明。
次に目に入ったのは、逆さに吊られたビニールパック、そこから伸びる細いチューブ。
ぼんやりとした頭でははっきりとわからない、電子機器の類。ガラスの窓。ただしその先
は屋外ではなくて。その窓のすぐ向こうに見える、ハニーブロンドの見覚えのある頭。
「あ……」
声を出そうとして、口が塞がれている事に気がついた。薄緑色の透明な、プラスチック
のマスク。ホースが繋がっている。
『ユーノ、ユーノ』
念話で、彼に呼びかける。
『! アリサ、気がついたの!?』
驚いたような声と共に、ガラスの向こうの姿が立ち上がり、こちらを振り返ってアリサ
を凝視した。
『あたし、どーしてこんなことになってるんだっけ?』
『覚えてないの? アリサ。結界破壊に魔法撃とうとして、リンカーコアを抜かれて』
ユーノの説明に、おぼろげだった記憶が、徐々に蘇ってくる。
────そーいえば、そんな状態だったっけ……
アリサはすこし、ボーっとしながら、思い出しつつ、そして、はっとあることに気がつ
いて、目を見開いた。
ユーノは、顔を横に向けて、何か声を上げているが、はっきりとは聞こえない。
アリサは、反射的に上半身を起こした。
『ユーノ、なのはは? なのはは無事なの?』
白衣姿の初老の男性と、ナース服の女性看護師がやってきて、室内に入ってきた。
『なのはなら無事だよ。軽い怪我はしてるけどね』
ユーノはガラス越しにアリサを見ながら、そう答えた。
「まだ、急に身体を動かさないで下さい!」
看護師が、叱り付ける様に言う。
「どれ、少し診て見よう」
初老の男性医師は、スキャンターミナル型の計測機器を握り、そう言ってアリサに近付
いてきた。
- 7 名前:燃え上がる炎の魔法使い 3-04/14 ◆kd.2f.1cKc :2008/01/31(木) 18:15:36 ID:2BA5d9Pp
-
「あー、まだ頭が少しボーっとするわ」
点滴の吊られているポールを自分で押しながら、白いパジャマ姿のアリサは言う。
「当たり前だ、普通なら回復に1ヶ月はかかるような状態だったんだぞ、君は」
呆れたように、クロノが言う。
「そう? でもお医者さんはもう少し安静にしてれば元通りになるって言ってたけど」
アリサはそう言ってから、はっと目を輝かせる。
「ひょっとして、あたしってば、魔法の回復力強め? 資質高いしょーこ?」
満面の笑顔で調子に乗りながら、自画自賛した。
「逆だ。リンカーコアが小さいから身体にかかる負担が小さい、回復も早い。それだけの
事だ」
クロノがきっぱりそう言うと、アリサは首をかくん、と横に倒しつつ、顔をしかめる。
「アンタ、相変わらず空気読まないわねー」
「君に言われる筋合いはないと思うが」
アリサがヤブニラミでクロノに言うと、クロノはしれっと、そう言い返した。
「そもそも、君はそのリンカーコアの小ささを、逆手にとって有利にしてるんだぞ?」
「どういうことよ?」
アリサは、不機嫌そうな表情のままで聞き返す。
「砲撃魔法は、魔力値が大きければ威力を増すが、その分、リンカーコアから魔力が供給
されて発動するまでには、少ないながらも時間を要する。だから、ミッドチルダ式だと、
元々出力の大きい魔導師にとって、小規模な射撃の連射は、かえって難しいんだ。もちろ
ん、日常的に、火をつけたりとか、物を浮かばせたりとかは、専用に術式があるから、苦
にはならないけどね」
逆に言えば、点火や物体浮遊など、小規模な事をする術式は、意識せずとも小さな力が
取り出せるように、わざわざ開発されたものである。
「攻撃を目的とした魔法の場合、そうはいかない。デバイスにあらかじめリミッターを組
み込んでおくことも出来るが、レスポンスタイムの短縮には繋がらない」
「僕達の世界で言えば、自動車の、ガソリンやディーゼルのエンジンみたいなものだよ」
クロノの言葉を補足するように、それまで苦笑していたユーノが言う。
「なのはやフェイトをスーパーカーのエンジンだとするなら、アリサは軽自動車のエンジ
ン」
「言ってくれるわね」
口元を引きつらせながら、アリサはユーノを睨む。
「でも、小さい分、逆に一定量の燃料に対して取り出せる力の総量は大きいし、意識に対
する応答も速い」
フリクションロスと言って、エンジンはそれそのものが回転に対する抵抗でもある。大
型化すれば安易に出力を上げられる分、運動量の増減に対する抵抗も増える為、アクセル
の踏み込み度合いに対する応答(スロットルレスポンス)は遅くなる。
「よく使うだろう、溜め無し射撃魔法」
「ああ、レイランス? でもあれ、威力弱いわよ」
クロノの言葉に、アリサは僅かに眉をしかめながら、聞き返す。
- 8 名前:燃え上がる炎の魔法使い 3-05/14 ◆kd.2f.1cKc :2008/01/31(木) 18:15:56 ID:2BA5d9Pp
- 「それでも、あの速射は、ミッドチルダの砲撃魔導師の平均からすれば、異様なほどの高
速なんだよ。クロースレンジでの打ち合い中にも、平気で撃つし」
「それぐらい、フェイトだってやってたわよ?」
アリサは、きょとん、として、クロノに聞き返す。
「僕やフェイトは、そう言う訓練を受けてるし、場数も踏んでる。立場的にも、出来て当
然だよ。それにしたって、アリサのように、本来精密直射弾での、バラ撒き射撃は無理だ
しね。以前は一度に3発だったのに、いつの間に6発撃つ様になったんだ、君は」
クロノは言いながら、だんだんと呆れたような表情になって行った。
「そりゃ、それなりに訓練はしてるから」
アリサは、先ほどまでの不機嫌さはどこへやら、腰に手をあてて、ふふん、と、得意そ
うに鼻を鳴らす。そうしてから、
「それに、先生も良いしね」
と、そう言って、ユーノの左腕を抱き寄せた。
「ちょ、あ、アリサ……」
ユーノは困惑気に顔を赤くするが、無理にほどこうともしない。
「まったく、すっかり新婚夫婦だな、アリサと言い、それに、ユーノの方も、ずいぶん馴
染んでるようじゃないか?」
「…………どういう意味だよ」
イヤミっぽい視線をユーノに向けるクロノに、ユーノは少しむっとして、聞き返した。
「さっき、内燃機関の説明をするとき、“僕達の世界”って言ったぞ。いつから、君は日
本出身になったんだ?」
「あっ……」
クロノの言葉に、ユーノは息を呑んで、言葉を失い、顔を真っ赤にした。
「別にいーでしょ、いずれそうなるんだから」
ユーノの代わりに、アリサはユーノの左腕を抱き締めたまま、クロノを睨むようにして
言い返した。
- 9 名前:燃え上がる炎の魔法使い 3-06/14 ◆kd.2f.1cKc :2008/01/31(木) 18:16:25 ID:2BA5d9Pp
-
「アリサちゃん!」
クロノとユーノ、アリサが、病棟の廊下に設けられた談話スペースで会話をしていると、
私服姿の、3人の少女と、2人の大人の女性が、その姿を見て、近付いてきた。声の主は、
なのはだ。他に、フェイトとアリシアもいる。
「なのは、大丈夫?」
アリサは目を少し円く見開いて、訊ねた。
「うん、足首ちょっと捻っただけ。すぐに元に戻るって」
そう言うなのはの左足には、包帯が巻かれていたが、それほど大げさでもない。どちら
かというと、傍目には、明らかにアリサの方が、深刻である。
「心配してくれてありがとう、アリサちゃん」
なのはは、苦笑交じりに言う。
「べっ、別に、お礼を言われるようなことじゃないでしょっ」
アリサは、少し慌てたように、そう言って、なのはから視線を逸らした。
「にゃはは……」
なのはが、声を上げて苦笑した。
「アルフさん、お久しぶりー」
「よっ、とんだ災難だったね」
3人の少女と、連れ合って歩いていたの2人の女性に、アリサは視線を向ける。1人は、
紅い髪の、狼の使い魔、アルフだった。アルフは、苦笑しながら、アリサに返事をする。
だが、もう1人は、見覚えがない。
「こっちの人は?」
アリサは、その女性に視線を走らせてから、視線をアルフに戻し、訊ねる。
「ああ、こいつはリニスって言うんだ。あたしの先輩……かな」
「はじめまして、Miss.アリサ」
リニス、と紹介された女性は、ぺこり、と頭を下げた。
アルフと同系統の、ラフでカジュアルな装いだが、どちらかというと、本人の外観とま
とう雰囲気からは、フォーマルな装いの方が似合うように感じる。
「あ、はじめまして。アリサ・バニングスです。こっちはユーノ・バニングス」
アリサはそう言って、思わず頭を下げる。
「あ、はい、はじめまして……って! アリサ! その冗談は止めてくれって言ってるだろ!」
ユーノも頭を下げかけて、はっと気付いたように、アリサの方を向いて、声を上げる。
「いーじゃない、別に、いずれそうなるんだし」
アリサは、少し非難めいた視線でユーノを見る。
「まだ違うじゃないか」
「些細な事でしょ」
アリサは、唇を尖らせて言ってから、ふと気付いたように、
「あ、それとも、あたしがアリサ・スクライアになった方が良いの? 別に、構わないわよ?」
と、くりっと目を輝かせ、ユーノに迫った。
「別に、そう言う問題じゃ、ないってば……」
- 10 名前:燃え上がる炎の魔法使い 3-07/14 ◆kd.2f.1cKc :2008/01/31(木) 18:16:48 ID:2BA5d9Pp
- 目の前で繰り広げられる夫婦漫才に、リニスはクスクスと微笑ましそうに、アルフやな
のは達はどこか苦笑気味に、笑っている。
「えー、おほん」
と、咳払いの擬音をわざわざ口にしたのは、一番小柄な少女、アリシアだった。
「リニスは、今は、あたしの使い魔なの。ベースは、猫よ」
アリシアの言葉に、アリサとユーノは、アリシア、リニス、の順に、視線を移していき、
最後に、フェイトを見た。
「以前は母さんの使い魔だったんだ。一度契約切れてたんだけど、アリシアが再契約して」
フェイトが、微笑み混じりに説明する。
「そう言う事なのね、うん、これからよろしく」
「はい、よろしくお願いします」
アリサが右手を差し出し、リニスは、その手を握り返した。それから、ユーノとも握手
を交わす。
「なるほど、それで、アルフの先輩ってわけなんだね」
「そう言う事」
ユーノの言葉に、アルフは妙に楽しそうに笑った。
「それで、アリサ」
アルフが、笑顔を真剣な表情に締めなおして、切り出した。
「レイジングハートの事なんだけど……」
「あーっ!!!?」
アルフの言葉に、アリサは、いつもその首に下がっている、相棒がいない事に気付く。
「そうだ、シグナムの攻撃受け止めて、ボロボロにされたんだっけ……! 大丈夫なの!?」
「中枢部は完全に破壊されてはいませんから、修理は可能ですよ」
そう、笑顔で言ったのは、リニスだった。
「ただ…………」
- 11 名前:燃え上がる炎の魔法使い 3-08/14 ◆kd.2f.1cKc :2008/01/31(木) 18:17:16 ID:2BA5d9Pp
-
────時空管理局技術部、デバイス開発・研究室。
「ただでさえ精巧なインテリジェントデバイスを3つも一気に持ち込まれちゃあ、こっち
はたまったもんじゃないよ! 部品ひとつとったって、吟味が必要なんだから……」
テレビ電話状の端末を前に、悲鳴をあげている部員がいた。
メンテナンスホルダーに、赤い宝玉、金のレリーフ、白銀のメタルカードが、それぞれ
収められている。各々、亀裂のような、傷が刻み込まれていた。
「うわぁ、レイジングハート! 大丈夫!?」
アリサはメンテナンスホルダーに駆け寄り、申し訳なさそうな顔で、レイジングハート
に声をかける。
『There is nothing to worry』
レイジングハートは明滅し、心配ないと答えた。だが、どこか、なんとなく弱々しく感
じる。
「レイジングハートやバルディッシュでも、ここまで傷つきますと、自動修復だけでは間
に合いませんから、フレームの修正からやりませんと……」
リニスが、各々のデバイスに向かう3人の背後で、少し困ったように言う。
「ごめんね、バルディッシュ」
フェイトもまた、バルディッシュに、申し訳なさそうに答える。
『No problem』
言葉少なくも忠実な漆黒は、そう答える。
「L4Uは、インテリジェントデバイスといっても、元々、量産型ストレージデバイスの部
品を流用したポン組みですから、修理自体は簡単ですが、自己拡張してる部分は、新しい
部品にあわせて調整してあげませんといけませんから、やはり、時間はかかります……」
「ごめん……ありがとう、L4U」
『Please be not worried. Ma’am』
なのはが悲しそうな表情で言い、優しげなメタリックは慰めるように言う。
「それで、直るんですよね?」
なのはが、リニスを振り返り、訊ねる。
「それはもちろん、安心してお任せ下さい」
「リニスはね、お母さんがその為に契約した、使い魔としては最高のデバイスマイスター
なんだよ。だから、泥舟に乗ったつもりでいてねっ」
リニスが優しく微笑みながら言い、アリシアが、どこか得意そうに言った。
「泥舟じゃ、沈んじゃうんじゃないかな……」
「アリシア、それを言うなら『大船』……」
なのはが苦笑しながら言い、フェイトが困ったような表情で、静かに突っ込む。
「う……ちょ、ちょっとした言い間違いだもん」
そう言って、アリシアは、気まずそうに視線を逸らした」
「リニス、ごめんね、お願い」
「はい、お任せ下さい」
フェイトの言葉に、リニスは、やはり微笑みで答える。
──ただ1人。
- 12 名前:燃え上がる炎の魔法使い 3-09/14 ◆kd.2f.1cKc :2008/01/31(木) 18:18:20 ID:XMTiYUTP
- 「直すだけじゃ、駄目だ……」
レイジングハートと向かい合っていた、アリサは、呟くようにそう言った。
「えっ?」
リニスや、フェイト達は、驚いたように、アリサに視線を向けた。
アリサは、険しい表情で、振り返る。
「連中の、銃弾みたいなアレ! アレを使われたら、まともに打ち合いも出来ない! 何度
直してもまた壊される!」
アリサが、声を上げる。
「カートリッジシステムですね」
リニスが、ぽつり、と言った。
「カートリッジシステム?」
リニスの傍らに立っていた、アルフが、どこか緊張感に欠けた口調で、そう言った。
「主にベルカ式で使われる、一時的な魔力増幅装置です」
リニスは、真面目な口調でそう答えた。
「ベルカ式って……?」
聞き返すアルフの言葉には、ユーノが答える。
「旧暦時代に、ミッドチルダ式と勢力を二分した、魔法技術ですよ。ミッドチルダ式が射
撃に重点を置いていたのに対して、クロースレンジに特化して、戦闘力を極大させたんで
す」
「その回答が、あの、カートリッジシステムでした。リーチの不利を、瞬発的な魔力の増
強、簡単に言えば力技で、覆したわけです」
ユーノの説明に、リニスが付け加えた。
「ただ、扱いが難しくて、前線に数を送り込むのが、困難だったようですね。その後、聖
王大戦の後、ベルカの国家そのものとあわせてベルカ式魔法も衰退して、現在では、聖王
教会の上位の人間がそれを伝えているだけになっています」
リニスの説明に、なのはとフェイト、アルフは感心したような顔をするが、アリサだけ
は、険しい表情をしたままだ。
「ただ、カートリッジシステムだけは、広範な用途に用いることが可能なので、ミッドチ
ルダ式に、取り込まれています」
「それよ!」
リニスがそこまで言うと、その先を遮るように、アリサはビシッ、と指をさして、声を
上げた。
「そのカートリッジシステムを、レイジングハートに搭載するのよ! そうすれば、あんな
連中に負けたりしないわ」
「ええ!?」
その場にいた全員が、困惑混じりの声を上げた。
「待って下さい、確かにカートリッジシステムは、安易に魔力の増強を行えますが、レイ
ジングハートのような上位インテリジェントデバイスには、圧力が強すぎて不向きなんで
す。第一、そんなに簡単に出来る事なら、最初から、バルディッシュに搭載しています!」
リニスは、困惑気な表情で、アリサをたしなめる。
『But, It cannot but perform, if there are no other means』
- 13 名前:燃え上がる炎の魔法使い 3-10/14 ◆kd.2f.1cKc :2008/01/31(木) 18:18:48 ID:XMTiYUTP
- アリサの背後から、その声は聞こえてきた。アリサは目を円くする。
「レイジングハート、本気ですか!?」
『Yes』
驚いたリニスの言葉に、レイジングハートは即答する。
『The master was defeated because my ability was insufficient』
「レイジングハート! そんなことはない、あたしが無茶させたから……」
アリサは慌てて、レイジングハートを宥めるように言う。
『No. Since it becomes strong, the master knows having always tried hard.
Therefore, I also want to become strong』
「私も強くなりたい」、レイジングハートはそう言った。
『I desire it, too』
「バルディッシュ!?」
リニスが素っ頓狂な声を上げる。フェイトが驚いたように、バルディッシュを振り返っ
た。
『Also me. Since I am using mass-production parts abundantly, I must be strong
to an overload』
「L4Uまで!?」
リニスは困惑気な表情で、L4Uに視線を向ける。
なのはが少しおろおろしているのを他所に、その隣で、アリサとフェイトが顔を見合わ
せ、お互いの意思を確かめるように、頷きあった。
「リニス、どうしても無理かな」
フェイトが、真剣な表情でリニスを見つめ、問いかける。
「うー…………」
フェイトの真摯な瞳を見て、言葉を詰まらせかけたリニスだったが、やがて、決意した
ように、一度軽く目を閉じて、深く頷いた。
「解りました。デバイスもマスターも同意しているのなら、やらざるを得ないでしょう。
完璧にマッチングさせてみせます。大魔導師(グレート)と呼ばれたテスタロッサの使い魔、
バルディッシュのデバイスマイスター、リニスの名に賭けて」
リニスの力強い言葉に、アリサの顔がぱっと明るくなり、フェイトがそれを見る。微笑
もフェイトに、アリサは悪戯っぽくウィンクして見せた。
リニスは、手近にあった端末に触れると、情報を検索する。
デバイス用量産部品リストが表示される。さらに、絞込検索。
「CVK-792シリーズ……現行ラインアップでは、性能、安定性、それなりに良いようです
ね。問題は、手に入るかですが……」
「クロノとリンディに相談してみようよ、3つぐらいならなんとか回してもらえるよ」
手で顎を抱えるリニスの背後から、アルフが肩越しに覗き込みつつ、そう言った。
「そうですね、そうしましょう」
- 14 名前:燃え上がる炎の魔法使い 3-11/14 ◆kd.2f.1cKc :2008/01/31(木) 18:19:16 ID:XMTiYUTP
-
「第1級指定ロストロギア、闇の書、か」
クロノの実母であり、時空管理局の巡航L型武装次元航行艦『アースラ』を預かるリン
ディ・ハラオウンは、溜息混じりにそう言った。
「クロノ君も言ってましたけど、なにか、あるんですか?」
話の相手は『アースラ』CICメインオペレーター、エイミィ・リミエッタ。
「そう、ちょっと浅からぬ因縁があってね」
2人はエレベーターの中で話していた。展望式になっていて、次元航行艦船の乾ドック
が一望できる。
「なんか、休暇は延期ですかね、流れ的に、うちの担当になっちゃいそうですし」
エイミィは悪戯っぽく苦笑しつつ、首をすくめてそう言った。
「そうね……でも『アースラ』ももう要オーバーホールだし、それに相手が闇の書となる
と、先延ばしにしていた、あれの装備も必要でしょうし……」
「そうですね、代替艦も、L型と同クラスだと、2ヶ月先までめいっぱいって言われました
し」
リンディとエイミィは、困ったように言う。
「こんな時に限って、巡航型の入渠が重なるなんてね」
「仕方ありませんよ、時所かまわずな仕事ですから……」
リンディは溜息混じりに言い、エイミィは苦笑してそう返した。
「うーん」
どうしたものか、と、考え込んでいたリンディだったが、はっと、何かをひらめいたよ
うに、顔を上げた。
「そうだわ!」
- 15 名前:燃え上がる炎の魔法使い 3-12/14 ◆kd.2f.1cKc :2008/01/31(木) 18:19:37 ID:XMTiYUTP
-
「…………と、言うわけで、今回、正式に第一級指定ロストロギア、『闇の書』への対処、
回収に、我々『アースラ』のスタッフが任命されました」
時空管理局本局、大会議室。
リンディはその壇上に立ち、脇にクロノが控える。正面には、『アースラ』の次元航行
艦としての運用に携わる純ハードウェア的技術スタッフを除き、そのクルーが集められて
いる。
そして、その脇に、アリサ、ユーノ、なのはと、フェイト、アルフも立ち席でその場に
いた。
「ただ、皆さんご存知の通り、本艦は現在、オーバーホール期限切れと小改修のため、運
用できません。その為、我々は当該世界地上、日本国海鳴市に拠点を置いて、当面の間活
動する事となります」
リンディは、そこまでは、艦長らしい、真面目な表情と口調で言った。
しかし……
「ちなみに、本部はアリサさんとなのはさんの近所になりまーす」
途端に、表情が崩れ、見た目からはまぁ許せるが実年齢とはもう少し相談しろと言いた
くなるような、おどけた態度になって、そう付け加えた。
隣に立つクロノは、口元が引きつるのを、バリアジャケットの高い襟で隠していた。
「艦橋クルーはエイミィさんの指揮下で現地の捜査に、武装隊員は、有事に備えて待機。
他は逐次、追って命令いたします。よろしいですね」
真剣な表情に戻って、リンディはそう部下たちに伝えた。
「フェイトー」
行動開始、と、各員が立ち上がり、動きはじめたところで、会議室に、アリシアが声を
上げて入ってきた。
フェイトと、アリサやなのは達も、アリシアの声の方に視線を向ける。
「アリサと、なのはも! リニスが、用事が終わったら一度技術部に来てだってー」
何事か、と、3人は顔を見合わせた。
- 16 名前:燃え上がる炎の魔法使い 3-13/14 ◆kd.2f.1cKc :2008/01/31(木) 18:20:04 ID:XMTiYUTP
-
「申し訳ありませんっ」
リニスはそう言って、深々と頭を下げた。
「リンディ提督の名前で交渉させていただいたのですが、今、CVK-792シリーズはサンプ
ル用の2個しか、ストックしていないそうで……」
「あらら」
リニスの言葉に、アリサが脱力したような態度をとる。
「2つか……」
フェイトは難しい顔をして、顎を手で抱えた。
なのははどこか、おろおろしている。
「だったら、急いでミッドチルダから取り寄せれば」
「それなんですが……」
ユーノの提案に、しかし、リニスの表情は晴れない。
「カートリッジシステム自体、メーカーも在庫を抱えない品物なので、システムキットで
の取り寄せだと、3ヶ月は先になってしまうそうなんです」
「それじゃ全然間に合わないじゃない」
アリサが、呆れたような声を出した。
「ストックパーツも、1個素組みが出来るほど、私達で独占してしまうわけにも行きませ
んし……」
リニスの言葉に、ふぅ、と、深く溜息をついたのは、アリサだった。
「しょうがない、バルディッシュと、L4Uに優先してよ」
苦笑し眉を下げて、アリサは言い、横目で視線をフェイトとなのはに向けた。
「アリサちゃん!?」
なのはが驚いて、身を乗り出すようにして聞き返した。
「アリサ、一番カートリッジシステム欲しがってたのに……」
フェイトも、意外そうな、どこか申し訳なさそうな口調と表情で、言った。
「うん、でもあたしは、体術の方で何とかして見せるから。それに……」
アリサは苦笑交じりにそう言って、そして、ユーノを引っ張り寄せた。
「うわ」
ユーノは驚いて、短く声を上げる。
「いざって言うときは、護ってくれる人もいるし」
途端に表情を緩ませて、ユーノの肩を抱き寄せながら、言った。
「ね?」
アリサは、笑顔を、ユーノに向けた。
「うん、まぁ、当然だし、そう言う事なら、なおさらだけど」
ユーノは言葉を濁しつつも、否定はしない。
「あ、それでなんですけど……CVK-792にこだわらなければ、もう1つだけ、余ってるそう
なんです」
「え?」
リニスが言うと、アリサはユーノに抱きついたまま、リニスを見た。
「なんだぁ、それならそうと、早く言ってよ」
- 17 名前:燃え上がる炎の魔法使い 3-14/14 ◆kd.2f.1cKc :2008/01/31(木) 18:20:42 ID:XMTiYUTP
- 「それが……」
アリサはあっけらかんと笑って言うが、リニスの表情は、あまり思わしくない。
「CVK-695D……なんですけど、番号が示す通り、CVK-792シリーズより以前のタイプで
して……」
「何か問題があるわけ?」
アリサは小首を傾げ、聞き返す。
「えっと、CVK-790系の最大の特徴は、それまで単発装填だったカートリッジを、連続装
填が出来るようにした点なんです。つまり、旧型の690系は、1回のロードごとに、手で装
填してやらなければならないんです。それに、CVK-695Dは、シリーズの中でも、あまり生
産数が多くなかったものらしくて……資料が、充実していないんですよ。実物も、管理局
でテストに使って、それっきりになってたものみたいですし……」
「つまりは中古品ってことね」
「そうなります。使い勝手も、あまり良くないと思います」
アリサの言葉に、リニスは頷いて、肯定の言葉を返した。
「上等! 使いこなしてみせようじゃない。Manual Loadは、連中のだって同じなんだし、
何とかなるわよ、なんたって、あたしと、レイジングハートが使うんだから」
アリサはそう言って、腰に手をあて、胸を逸らせてみせた。
- 18 名前:燃え上がる炎の魔法使い 3-15/14 ◆kd.2f.1cKc :2008/01/31(木) 18:24:01 ID:q7KxwijK
- >>4-17
今回は以上です。
…………長ぇよ。
英語や独語もそうですが、それと同じくらい関西弁がうまく表現できへーん!
リアル関西人の方、変だと思ってもそれは笑って許してくださいませ。
そりとリニス復活させたら、気付いたらマリーの出番がなくなってしもうた。
ファンの方すんまそん。
グレアム提督の出番が後回しになってしまったな……次回はそこからか。
- 19 名前:名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 19:07:47 ID:6YGspYv2
- >>18
GJ
やっぱ、アリサは熱いなぁ・・・・デバイスもいい味出してるし。
でもって、まさかのリニス復活・・・・・・
これはアリシアとリニスの番外編があると見ていいんですよね?
とりあえず、まあ、期待、とういうことで。
- 20 名前:名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 19:15:01 ID:To1CIYMd
- >>18
GJです。
保管庫で0から読み直してきました。
いいなあ、やっぱりアリサって主役やるにはピッタリなんだよなあ。
- 21 名前:名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 20:10:12 ID:6N0RCYbg
- >>18
成程、GJです。
いや、当たり前ですがA´sに厚み持たせた作りなので、面白みが増してますわ。
確かに、薀蓄満載ですが、設定厨なので笑って済ませるレベルでさぁ。
- 22 名前:名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 21:11:02 ID:HKFvFS3S
- >>1乙
- 23 名前:名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 21:27:40 ID:lYatvc1a
- >>22
いいからお前は二度と書き込むな。
- 24 名前:名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 21:46:22 ID:t8ybv/ys
- >>23
イタタ
- 25 名前:名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 21:48:22 ID:6N0RCYbg
- まぁ、なんだ、前スレの発言はアレだけど、>>1乙は間違ってないだろう。
>>1乙!
- 26 名前:名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 21:54:04 ID:FA2hjO05
- >>25
メル欄見たらそんなことも思えなくなるぜミスター…
- 27 名前:名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 21:59:06 ID:HKFvFS3S
- 後片付けというかもしれんが勿論いい意味で
メ欄字数が…
- 28 名前:名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 22:06:00 ID:6N0RCYbg
- ごめん、おれがあまかった orz
- 29 名前:名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 22:32:29 ID:BVQgW+QS
- 保守
- 30 名前:三浦:2008/01/31(木) 23:11:56 ID:VQ8SZVJA
- これから投下いたします。
メタ発言多数(特に百合好きの方ご注意)。
オリキャラ出現(恋愛前提になります)。
ヴァイス×ティアナ、グリフィス×シャーリー他ノーマルCP前提。
今の所エロは無しです。
- 31 名前:Mago di blu senza fine 1:2008/01/31(木) 23:12:48 ID:VQ8SZVJA
- フェイト・T・ハラオウン20歳、時空管理局執務官、魔導師ランク空戦S+。
闇の書事件及び、ジェイル・スカリエッティ事件をはじめ様々な事件での活躍からトップエースの一人として名は知れ渡っている。
魔導師としては輝かしい称号と経歴を持つ彼女、肩書きだけを見れば彼女の人生は順風満帆と言っても過言ではない。
血の繋がりは無いにしても実の子供以上に庇護の対象として見ていたエリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエは心配なくまっすぐに育っている。
仕事上も、シャリオ・フィニーノ、ティアナ・ランスターの二人を補佐官としており、さらなる活躍を期待されているのだが……
この非の打ち所の無さそうな彼女にも悩みはある、それは……。
「フェイトさん、どうしたんですか?」
執務室で盛大についた溜め息を聞かれたようで、フェイトは自分の補佐官であるティアナが書類を運んできた事に気付いた。
近い内に別の執務官と共同で事件捜査にあたるとの事らしく、彼らのプロフィール及びに関わった事件記録の検索をティアナに頼んだのだった。
「ああ、ごめんね。少し考え事……」
「悩み事ですか? あの……図々しいかも知れませんけど、あたしで良かったらお話だけでも聞きますよ?」
ティアナにしてみれば単純に自分の上官であるし、心配してくれるのは分かるのだが、フェイトは彼女だからこそ理解し得ない悩みであることは分かりきっていた。
「いいよ、ティアナとは無縁の悩みだから……」
「そうですか。それとすみません、再来週の祭日に休暇を頂けませんか?」
フェイトの目付きが一瞬変わった。
「ひょっとして、ヴァイス君かな?」
フェイトがその名を口走ると、ティアナは顔を真っ赤にして狼狽しだした。
「い、いえあの、その……べ、別に久々に休みを合わせられるかなとか、そんなんじゃなくて、ええと」
取り繕おうとして全部口に出ているのに気付かないまま、焦りの色が表情に丸出しである。
「ふふっ、入れて置いてあげる。はぁ……」
フェイトは笑ってティアナの要望を聞き入れるや、再び現実を思い出したように盛大な溜め息を付く。その様を見て、ティアナは大方察してしまった。
- 32 名前:Mago di blu senza fine 2:2008/01/31(木) 23:14:18 ID:VQ8SZVJA
- 「ひょっとして、フェイトさんの悩みって……」
「ティアナはいいよねぇ……。彼氏いて……」
そう、フェイト・T・ハラオウン20歳、「彼氏いない歴=年齢」記録更新中である。
「なのはにはユーノがいて、はやてにはアコース査察官がいて、アルフにはザフィーラがいて、
今いないシャーリーはグリフィス君とデート中だし、エリオとキャロは私より先にくっついちゃったし、
A’sの終わりまでは最有力だったクロノはエイミィに取られちゃったし、
おまけに9歳の頃からずっとガチレズって噂が絶えないんだよ……」
机に突っ伏したフェイトは、言えば言うほどしょぼーんと小さくなっていく感じがした。
最後あたりの発言は微妙に危ない気がするが、見方を変えればそのせいで男が寄り付かないとも考えられなくは無い……。
ティアナも一時期スバルとガチレズ疑惑が流れていた覚えはある。
あの時は画面に出てこない六課の男性局員共に見せ付けるように、ヴァイスといちゃついた覚えがあった……。
「じゃあ、フェイトさん自身は普通に恋愛がしたいんですね?」
「別世界じゃどうか知らないけどね……」
最早、危ない発言が何時また飛び出すか分かったものではない、ティアナはなんとか流れを変えようと戦闘時以上に頭をフル回転させて言葉を探した。
「今気になる人っています?」
ティアナの質問にフェイトは突っ伏したまま首を横に振った。
「いてもめったに会えなくて自然消滅しそうだよ」
「男の人に声を掛けられることは?」
「それもあんまり無い……。通りかかるとコソコソ話したりしてるのは見た事あるけど、やっぱり変な噂されてるのかなぁって……」
「ひょっとして、声を掛け辛いイメージがあるんじゃないですか?」
ティアナは自分が感じた事をそのまま言って見た。
フェイトは他人から見ればなのはやはやてに比べて、口数は少なく物静かでどことなく気品を感じる凛とした雰囲気を纏っている。
加えて有能な魔導師とくれば色々とイメージを持たれたとしてもなんら不思議ではない。
彼女の持つ雰囲気が、易々と並の男を近づけさせないと感じさせている可能性はありそうだとティアナは思った。
もっとも実際話してみれば、そう言ったイメージとはかけ離れて、話しやすい人ではあるのだが、先入観のせいで話しかけるまでに至らないのだろう。
- 33 名前:Mago di blu senza fine 3:2008/01/31(木) 23:15:16 ID:VQ8SZVJA
- 「アリシアが羨ましい……」
微かに残った記憶だけが印象に残る、今亡き姉の事がフェイトの頭をよぎった。
アリシアは人見知りなどしない明るい女の子で、誰とでもすぐ打ち解けて仲良くなってしまうような姉だったはずだ。
同じ遺伝子を持っているのにフェイトとは真逆(まぎゃく)の性格、せめて自分に少しでもアリシアのような快活さがあったならと思ってしまう。
フェイトは内心年下(しかも彼氏持ち)の部下に相談している現実が無償に嫌になった……。
「そ、そんな凹まないでくださいよ。きっと、フェイトさんみたいな物静かな人が好みの人だっていっぱいいますよ!」
「それが同じ女の子ばっかりだったら?」
「うっ……!」
なんとかフェイトを励まそうとするティアナ、しかし女性にばかり憧れの目を向けられる光景を何度も目にした覚えがあり、これ以上言葉が見つからなかった……
「ふー、やっぱり当面は無理かも。仕事の続きしよう」
いつまでも机に突っ伏しているわけにもいかない。どの役職も忙しい事に変わりは無いが、執務官は任務に於いて単独行動が多い分だけ事務仕事の比重が大きいのだ。
先ほど報告書の作成をようやく済ませ、次に当たる任務の概要を確認して置こうとした(大いに脱線していたが)所であった。
次の任務は他の執務官と共同で行う予定だ。その為にティアナに書類を持って来させた事も危うく忘れてしまう所だった。
フェイトがその資料に目を通そうとしたその時、来客を告げるインターホンのブザーが鳴る。
「あの、どなたでしょうか?」
入り口側に近かったティアナが自動ドアの脇にあるスイッチを入れて来客を確認する画面を呼び出した。
『フェイト執務官はこちらですか?』
画面に出たのは、セミロング辺りまで伸ばされたシルバーグレーの髪と、深い海の様なコバルトブルーの両目が印象に残る、落ちついた雰囲気の顔立ちをした若い男性だった。
「そうですけど……」
『今度の任務に関しての事で顔を合わせに来ました、開けてもらえますか?』
- 34 名前:Mago di blu senza fine 4:2008/01/31(木) 23:15:54 ID:VQ8SZVJA
- その言葉にティアナはもちろん、フェイトの方も焦る。
他の局員との共同任務自体はさして珍しい事ではなかったが、せいぜい任務の直前のブリーフィングで初めて会う事の方が多い。まさか、直接出向いてくるなど想像だにしていなかった。
いきなりの訪問に驚くものの、執務室は人を入れるには問題ない。
「ティアナ、入ってもらって」
「分かりました。と言う事です、どうぞ」
ティアナが開閉ボタンを押して、自動ドアが開く。一拍置いて、二人の男性が執務室へと入って来た。
「へぇ〜、執務官の部屋ってみんなあんまり変わんないんだね」
入ってくるや、先ほどの男声とは違う陽気な声が部屋に響いた。
所々がはねているミディアムよりは短いくすんだ金髪にターコイズブルーの瞳、健康的に焼けた肌が目立つ、どこか少年に近い雰囲気の青年だった。
管理局の制服ではなく、白いタンクトップの上にサバイバルベストをチャック全開で重ね着しており、所々が真横に破けたジーンズにスニーカーと言う、ストリートチルドレンのような様相が子供っぽさに拍車を掛けている。
「あまりはしゃぐな。遊びに来てるんじゃないんだ」
子供っぽい青年の後に続いて、先ほど画面に出てきた青年が姿を現す。
こちらは執務官仕様の黒い制服をきっちりと着ている。本人の雰囲気から見ても場違いな空気は微塵も感じない。
- 35 名前:Mago di blu senza fine 5:2008/01/31(木) 23:16:35 ID:VQ8SZVJA
- 「次の任務を共同で当たる事になったアルバトロス・レヴェントン執務官です。こっちは俺の補佐官で……」
「ジャルパ・スタンツァーニで〜っす♪ よろしぐぼぁっ!」
おどけた調子で自己紹介するジャルパに、アルバトロスが左肘鉄を喰らわせて顎を跳ね上げる。
「連れが失礼して申し訳ない。まぁ、態度は軽いが腕は上官の俺が保障するよ」
「アルバ、敬語敬語」
いつの間にか口調が変わっていることをジャルパが注意する。
おそらくは、敬語で応対する機会が少ないのだろう、とフェイトは推察した。
「ところで、あなた方はどうしてこちらへ?」
「あー、その何と言いましょうか……」
「紙一枚とにらめっこするより、直接会ったほうがいいからだよ♪ 僕らはいつもそうしてるんだ」
返答に窮していたアルバトロスに変わって軽い調子で説明するジャルパ、それに対してアルバトロスはさらに困って顔を歪めていた。
「とにかく、勝手な来訪をして済まなかった。邪魔をしたならお引取りするよ」
そう言ってアルバトロスはジャルパを引きずって行こうと襟首をつかむ。
「あ、いえ……。そうだ、ティアナ、お茶を用意して来てくれる? 4人分」
「はい、じゃあ少々お待ち下さい」
ティアナは資料棚の隣にある簡素な食器棚からティーセットを出して執務室を出て行った。
「お茶飲ませてくれんの!?」
「いや、わざわざそこまでしてもらう必要は……」
「せっかく来たんですから、これくらいはさせて下さい」
何故かフェイトはこの二人をこのまま帰すのに気が進まなかった。
>>続く
- 36 名前:三浦:2008/01/31(木) 23:18:11 ID:VQ8SZVJA
- 無茶苦茶中途半端なところで切れましたが、はじめまして。概要としてはオリ×フェイト、オリ×スバルになる予定です。
タイトルの意味はイタリア語で『果てしなき青の魔術師』です。(翻訳ソフト頼りなんで自信ありませんが)
流石に某マクラーレンさんほどの良キャラには出来なさそうですけど、整合性を重視してがんばるつもりです。
オリとコテハンの名前はランボルギーニで統一しました。(※アルバトロス除く、アホウドリの英名です)
- 37 名前:名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 23:26:18 ID:FA2hjO05
- とりあえず、オリが誰とくっつく予定なのかは最初に書いておいた方がいいと思うよ。
- 38 名前:名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 23:35:29 ID:48m44Gm3
- 最近投下されるSS読んでてこんな台詞が浮かんできた。
知っているか? このスレのフェイトさんは3つに分けられる
────おバカなフェイトさん────
────ラブエロフェイトさん────
────ヤンデレフェイトさん────
この3つだ。
────あのSSは────
- 39 名前:名無しさん@ピンキー:2008/01/31(木) 23:38:47 ID:pLUG19C2
- >>36
GJ!wktkが止まらないですよ。
>>38
ピクシー乙ww
- 40 名前:B・A:2008/02/01(金) 00:19:28 ID:V/QToouC
- >>18
GJです。アリサがアリサしてて良いですね。
新生レイジングハートがどうなるのか今からwktkです。
こちらもバトルもの投下です。
注意事項
・エリオ×ルーテシア
・非エロ
・本編改編。いわゆるIFというやつです。
・強引な展開や独自の解釈、勝手な捏造が多々含まれます
- 41 名前:Ritter von Lutecia 第5話@:2008/02/01(金) 00:21:04 ID:V/QToouC
- 不意に、乾いた音が響く。
買ったばかりの夫婦茶碗が割れていた。それも、エリオが使用している方が。
「エリオ・・・・」
嫌な予感がする。
エリオと別れる時もこの不安は感じていた。まるで、エリオと二度と会えないのではないかと。
エリオはすぐに戻ると言っていたが、既にあれから30分は経過している。
何か、事件にでも巻き込まれたのだろうか?
「・・・・・・・」
やはり心配だ。
ルーテシアは出来上がった料理にラップをかけると、急いで出かける支度を整えた。
胸にわだかまる不安を振り払うように、ルーテシアはアパートを飛び出した。
- 42 名前:Ritter von Lutecia 第5話A:2008/02/01(金) 00:25:05 ID:V/QToouC
- スバルの突進を回避し、そのまま加速魔法で後方のティアナへと距離を詰める。
転回したスバルが追いかけてくるが、FWメンバーで最速を誇っていたエリオには着いて来られない。
瞬く間に距離を詰め、ティアナに渾身の突きを繰り出す。
「!?」
奇妙な手応えに、エリオは反射的に真横へ跳んだ。
直後、ティアナの体をオレンジ色の魔力弾が貫通し、苦悶の表情を浮かべたティアナの体が透けるように消えていく。
「幻影!?」
咄嗟にストラーダを盾にして何とか防ぐが、すかさず追いついたスバルの拳が身動きの取れぬエリオを強襲する。
「リボルバー・・・」
「ストラーダ!」
「・・シュートッ!!」
衝撃が放たれた瞬間、エリオの体はストラーダのバーニアによって宙に飛んでいた。
「キャロ、砲撃!」
「フリード、ブラストフレア!」
待ち構えていたかのように、フリードの火球がエリオを狙い撃つ。
「ぐあぁぁぁっ!」
バランスを崩し、エリオは地面目掛けて落下する。そこへ追い討ちをかけるよ
うに、スバルとティアナが互いの射撃魔法を叩き込む。
「リボルバー・・シュートッ!」
「クロスファイヤー・・・シュートッ!!」
『Panzerhindernis』
直撃の寸前、エリオを包むように多面体の障壁が展開され、ダメージを緩和する。
傷は深いものの、辛うじて事なきを得たエリオは即座に態勢を立て直し、3人から距離を取った。
- 43 名前:Ritter von Lutecia 第5話B:2008/02/01(金) 00:28:33 ID:V/QToouC
- (強い・・・斬り込む隙がない)
敵になって初めて、機動六課が化け物じみた部隊であったことが実感できる。
秀でた技能、高い素養を持つ者を片っ端から集め、それを現役のエースが文字通りぶっ叩いて鍛え上げたのが
自分たちFWメンバーなのだ。個々の戦闘能力では未だ隊長たちに及ばないものの、集団戦においては最早Bランクの域を逸脱している。
頑強で一発が重いスバル。
的確な指示と幻術で相手を翻弄するティアナ。
豊富な補助魔法で味方を支援するキャロ。
それぞれが持つ長所を恐ろしく高いレベルで引き出すことで、チーム全体の力が何倍にも高められている。
はっきり言おう。勝てる気がしない。
(それでも、やるしかない)
一見すると無敵に見えるこの布陣にも弱点はある。
ティアナが指示を飛ばし、スバルが切り込み、キャロが援護する。
このどれか一つでも崩すことができれば、彼女たちの戦術は機能しなくなる。
それを防ぐのがGWの役目であり、それ故にエリオに求められたのは瞬時に戦場を駆け抜けることができるスピードと、
変化する戦局に柔軟に対応できる総合能力だ。それが欠けている今、3人の内1人でも倒すことができれば、
こちらにも勝機が見えてくる。
「残存カートリッジは予備も含めて7発・・・・・大丈夫だ、まだやれる。ストラーダ、フォルムツヴァイ!」
『Düsenform』
第二形態へと変形させたストラーダのバーニアを点火させ、エリオは駆けた。
今までよりも遥かに強い加速Gが体を襲い、風圧で頭が仰け反りそうになる。
- 44 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 00:29:38 ID:BoU7VDof
- 支援。
- 45 名前:Ritter von Lutecia 第5話C:2008/02/01(金) 00:30:15 ID:V/QToouC
- 「こぉっのぉぉぉぉっ!!」
暴れる相棒を強引に抑えつけ、遠心力を加えた一撃をスバルに叩き込む。
ぶつかり合う鋼と鋼。金属の擦れ合う耳触りの音が静かな河川敷を震わせる。
「エリオ! あの召喚師の娘を助けたいって気持ちはわかるけど、こんなことしても何にも解決しないよ!」
「それでも、ルーが泣いているよりは何倍もマシです!」
スバルの腹を蹴り飛ばし、その勢いのままティアナに突撃する。最初からスバルを相手にする気はない。
狙うは司令塔、ティアナただ一人。
「覚悟!」
「ケリュケイオン、お願い!」
『Boosted Protection』
だが、エリオの攻撃はキャロの防御魔法によって阻まれてしまう。
「エリオくん!」
「邪魔・・・するなぁっ!」
反転し、キャロめがけて斬撃を放つ。
ストラーダの穂先がバリアとぶつかり合い、火花が飛び散る。
その一瞬の隙を逃さず、ティアナの魔力弾の一斉射撃が再び降り注ぎ、エリオは後退を余儀なくされる。
「今よ、デルタシフト!」
「了解!」
「はい」
ティアナの号令で、スバルがエリオに突撃する。また馬鹿の一つ覚えの突進かと思ったが、エリオの本能は警鐘を鳴らしていた。
危険だ、急いで間合いを取らねば取り返しのつかないことになる。
「ストラーダ、カートリッジ・・・・」
「させない!」
- 46 名前:Ritter von Lutecia 第5話D:2008/02/01(金) 00:32:12 ID:V/QToouC
- 一瞬でスバルの瞳が金色に変わり、足下にミッド式でもベルカ式でもない、青い色の環状魔法陣が展開する。
エリオは初めて目にするが、これがスバルの奥の手。戦闘機人モード。
そして、そこから繰り出されるのは・・・・。
「一撃・・・必殺! 振・動・拳!」
高速で回転するナックルスピナーが地面に叩きつけられ、まるで地震でも起きたかのように地面が揺れる。
直後、スバルが殴った場所が爆発し、火山灰のように大量の土砂が噴き上がった。
「くっ、目が・・・!!」
もろに土砂を被ったエリオの視界が一瞬ではあるが奪われる。その一瞬は次の攻撃への布石であった。
「我が求めるは、戒める物、捕らえる物。言の葉に答えよ、鋼鉄の縛鎖。錬鉄召喚、アルケミックチェーン!」
エリオの足下から伸びた鎖が蛇のように絡まり、エリオを拘束する。キャロが得意とする召喚魔法の一つ、錬鉄召喚だ。
もがけばもがくほど鎖が食い込み、肉が裂ける痛みにエリオは悲鳴を上げる。
「ぐぁぁぁぁっ!」
まだだ、まだ何かある。
ここまでは全て足止めだ。ならば、次は必ず必殺の一撃がくる。恐らく、未だ何もしていないティアナから。
「!?」
そして、エリオは見た。
ティアナのクロスミラージュが、見たこともない形態に変形しているのを。
ブレイズモード。
長距離砲撃に特化した、クロスミラージュのフルドライブだ。
いや、それだけではない。
左右から感じる圧迫感。
右からはスバルがディバインバスターを。
左からはフリードがブラストフレアを。
3人が持つ最強の砲撃を、自分に向けて放とうとしていた。
その余りの恐怖に、エリオは言葉を失った。
- 47 名前:Ritter von Lutecia 第5話E:2008/02/01(金) 00:34:31 ID:V/QToouC
- スバルが引きつけ、キャロの拘束で動きを封じている間に砲撃をチャージする時間を稼いだ後、
三方向からの一斉射撃で対象を制圧する。
それが、新たに考案された制圧用フォーメーション・デルタシフトであった。
「ごめんね、フリード。本当はこんなことしたくないよね」
「きゅるぅ」
六課で過ごした日々を通じて、フリードはエリオに尊敬の念を抱くようになっていた。
同じ分隊ということで触れ合う機会も多かったし、多分、1人で背中に乗せても大丈夫なくらい心が通じ合っているはずだ。
そんなフリードに、エリオを撃たせるのは心苦しかった。
「私のことは嫌いになっても良いから。だから、今この瞬間だけは言うことを聞いて・・・・」
「きゅくるー」
悲しげな主の言葉に、フリードは応える術を持たなかった。できることと言えば、彼女の願いどおりエリオを撃つことだけ。
だが、それも、主を傷つける結果に終わってしまう。
フリードが堂々巡りの思考に陥ったその時、ケリュケイオンが新たな魔力反応をキャッチした。
『マスター、危険な魔力反応を感知。これは・・・・・』
- 48 名前:Ritter von Lutecia 第5話F:2008/02/01(金) 00:36:07 ID:V/QToouC
- 瞬間、キャロの足下に召喚陣が展開し、中から黒い影が飛び出してくる。
「・・ケリュケイオン!」
『Booste・・・』
ケリュケイオンが防御魔法を唱えるよりも早く、強烈な左ストレートがキャロの体を吹っ飛ばした。
「キャロ!?・・・ぐあぁっ!」
砲撃のチャージのために動けなかったスバルも衝撃弾の直撃を受けて吹っ飛ばされる。
残されたティアナは、即座に標的を乱入者に切り替えた。
撃たなければやられる。
震える手をなだめ、レーダーサイトを敵の胴体に合わせる。
「ファントムブレイザァァァっ!!」
放たれるオレンジ色の砲撃。ティアナが使用する魔法の中では、間違いなく最強の威力を誇る。
だが、それすらも乱入者は片手で受け止めてしまった。
「嘘・・・・・」
これは何の冗談だ?
キャロからの報告で、こいつはエリオに倒されたと聞いた。ならば、実力が拮抗している自分たちでも倒せると思っていた。
なのにどうだ。緻密に立てた作戦も、訓練で鍛え上げた連携も、全て台無しにされた。
そして、そいつはその爪の矛先を今度は自分に向けている。
「ガ・・・リュー・・・」
エリオの声に、ガリューは一瞥だけで応える。
戦況は、大きく傾き始めた。
to be continued
- 49 名前:B・A:2008/02/01(金) 00:37:21 ID:V/QToouC
- 以上です。
大方の予想通りエリオ大ピンチ。本当はこのまま最後までいきたかったけど、長くなったので2つに分けました。
次回でエリオの反撃が始まります。
では、言い訳じみたあとがきを。
「デルタシフト」は当初「クロスシフトD」だったんですが、26-111氏のSSで既に出されていましたので、
急きょ差し替えました。3人→三角→デルタって形が三角だな。という安直な発想だったりなかったり。
そして、ファントムブレイザーは本編に続き今回も良いとこなし。哀れ。
- 50 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 00:47:14 ID:23e3EkQ5
- GJ。
ファントムブレイザー…今後一度でも決まる機会があるんだろうかw
- 51 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 01:02:40 ID:q1YecT6B
- ガリュー超GJ!!
かつての敵同士が手を取り合って共に戦うなんて、某週間少年漫画雑誌みたいな展開だぜ。
- 52 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 01:09:27 ID:0mSt90NZ
- GJ!!です。
ガリューが強い。さすが登場時に仮面ライダーもどきといわれていただけあるw
しかも、ルーテシアの愛の力で能力が二乗しているとしか思えないw
ここからはお仕置きの時間だッ!!
- 53 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 01:38:33 ID:fSJpW9l9
- GJ!!
料理を作ったばかりということは当然ルーテシアはエプロン装着ですよね?
- 54 名前::名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 01:55:54 ID:xuC4OudL
- >>36 ,>>49
GJ
- 55 名前:タピオカ:2008/02/01(金) 02:23:30 ID:Ty/EzPGO
- 割とお久しぶりです。
まるで誰からも見向きもされないネタを、サウンドステージを聞いてて思いついたので投下しようと思います。
ユーノとかなのはとか逆に難しいので、やっぱりメインキャラに手が出ないです。
・猫娘と11娘の話
・エロくも何ともない
・捏造が酷い
前回はチンク(♀)とゼスト(♂)なので、どうにかエロを挿めましたが今回は……
え、ゼストとチンクの話とか覚えてない? そうっスか orz
そうそう、始める前に一言。
チクショウ、奇襲失敗だ、( ゚Д゚) 氏に先を越されたぁ……
- 56 名前:タピオカ:2008/02/01(金) 02:24:51 ID:Ty/EzPGO
- 「優しい夢を見れるように」 起の話
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
九つの声に目が覚めた。
真っ暗だ。明かりが無い、うんぬんの話ではなく何もないのだ。
ただ気配はある。九つ。それを意識した時、一切の闇の中に九つの灯が現れた。
淡い蒼。照らされるべき、自分の体はない。とっくに自分は舞台から退場した身である。そもそも、今ここに意識がある事がおかしい。
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
回答を待つその九つの声は、覚醒したてた意識にひどく重い。
目まいさえしそうになって、頭を押さえようとしても、押さえるべき頭も、押さえるための手もなかった。
- 57 名前:タピオカ:2008/02/01(金) 02:25:34 ID:Ty/EzPGO
- (あなた達は?)
<ジュエルシード>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
(ジュエルシード?)
<次元干渉型エネルギー結晶体。あなたの願いを、叶えよう>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
(さてはロストロギアですね……ここはどこですか?)
<虚数空間>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
(虚数空間ですって? 何故、そんな場所に?)
<オブジェクトリーディング展開>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
途端、頭が射抜かれた様な衝撃に浮遊感を得る。
次の瞬間で結ばれた焦点には景色があった。
玉座の女魔導師、そしてその後ろには胎児のようにポットの中で眠る一人の娘。
(プレシアとフェイト?!)
奇妙なアングルから認めたかつての主の顔に、自分が彼女のデバイスの視点を通していると理解する。
そう自分は、プレシアの杖だ。待機状態から見るこれは、杖が見た記録。記憶。その道筋。
『私たちは旅立つの』
九つの、煌めき。淡く、蒼いそれはジュエルシードだ。
- 58 名前:タピオカ:2008/02/01(金) 02:26:22 ID:Ty/EzPGO
- 『忘れられた都、アルハザードへ!』
環状に展開されるジュエルシードの魔力が高ぶるのが分かる。
異常だ。次元世界さえ、巻き込んで有り余る魔力の波動。
『この力で旅立って、取り戻すのよ』
広がる。ジュエルシードが共鳴し合えば、痛いほどに超常のエネルギーが溢れていく。
淡い蒼が、徐々に純白へと。
『全てを!』
次元震。
次元断層さえ起こしかねないのを感じ、愕然となった。
なぜこんな恐ろしい事を?
いったい、自分が消えてどれだけ経つ?
これは何時だ?
なぜフェイトが?
アルハザードとはなんだ?
プレシアの狂った高笑いが自失した自分の耳に痛かった。
それから3時間と経たずに、全てが終わる。
時の庭園が最奥。状況と進行を見守るプレシアの元へと、4人の小さな勇者が集う。
その中に、フェイトもいた。
では、プレシアのそばで眠る少女は、誰だ?
アリシア。
まるで物語を見ているように、登場人物たちのやり取りに耳を傾けていればおおよその事が把握できた。
したく、なかった。
混乱しながら呆然と、動揺しながら驚倒して眺めていれば呆気のない最後がやってくる。
フェイトの手を拒み、堕ちていくプレシア。そして、自分も。
あぁ、だからここは、虚数空間なのか。
落ちていく感覚の途中、自分が手放された。プレシアとアリシアから離れていく。杖が虚数空間を漂い始めた。
杖にとどまった九つのジュエルシードは、困った。
使用者の願いを叶える事が、作られた理由だ。
使用者が離れた今、どうすればいいだろう?
広域の探索魔法で目ぼしい使用者を探そうとも、全てキャンセルされる。
移動魔法で場所を変えようとしても、全てキャンセルされる。
そうだ、使用者を作り出すのは、どうだろうか。
それだ。
そうしよう。
幸い、自分たちの収められたデバイスの中に、前の使用者の使い魔の残滓がある。
復活だ。
再生だ。
また、リニスが生まれる。
プレシアの杖の中で。中だけで。意識だけが。
肉体は、魔力を編んで構成しようとしても虚数空間である。すぐに分解されてしまった。
仕方ない。だがこのデバイスに閉じ込められた意識でも、蘇らせれば願いが得られる。
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
- 59 名前:タピオカ:2008/02/01(金) 02:28:19 ID:Ty/EzPGO
- そして、今。現在。
ない背筋に怖気と寒気が走ったのを、リニスははっきり感じる。
こいつらは、使用者の後も先も、願いが叶うか否もどうでもいい。ただ願いを叶える為の行動をする、だけ。
(ここから……出られないのですか?)
<肉体がありません>
<サルベージしたデータより再構成します>
<エラー>
<エラー>
<キャンセルされました>
<キャンセルされました>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
(今、プレシアは……どこに?)
<ダウジング展開>
<エラー>
<エラー>
<キャンセルされました>
<キャンセルされました>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
(フェイトは、どうなったのです? アルフは? あれから、いったいどうなったのですか?)
<クレアヴォヤス展開>
<エラー>
<エラー>
<キャンセルされました>
<キャンセルされました>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
<願いを>
ここですでに、もはや絶望しかないのを理解した。
肉体があれば、その恐怖と最悪に歯が鳴ったことであろう。
魔力で願いを叶える機能は、全ての魔法を打ち消す場で価値があるだろうか。
唯一、プレシアの杖の内部という限定のみで、叶えられる願いはある。
だが、その願いは夢にしかならない。
オブジェクトリーディングの使用で、リニスは過去を視た。
プレシアの軌跡、アリシアの死、フェイトの生、リニスの意味。
プレシアの研究、フェイトとの冷たい親子関係、リニスの教育の目的。
全てが繋がったとて、どうしようもない。圧倒的な慟哭に打ちのめされるリニスへと、無機質な声が降る。
<願いを>
少しずつ冷静さを取り戻しながら、例えばリニスが願うとしよう。もう一度、会いたいと。もう一度だけ、会いたいと。
しかし出られない。虚数空間と言う監獄からは、出られない。
ならば、ジュエルシードは用意する。夢を。もう一度、会いたいと願った者がいる、夢を。
意味がなかった。それはただの、夢だ。
夢が終われば、再び九つの声。
- 60 名前:タピオカ:2008/02/01(金) 02:29:21 ID:Ty/EzPGO
- <願いを>
その、繰り返し。
叶わぬ願いを、夢見せられるだけの無限。
デバイス内の意識体と化したリニスに死という概念も無くなり、つまり終わりもない。
プレシアの杖が機能を停止してくれる事も、破格の魔力の塊であるジュエルシードを伴っている現状、あり得まい。
地獄だ。
(もう一度、フェイトに会いたい)
いつしか、ただそれだけを願うようになった。
返答は、無理だ、という九つの声。フェイトが現れる夢にも、リニスは目を閉じた。
笑いかけてくる夢の中のフェイトを無視して、願い続ける。決して、溺れる事はなかった。これはただの悪夢でしか、ない。
(もう一度、フェイトに会いたい)
夢が終わっても、またそう願う。
返答は、無理だ、という九つの声。そして、また夢。
夢の中で、リニスは歌を口ずさみ始める。いつか、フェイトに請われた子守唄。
それを、自分へ。
「優しい夢を見れるように」
それから、どれだけ時間が経ったかをリニスは意識するのを止めた。
心を凍結させ、ただフェイトとの再会を願い、歌う。
もはや、死と同義であった。
◆
「むむ! これは難しい波っス!」
歪んだ見晴らしは、虚数空間。そんな空をウェンディは飛んでいた。
相棒と言えるライディングボードを駆り、派手なパフォーマンスじみて空を蛇行する。
きっちりとした体重移動で鋭い加速を物にするが、ボードのジェットは必要最小限。彼女自身の感性で得た加速である。
一応、空気と呼べるものは虚数空間にあるが、流れない。流れないから、風もない。
それがウェンディには不満だった。
ライディングボード単体でもブースター、スラスターに相当する推進機関を備えられているが彼女はあまりそれを使わない。
自分で風の波とを走りたいのである。
楽しかった。空が、風が。
だから強引に虚数空間の大気に切り込んでは、無理に空気をねじってそれに乗るのだ。
「あまり無茶な飛び方はするな」
「えへへ、ちょっと楽しみすぎたっス」
「遊びに来ているわけはないぞ」
「分かってるっスよ、トーレ姉」
それを見守るように、後方から間隔を詰めず離さずトーレが飛翔。
ゆるく上昇するようにしてスピードを削りながら、ウェンディはトーレに並んだ。
「落ちる」という感覚はある。虚数空間には下方に相当する方向から引力があるのだ。だから昇れば自然とブレーキになる。
いちいち、そんな小さなアクションでもウェンディは活き活きとしていた。
だがトーレの言う通り、この虚数空間での飛翔は遊びではない。訓練の一環である。
戦闘機人はあらゆる環境に対応して活動ができるが、やはり順応するためには訓練や鍛練が必要だ。
今回、その場となったのが虚数空間である。
とはいえ、スカリエッティがここに将来的な考えをもって訓練場としたわけではない。
- 61 名前:タピオカ:2008/02/01(金) 02:30:20 ID:Ty/EzPGO
- 『危険地であるこの場で訓練し、自分を磨きたい』
というトーレからの申し出である。
そう、虚数空間は危険だ。入退場に管理局や諸々の観測者から悟られぬ用意も要るし、出るためにも外から穴を開けてもらう必要がある。
うっかり退場のタイミングを逃さぬよう綿密にタイムスケジュールを外にいるスカリエッティ、ウーノ、クアットロと詰めている。
何重にも保険をかけて、なおトーレはここにやってくるのだ。
苛烈な彼女としては、一歩間違えれば死よりも恐ろしい事になるこの環境が刺激的ならしい。
それが、これで4度目だ。ウェンディは過去3回行き来しているトーレの審判によってスレスレ合格、今回初入場となっている。
ハッキリ言って、この4度にわたる虚数空間の行き来は、次元航行に関わる研究者からすれば夢のようなプロジェクトだ。
街を3つ、4つ動かす費用の基、天才と言える者たちを集め、年月掛けて進められる事である。それをトーレの武辺者としての目的で、しかも4度。
やりようによっては、間違いなく謎の多い虚数空間を開拓できる。
しかし、当人達は訓練以外の事はしない。興味がない。
そんな飛翔訓練についても、そろそろ終了の時刻。
いくらか細かくウェンディがトーレとやり取りをした後、不思議そうな顔になる。
「あれ……」
「どうした?」
「何か、聞こえるっス……」
「何がだ?」
「………歌?」
速度と間隔をいがませず、微かに聞こえる微かな声音にウェンディがきょろきょろと。
トーレも、隙のない眼差しで周囲を見渡すが、誰もいないし何もない。歪な空間しか広がらない。
「何もないぞ?」
「おっかしいっスね……確かに聞こえるんスけど…」
自分自身で、不思議そうだ。トーレとしては聞こえない物は聞こえない、という態度だがウェンディは違う。
そっと耳を澄ませて、少しずつライディングボードの機動を修正していく。
「おい」
「ちょっとだけ、ほんのちょっとだけっスから」
大きく下方へ伸び、加速したウェンディがトーレから離れていく。
声の方角は、正直良く分からない。どこからともなく聞こえてくる、と言うのが的確だ。何となく、下方な気がするというだけ。
それでも、ウェンディはその声を追った。理由は特にない。
虚数空間の景色に少し倦んでいたので、何か好奇心のそそられるものが欲しかったのかもしれない。
底のない虚数空間を、どこまでも降りていく。まるでもう後戻りできないような気分に襲われ、逆にウェンディは興奮した。
(うは、結構すごいスピードになったっス……こりゃ気持ちいい……!)
少し、歌声が大きくなった気がする。加速に加速を重ね、ウェンディの知らない高速の世界に入ってなお耳に届く。
もっと下だと、ウェンディが確信する。
隕石じみた降下のまま、ウェンディが目を凝らした。
あった。黒。紫。杖。
追いついた。すれ違う瞬間、かっさらうように手に収めてターン、そのまま降下速度を上昇速度に転換。
するつもりだった。
描いたイメージの途中、黒い杖を掴んだ瞬間、重い重い負荷。
速度を出しすぎた。杖を上回り過ぎたスピードを殺せないまま下手に上昇しようとしたせいで、引っかかる。
「あ」
落ちた。
もう後戻りできない現実を直感し、ウェンディの頭が沸騰する。
他人事のように、ライディングボードが飛んでいくのが見える。ウェンディは置き去り。
「うああああああああああああああああああああああああ!!!」
- 62 名前:タピオカ:2008/02/01(金) 02:31:19 ID:Ty/EzPGO
- そのまま、落下する事の恐怖をその身で受ける。
背筋にツララでも突っ込まれた気分のまま、ただ落ちていく感覚。これほどにも大地がないという事が恐ろしいとは、今日の今まで知らなかった。
何か掴む物が欲しい一心で、手をばたつかせるが、何もない。そうだ、何もないのだ。上にも、下にも、左右前後、何も、無い。
杖を手が痛くなるほど必死で握りしめるが、何も事態は好転しない。歌は、まだ聞こえる。はっきりと、この杖から聞こえる。
それがどうした。
やめておけばよかったという後悔が、落ちると言う恐怖に、足の裏に何も感じないと言う不安に塗りつぶされていく。
止まった。
背中。支え。トーレだ。
何かに支えられている事が、これほど頼もしい事にウェンディは驚く。
そして、じわり、じわりと安堵。動悸が激しい。汗は、出ていない。歯の根は、合わなかった。
「この馬鹿者!!!」
いつもは恐ろしいだけのトーレの叱咤が、今のウェンディにはすさまじく心強い。
抱きかかえられるまま、赤子のようにトーレにぎゅっとしがみつき、ウェンディはただ震えた。
握りしめる杖からは相変わらず、歌。
暗い色に塗りつぶされた思考に響く歌を、ウェンディは空虚な心で聞いていた。
「優しい夢を見れるように」
◇
「それで、これが件の歌声かね?」
「はい。と言っても、私には聞こえませんが」
「ふむ、私も聞こえないね……はて、どこかで見た覚えが……?」
ラボでの事。
無事、帰ってこれたウェンディとトーレだが、ウェンディは放心状態で今は休ませている。
一応、こっぴどくトーレが絞ったが今のウェンディには大した意味になるまい。割合早く反省会を終わらせて、スカリエッティに報告。
そしてウェンディが拾った杖を提出したと言うわけである。
「魔導師の物でしょうか?」
「その通りだ。いつかの時代に、虚数空間に落ちたのだろう。フィクションならこんな物が掘り出し物だったりするんだが」
ふと、コウモリを象った杖に備えられた宝玉へとスカリエッティが視線を注ぐ。
いくらか、考える風に眉根を寄せて、閃いた。
「ああ、思いだした。そうだ、これはプレシア・テスタロッサの物だよ」
「プレシア・テスタロッサ、ですか?」
「そう、君たちの開発にも関わる……」
キィン、と甲高い音。
「?」
「!」
プレシアの杖からだ。宝玉に輝きが帯びている。
スカリエッティは訝しげな表情をするだけだが、トーレは構えた。インパルスブレードも展開。
『テ……ス…タ…』
「?」
「ドクター、杖を」
「いや、遅いよ。まぁ、見物しようじゃないか」
『ロ…ッ…サ……』
九つの淡い蒼が杖から飛び出した。
瞬時に気づく。ジュエルシードだと。
ジュエルシードが中心となり、魔力が集う。かなりの量だ。編まれるように形作られるのは、人型。
- 63 名前:タピオカ:2008/02/01(金) 02:31:58 ID:Ty/EzPGO
- 「ウーノ、ATF準備」
『分かりました』
横目でホログラムウィンドと共に通信を開けば、スカリエッティはこの場にいない秘書へと声をかける。
トーレはいよいよスカリエッティの前に立ち、守る体勢。
『テ…スタ……ロ…ッ…サ……』
凝固する魔力に、ほう、とスカリエッティが感嘆の声を上げた。トーレだけでは、手に負えない。
ロストロギア九つを相手にしているのだから当然か。
いずれ、はっきりと人の形が出来上がる。
九つのジュエルシードを肩や額などに埋め込んだ人間。違う。耳や尻尾などと見れば、猫を足し合わせている。
うつろな目。
「フェ…イ……ト……」
「フェイト?」
ついに、魔力の塊は肉声さえ発する。復唱するスカリエッティを、うつろな目が睨みつけてきた。
「フェイト……どこ…フェイト……フェイト!!」
「ドクター!」
荒ぶる魔力を纏い、人型を繕ったジュエルシードがスカリエッティへと突撃。理性も知性もない、獣じみた動きだ。暴走しているようにも見える。
トーレが間に割って入るが、明らかに押されていた。
即座、スカリエッティがATF展開。かなりの濃度だ。並みの魔法生物ならば、分と経たずに灰になる。
が、
「フ…ェ…イ…ト…!!!」
しかし人型はほどけない。肉体ではなく、魔力で体を構成している事を考えればATFは致命的なはずだが、なおも形を保っている。
とはいえ、流石に弱ってはいるようだ。トーレが人型を組み伏せた。
「ふむ……君は何者だい?」
床に体を押し付けられている状態の人型をスカリエッティは見下ろした。
見上げてくる瞳には、しっかりと知性と理性の光が覗く。
「ここは……私は……?」
「質問しているのは私なのだがね、まぁ、いい。ここは私のラボだ。私の名は、ジェイル・スカリエッティ。それで、君は何者かな?」
「私……私は……」
すっかりと、大人しい本性に戻り、冷静さを取り戻しながら呟く。
自分に自分で言い聞かせるようにだ。
「私は……リニス……」
- 64 名前:タピオカ:2008/02/01(金) 02:34:15 ID:Ty/EzPGO
- 終わりです。
あり得ないキャラを組み合わせて奇襲、これしかない。そう、リニスを持ってこよう。クックック、今、あまり明るいと言えない話が多い時期、こんな使い魔なんぞ誰も意識していまい! 見向きもしない方向から不意打ち……やってやるぜ!
そして、遅かったと言う。
再見!
- 65 名前:タピオカ:2008/02/01(金) 02:40:40 ID:Ty/EzPGO
- GYAAAAAAAAAAAAAAAAA!!
やっちまった……「優しい夢を見れるように」じゃない……「優しい夢を見れるよう」です……
ヤッベェ……頭湧いとる……
スミマセン、今回のタイトル、>>60 、>>62に入っている
「優しい夢を見れるように」と言うカギカッコ内の言葉を「優しい夢を見れるよう」に変えて読んでください、とここで言っても後の祭り……
ああああああああ、かっこ悪ぅ……
- 66 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 02:43:05 ID:FK37zPXt
- >65
おお、こりゃまた先が読めなくて楽しみ。フェイトさん大変そうですな。
ところでATFだと先進戦術戦闘機計画になっちまうですよ。
- 67 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 02:59:09 ID:V/QToouC
- >>65
AMF(Anti Magi-link Field)ですね。
- 68 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 03:03:19 ID:+78qFWvm
- >>64
発想は良い
着眼点も良い
だけど”ATF”って何?
今までそんなの出たっけ?
- 69 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 03:05:50 ID:HWkIhq/F
- A あなたの
T となりの
F フェイトさん
A あなたの
M みだらな
F フェイトさん
- 70 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 03:09:42 ID:+78qFWvm
- >>69
納得
- 71 名前:タピオカ:2008/02/01(金) 03:13:57 ID:Ty/EzPGO
- ミス多すぎだろチクショウ……orz
二回ぐらい見直したのに、意味ねぇよ……orz
本当にATFってなんだよ……AMFだよチクショウ……orz
- 72 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 03:17:50 ID:B832clkG
- ATFって(-。−;)
エヴァの見すぎですね
- 73 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 03:20:35 ID:HzwSuPdT
- 何かで見たと思ったらエヴァだったか
- 74 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 03:32:15 ID:+78qFWvm
- >>71
まあ、その、なんだ
移`
ネタを提供したと思えば良いんじゃね?
- 75 名前:タピオカ:2008/02/01(金) 03:46:03 ID:Ty/EzPGO
- >>71
もともとギャグやってた身なので、そう思っときます。
問題は笑わせたのではなく笑われたと言う事か。
これからは夜中に腐ってる脳味噌での投下には注意します。
今回は、もう誤字多すぎて逆に清々しいわ、チクショウ、真面目話を最初でこけるとは……orz
- 76 名前:タピオカ:2008/02/01(金) 04:25:45 ID:Ty/EzPGO
- そして>>75も>>74に対するレスをミス、と。ちょっと死んで来るわ。
- 77 名前:燃え上がる炎の魔法使い 3---/14 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/01(金) 05:25:15 ID:EbgUYWzT
- かく言う私も大自爆。
サブタイトルは
「Das Gefuhl, Macht zu wollen,」
です……
- 78 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 06:40:04 ID:1YJauAMk
- >49 ファントムブレイザー……決まらないねえw
>53 その場合このスレ的にはルーはやっぱり裸えぷ、いやなんでもないなんでも
>76 まあ落ち着いてw
虚数空間でも確かに数の子なら生存可能だよな……しかも金かけすぎなんだぜ、訓練の為だけに
とりあえず続きが楽しみなんだぜ
- 79 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 08:01:51 ID:lpzdLlj/
- >>前スレ628
>「虎の威を借る狐」の感がある
あちらさんがこっちの?
どっちかというと「またユーノか」って連中に追いやられた形じゃないの?
ユーノスレのことを言ってるんじゃなかったらすまん
- 80 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 08:33:27 ID:Almcr51U
- >>79
虎の威=他キャラってことじゃないの。
見てないから知らんけどSSの登場人物が一人ってことはないだろうし。
- 81 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 08:56:50 ID:JjoXCnhV
- 向こうは向こう、エロパロスレはエロパロスレ
非干渉が望ましい
- 82 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 08:58:54 ID:tMsInrTs
- 職人の脳波レベルが完全に落ちている・・・!
ここはIAF(Ikiro Acceleration Field)の展開w(スターライトブレイカー!
- 83 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 09:28:01 ID:lpzdLlj/
- >>80
ああ、なるほど。
>>81
そだね、すまんかった。
- 84 名前: ◆6BmcNJgox2 :2008/02/01(金) 10:16:33 ID:iyg/10Yq
- こんな時間ですけど書かせていただきます。
・先生またやってしまいました
・病院でお馬鹿フェイトネタも適度にやっとかないと生きて行けない病と診断された…と言う事にして下さい。
・フェイトが好きな人には申し訳ありません
・なのは×ユーノが嫌でフェイトがなのはをレイプしてしまうレズセックスネタ
・無論エロ レズネタ
・結末がちょっと鬱っぽいかな?
- 85 名前:もう私の知る彼女じゃない 1 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/01(金) 10:17:52 ID:iyg/10Yq
- 「フェイトちゃん。私…決めたの…。ユーノ君と結婚するって…。」
「そんなまたまたご冗談を。」
食事の席で突然なのはからそう告白されたフェイトは呆れ顔で手を左右に振っていた。
高町なのはとフェイト=T=ハラオウンの二人はもとても仲が良い。
同じベッドで一緒に寝ると言う事もあったし、レズと勘違いされてもおかしくない位に
二人は仲が良く、特にフェイトの方はなのはを愛していさえもした。
それ故になのはが好きであるが故にちょっとフェイトに意地悪しようと思って
ユーノと結婚する等と冗談を言ったのだろうとフェイトは考えていた。
なのはがユーノと結婚なんてあり得なさ過ぎて嘘バレバレじゃない…そうフェイトは思っていたが…
「冗談じゃないよ。私は本気…。」
「え……………。」
なのはの真剣な表情にフェイトは固まった。なのはが言った事は嘘でも冗談でも無い。
それは目を見れば分かる。なのはは本気。本気でユーノと結婚するつもりだとフェイトは悟った。
「なのは…正気? ユーノと結婚なんて…。」
フェイトは身体を震わせ…恐れの表情を見せながらなのはの肩を掴んで言うが…なのはの表情は変わらない。
「正気だよ。もう私は何年も前からずっとそう考えて来たから。それで…
お互い仕事も軌道に乗って…決心が固まったから結婚しようって事になったの。」
「な…………。」
なのはは本気でその様な事を言っていると頭では分かっていても…フェイトには信じられなかった。
そして慌てて席を立ち、なのはの服を引っ張る。
「なのは…今からでも遅くない。これから病院に行こう!?」
「え? どうして? どうして病院に行かなきゃならないの? 私何処も悪くないよ。」
「これが悪く無いワケ無いでしょ!? あんなフェレット男と結婚なんて…
頭がどうかしてる証拠だよ! だから早く! 手遅れにならない内に病院に行こう!?」
フェイトは必死の形相でなのはを力一杯引っ張るが…なのはに力一杯振り払われてしまった。
「どうにかしてるのはフェイトちゃんの方だよ! どうして!? どうして私と
ユーノ君が結婚したらいけないの!? どうしてそれで病院にいかないといけないの!?
それに…ユーノ君をフェレット男なんて呼ばないで!」
なのはの行動にフェイトが理解出来なかった様に、なのはもまたフェイトの行動が理解出来なかった。
なのはは不貞腐れながら再び席に付くが、フェイトは涙目になりながら言う。
「なのは…考え直して…。そ…そうだ! ヴィヴィオ! なのはがあんなフェレット男と
結婚したら…ヴィヴィオはどうなるの!? ヴィヴィオの事も考えてあげてよ!」
「それなら問題無いよ。ヴィヴィオもユーノ君の事パパって呼んでくれるし、
ユーノ君も最初は違和感感じてたみたいだけど。今では立派にヴィヴィオのパパだよ。
むしろ…こういう状況で結婚してない方がむしろ不自然って言われてるんだから…。」
「え…そんな……。」
フェイトの目から一粒の涙が頬を伝ってテーブルへ流れ落ちた…。
彼女には今の状況がとても信じられなかった。ヴィヴィオがなのはと自分以外の存在…
それも男であるユーノに懐き…あろう事かパパとまで呼んでいるとは信じがたい事だったのだ。
フェイト自身…仮になのはがユーノと結婚する気でも、ヴィヴィオがユーノに懐かなくて
結局上手く行かない…なんて事を考えていた故に…そのショックは余りにも大きかった。
- 86 名前:もう私の知る彼女じゃない 2 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/01(金) 10:19:27 ID:iyg/10Yq
- 「それにフェイトちゃん考えても見てよ。リンディさんだってクロノ君って言う実の子供がいて、
なおかつ養子のフェイトちゃんにも自分の子として大切にしてくれるでしょ? それと同じ事だよ。
私とユーノ君が結婚しても…赤ちゃんが出来ても…ヴィヴィオは立派な私の子供なの。」
「あのフェレット男の赤ちゃん!?」
なのはの言葉にフェイトは愕然とした。ユーノと結婚するのみならず…子供まで作る気である
事がフェイトには驚愕的な事であった。
「うそ…嘘だよね!? あんなフェレット男と結婚するだけじゃなく…子供まで…。」
「だからユーノ君をフェレット男なんて呼ばないでって言ったじゃない!
それに結婚して子供作る事でそんな驚くかな普通…。クロノ君とエイミィさんの間にだって
普通に子供が二人いるじゃない。それと同じ事だよ。」
クロノとエイミィが結婚して子供を二人作った事に関しては…フェイトとしても別に問題は無い。
むしろそれはめでたい事だ。しかし…なのはがユーノと子供を作ると言うのは許し難い事だった。
フェイトは頭の中で想像した。なのはがユーノとベッドの上で抱き合う様を…。
なのはのお腹の中でなのはの卵子とユーノの精子が結合し、子宮に着床して妊娠する様を…
お腹の子供が育って…なのはのお腹が徐々に大きくなって行く様を…
ついにお産が始まって…なのはの股からユーノの子供がせり出てくる様を…
やっと生まれた子供になのはがお乳を飲ませる様を………………
想像するだけでもフェイトにとって身震いする程恐ろしい光景であった………
「嫌だぁぁぁぁぁぁ! おねがい! おねがいだからなのはぁぁぁぁぁ!
考え直して! 考え直してよぉぉぉぉぉぉぉ!!」
フェイトは涙を滝の様に流しながらなのはに掴みかかっていたが…またも振り払われてしまった。
「いい加減にしてよフェイトちゃん! いくらフェイトちゃんの頼みでもこれだけは聞けないよ!」
「そんな…なのはは私が嫌いなの!? 私が………。」
「そんな事は無いよ。私もフェイトちゃんは大好き…。でも…ユーノ君も大好き…。
これだけは幾らフェイトちゃんが相手でも譲れないよ。別に良いじゃない。
私がユーノ君と結婚しても何処か遠くに行っちゃうワケじゃないんだよ?
これからも私はフェイトちゃんと大切な親友同士と言うのは変わらないんだよ。」
なのはは真剣な顔でそう問いただしていくが…フェイトの考えは変わる事は無かった。
「私は…嫌だ…。」
なのはと一度分かれた後もフェイトはそう考えていた。
そしてバルディッシュを握り…ユーノを殺そうと考える事もあったが、
そんな事をすれば間違い無く犯罪。なのはには嫌われる上に刑務所に入れられる…。
それは本末転倒も甚だしい。故にそんな事をせずに何とかなのはとユーノを
別れさせる様な事は出来ないか? と考えていたのだが…そこで良いアイディアが浮かんだ。
なのはとユーノの結婚は決まったが、実はまだ式の予定日等は決まっていなかった故、
翌日になってもまだ普通に互いに仕事をしていたのであるが…それは起こった。
「ふ〜今日も疲れた…。ヴィヴィオが心配しない内に早く帰ろうっと。」
今日の教導を終えたなのはが疲れた表情で帰ろうとしていたのであったが…
そこで突然背後から何者かに組み掴まれた。
- 87 名前:もう私の知る彼女じゃない 3 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/01(金) 10:20:22 ID:iyg/10Yq
- 「ん! んん!」
そして何者かはなのはの口と鼻にハンカチを被せる。しかもそれにはクロロホルムが
染み込まれており…流石のなのはも忽ち眠ってしまわざるを得なかった…。
「ん…ここは…。」
なのはが目を覚ました時…彼女は薄暗い部屋で寝かされていた。
「そう言えば帰ろうとした時にいきなり背後から組み付かれて…それから…ってああ!」
なのはが状況を整理し終えて直ぐ、今置かれている状況に気付いた。
何と何時の間にか全裸にされており、その上両手両脚にバインドを仕掛けられ
身動き取れない状態でベッドの上に寝かされていたのだ。しかも……
「やっと目を覚ましてくれたね? なのは…。」
「フェ…フェイトちゃん!」
なのはの股をM字に大きく広げ…股間を夢中になって嘗め回すフェイトの姿があったのである。
「フェイトちゃん止めて! アッ! 何を…嫌!」
フェイトに股間を嘗め回され、なのはの身体はビクビクと痙攣するがバインドの
せいで身動きが取れない。そしてフェイトは頭を上げて言う。
「私…やっぱり耐えられないよ…。なのはがあんなフェレット男と結婚するなんて…。
だから私……これからなのはを抱く。なのはを愛して愛して…もうあんなフェレット男の
事なんか考えられないようにしてあげるから…。」
「ええ!? フェイトちゃんやめ…あああ!」
なのはが反論しようとするより先にフェイトがなのはの左乳首に吸い付き、
思わずなのはの体がまたもビクッと震えた。
「フフフ…なのは…愛してる……。」
「嫌ぁ! フェイトちゃんやめて! 誰か助け…んぶ!」
なのはは泣きながら助けを求めたが…それ直後にフェイトによって唇を奪われていた。
「ん…ん…ん…んあ…。」
「んんんんんんんん!!」
フェイトはうっとりした表情でなのはの唇に己の唇を密着させ、舌を絡ませ
なのはは抵抗したくてもバインドのせいで身動きが取れずに成すがままにされてしまっていた。
「ん…んんぁ…。」
フェイトが唇を離した時、舌から糸を引いた唾液がなのはの舌に繋がっており…
なのはは全身の力が抜けた様にぐったりしていた。
「なのは…愛してるから…あんなフェレット男なんかには渡さないから…。」
フェイトはなのはを抱きしめた。彼女はなのはを愛していた。
こう言う行為がレズだと言う事は勿論分かっている。むしろレズでも良い。
レズとして正面から堂々となのはを愛する。そして愛して愛して………
なのはを堕とす…二人で一緒に堕ちよう…そうフェイトは考えていた。
- 88 名前:もう私の知る彼女じゃない 4 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/01(金) 10:21:50 ID:iyg/10Yq
- 「ん…ん…ん…なのは…ん…。」
「や! やめ! フェイトちゃ…やぁ!」
フェイトはなのはの素肌を優しくも大胆に嘗め回し…指で乳首を弄くり…
乳房同士を当て合い…股間と股間をこすり付け合った………
その度にフェイトの歓喜の声と…なのはの喘ぎ声が部屋中に響き渡る…。
フェイトの考え得る限りの…あの手この手でなのはを愛撫し続けた。
「あ! やめて! やめて! ああ!」
なのはも必死に抵抗したいのであろうが…バインドのせいで身動きが取れない。
それ所か…次第に体が言う事を聞かなくなってくる。嫌なのに…嫌だと頭では分かっていると
言うのに…体がフェイトの愛撫に感じてしまっている。フェイトの愛撫を求めている…。
そして気付いた時には…堕ちていた。自分からフェイトと舌を絡ませ…
腰を振り…乳首に吸い付き合った…。こうなってしまってはもう手遅れ…。
なのはは……フェイトの雌犬へと姿を変えていた………………
「なのは! なのは! なのはぁぁぁ!」
「ああああああ! フェイトちゃぁぁぁぁん!」
二人の歓喜とも取れる喘ぎ声が部屋中へ響き渡った。
それから一時し…フェイトは汗びっしょりの身体をタオルで拭きながらベッドで
うつ伏せになって倒れ込んでいるなのはの方を向いた。
「なのは…これで分かってくれた? あんなフェレット男なんかと一緒になったって
良い事なんて一つも無いよ。だから…私と…これからも私と一緒に行こう?」
「う…うん…ごめんなさい…フェイトちゃんごめんなさい…。」
なのはは起き上がり…涙を流しながらフェイトへ抱き付いた。それに合わせてフェイトも
なのはを優しく抱き返す。
「私…やっぱりユーノ君と結婚しないよ…分かれるよ…だから…フェイトちゃん…。」
「うん…分かってる…なのは…なのはの言いたい事は分かってるよ…。」
フェイトの目からも涙が…ゆっくりと流れ落ちた。もう二人は永遠に一緒……と思われていたと言うのに……
「…………な〜んて………言うと思ったでしょ? フェイトちゃん?」
「え………。」
突然掌を返すかの様ななのはの言葉にフェイトは凍り付いた。そして次の瞬間…
なのはがフェイトをベッドへ押し倒したのである。
「なのは! どうしたの!?」
「流石にレズセックスって初めてだったから…感覚を掴むのに時間が掛かったよ…。」
戸惑うフェイトをあざ笑うかのような不敵な笑みを浮かべながら…なのははフェイトの
両腕を押さえ込んでいた。
「フェイトちゃん…どうせ本で読んだ知識だけでやってたでしょ? 私でも下手だな〜って思ったよ。」
「え!?」
「苦労したんだよ〜フェイトちゃんに悟られない様に感じた振りをするのって〜。」
「ええ!?」
- 89 名前:もう私の知る彼女じゃない 5 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/01(金) 10:24:24 ID:iyg/10Yq
- フェイトは驚愕した。なのはは堕ちていなかった。それ所か…フェイトと抱き合っていた
一連の行動は全て演技だったのである。今のなのはが最初から何事も無かったかの様に
平然としているのが何よりの証拠。それにはフェイトも裏切られたと言う気にならざる得なかった。
「なのは…そんな……酷いよ!」
「酷いのはフェイトちゃんでしょ? いきなり私をこんな所まで連れ込んで…。
でも今度は私の番。私が…フェイトちゃんに本当のセックスって言うのを教えてあげる。」
なのはは不敵な笑みを浮かべながらウィンクして見せ…フェイトに悪寒が走った。
「な…何を言うのなのは…そんな…まるでセックスなんてもう何度もやってるみたいな口振りで…。」
「何度もやってるみたいな口振りなんかじゃ無くて…もう既に何度もやってるんだよ。」
「そ…そんな! 一体…一体誰とそんな事!?」
「決まってるじゃない。ユーノ君だよ。」
「え…………。」
フェイトは凍り付いた。知らなかった。フェイトはてっきりなのはは性に関しては疎い
処女だと考えていた。だと言うのに…実際は違った………………
「ユーノ君ってね…普段は大人しいフェレットさんって感じだけど………
ベッドの上だと凄いんだよ…凶暴な猛獣さんになっちゃうんだ………。
それに……オ○ン○ンも凄く大きくて……私も何度も何度もイかされて………。」
「え…………。」
フェイトは真っ青になった。なのはとユーノが既にやっていたと言う事だけでもショックだと
言うのに…フェイトが考え得る限りを尽くし、あの手この手で愛撫しても平然としていた
なのはを何度もイかせる程の力を持っていると言う事実は想像を絶していた。
「ユーノ君に抱かれてる時は…もうイヤ…もうセックスなんて二度としたくない…
そう思う位に激しいんだけど………でも…終わったら終わったで………
こんなにもまたユーノ君とセックスしたい………そう思わせてくれるんだよ……。」
「……………。」
フェイトは恐怖の余り声が出なかった。もはやフェイトの知るなのははここにはいない。
なのははフェイトの知らない間に…ユーノと様々な事をして来たのだから……。
「だからね…フェイトちゃんに教えてあげる……。本当のセックスがどんな物かって……。
流石にユーノ君程上手じゃないけど…それでもフェイトちゃんよりかは自信あるよ私…。」
「え? んん!」
次の瞬間なのははフェイトの唇を奪い、舌を絡め合わせて来た。
そして同時進行的に左手で乳房を…右手で股間を弄くって来る。
しかもそのいずれもがフェイトがしていた時以上に大胆かつ丁寧な物だった。
「(そんな…なのは…上手…どうしてこんなにも上手なの…?)」
本で得た知識でなのはを抱いていたフェイトと違い、実際にユーノと
交わった経験を持っていた故の事であろうか…。なのはの愛撫はフェイトよりも遥かに上手かった。
- 90 名前:もう私の知る彼女じゃない 6 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/01(金) 10:25:37 ID:iyg/10Yq
- 「(で…でも…あのフェレット男は…こんななのはを何度もイかせて…アア!)」
フェイトは喘ぎ声を上げながら驚愕するしか無かった。なのはでさえこれだと言うのに
ユーノは一体どれだけのバケモノだと言うのかと………。
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…。」
結局フェイトはなのはの手によって何度もイかされ…終わった時には
ベッドの上に倒れ込む様にして苦しそうに息をするのみだった。
「ごめんねフェイトちゃん…私はフェイトちゃんの事大好き…。フェイトちゃんの頼みなら
何だって聞いてあげたい。けど…ユーノ君との結婚だけは譲れないの。」
なのはは制服を着ながら、ベッドの上でなおも倒れたままのフェイトを見下ろしてそう言った。
「それに…私がやった事もそれはそれで酷い事だと思うけど…本当にゴメンね…?
こうでもしないとフェイトちゃんも納得してくれないって思ったから…。
だから…こういう感じでやらせてもらったよ。フェイトちゃんも知ってるよね?
昔…猪木寛治って人がいて、その人が提唱した『風車の理論』…。相手の技を全て受けて…
その後で受けた分をそれ以上にして返す事によって勝利すると言う事…。
だから私もそうさせてもらったよ。フェイトちゃんに思う存分私を犯させて…
その後で私がそれ以上にフェイトちゃんを犯し返す…。今はこれが一番だと思ってるから…。」
「……………………。」
フェイトは黙ったままだった。そしてさらになのはは言う。
「それでもまだフェイトちゃんが私とユーノ君の結婚が嫌で…邪魔をするって言うのなら
それでも構わないよ。私も私でフェイトちゃんが納得するまで返り討ちにしてあげるから…。
ってあ! もうこんな時間じゃない! これじゃあ私の方がヴィヴィオに頭冷やされちゃうかも…。
それじゃあフェイトちゃん! またね!」
「…………………。」
なのはは慌て眼で帰って行ったが…フェイトはなおもベッドに倒れたままだった。
「う…もうなのはは…私の知る…なのはじゃない…うう…。」
フェイトは泣き崩れた…。そうするしか無い。そうした所で何か事態が好転するワケでは無いが…
泣かずにはいられなかった。もうなのはは自分の隣にはいない。自分を置いて遠い遠い所へ
行ってしまったと……………。
おしまい
- 91 名前: ◆6BmcNJgox2 :2008/02/01(金) 10:27:54 ID:iyg/10Yq
- フェイト好きな人ほんまごめんなさいorz
あと…
>エラー表示無しで異次元に消えることがあるそうです
これの意味をやっと理解しました。書き込んでる際の実際の体験で…
- 92 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 10:42:44 ID:GM7EbqzV
- フェイト好きよりもなのは好きの方がキツイよ。
なんかなのは性格悪いなあw
- 93 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 10:45:06 ID:JjoXCnhV
- 猪木が近代日本の思想家みたいになっててワロタ
- 94 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 10:45:52 ID:MEFAky1+
- >>91
GJです!!
お馬鹿フェイトさんシリーズ大好きすぎw
ただ、フェイトがやられてるシーンもちょっと欲しかった気もしますです。
とにかくGJでした!
- 95 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 11:07:34 ID:BoU7VDof
- 乙。
>93
猪木先生は政治家ですよ?
- 96 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 12:33:07 ID:n1YKJghK
- >>38
ヤンデレと魔王(ベッドの上でも)の二択が
長く続いてる教導官を誰か助けてあげてください。
- 97 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 13:21:23 ID:doq6z1/i
- GJです。
これは普通の御馬鹿フェイトとは少し違いますな
しかし、今まで以上にフェイトさんは、なのはにめろめろかも
行き着く先は3Pだったりして
- 98 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 13:56:27 ID:0H48BkWU
- いつのまにかURLがかわったんだね
- 99 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 14:41:01 ID:rDXMMHDB
- >>91
お馬鹿フェイトさんGJ!
しかしちょっとかわいそうでもありますな。
ところで、以前からこの逆パターン
(レズなのは→ノーマルフェイト→ユーノ)
が思い浮かんでしょうがないのですが、
どうしたらいいのでしょうか?
- 100 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 14:54:15 ID:HH4cPhtr
- >>99
さあ、早くその電波をSSに纏めてうpする作業に戻るんだ。
- 101 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 15:40:59 ID:wChk7YwV
- >>99
SSにするの期待してるわ
- 102 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 16:39:07 ID:oQlDs/PM
- >>99
多分需要はあるから迷わずGOだ。
俺が受信した電波なんか世の売れ線に真っ向からケンカ売ってるからその時点で悩んでるし。
- 103 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 18:08:47 ID:xYnoxBQB
- >>91
練習用殴り書きスレッド3
用途:なんでも
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1193143632/
上のに投下して誘導かけるという手もあるかもと言うことを提示してみたりなんかしちゃったりしてみる
そういう投下方法も他の板ではあったらしいし
- 104 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 18:29:40 ID:CHg8L0Gc
- >>91
風車理論に吹いたwwwwwww
相変わらず職人はプロレスが好きなようでw
- 105 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 21:14:17 ID:2SU73+Qd
- 今更で悪いんだが・・・ここの職人って・・・どんなソフトで小説書いてるんだ教えてくれ
- 106 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 21:17:01 ID:AmpWPsJE
- >>91
あえて言わせてくれ。
フェレットは猛獣だぜ。
それはさておきGJ!
- 107 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 21:38:51 ID:HIZTGHqf
- >>106
なのは「私のフェレットは凶暴です」
- 108 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 21:42:00 ID:0mSt90NZ
- なのはさんとの初めてのプレイ内容がチェーンバインドで縛り、宙吊りでとかw
- 109 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 21:44:23 ID:BoU7VDof
- >105
メモ帳とワードを適時。一レスに収まる埋めネタなんかは勢いのまま直に書き込んだり。
>106
おぅよッ!
【フェレットの近縁種たるテンに噛まれた事が】
- 110 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 21:45:22 ID:VOGnNTMv
- >>105
そんなん一人一人違うだろ。
エディタなりアウトラインプロセッサなりのスレにでも行ったらどうだ?
- 111 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 21:50:38 ID:IUuKM8vt
- ワード使ってたけどテキストの方が肌に合ってたみたい
- 112 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 21:55:28 ID:2SU73+Qd
- >>110
サンクス、PC系のスレに入って見るか
- 113 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 22:04:21 ID:5jKt2NfT
- メモ帳で書いてるけど自動保存機能ついてるのがいいかもね
停電とか応答なしとか何度か泣いた…
- 114 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 22:06:24 ID:VOGnNTMv
- >>112
ttp://www.raitonoveru.jp/
ここの「小説執筆用ソフトの解説」とか参考になるかも。
- 115 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 22:14:27 ID:F5259obm
- 「秀丸」っていうテキストエディタを使ってます。使用感覚はメモ帳とほぼ同じ。10年来の相棒です
詳しくはググってくれぃ
- 116 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 22:31:56 ID:JjoXCnhV
- >>112
ここの職人じゃないけど冗長な文にならないようにTextAnalyzer使ってます
- 117 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/01(金) 22:36:37 ID:HWkIhq/F
- どうして他のに行くと言っているのにまだレスするのか小一時間ry
優しいとかいうならまだわからないでもないけど
- 118 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 01:18:05 ID:lgxmxC+H
- スバル分とギンガ分が足りない…
- 119 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 01:28:12 ID:L8ApgXG2
- スバルはまだしもギンガなんてこれまでのスレ全部見てもほとんどSSないぞ…
てかそもそも全然登場すらしないし。
- 120 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 01:34:12 ID:ZZ5C2G0P
- ギンガ、ドリルなんて素敵な装備もあるのになぁ。
ギンガになら掘られてもいい。
- 121 名前:B・A:2008/02/02(土) 01:36:11 ID:J4Ya/3gU
- >>119
ギンガは人気そのものは結構あるんですけどねぇ。
注意事項
・エリオ×ルーテシア
・非エロ
・本編改編。いわゆるIFというやつです。
・強引な展開や独自の解釈、勝手な捏造が多々含まれます
- 122 名前:B・A:2008/02/02(土) 01:36:44 ID:J4Ya/3gU
- っと、流れ切るようなら待ちましょうか?
- 123 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 01:38:04 ID:ZZ5C2G0P
- どう考えても投下の方がいいです。本当にありがとうございました。
- 124 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 01:40:15 ID:uNOtqwo0
- 投下投下
- 125 名前:B・A:2008/02/02(土) 01:42:05 ID:J4Ya/3gU
- では、改めて。
注意事項
・エリオ×ルーテシア
・非エロ
・本編改編。いわゆるIFというやつです。
・強引な展開や独自の解釈、勝手な捏造が多々含まれます
・ラストに鬱分あり。
- 126 名前:Ritter von Lutecia 第6話@:2008/02/02(土) 01:46:20 ID:J4Ya/3gU
- 不審な結界を探知したルーテシアは、町外れの河川敷にやって来ていた。
静かで人の気配がないが、魔力反応を探ればここで結界が展開されていることは容易に察することができた。
「アスクレピオス・・・セットアップ」
『Anfang』
グローブ型デバイス、アスクレピオスを起動し、ルーテシアは結界の侵入を試みる。
結界の精度はかなりのものであったが、召喚を始めとする転移魔法に長けた
ルーテシアにかかれば赤子の手を捻るようなものだった。
そして、その場で起きている光景に絶句した。
傷つき、拘束されたエリオと、とどめを差そうとする3人の少女。
全員面識がある。かつてのエリオの同僚、機動六課のメンバーだ。
「ダメ・・・・」
エリオがやられる。
それは、ルーテシアにとって許容できない悪であった。
エリオは自分を守ると言ってくれた。ずっとそばにいてくれると誓ってくれた。
エリオとの触れ合いが、自分に心をくれた。
だから、それを邪魔する者は、誰であろうと許せぬ悪であった。
「ガリュー・・・・あいつらを殺してっ!!」
主の命を受け、ガリューは戦場を駆け抜けた。
ガリューはまず召喚師の少女を戦闘不能にし、次に青い髪の少女の砲撃を衝撃弾で防ぐ。
そして、チームの要である司令塔が放った砲撃を真っ向から弾き、エリオの拘束を引き千切ってルーテシアのもとへと届けた。
「大丈夫、エリオ?」
「ルー・・・うん、何とか」
鈍く残る拘束の痛みに顔をしかめながら、エリオは戦場を見渡す。
キャロは気絶しているのかさっきから動こうとしない。スバルはガードが間に合ったおかげか軽傷で済んでいた。
そして、突発的な事態にティアナは対応しきれていない。浮足立っている今が好機だ。
- 127 名前:Ritter von Lutecia 第6話A:2008/02/02(土) 01:48:16 ID:J4Ya/3gU
- 「ガリュー、ティアナさんを!」
エリオの命令に、ガリューは忠実に動いた。
自慢の爪を使い、右から左からティアナを攻め立てていく。ティアナもダガーモードで防戦するが、
いかんせん接近戦のスキルが違い過ぎた。そして、ガリューに注意を向けるあまり、スバルへの指示が滞ってしまい、
スバルはどう行動すれば良いのか判断しかねていた。
「やっぱり・・・・」
一対一では間違いなくFWメンバー最強のスバルの弱点。それが、集団戦における依存度の高さだ。
格闘家という性質上、スバルの対個人への対処能力は特筆すべきものがある。
その半面、集団戦においては指揮官であるティアナに自身の行動を丸投げしている節があった。
恐らく、自分の判断でティアナの戦術を台無しにしてはいけないという配慮なのだろう。
とはいえ、スバルもこういう事態は何度も経験しており、すぐに思考を切り替えてくるはずだ。
だが、ほんの一瞬でもできた隙が、エリオに態勢を立て直す時間を与えた。
「ルー、ブースト使える?」
「一応は・・・人にかけるのは得意じゃないけど」
「それでも良い。フィールド貫通と打撃強化、できるね!」
「う、うん」
消費したカートリッジを補充し、ルーテシアの前に立つ。かつてキャロとともにガジェットV型を倒した時のように。
「我が乞うは、紫紺の剣。我が槍騎士の刃に、祝福の闇を」
『Bezauberte Feldkörperbehinderten』
「猛きその身に、力を与える祈りの闇を」
『Auftrieb Auf. Streikmacht』
詠唱とともに、アスクレピオスから放たれた紫の光がストラーダに吸収され、エリオの全身に魔力が駆け巡る。
『Empfang』
- 128 名前:Ritter von Lutecia 第6話B:2008/02/02(土) 01:50:25 ID:J4Ya/3gU
- その不穏な気配に気づいたのか、スバルも奥の手を切る。
「マッハキャリバー、フルドライブ!」
『All right buddy. Ignition』
膨大な魔力がマッハキャリバーを包み、魔力でできた羽根が左右に生える。
「ギア、エクセリオン!」
『A.C.S. Standby』
瞬間突撃システム“A.C.S”
スバルがディバインバスターに次いで高町なのはより受け継いだ、もう一つの遺産だ。
「いくよ、エリオ・・・・」
いつでも来いとばかりに、スバルは構える。
真っ向からのぶつかりあい。エリオにとっては些か分の悪い勝負だ。
「エリオ・・・・」
「大丈夫、僕が・・・君を守る!」
『Jawohl』
ストラーダから噴き出した魔力の噴射がエリオの髪を焦がす。
ルーテシアのブーストはエリオの体などお構いなしに魔力を増幅していく。キャロのそれとは明らかに違う、
ぶっ壊れてでも強引に力を引き出す魔の祝福だ。長時間その効果を受け続ければ、体が粉々に砕けてもおかしくない。
それでも、エリオは負ける気がしなかった。
後ろにルーテシアがいる。これ以上に心強いものはない。
- 129 名前:Ritter von Lutecia 第6話C:2008/02/02(土) 01:52:12 ID:J4Ya/3gU
- 「ストラーダ!」
『Stahlmesser』
魔力刃を展開し、バーニアを最大まで噴かせてエリオは飛んだ。最早、その速度はスバルの目でも視認し切れない。
だが、スバルは慌てずに呼吸を整える。例え見えずとも、その動きは流れる気配で伝わってくる。
そう、敵は目の前にいる。
「でやぁぁぁぁっ!」
「はぁぁぁぁっ!!」
文字通りの閃光と化したエリオをスバルは真っ向から受け止める。
両者のバリアが火花を飛ばし、荒れ狂う魔力が衝撃波となって周囲の草木を押し倒す。
「ぐっ・・・うぉぉぉっ・・・・・」
ブーストを受け、強化された一撃を持ってもスバルのバリアは破れない。素手で鉄でも殴っているかのような感触に、
エリオの腕が悲鳴を上げる。鋼が軋むような音は、彼の腕の骨にヒビが入った音だ。
「一撃・・・必倒・・・」
互いにぶつかりあった状態で、スバルは砲撃のチャージを開始する。零距離からのディバインバスター。
自分の防御出力に絶対の自信があるからこそできる芸当だ。
「それを・・・待っていた・・!」
瞬間、ストラーダのサイドブースターが火を噴き、エリオの体が360度回転した。
- 130 名前:Ritter von Lutecia 第6話D:2008/02/02(土) 01:54:05 ID:J4Ya/3gU
- 「なっ!?」
それは、致命的な隙であった。
突撃による足止めと砲撃のチャージに全精力を傾けていたスバルは、
エリオが競り合うことを止めたことで大きくバランスを崩した。
エリオはそのまま遠心力を乗せた一撃をスバルの横っ面に叩き込み、
その勢いのまま体を捻って着地する。
「一閃必中!」
エリオの足下に魔方陣が出現し、ストラーダがカートリッジを二発ロードする。
制御しきれない魔力の負荷で手の平が焼け、肩口までバリアジャケットが裂けるのも構わず、
エリオはメッサーアングリフをスバルの右腕に叩き込んだ。
『相棒!』
「スバル!?」
軋むような音とともに、リボルバーナックルに亀裂が入る。
直後、ナックルスピナーの回転が止まり、音を立てて砕け散った。
「あぁぁっ・・・あぁぁぁっ・・!」
母親の形見が破壊されたことで、動揺するスバル。
エリオはそのままとどめを差さず、再びルーテシアのもとへ後退する。
「ルー!」
「うん・・・開け、誘いの扉」
ルーテシアの詠唱で、2人の足元に魔方陣が展開する。
「転送魔法・・・させない!」
詠唱を阻止しようと、ティアナは魔力弾を放つ。
だが、即座に反応したガリューがそれを打ち消し、そのまま2人のもとへと舞い降りる。
直後、3人に姿は魔方陣へと飲み込まれ、いずこかへと去ってしまった。
- 131 名前:Ritter von Lutecia 第6話E:2008/02/02(土) 01:55:28 ID:J4Ya/3gU
- まるで体から力が抜けたかのように、ティアナは尻餅をついた。
完敗だ。相手の戦力を過小評価していた自分のミスだ。
「ティアナさん・・・」
「キャロ、傷は?」
慰めようと近づくキャロを制する。
同情なんてして欲しくはない。
自虐だと罵ってもいい。
今はエリオを止められなかった自分を、どうしても許せなかった。
「私は頭を打っただけですから、大丈夫です。むしろ・・・・」
重傷なのはスバルの方だった。
母親の形見を破壊された。それがどれだけ辛いことか、自分たちには決して推し量れない。
「うぅ・・・あぁぁ・・・あぁっぁぁっ!」
慟哭するスバルにかける言葉など、何一つなかった。
「エリオくん・・・まるで人が変わったみたいでしたね」
あんな荒々しい戦い方をする子ではなかった。
誰かを傷つけることを決して快く思わない優しい子だった。
なのに、エリオは躊躇することなくスバルの大切なものを粉々に打ち砕いた。
「わかっているの・・・・あんたが歩いているのは、あの時のあたしと同じ道なのよ!」
行き場のない怒りと不安を抱えたまま、ティアナは無意識に親指の爪を噛み千切っていた。
- 132 名前:Ritter von Lutecia 第6話F:2008/02/02(土) 01:57:56 ID:J4Ya/3gU
- ぐったりと横たわるルーテシアにコートをかけ、額の濡れタオルを交換する。
ここはどことも知れない山の中だった。ストラーダの見解では、今日まで暮らしていた町からかなり離れたところらしい。
それ以上はルーテシアでなければわからない。
そのルーテシアはというと、自分たちを転送した直後に倒れてしまった。もう3週間経つというのに、
クアットロに無理やり暴走させられた後遺症は未だ回復しきっていなかったのだ。
「ごめん、こんな無茶させて」
わかっていれば、長距離転送などさせなかった。
「ううん・・・エリオが無事で・・・良かった・・・」
今にも消えそうな声でルーテシアは言う。たったそれだけの動作も、今のルーテシアには苦痛だった。
「とにかく、今はゆっくり休んで」
「うん・・」
ふるふると震える手をルーテシアは差し出す。
エリオがその手を握ると、ルーテシアは安心したような笑みを浮かべて深い眠りに落ちた。
- 133 名前:Ritter von Lutecia 第6話G:2008/02/02(土) 01:59:25 ID:J4Ya/3gU
- そして、エリオは1人になった。
ガリューは見張りのためにここを離れている。
ストラーダは沈黙したまま何も喋らない。
ルーテシアも眠っている。
エリオが何をしようとも、それを目撃する者は誰もいなかった。
「ごめんな・・さい・・・」
頬を伝う涙が手の甲に落ちる。
誰にも届かない懺悔の言葉を、エリオは咽びながら繰り返す。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんな・さい・・」
覚悟していたつもりだった。ルーテシアを守るために、全てを犠牲にすると決めたはずだった。
だが、戦いを終えたエリオの心を占めていたのは深い絶望と後悔であった。
「僕は・・とんでも・・・ないことを・・」
傷つけてしまった。
壊してしまった。
苦しめてしまった。
大切な人を守るために、他の人の大切なものを踏みにじった。
「僕は・・・ベルカの騎士・・・失格だ・・・」
何もかも壊れていく。
騎士としての誇りも。
仲間との絆も。
心に描いた理想も。
たった1人の少女のために、エリオの心は少しずつ摩耗していった。
to be continued
- 134 名前:B・A:2008/02/02(土) 02:01:47 ID:J4Ya/3gU
- 以上です。
遂にここまできた。このSSを書くにあたって最初に思い浮かんだのがこの回のラストシーンです。
理想と愛の反発で心が摩耗していく。これが書きたかった。
戦闘に関してはエリオとガリューの合体技という案もあったけれど、ライダーちっくなのしか思い浮かばなくて却下、
折角ルーテシアもいることだし初めての共同作業にしてみました。いや、スバルにはすまんことをした。
ルーテシアの呪文はキャロのをアレンジしたもの、魔法名は単純にドイツ語訳しただけです。だって、あの娘ベルカ式だし。
- 135 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 02:04:52 ID:SPRfExL9
- GJです!!!
三対三になってなんとかなりましたが…orz
都築待っております!!
- 136 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 02:15:42 ID:NntvjSPJ
- >>134
GJすぎだぜ!! さあ、ルーちゃん今こそ傷ついたエリオの心を癒す時だ。
もちろん身体を使ってな♪ さあここからがエロパロ版の真骨頂!!!
- 137 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 02:16:40 ID:ZZ5C2G0P
- いいな、これ。
スバルの虐められてる姿が好きなので、ナックル壊されて逆に嬉しかった俺変態。
GJ。
エリオイケメンすぎる。
- 138 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 02:23:30 ID:4vYc2+t/
- GJ!!です。
エリオがそれを・・・待っていた・・!と言った時は、
まさかッ!!JOJO的逆転の方程式かと、つい思ってしまいましたw
愛のために誇りを捨てるか・・・逆に今後は誇りを捨てたことで何でもありになるなら
六課としては捕まえるのは大変そうですね。
エリオもせっかく電気が使えるのでそれを戦術に盛り込んでほしいです。
- 139 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 03:46:53 ID:NJB8pPlr
- >B・A氏
GJ!
修羅か羅刹か
騎士道とはシグルイなり!
- 140 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 05:15:08 ID:cCuPW/tg
- >>134
GJ!
ああああこれはエリオの精神的ダメージでかいだろうな・・・
でも好きな子を守りたいという気持ちから管理局を抜けたのだから頑張って乗り越えてほしい!
自分の選んだ道を貫き通せエリオ!
- 141 名前:( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc :2008/02/02(土) 07:13:42 ID:hPPz7VPh
- >>134
エリオ、茨の道だががんがれ。応援したいぞ!
GJ!
さて投下
注意事項
・まぁ、捏造加速中。
・非エロ、後半は確実にシリアス。少し重いかも。前半は知らん。
・今回、そこに存在していながら影の薄い人物が何人かいます。画面を使うメディアじゃない限界です。許せ。
・今回、ある回答のヒントがありますが、解っても言うな。言わないで下さい。
・あぼーんキーワードは「燃え上がる炎の魔法使い」
- 142 名前:燃え上がる炎の魔法使い 4-01/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/02(土) 07:14:14 ID:hPPz7VPh
- 揺らぐ次元空間。
炎に包まれる船。
その船を蝕んでいく、生身のような、しかしグロテスクな、────混沌。
「制御系を乗っ取られました、離脱不可能……このまま本艦ごと、撃ってください!」
「しかし……」
「奴は、本艦のアルカンシェルを起動しようとしています! 手遅れにならないうちに、
早く!」
────閃光。
燃え上がる炎の魔法使い〜Lyrical Violence + A’s〜
PHASE-04:Glut
「最終面接、と言っても、儀礼的なものだからね、もう、手続きは進んでしまっているし」
Dec.15.2005(JST)────時空管理局本局、次元巡航警備部本部
廊下を歩きながら、クロノはフェイトに言う。
こくん、と、緊張した面持ちで、フェイトは頷いた。
「それは解るけど、なんであたし達まで一緒なのよ?」
2人の後ろに、アリサ、ユーノ、なのはが、ぞろぞろと続いている。アリサが、少し納
得いかなさげに、クロノの背後から訊ねた。
「是非、君達にも同席して欲しいって言う、要望なんだ。それに、君達はフェイトの件、
PT事件の、当事者でもあるんだぞ」
クロノは、アリサを振り返って、そう答えた。
「かなり、高名な方なんでしょう?」
「若い頃は、勇士として鳴らしたらしいけどね。でも、良い人だよ」
フェイトの問いに、クロノはそう答える。
クロノがそう言うのだから、よほどなのだろう。
やがて、小会議室と書かれた部屋の前で、クロノが歩みを止める。他の4人も、それに
倣った。
クロノは、軽くノックをしてから、
「失礼します」
と、言いながら、圧縮空気式の自動ドアを、開いた。
「おお、クロノ君か。久しぶりだな」
表情を崩して言う、長身の男性。その顔に刻まれる皺は重ねた年齢を感じさせるが、し
かし、肉体は衰えているようには見えず、矍鑠と、直立の姿勢で、クロノを迎えた。
「嘱託魔導師希望者1名、それと、提督が面会を希望されていた3名、お連れしました」
「おお、入ってもらってくれ」
どこか歓んだような声を上げつつ、老提督は言う。
クロノが身振りで促し、フェイトを先頭に、アリサ、ユーノ、なのはが入ってきた。
「フェイト・テスタロッサ、です。よろしくお願いします」
フェイトは老提督と正対し、名乗り、ぎこちなく頭を下げた。
「ギルバート・グレアムだ。宜しく」
そのいかつい顔を、しかし優しげに綻ばせて、老提督は挨拶を返した。
- 143 名前:燃え上がる炎の魔法使い 4-02/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/02(土) 07:14:47 ID:hPPz7VPh
- 「それと……」
グレアムの視線が、横に並ぶ3人に向いた。
「アリサ・バニングスと……」
「ユーノ・スクライアです!」
アリサの言葉を途中で遮り、ユーノは高く声を上げた。
アリサが、横目でユーノを睨む。
そんな光景を見て、「にゃはは……」と、困ったように苦笑してから、
「高町なのはです」
と、なのはは、頭を下げた。
「アリサ君となのは君は、日本出身だと聞いていたが、アリサ君は……」
小首を傾げるように捻って、グレアムはアリサを見る。
「イギリス人です。と、言っても、あたし自身は、ずっと、日本で暮らしてきましたが」
「イギリス? イングランドかね?」
アリサの答えに、グレアムがそう、聞き返してきたので、アリサは軽く驚き、目を円く
した。
「あ、はい、そうです」
「そうか、アリサ君と私は同郷か」
グレアムの言葉に、アリサはさらに目を円くする。
「私の故郷は、ノーサンバーランドの片田舎でね。そう、魔法との出会いも、君と良く似
ている。もっとも、私が助けたのは、管理局の局員だったんだがね」
アリサは、ユーノと顔を見合わせた。
「アリサ、解るの?」
「行った事はないけど、だいたいならね」
ユーノとアリサのやりとりを、グレアムはその容姿に似合わず、好々爺然とした穏やか
な笑顔で、見ていた。
「もう、50年前の話だがね」
どこか遠い目をしつつ、グレアムは楽しい思い出を思い出すように、笑顔で言った。
「まぁ、とりあえず、みんなかけたまえ」
グレアムに促され、4人は彼と対面に、腰かける。1人、クロノだけが、いつもの彼らし
くなく、キョロキョロとあたりを見回し、落ち着かない態度を見せていた。
「どうしたの、クロノ君?」
なのはがそれに気付き、振り返って、クロノに問いかける。
「いや、なんでもないんだ」
クロノは、そう言うが、やはり、どこか挙動不審である。
「すみません、提督。今日は、リーゼ達は……」
クロノは、グレアムに向かって、そう問いかけた。
「あの子達なら、教導隊の仕事があってな、来ておらんよ。君に会えなくて、残念がって
いたがね」
2人に共通する知り合いなのか、クロノの問いに、グレアムは答えた。
「そ、そうですか……」
クロノは、誤魔化すように苦笑する。まったく、彼らしくない。
「?」
アリサとユーノは、揃ってクロノを見て、首をかしげた。
「おかしなクロノ君」
少し、不満そうな口調で、なのははそう言った。
- 144 名前:燃え上がる炎の魔法使い 4-03/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/02(土) 07:15:33 ID:hPPz7VPh
- 「さて、フェイト君」
グレアムが言い、フェイト達もグレアムに向き直った。
「君は、先の事件で、得たものがあるはずだ。それは、他人に説明されるまでもなく、解
っているね?」
「はい、大切な人────」
フェイトの脳裏に、絆をつないだ人達の顔がよぎる。
「家族────」
アリシア、アルフ、リニス……
「友達────」
アリサ、なのは、ユーノ……
「大切な人達との、絆、信頼」
クロノ、リンディ、エイミィ…………。
「信じる心」
フェイトの言葉に、グレアムは頷く。
「君がそれを大切に出来ると、決して捨てたりしないと約束できるのなら、私からは、こ
れ以上、何も言う事はないよ」
グレアムは優しく微笑み、そう言った。
「ありがとう、ございます」
フェイトは顔を僅かに紅潮させつつ、笑顔でそう言った。
それからさらに、グレアムは4人といくらか言葉を交わしてから、解散となった。
4人は出入り口で頭を下げてから、小会議室を出て行った。
それに続きかけて、クロノは退室ぎわに、グレアムを振り返った。
「もうお聞き及びかと思いますが、第1級指定ロストロギア、闇の書が、発現しました」
「うむ」
グレアムの表情が、それまでの緩んだものから、一気に険しいものへと締まる。
「先ほど、我々『アースラ』スタッフが、正式にその捜索・回収任務に任命されました」
「そうか、君が……君と、リンディ君が、か……」
グレアムの口調は、重々しい物になっていた。
「こんなことを言えた義理ではないが、無理だけは、しないようにな」
「窮地においてこそ、冷静であれ。…………提督の教えの通りです」
グレアムの重々しい言葉に、クロノは、いつもの落ち着き払った口調と表情で答えた。
「そう、か」
頷きながら、グレアムは、詰まりがちに言った。
「それでは、失礼します」
そう言って、クロノが出て行った後も、グレアムは、しばらくの間、それを見送ってい
た。
- 145 名前:燃え上がる炎の魔法使い 4-04/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/02(土) 07:16:18 ID:hPPz7VPh
-
「うっわー、こんなとこに住むの!?」
Dec.17.2005────日本国 東京都 海鳴市。
小田急電鉄海鳴駅から徒歩3分、商店街にも程近い中層マンション。
そこを、本部兼、ハラオウン家住居とすることになったと知り、アリサとなのはは、興
奮したように声を上げた。
「ここ、2人の家から近いって、リンディ提督は言ってたけど……」
最上階。一室の玄関の前で、アリサ、なのはと、フェイト、アリシアが話し合っている。
その間にも、『アースラ』スタッフの手によって、調度品や家電製品が、3LDKの室内に運
ばれていく。
「なのはの家はすぐ近くかな、うちからはちょっと離れてるけど、そんなでもないわよ」
「それより、ほら、翠屋が、ここから見えるよ」
ベランダ状になっている通路の手すり越しに、なのはが指差す。
「あ、ホントだ」
駐車場を挟んで道路の反対側に、翠屋が見えた。
「みどりや?」
アリシアが、不思議そうに振り返って、フェイトの顔を見た。
「なのはのお父さんとお母さんがやってる、喫茶店。ケーキがとっても美味しいんだ」
フェイトも、薄く微笑みながら、アリシアにそう説明する。
「へぇー」
説明されると、アリシアは手すりに両手でしがみついて、翠屋を凝視した。
プァァァァァァッ!
そんな、電子式のラッパのような音が聞こえてきたかと思うと、僅かに経って。
「きゃあぁぁぁっ!?」
室内の方から、リンディの悲鳴が聞こえてきた。
「クロノ、どうしたの? エイミィさん!?」
4人は驚いて、顔を見合わせる。
「何かあったのかも……っ」
「ああ、大丈夫だよ」
アリサ達が室内に上がろうとすると、正面、奥からユーノが出てきて、緊張感のない口
調でそう言った。
「クロノとエイミィさんが、ちょっと驚いて、卒倒しただけだから」
「え?」
ユーノにしては珍しく、少し意地悪そうな顔で言う。
フェイトは、怪訝そうに眉をひそめた。
「くっ、クロノ君、クロノ君!?」
「ユーノ……アンタ……やったわね?」
取り乱して奥に入っていくなのは。それを他所に、アリサがユーノを軽く睨みつつ、呆
れたように言った。
「たまにはね。エイミィさんには、悪いことしちゃったけど」
ユーノは、そう言って苦笑した。
「えーっと、ここで良いのかな」
今度は、玄関の外から、アリサにとっては忘れるはずもない、ユーノにとってもすっか
り馴染んだ、フェイトにとっても聞き覚えのある声が、聞こえてきた。
- 146 名前:燃え上がる炎の魔法使い 4-05/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/02(土) 07:16:48 ID:hPPz7VPh
- 「こんにちわー、お邪魔しまーす」
僅かにソバージュのかかった艶やかな髪の少女、月村すずかが、玄関のドアの外にいた。
「すずかー」
アリサが声を上げる。
「あ、えっと……すずか、久しぶり」
フェイトははにかみながら、すずかに向かって挨拶する。
「直に会うのは半年振りだね……元気だった?」
すずかは、優しげに微笑みながら、そう言った。
「うん。すずかは?」
「私も、元気だよ」
聞き返すフェイトに、すずかはそう答えて、にこっ、と、満面の笑顔になる。
「えっと……」
アリシアが、すずかの顔を見上げて、腕を組んで、小首を傾げる。
「アリシア、ビデオメールで何度か見たよね、すずかだよ」
フェイトが言うと、アリシアは、ぽん、と、手を叩いた。
「すずか! 始めましてだ!」
アリシアはそう言って、嬉しそうに笑う。
「そっか、直接は、始めましてだね」
すずかはそう言って、アリシアの頭を撫でた。
「むーっ、すずかまであたしの事子供扱いするっ」
途端に、アリシアの表情が不機嫌そうになり、口を尖らせて、そっぽを向いてしまった。
「あ、えっと……?」
「だから、すずか、前にも言ったじゃない」
突然豹変したアリシアの態度に、すずかが戸惑っていると、やれやれといった感じで、
アリサが肩をすくめながら、言った。
「アリシアはフェイトのお姉さんなのよ。うちらより年上」
「生まれた日から数えれば、多分、クロノよりも」
アリサの言葉に、フェイトが付け加える。
「あ、そうなんだ……」
「っつかアンタあの時その場にいたでしょうが」
のんびりとした口調で言うすずかに、アリサは思わず突っ込んだ。
「そういえばそうだね」
のんびりとした口調のまま、すずかはそう言ってから、視線をアリシアの方に向け、
「ごめんね、アリシアちゃん」
と、苦笑交じりに、言った。
「わかってくれれば良いのよ」
アリシアは、即座に口元を綻ばせて、視線をすずかに戻した。
「うぅ……こんな密集地帯の細い隙間を、あんな速度で……この世界の住人は、狂気じみ
てるな……」
フェイトとアリシアの背後、奥の方から、クロノの声が聞こえてくる。なのはとアルフ
に支えられつつ、クロノがまだ血色の悪い顔で、出てきた。
「何を大げさなこと言ってるんだか」
アルフが苦笑しながらそう言った。
「君は、見ていなかったから、そんなことが言えるんだ。あれは、常識の範疇を超えてい
るぞ」
クロノは、アルフを振り返り、言う。その言葉には、いつもの覇気がない。
- 147 名前:燃え上がる炎の魔法使い 4-06/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/02(土) 07:17:16 ID:hPPz7VPh
- 「アルフさん、久しぶりです」
「おう、すずかじゃん、おひさー」
すずかの姿に気付き、アルフも満面の笑顔で挨拶を返した。
「いつかは世話になったねー」
「いいえ。構わないですよ」
笑顔で、アルフとすずかはやりとりをかわす。
そうして、一言二言、皆で言葉を交わしていると、玄関のドアがコンコン、と、ノック
された。隙間から、緑に黄色のアクセントの入った制服を着た配達員が、見える。
アリシアが率先してドアに近付き、ドアを大きく開けなおす。
「はい、何か御用でしょうか?」
「えっと、ここって、リンディ・ハラオウンさんのお家でいいのかな?」
宅配業者の配達員は、アリシアにそう、優しげに問いかける。だが、いかにもその、小
さな子供を扱う態度に、アリシアは不機嫌そうに口を尖らせた。
「そうですけど」
さすがに他所様に反論はせず、アリシアは態度を悪くしつつも、そう答えた。
「えっと、お家の人、いないかな? お母さんとか」
「母は半年前に死去しましたが、なにか?」
さすがにムッと来たのか、アリシアは仏頂面でそう返した。
「え、ええ!? そ、それはごめん。いや、その、お届け物の荷物があってね」
配達員はうろたえて、慌てて頭を下げる。
「こら、アリシア、事情を知らない人を困らせるんじゃない」
クロノが出てきて、アリシアを諌める。
「すみません、何の御用でしょうか?」
クロノは、視線を上げて配達員を見ると、そう訊ねた。
「お兄さんかな? えっと、他にはお家の人、今、いないのかな?」
ガーンッ
クロノの脳内に衝撃の鐘の音が響いた。目が白抜きの○になる。
「ぼ、僕はこれでも14歳ですよっ」
灰の様に燃え尽きたクロノを他所に、アルフが代わりにサインをする。“テスタロッサ”
と書きかけて、「いけないいけない」と直したが、それは余禄。
「なんだい、これ? 衣類って書いてあるけど……」
フォーマルな服が収まりそうな箱が、2つ、アルフに手渡されていた。
それを見て、アリサとユーノ、なのは、すずかが、顔を見合わせる。
「ひょっとして……」
4人は、にっと笑った。
「開けてみると良い。週明けから、君たちが使うことになる服だ」
ようやく立ち直ったのか、アルフの背後から、クロノが、フェイトとアリシアに向かっ
て言う。
手渡されたフェイトとアリシアが、不思議そうな顔をしながら、それを開けると、果た
して、中から出てきたのは、アリサやユーノ、なのは達が見慣れた、白い制服だった。
「わぁ……」
2人より先に、なのはとすずかが声を上げた。
「えっと、これ……」
フェイトは戸惑いがちに、クロノを見上げる。アリシアは、無邪気そうな笑顔で、それ
を見つめていた。
- 148 名前:燃え上がる炎の魔法使い 4-07/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/02(土) 07:18:05 ID:hPPz7VPh
- 「週明けから、アリサやなのは達と同じクラスだ。2人ともって言うのは、本来ルール違
反らしいが、無理して、そうしてもらった」
クロノが、そう答える。
「えーっ!?」
その言葉に、アリシアが、驚いた声を出し、不満そうに、言う。
「私もフェイト達と、同じ学年ー!?」
「君は、本来なら、それより下の学年までしか、教育を受けていないんだぞ。まぁ、ミッ
ドと日本では、教育制度自体が違うから、単純には、すり合わせられないが」
「むー」
クロノが説明するが、アリシアの表情は晴れない。
「それに、今、フェイトやなのは達が、あの連中に狙われているって事、考えてくれ。ア
リサも含めて、デバイスが、修理中なんだぞ」
「あ……そっか」
アリシアは表情の緊張を解く。
「まぁ、昼間は襲ってこないと思うが、あくまで推測だからね。それとも、君は危険が迫
っている妹を放り出すような、姉だったのかい?」
「そんなことないっ」
アリシアはクロノに向き直って、向きになった声を上げた。
「フェイトも他の友達も、あたしとブローバが護るっ」
「アリシア……」
アリシアの言葉に、フェイトはどこか嬉しそうに、瞳を潤ませた。
「にしても、連中も結局、あたしよりなのはやフェイトの魔力狙いかー」
こんどはアリサが、口元では苦笑しつつ、不貞腐れた様な声を出した。
「そうじゃなくて。君は既に一度、蒐集されてしまったからね。同じリンカーコアを2度
抜いても、意味が無いんだ」
「どういうことよ?」
クロノの説明に、アリサはキョトンとして、聞き返す。
「ここではなんだ、奥で説明しよう」
クロノが言い、一同を奥に案内する。
「アリサちゃんたち、なにかまた、事件に巻き込まれてるの?」
すずかが、不安そうな表情で、アリサに訊ねた。
「んー、まぁ、ちょっとね」
アリサは、たいした事はない、というように、そう軽く返事をした。
LDKに移動すると、そこに、『アースラ』艦内のそれのような、非実体モニターが浮か
び上がる。
アリサとなのは、フェイトとアリシアは、クロノの勧めるままに、ソファに座り、それ
と向かい合った。
「第一級指定ロストロギア、『闇の書』。これは一種のストレージシステムなんだが、そ
の扱いは剣呑なものでね」
モニターに資料映像が映し出され、クロノが説明を始める。
「蒐集といって、魔導師のリンカーコアを抜き出し、食うんだ。そうして、魔力と情報を
蓄積していく。それは、闇の書の白紙のページに書き込まれる状態で、完成に近付く」
「完成?」
一同がモニターに注視する中、ユーノがクロノに視線を向けて、聞き返した。
- 149 名前:燃え上がる炎の魔法使い 4-08/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/02(土) 07:19:14 ID:Lfuxvi4U
- 「そう、666ページ集まると、完成体になり、持ち主は、莫大な魔力を行使可能になる。
ただ、その結果は、あまりろくな事に、なっていない。そして、持ち主が死ぬと、“転生”
という形で、初期状態に戻り、また、次の持ち主の元に現われる」
「はー、こりゃまた、厄介なもんねぇ」
アルフが、ぼやくように、そう言った。
「あの連中はなんなのよ、シグナムとか」
アリサが、クロノを振り返り、問い質す。
「あいつらは、守護騎士システムといって、闇の書に付属する魔法のひとつだ。闇の書の
持ち主の手足となって、蒐集の手助けをする、一種の擬似生命体だ」
「擬似生命体……」
そのフレーズに、反応したのは、フェイトだった。
「つまり、私のように作られた存在……と、言う事ですか?」
「ちっがーうっ!!」
聞き返したフェイトの言葉に、しかし声を上げたのは、その隣に腰を下ろしていたアリ
シアだった。
「フェイトは、擬似生命じゃない、ちゃんとした人間なの! 遺伝子上は、あたしの一卵性
双生児と同じ! 完成された人間なの!」
わがままを言う子供のような声で、アリシアはそう言った。
「その通り。連中は、あくまで魔法術式によって定義されている存在だ。全く、違う」
クロノも、そう言った。
「…………ただ、彼らに関しては、気になることがあってね」
僅かに間をおいてから、クロノは、俯きがちにそう言った。
「気になること?」
傍らに立っていたユーノが、即座に聞き返した。
「過去の記録では、彼らは4人だった。烈火の将シグナム、鉄槌の騎士ヴィータ、湖の騎
士シャマル、盾の守護獣ザフィーラ……」
そう言って、クロノは、ひとつの画像を映す。S2Uの記録からハードコピーしたそれは、
緑の髪をボブカットに近いショートにしつつ、白いバリアジャケット──彼らの中の定義
では──に身を包み、ガントレッド一体型のナックルダスター型デバイスを操る、少女の
姿だった。
「彼女は、過去の記録に無い。その原因も、今のところ、不明だ」
重々しい口調で、クロノはそう言った。
「確か、白銀(しろがね)の拳闘騎士レン、とか名乗っていたよ」
実際に対峙したユーノが、言った。
「確かに、古代ベルカには、この世界の東洋拳法に似た体術があったのは事実なんだが…
…それに、もうひとつ。彼らは、過去の記録では、“ヴォルケンリッター”と、されてい
る」
「そんな」
クロノの言葉に、アリサが、思わず、振り返った。
「確かに、『シュッツリッターが将、烈火の騎士シグナム』って、あいつ名乗ったわよ!?」
「そうなんだ、どうして名前が違うのか、その理由も、もちろん分からない。今回の闇の
書は、以前までと、何かと違いすぎるんだ。何が起こるか解らない……だからこそ、一刻
も早く、持ち主を特定して回収、封印したい」
クロノはそう言って、表情をより険しくした。
「それにしても、クロノ君、ずいぶん詳しいんだね」
なのはがクロノを振り返り、そう言った。
- 150 名前:燃え上がる炎の魔法使い 4-09/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/02(土) 07:19:38 ID:Lfuxvi4U
- 「…………」
クロノは僅かに逡巡した後、重く口を開く。
「個人的な事情を持ち出すつもりは無かったが、言わないでいるのも、不自然かもしれな
いな」
「?」
アリサとなのはは、不思議そうに、顔を見合わせる。
「11年前、前回に闇の書が発動したとき、『アースラ』と同型の巡航L型、2番艦『エステ
ア』が、闇の書の力で暴走、味方によって処分された。その時、最後まで艦の制御を回復
しようとして、艦と運命を共にした艦長が────僕の父、クライド・ハラオウンだ」
「!!」
クロノ本人を除く一同全員に、衝撃が走った。
- 151 名前:燃え上がる炎の魔法使い 4-10/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/02(土) 07:20:05 ID:Lfuxvi4U
-
同日、22:30頃。────海鳴市、ビジネスビル街。
駅前の商店街からは僅かに離れたところに建つ高層ビルの屋上に、彼らはいた。
「管理局の捜査の手も伸びてきた……これからは、すこし離れた世界で蒐集しなければな
らないな」
シグナムが、どこを見つめるわけでもなく、ただ強い意志を感じさせる眼で、そう言っ
た。
「シャマル、いま何ページ?」
ヴィータが訊ねる。
「えっと、362ページ……よ」
「半分は越えたんねんな」
シャマルが答えると、レンがそう言った。
「あとちょっと……そうしたら、はやても」
ヴィータの言葉に、シグナムが頷く。
「我らが主のため、闇の書を1日も早く完成させなければ」
「そうだ、そして……ずっと、はやてと一緒に過ごすんだ……静かに」
決意を込めて言うヴィータ。それを、レンがじっと見ていた。
「…………」
「それでは、行くのか?」
狼形態のザフィーラが、一同を見回して、そう言った。
「ああ」
シグナムが答え、各々、首にネックレスでかけられているそれを、手に取った。
「行くぞ! レヴァンティン!」
『Ja, Whol』
デフォルメされたミニチュアの剣を模っていたレヴァンティンは、巨大化してその刀身
を伸ばす。赤紫の騎士甲冑に身を包んだシグナムの右手が、その柄を握る。
「やるよ、グラーフアイゼン!」
『Verstandnis』
玩具のようなハンマーは、その柄を伸ばして大きくする。鮮やかな赤を纏ったヴィータ
の手に収まる。
「導け、クラールヴィント!」
『Stiefel auf』
3つの指輪はネックレスから切り離され、宙を舞う。優しげな緑の衣装に身を包んだシャ
マルの指に、それは嵌まって行く。
「気張るで、ジルベルンメタリッシュ!」
『Satz auf』
ぶら下がっていた白銀色の小さな手袋は、光になってレンの手を纏い、純白に覆われた
レンの右手に、ガントレッドとして嵌る。
騎士甲冑に身を包んだ4人が揃う。
「世界が離れる分、連携は難しくなる。総員、無理はするなよ」
「わぁってるよ」
シグナムが言い、ヴィータは不機嫌そうに言った。
「ならば良い……シュッツリッター、出撃!」
5つの光が、空に舞い、闇夜の天空へと消えていった。
- 152 名前:燃え上がる炎の魔法使い 4-11/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/02(土) 07:22:08 ID:Lfuxvi4U
- >>142-151
今回は以上です。
ちなみに「クロノとエイミィがが見てしまったもの」と、グレアム提督の出身地は特にクライマックスと関係ありません。
グレアム提督の故郷は、完全にお遊びです。解る人だけ解れ。
- 153 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 07:34:59 ID:sLyXhwRj
- ひとつ気になったのが…なんかグレアムの口調が変。
- 154 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 10:27:38 ID:xqc5ibnE
- >>152
投下ありがとうです! 待ってました! 目が離せなくなってきたよ!!
先が微妙に読み切れないのがいい感じです。
>>153
グレアムがアリサ達の前では人懐っこくしゃべるようにしていた、と考えれば
不自然じゃない。
- 155 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 10:58:49 ID:T8IO3aJ4
- 乙。
ノーサンバーランド……聞いたような聞かないような……クトゥルフ系の地名かなぁ?
某ザンジバーランドとは違うだろうし……
- 156 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 11:11:29 ID:hqOb225M
- ノーザンバーランドというとアンディーメンテが浮かぶ……元ネタはしらん
- 157 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 13:30:29 ID:Z8R4NZwk
- >>155
サイボーグ忍者「俺の出番か…」
- 158 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 14:04:55 ID:nfe9o3Wb
- ハリポタだろ……
- 159 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 14:36:36 ID:dlb9kNVA
- >>134
GJです。エリオ強すぎw
ホント仲直りして欲しい。
スバルもリボルバーナックル復活しますかね?
>>152
GJ!この先がどうなるのか相変わらず予想がつかないです。
ハラハラドキドキ
- 160 名前: ◆6BmcNJgox2 :2008/02/02(土) 15:55:25 ID:YzV1/AJv
- 寒い日が続きますけど季節外れネタ生かせて頂きますorz
・何故か管理局で運動会が開かれる(こういうネタは10月にやるべきですけど…)
・「運動」会なので魔法の使用は禁止
・魔法使えなくてなのは阿鼻叫喚
・なのはの運動音痴っぷりが滅茶苦茶に誇張されすぎ なのは好きな人スマソセン
・スバティアが地味に活躍(本当に地味ですけど…)
・非エロ
- 161 名前:時空”管理”局大運動会 1 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/02(土) 15:57:21 ID:YzV1/AJv
- その日、時空管理局上層部が集まって頭を抱えていた。
「局全体の士気を維持する為に局員を労うと言うか…何と言うか…とにかく何か
皆を楽しませるイベントと言うのを開きたいのだが……。」
「さて一体どんなイベントにするか………。」
彼等が頭を抱えていた原因は、彼等が言う通り局全体の士気を維持する為のイベントを
開催すると言う事になったのだが、どんな物にすれば良いのかと言うのが
上手く行かない事だった。士気の高揚にもなり、かつ楽しませられるイベント…
一体どうすれば良いのか皆は分からなかった。と、そこでふと一人が窓の外を見る。
外では魔力資質は低くとも運動能力でカバーしようと頑張る名も無い局員が
日々トレーニングに励んでいる微笑ましい光景が繰り広げられていたのだが…
そこで彼は思い付いたのだ。
「そうだ! 運動会だ! 管理局全体で運動会を開こう!」
「そ…その手があったか! それなら局の各課で競い合えるし、互いを称え合える!
士気の高揚にもなる! 皆を楽しませられる! それだ! それで行こう!」
と、誰もが彼の提案に賛同。よって時空管理局大運動会が開かれる事となった。
時空管理局大運動会の開催が決定された事実は管理局全体を駆け巡った。
無論戦技教導隊にもそのお達しは来るワケで………
「今度時空管理局全体を集めた運動会が開かれるそうだ。
無論『運動』会なので魔法の使用は禁止。使ったら原点の対象にされるそうだ。
つまり純粋に運動能力が試されると言う事だ。だがこれはこれで良いじゃないか。
魔法だけじゃなく運動能力に関しても教導隊はその辺の連中とは違うと言う事を見せてやれ!」
戦技教導隊の隊長が他の教導隊員にそう力強く力説していたが…次の瞬間一人が突然ぶっ倒れた。
「わー! 大変だー! 高町一等空尉がいきなりぶっ倒れたぞー!」
「何ー!?」
突然の事態に皆大慌てで倒れた高町なのはの所へ駆け寄るが…その顔はまるで
今にも死んでしまいそうな程ゲッソリしてしまっていた。
「わぁ! 一体何があったんだ!? さっきまであんなに元気だったのに…。」
そしてなのはは苦しそうに小声でこう呟いた。
「う………運動会………休んでも………良いですか…………。」
「あ! そうだった! 高町一等空尉は凄い運動音痴だったのすっかり忘れてた!」
「何――――――――――――!?」
「それで良く教導隊に入れたな!」
「いやでも運動はダメでも魔法戦になると話は別になって、既に9歳の頃から
ジュエルシード事件とか夜天の魔導書事件とかで凄い戦いやってて…
それで問題は無かったんだけど、魔法使わなかったら運動音痴なのは今も昔も変わらなくて…。」
「滅茶苦茶な奴だな………。」
と、隊長も呆れてしまっていたが流石に運動会を休む事は認められなかった。
ついに時空管理局大運動会の当日がやって来たのだが…その日になってもやはり
なのはがゲッソリした面持ちだったのは変わらなかった……。
何故ならば………
- 162 名前:時空”管理”局大運動会 2 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/02(土) 15:58:30 ID:YzV1/AJv
- 「なのはの分は私がカバーするから!」
となのはの為に頑張る気でいたフェイトが赤組になってしまい(ちなみになのはは白組)、
他にも運動会を休む為に故意に怪我をしようとしたり、悪い物を食って腹を壊そうとしたり
したけどどれも他の者に未然に防がれてしまった故に…なのはは落ち込んだままだった。
「ねぇなのはママ〜どうして元気無いの?」
ヴィヴィオは心配そうになのはの手を引っ張りながらそう言う。
そこでなのは同様白組でもあったユーノがその質問に答えた。
「ヴィヴィオには信じられないと思うけど…なのはは実は凄い運動音痴なんだ…。」
「ええ!? そうなの!? 何で!? だってエースなんでしょ!?」
「うん…そこが不思議なんだ。魔法を使わせれば凄い戦いが簡単に出来るのに…
魔法無しだと……凄い運動音痴だったりするんだよ………。」
ヴィヴィオは戸惑い、ユーノも困った顔になっていたが…やはりなのはは
今にも倒れてしまいそうな位ゲッソリした面持ちなままだった。
さてそんなこんなで競技が始まり、100メートル走になのはが出場する事となった。
他の走者は我こそが一位とばかりに準備運動をしていたのだが…やはりなのはは
ゲッソリした面持ちで…むしろ今にも倒れそうな程だった。
一方その頃、二人揃って白組側にいたスバルとティアナがグランドにいるなのはに注目していた。
「なのはさん…きっと凄いんだろうな〜。」
スバルは目を輝かせながらそうなのはの走りを楽しみに待ち望んでいたのだが………
「よーい…スタート!」
スタートの合図が鳴った直後に皆は一斉に走り出したが…なのはだけすっ転んだ。
なのはの運動音痴振りを知る者からすれば珍しい後継では無かったが、
そうでは無い者…特になのはに対し心酔しているスバル等は衝撃的な余り
彼女もまたすっ転んでいたりする。
「なのはさぁぁぁん! しっかりしてくださぁぁぁぁい!!」
やっと起き上がって走り出したなのはだが…これまた脚が泣ける程遅い。
って言うかまた転んだ。無論言うまでも無く結果はダントヅでドンケツだ!
そして周囲から飛び交う爆笑の嵐。普段なのはの課す厳しい訓練で地獄を見ている
局員達が笑う時は今しかないとばかりになのはの凄まじい運動音痴っぷりを
笑い飛ばしたのであった。しかも…………
「アハハハハハハ! 何あれ! なのはさんだって偉そうな事言えないじゃない!」
「あ! こらティアナ! 笑うな! なのはさんを笑うな…ププ…。」
かつてなのはに頭冷やされた経験を持つティアナもまたなのはの運動音痴っぷりに大爆笑。
それに対しスバルは怒ってティアナを押さえようとするが、彼女も彼女で
笑いが込み上げて来ていて説得力の欠片も無い。
だが、一番ショックを受けていたのはヴィヴィオなのかもしれない。
「ママ〜…そんな〜。」
- 163 名前:時空”管理”局大運動会 3 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/02(土) 16:00:08 ID:YzV1/AJv
- 競技は終わり…なのははゲッソリした面持ちで退場したが…その後で
スバルとティアナの所へと赴いた。
「スバル…ティアナ…。」
「どうしましたなのはさん?」
笑いも何とか収まり、何時もの様になのはと接していたスバルとティアナであるが…
なのははティアナの耳元に顔を近付けて小声でこう呟いた。
「今度…久し振りに訓練付けてあげようか? マンツーマンで……。」
「!!」
直後ティアナは凍り付いた。なのはには聞こえていたのだ…ティアナの笑い声が……。
そしてなのはが去った後もティアナはしばらく凍り付いたままだった。
その後もなのはの運動音痴っぷりは目に見張る物があった。
ハードル競技ではハードル倒しまくり、普段あんなに正確なシューターが撃てるのに
玉入れ競争では一つも玉が籠に入らず、二人三脚では一緒に組んだ人に申し訳無い程にまで
転びまくり、リレーではバトン落としまくり、特に借り物競争の時等は
フェレットを借りて来なければいけない結果となり、慌ててユーノにフェレットに
変身してもらったのだが、魔法を使ってはいけないルールによって失格。
その上減点までされてしまうと言う凄まじい展開であった。
そしてなのはが運動音痴っぷりを発揮すればする程…周囲から爆笑の渦が巻き起こり、
なのは自身もまた穴があったら入りたい程恥かしかった。
もはは『時空管理局大運動会』では無く『高町なのはの運動音痴っぷりを笑う会』となっていたのだが
だがそれを悔しがっているのはなのはだけでは無い。フェイトもまた……
「何で! 何で私が赤組なの!? 何で……何でぇぇぇぇぇぇ!!
こうなったらもう何を言われても構わない! これから白組に行くぅぅぅぅ!」
「うわぁぁぁぁ! フェイトさんやめてくださいやめてください!」
「落ち着いて下さい! 落ち着いて下さいよぉぉぉ!」
なのはの運動音痴っぷりを良く知るフェイトは、なのはが出来ない分は
自分が頑張って取り返すと考え、その為に色んな競技の練習さえしていた。
しかし結果は見ての通り。なのはは白組となり、フェイトは赤組と分かれてしまった。
それがフェイトには悔しくて悔しくて仕方が無かった。なのはを助けたい…
しかしチームが分かれている以上それは無理な相談。それでもなのはを
助けようと飛び出そうとしていたのだが、同じく赤組のエリオとキャロが必死になって
止めていた為に特に事が起こる事は無かった。
なお、今大会は何故か管理局系列の各刑務所にも中継されていたのだが………
「うおおおおおおお!! 俺達はあんな奴に捕まったのかよぉぉぉぉ!!」
と、過去になのはの手によって逮捕された時空犯罪者であった受刑者達が
なのはの運動音痴っぷりにショックを受け阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
- 164 名前:時空”管理”局大運動会 4 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/02(土) 16:01:41 ID:YzV1/AJv
- その中にはあのJS事件で名を馳せたジェイル=スカリエッティの姿もあり…
「あ…あれが…あれが古代ベルカの聖王さえ屠った魔導師の姿だと言うのか…。」
とまあこれはこれで凄いショックを受けていた。
とりあえずは午前の競技は終了し、午後の競技に移行する前の昼食の時間と相成ったが…
「うわぁぁぁぁぁん!! 白組のみんなごめんなさぁぁぁぁぁい!!」
「なのはママ…泣いちゃダメだよ…。」
なのははヴィヴィオに泣き付き、ヴィヴィオもまたなのはを慰めようと頭を優しく撫でていた。
無理も無い。あんだけ恥かしい所を見せた上に…白組全体の脚さえも引っ張ってしまったのだ。
情けない事この上ない。ましてやなのはは教導隊と言う肩書きを持つ。
それ故に本来ならば活躍しなければならないと言うのに……それが情けなくて仕方なかった。
さて、午後の競技が始まった。
「なのはさんの分は私が巻き返して見せます!」
なのはが運動出来ない分は自分がカバーしようとスバルはやる気を見せていた。
運動会故に魔法禁止ルールが適用された今大会であるが……それ故にスバルは強い!
ティアナもまた飛行魔法が使えない分己の脚力を鍛えて来た事もあってこれまた強い!
彼女等を初めとして魔力資質は低くとも運動能力でカバーするタイプの者達の
活躍は目に見張る物があった。そうやってなのはが脚を引っ張った分を
彼等が巻き返して行ったのである。
競技も終盤に差し掛かり、800メートル走と相成ったが…
一体誰が組んだのかは知らないが何とまあなのはが参加選手の中に入れられてるでは無いか。
「誰だよなのはを入れたのは! 幾らなんでもこれ絶対わざとだろ!?」
さり気なく白組にいたヴィータがなのはを不憫に思ってそう叫び、
それに合わせてスバルも……
「そうですよなのはさん! これ以上無理する必要はありません! 辞退しましょうよ。」
「うん。これ以上なのはに恥をかかせるワケには行かない。理由は僕の方から運営委員会に…。」
と、ユーノもなのはをフォローする様に言っていたが、なのはは首を横に振った。
「皆ありがとう…。でも………世の中…嫌だと思ってもやらなきゃならない事もあるから…。」
「なのは………。」
なのはは出場するつもりらしかった。彼女も本当は嫌なのだろう。これ以上自分の
運動音痴っぷりで恥をかきたく無いのであろう。しかし…逃げてはいけないと言う気持ちは
それ以上に強かったに違いない。だからこそ…彼女は皆に見送られながら入場門へ向かった。
「なのはさんご武運を!」
スバルは目から涙を流しながら敬礼していた。
- 165 名前:時空”管理”局大運動会 5 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/02(土) 16:04:03 ID:YzV1/AJv
- 800メートル走がスタートしたが…やはりなのはは遅い。他の走者は800メートルを
走るに相応しいスタミナと脚力を持った者達であるのに対し、不公平な程なのはは遅かった。
他の走者にどんどん離されて行くし、最初の100メートルの時点でもう息が絶え絶えとなっていた。
「ハァ…ハァ…。」
既に皆がゴールした後でも…なのははやっと400メートルに達した所。
「ハハハハハ! あれがエースオブエースの姿かよ!」
余りにも無様すぎる様にそう笑う者も現れるが…それでもなのはは上がった息の状態で黙々と走って行く。
その間にも笑う者の声がますます大きくなって行っていたが…その時…………
「なのはママ頑張ってぇぇぇ!!」
突然その様な声が響き渡った。声の主はヴィヴィオ。そしてヴィヴィオは涙目になりながら
必死に叫ぶのである。
「なのはママ…頑張って! ママを笑う酷い人に負けちゃダメだよぉぉぉ!!」
「ヴィヴィオ……。」
必死に応援するヴィヴィオにユーノ達も驚きを隠せなかったが…直後に……
「なのは頑張れ! 後少しだ!」
「なのはさん頑張ってください!」
「頑張れ! 頑張れ!」
と、ヴィヴィオに続いてユーノ、スバル、ティアナ、ヴィータも応援し始めた。さらに…
「なのは頑張れぇぇぇぇ!!」
「フェイトさん!?」
何と赤組であるフェイトまで応援し始めたでは無いか。
「もう赤とか白とか関係無い! 私は応援する事しか出来ないけど…応援する!
だからなのは頑張って! 負けないでぇぇぇぇぇぇ!!」
「そうですよ! なのはさん頑張って下さい!」
「負けないでぇぇぇ!」
フェイトにつられて今度はエリオとキャロもまた応援を始めたのだ。
確かにそれらも全体のなのはを笑う声に比べれば微々たる物だったのかもしれない。
しかし…なのはを応援する声もまた徐々に増えて行った…………
「なのは頑張れ! 頑張れ!」
「頑張れぇぇぇぇぇ!!」
「負けるなぁぁ! ゴールはあと少しだぞぉぉぉぉ!!」
何時の頃だろうか…競技場はなのはを応援する声一色に染まってしまっていた。
彼等の大半も最初はなのはの運動音痴っぷりを笑っていたのかもしれない。
だが…その恥をかきながらも…必死に頑張るなのはの姿に…彼等は心を打たれたのかもしれない。
- 166 名前:時空”管理”局大運動会 6 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/02(土) 16:05:28 ID:YzV1/AJv
- そして………やっとなのはが800メートル走り終えた所で……
「やったぁぁぁ! ゴールだぁぁぁ!」
「おめでとう! おめでとう!!」
誰もが一斉になのはの所へ一斉に駆け寄り、何と胴上げを始めてしまったのだ。
「ワーッショイ! ワーッショイ! ワーッショイ!」
こうなってはもう白も赤も無い。誰もがなのはの健闘を称え…祝福した。
運動会はこうして幕を閉じた。結果として赤組の勝利に終わったが…
皆にとってもはやその様な事は関係無かった。彼等の心に勝敗を越えた大きな物が芽生えていたのだから…。
翌日…運動会の余韻を残しながらも皆は元通りそれぞれの仕事に付いていた。
無論なのはも………
「それじゃあこれから抜き打ち模擬戦をしま〜す!」
「ええ!? 抜き打ちですか!?」
「そう言わないの。貴方達が実戦に出た時に戦う時空犯罪者はヨーイドンで相手をしては
くれないんだよ。連中にとって不意打ちなんて当たり前。だから抜き打ち模擬戦くらい
楽にこなしてもらわなきゃ…。」
なのはは笑顔でそう教導相手の若手魔導師に言い…早速模擬戦がスタートしたが…
「ギャァァァァ!」
「ギョエエエエエ!!」
「アヒィィィィィィ!」
練習場は忽ち阿鼻叫喚の地獄と化した。なのはは知っていたのだ。
今自分が教導を行う若手魔導師の誰もが先日の運動会で自分の運動音痴っぷりを笑っていたと…。
「嘘だろぉ!? 運動はてんでダメなのに何で魔法使わせたらこんなに強いんだよぉぉぉぉ!!」
こうして…若手魔導師達の悲痛な叫び声は日が暮れるまで続いた。
おしまい
- 167 名前: ◆6BmcNJgox2 :2008/02/02(土) 16:06:36 ID:YzV1/AJv
- 一応なのはは今でも運動音痴と言う事にしてましたが…(おまけに誇張されまくり)
実際どうなんでしょうね…orz
- 168 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 16:13:32 ID:J4Ya/3gU
- >>167
GJです。
にしても暴走寸前のフェイトをエリキャロが止めるとは、あの子たちも成長したなぁ。
- 169 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 16:19:44 ID:QjjuwhNY
- スバル×エリオとかいいよね…
乙女なスバルの初めてを、エリオの股間のストラーダがズブッと!
- 170 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 17:20:05 ID:RAn3aRTV
- 振動破砕にドリル
あの姉妹の能力はエロいことにも使える
つまりその基となるクイントさんなら…ゴクリ
- 171 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 17:21:32 ID:G3OBWCJu
- >>167
確か体力はあるからランニング系は大丈夫だった(それなりに走れる)気が。
……つか走れなきゃ駄目でしょ、六課の訓練的に考えて……。
普通の教導であれだけ走らせるんだから、教導隊はもっと走りそうな気がするんですが。
まあ誇張せずに考えて、100mと800m最下位(こけない+そんなに離されない)って所だと思います。
普通のスポーツは本当に駄目でしょうけどw
……と、ここまで言いましたが、GJでした!
- 172 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 17:23:47 ID:lIJs15h0
- 面白かったけど、それだけに誤字が多いのがもったいない。
書き終えた後で一度は校正したほうがいいよ。
- 173 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 17:25:39 ID:QEIhYCA3
- >>167
陸士訓練の短期講習を受けてるから、運動音痴とはもはや無縁のはず。
フェイトそんと、エレベーターのロープで下っていたし。
- 174 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 17:55:17 ID:JjJD9kih
- まあまあ、ネタなんだし誇張されてるってあるんだからそこはギャグとして楽しもうぜ
それはさておき>>167 GJ!
- 175 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 18:46:20 ID:7Q1yPRw4
- 「ネタだから」と設定を過度にいじry
- 176 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 18:50:31 ID:l5HY6rs1
- いじれないネタなんt(ry
- 177 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 19:16:15 ID:dlb9kNVA
- >>172
まあまあ、広い心で見てやろうよ。職人の皆さんは一生懸命かいてるんだし。
読み手はGJしてから、感想や注意を書くだけさ・・・
- 178 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 19:23:45 ID:A6/qVtMe
- エレベーターのも魔法だろ
- 179 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 19:32:50 ID:RAn3aRTV
- >>177
そうは言うがな、大佐
書いた後少し冷静に自分の文を読み直す位の余裕は必要じゃないか?
- 180 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 19:37:09 ID:HJrKRKOk
- >>179
まぁ落ち着けスネーク。
君の言いたいことは分かるが、
我々にもそれを許す度量が必要だと思わんかね?
- 181 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 19:48:14 ID:6on4eCSB
- こういう忠告がないと怠惰になってしまうから、
勿論手放しで褒めてくれるのは書き続ける原動力になるし嬉しいことでもあるけど
見た者を不快にさせる、あるいは侮蔑するような言葉遣いで無ければ批評は必要である
- 182 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 20:26:10 ID:hqOb225M
- なんていうか氏の作品は毎度各キャラの反応がチープで品がないんだよね。
そしてそれはきっとやりたいネタとオチがあってそれを強引に繋げるから
そこに登場するキャラ達の発言に無理が出てくるんだと思う。
今回で言うなら今でもなのはが運動音痴ってのは充分にありえるし
それでこういうイベントで四苦八苦するというネタ自体はニヤニヤ出来るけど
それに伴うギャラリーの反応がひどすぎ。リアル芸能人オールスター運動会でもねーよ。
もっとこう、いたたまれなさとか気まずさとかが演出出来ればいいのに、と思う。
まぁ氏が本気でフェイト嫌いなんじゃなくてこういう作風にしかならない
ってのが分かったんでそこは安心したよ。ちゃんと修正すれば面白い作品になる筈だし。
- 183 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 20:37:14 ID:6on4eCSB
- 閉じかっこ直前の句読点処理と、三点リーダ・ダッシュが気になって仕方がないから
とりあえずそこらへんもよろしくおねがいしたい
- 184 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 21:13:38 ID:nfe9o3Wb
- そこら辺割合しっかりしている(誤字は多いが)リリカルバイオレンス氏にも、不満しか言わないだろう、お前は。
- 185 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 21:15:13 ID:Cn5LSWSR
- >>181
こういう忠告があると職人が萎縮してしまうから
勿論手放しで褒めてるのは資質向上にならないし怠惰になることでもあるけど
書く者を不快にさせる、あるいは萎縮するような細かすぎる批評は不要である
人によって感覚が違うかも試練が、おまいさんの言ってることの表裏逆もまた
一理あるから配慮するべきではないかと私は愚考する次第ですよ
- 186 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 21:16:16 ID:BVwjCA51
- セリフの羅列になっちゃってるのがきになるます
- 187 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 21:34:21 ID:7Q1yPRw4
- >>185
某所では重箱の隅を電子顕微鏡で覗き込むような批評も発生してるからな…
手放しにならず粘着にならず、これがまた難しいところでして
- 188 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 21:36:44 ID:6on4eCSB
- >>184
それこそただの不満じゃないか。勿論>>185の言うことも分かる
俺はただ>>172からの一連の流れがおかしくなってると思っただけだ
それに、少なくとも今回のが細かすぎる批評という事はないだろうよ
ここに集まってるのは18歳以上の紳士のみなんだから、ゆるくやろうぜ
- 189 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 21:38:13 ID:lIJs15h0
- 読み手が趣味に合わないSSにはスルー力が要求されるように、
書き手も意味のない中傷だと思えばスルーすればいいだけの事。
- 190 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 21:44:08 ID:dlb9kNVA
- 人それぞれだと思うけど、書き手に対して注意するのなら、批判一辺倒
じゃダメだと思うんだ。レス番をあげることははしたくないが、>>172や>>185
のような。
そうしないと批判を恐れて投下してくれる職人がいなくなってしまう。
- 191 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 21:48:21 ID:6on4eCSB
- >>172はGJしてから、感想や注意を書いているし、
>>185は書き手に対する注意じゃないと思うんだが……
- 192 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 21:57:11 ID:sLyXhwRj
- >>154
いや、そっちじゃなくてハラオウン母子に対してなんか他人行儀くさいのが気になった。
その辺の設定辺りから弄ってるんだろうか…
- 193 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 22:02:25 ID:dlb9kNVA
- >>191
すまない、>>185じゃなく>186だった。
- 194 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 22:04:16 ID:eOO5fcnc
- >>190
批判一辺倒じゃ〜って考えも、確かに一理あると思う。
でも、誤字の指摘ごときで「批判」だなんだと騒ぐのは大げさだ。
それと書き手としては、義理みたいなGJレスよりゃ、正直なところ
を言って欲しい、ということも。まぁ、人によるかも試練が。
- 195 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 22:08:28 ID:MtbrR7dt
- こちらにはしばらく投下してないが、いちモノ書きとしてはだな。
GJだけでも嬉しいけど、どこが面白かったのか、どこがつまらなかったのか、は知りたいな。でないと次に活かせない。
- 196 名前:名無しさん@ピンキー :2008/02/02(土) 22:15:24 ID:koVS0NiP
- 誉めるもけなすも、結局程度問題なんだよなあ。
いくら正しい意見でも、毒にしかならない場合もあるし。
ピント外れでも、書き手に意外なアドバイスになることもある。
感想言うのも難しいよ。
- 197 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 22:28:29 ID:N4Dzk3ct
- そうだよなぁ。
中学生の時、美術の時間に絵を見せられて、感想を書きなさいっていうのも難しかったもんなぁ。
- 198 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 22:34:35 ID:ydj4PbQe
- >>178
士官学校のプログラムや教導隊でさんざん体を動かしているのだから
かなり是正されているのでは?
- 199 名前:198:2008/02/02(土) 22:35:28 ID:ydj4PbQe
- あれ?スマンorz
- 200 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 22:41:28 ID:0pVHq+Z/
- 目を通してくれてるだけでも嬉しいと思う俺は望みが低すぎるかねぇ。
感想も批判もなんんにもないってのは寂しいぞ。
- 201 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 22:43:27 ID:UkSM9QA7
- 分かる分かる
好きの反対は嫌いじゃなくて無関心とはよく言ったものだ
- 202 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/02(土) 23:51:42 ID:h0WQ1LOd
- 何だ、その・・・深いな。兄弟
- 203 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 00:33:36 ID:2hoMRDks
- >>200
てか、感想も批判もなんにもないではスルーされているような気になってくるんだよな。
- 204 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 00:38:33 ID:I04jvMx7
- >>203
あるある・・・
- 205 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 00:40:13 ID:N9qtqzXW
- みんな腹割って話しててワロタ
- 206 名前:B・A:2008/02/03(日) 00:49:51 ID:3Al/WOTi
- みんな本気で議論してますね。ここいらで空気変えますか?
つまるところ投下おk?
- 207 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 00:50:44 ID:UXdCzUWc
- 今すぐ。これは命令である
- 208 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 00:53:30 ID:LQj3vQK3
- Go for it!!!
- 209 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 00:54:30 ID:XKoQIMRW
- ハヤクトウカシテ、ジャナイトボクドウニカナッチャウ
- 210 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 00:59:27 ID:N9qtqzXW
- 中々焦らすね
- 211 名前:B・A:2008/02/03(日) 01:01:42 ID:3Al/WOTi
- 10分って焦らした内に入るのか。一つ勉強。
注意事項
・エリオ×ルーテシア
・非エロ
・本編改編。いわゆるIFというやつです。
・強引な展開や独自の解釈、勝手な捏造が多々含まれます
- 212 名前:Ritter von Lutecia 第7話@:2008/02/03(日) 01:03:13 ID:3Al/WOTi
- ガリューの衝撃弾が数人の魔導師を吹き飛ばし、突破口を開く。
すかさずエリオはルーテシアを抱え、戦域を離脱した。
「エリオ・・・長距離転送、いつでもできるけど・・・・」
「いらない、ここで全員斬り捨てる!・・・・・ルーはここから防御と補助に専念して」
向かってくる魔導師を躊躇なく斬り伏せる。麻痺した感覚では飛び散った鮮血を不快に感じることもない。
半死体となった魔導師の体を踏み倒し、エリオはストラーダのバーニアを限界まで噴かす。
1人倒す度に心が死んでいく。
1人潰す度に心が削れていく。
1人消す度に心が冷えていく。
血に塗れた戦場で、エリオは無感動なまま敵を切り捨てていった。
- 213 名前:Ritter von Lutecia 第7話A:2008/02/03(日) 01:07:19 ID:3Al/WOTi
- 「21人だ」
フェイトの執務室にいきなり現れたシグナムは、開口一番に言った。
「21人。私の部下が全滅だ」
機動六課には2つの部隊が存在する。
1つは、はやてが指揮するFW部隊。そしてもう1つはFW部隊が業務を離れた際にその穴埋めをする交替部隊だ。
シグナムはライトニング分隊副隊長とともに、その交替部隊の隊長も務めていた。
スバルたちが負傷して動けないため、エリオたちの追撃はシグナム率いる交替部隊が行っていた。
そして、つい先ほどミッド南西部の山岳地帯で奇襲をかけたのだ。
結果は惨敗。21人中15人が重傷、6人が軽傷、内2人は魔導師としての人生が絶望的と診断されるほどの大けがだった。
「やはり、あの召喚師の娘ですか?」
報告では、スバルたちが後一歩までエリオを追い詰めたところでルーテシアとその召喚蟲が割って入り、
取り逃がしてしまったと聞いている。ならば、今回もその召喚蟲がやったのだろうか?
「いや、重傷者のほとんどはエリオの手によるものだ」
その言葉に、書類にペンを走らせていたフェイトの手が止まる。
「まるで鬼神だったそうだ。負けを認めて命乞いをした者にも一切の容赦を与えなかった。
死人がでていないのが不思議なくらいだ」
恐らく、それがエリオに残された譲れない一線なのだろう。
それ以外の全ては擦り切れ、磨耗し、捨て去ってしまったのだ。
そう、かつての自分やシグナムたちのように。
「わかっているのか、テスタロッサ。このままいけば、やがてエリオは破滅する」
強い気持ちで心を固めて、だがその強さのせいで歪んでしまい、自分はおろか守りたかったものまで傷つける。
それでも後には退けず、あるかもわからないゴールを目指して走り続けるしかない。
その先に待つのは、何も守れず、己の理想に裏切られる絶望と孤独だ。
「行くんですか?」
それを良しとするほど、目の前の騎士は器用にできていない。
自分と同じで、どこまでも不器用で、まっすぐなことしかできない。
「上層部にいつまでも隠し通せるものでもないからな。直にヴィータたちも戻ってくるし、なのはも本調子ではないが、既に実戦レベルで使えるほどにまでは回復した。
恐らく、主はやては次で勝負をかける」
次にエリオが味わうのは、文字通り機動六課の全戦力だ。そうなれば、どれほどの覚悟も意味をなくす。
圧倒的な力に捻じ伏せられ、叩きのめされるだけだ。
「そうなる前に、私がケリをつける。弟子の不始末は師匠の責任だ」
それすらもまた、力による蹂躙に変わりないことをシグナムは知っていた。だが、それ以外に方法は知らない。
所詮、彼女は時代遅れの騎士。切り結ぶことでしか他者とわかりあえない不器用な人間だ。
それ故に、一度口にした言葉は決して曲げない。文字通り全身全霊をもって、エリオと死闘を繰り広げるだろう。
その固い決意を前に、フェイトは黙って彼女を見送ることしかできなかった。
- 214 名前:Ritter von Lutecia 第7話B:2008/02/03(日) 01:09:48 ID:3Al/WOTi
- 暖かい光に包まれ、エリオの腕から痛みが引いていく。
今朝の戦闘でエリオはかなり負傷していた。
全身の至る所に打撲や火傷の跡があり、左腕の脱臼は戦闘中に強引にはめ込んだせいで今でも痛みが残っている。
運悪く攻撃を回避し損ねたせいで前歯が2本ほど欠けており、背中には腰まで届く大きな切り傷があった。
こうしてルーテシアが治癒魔法をかけてくれなければ、エリオは満足に動くこともままならなかっただろう。
「ありがとう。だいぶ楽になったよ」
「傷は治ったけど、体力までは回復しないから・・・・あんまり無茶したら、今度は過労で倒れるよ」
「わかっているよ。無茶はしない・・・約束する」
嘘だと、ルーテシアはすぐに気づいた。
もう何度も無茶はしないと約束しておきながら、エリオはそれを守ろうとはしなかった。
ガリューとの命がけの模擬戦、戦闘での過剰な魔力行使、自殺行為としか思えない突撃。
背中の傷も、自分を庇ってできたものだ。
まるで何かにとり憑かれたかのように無茶をし続けるエリオを見ているのは、堪らなく辛かった。
ここ最近、エリオが笑った顔を見たことがない。いつもピリピリしていて、管理局からの襲撃を警戒している。
夜だってロクに寝ていないみたいだ。
「エリオ・・・少し休んだ方が良いんじゃ・・・・」
「大丈夫・・・・大丈夫だよ」
「大丈夫じゃない」と言ってやりたかった。だが、きっとエリオは聞かないだろう。
どんな言葉にもエリオは耳を貸そうとせず、自傷行為にも似た無茶をし続けるのだ。
- 215 名前:Ritter von Lutecia 第7話C:2008/02/03(日) 01:12:22 ID:3Al/WOTi
- 「ルー、そこの箱・・・取ってもらって良い?」
「これ?」
菓子袋みたいに包装された箱をエリオに渡す。
エリオは辛そうに腕を持ち上げてそれを受け取ると、包装を乱雑に破り捨てた。
残念なことに、箱に入っていたのはお菓子ではなかった。
細長い金属製の弾丸。ベルカの騎士が魔力増強のために用いるカートリッジと呼ばれるものだ。
「さっきの戦いで予備の分も使い切っちゃったからね。あんまり得意じゃないけど、空いている時間に作り置きしとかなきゃ」
そう言って、エリオは手にしたカートリッジに魔力を流し込む。
お世辞にもうまいとは言えない。一つが完成するまで恐ろしく時間がかかるし、一つ完成する度にエリオの瞳から生気が消えていく。
見かねたルーテシアは、エリオの手から作りかけのカートリッジを奪い去った。
「貸して・・・私がやる」
「けど・・・・」
「魔力の運用は私の方が得意だから・・・・エリオは休んでいて良いよ」
「そう・・だけど・・・・・」
カートリッジを作るために魔力を使用したのがとどめになったのか、エリオのは眠そうに眼をこする。
気を抜いたらすぐにでも眠ってしまいそうだ。
- 216 名前:Ritter von Lutecia 第7話D:2008/02/03(日) 01:14:25 ID:3Al/WOTi
- 「エリオは私のことを守ってくれるから・・・・だから、私にもこれくらいのことはさせて」
「僕は、したくてしているだけで・・・・・それに、ルーの補助・・ま・・ほうは・・・・助かっ・・・・・・」
疲労がピークに達し、エリオはそのまま深い眠りに落ちる。
一度作業を中断し、風邪を引かないように毛布をかけてやる。眠っているエリオの顔はまるで赤ん坊みたいで、
ルーテシアは慈しむようにその髪を撫でると、カートリッジの製作に戻った。
額に汗を浮かばせながら、ルーテシアは黙々と作業を進めていく。一つ一つを愛でるように、エリオへの想いを込めて魔力を流し込む。
自分の心がいつもエリオのそばにいられるような気がして、ルーテシアは自然と笑みを零していた。
だが、それもすぐに曇ってしまう。
カートリッジを使い切るまで戦わねばならなかったのは誰のせいだ?
エリオがあんなにも傷ついているのは誰のせいだ?
いつも神経を張り詰めさせて、心休まる時間がないのは誰のせいだ?
(全部・・・私のせい・・・・・)
完成したカートリッジを丁寧に箱へ詰め直す。
またすぐに使われるのかと思うと、胸が締め付けられるように痛くなる。
それもこれも、全部自分のせいだ。
「私が・・・守ってなんて言ったから・・・・・」
守られてばかりだから、それが当然だと思っていた。
守ってくれる人の気持ちなど、考えたこともなかった。
自分を守ってくれた人は、いつもこんなに傷ついていたのだ。
ゼストも、アギトも、そしてエリオも。
「ごめん・・・ごめん・・なさい・・・・・」
慟哭に喉を詰まらせながら、ルーテシアは謝罪する。
失うことがこんなにも怖いとは知らなかった。
傷ついていく人を見るのがこんなにも辛いなんて知らなかった。
- 217 名前:Ritter von Lutecia 第7話E:2008/02/03(日) 01:15:41 ID:3Al/WOTi
- 零れた涙が顎を伝い、エリオの頬を濡らす。
「うぅん・・・・ルー・・・・・」
「エリオ・・・」
「僕が・・・・守るから・・・ずっと・・・・一緒に・・・」
その言葉が、ルーテシアの心を締め付ける。
エリオは戦うのを止めない。
自分がそばにいる限り、これからも傷ついていく。
自分のためならどんな無茶でもしてくれる。
例え、自分自身が壊れてしまったとしても。
「嫌だよ・・・エリオ・・・・・」
エリオが傷つく姿など見たくはなかった。
ずっとそばにいてくれると言われて嬉しかった。
ガリューと模擬戦をするエリオの姿が格好良かった。
いつも自分のことを気にかけてくれるエリオが大好きだだった。
だから、そばにいられない。大事な人にこれ以上傷ついて欲しくない。
エリオと過ごした時間はかけがえのないもので、何よりも代え難い宝物だけど、エリオ自身には変えられない。
「ごめんね・・・・エリオ・・・・今日まで守ってくれて、ありがとう」
涙でぐしゃぐしゃに汚れた顔で、ルーテシアはエリオの唇を塞いだ。
まるで時が止まってしまったかのような錯覚。
生まれて初めてのキスは、何だかしょっぱい味がした。
「さようなら、エリオ」
そして、ルーテシアはエリオのもとを去っていった。
- 218 名前:Ritter von Lutecia 第7話F:2008/02/03(日) 01:17:16 ID:3Al/WOTi
- 目が覚めると、窓から朝日が差し込んでいた。
どうやら、かなり寝入っていたらしい。丸一日眠っていたようで、疲労は完全に回復していた。
「ごめん、ルー。なんか寝坊しちゃって・・・・・ルー?」
いつも傍らで眠っているルーの姿がない。
どこかに隠れている様子はなく、本当に小屋の中にいないようだ。
机の上には、ルーテシアが丹精込めて魔力を充てんしたカートリッジが詰まった箱が置かれていた。
これを完成させた後、出ていったのだろうか?
「そうだ・・・・夢にルーが出てきて・・・・そして・・・・」
『さようなら、エリオ』
僅かに唇に残る感触が、あの夢が現実であることを物語る。
目の前が真っ暗になった気がした。
名前も地位も仲間も騎士としての誇りも、全て彼女のために捨ててきた。
だが、ルーテシアがいなくなれば、自分が戦う理由もなくなってしまう。
後に残るのは、身勝手な理由で仲間を傷つけたという事実だけだ。
今日まで自分を支え続けた思いが、今度は自分に向かって牙を向ける。
「ルー!」
それでも一縷の望みを賭けて、エリオは小屋を飛び出した。ひょっとしたら、まだ近くにいるかもしれない。
だが、小屋を出た瞬間、エリオの脚は止まった。
「遊びは終わりだ、エリオ」
スバルたちなど比較にならない殺気。
油断のない佇まい。
風になびく桃色の髪は鮮やかで、まるで戦乙女みたいだ。
「シグナム・・・副隊長・・・・」
燃えるような決意を胸に、烈火の将がそこにいた。
to be continued
- 219 名前:B・A:2008/02/03(日) 01:20:19 ID:3Al/WOTi
- 以上です。
前に言っていたカートリッジの補充方法がこれです。つまり手作り。
A'sでシャマルさんが手作りしていたので、材料があれば(魔法がない地球でも手に入るくらいだから、きっとありきたりなもの)
誰にでも作れるんじゃないかと。
それと、エロは入れませんでした。ここでエリオを慰めるわけにはいかない。いえ、このお話は元々エロ想定していないんで、入れる余地がないんです。
烈火の将出陣。
このシグナムは能力リミッター付き+アギトなし(現在、隔離施設で更生中)です。
それでもスバルたちよりは強敵でしょうが。
- 220 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 01:27:08 ID:gMKExgX2
- >>119
亀でスマンが、百合で良ければ、百合スレまとめにいくつか。
ここ同様、そんなに数はないけど。
- 221 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 01:28:12 ID:sV1Vy1fS
- GJ!!です。
ボスが現れましたね・・・勝てるのか、かなり不安です。
リミッターがあっても技量は相手の方が確実に上だもんなぁ。
エリオが闇の書事件時のヴォルケンズこと知ってたら面白そうな口論が
みれたかも知れないw
- 222 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 01:30:29 ID:XKoQIMRW
- うっひょううううっ!! なんちゅう展開!!
シグナムとの激闘も気になります、そしてエリオはルーと再開できるのか?
自分の為に傷つくエリオに心を痛めるルーの姿がマジで萌えます、これは素晴らしいルーですね。
次回に期待大です、GJ!!
- 223 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 01:32:27 ID:rNgjaIwp
- GJ
10歳には過酷すぎる状況だ
しかし、本編を知ってるとどうもエリオが道化に見えるのが難点だな
- 224 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 06:10:03 ID:e7K7/cVA
- こういっちゃ悪いんだが
エリオオワタ\(^o^)/
- 225 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 07:10:46 ID:ziAX1joJ
- >>219
GJ!待ってました!
ああああまさしく大ピンチとはこのことかと言わんばかりの状況
格上のシグナム相手にどこまで戦えるのか・・・
愛の力で補正値がかかっても難しいだろうが頑張ってくれ!
- 226 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 07:50:57 ID:KKJJ5SIr
- >>219
GJ!
でもさすがにこれ、エリオが愛のぱぅわーで勝っちゃったら萎えるな
- 227 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 08:24:46 ID:0HkgSi7a
- >>200
話を蒸し返して悪い。
確かに一理有るが、前後左右からフルボッコというのも
なかなかつらいものがある……。
- 228 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 09:05:19 ID:UXdCzUWc
- >>219
正直な所シグナムに敗北フラグが立ちまくってる気がするのは気のせいかしら
- 229 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 09:09:40 ID:gX3jl9Kd
- >>219
ふだん「フェイトさんが幸せなSS限定」で読んでいる俺が展開の面白さに引き込まれた!
しかし、なんかこのまま行くとエリオ対フェイトの対決になりそうで怖いw
- 230 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 09:25:45 ID:jzSJp/Nt
- 運命交差点の続きマダー?
- 231 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 09:58:25 ID:A22ldbvK
- >>219
GJです。とうとう出てきましたねシグナム!!エリオに救いはあるのか!?
気になって仕方ないです。
>>228
コミックスでは練習時に1本だけとってたりするから、勝利する可能性はゼロではない
と思う。限りなくゼロに近いが。
- 232 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 10:28:27 ID:rGkBcYuj
- >>219
GJ
これはやばいwでシグナムもリミッター付きか、さてどこまで戦えるのか
- 233 名前: ◆6BmcNJgox2 :2008/02/03(日) 15:17:57 ID:ojwwpbcf
- 前回の「時空管理局大運動会」投稿後の感想とか誤字の指摘とかどうもありがとうございました。
その手の話題が思った以上に長く続いて驚くほかありません。
そういう意味では自分もまだまだだなと本当に勉強になります。
それでは…性懲りも無くまた書きますorz
・シャマルが同人描いたりするってワリとよくあるパターン(?)に便乗してみたスマソセン
・はやて&守護騎士好きな人スマソ
・特にシャマル好きな人は確実に怒るシーンあります。申し訳ありませんorz
・エロあり(陵辱。ただし劇中劇と言う扱い。)
・結末がちょっとだけ鬱っぽい
- 234 名前:同人大合戦!? 1 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/03(日) 15:19:38 ID:ojwwpbcf
- ある休日、はやてが何気無く自室でゆっくりしていると突然シャマルが現れた。
しかも何か凄く真剣かつ申し訳なさそうな顔をしている。
「どうしたんやシャマル…。」
「ご…ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」
「え? いきなりどうしたんやシャマル?」
いきなり頭を下げて謝り始めたシャマルにはやても戸惑う。
それ所かさらに号泣しながら土下座まで始めてしまうでは無いか。
「ごめんなさい! はやてちゃ…いや主はやて! 本当にごめんなさい! ごめんなさい!」
「な…何でや…シャマル…何でそんな泣きながら土下座するんや? ちょい頭上げぇ?」
はやては慌て顔でシャマルの頭を上げようとするが、シャマルは何も言う事無く立ち上がり
その場から走り去って行き、はやても何が起こったのかさっぱり理解出来なかった。
「な…何やシャマル…一体何がどうしたんや…。」
はやてはまたシャマルが何か失敗でもしたのか? と考えて色々調べてみたが…
別に食器が壊れたワケでもお金が無くなったワケでも無かった。
と言うかむしろ八神家は何時も通りの平穏な姿のまま。では何故シャマルはあの時
あんなにまで泣きながら土下座をしていたのか…はやてにはワケが分からなかった。
だがそれから一週間後……
「大変だー! はやて大変だよー!」
「一大事です! 主はやて!」
「ど…どうしたんやみんな…。」
やはり休日をのんびり自室で過ごしていたはやての所にヴィータ・シグナム・ザフィーラ・リインUが
血相を変えてやって来たのである。そしてヴィータが一冊の本をはやてに手渡す。
「はやて! この本を見て!」
「え? 何やこの本…って………。」
ヴィータから渡された本を見たはやては絶句した。何故ならばその本の表紙には
服が半脱ぎになった状態のはやてが胸と股間を手で抑えながら
涙目になっているイラストが描かれていたからである。しかもこの絵のタッチはシャマルの物だ。
「な…何やこれはぁぁぁぁぁぁ!!」
「見ての通り…シャマルが主はやてを題材にして描いた18禁同人誌です……。」
「中身はもっと凄いんだよ…。」
「え? 中身やて?」
はやてはページをめくるが、その内容もやはり凄まじい物だった。
はやてが新部隊・機動六課を作るに先立ち、管理局上層部からその許可を得る必要があった。
「うん良いよ。考えてやっても構わん。」
「あ…ありがとうございます!」
ワリと聞き分けが良くあっさりOKした上層部にはやても思わず頭を下げるが…
「しかし…一つだけ条件がある。まあ条件と言っても簡単な事だよ。」
「な…何でしょうか!?」
もうここまで来たのだ。新部隊立ち上げの為ならどんな難しい条件でもクリアして見せる。
そう言う意気込みで上層部に条件の内容を問うはやてであったが…………
- 235 名前:同人大合戦!? 2 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/03(日) 15:21:34 ID:ojwwpbcf
- 「君…改めて良く見てみると……凄い美人さんだねぇ〜。」
「え…………。」
はやては絶句した。上層部がはやてに課した機動六課立ち上げの為の条件とは…
上層部を相手に枕営業をしろと言う物だったのである。そして上層部に別室へ移動させられ…
「まず最初はストリップから行ってもらおうか?」
「そ…そんな…そんな事出来ません!」
「嫌なら良いんだよ。その代わり新部隊立ち上げられないから…。」
「う…わ…分かりました…。八神はやて…脱ぎます……。」
はやての目から一筋の涙が零れ落ちた。もしここで自分が拒否すれば機動六課は立ち上げられない。
自分の夢を実現させる為…新部隊立ち上げの為に………はやては自分を捨てた………。
「それぬ〜げ! ぬ〜げ!」
上層部は手を叩きながら『ぬ〜げ!』コールを繰り返し、はやては身に付けていた物を
一枚一枚脱いで行った。顔を引きつらせながら…頬を赤くし…目には涙を浮かべて…
ゆっくりとネクタイを解き……上着を脱ぎ……シャツを脱ぎ………スカートを下ろす……。
はやてが服を脱げば脱ぐ程…その美しい柔肌が露となっていくのである。
「お〜お〜…見れば見る程美しいじゃないか君は……。」
「う…く……。」
もはやはやてが身に付けている物は胸を覆うブラジャーと股間を覆い隠す一枚のパンティーのみ。
だが上層部はそれさえも脱ぐ様命令してくるのだ。
「そんな堪忍してください…これだけは…これだけは…。」
「ダメダメ。でもまあ新部隊立ち上げたくないと言うのなら堪忍してあげても良いけど…。」
「う……分かりました…脱ぎます…。」
主導権を上層部に握られている以上はやてに拒否は出来ない。もはや脱ぐしか無いのだ。
はやては両手を背へ移動させ…ゆっくりとブラジャーを解こうとするが…手が動かない。
「どうしたのかね? はやくオッパイ見せなさい!」
「それとも新部隊立ち上げたく無いのかね?」
「う…くぁ…。」
上層部にせかされ…はやては断腸の思いでブラジャーを外した。
直後に両乳房を両手で覆い隠すが…
「おいおい! それじゃあ見えないじゃないか! 新部隊立ち上げは嫌なのか!?」
「う…は…はい…。」
やはり乳房を見せるしか無かった。顔を赤くし…目を強く閉じながら両手を離し…
エロ同人である故か現実よりかなり巨乳に描かれたはやての乳房に上層部から歓喜の声が上がる。
「おお! 中々の美乳じゃないか! 素晴らしいぞ!」
「さあ次はパンツだ! 最後に一枚残ってるぞ!」
「え…そんな…パンツまで………パンツだけは…パンツだけは堪忍して下さい!」
はやては涙を飛び散らせ、両手で股間を押さえながら泣き叫ぶが……
- 236 名前:同人大合戦!? 3 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/03(日) 15:23:55 ID:ojwwpbcf
- 「ここまで来てそれは無いじゃないか! 新部隊立ち上げたくないのか!?」
「う…は…はい…。」
ここまで女を捨てて新部隊が立ち上げられなかったら…それこそここまでの恥が無意味となる。
もはやはやてはパンティーも下ろすしか無かった。全身を震わせながら………ゆっくりと
パンティーに手をかけ……はやては…………下ろした…………。
「ぬ…脱ぎました……。」
「おおー! 八神はやてのオールヌードだ!」
「美しい!」
上層部に歓喜の表情が上がる。しかしこれまでのはあくまでも前奏。これからが本番だった。
何故ならばこの後…ベッドの上で上層部一人一人に抱かれて行くのだから………
「(そんな嫌や! 私の処女はいずれ私の前に現れるかもしれへんまだ見ぬ素敵な
旦那様の為のもんなんや! 何でこんな所で散らさなあかんの!? そんなの嫌やぁぁぁ!)」
はやては無念の内に処女を失い……一晩中上層部の男達に抱かれ続け……
その肢体の隅々まで知られる事となった……………。
はやてはこれ以上無い程の辱めを受けたが…その甲斐あって新部隊を立ち上げる事が出来た。が……
出来たのは『性欲処理専用の慰安部隊』 その上はやて自身もまた誰の子かも分からぬ子を
妊娠してしまうと言う……これ以上無い程にまで悲劇的な結末であった…………
「シャ…シャマルゥゥゥゥゥ!! 何て物を描いてもうたんやぁぁぁぁぁ!!」
はやての絶叫が部屋中に響き渡った。確かにシャマルが同人誌を描いてイベントに出し、
それがまた結構人気で同人界のエースオブエースと呼ばれている事は知っている。
そのジャンルもユーノ×クロノやユーノ・クロノ×エリオと行った801から
なのは×フェイトを初めとする百合、他にもなのは×ユーノを初めとする正統派恋愛ネタまで
多岐に渡っている。しかし…主であるはやてのエロだけは絶対にやらない。
そう言うポリシーを持っていたはずだった……。だがシャマルとて神様では無い。
それ故に同人誌のネタに行き詰まり…背に腹は変えられないと涙を飲んで…
禁じ手としていたはやてのエロを解禁してしまったに違いない。
「なるほどな…あの時謝ってたんはこれが理由やったんやな…。」
「それだけじゃないよはやて! もう既にイベントで沢山売れてるらしいんだよ!」
「レモンブックスやもんだらけでも委託販売が行われてかなり売れてるらしいです…。」
「既に不特定多数の男達に主はやてが夜のオカズにされていると思われます。」
「はやてちゃん可哀想です…。」
皆はシャマルの愚行に怒り…はやてを哀れんだ。これがもしはやての目の前に
素敵な男性が現れて、結ばれると言う内容ならば例えエロがあっても
皆は笑って許せたのかもしれない。しかし実際ははやてが大勢の男達から
辱めを受ける陵辱もの。こんな物はもっての他である。
「畜生! シャマルめ…はやてを売る様なマネしやがって!」
「あいつはヴォルケンリッターの面汚しだ。主を一体何だと考えている!」
「これはもう制裁が必要だな。」
「リインも怒ったです!」
- 237 名前:同人大合戦!? 4 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/03(日) 15:27:09 ID:ojwwpbcf
- 皆は今にもシャマルを殺しに行こうと言わんばかりの顔になっていたが……
「ちょっと待ちい皆! もしこの世界に生きとるんが私らだけならそれでも問題あらへんけど…
ここはミッドチルダや! 守護騎士プログラムのシャマルかて人権が認められとる世界や!
もしそれでシャマルに酷い事してもうたら…私らが傷害罪とかで捕まってまうんや!
で、裁判にかけられてまうんやで! そして刑務所行き…下手すりゃ死刑や!」
「そ…そんな…じゃああたし達はどうすれば良いんだよぉ!」
ヴィータは頭を抱えながら泣き叫んでいたが…そこではやては笑顔で言った。
「でも大丈夫や。昔偉い人はこう言いました。『目には目を…歯には歯を』や…。
皆にもこの言葉の意味は分かるな?」
「あ! そうか! あたし達でもシャマルを題材にしたエロ同人誌を描けば…。」
「そうや! 同人で受けた屈辱は同人で返すんや! みんなで目一杯エロい同人描いて
シャマルを恥かしがらせようや無いか!」
「分かりました主はやて!」
「リインもがんばるです!」
こうして皆で『シャマルを題材にしたエロ同人誌を描く事で復讐』作戦がスタートした。
そしてはやて達が描いたシャマル同人誌の内容とはこうだ。
ある日、何の前触れも無く大規模時空犯罪が発生、管理局からも大勢の武装局員が
出動する程の大事件かつ大勢の怪我人を出す大惨事となった。
そうなれば無論大勢の怪我人がシャマルの所へ運び込まれ、治療が行われる事になるのだが…
「俺はもうダメだ…死ぬなんて嫌だぁぁぁぁぁ!!」
大怪我の余り錯乱して誰もがその様な事を叫ぶのだ。これでは治療にならない。
「そんな事はありません! 適切な治療を行えば助かります!」
治療を担当するシャマルがそう言って落ち着かせようとするが彼等は
全く落ち着く気配さえ見せず…ついに挙句の果てには……
「俺は嫌だ! 童貞のまま死ぬなんて嫌だぁぁぁぁぁ!!」
「嫌ぁぁぁぁあぁ!!」
何と一斉にシャマルに襲い掛かったのである。全身血だらけの男達に
飛びかかられ、シャマルは思わず絶叫し、次の瞬間ベッドに押し倒された。
「止めてください! 落ち着いて! 適切な治療をすれば…。」
「そんな事を言っても無駄だ! どうせ俺達は死んでしまうんだ!」
「でも童貞のまま死ぬなんて嫌だ! だからシャマルさん…シャマルさぁぁぁん!!」
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
血だらけの男達は有無を言わせずにシャマルの服を剥ぎ取り裸にし…犯した。
ある者は血塗られたモノを無理矢理シャマルの口に押し込みしゃぶらせ…
またある者は血塗られたモノをシャマルに握らせて扱かせ…
またまたある者は血塗られたモノでシャマルの股間のニ穴をそれぞれ犯した…
そして犯し終えた男達は満足した表情で天へ召されていく。
- 238 名前:同人大合戦!? 5 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/03(日) 15:29:17 ID:ojwwpbcf
- 結果…部屋には既に事切れた血だらけの男達と………犯された悲しみと
適切な治療をすれば救う事が出来たはずなのに救う事が出来なかった…
その様な悲しみに暮れるシャマルの姿があったと言う…………
「う…う…ごめんなさい…みんな…ごめんなさい…。」
「何かエロと言うか…グロ漫画になってもうたな…。」
「でもこれはこれでシャマルに赤っ恥をかかせられる!」
「早速今度のイベントで売り出しましょう。」
こうして完成したシャマル同人誌をはやて達はイベントで売り出す事にした。
無論シャマルにバレる事が無い様に変装して………。しかし………
「な…何でや…何で売れへんの……。」
「ちょっとは売れたよ。」
「でもほんのちょっとだな…。」
はやて達が出したシャマル同人誌は全く売れない事も無かったが…殆ど売れなかった。
彼女達は知らなかったのだ。『シャマルの描いた同人誌』は確かに人気はあるが…
『シャマル自身を題材にしたエロ同人誌』はそれ程人気が無い事に……。
決してシャマルに魅力が無いワケでは無い…が…エロと言うジャンルに使えるか否かを考えると…
どうしても辛い物がある。そもそもシャマルの魅力と言うのは母性的な面にあって、
それ故にエロ関係における需要は少ないのかもしれない。
勿論少なからず存在する熱狂的なシャマルのファンは買って行ったが…その数も微々たる物。
はやて達が当初予定していたシャマルに赤っ恥をかかせられる程の冊数は売れなかった。
「な…何でやぁぁぁぁ!!」
はやては悔しかった。これではシャマルに赤っ恥をかかせられない。
と、そこで偵察に向かわせていたリインUが血相を変えて戻って来たのだ。
「大変ですよマイスターはやて! シャマルさんがマイスターはやてを題材に
また新しい同人誌を出してます! それがまた凄い人気で………。」
「何やて!?」
シャマルが描いて出した新しい同人誌とは…ノーマルなはやてがアブノーマル百合百合コンビな
なのは&フェイトに攻められ、レズに堕ちてしまうと言う内容のレズ3Pものだった。
「ま…また私を題材にエロ描いてもうたんか…シャマル………。」
はやて達は愕然とするしか無かった。やはり同人誌と言うジャンルで
シャマルに勝つ事は出来ないのか…………。
イベントは終了した後…夕日を浴び、大量の在庫を引きながらトボトボと帰るはやて達の姿があった。
「う…う…はやてぇ〜…。」
「ダメや…泣いたらあかん…う…この悔しさを…バネに…う…うあああ…。」
「主はやて………。」
皆は悔しくて悔しくて仕方が無く、誰もが必死に涙を堪えながら帰路に付いた。
この悔しさをバネに次こそはシャマルに赤っ恥をかかせられる同人誌を作る為に…。
おしまい
- 239 名前: ◆6BmcNJgox2 :2008/02/03(日) 15:30:12 ID:ojwwpbcf
- シャマルの扱いとかかなりシャマル好きの人とか怒りそうな感じですけど
さり気なく私はシャマル好きの人ばっか集まった合同本の同人とか買ってたりします。
それと、かぎかっこの中に「。」を入れるのはどうしても昔からそう教え込まれた身故
中々抜けませんね。その辺勘弁できませんか?(そのくせ最初の一文字開けたりとかしてませんがorz)
- 240 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 15:32:24 ID:0zIU6M6N
- 「。」は別に間違いじゃないから気にすんな。あんなの字数節約のためだけのものでしかないんだし。
難癖つけるやつの方が頭おかしいんだよ。それはそうとGJ!今回も面白かったよ。
- 241 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 15:41:37 ID:0zIU6M6N
- http://okwave.jp/qa499833.html
括弧内の句点に関しちゃここでFA。基本はつけるのが正しいけど省略しても構わない。
だからついてるから文句いうやつはお門違い。
- 242 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 15:47:28 ID:SwBPC9WM
- 句点は別にどっちでもいいと思うから作者さんが思うようにして下さいな。
ただ>>240、さすがに頭おかしいとかは言わん方がいいと思うぞ…
- 243 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 15:49:16 ID:ggmVKxaa
- >>240
お前は何を言ってるんだ
「。」は文章作法上、間違いといえば間違い。
まぁ、賞に応募する時とかの話だけども。
ネット上じゃ、書く人のやりたいようにやればいいと思う。
とりあえず、>>241は文章作法でググって出直してこようか。
- 244 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 15:58:06 ID:ttiwZzT6
- クソワロタw
- 245 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 16:03:00 ID:mYeL7PDF
- 読めたら十分
- 246 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 16:07:26 ID:spC6+3X8
- そんなの言い出したら小学館の漫画なんか間違いだらけじゃないか
- 247 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 16:13:12 ID:/U45gSqZ
- >>241
ぐぐったけどそのサイトに書いてあるのはどれも憶測だけの主観論だぞ。
- 248 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 16:14:57 ID:ClVbCpNR
- あくまでも出版業界限定の慣習にすぎないことをスタンダードのようにして語る文学君は迷惑。
- 249 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 16:22:51 ID:KBcEzANb
- こうやって感情的に過剰反応示すやつも出てくるからその手の話題は一切出さないのがベスト。
以前、とあるSSスレで似たような話題になったときキレタ香具師がコピペ爆撃でスレを潰した。
- 250 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 16:26:44 ID:Mz8q4D9b
- >>243で正しいよ。
っていうか>>248読解力なさすぎ。
ちゃんと賞に応募する時とかの話だけどって言ってんじゃん
- 251 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 16:27:27 ID:KBcEzANb
- だからこれ以上蒸し返すなと。
- 252 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 16:29:39 ID:21mQ4lNj
- まあ細かいことはスルーで内容についての感想だけで良いんじゃね?
2ちゃんで重箱の隅つついてもしょうがないでしょ。
- 253 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 16:30:23 ID:Mz8q4D9b
- >>251
悪い。
携帯だから>>249が書き込まれたことに気付かなかった。
- 254 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 16:30:43 ID:6BlqIAeO
- >>250
おまえこそ読解力ないじゃん。別に.>>248は>>243あてにレスしてるんじゃないぜ。
- 255 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 16:31:41 ID:6uVh09S3
- まずは職人にGJが基本だろ・・・・・・
議論はその後にしといたほうがいいと思うぞ。
それはさておき>>239 GJ!
シャマルさん、あんたって人はー!
- 256 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 16:33:44 ID:ZIojau7w
- なんか空気悪いな。流れを変えるか。とりあえず感想。
自分題材の本が売れない時点で赤っ恥だよシャマルさんw
- 257 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 16:34:52 ID:mYeL7PDF
- 大事なこと忘れてた>>239さんGJです
- 258 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 16:37:31 ID:6uVh09S3
- まて、母性的なのがシャマルのファン層だというのなら、シャマルでママ先生
略してシャマ先生なほのぼのの同人を描けば売れるのではないか。
復讐のネタにはならないけどな!
- 259 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 16:40:57 ID:ZIojau7w
- っていうかはやてたちの同人の筋が悪いのでは。
恋敵を根こそぎフォークで突き刺して腸ぶち撒けしてるシャマルさんなら俺は十冊買う。
- 260 名前:孤兎狸 ◆kotorixGkE :2008/02/03(日) 16:56:35 ID:WbvSLTPs
- ども。忘れた頃にまた投下しにきました。
自HPには昨日すでにUPした奴なんですが
時節モノなんでこちらにも投下させてください。
注意事項
・一応エロあり。クロフェもの
・登場人物の性格破綻多め
・地の文を削った会話進行モノです。読みにくいので注意
- 261 名前:孤兎狸 ◆kotorixGkE :2008/02/03(日) 16:57:29 ID:WbvSLTPs
- てけてってって♪
てけてってって♪
てけってってってててて♪
「はいはいみなさんラルファクイルファッシーナ♪ 毎度おなじみ八神はやてですー」
「アシスタントのリィンです、ラルファクイルファッシーナ……ってこれどこの国の挨拶ですかマイスター」
はやてさんのお料理メモ「クロフェイえろえろクッキング」
かいたひと:ことり
ばたばたばたばたばた。
「……なんか今日はスタジオ内が慌ただしいですね」
「あー、気にせんといて。仕入れた材料の関係上、ちょおADさん達に負担がかかってしもうてな」
「何を仕入れてきたのか非常に気になりますが」
「まぁ材料の前に今日の献立の紹介やな。リィン、プラカード持ってきてな」
「あ、はぁい」
「今日こそは一人で持ってこれるとええなぁ」
「う、へ、平気ですもんっ!」
「あーほらほら、走ったらあかんて……ほれこけた。まぁ戻ってくる前に軽く今日の献立について紹介しよか。
ADさん、モニタつけたって……って誰も手あいてへんのかい。しゃあないな……」
ぱっ
「えー、今日の献立はこちら、『恵方巻き』やな。知らん人もおるかもしれんさかい、軽く起源について説明しよか。
恵方巻きいうんは節分の夜に恵方……その年の最もよい方角を向いて食べる巻き寿司のことや。
ちなみに2008年の恵方は南南東。なにやら陰陽道にもとづいて決めるそうやけど、そのへんはよーわかりません。
で、節分の夜に恵方を向いて巻き寿司を無言のまままるかぶりすると、その年の災難を逃れることが出来るっていう、民間行事の一つなんよ。
起源は江戸時代末期に商売繁盛の祈願事として始まったとされる説が有力やな。戦後に一旦廃れるんやけど、1977年に大阪海苔問屋協同組合が節分の日に道頓堀で実施してまた広まっていったらしいで。ぶっちゃけばれんたいんでーと大差あらへんってことやな」
「ま、まいすたぁ〜」
「お、リィンお帰り……て、なんやそのカッコ」
「持てなくて困ってたら、ADさんが背中に縛り付けてくださって……で、でもちゃんと一人で持ってきましたよ!」
「うんうんよしよし。次は助けなしで頑張ってみよなー」
「はううう」
「始めた頃の恵方巻きの材料はとってもシンプルや。高野豆腐とかんぴょうを巻いただけ。とはいっても当時海苔や白米は貴重品。
それに高野山とかけて高野豆腐、かんぴょうで大津のかんぴょう神社にあやかろうという、堂々とした縁起物やったんや。
ま、最近コンビニとかで売ってる恵方巻きはもうちぃと豪華になっとるけどな。」
「ここ数年で知名度がばーんと上がりましたよね。それでも知らない人は結構いるみたいですけど」
「販売戦略、ちぅ奴やな。マスコミが食いつけば勝ったも同然やから」
「売るほうも生活かかってますね」
「縁起物で腹が膨れるなら万々歳やないか」
「夢や希望もお金で買えるようになったってことですか」
「商売繁盛で何より。というとこで今日作る恵方巻きの材料や。リィン、後ろ向きー」
「はう。わ、た、たたっ」
「うん、OKOK。そのまましっかり立っておくんやで」
「ど、努力しますぅ……」
「具材のほうは無難やね。コンクリ打ちっぱなしの地下室、固定金具一式、ナイロンロープ少々……」
「なんでまた地下室なんて」
「よくわからへんけど、そのほうがふいんきが出るって事とちゃう?」
「マイスター、雰囲気ぐらい変換してください」
「あとはまぁ普通やな。ハンドタオルに黒のストッキング、ボールギャグと綿棒」
「ご家庭でも揃えられるものばかりですね」
「ただ、今回は酢飯と海苔に気合入っとってな。滅多にお目にかかれんものを用意してもろたんよ」
「へえ、そんなに珍しいものなんですか」
「そやよ。じゃちょっとリィン、第2モニターのスイッチ入れたって」
「あ、はぁい。はわ!? わ、わひゃっ!?」
「……あー、しゃーない、自分で入れるわ……」
「ほ、ほにょ前に、起こひてってくらひゃい〜〜〜」
〜CM〜
- 262 名前:孤兎狸 ◆kotorixGkE :2008/02/03(日) 16:58:07 ID:WbvSLTPs
- 「はわー……死ぬかと思いました」
「ほれ、モニタ見たって。もうはじまっとるで」
「ほえ? あらー……これはまたずいぶん豪勢な酢飯と海苔ですね」
「まったくやな。酢飯には時空管理局提督、次元空間航行艦船アースラ艦長。海苔には同局執務官を使用。
どちらもハラオウン産、産地直送の活きのいいやつやで」
「確かにこれは滅多に見られませんね」
「どっちも多忙を極める身やからな。今回無理を言って用意してもろたんよ」
「じゃあ、さっきからADの皆さん方が右往左往してるのって」
「もちろん二人分の仕事を代わりに処理してもろてるからや」
「十数人がかりでですか……どんな仕事量なんだか」
「地下室にした理由は密閉空間に出来るからなんや。せやから現場からは映像で送ってもろてるんよ」
「偉い人って色々面倒なんですね」
「そのへんはまぁごにょごにょ。ほれ、もう仕込みにはいっとるみたいやで」
「ああ、もう提督は綺麗に剥かれてますね。拘束具使って壁に貼り付けられちゃって」
「下ごしらえをしっかりしとかんと後味が悪くなるよってな、ここで手を抜いたらあかんのや」
「執務官は提督の前でしゃがみこんで何してるんでしょう? ちょっとカメラの角度悪くて見えないです」
「んー、そやね、ちょっとカメラ変更しよか。ぽちっとな」
ぱっ
「あー、両手と舌を使って丹念に洗ってるんですね。うっとりと目を細めちゃってるんですけど執務官」
「それだけ集中してるってことやろ。提督の方はしっかり壁に貼り付けたらボールギャグで口をふさぐのも忘れずにな」
「さっきからうーうーうるさいのはそれですか。涎までだらだら流して辛そうなんですけど」
「ああ見えて内心は喜んどるんとちゃうかな」
「そういう趣味なんですか」
「辛いと幸せって字は似てるやろ」
「ああ、びくんびくんって脈打ってますね。そろそろ出来上がる頃ですか?」
「いんやまだまだ。ここで我慢しとくとアクが抜けて美味しくなるんよ」
「始まってから1時間ぐらい経ってるみたいなんですけど」
「提督は忍耐にかけては右に出るものはおらへんからな」
「それ苦労性っていうんじゃ」
「そっとしといたるのが大人ってもんや。ていうかひたすら洗っとる執務官のほうが我慢の限界っぽいけどな」
「肌も赤みが差してすっかり茹で上がった状態ですもんね。ほとんど意識もない状態で舐め続けてるんですか」
「ここまできたらそろそろ綿棒の出番やな。もうちょいカメラズームしよか」
「え、うわ。そんなトコに入れちゃうんですか。呻き声が一段高くなりましたよ」
「しっかり開発してあるから平気らしいで。前立腺に刺激を与えすぎないように優しく動かすのがコツや」
「生殺しもここまでくると芸術ですね」
「手間ヒマかけた分だけ仕上がりに出てくるからな。具の仕込が終わったら酢飯を海苔で包むんやけど、巻き方が悪いと全部台無しやから、しっかりと愛情込めるんが大切や」
「あー、両手で根元をしっかり押さえてから吸い込むようにするんですね」
「ちとカメラじゃ見えへんけど、舌で巻きつけるようにまんべんなく刺激を与えとるんよ」
「このあたり慣れというか呼吸というか。経験って大事なんですね」
「夢中になって後ろの綿棒のほうも忘れんようにな」
「あ、提督が痙攣してきましたね。そろそろ出来上がりっぽいです」
「ここで体の自由を奪っておかんと、調子に乗って自分で動かしよるからな。最初にしっかり拘束しておくんやで」
「あ、跳ねた……執務官の喉がこくんこくんって動いてますよ。直に飲んでるんですか」
「味のほうはまだ我慢できるけど、喉越しが最悪やからなぁ。愛がないとようできへんよ、あれは」
「それでも飲みきれない分が垂れてますね。提督出しすぎ」
「さんざ焦らした後やからな。しかも妹の口でとか、どんだけ外道なんかと」
「でも終わったのかな。吸いながらゆっくり離れていきましたね」
「根元のほうから搾り出すように唇の端で押さえながら引き抜くんや。一滴も残したらあかんねんで」
「あーあーむせてる。キツいなら無理しなくていいのに」
「そんでも見てみい、あの幸せそうな顔。なんやもう石でも投げたろか」
「視聴者から抗議メールがきますからやめてください」
「最後はギャグをはずして感想を聞くとかすると羞恥心を煽れていい感じになるさかい、ツメをしくじらんようにな」
「抱きついてキスをせがんでるように見えますけど、なぜか提督嫌がってませんか」
「そりゃ誰しも自分のは嫌なもんやろ」
「ご愁傷様です」
「んじゃCMのあとは試食タイムやでー」
〜CM〜
- 263 名前:孤兎狸 ◆kotorixGkE :2008/02/03(日) 16:58:49 ID:WbvSLTPs
- 「お茶どうぞマイスター。だけど出来上がるまでは結構時間かかるものなんですね」
「材料の選択と、味付けにちょお手間のかかるもんを選んだせいやな。ご家庭で手軽に作る場合は番組終了後に30秒でできる調理法を紹介すんで、そちらを試してみてな。」
「30秒っていうのもそれはそれで問題ありそうな」
「人によってはトラウマになるらしいけどな。とりあえずモニタ見てみようか。モノが恵方巻きってことなんで、味見を兼ねて食べ方の実演や」
「提督は拘束やっと解かれたんですか。あ、執務官も着替えてる……っていうか脱がされてますね。ロープで縛られてますけど、動くのに問題なさそうに見えるんですけど」
「縄化粧って奴やな。胸を強調する縛り方を心得とるあたり、提督のシュミが伺えるってもんや」
「ストッキングははいたままっていうのがまたマニアックですね」
「そんじゃ食べ方のおさらいや。日付は節分の夜――収録ってことで節分にって訳にはいかんけどそこはまず勘弁。
巻き寿司やけどこれを切らずに一人一本、丸のまままるかぶりする。切り分けると縁を切るって事になるらしいで」
「それで恵方……2008年は南南東ですか。そちらの方角を向いて食べる、と。執務官が手をついた壁の方ですね」
「ん、そんで重要なのは無言のまま食べ終わること。話すとツキが逃げるさかいな」
「ああ、執務官がハンドタオルで猿轡されてるのはそのためですか」
「待ちきれんって表情やなー。誘ってる腰つきがなんとも」
「結構な太巻きなんですけど、そのまま端から食べるんですか。あ、一気に行った」
「提督も我慢の限界やったんやろ。まぁあれだけ挑発されたら理性も吹っ飛ぶやろうけど」
「涙目ですもん」
「繰り返すけど食べ終わるまでは無言でな。食べること自体に無病息災の意味合いもあるけど、その間に願い事をすると叶うって言い伝えもあるんやで」
「タオルかみ締めて必死に声殺してますね。さすがに堪えきれないみたいですけど、あれぐらいはいいんですか」
「息をするなとはいわれとらんから、吐息のレベルならセーフやろ。提督も手ぇ抜いたったらええのにな」
「無理じゃないですかね、目が血走ってますよ」
「ケダモノってのはああいうのを言うんやな」
「あ、動きが早くなってきた。もう少しで食べ終わりそうですね」
「4分か。まぁよく持ったってことにしといてやろか」
「あー出してる出してる。2回目なのによくあれだけ出せますね」
「なんでもそうやけど、食べ物には敬意を持って、米の一粒も残したらあかんでー。お百姓さんに失礼やからな」
「いつの時代の人ですか」
「とまぁ、息つく間もなくそのまま第二ラウンドに入ったあたりでそろそろ時間やね」
「はいっ、今日は日本の民間行事に欠かせない『恵方巻き』のご紹介でした!」
「テレビの前の皆さんの願い事も叶うとええなー。ほなまた」
「提供は皆様の食卓と平和を維持する、時空管理局第6課でお送りしましたぁ」
「マイスター、提督と執務官の願い事ってなんでしょうかね」
「願い事は他人に知られると叶わんっていうから、そっとしといたり。ほれ、カギかけたら撤収するで」
「はぁい」
扉を閉める鍵音。
地下室からはいまだ低く声が漏れて。
fin.
- 264 名前:孤兎狸 ◆kotorixGkE :2008/02/03(日) 17:00:10 ID:WbvSLTPs
- 以上です。おそまつさまでした(・ω・)
- 265 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 17:03:11 ID:A22ldbvK
- >>239
GJです。相変わらずのシャマルさんの暴走に吹いたw
つか同人誌会のエース・オブ・エースってw
でもこのままだと八神家全員、同人詩の世界へどっぷりつかっていきそうな気が…
自分は「 〜。」は気にならない方です。
- 266 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 17:07:34 ID:23woCA+A
- なんで始まり方がマスターオブエピック
- 267 名前:( ゚Д゚):2008/02/03(日) 17:34:47 ID:ES8MRGYg
- >なのは×ユーノを初めとする正統派恋愛ネタ
_.._
( ゚Д゚) 正統派……?
いや、なのは的に正統派なのは認めますが。
なにはともあれ>>239氏も>>264氏もGJ。
大喜利が始まるころ投下いたします。
- 268 名前:( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc :2008/02/03(日) 17:44:28 ID:ES8MRGYg
- シャマルさんのエロが需要がないっていうのが一番(ry
イエナンデモアリマセン
注意事項
・捏造あり過ぎ
・A's本編の流れからだいぶ離れました。
・そろそろいろいろ先がわかる内容がありますが、解っても言うな。言わないで下さい。
・あぼーんキーワードは「燃え上がる炎の魔法使い」
- 269 名前:燃え上がる炎の魔法使い 5-01/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/03(日) 17:44:59 ID:ES8MRGYg
- 「過去の記録では、彼らは4人だった。烈火の将シグナム、鉄槌の騎士ヴィータ、湖の騎
士シャマル、盾の守護獣ザフィーラ……」
その名前に、聞き覚えがあった。
「確か、白銀(しろがね)の拳闘騎士レン、とか名乗っていたよ」
そう呼ばれた相手の姿にも、見覚えがあった。
「11年前、前回に闇の書が発動したとき、『アースラ』と同型の巡航L型、2番艦『エステ
ア』が、闇の書の力で暴走、味方によって処分された。その時、最後まで艦の制御を回復
しようとして、艦と運命を共にした艦長が────僕の父、クライド・ハラオウンだ」
心の中に、疑念が、よぎる。
燃え上がる炎の魔法使い〜Lyrical Violence + A’s〜
PHASE-05:Overture des Sturzes(前編)
少し、時系列が前後する事をお許し願いたい。
Dec.17.2005────21:00。
月村家、すずか自室。
携帯電話の呼び出し音が鳴った。フリップ外側のサブディスプレィで、発信元を確認す
る。──『八神はやて』。
すずかは慌てて、フリップを開き、通話ボタンを押した。
「もしもし」
『もしもしー。あ、すずかちゃんかー?』
電話の向こうに、語尾の上がるイントネーションの、少女の声が聞こえてきた。
「う、うん」
『ごめんなぁ。なんか、何度か着信もろてたみたいやけど、午前中は病院行ってて、その
まま電源切ったままになってたんよ』
「あ、そ、そうなんだ。ううん、気にしてないから、大丈夫だよ」
すずかは、笑い声混じりに、はやてにそう伝える。
『それで、用事はなんやね?』
電話越しにも明るいはやての声に、しかし、すずかは1拍おいて、意を決してから、は
やてに訊ねた。
「ねぇ、シャマルさん達って、はやてちゃんの親戚さん……なんだよね?」
『そやよー』
しかし、はやては即答した。
『ちゅうても、日本生まれやないんやけどな。せやから、ちぃ、日本人離れしとる』
「あ、そ、そうなんだ」
電話越しで相手にその姿は見えないが、すずかは胸を撫で下ろして、苦笑する。
「あ、そうだ。はやてちゃん」
念の為、すずかはもうひとつ、はやてに質問を投げかけてみることにした。
『何ー?』
「はやてちゃん、魔法って、実在すると思う?」
『魔法? こらまた、えらいトートツな質問やな』
「ご、ごめん」
電話口で苦笑しながら、すずかは謝る。
しかし、次に返ってきたのは、どこかしみじみとした、少し寂しげな声だった。
『あったらええなぁ、そしたら、あたしも足、悪ぅても、誰にも迷惑、かけへんねんのに
なぁ』
- 270 名前:燃え上がる炎の魔法使い 5-02/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/03(日) 17:45:22 ID:ES8MRGYg
- 「あっ! ご、ごめん、別に、そう言う意味じゃないんだよ!」
はやての言葉に、すずかは慌てて、そう返した。
『あはは、わかっとるわかっとる。冗談や、ジョーダン。聞き流してぇやー』
ケラケラ、と、はやての明るい声が聞こえてきた。
「う、うん、ごめんね」
すずかも苦笑するが、どこか態度が萎縮してしまっている。
『ところで、話変わるんやけど』
はやての方から、別の話題をふってきた。
「うん、何?」
『この前、学校のお友達紹介してくれる、言うてたやんか』
「あ、うん……その、ちょっと、いろいろ忙しかったみたいで」
『そっか、そらしょうがあらへんな』
すずかが、少し慌て気味に、申し訳なさそうに答えると、はやてはやはり、あっけらか
んとした口調で、返してきた。
「あ、でも、しばらくは時間取れるらしいから。あ、そうだ。アリサちゃんなら、明日、
図書館に連れていくよ」
すずかは思い立ち、そう提案した。
『三中地区図書館?』
「うん」
『ええよ。あたしも返す本があるねんから』
はやては同意の返事を伝える。
「それじゃあ、詳しい時間とかは、後でメールしとくね」
『まっとるでー。楽しみにしとるー』
「うん、それじゃ、明日ね」
いつしか、自分も楽しそうな笑顔で話していたすずかは、明日の事を考えながら、通話
を終えた。
「……ホンマ、“魔法みたいに”自分の思い通りになんでもできたら、ええねんけどな……
……」
携帯電話のフリップを閉じながら、自室のベッドの上で、はやてはひとりごちた。
「……アカンって……望み持ちすぎたら……今のあたしには、あの子らがおる、1人ぼっ
ちやない……それでええって、決めたやんか…………」
- 271 名前:燃え上がる炎の魔法使い 5-03/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/03(日) 17:45:50 ID:ES8MRGYg
-
「ふぁい、もしもしすずか?」
ベッドの上で、既に布団をかぶっていたアリサは、既に寝入りかけた寝ぼけた口調で、
そう言った。
『ごめん! アリサちゃん、もう、寝てた?』
すずかの、申し訳なさそうな声が聞こえてくる。
「んー、別に気にしなくてふぁぁぁぁ」
言いながらも、あくびが出る。
「恭也さんと美由希さんと、付き合ってもらってたから……」
『アリサちゃん、頑張り屋さんだもんね』
寝ぼけ眼をこすりつつ、アリサは答えた。
「で、用事は何?」
『うん、前、少しお話した、八神はやてちゃんの事なんだけど』
「やがみ、はやて……?」
アリサは、眠いながらも、記憶から情報を引っ張り出す。
「ああ、脚悪くして休学してるって言うあの子ね」
『うん、それで、その子にね、明日、アリサちゃんの事紹介するって、約束しちゃったん
だ』
「明日……?」
アリサは、まだ寝ぼけかけている頭を、何とか作動させる。
────あたしはもう、蒐集対象じゃないって話だし、なのはとフェイトの側にはクロ
ノとアリシアがいるし、まぁ、大丈夫よね。
「午後なら良いわよ」
『午後だね、いいよ』
「あ、でも」
ふっと、アリサは声を出す。
「ユーノも連れて行って良いかな?」
『ユーノ君? うん、良いと思うよ』
アリサの問いに、すずかはすぐに快諾した。
ユーノ本人の意思が介在していないところが恐ろしい。もっとも、アリサが暇ならたい
ていユーノも暇なのは事実なのだが。
『それじゃ、明日ね』
「うん、bye」
そう交わして、通話を終える。アリサは、フリップをたたむのもめんどくさいと言わんば
かりに、携帯電話を握ったまま、疲れた身体を深い眠りに沈めていった。
- 272 名前:燃え上がる炎の魔法使い 5-04/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/03(日) 17:46:17 ID:ES8MRGYg
-
Dec.17.2005────13:12。
海鳴市立・海鳴第三中学校地区図書館。
正面の道路に、市内循環の、小型バスが停車する。扉が開き、アリサとユーノが、降り
立った。
「んーと、すずかはまだ来ていないのかしら」
2人で図書館の玄関に進みつつ、アリサは、キョロキョロと辺りを見回す。
すると、
ギャロロロッ……ギュイィィィン……ガロッガロッ……
クラッチやら4気筒エンジンに悲鳴を上げさせながら、見覚えのある軽自動車が、ギク
シャクと駐車場に入ってきた。
「ああ、今来たわけね」
運転手が誰だか容易に想像できたアリサは、呆れたように引きつった苦笑で、それを見
た。
やがて、アリサ達のすぐ横で、軽自動車は停止した。助手席のドアが開く。
「ごめん、アリサちゃん、ユーノ君、お待たせ」
そう言いながら、すずかが、助手席から降りてくる。
「ん」
「いや、僕達も今来たところだから」
アリサが短く返事をし、ユーノが苦笑気味にそう言った。
「それじゃあすずかちゃん、お迎えが必要になったら呼んでください」
「うん、ありがとう、ファリン」
すずかは、助手席越しに運転席のファリンにそう言ってから、ドアを閉めた。
ファリンはギアを1速に入れ、軽自動車を発進させる。
そして、入ってきたときと同じように、ギクシャクとした運転で、駐車場を出て行った。
「すずか、よくあれに乗ってられるわね……」
「うん、まぁ、ジェットコースターだと思えば……」
呆れたように言うアリサに、すずかが苦笑しながら答える。ユーノはそれを聞いて、顔
を青くした。
「はやてちゃんはまだかな?」
すずかが、辺りを見回す。
「!」
その時、ユーノの表情が、突然、険しいものになった。
『気をつけて、アリサ』
念話で、ユーノはアリサに話しかけた。アリサは、反射的に、ユーノを見る。
『近くに、強力な魔導師がいるよ』
ユーノが言う。
『この間の連中!?』
アリサの表情も、反射的に険しくなる。
『かも知れない』
ユーノは、そう答えた。
その時、別のルートの循環バスが、図書館の正面の道路に停車した。
「あ、はやてちゃーん」
1人、状況を把握していないすずかは、バスから、抱えられて降りてくるはやてを見て、
手を振りながら、挨拶をする。
『とりあえず、その話は後』
『そうだね、僕が気をつけておくよ』
- 273 名前:燃え上がる炎の魔法使い 5-05/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/03(日) 17:46:40 ID:ES8MRGYg
- アリサが言い、ユーノも同意した。そして、2人は、すずかが声をかけている方を見る。
「すずかちゃーん」
長身の女性に抱えられ、手を振る少女。
「…………」
「…………」
その、少女を抱える女性の顔を見て、アリサとユーノは、硬直する。
「…………」
女性の方も、同じように立ち尽くした。
「シグナムどうし……えっ……!?」
折りたたまれていた車椅子を組み立てていた女性も、アリサとユーノに気付き、その姿
を凝視する。
「なんや? シグナム、シャマル、どうしたんや?」
「どうしたの……? アリサちゃん? ユーノ君?」
はやてはシグナムを見上げ、すずかはアリサとユーノを振り返り、不思議そうに聞き返
す。
だが、すずかは、次の瞬間、その理由に気がついた。
「まさか!?」
「そのまさかよ」
すずかにそう答え、アリサは、敵意に満ちた目で、シグナムを睨んだ。
「アンタ達、こんなトコで何やってんのよ!?」
- 274 名前:燃え上がる炎の魔法使い 5-06/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/03(日) 17:47:13 ID:ES8MRGYg
-
『アースラ』スタッフ地上本部、兼ハラオウン家住居となっているマンション。
LDKの片隅に、小規模な転送ポートが設置されていた。
その術式が作動する。
「ん?」
人間形態で、珍しくカップラーメンなどを啜っていたアルフは、行儀悪く麺を口から下
げたまま、顔を上げて、転送ポートに視線を向けた。
そこに、儀式・儀礼用の衣装のリニスが、現われた。
「リニス!」
「あれ、アルフしかいないんですか?」
キョロキョロと辺りを見回しながら、リニスはそう言った。
「ん、エイミィは本局、他の連中は捜査、クロノは、なのはン家でケーキ“食わされて”
る。フェイトやリンディ達は、家族で夕飯の買出しだって。で、あたしが留守番。空にし
ちゃうわけにいかないからね〜」
本当は、フェイトはアルフも連れて行く、と言ったのだが、そう言う事情で、アルフは
1人で、おやつ代わりににラーメンを啜っていたのだった。
「デバイス3基、修理と改修終わったんで、持ってきたんですが」
「わざわざ来なくても、取りに行ったのに」
アルフは慌てたように言う。
リニスが両手を胸の前に広げると、赤い宝玉、金色のレリーフ、白銀色のメタルカード
が、その手の上に浮かんだ。
「少しでも早い方がと思いまして」
「ん、サンキュ。フェイト達に、早く渡してやらなきゃ……」
笑顔でアルフが、そう言った途端。
『アルフさん! アルフさん!』
念話に、ユーノの声が響いてくる。
『ユーノ!? どうしたんだい?』
その切迫した声に、アルフの表情も険しくなる。
『守護騎士の2人が、僕達の前に……アリサ……』
突然、キュイィィンッ、と言うジャミングノイズが入り、それっきり、ユーノの念話が
途絶えた。
「まずい」
アルフは声に出し、ベランダへの窓を開けた。
「守護騎士達と、遭遇したんですね?」
背後で、リニスが言う。やはり、表情は険しい。
「!」
リニスは何かに気付くと、飛行魔法でベランダから飛び出した。
誰かに目撃されるかもしれないが、状況が切迫しているとなればそれに構っていられな
い。東スポの一面ぐらい好きにさせてやれ。
「結界の反応!」
「急ごう!」
アルフも飛び出す。
アルフは狼形態に、リニスも同様に、猫、と言うにはかなり大柄な、山猫の姿へと変わ
る。そして、空中を駆けだした。
- 275 名前:燃え上がる炎の魔法使い 5-08/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/03(日) 17:47:42 ID:ES8MRGYg
-
「シャマル、結界を頼む」
シグナムははやてを車椅子におろしつつ、視線は向けずに、シャマルにそう言った。
「シグナム、シャマル、これはどういうことや!?」
「申し訳ありません、主。事情は後ほど、説明いたしますので」
不安そうな表情で問い質すはやてに、シグナムは苦い顔で、そう言った。そして、はや
てから視線を離し、身体を起こす。アリサを見据えた。
ばっ
その間に割って入るように、両腕を広げた、ユーノが立ちはだかる。
「見逃してもらうわけには、行きませんか? アリサはデバイス無しじゃ、ろくに魔法は使
えないんです」
ユーノは、険しい表情でシグナムを見て、そう言った。
その言葉に、アリサは一瞬、むっとした表情になった。
「ユーノ、あんたね……」
「私としてもそれは不本意だが、……すまない、出来ん相談だ」
抗議の声を上げかけたアリサの言葉を遮って、シグナムはユーノにそう言った。
ユーノの眼がさらに険しくなり、シグナムを睨む。
「レヴァンティン!」
『Ja, Wohl』
シグナムの服装が赤紫の甲冑へと変わり、その手に長剣と化したレヴァンティンが握ら
れる。
「ちょぉ!? シグナム、止めや! 主の言う事、聞けへんのか!?」
「申し訳ありません、全て終われば、此度の不義、すべて責任を取ります故!」
はやての制止を振り切り、シグナムはユーノとアリサに向かって飛び出した。
「ラウンドシールド!」
緑色の光の盾が現われ、シグナムの斬撃を受け止める。バチバチと火花を散らし、凌ぎ
あう。
「シグナム……シャマル! どうしてこないなことになっとるんや!?」
はやては、制止を聞かないシグナムに代わり、シャマルに向かって、問い質す。
「ごめんなさい……ごめんなさい、はやてちゃん……」
シャマルは結界を維持しつつも、今にも泣き崩れてしまいそうな様子で、はやてから視
線を逸らし、繰り返す。
「なんでや、なんで……」
はやては、ぶつかり合うユーノとシグナムを見て、不安そうな、罪悪感に苛まれた様な
表情で、呟く。
「このぉぉっ」
ミシッ……
ユーノのシールドに、ヒビが入った瞬間。
「レイ・ランス!」
アリサの右腕を、垂直のリング状の魔法陣が展開し、その指先に収束した魔力弾が、シ
グナムめがけて撃ち出される。
その瞬間、ユーノはシールドを切り、右へ転がるように避けた。
『Panzergeist!』
シグナムの身体を、レヴァンティンの発する淡い光が包み込んだ。レイ・ランスは、シ
グナムの身体に当たり、しかしなんらダメージを及ぼすことなく、霧散した。
『Sturmwellen』
「しゃらくさいっ!」
- 276 名前:燃え上がる炎の魔法使い 5-08/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/03(日) 17:48:24 ID:ES8MRGYg
- レヴァンティンから、刃のような衝撃波が、魔力光を伴って射出される。
「アリサ!」
ユーノが、悲鳴のような声を上げる。
「ホイールプロテクション!」
やや赤みがかった金色の光の盾が現われ、アリサに向かって撃ち出された衝撃波を、魔
力光ごと、散らす。
反射的に身をすくめていたアリサが、身体を起こす。
「リニス!?」
「すみません、お待たせしてしまったようですね」
リニスはシグナム達を見据えつつ、そう言った。
「またんかーいっ」
上空から、さらに、別の関西弁。
「レン!? どうして……」
白い甲冑と、ジルベルンメタリッシュを纏ったレンの姿を見て、はやてはさらに驚愕と
疑念の声を出す。
「アンタの相手は、あたしがしてやるよっ」
アルフの拳が赤い魔力光に包まれる。レンに向かって急上昇した。
「アリサさん」
シグナムと正対しつつ、リニスはアリサに、赤い宝玉を差し出した。
「レイジングハート!」
アリサの表情が、ぱっと明るくなる。
『Sorry, I very much kept him waiting. Master』
「良いわよ、それより早速だけど、行くわよ!」
新たな力を得たレイジングハートを握り締め、アリサは言う。
「レイジングハート・アクセル、Set Up!」
『O.K. Standby, Set up, Ready』
アリサの身体を、鮮やかなオレンジ色の光が包む、垂直のリング型の魔法陣が包み込む。
フレアスカートのラフな私服姿は、白いミニスカートの、活動的なデザインのバリアジ
ャケットへと替わる。
レイジングハートのコアが大きくなり、その全体に片刃の西洋剣が構成されていく。そ
して、その峰の側、グリップを外側にオフセットして、CVK-695Dユニットが装着された。
その柄を、アリサが握る。
『Master, Please order a "Cartridge load"』
「O.K. レイジングハート、Cartridge load!」
『Yes』
ドンッ
CVK-695Dのブローバック機構が作動し、数珠繋ぎに連なった2つのシリンダーの尾栓
から、2個の薬莢が排出された。
レイジングハートのコアが、眩く輝く。
「こ、これは……」
アリサが、驚愕の表情を、レイジングハートに向けた。
「なんだと……」
同様に、シグナムとシャマルも、驚きの表情を見せた。
その光には、力が漲っていた。
- 277 名前:燃え上がる炎の魔法使い 5-09/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/03(日) 17:49:13 ID:ES8MRGYg
-
『くっ、クロノ君!? クロノ君!?』
「な、なんだぃ……?」
念話越しの、素っ頓狂なエイミィの声に、しかしクロノは、力なくソファにもたれかか
っている。
行きがかりから、「翠屋試食全品制覇」なるものを敢行していたクロノは、もともと甘い
物が苦手であるにもかかわらず、バリエーション豊富な桃子のレパートリーを食い遂げる
と言う本来なら絶望的な偉業を成し遂げたところだった。
その光景に、親馬鹿兄馬鹿の士郎・恭也親子も、「彼にならなのはを任せても安心だ」と、
リビングの片隅で涙むせびながら様子を伺っていたが、それは余禄。
『大変大変、なんだけど、リニスにもアリサちゃんにも通じないんだよ!』
「!」
エイミィの言葉に、ようやくクロノも意識を引き締める。
『闇の書で、なにか動きがあったのか?』
クロノはいつもの冷静を取り繕って聞き返した。
『違う、デバイスだよ、レイジングハート!』
答えるエイミィの声は、すっかり泡を食っている。
『どういうことなんだ? 落ち着いて説明してくれ』
子供に宥めすかすように、クロノはエイミィに聞き返す。
『レイジングハートに取り付けた、カートリッジシステム、CVK-695D。あれ、とんでも
ない代物だよ!』
『とんでもない?』
まだ興奮しがちなエイミィに、クロノは素で聞き返す。
『技術部が当時の資料見つけてくれたんだけど、あれ、高圧ダブルチャンバー同時撃発式
のハイパワータイプ! 当時、あまりの高出力と制御性の悪さが問題になって、発売から3
週間でメーカー自主回収になったって代物!』
『なっ』
クロノも驚愕の表情になった。
────道理で、私的な資料がほとんど無かったはずだ。
クロノは思った。実物は恐らく、管理局で評価用に買ったものだろうが、故に放擲され
ていたのだろう。
『それで、CVK-695Dに替わる、制御しやすい出力向上策として、790系では自動装填に
なったんだって!』
『その事実、アリサや、リニスは!?』
『まだ知らないはず! でも、さっきから呼びかけてるけど、通じないんだよ!』
遠距離念話が通じない……結界が展開されている?
「まさかっ」
クロノは飛び上がり、トレーナーにジーンズと言う、日本ではありきたりの少年の衣装
の、ジーンズのポケットから、S2Uを取り出しかける。
「クロノくーん、コーヒー入ったよー」
キッチンの方から、なのはが、2つのコーヒーカップの乗ったトレイを持ってきた。
「ぐ……」
クロノは、言葉に詰まったような声を出す。
連中は、なのはや、フェイトを狙っている。だから、フェイトはアリシアとリンディと
共に行動し、なのはにはクロノが張り付いていたのだ。
守護騎士は5人。アリサが何人と相手をしているかわからないが、別働でなのはを襲っ
てくる可能性も捨てきれない。
「くそ……アリサと、リニスの……それと、ユーノのフォローに、期待するしかない……」
- 278 名前:燃え上がる炎の魔法使い 5-10/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/03(日) 17:49:54 ID:ES8MRGYg
-
ドガァッ
各々魔力を纏った、ジルベルンメタリッシュと、人間形態のアルフの拳が、正面からぶ
つかり合う。
「ちっこい割に、なかなかやるじゃないか」
「あったり前や、あたしをなんだと思うてる、シュッツリッターが1人、白銀の拳闘騎士
レンやで!?」
アルフの不敵な言葉に、レンも挑発的に答える。
「はんっ、今回初登場の奴が、何言ってやがる」
「なんや!?」
アルフの言葉に、一瞬、レンが狼狽した。
「おらぁっ!」
アルフは手に纏う魔力の出力を上げ、レンを押し切る。
「くっ」
レンは受身を取って高度を下げつつ、間合いを確保する。
「何、言うてるんや、あたしは闇の書とその主に仕えし守護騎士……」
ドクン……
「え……!?」
レンの中で、何かが、重々しく、揺れた。
『Panzerschild』
ジルベルンメタリッシュが、自動でシールドを展開する。
「おらぁっ!!」
アルフの拳が、そのシールドに叩きつけられる。バチバチと、稲妻のような放電を伴い、
凌ぎあう。
「どうしたんだい、急に戦意喪失か!?」
挑発的なアルフの声に、レンははっと我に返ると、きっ、と、アルフを睨みつけた。
「誰が! 今、ここで負けるわけにはいかへんのや! はやてちゃん、護るんや! 助けるん
や!」
「上等!」
アルフは牙を剥く様にしつつも、どこか楽しそうに、口の端を吊り上げる。
「ジルベルンメタリッシュ!」
『Ja. Patronenlast!』
ジルベルンメタリッシュがカートリッジを撃発させ、排莢した空カートリッジを空中に
放り出しながら、白銀色に輝いた。
一方、地上では、さらにそれに勝る、鮮やかなオレンジ色の輝きが、周囲を満たしてい
た。
「こ、これは……」
「カートリッジシステムと言えど、普通、こんな出力は……」
その光景に、シャマルとシグナムは、一瞬、うろたえる。
だが、シグナムは、すぐに表情を引き締め、レヴァンティンを構えなおした。
「勝てる……これなら!」
アリサは口の端を吊り上げ、シグナムに視線を向けた。
- 279 名前:燃え上がる炎の魔法使い 5-11/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/03(日) 17:51:30 ID:ES8MRGYg
- >>269-278
今回は以上です。
- 280 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 18:43:03 ID:r392/18A
- >>239
ああ、GJだね。
でもはやてさんなら怒りよりもドジン売り上げの分け前交渉に入ると思う。
- 281 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 19:07:57 ID:C1pMU5kd
- >>280
生々しいはやてだなwww
- 282 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 19:17:13 ID:SwBPC9WM
- >>280
むしろあの女はシャマル本人の恥ずかしい映像隠し撮りして裏ルートで売却しそうだ。
- 283 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 19:34:59 ID:j/8N6l5p
- >>280
むしろ同人誌の内容そのままでシャマル本人を売りそうだ。
- 284 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 19:43:15 ID:6UPxDjJ3
- >279
乙。現時点で魔法少女が1.5倍ですか。
- 285 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 20:29:24 ID:Gu8NZjV8
- >>284の、〜倍というのだけ見てウォーズマンを思い出したのは自分だけ
- 286 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 20:40:58 ID:u1a6Bjz0
- な「ストライクフレームでさらに2倍!突撃力も合わせて8倍なの!」
- 287 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 20:43:24 ID:+2iYXHRJ
- そこに10倍の回転を加えれば……!
- 288 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 20:45:09 ID:A22ldbvK
- >>279
乙です。邂逅が病院ではなく図書館ですか!?展開が本編と微妙に違うところが
いいですね。
- 289 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 20:46:26 ID:SwBPC9WM
- >>286-287
ゆで力学自重w
- 290 名前:246:2008/02/03(日) 21:22:59 ID:7uN1ziWV
- 前回感想レスありがとうでした。246です。
次回予告ネタはすいません。調子乗りすぎました。
続き投下します。
注意
・鬱展開あり
・なのはさんとフェイトさんが病んでいます。
・若干エロあり
・現在好評のB・A氏のと似てるかも
では。
- 291 名前:君に届けたいただ一つの想い:2008/02/03(日) 21:23:47 ID:7uN1ziWV
- 「ちっ、こうも雨が続くと滅入ってる気が余計滅入るな」
雨天を見上げ、ぼやいたヴィータがコンソールを操作する。その視線の先、宙に固定されたモニターに表示
されるのは、ミッドチルダを中心に広がるこの次元世界の簡略図だ。
管理外世界を含めた、数え切れぬ程の世界の縮図を睨み、その内の一部を赤く染めた。そこはたった今まで
ヴィータがいた世界の周辺。逃走中の犯罪者がいなかったところ。
「ヴィータ隊長―!」
時刻を確認すれば、丁度集合時刻を示している。耳慣れなかった呼び方も、随分彼女の耳に馴染んでいた。
ちらり、と声の方向を見ればフォワード陣四人の到着だ。
その表情を見てため息を吐く。彼女達の向かった世界にもいなかったのだろう。そもそも、いたらここには
戻ってこないだろうから確認する必要は無い。ヴィータが新たにコンソールを操作し、赤の侵略を拡大させた。
「ヴィータ隊長、やっぱりこんなんじゃ見つからないですよ……もっと人手を増やさないと」
「ザフィーラ達も探してるんだ、無茶言うな。面倒くさいならやめろ。あたし一人で探すからな」
「や、止めるわけ無いじゃないですかっ! わたしはなのはさんを助けたいんです! わたしだって一人でも
探しますよ」
助ける。そんな言葉を今まで忘れていた事にヴィータが閉口する。この蒼髪の馬鹿は未だ瞳の力を衰えさせ
ない。それはヴィータからすれば余りにも真っ直ぐで、あまりにも羨ましいものだった。
こいつ等はその先を知らないから、そうやって今も笑みを浮かべられるのだろう、と目を閉じる。だがそれも
束の間の事。すぐにモニターをスバル達に展開し、そこを指差した。
「次はここだ。第67管理外世界。魔法文化なし。現地惑星名称無し。ていうか、あたしは知らね」
魔法文化なし。つまりは、魔法の使用は極力控えること。目立つスバルのウイングロードや、フリードリヒ
の飛行は行えない。
「割とでかいからな、あたしもいく。何度も言ってるが二人との戦闘……特にテスタロッサとの戦闘は可能な
限り避ける事。できるならあたしが来るまで時間を稼げ。あいつが本気だったら連絡だけ入れて全力で逃げろ」
ヴィータの耳をか細い呼び声が打つ。彼女に向けてじゃない。フェイトに向けての呼び声だ。届かないと分
かりながら、それでも諦めることの出来ない臆病な声。
「無理してついてこなくていいんだぞ? こういう状況なら、お前が行かなくても誰も文句なんか言わない」
親族への医療行為と同様だ。情で判断力が鈍る相手が犯罪者となった場合の措置。個人の精神的負担を取り
除き、部隊が危険に晒される可能性を可能な限り取り除く為のものだ。
だがその少女は首を縦にしない。俯き拳を握り締め、それでもはっきりとした意思の下首を横に振る。
「私は……何も出来なかったから……」
だから、少しでも早く謝りたい。その為に今自分はここにいる。
そうキャロは、開いた片方の手でエリオのバリアジャケットのマントを掴み訥弁した。
――――ならば、もう言う事はない。それが自分の意思ならば、覚悟を決めた言葉ならば何も言う必要は無い。
「行くぞ」
ヴィータが転送魔法を起動させる。瞬く間に地に広がった紅の魔法陣と同色の輝きは、スバル達を飲み込み
予め指定した座標への扉となった。
「キャロ……本当に大丈夫?」
「うん……エリオ君が一緒なら大丈夫だよ」
光りに飲み込まれながら、二人は固く繋いだ手を離さない。
少女は後悔しない為。少年は、今も震えを隠している少女を護る為。
「キャロ大丈夫。僕はずっと傍にいるから」
- 292 名前:君に届けたいただ一つの想い:2008/02/03(日) 21:24:31 ID:7uN1ziWV
- そして、もう二度と彼女の笑顔を涙で汚さない為。
その騎士は、握った槍を彼女に向けることになる可能性を覚悟した。
魔法少女リリカルなのはStrikerS
―君に届けたいただ一つの想い―
(10)
幸せというのは初めから生産数が決まっている。どれだけ幸福を願ったとしても、その数の制限は越えられ
ない。故に幸せを持たない者がそれを手に入れるためには、沢山所持している者から恵まれるか奪い取るしか
術は無い。
それはこの二人が手にしたものも同様だ。仲間達の幸せを奪い取りようやく手に入れたモノ。だが、それを
永遠に持つことは叶わない。
このシステムは良く出来ている。個々に期限が定められ、それを長く持ちすぎれば劣化する。それだけでは
満足が出来なくなってしまう。いつの間にか小さくなり、手から零れ落ちてしまうのだ。
だから出来ることは、両手を硬く握ること。零さぬよう、指をしっかりと閉じること。その為の覚悟を決める
こと。
「――――フェイトちゃん? どうしたの……顔、怖いよ?」
「えっ、あ、あぁ……ごめんねなのは。ちょっと考え事」
目の前にある不安に潤んでいる瞳。それに先ほどまで考えていた事を中断させ、フェイトが愛しい人の頭に
手を添えた。
謝罪は言葉ではなく態度で。重ね合わせた唇の温かさに思考を停滞させながら、フェイトがなのはの唇を舌で
割る。
抵抗せず彼女の舌の感触に酔うなのはは、フェイトから送られる唾液を自分のものと混ぜ合わせ、くちゅく
ちゅという水音に鼓膜を犯しながら、自分と彼女の唾液を恍惚の表情で胃に収める。
だが、それだけには留まらない。頬を染め、なのはがフェイトの太ももを脚で挟み腰を前後させる。フェイ
トは彼女の中心の茂みの感触を楽しみながら、背中を隠す栗色の髪を指で梳き自分もとなのはに身体を擦り付
ける。
「ね、ねぇ、ご飯どうしようか? フェイトちゃん、お腹空いた?」
「いらない。それより、なのはとこうしてたいな」
「う、うん。フェイトちゃんもっと私で気持ちよくなって」
そして、二人はどちらからとも無く唇を重ね舌を絡めあった。
既に衣服の類は身に着けていない。ただ時間を忘れて求め合い、限界と共に抱き合いながら眠りにつく。
目覚めキスをして、もう一度最愛の人に奉仕をしてシャワーを浴びる。忘れた頃に空腹を満たす為なのはが
作った料理を平らげ、後はまた限界が来るまで抱き合うだけ。
依然とは何もかもが違ってしまった。投げかける言葉は互いへの気遣いではなく、今日はどちらが上になる
かなんてどうでも良いこと。囁く言葉は友愛ではなく、恋人への甘い毒。
だがそれが、やっとことで手に入れた、求めて止まなかった幸福だ。もうその瞳は愛すると決めた、一緒に
いると決めたその人しか見ていない。他の余分なものなど映らない。いや、目の前の人意外映る必要が無い。
見詰め合う瞳にはもう、以前の輝きは消えていた。
それが今の彼女達。そして、今の日常だ。
今日も同じ。なのはが先に限界に達し、気絶するようにフェイトの胸に頭を預ける。フェイトもなのはの頭を
抱きながら瞼を閉じ、次に開けられた頃には正午を過ぎた時刻だった事に苦笑して。
それからもう一度身体を重ね、身体を洗い合い、なのはの食事に舌鼓を打つ。そして、再びベッドで愛を囁き
互いの身体を汚していく。
それだけの繰り返しだ。食料はこの世界に来たときに大量に買い込んだ。だからこの部屋を出る事はありえ
ない。
閉じた世界。二人だけの世界だ。前ならそれを寂しいと思ったのかもしれない。自分達の間にいる、あの小
さな少女の事を考えたかもしれない。フェイトが護ろうとしていたあの二人の事を考えたかもしれない。だが、
そんなものもういらない。必要が無い。考えもしない。
今はそれが、壊れてしまうくらいに幸せだった。
だが、それが永遠に続かない事をフェイトは知っている。故にそれを口にするのは必然の事。なのはと食事を
していたある日の事だ。
- 293 名前:君に届けたいただ一つの想い:2008/02/03(日) 21:25:15 ID:7uN1ziWV
- 「引越し?」
「うん。あんまり一箇所に留まるのは良くないんだ。だから、そろそろ別の世界に移ったほうがいいかなって。
今日は丁度天気もいいし」
「うん、フェイトちゃんがそう言うなら」
なのははフェイトの言葉には逆らわない。逆らうと言う事すら忘れているのだろう。二つ返事で了承し、食
べかけのフェイトの食事を食べ間接キスに喜んでいた。
それに微笑みながらフェイトがこれからの事を考える。まずは次の世界をどこにするか。後は食料の調達だ。
なのはの体調を考えれば、あまり文明の進んでいない世界へは入れない。
「あ、あのねフェイトちゃん……お願いがあるんだ……」
「なぁに? なのはのお願いなら何でも聞くよ」
若干声を震わせながらなのはがそう口にしたのは食事を終え、エプロンを身に着けたなのはが食器を洗って
いる時だ。
なのはからの頼みごとなどここ最近じゃありえなかった事。フェイトが意気揚々とテーブルから身を乗り出し
なのはのお願いを待つ。
何でも言ってくれれば良い。自分はなのはの為に在り続けるのだから、遠慮する事などありはしないのだ。
「で、デートがしたい……フェイトちゃんと、デートしたい」
「うん、分かった」
「ほ、ほんとっ?」
「もちろん。なのはのお願いだからね」
きっと最後にこの世界を見てみたいと思ったのだろう。
若干興奮した様子のなのはにフェイトが頷いた。大急ぎで服を探し、ぐちゃぐちゃのシャツを見つけ慌てて
洗濯しホテルをチャックアウトした。
瞬間零れたのはなのはの感嘆。綺麗な町並みが目の前に広がっている。フェイト以外の邪魔なものが歩いて
いるのが気になるが、フェイトと歩く事を考えれば我慢できた。
「とりあえずどうしようか? お散歩がいいかな?」
「うん!」
「よし、行こう」
歩き出した瞬間なのはが腕を絡ませ、フェイトも応えてその手を握る。身長の高いフェイトが、なのはの歩
幅に合わせ気持ちゆっくりと。
なのはは風景を見ずに、フェイトの顔だけを見上げている。なのはが転ばないように気を配りながら、フェ
イトが歩きそこを見つけた。
どこにでもありそうなソフトクリーム屋だ。
金はたんまりとある。なのはの手持ち。フェイトがミッドを去る際下ろした額を合わせれば、何もせずとも
生活できる額だ。
元々無趣味な二人だ。フェイトがなのはの為にと貯金をはたいたスポーツカーも、JS事件で大破している。
その保険を合わせれば、ここ十年で稼いだ額は一般家庭では貯蓄する事も叶わないほどの額だ。
それだけの仕事をした。それだけの夢を叶えた。今思えば、この為に働いていたのではないかという錯覚さえ
生まれてしまう。
「なのは、アイス食べる?」
「いいの?」
「うん、買っておいで」
なのはが駆けしばし思案する様子で顎に手を当てている。それを見ながらフェイトは近くのベンチに腰を落
ち着かせ、戻ってきたなのはを出迎えた。
なのはが持っているのはチョコとバニラをあわせた物。白と黒。それに、自分となのはみたいだとフェイト
が笑う。
ただ、そのフェイトの首が傾いでいる。なのはが持っているソフトクリーム。その数が一つだけだった事に
疑問を覚えた。
「一緒に食べたいなぁ、って……駄目かな?」
- 294 名前:君に届けたいただ一つの想い:2008/02/03(日) 21:26:23 ID:7uN1ziWV
- 呟き、なのはが頬を染める。それを見ながらフェイトがしばし熟考し、思い当たったことにポンと手を叩いて
嘆息した。
それを拒否を取ったのか、なのはが取り繕うように何事かを捲くし立てている。それを無視し、有無を言わ
せずなのはの持っているソフトクリームを奪い取り、舌で掬った。
口内に甘いチョコの味が広がっていく。
「うん、美味しい。はいなのは」
「う、うん……」
なのはが赤い舌を少しだし、バニラの部分を掬い顔を綻ばせる。すぐにフェイトがチョコの部分を掬い、な
のはの後頭部に手を添えた。
少しして、口内でチョコとバニラが混ざり合った。
耳をバニラとチョコが混ざり合う音だけが支配している。彼女達を見た通行人が慌てて走り去る中、そんな
事は気にせずに、なのはとフェイトが互いの口に唾液混じりのそれを流し込む。
今度は唇を吸い合い、混ぜ合わせたものを飲み込んで。
酸素を求め、ぷはぁ、と唇を離せば光る銀の糸が重力に負け消えていった。
「おいしい……なのはも、もっと欲しいよね?」
「うん……フェイトちゃんの、おいしいの……」
アイスを頬張ったフェイトがベンチに膝をついてなのはの顔を両手で挟み、上から流し込むようにキスをす
る。それを抵抗せず受けながら、なのはが時折ピクンと小さく身体を震わせていた。
上を向いている状態だど、喉の動きが良く分かる。大きく喉を動かして自分の唾液混じりのアイスを味わっ
ている様に、普段以上の興奮を覚えてしまうのは仕方ないこと。
フェイトの太ももが絶えず擦りあわされていた。なのはも同様に腰を浮かせ、潤んだ瞳でフェイトを見上げて
いる。
いつの間にか口の中が、なのはの味だけになっていた。フェイトがなのはの持っているアイスを指で掬い、
その指をなのはの口へ。
「はぁっ、フェイトちゃんの指……」
頬を真っ赤に染め、なのはの荒くなった息がフェイトの指を僅かに動かす。なのはの口から溢れた唾液が、
形の良い顎を伝い、服に染みを作っていく。
野次馬が遠巻きに二人を見ていた。その数も少しずつ増えている。それを気にも留めず、フェイトとなのはは
ただ目の前に人だけを瞳に収めた。
どれだけ唇を重ねても飽きはしない。寧ろ、もっと欲しいと唇が離れてはくれない。
「ひあっ……!?」
なのはの身体が一際大きく揺れた。
いつの間にか持っていたアイスが溶け、なのはに零れてしまったからだろう。だが気付いたときには既に遅く、
なのはの胸元に大きく染みを作ってしまっている。
フェイトがそれに視線を落とし、苦笑した。長い間重ねていた唇を離し、なのはの胸元へ。乾かないうちにと、
服についたアイスに口付け、唇を舐めた。
「なのは、移動しようか?」
続きはここではできない。自分以外になのはの裸など見せられない。
今ので腰が抜けてしまったのだろう。動けないなのはの抱え、フェイトが移動する。場所は人気の無い路地
裏だ。先ほどまで群がっていた群衆も、さすがにそれ以上を見る事を躊躇ったのか一様に背を向け逃げていく。
それを横目に見ながら、フェイトがなのはの服に口をつけた。なのはの白いワンピースは、既にバニラと
チョコの溶けたもので酷い有様だ。啄ばむようにその染みを吸いながら、背中のチャックをゆっくりと下げて
いく。
なのははフェイトにされるがままだ。今日は珍しくフェイトが自分から積極的に動いている。きっと、いつ
もと違うことで興奮してしまったのだろう。そしてそれはなのはも同様。
フェイトがして欲しいなら喜んでフェイトの服を脱がし、その身体に刻印する。
フェイトがしたいなら笑ってフェイトの愛を受け取ろう。フェイトにされるがままでいい、自分は彼女の人
形だから。
- 295 名前:君に届けたいただ一つの想い:2008/02/03(日) 21:27:07 ID:7uN1ziWV
- フェイトがしたいときにする。フェイトが話したいときに話す。フェイトが空腹を訴えたときにご飯を作る。
一緒にいて欲しいときに傍にいる。それだけで十分幸せだ。
前のフェイトがいない寂しさに比べれば、フェイトの人形でいるだけで幸せだから。
「ん、ぁ、ふぇいと、ちゃん……」
「なのは、気持ち良い?」
なのはの上半身が露になり、すぐにブラジャーをフェイトに奪われる。
既に先端は、興奮に硬く尖っている。フェイトが口をつけた瞬間、なのはが跳ねるように震え、フェイトの
頭を抱きしめた。
なのはのロングスカートを捲れば、大量の愛液がパンティに染みをつくり彼女の茂みをうっすらと浮かばせ
ている。
なのはが悦んでいる。ならば、自分はもっともっとなのはを気持ちよくしなければいけない。この身は、な
のはの、なのはの為だけに存在する道具。なのはが少しでも幸せになるための道具だから。
「あっ、き、きもちいい……すごい……んくっ……んん……!」
なのはのパンティを下ろし、フェイトが濡れたそこへと指を進入させる。くちゅり、と耳に届いた自分の蜜に、
なのはが更に頬を赤く染め、羞恥に耐えるように唇を噛む。
その唇を、フェイトの舌が割った。右手は崩れ落ちそうになるなのはを支え、左手は絶えずなのはの膣のか
き混ぜている。舌はなのはの舌に絡みつき、先ほどの続きを始めていた。
「なのは、どこして欲しい? 何でも言って良いから」
「そ、そんなこと、いわれてもっ……ひゃ、にも、ひゃんがえりゃれない、よぉ……」
呂律が回らなくなる。頭が真っ白になり解けていく。何かが壊れてしまうような恐怖がある。
それは、なのはにとって快楽にしか繋がらない。フェイトが自分を壊してしまう。それが、たまらなく気持
ちがいい。
出来ることならこのまま壊れてしまいたいと思うほど、もう心は蝕まれていて。
もう、フェイトさえいれば、死んでしまっても良いと思ってしまう。
「じゃあ、なのはが一番気持ちがいいところはどこ? 教えてくれないかな?」
「あっ、くぅっ……ぜ、ぜんぶ! ぜんぶきもちいのっ!」
じゃあ、全て愛しつくしてあげよう。
フェイトがなのはの尻を掴み、開いた真ん中へ指を埋没させていく。なのはの肛門は抵抗せずフェイトの指を
受け入れ、すぐさま腸液を滲ませた。
「なのはのお尻、凄い締め付けてるよ? 気持ち良いのかな?」
「うん! おしり、おしりフェイトちゃんのゆびで……ひあぁぁっ……!」
叫ぶなのはの唇を塞ぎ、更に指を肛門へと埋めていく。その締め付けが心地よい。なのはが本当に気持ちよ
くなってくれるていると、ちゃんと感じることが出来るから。
胸を揉み、先端に歯を立て、次は耳を甘噛みして。その全てになのはが感じ、可愛らしい嬌声を聞かせてく
れた。
もっと気持ちよくしてあげよう。何もかも、嫌なことなんて忘れてしまうくらい愛してあげよう。自分はな
のはの為にいると教えてあげよう。
そう指を動かして。
――――視界の端、見覚えのある制服にフェイトが目を見開いた。
「ふぇいとちゃん……つかれちゃったの……? なら、今度はわたしが……」
「なのは、絶対ここから動いちゃ駄目だからね」
「えっ……な、何……!?」
先ほどの表情を一変させ、フェイトがなのはから身体を離した。既に達する一歩手前だったなのはは立つこ
とが出来ず、半裸のまま地面に腰を下ろす。フェイトちゃん、と呼びかけても彼女は応えない。ただどこかを
睨み、自分を抱きしめていた体を強張らせていた。
それで分かった。この幸せな時間が終わってしまったのだ。
- 296 名前:君に届けたいただ一つの想い:2008/02/03(日) 21:27:52 ID:7uN1ziWV
- 「ふぇ、フェイトちゃん……」
「大丈夫。なのははここに隠れてれば良いから」
「うん……」
「いい子だ」
なのはの頭を撫で、フェイトが駆け出した。
誓いはこの胸の中にある。誰が相手だろうが構わない。なのはに近づこうとするならば、この剣で切り払う。
血染めのリボンで結んだ金髪が揺れていた。それをじっと見つめ、なのはが震える身体を抱きしめた。
* * *
「まさか、こんなに早く見つかるとは思わなかったなぁ」
見上げる蒼色の瞳を見下ろし、真紅の瞳が笑みと共に細まった。
蒼の視線は、どこまでも真っ直ぐだ。それで、彼女は迷いが無いことが理解できた。そしてそれは見下ろ
す彼女も同じこと。
「ヴィ、ヴィータ隊長……あの――――」
「やめなさいスバル」
その事が分かったのはフェイトを見上げるヴィータだけじゃない。ヴィータの後ろにいたスバルが一歩を踏
み出して、それをティアナの手が遮った。
フェイトがその一連のやり取りを詰まらなそうに見つめ、ややあってから嘆息する。
「へぇ、ヴィータ隊長になったんだ」
「あぁ、なのはがいないからな。ちなみにライトニングはスターズに吸収だ。シグナムはまだ眠ってるしな」
なのはとフェイト。そして、シグナム。その三人がいなくなったことで機動六課の戦力は激減した。だが、
それでも十分すぎるだろう。
なのはは未だ機動六課に在籍となっている。重いリミッターはまだ現存だ。フェイトは違うが、五人いれば
負けることなどあるはずも無い。
しかしそれが分かっているのか分かっていないのか。フェイトは笑みを浮かべているだけ。
何を考えているのか分からない。自分達と対等に戦えると思っているのか。賭けをしているのか、それとも
勝機があるのか。どれでもなくて、もうそれすら判断できていないのか。
考えても分かるはずも無く、そもそも考えることは苦手だった。
故にヴィータはそれを口にする。
「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。高町なのはの共犯として逮捕する。抵抗しなければできるだけ優し
くしてやる。抵抗するならぶっ潰す」
なんとも彼女らしい。初めから殴られることは決まっているのかと聞きたくなった。
何とかそれを堪え、フェイトが笑いそうになるのを唇を噛むことで堪えた。それが、苦渋の表情に見えたの
だろう。
先ほどまでずっと見つめるだけ。エリオの手を握っているだけだったキャロが口を開いた。
「あ、あの……フェイトさん……」
「なぁに、キャロ? 元気そうだね、心配してたんだよ?」
キャロの表情が僅かに引きつった。気付いたのはフェイト以外の全員。エリオは、キャロと話すフェイトを
見ながら、腕にはめたストラーダを掴んでいた。
「ちゃ、ちゃんとご飯食べてましたか? 少し、やせてます……」
「食べてるよ。なのはがね、私の為に作ってくれてるんだ」
「そう、なんですか……良かったです」
- 297 名前:君に届けたいただ一つの想い:2008/02/03(日) 21:28:36 ID:7uN1ziWV
- 暖かかった笑み。優しくて、見ているだけで落ち着けた笑みだ。この笑顔の力になりたい。そう、純粋に思っ
ていた。それが、全部偽者に変わってしまっていた。
キャロが何を言っても、フェイトはその偽者の笑みしか与えない。キャロが目を瞑り、涙を堪えていると分
かっているだろうに、フェイトは何もしない。
何を期待していたのか。フェイトが自分を見て、それからだ。こんな笑みじゃない。本物の笑みでもない。
「あの、なのはさんはどこにいらっしゃるんですか?」
「キャロには関係ないんじゃないかな? なんでそんな事聞くの? なのはを……捕まえに来たの?」
悲しんでくれることを期待していた。期待してしまっていた。自分を見て、表情を曇らせ、俯いて欲しかっ
た。何を言っても、ごめんと言うしかできなくて、それでもなのはを懸命に護ろうとする彼女を期待した。
「はい。なのはさんとフェイトさんを止めに来ました」
結局、そんな卑しい期待は粉みじんに砕かれた。
フェイトは自分を見ていない。なのはの事しか考えていない。今もそうだ。目を僅かに見開き、既にバル
ディッシュを起動させていた。
フェイトはキャロが見上げるその顔に真っ直ぐにバルディッシュを突きつけ、笑顔を捨て去り苛立った様子
でキャロを睨んでいる。
それを周囲の人間が遠巻きに見つめていた。当たり前だろう。魔法文化もないこの世界で、バルディッシュ
は異質なものに他ならない。その事にヴィータが叫ぶ。
だが、フェイトは止まらない。
「キャロから離れてください」
そして、エリオも止まらなかった。
起動させたストラーダは、既にフェイトを真っ直ぐに捕らえ離しはしない。
「エリオもか……じゃあ、しょうがないよね」
キャロを開放したフェイトが、バルディッシュを一閃する。フェイトを中心に凄まじい魔力の渦が発生し、
エリオがキャロを護りながら目を細める。
そして、バリアジャケットを纏ったフェイトに、身体が震えるのを堪えていた。
「なのはを捕まえに来たんなら容赦しない」
フェイトのバリアジャケットが、その二つに結った金の髪が揺れている。ゆっくりと上昇し、ザンバーを強
く握り締めて。
「……勝てると思ってんのか?」
「どうだろうね。でも、なのはを護る為だから」
フェイトが前髪で表情を隠し、小さく呟く。
それと同時、紅の騎士が跳んでいた。
「なさけねぇな! 散々逃げといて……自分の責任くらいちゃんと取りやがれ!」
必殺の一撃だ。頭上に掲げたアイゼンは、既にフェイトへと振り下ろされている。その暴威はヴィータの知
る、最硬の砲撃魔道師を容易に突破できる一撃だ。フェイトの防御など紙のようなものだろう。
- 298 名前:君に届けたいただ一つの想い:2008/02/03(日) 21:29:20 ID:7uN1ziWV
- 「取ってるよ。だから私はなのはを護る。私が傷つけた分じゃない、この先何が起きても護り抜く。ずっと傍に
在り続ける」
だが、これで終わるはずは無い。この最速の魔道師はこんな一撃では堕ちはしない。
もう、ヴィータの前からフェイトの姿は消えていた。
「くそっ、アイゼン……!」
ヴィータの振り下ろした一撃が空を切る。だがその勢いに任せ、すぐさま横への一撃を喰らわせようとし
て、それを見た。
「お、おい……ふざけんなよ……」
場所は、どこにでもある公園だ。今もなお、子供達が走り回っている場所。
「避難、早くできるといいね。はやて達に急げって言ったほうがいいんじゃないかな?」
フェイトは奇妙な笑みを張り付かせている。その血走った目が本気である事を証明していた。
「ヴィータ、私はなのはに誓ったんだ。なのはを護れる盾になる。なのはを傷つける誰かを傷つけらる剣にな
るって」
そして、その為に何でもすると決めた。
「ヴィータ、後エリオ達も。これ以上私となのはの時間奪うなら、ここどうなっちゃうか分かるよね?」
本当に何もかも変わっていた。
二人の関係も。交わす言葉も。
「――――はぁっ、んんっ……ふぇいと、ちゃん……かっこいいね……んくぅっ……!」
二人の誓いすらも変わってしまっていて。
それを見ながら、彼女は歓喜に震えていた。
「ふぇいとちゃんがぁっ、護ってくれてる……フェイトちゃんが、わたしのことまもってる……」
かき回している指は既にドロドロで。
けれど、我慢なんて出来るはずも無くて。
彼女は、自分を護ってくれている存在を感じながら、濡れそぼったそこへ指を埋めていた。
- 299 名前:246:2008/02/03(日) 21:30:06 ID:7uN1ziWV
- 以上です。ありがとうございました。
病んでるっていうか、バカップルみたいになっちゃいました……orz
次回から戦闘です。
だいたい、今のフェイトさん≧ステエキ。フェイトさん=ヴィータかなぁ、と。
ちなみに、幼女ヴィヴィオ>なのはさんです。
ではまた次回。
- 300 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 21:57:25 ID:UXdCzUWc
- GJ! ヤンデレなのフェイはいいものだ
- 301 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 22:02:51 ID:ggmVKxaa
- >>299
まってました! GJ!
毎度、鬱具合が素晴らしいです。
病んでるバカップルとか最高すぎるw
では、次回を楽しみに待ってますね。
この調子でがんばってください!
- 302 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 22:18:18 ID:ZfTX9EAE
- GJGJGJ!!!
戦闘キター!
というかダブルヤンデレキター!!
やっぱりこれが最後のデートで、後は落ちていくだけなのですかね・・・?
なのはさんとフェイトさんの閉鎖的な愛は読んでいてぞくぞくしました。
次回めちゃくちゃ楽しみにしています。
- 303 名前:B・A:2008/02/03(日) 22:20:28 ID:3Al/WOTi
- >>299
GJです。今のなのはさん凄くツボだ。というかヴィヴィオより弱いってなんて素敵な19歳。
よし、こっちも時間の都合がつき次第続きを投下しよう。
では、後ほど。
- 304 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 22:34:38 ID:2OJ3tXdd
- >>299
GJ!
もうだめだ、この二人。
いっその事、ルールーよろしく二人まとめて無人世界に隔離すればいいんじゃない?
誰も邪魔をしない、二人だけの世界で(二人だけ)ハッピーエンド。
- 305 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 22:59:06 ID:gX3jl9Kd
- >>299
すげえな、読むほどに次を読むのが怖くなるけど、読まずにいられない。
読み手をも病ませるSSだw
- 306 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 23:04:31 ID:l2IJIVaL
- >>299
キタ――――――!!!
GJ!!!!
フェイト格好いいなwww病んでるけどwww
都築待ってます!!!!
- 307 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 23:23:38 ID:gX3jl9Kd
- あー、今気がついたけど、このフェイトは無印時代のフェイトに通じたものがあるかも知れない。
- 308 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 23:28:19 ID:hPRclWZG
- >>299
GJ!
今回のヴィータたちを凌げたら、是非俺が住んでる世界に来てください。そして散歩しまくってください、フェイトさん!
しかし凌げるか問題だろ、これ。テスタロッサ関連の電撃魔法使う輩は管理局から逃げるのがよく似合う事よく似合う事。
- 309 名前:B・A:2008/02/03(日) 23:36:06 ID:3Al/WOTi
- >>308
原作のプレシアに始まって246氏のフェイト、僕のところのエリオ、ちょっと前にはテスタロッサパパンとかいましたね。
保管庫穿ればアリシアも出てくるかも。
さて、ぼちぼち投下しておkですか?
- 310 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 23:39:43 ID:SwBPC9WM
- どうぞー…ってか筆早ぇなぁ皆…
- 311 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 23:40:35 ID:hPRclWZG
- かかってこいやああああ!!
本当、上手い、早い、(読み)易いよなぁ。
- 312 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/03(日) 23:44:31 ID:XKoQIMRW
- 投下、早く、俺、読みたい、SS!!!
- 313 名前:B・A:2008/02/03(日) 23:46:30 ID:3Al/WOTi
- ぼちぼちネタ探ししないと新しいお話書けないですけどね。非エロかエロか、エロにしたって純愛か凌辱か。
個人的にヴァイス主役で切ない系とかやってみたいですけどねぇ。
注意事項
・エリオ×ルーテシア
・非エロ
・本編改編。いわゆるIFというやつです。
・強引な展開や独自の解釈、勝手な捏造が多々含まれます(今回、特にこれが多いです)。
- 314 名前:Ritter von Lutecia 第8話@:2008/02/03(日) 23:48:28 ID:3Al/WOTi
- 背筋を冷たい汗が伝う。
いつも軽々しく振り回しているストラーダが今日はとても重い。
本能が告げる。
彼女は危険だ。
スバルたちとは格が違う。
今からでも間に合う、全力で逃げろと。
だが、エリオは降りかかる重圧を押しのけ、一歩前に踏み出す。
例え相手が誰であろうと、邪魔立てするなら容赦はしない。自分の思いを貫くためには、目の前の人を倒すしかない。
「一つだけ・・・・・昔話をさせてもらうぞ」
「あまり・・・時間がありません」
「あの召喚師の娘のことか・・・・大丈夫だ。ヴァイスには10分待つように言ってある」
「ルーと・・・会ったんですか?」
「私のもとに彼女の召喚蟲がやってきて、彼女のもとへ案内してくれたのだ。そしてつい先ほど、私の権限でもって逮捕・拘束した。
お前のことも捕まえねばならぬのでな、護送を請け負ってくれたヴァイスには10分待つように命じておいた」
「そうですか」
なら、腹は決まった。
この人はルーテシアを傷つける敵だ。
「さて、昔話だがな・・・・・」
「ストラーダ」
『Düsenform』
ストラーダをデューゼンフォルムに変形させ、構える。
「聞く気は・・・・ありません。どいてください」
「聞かせるさ。私の剣でな・・・・・」
- 315 名前:Ritter von Lutecia 第8話A:2008/02/03(日) 23:49:31 ID:3Al/WOTi
- 嵐の前の静けさというものがある。
大きな嵐がくる前は、無風に近い静かな時間があるというやつだ。なら、差し詰め今がそれだ。
「本当に、これで良かったのか?」
荷台で拘束されているルーテシアに、ヴァイスは話しかける。
「・・・・いいの」
僅かに漏れた言葉は悲しみで満ちていた。
何が良いものか。端から見ていても無理しているのがわかる。
居たたまれなくなったヴァイスは、そのまま運転シートに体を預けた。
彼にもあの娘と同じくらいの年ごろの妹がいる。彼女には六課隊舎壊滅の際に手痛い目にあわされたが、
できることなら何とかしてやりたかった。だが、エリオやこの娘やシグナムのような決意もない自分には、
できることなど何もなかった。
(ままならねぇな・・・俺も・・・姐さんも・・・・)
- 316 名前:Ritter von Lutecia 第8話B:2008/02/03(日) 23:51:18 ID:3Al/WOTi
- 放たれたレヴァンティンの斬撃をストラーダで受け止める。
態勢が崩れそうになるのはバーニアを噴かすことで強引に押さえ込んだ。
シグナムの一撃はスバルのそれとは一線を画している。
重い、速いの次元ではない。ただ剣を振るうという動作に際限なく殺意と闘志が込められ、
それを糧にしているかのような獰猛な斬撃が襲いかかってくるのだ。
倒すためでなく、殺すために剣を振るっている。
もちろん、非殺傷設定は解除されていない。これは覚悟の問題だ。
殺してでも止めるという覚悟が、シグナムの剣には込められていた。
「昔、私もお前のように1人の人を守ろうとした!」
左右から繰り出される連撃を加速魔法でかわし、背面からストラーダを振るう。
まるで読んでいたかのようにレヴァンティンの刀身がそれを受け止めた。
「その人のために多くの者を傷つけた。その人のためと言い訳して他の全てを蔑ろにした」
浮いた態勢で袈裟切りが放たれるが、ストラーダの穂先でそれを受け止める。
だが、鍔迫り合いが不利と悟ったエリオはバーニアで強引に弾き返すと大きく後退した。
「罰せられても良いと思っていた。騎士としての誇りを失おうと、その人を守ろうとした。
その果てに待っていたのは・・・・・守りたかった人の涙だ!」
『Sturmwellen』
『Luftmesser』
相殺しきれなかった疾風の刃がエリオの首筋を掠める。
互いに手の内は知り尽くしている。それ故に、エリオの攻撃はシグナムまで届かない。2
人の間には、どうやっても埋め難い差があった。
「その人は自分ために誰かが傷つくことを良しとしなかった! 戦いの中で私や仲間が傷つき、倒れる様にその人は絶望し、
涙した! エリオ、お前が・・・お前が守りたいと願ったあの少女は・・・・!」
「黙れぇぇぇっ!!」
この戦いで、初めてエリオは言葉を発した。
心からの叫びだった。
- 317 名前:Ritter von Lutecia 第8話C:2008/02/03(日) 23:52:58 ID:3Al/WOTi
- 「僕は・・・僕は・・・・ルーを守るって・・・・誓ったんです」
「そのために、自分はどうなっても良いと言うのか?」
「・・・・そんな矛盾、とっくの昔に気づいています」
守るために傷つくことが、ルーテシアを傷つけてしまう。
心を持たず、一人ぼっちの恐怖に震えていた彼女にエリオは手を差し伸べた。君は一人ではないことを気づかせた。
心を手に入れ、一人ぼっちでなくなった彼女は、今度はそれを失うことに恐怖した。
なんてジレンマ。
彼女の心を救ったことで、今度は彼女に今まで以上の苦しみを与えてしまった。
「それでも・・・・これしかわからないんです。こんなことしか、僕にはできないんです・・・・・」
血を吐くような言葉は、間違いなく本心だった。
止めて欲しいと願ったこともある。
罰して欲しいと願ったこともある。
だが、湧き上がる感情がそれを否定し、エリオは出口の見えない闇の中を進むしかなかった。
せめて、その先にルーテシアの幸せがあることを信じて。
「否定はせん。その気持ちに間違いはない。その願いは美しく尊いものだ。
残酷なのは現実で、世界はいつもこんなはずではなかったことばかりだ」
レヴァンティンの柄からカートリッジが排莢される。
構えると同時に。レヴァンティンの刀身が炎で包まれた。
「ならばこそ、意地を見せてみろ・・・・その世界すら敵に回す覚悟が、貴様にはあるか!」
ここにきて、やっとエリオはシグナムの真意を察することができた。
彼女の目的は、自分の捕縛ではない。
エリオの覚悟を問い質し、真っ向から受け止めるために剣を振るっているのだ。
例え絶望しようとも前を向く覚悟があるかと。
全てに裏切られても立ち上がる覚悟はあるかと。
- 318 名前:Ritter von Lutecia 第8話D:2008/02/03(日) 23:54:23 ID:3Al/WOTi
- 「あります!」
彼女の思いに応えるために、カートリッジを炸裂させる。
ストラーダを通じ、温かな魔力が体の中に流れ込む。まるで母親に抱かれているような安心感。
万軍の援護を受けたかのような心強さ。この感覚は・・・・・。
(そうだ、ルーの魔力だ)
離れていても、まだ繋がっている。
ルーテシアは、まだそこにいる。
弾かれたように2人は跳躍した。
繰り出されるは、互いが持つ必殺の一撃。
「紫電・・・」
「一閃!」
炎の剣と雷の槍がぶつかり合い、衝撃で2人は弾き飛ばされる。
着地で足を痛めるが、エリオもシグナムも構わず次の一手を放つ。
初動は僅かにシグナムが早い。だが、斬撃の速度はエリオが上回った。
「でやぁぁぁあっ!!」
「ぐぅっ・・・・」
咄嗟に身を捩り、シグナムは距離を取る。
先ほどまでと動きが違う。
力も技量も自分には及ばないというのに、その気迫は歴戦を潜り抜けたシグナムすら震撼させた。
これは本当に自分が知っているエリオなのか?
まるで夜叉か羅刹のような凄みにシグナムは恐怖すら覚えた。そして実感する。
この男は、間違いなく自分を殺す気でかかっている。その覚悟でもって、エリオは自分と同じ高みへと昇りつつある。
- 319 名前:Ritter von Lutecia 第8話E:2008/02/03(日) 23:57:13 ID:3Al/WOTi
- 「だが・・・まだ足りん!」
それでも足りない。
シグナムには後一歩足りない。
如何に速い一撃を放とうと、どれほどの魔力を駆使しようと、全てレヴァンティンによって叩き落される。
何合目かの打ち合いの後、とうとうエリオの小さな体は吹き飛ばされた。
「終わりだぁぁっ!!」
レヴァンティンを鞘に戻し、カートリッジを炸裂させる。
通常ならば外へと流れる魔力が鞘の中で圧縮され、膨大な破壊のエネルギーを蓄えていく。
放てば必殺。
防御は意味を成さず、回避は間に合わない。
対抗するには・・・・・。
『Unwetterform』
相殺するのみ。
ここは屋外、都合よく雨雲も近くにある。
ならば、心おきなく最大の威力であれを使うことができる。
「飛竜一閃っ!」
「サンダァァレイジっ!!」
飛来する蛇腹の砲撃を落雷が迎え撃つ。
一瞬の静寂。
エリオもシグナムも互いの持てる魔力を限界まで引き出してぶつけ合う。
直後、2つの魔法がぶつかり合った余波で視界が白く染まり、大きな爆発となって粉塵を巻き上げる。
- 320 名前:Ritter von Lutecia 第8話F:2008/02/03(日) 23:58:46 ID:3Al/WOTi
- 「まずい、視界が・・・・・」
粉塵で視界を塞がれ、エリオの姿を捉えることができない。
(この感覚・・・・上か・・いや、下のようにも・・・・・)
前方にいるはずのエリオの気配が定かではない。
それに、この揺れるような感覚は・・・・。
直感を信じ、シグナムは跳躍する。直後、足下の地面を突き破ってエリオが姿を現す。
ストラーダの突貫力のみを頼りにここまで掘り進んで来たのだ。
そして、勢いのままシグナムに飛びかかった。
「うぉぉぉぉぉっ!!」
「ぐっ・・・間に合わん・・・レヴァンティン!」
『Panzergeist』
手にした鞘でストラーダを受け止める。バーニアを噴かせて強引に防御を突破しようとしてくるので、
レヴァンティンを戻す余裕がない。シグナムは残った全ての魔力を鞘に集中し、パンツァーガイストの硬度を維持する。
「ルーの魔力を貰ったんだ・・・そんな柔な鎧でぇぇっ!!」
『Explosion』
新たに補充しておいたカートリッジを全弾ロード。爆発的に膨れ上がった魔力でストラーダのフレームが軋みを上げる。
噴き出す余剰魔力が視界を金色に染め、一点に凝縮された質量が未だかつて破られたことのない鉄壁の守りを打ち破らんと突き進む。
「防げるものかぁぁぁっ!!」
裂帛の気合いとともに、ベルカの魂の鎧が砕け散った。
痛みとともに右目から光が消える。折れたレヴァンティンの鞘が己の右目を掠ったことにも気づかず、
エリオは完全な無防備となったシグナムの体にストラーダの穂先を突き刺した。
- 321 名前:Ritter von Lutecia 第8話G:2008/02/04(月) 00:00:45 ID:3Al/WOTi
- 「ぐふぅっ!」
ドサリと、2人の体が着地する。
引き裂くような激痛が体の中を駆け巡る。
酷使し続けた体はあちこちで悲鳴を上げていて、これ以上の戦闘は無理だと告げていた。
立ち上がるな。
このまま倒れてくれ。
「強く・・・なったな・・・・・」
シグナムが口にしたのは、敗北宣言だった。
勝敗を分けたのは、やはり能力リミッターだった。
全力の魔力を出すことができなかったシグナムと、全力に加えてカートリッジを消費したエリオ。
その僅かな差で、エリオの魔力量はシグナムを上回った。
覚悟だけでは力も技量も補えなかった。だが、純粋な魔法のぶつかりあいならば別だ。
そこに必要なのは、相手を倒したいという意思と純粋な魔力。如何ほどに強固な防壁も、
それを上回る質量をぶつけられれば決壊するのは自明の理だ。
これはたったそれだけの、だが決定的な差であった。
「その強さが・・・どれだけ危ういものか・・・・わかっているな・・・・?」
守るべきものを失った時、その力は己に牙を向く。
目的を見誤った時、その力は己を滅ぼす。
「それでも僕は、ルーを守りたいんです」
それでも、その汚れのない気持ちがあるのなら、きっとこの少年は大丈夫だ。
今まで犯した罪も、これから待つ絶望も、きっと乗り越えられる。
「ならばいけ・・・・・自分で決着をつけて来い」
自分にできることは、こうやって後押ししてやるくらいだ。
「はい・・・・ご教授、ありがとうございました」
一礼し、エリオは言うことの聞かない体を引きずるようにしてシグナムの横を通り過ぎていく。
その今にも壊れそうな危うさに、シグナムは目に涙を浮かべて懺悔した。
「すまんな・・・テスタロッサ・・・・・・本当に・・・すまん・・・」
to be continued
- 322 名前:B・A:2008/02/04(月) 00:01:44 ID:sov3l0nq
- 以上です。
色々と問題アリかもしれません。
紫電一閃がストラーダで使えたり、ストラーダで地中を掘り進んだり、
原作じゃマジで一度も破られていないパンツァーガイストを突き破ったり。
エリオが成長したってことで勘弁してください。orz
- 323 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 00:09:42 ID:+gsDYfbe
- >>322
シグナム、乙。
にしても紫電一閃は兎に角、推進力のみで地中潜行って……
凄く、エリオがボロボロになりそうです……
面白かったぜ、GJ!
- 324 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 00:14:18 ID:CGZWRbEc
- なの「シグナムがやられたようだな…」
フェ「ククク…奴は四天王の中でも最弱…」
ヴィ「エリオごときに負けるとは副隊長の面汚しよ…」
いや、ごめんなさいなんかつい。
スバルたちに続いてシグナム敗退…
じゃあ次は…あぁ続き読むのが怖い…
- 325 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 00:29:15 ID:zLNiVvol
- GJ
面白かったから細かいところは全然問題なしです、俺的には。
……今回は魔力リミッターとカートリッジの差で破ったけど、後に控えてる方々は……
- 326 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 00:29:55 ID:uN4On3C7
- >>322 GJです!!
アアアア熱っちいい!!そしてかっけええええ!!!
>ルーの魔力を貰ったんだ・・・辺りからのエリオが本当に格好いいです...が
シグナムまで倒し、果たしてエリオはどこまで突き進んでしまうのか・・・・・
次回も期待してお待ちしております。
- 327 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 00:38:50 ID:sFqSbdkn
- なんか完全にエリオ終わっちゃったって感じ
なにを引き換えにしてでもって言うヤツほど驚くほどに視野が狭いよね
はやて達って最後の最後には絶対に頼れる連中だろうに
それを頼れない頼らないエリオの「幼さ」の部分をもっと描いて欲しいな
- 328 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 00:39:25 ID:B48+ulU+
- >>324
S・T・S第8巻は、発売未定です。
- 329 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 00:44:41 ID:GBNPn60S
- >>322
GJです!!
すごいぞエリオ君烈火の将に勝った!!
ただ、カートリッジ主体のベルカ式において魔力の制限って意味あるのかね?
保有魔力に劣るベルカの民が欠点を克服するために考案したらしいというものだし
- 330 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 01:06:54 ID:3jTTd0Cy
- 結局、気合の差か
- 331 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 01:07:12 ID:zFRGn3/w
- GJ!!です。
今回のエリオが地中を掘り進んだのを読んだとき、ゲッター2を思い出しました。
速いし、潜るしw
- 332 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 01:10:21 ID:+gsDYfbe
- >>331
後はストラーダの穂先回転と分身があれば完璧かw
- 333 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 01:15:54 ID:bH+4Nj6C
- じゃあストラーダの穂先は発射可能なのかw
- 334 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 01:19:27 ID:2bFuAFQP
- おいおいwドリルはギン姉のだろwww
- 335 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 01:30:08 ID:g6cvtdZe
- >>324
エリ「やった、ついに四天王を倒したぞ。あとは夜天王ハヤテ、あなただけだ。」
ハヤ「くく、エリオ、ようここまで来たもんやな。やけど戦う前に言うておくことがある。
あんたは私を倒すのにカートリッジがめっちゃ必要や思てるようやけど、そんなにいらんで。」
ハヤ「そしてルーテシアとメガーヌさんは可哀想やったんで釈放してあげたんや。」
エリ「僕も言っておくことがあります。僕は最近破滅街道一直線だった気がしますが
そんなことはありませんでした。」
ハヤ「さぁ来ぃ、エリオ。」
エリ「ウォォォ、いきますッ」 エリオの勇気が世界を救うと信じて。
ご愛読ありがとうございました!
- 336 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 01:34:25 ID:sFqSbdkn
- >>335
なんというランスマスターエリオwww
- 337 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 01:38:49 ID:06chb+Kq
- >>あんたは私を倒すのにカートリッジがめっちゃ必要や思てるようやけど、そんなにいらんで。
死ぬほど笑った。
- 338 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 01:39:30 ID:sov3l0nq
- >>335
最近流行ってますね、ヤマト。
- 339 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 01:55:27 ID:WndAsc6G
- >>322
Gjです、このまま二人がどこに向かうのか気になります。
できれば幸せになって欲しい、だがルーの母であるメガーヌが起きたらどうするんだろうな。
やっぱ合いに行くんだろうか?
- 340 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 02:12:53 ID:7sKEWc1/
- てか実際、はやては遠距離で時間を掛けて大魔法をぶちかますタイプだから、エリオのスピードならガチでカートリッジ無しで倒せるだろうけどな。
- 341 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 02:22:45 ID:/q4cX7Wq
- >>322
エリオを止められる存在(強さ的な意味でなく精神的に)がいなくなったような…
…いやガリューと拳で語り合うのか(ry
- 342 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 02:46:43 ID:zFRGn3/w
- ヤンデレフェイトそんが現れますw
悪いことするエリオが悪いことをしないように手足を切り落とそうとますw
そこに颯爽と現れる仮面ライダー牙龍。
- 343 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 03:06:20 ID:gFQNzZEy
- おお、シグナムに勝った!?
てっきり負けるものだと思ってました。
頼みのラブパワーカートリッジもガンガン消費して破滅に一直線なエリオは鬼だ、鬼が哭いてるぜ。
自分一人でどうしたらいいかわかんないなら、他人に頼ればいいじゃなーい、とか言っちゃ台無しなんだろうなやっぱ。
親であり姉であり、司法官の一員でもある女性が泣いてるぞ。
- 344 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 04:34:00 ID:dQlcHkm1
- そのうちエリオの髪が伸びて獣化しそうな勢いだなw
- 345 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 05:30:35 ID:kkcSc/Sy
- >>322
おお、GJ。つかまじでエリオすごい!!
そして恐い。
- 346 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 06:21:29 ID:5BD88M20
- シールド突破は術式の割り込みかけるらしいから、気合勝ちとしかいいようがないな
あとは金の閃光のあの人か……
一番有力なんだけど今までの面子で一番甘いんだよな、彼女
- 347 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 06:24:23 ID:ThKocyRQ
- >>340
言ってみればはやての近距離攻撃はヴォルケンリッターだからな
- 348 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 10:13:51 ID:ZLtHmDpL
- >>340
まぁあの人の魔法はあんまり1対1での戦闘には向いてなさそうだしな…
- 349 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 10:21:41 ID:3LeyA4u6
- >>348
というか、ガチンコで竜なしキャロといい勝負ってどんだけ!?
少しは努力しろよ・・・・時と場合によっちゃあ前衛と分断、なんてざらにあることだし・・・・・
それで頭が墜ちたら洒落にならんぞ・・・・・
- 350 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 10:31:04 ID:NlzGr9Ys
- だから滅多なことじゃ出てこないんだろ。
そもそも能力限定されてりゃAランク相当なんだから、
出てったところでフォワードたちが頑張って終わり。
- 351 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 10:31:17 ID:R9JHITqr
- >>348
コミック版で、肉弾戦ならキャロにも負けるという
はやて本人の発言があったりするw
- 352 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 10:57:00 ID:dou5X3Bh
- >>351
本当かよwって思ったがな
- 353 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 10:58:00 ID:dou5X3Bh
- >>346
力技で破壊もあるよ
相応の技術と魔力が必要だけど
- 354 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 10:59:26 ID:2WKsGL0Z
- 2期直後はクロノの上位互換とも騒がれたが蓋を開けてみると
なのは以上にとんだピーキー性能だったというオチ。
- 355 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 11:20:53 ID:5FlgAbcW
- 前スレで皆が鬱なENDを迎える中、ユーノだけなんだかんだで幸せなのはなんだか許せない。
だから、前々から暖めていた『ユーノの悪夢なSS』を近日中に投下させていただく。
まあ、恐怖=悪夢とは必ずしも限らないけどね( ̄ー ̄)ニヤリッ
- 356 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 11:23:08 ID:aqLcpMgs
- うわ、エリオがシグナムに勝っちゃった。
シグナムにしか断ち切れないと思うんだけどな。この手の懊悩は。
唯一残されたスッパリしたエンドへの道がなくなった気がする。
勝っちゃいけない戦いに勝っちゃった感じ。これからが本当の地獄だみたいな。
- 357 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 11:25:25 ID:ZILAW5fs
- まぁリインとユニゾンすれば魔法の処理速度は問題なくなるかな
本人の戦闘スキルの無さはどうしようもないがw
- 358 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 12:05:25 ID:DKB2UV+s
- もとが足の不自由な文学少女でおっとりやからなぁ
- 359 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 12:23:42 ID:pf1Y7fal
- はやては非ユニゾン時に至っては六課から管制して貰わなきゃマップ兵器使えないしなぁ。
戦略兵器搭載型非戦闘指揮官とかそんなんじゃないかな。それってどんなんだって感じだけど
>>355
淫獣は本編での扱いが悪夢同然ですから
- 360 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 12:27:13 ID:sHm+RTQ0
- 個人的には3期になら出てこなくてもいいかな、とも思ったり
- 361 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 12:50:15 ID:2U/PqRrM
- 今さらすぎるんだけど、はやては変身後とか3期での性格の激変が…
健康になって本来の性格が出たのかもしれんけど、正直別人に見える。
- 362 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 13:03:38 ID:2WKsGL0Z
- >>361
まあその辺は都築氏のカラーだからな。
お話でもキャラ付けでも同じことに飽きるというかやりたくないというか…
いつもなら継続キャラの露出が少ないから目立たないけど、今期は旧キャラを
後ろに引っ込ませることを企画段階で止められちゃったからね。
- 363 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 13:03:41 ID:FtLBIW7w
- はやては二期の頃からあんな感じじゃね。
俺ははやてが中身一番変わってないと思う。
- 364 名前:漢たちの挽歌:2008/02/04(月) 13:08:28 ID:hr6RPd+c
- >>322
エリオが熱い!こういう展開大好き♪
さて、もうちょっとでテスト終わるんでそしたら挽歌の続きいきます。
しかしながら、ネタが無いので先に外伝行くかも・・・
ところで、こんなネタが浮かんだわけですが。
【子供向けR18劇場】
フェイトの口撃!エリオに9999のダメージ!
エリオは逝ってしまった・・・・。(性的な意味で)
フェイトはザ○オリクを唱えた『エリオまだいけるよね?(上目遣い)』
エリオは復活した。
・・・・ちょっとなのはさんとティアナに頭冷やしてもらってくる。
- 365 名前:名無したん(;´Д`)ハァハァ:2008/02/04(月) 13:14:21 ID:LZ1Gtobb
- >>322
テンション上がりまくりの話でした!GJ!!
エリオがかっよよすぎますよ、もう!
戦略も良かったですし、個人的にすごく満足です。
次回も楽しみにしてます。
- 366 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 13:17:38 ID:MKbLFiUe
- キャラ付けの一要素にすぎなかったものを
どんどん尖らせて強調したせいで逆にキャラが崩れたとかじゃないか。
例えば、ルイージとかも最初の頃はちょっとしたネタ程度だったのに
最近すっかり「二番手」だの「影が薄い」だののネタだけが強調されてるけど、あんな感じで。
- 367 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 13:25:02 ID:2WKsGL0Z
- 兄より優れた弟など(ry
- 368 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 14:17:40 ID:PbQW2suB
- らりるれろ
らりるれろ
らりるれろ
- 369 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 14:19:47 ID:vwDbIYhF
- だが実際マリオと言われたらスターの方を誰もが思い出すがルイージと言ったらマリオの弟という印象が強い現実
- 370 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 16:01:58 ID:FDse0O8T
- はやて、接近戦弱いって言ってるケド
キャロじゃ、パンツの鎧とか抜けなくね?
- 371 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 16:35:33 ID:Bx3u5pm0
- >>370
それは普通にそう思った。
車椅子の魔法少女がいたっていいじゃん。
なんかそこらへんをすっ飛ばして3期の3人には迷いとか葛藤が
殆ど見られないんだよな。おまえらまだ19歳だろ!と。
19歳通り越して不惑かよ!と。まあ、前2作の9歳もあり得ないけどさw
- 372 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 16:39:08 ID:Bx3u5pm0
- アンカー間違えたけど直さねえ。
絶対あやまらねぇ!
- 373 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 16:49:36 ID:pIlzU3X7
- >>372
(・∀・)*\ 少しお話ししようか
- 374 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 18:12:02 ID:LRfzOECw
- >>367
>>368
大佐!? 大佐ーッ!!
- 375 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 18:25:17 ID:3sZ7WQFL
- 最近(もしくは前から)影の薄い人列伝
・ティアナ
ヴァイスとのカプが大量にあったのが嘘のように、ぱったりとメインSSが投下されなくなる。
最近脇役でも出番が減りつつあるような気もする。
・キャロ
相手がエリオに限定されるため、エリオメインが減少すれば少なくなったのは自明の理か。
貴重なロリ分なのに……。
・ヴィータ
貴重なロリ分その二。
キャラの性格故か三期での厚遇からか、脇ではかなり出番はある。
しかしメインとなると……。
・シグナム
相手役としてヴァイスがおりフェイトを上回るおっぱい魔神なのに、不条理なまでにエロが無い。
保管庫で「シグナム」「エロ」でタグ検索して泣いたのは俺だけではないはず。
・ロングアーチ全員
本編でも出番ほとんどなかったし。
それでもアルトやルキノはエロがちょこちょこ。
残る眼鏡の人ときたら……。
- 376 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 18:32:53 ID:oSqachfL
- >>375
戦闘機人連中も相当だぞ。
もう3人娘のエロはお腹いっぱいです。
- 377 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 18:40:07 ID:2WKsGL0Z
- >>371
だから多分、最初は舞台の中心から外れる予定だったってインタビューは
マジだったんだろうなと思う。
都築氏が、ドラマが終わったキャラをメインから外してサポート役に
下げるときによく見られるキャラ付けだったから。
そっちの方向から迫ると3人のドラマは2期エピローグがフィナーレで、
3期は恭也にとってのOVAみたいなものなのだろうと。
- 378 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 18:44:30 ID:QL4sMQFz
- >>375
今、ティアエリを執筆中なんだ・・・一緒に散歩でもしようか・・・
- 379 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 18:47:30 ID:3sZ7WQFL
- >>376
エロ書く人が完全に固定されてるからだろうね。
あんまり思い入れないキャラのエロは妄想するだけでもけっこう大変だし筆も走らない。
新規エロ職人の参入が待たれる。
- 380 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 19:22:03 ID:2U/PqRrM
- 書こうかどうか迷ってる者なんだけど、今さらな疑問。
なんでエロパロ板なのにエロなしでもOKなの? 限定しちゃうと弾数が足りないから?
- 381 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 19:35:55 ID:aTvZKJ9H
- >>380
要するに面白いからじゃない?
面白いは正義。面白ければ何をやっても許される(ってのはさすがに飛躍しすぎだけど)
つーか、非エロ禁止なら俺はここに入り浸ってないし。
- 382 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 19:37:20 ID:ig3ivhQz
- よし、陵辱系でも書いてみよう。一ヶ月待ってくれおまいら!
- 383 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 19:41:23 ID:NwX30dXP
- >>380
一番最初にエロなしおkのルールを入れたのは、
2スレ目をたてた549氏(保管庫管理人)なので、
そこに関しては氏に聞いてみないとあれだが、
このルールが出来た当時というのは無印の時なんだよね。
無印本放送時は1スレ消費するのがやっとのペースだった。
だから>>380君の言ってる事は当たりだと思う。
- 384 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 19:44:11 ID:2WKsGL0Z
- エロよりバトルや恋愛のほうが需要高いからなあ…
- 385 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 19:56:13 ID:dou5X3Bh
- >>382
陵辱最高!!!!
触手とか化け物に襲われる女性キャラが見たいぜ
- 386 名前:549 ◆xbn1Z6LB3Q :2008/02/04(月) 20:08:55 ID:/A+T0v/b
- >>383
えー、覚えてません(マテ
たぶん書き手が少なかったからで正解だったと思う。
あと非エロの良作が書かれていたからかな?
1スレの最後の方で何かしら話があったと思うけど。
- 387 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 20:28:16 ID:5U66591x
- >>386
うわ、いつも保管庫管理あざーっす!!
- 388 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 20:36:32 ID:NlzGr9Ys
- >>380
46 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2008/01/26(土) 00:35:40 ID:Ui5abQAI
エロパロ板は、というかBBSPINKは、エロが許されている場所であって、
エロしか書き込めない場所ではない。
これはかつて偉い人がいったこと。
- 389 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 20:50:32 ID:ThKocyRQ
- そういやAsまではそうでも無かったのにsts以降めっさスレ進行早い
なぜだ?本編が納得できなかったからssで発散させてんだろうか
- 390 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 20:58:27 ID:oSqachfL
- >>389
視聴人口が増えたんだろ。
- 391 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 21:01:44 ID:KaJCBQpx
- ニコニコから入った奴多そうだしな
- 392 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 21:03:14 ID:Eg0VC8sl
- >>382
全裸待機してるぜ!
- 393 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 21:04:06 ID:wOF1dxKb
- 死ぬ気か、お前w
- 394 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 21:04:36 ID:Max/Rw4h
- SS系は反応薄いからな、こういうところでやらないと反応ない
- 395 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 21:16:33 ID:sov3l0nq
- >>389
stsのおかげで同人、SS、アンソロジーがものすごく書きやすくなりましたからねぇ。
それはそうと、なのは(魔王)とユーノ(淫獣)に育てられたヴィヴィオは将来的に聖王(性王)となって世の女性を手込めにするという
妄想が思い浮かんだ。
- 396 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 21:17:07 ID:pehH6zM4
- よし、俺が今からすごいの書いてやるから、おまいら全裸で表出て待ってろ!
- 397 名前:26-111:2008/02/04(月) 21:24:14 ID:QL4sMQFz
- >>396氏投下後に一本投下させていただきます
- 398 名前:380:2008/02/04(月) 21:24:43 ID:fY32c2Za
- ID変わってますが、380です。
ご説明ありがとうでした。非常にナットクしました。
たぶん非エロになると思いますが、ひとつ書いてみようかと思います。
ただ、こないだ全シリーズ通して見ただけのにわかなので、設定などもっと勉強しないと…
あまり期待せずにお待ちくださいm(__)m
- 399 名前:396:2008/02/04(月) 21:27:41 ID:pehH6zM4
- >>397
あ、ウソですごめんなさい、表出て立ってます。
- 400 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 21:29:32 ID:TIgBOoT4
- >>395
とらハ〜1期なノリが心のベースな人たちはかなり離れてったけどね。
- 401 名前:26-111:2008/02/04(月) 21:32:43 ID:QL4sMQFz
- OK、兄弟。普通に投下宣言だと思ってた。こちらこそスマンかった
表は寒いぞ。暖まれる話かどうかはわからんが、こいつでも読んでみてくれ
・「小さな騎士」の続きです。メインはエリオとティアナ
・非エロ
・タイムテーブルは14・5話。SS02の一日とほぼ同じタイムテーブルです
・前後編構成と言っておきながら、中編を挟むことにしました
・使用レス数21レス
では、投下します
- 402 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:33:25 ID:QL4sMQFz
- 「整れーつ!」
なのはの号令に、新人四人は息を切らせながら駆けてきて・・・びしっと整列した
夏の夕陽はとっぷりと傾き、訓練場を茜色に染めている
「それじゃあ、今日の訓練はここまで・・・スバル、キャロ」
「「はいっ!」」
名前を呼ばれた二人は、背筋を伸ばしてなのはの言葉を待つ
二人の緊張した姿に苦笑しながら、なのはは唇を綻ばせて今日の訓練で見た二人の動きを評価した
「良く連携の取れた動きだったよ。初日こそ遅れを取ったけど・・・今度、また2on1で模擬戦をしてみよう」
「「はいっ!ありがとうございます!」」
「うん・・・それで・・・ティアナ。エリオ」
小さく溜息を吐き出しながら、なのはは二人の名前を呼んだ・・・ティアナとエリオは、はっきりと落ち込んだ様子で佇んでいる
「「・・・はい!」」
スバルとキャロのコンビとは、返答さえも対照的だった
「・・・二人は、ちょっとぎこちなかったね。反省点、まとめておいて上げるから、二人で相談するんだよ」
「「・・・はい」」
沈んだ面持ちで返答を返すティアナとエリオである
四人が今日行った訓練は、互いの基礎を確認し、連携の取れた戦術を組み立て、その精度を高める“すり合わせ”であった
スバルとキャロは見事な連携で、なのはも頷く訓練成果を上げていたが・・・ティアナとエリオは、どこか、ぎくしゃくした有様であった
理由は二つある。自覚がある理由の方を上げれば、“寝不足”という下らない理由があった・・・昨夜は時間も忘れて戦術論を話し合ってしまったからだ
もう一つの理由は・・・2人には自覚が無いのだが、心のどこかで、互いを意識してしまい、ほんの僅かだが、呼吸がズレているのであった
先日、なのはから一本を奪ったコンビとは思えない程のその落差に、互いのパートナーは心配げな様子で、2人を見守っていた
訓練の終了を宣言したなのはに敬礼をして、4人はそれぞれ整理体操をしている
スバルとキャロは、何か明るい話題でも・・・と考えはしたものの、ティアナとエリオの沈んだ有様を目にしては、話し掛けることは勿論、近寄ることさえできないでいた
- 403 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:33:56 ID:QL4sMQFz
- 「・・・ごめんなさい、ティアさん」
「・・・何であんたが謝るのよ」
ぽつり、と謝罪の言葉を述べたエリオに、ティアナは明らかに怒気を孕んだ口調で言い返した
それに気付かないエリオではなかったが・・・それでも、エリオはティアナに言った
「昨日、しっかり打ち合わせたのに・・・連携のタイミング、失敗しちゃいましたから・・・」
「あんたは悪くなかったのよ、私が失敗してたの」
「違いますよっ!ティアさんの合図にすぐ対応できなかったから「違うわよ!私の照準がトロくさかったから「でも、それは僕が ―――
延々と自分こそが失敗の原因なのだと主張し合う二人を見ていられず、スバルは慌てて二人の間に割って入った
「あぁもうそこまで、そこまでっ!」
「・・・スバル」「スバルさん」
「あの、ね。ティアもエリオも頑張ったんだし、今日出せなかった結果はまた次で出せばいいじゃない」
「そうですよ、それに・・・ティアさんも、エリオ君も・・・そんな風に喧嘩するなんて、らしくないですよ・・・」
キャロにまで沈んだ口調でそう言われて、ティアナとエリオは落ち込んだ顔を見合わせると、揃って溜息を吐いた
整理体操もそこそこに切り上げると、彼女はそのまま踵を返した
「先に上がるわ。食堂、準備しておくから」
「え?あ・・・うん」
引き留めるべきだろうか?しかし、何と言って引き留めようか?
それを考えている間に、ティアナはすたすたと歩き去ってしまった・・・そのしょげた背中は、全ての反論を跳ね返す壁のようにも見えた
「・・・あの、スバルさん・・・」
沈んだ顔のエリオに声を掛けられて、スバルは慌てて脳天気な顔を作ると、彼の小さな両肩をばんばん叩いて励ました。彼が今何を悩んでいるのかは良く分かる・・・
「大丈夫だよエリオ!あたしもね、昔・・・訓練校時代の訓練初日はティアに滅茶苦茶怒られたけど、ティアのお陰で一人前になれたんだもん!
昔の私より遙かに強いエリオなら絶対、ティアのパートナーが務まる!それに、“あの”ティアがあんな風に落ち込んで、それだけで終わるわけないでしょ?」
- 404 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:34:29 ID:QL4sMQFz
- 「・・・そう、ですね」
「そうそう。ティアのことだから、きっと色んな作戦を考えてる筈だよ。昨日、なのはさんから一本取ったのだって、まぐれでも偶然でも無い。2人の力なんだから!」
「・・・はいっ!」
ようやく、エリオの顔に明るさが戻った
泥で汚れた顔のまま、スバルは満面の笑みを浮かべて、チビっ子2人の背中を押して隊舎へと歩き始めた
「さ、まずは帰ってご飯食べよう。お腹が一杯になれば、きっと良い考えも思い付くよ」
スバルの言葉に、エリオとキャロは思わず揃って噴き出した
何とも、彼女らしい言葉だと、きっとここにティアナがいれば呆れ混じりに呟いただろう
そんなこんなで、一同は食堂に辿り着き・・・
「遅いわよ、三人とも!」
「「す、すみません・・・」」
「ゴメンゴメン!ん〜、今日のご飯も美味しそうだねー」
「こらスバル!つまみ食い禁止!ちゃんと手洗ってきなさい!」
「はぁーぃ」
すごすごと歩いてゆくスバルの背中を思わず見送っていたエリオとキャロに、ティアナが尋ねた
「2人は、ちゃんと手を洗ってきた?だったら食器、はいこれ」
「すみません、ありがとうございます」
「ありがとうございます。ティアさん」
「いちいち大袈裟にお礼を言われるような事でも無いでしょ?さ、食べましょ」
訓練場での顔とは打って変わって普段通りに振る舞うティアナの姿に、エリオは顔に少しだけ滲んでいた“申し訳なさ”を消そうと努力した
彼女なりの気遣いを、自分の辛気くさい顔で無にするわけにはいかない・・・彼はそう決めると、大皿に盛られていた大きな鶏肉の唐揚げにかぶりついた
- 405 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:35:00 ID:QL4sMQFz
- 「あぁーっ!三人ともずるい!私だけのけ者で先に食べてるなんて!」
「ちゃんと食べる準備をしてから来ないあんたが悪い」
「ティアの鬼畜ー、冷酷非道ー、食べ物の恨みは怖いんだぞー」
「ちゃんと取り分けてあるわよ・・・いい加減座りなさい恥ずかしい」
そんな一幕があったことも、明記しておこう
食事を終え、一休みした後、夜の個人戦シミュレーションを終えると、やっと今日一日が終わった
絞れば泥水が滴り落ちそうな程疲れ切った身体をひきずって、4人はそれぞれの部屋に、寮に戻ろうとしていた・・・足が、ぴたっと止まった
疲労困憊のあまり忘れるところだった・・・昨日から、隊舎の客室を借りているのであった
「あっぶないあぶない・・・忘れるところだった」
「あ、寮の浴場、まだ開いてますけど・・・どうしますか?」
キャロの言葉に、スバルとティアナは首を捻り・・・
「んー、あたしは部屋のシャワーで良いや・・・ていうか、今お風呂に浸かったらそのまま寝ちゃいそうで・・・ふわぁぁぁ・・・」
「私も、ちょっと眠いです・・・」
「あははー、それじゃ、お互い寝ないように監視しつつシャワー浴びようか。頭洗ってあげてる最中に寝たらごめんねー」
「そ、それは、流石に・・・それじゃ、ティアさん、エリオ君。お疲れ様。お先に上がるね」
「明日は・・・訓練お休みで、オフシフトだったっけ。少しはのんびりできそうだねー。それじゃ、お先ー」
酔っぱらいの様な足取りのスバルを、キャロは支えながら歩き、現在の2人の自室へと戻っていった
「それじゃ、エリオ。私達も戻りましょ。スバルじゃないけど、今お風呂に浸かったら溺死の危険があるわ」
「あはは・・・シャワー浴びながら、眠っちゃ駄目ですよ。風邪引いちゃいますから」
「まぁ、あいつじゃあるまいし、大丈夫よ」
そんな軽口を叩き合いながら、2人は部屋へと戻っていった
- 406 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:35:40 ID:QL4sMQFz
- 廊下を歩いて部屋に辿り着く・・・満身創痍、とも言える程に疲れ切ったティアナとしては、入浴よりも何よりも、ベッドに倒れ込みたい衝動に駆られたが、
昨日・・・共同生活初日の夜は彼女がベッドを使い、エリオがソファで眠ったのだ
二人で話して決めたルールを、年長者である自分から、僅か二日目にして破るわけにはいかない・・・ぐっと堪えて、彼女はふらつく足取りでソファに身を沈めた
「エリオ、先にシャワー使って良いわよ」
「え・・・でも」
「昨日は私が先に使ったでしょ?交代よ、今日はエリオが先。それに、ちょっと汗臭いわよ?」
「・・・はい。それじゃあ、お先に失礼します」
レディファースト・・・そんな言葉を知っているわけでは無いのだろうが、エリオはやはりティアナに先を譲ろうとしていたようだ
気を遣って貰って悪い気はしないが、ようやく年齢が二桁に届いたような少年に優しくされるというのは・・・彼女にも、年長者としての意地があるというのに
「・・・ったく・・・」
子供らしくないエリオの気遣いに溜息を吐き出しながらも、ティアナは、しかし、と思ってしまう。何となく、頬が熱い理由がわからない
エリオは優しい。ようやく少年と呼べる年頃ながら、真面目で利発・・・訓練校に在学していた頃の、同年代の異性と比べればエリオは遙かに大人びている
ティアナとしては、訓練校時代に好意を抱いた異性などは居なかった。だが逆に、ティアナに好意を抱く異性はそれなりに多く居たのだが、ティアナはその悉くを撥ね付けていた
“執務官”という自分の夢を叶える為に在学していた彼女としては、“彼氏”なんぞは足枷以外の何物にもならないと決めつけていたからだ
まして、下心が透けて見えるような相手からは声を掛けられるのさえ嫌だった。媚びるような優しい言葉を投げ掛けてくるような男など論外と言えた
だけど、エリオに優しい言葉を掛けられても・・・何故か、それほど不快な気分にはならない。素直に従うつもりも無いが・・・これは、どういうことなのだろうか・・・?
「・・・はぁ・・・」
考えれば考えるほど、泥沼にはまって行くような気分になってしまい、ティアナはなのはが出してくれた二人の連携の批評文をテーブルに投げた
なのはの視点は、的確にティアナとエリオのコンビが今後留意すべき反省点を列挙してくれている
その結論としては・・・
「当面は、基礎と基本の繰り返しね・・・でも、スバルとキャロは昨日に比べて随分動き良かったわよね・・・何かあるのかしら・・・?」
- 407 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:36:13 ID:QL4sMQFz
- ティアナが思わず首を傾げたその頃、隣室のスバルとキャロのコンビはと言うと、
二人は睡魔に負けつつある身体をシャワールームに押し込み、スバルは半分寝惚け眼ながらもシャンプーで泡立ったキャロの髪をわしわしと洗っている
「・・・すかー・・・」
「す、スバルさんっ!寝ちゃ駄目ですっ!」
「んが?・・・ふわぁ〜ぃ・・・」
大欠伸をしながらも、シャワーを手にとって湯の温度を確かめ、ぎゅっと目を閉じたキャロの頭を流してやるスバルである
頭から爪先まで、汚れを落としてさっぱりしたキャロだが・・・
「スバルさん!起きてくださいっ!寝ちゃ駄目です風邪引いちゃいますよっ!」
「ん?・・・ん・・・ぐー・・・」
実に器用な事に、スバルはたったまま眠っていた。彼女はざっと湯を浴びただけで、まだ身体を洗ってもいない
キャロはスバルを何とか起こそうとアレコレ奮闘したが、どうやっても起きない・・・そして信じ難いことだが、立ったまま眠り込んだその姿勢が安定しているようである
小さく溜息を吐くと、キャロはボディーソープを泡立てたスポンジで彼女の肢体を洗い始めた
何だか、少しだけお姉さんな気分が味わえて、ご機嫌なキャロである。手の掛かる妹、というには、スバルは5つも年上な筈なのだけど
「・・・ティアさん、ティアさん。起きてください、シャワー空きましたよ」
「・・・ふ、・・・んん・・・」
肩を揺すられて、うたた寝をしていたティアナは目を醒ました
時計を見れば、およそ20分ほど・・・エリオにしては長い。“汗臭い”と言われてしまったからだろうか
「ふあ・・・ごめん、居眠りしてた・・・」
短時間とは言え、ソファに座ったままの居眠りで身体は強張っている。ティアナはのっそり起き上がると、節々をごきごき鳴らして身体をほぐした
「さて、それじゃ・・・シャワーの前に、先に今日の反省会。しておきましょ」
- 408 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:36:44 ID:QL4sMQFz
- ティアナの提案に、エリオは渋面を浮かべた。自分だけ先に入浴を済ませておいて・・・
「あの、ティアさんも疲れてるのに、後でも良いんじゃないですか?」
「あー、良いの良いの。こっちが先の方が良いのよ」
テーブルに投げ出していた書類をひらひら振って、ティアナはエリオにそう言った
「先にシャワーなんか浴びたら、そのまま寝ちゃいそうだからね。こっちが先に方が良いのよ。ほら、座んなさい」
「はい・・・」
対面に座ったエリオに、ティアナはテーブルに書類を広げて反省会を始めた
「まず・・・これ、エリオが先行した場合。あんたの、フォルムツヴァイのマニューバについて少し教えて欲しいんだけど・・・
一つ一つ、ティアナとエリオは指摘された欠点について真剣に考え、二人は互いの連携を深め、溝を埋めてゆく
元々、どちらも真面目な気質なのである。こうして、分かりやすく反省点が列挙されていれば、それを克服する手段はあれこれ考えることができた
共同生活二日目の夜は、そんな風に更けていった・・・
○小さな騎士・中編
明けて翌朝。今日は訓練も無く、オフィスでのデスクワークがメインとなっている
それも捌けてしまえばオフシフト・・・お休み、というほど気楽なものでもないが、幾らかのんびり過ごすことが許される予定なのだ
そんな、小さな休養の機会を前に、スバルは早くも元気一杯である
「あ、ティア、エリオ。おはよーっ!」
「ティアさん、おはようございます。エリオ君も、おはよう」
- 409 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:37:27 ID:QL4sMQFz
- 丁度部屋から出てきたところらしい。スバルとキャロからの、実に元気の良い朝の挨拶に、
「ん、おはよ」「おはようございます」
ティアナとエリオは挨拶を返した・・・昨日ほどではないが、今日も少々寝不足気味の二人である
「二人とも、また夜更かし?駄目だよ、ちゃんと寝ないと」
「寝てるわよ・・・んーっ・・・・」
朝っぱらからのスバルにそう窘められて、ティアナは渋面を作って大きく背伸びをした
椅子としては大きなソファではあるが、寝台としては少々狭かった・・・窮屈な格好で眠り込んだ身体は、やはり節々が痛い
「どしたの?ティア・・・寝違えた?」
「違うわよ。ソファで寝てたら・・・いたた・・・ちょっと、ね」
「何で?あんなに広いベッドがあるのに。一緒に寝れば良いじゃない」
小首を傾げたスバルの言葉に、ティアナとエリオは揃って顔を引き攣らせた・・・彼女の場合、こちらをからかおうとする意図が全く無いのが少々難儀である
「二人でぐっすり寝てるよねー。ね、キャロ」
「あはは・・・そうですね」
キャロとしては、少々寝相が悪いスバルの抱き枕代わりにされているのが少々寝苦しかったりもするのだが、
こんな風に誰かにくっついて眠るというのも久しぶりだったので・・・ここ二日間は、快眠できていると言っても良かった
「ごだんがさねだいすきー」とか寝言を言いながら頬にかぶりつかれた事もあったけど(ちなみに一度寝入ったスバルは滅多なことでは起きない)
「あ、あのねぇスバル・・・流石に、そういうわけにはいかないでしょうが・・・」
「そ、そうですよ」
赤面したティアナとエリオからの反論に、スバルは頭上に疑問符を浮かべるばかりだ・・・スバルにかかっては、キャロがエリオであっても対応は変わらなかっただろう
エリオとしては、きっと災難であろうが
「えっと、そうかなぁ・・・???」
- 410 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:37:58 ID:QL4sMQFz
- 「そうなのよ。ほら、とっとと仕事に行くわよ」
「あ、ちょっと待って。折角だから、なのはさん達の部屋に寄ってから行かない?」
「・・・どうして?」
スバルの提案に、ティアナとエリオは首を傾げるが、キャロは何かに思い至った顔で、
「あ、ヴィヴィオの事で、ですか?スバルさん」
「うん。もし、何か困ってることがあったらお手伝いしないと!・・・それに、困ってることがあったら何だか面白そうだし!」
「・・・それが本音ね」
はぁ、と溜息を吐きながらも、ティアナは微かに意地悪な笑みをスバルに向けて、案外乗り気な様子でなのは達の部屋へと歩き始めた
エリオとキャロの二人も、一度顔を見合わせて、二人の後に付いて歩き始めた・・・
スバル的結論としては、「良いものが見れた」というところである
ぐずるヴィヴィオにしがみつかれて困り果てているなのは、というレアな姿を見ることができたのだ。少し膨れっ面のなのはと、そんな彼女に苦笑を浮かべているフェイトと共に、
一同はオフィスを目指して廊下を歩いていた・・・外は快晴、良い天気だ。普段ならば、絶好の訓練日和と言えるだろう
「でも、フェイトさんの子守り術も達人的と思いましたけど・・・やっぱり、アイナさんはプロですねー」
「うん、そうだね。寮母さん・・・不特定多数の“お母さん”だもんね」
寮母:アイナさんのヴィヴィオを宥めた手腕を、スバルはそう評した。フェイトも全く同感である
「でも、ヴィヴィオにとっての本当のママは、なのはだけだよ。ね?」
「う・・・うん、そう・・・ありたいんだけどね・・・」
ぐずるヴィヴィオに困り果てるばかりで、結局宥めることができない“なのはママ”としては、少々肩身が狭い・・・
そんな様子に、一同はまたもにやりと笑う
「でも、フェイトママも好きー。って、ヴィヴィオ言ってましたよ」
- 411 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:38:30 ID:QL4sMQFz
- 「それは、嬉しいんだけど・・・」
フェイトとしては、苦笑を浮かべるしかない・・・ヴィヴィオにとって「ママ」という言葉は、自分に優しくしてくれる女性全般に向けられている
そういう意味で、なのはもフェイトも「ママ」と呼ばれている・・・下手をすれば、彼女の面倒を見ることがあるエリオとキャロも、「パパ」と「ママ」である
アイナさんは、「ママ」という言葉の意味を懇々と説いたのだが、結局、なのはとフェイトだけは、「なのはママ」に「フェイトママ」であった
「まぁ、良いんじゃないですか?ヴィヴィオがあんまりフェイトママの事を、好き好き大好きー♪だと、ライトニングのチビッ子二人が嫉妬しちゃうかもしれないしねぇ?」
意地悪な笑みを湛えたまま、ティアナはエリオとキャロの頭をぐりぐり撫でながら、ご丁寧にスバルの口真似をしながらそう言った
スバルも、二人の顔を覗き込みながら、ネコのような笑顔を浮かべている
「んふふー、丁度良かった、かなー?」
「別に、嫉妬なんかしませんよ」「・・・子供じゃないんですから」
即座に、二人は僅かに怒気を含んだ口調でそう切って捨てた・・・エリオは、頭に乗せられたティアナの掌を邪険に払い除けまでした。キャロでさえ表情が堅い
そんな、普段の二人らしくない、“子供らしい”姿に、スバルとティアナは目を丸くし・・・
「・・・いや、子供でしょ・・・?」
「あ、その・・・ごめんね。二人とも・・・どうしたんだろ。何だか、すごいビシッとしてるね・・・」
ティアナとしては、ほんの冗談のつもりだったが・・・キャロはそうでもないが、エリオはぎゅっと眉根を寄せて眼差しを険しくしている
今の彼のような顔をティアナは良く知っている・・・あれは、“背伸びをしている子供の顔”だ・・・かつては自分も、あんな顔をしていた
差し伸べられる手も、掛けられる優しい言葉も全てを振り払って、一人であることが自分が子供ではないという証明になる・・・そう、信じていた頃の自分と同じ顔だ
ティアナは内心で、自分が言った冗談のつもりの言葉が捻れた刃となって、小さな二人のプライドに突き刺さった事を今更の様に理解したが・・・
「さ、お仕事だよ。スターズは終日デスクワーク。ライトニングは、正午から捜査部回りと警備打ち合わせの為に外出だっけ?」
「うん。それじゃ、エリオ、キャロ。今日も頑張ろうね」
「「はいっ!」」
フェイトの言葉に、びしりと姿勢を正してエリオとキャロは実に良い返事を返した・・・そんな二人の姿に、自分が一番子供のような気がして、ティアナは少し落ち込むのであった
- 412 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:39:01 ID:QL4sMQFz
- 結局、彼女は二人に謝るタイミングを見つけることができず、時刻は正午を回り、フェイトと共にエリオとキャロは外回りに出て行った
八神部隊長以下、ヴォルケンリッターも聖王教会に出向いているため、スターズ分隊は留守番を兼ねて終日デスクワーク。ティアナは書類仕事は得意な方・・・の筈なのだが
「・・・はぁ」
だが、今日はどうした事だろうか。気が付けば手が止まっていて、そんな自分に溜息ばかり吐いている
急ぐ仕事ではないのが救いだが、だからといってぼさっとして良い理由は無い・・・
「ん、こっちはオッケー・・・と、ティア、そっちはどう?・・・あれ?ティア?」
「え?あ、ご、ごめん、まだ終わってないのよ」
どうやら、デスクワークが苦手なスバルよりも作業が遅れているらしい・・・時計を見れば既に夕刻に近い。これは致命的だ。ヴィータが居ない日で良かった
頬を叩いて気合いを入れ直すと、ティアナは猛然と書類を退治しに掛かった
「ティア・・・今日はちょっと変だよ?エリオと、何かあったの?」
「べ、別にそんな・・・何にも無いわよ。あんたこそ、キャロとはうまくやれてるの?」
「勿論!妹ができたみたいで毎日嬉しいよー。あ、でも昨日晩はお風呂で寝ちゃったから、キャロが身体洗ってくれてベッドまで運んでくれたんだっけ」
身体を拭かれて部屋着を着せ付けられて、ひきずるようにしてベッドに運んだキャロの苦労は容易に想像できる・・・そうされても、スバルが目を醒まさなかったことも
「・・・随分、世話の焼ける姉ね」
「む、そういうティアはどうなの?ちゃんとお姉ちゃんしてるの?」
「お姉ちゃんって・・・私は別に、そんなんじゃ無いわよ」
少しだけ、頬が熱くなるのが自分でも分かった
「駄目だよティアー。シグナム副隊長も言ってたでしょ?『戦技の訓練だけでは互いの呼吸を伺い知ることはできんものだ』って」
「だけど、それとこれとがどう関係あるのよ?」
「んー、っとね」
指先を顎に当てて、一呼吸の時間でスバルは自分の考えをまとめ・・・
- 413 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:39:32 ID:QL4sMQFz
- 「楽しいよ。人を理解できるのって」
「・・・はぁ?」
「私とティアだってそうだったじゃない。訓練初日で反省清掃させられたずっこけコンビが、今じゃ3年来のコンビだよ?これって結構すごいことじゃない?」
「反省清掃させられたのも、ずっこけコンビ呼ばわりされてたのも、全部馬鹿力を制御できてなかったあんたの所為でしょうがぁぁぁッ!!!!」
ティアナ・ランスター、魂の咆哮である
「あー、痛い痛い、苦しい苦しい・・・まぁ、そんな苦い過去もあったりしたけれど」
「何か腹立つ!あんたに言われると滅茶苦茶腹立つ!!」
首を絞めながらがっくんがっくん揺さぶられながらも、スバルは真面目な顔を作る
「でもさぁ・・・あたしなんかと一緒にここまでやってこれたティアが、エリオとうまくやれないっていうのは、ちょっと心配だよ」
「・・・確かにね。エリオは訓練校時代の頃のあんたなんかよりは遙かに優秀よ。話はちゃんと聞くし、作戦を度忘れしたりもしないし、中衛として視野は広いし」
古傷を掘り返されて、スバルは少々凹んだ
「実際、Dシフトの構想を実現できたのはエリオのお陰だしね。子供扱いできないくらい、あの子は・・・あの子達は優秀なのよ」
そして自分は今朝、あの小さな騎士を侮辱したのだ。“子供扱い”という、これ以上無いくらいに手酷い手段で、彼のプライドを傷付けた
仮に、もしも自分とエリオの立場が入れ替わっていたら・・・自分は自制できただろうか?あまり自信は無い
「でも、ティア。優秀なことと子供扱いは関係無いんじゃないの?私達だってまだまだ子供だと思うけど・・・エリオとキャロは幾ら優秀でもまだ10歳だよ?」
「関係有るのよ・・・私には、分かるの。だから、あんたみたいにベタベタした接し方なんて・・・お姉ちゃん面なんて、できないわよ」
「ん〜・・・そういうもんかなぁ・・・?」
そう言いながら首を捻るスバルを尻目に、ティアナは書類仕事を再開する
――― その矢先、警報が隊舎に響き渡った
『緊急警報、緊急警報!第7海岸区画にガジェットを確認。機数30!現在、ライトニング分隊が出動中!
スターズ分隊、待機レベルB!繰り返します。スターズ分隊、待機レベルB!至急、出動準備を整えてください!』
- 414 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:40:05 ID:QL4sMQFz
- オフィスを駆け出したスバルとティアナは、すぐさまヘリポートの待機所に向かった
ヘリポートにはいつでも飛び立てる体勢のストームレイダーが既に待機していて、なのはも待機所で既にスタンバイしていた
「なのはさん、遅くなりました!」
「ライトニングが出動中なんですよね。状況は?」
息を切らして待機所に駆け込んできた二人に、同じく駆け込んできたばかりらしい、息を切らしたなのはは首を横に振った
「はぁ、はぁ・・・私も、今来たばかりだから・・・そろそろ映像が入ると思うよ。
ガジェットが30、フェイト隊長にエリオとキャロなら大丈夫だと思うけど・・・増援が有るかも知れない。スバル、ティアナ。ともかく、私達は警戒待機」
「「はいっ!」」
待機所に備え付けられているモニターに、現地の映像が映し出された
海上を疾走るガジェットドローンのT型が12機に、航空のU型が18機。AMF展開機能を有するこの戦闘機械達は、普通の魔導師が普通に立ち向かうにはあまりにも苦しい相手だ
だが、キャロとエリオが騎乗する白銀竜、フリードの口から吐き出された火焔の奔流:ブラストレイに、T型5機が数瞬で爆散した
爆撃の様な火焔の直撃を逃れたガジェット達の頭上から、エリオが襲い掛かる・・・盾の様に展開している魔力障壁は、キャロが付与した防御魔法だろう
守りの一切を障壁に任せ、エリオはストラーダに魔力刃を宿すと、全速を以て戦場を疾駆する ――― ガジェットの隙間を縫うように駆け抜け、それだけで3機が両断されていた
「おおっ、やるね。エリオ」
暢気な感想を漏らすスバルだが、ティアナはそんな二人の姿に益々自責の念に駆られていた・・・
モニターの中での勇躍は更に続く。空中ではU型を相手にフェイトが大立ち回りを見せていた
プラズマランサーのマルチショットを見舞い、編隊を崩した所にハーケンフォルムのバルディッシュを構えて一気に切り込む
「・・・増援さえ無ければ、待機のままで終われるかな・・・?」
3人の姿に、なのははそんな感想を呟いた。今回はレリックの反応も無いらしいとのことである。増援が来る可能性も低いだろう
『ガジェット全機、撃墜。現在の所、増援は確認されていません。スターズ分隊、待機レベルC。今しばらく、待機をお願いします』
「「「了解!」」」
- 415 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:40:36 ID:QL4sMQFz
- 待機は小1時間ほどで解除され、スバルとティアナはデスクワークに戻った
本来ならば、日没前には戻れる予定だったエリオとキャロだが、ガジェットの急襲と、その後始末に追われて真っ当な夕食さえも摂り損ねたらしい
携帯食とこっそり持ち歩いていた飴玉という食事を終えた二人が処理班の課員と共に隊舎に戻って来れたのは、既に日も落ち、星空が夜天を覆い尽くす頃になっての事だった
「んーっ!食べた食べた・・・今日も美味しかったー」
「エリオとキャロ、食堂には来なかったわね。先にお風呂だったのかしら?」
「そうかもね。がっちり褒めてあげなきゃ!」
喜色満面のスバルが、そう宣言した。今回ばかりは、ティアナもスバルと同じ気持ちである・・・今のところ
だが、子供扱いを嫌う彼の小さな騎士を、どんな言葉で褒めてやれば良いのだろうか・・・?まずは、今朝の事を謝るところから始めるべきだろうか?
そんな事をぐるぐる考えていると・・・中庭の芝生の上で、寄り添うように座っているエリオとキャロの小さな背中が見えた
「あれ?・・・あの二人、何やってるんだろ?」
「星でも見てるのかしら?行ってみましょ、スバル」
「うん」
自分達の連携を称え合っているのだろうか?いや、あの二人のことだ。きっと話題は今日の戦闘の事ではなく、日頃の訓練の事だろうか?
間違いなく、星について語るような色気のある展開ではないだろう・・・そんな風に思いながら、スバルとティアナは小さな背中に歩み寄って行き、
「エリオ、キャロ!お帰り!大変だったね、お疲れ様!」
「あ・・・スバルさん・・・」
キャロが振り返った
肩越しに見せたその表情に、スバルとティアナの動きは凍り付いた・・・彼女が、泣いていたからだ
「キャロ!?どうしてそんな・・・エリオ、あんたまで、どうして・・・!?」
「っく・・・ぅ・・・な、何でも無いんです、本当に、何でも無いんです・・・っ!」
泣き顔を隠すように、エリオはシャツの袖口で乱暴に顔を擦った。キャロも、目元をゴシゴシ擦って涙の跡を消そうとしている・・・
そんな二人の前にしゃがみ込んで、ティアナはじっと二人の顔を見ながら尋ねた
「そんなに泣いてて、何でもないわけ無いでしょう?・・・何かあったの?どこか、怪我でもしたんじゃ・・・?」
- 416 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:41:07 ID:QL4sMQFz
- 「い、いえ・・・怪我とか、そんなんじゃないです・・・」
「じゃあどうして!?あんた達がこんな風に泣いてるなんて、絶対ただ事じゃないわよ!」
「・・・ティアさん・・・」
心配の余り、僅かに顔を青ざめさせたティアナの言葉に、エリオとキャロは再び眦に涙を滲ませた
「ねぇ、あたし達じゃ頼りないかも知れないけど・・・力になれるなら、話して欲しいな」
同じく、顔を覗き込むようにしゃがみ込んできたスバルの言葉に・・・それでも、二人は首を横に振った
「あの、その・・・ごめんなさい・・・」
「・・・フェイトさんの事で、少し・・・」
うっ、と息を詰まらせると、ティアナとスバルは顔を見合わせた・・・二人が言い渋るのはわかる
二人が敬愛するフェイトの事となると・・・あまり、力になれる自信は無い
なのはは隊舎に居る筈だが、ヴィヴィオと一緒に過ごしているだろう。そこにエリオとキャロを連れて行って相談に乗って貰うのは少々申し訳ない
なのはにも、ヴィヴィオにも、エリオとキャロにも
他にフェイトを良く知る人物と言えば、彼女の補佐官:シャーリーだが、彼女はフェイトと共に地上本部
なのはと同じく、フェイトとは10年来の付き合いがあるはやては、こちらも現在副隊長達と共に会議中らしい・・・そうなると・・・
「・・・ねぇ、二人とも、取りあえず涙拭いて。それで、ちょっと通信室まで行きましょう」
「え・・・?」
「私達にはできない相談でも、言える相手がちゃんと居るでしょ?フェイトさんのことも、エリオとキャロのことも良く知ってる人が」
ティアナは、エリオとキャロの手を引いて歩き始めた。頭上に疑問符を浮かべたスバルが後を付いて歩きながらティアナに尋ねた
「ねぇ、ティア。通信室に行って、どうするの・・・?」
「うん、ちょっと97管理外世界まで」
97管理外世界・・・現地惑星名称:地球。その言葉に、あ、と声を上げるスバルであった
- 417 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:41:38 ID:QL4sMQFz
- 通信室の使用許可をグリフィスに申請した
彼は、涙で目元を赤くしたエリオとキャロ、真剣な表情のティアナ、“97管理外世界”への次元間通信、そうした情報から事情を粗方察したらしい。あっさりと受理してくれた
そこまでの面倒を見ると、心配顔のスバルを引き摺って、二人は通信室を後にする
あーだこーだと憶測を広げるスバルをお決まりの台詞で一喝し、それぞれの自室へ戻った
寮でスバルと相部屋だった時は、一人で過ごす静かな時間に時折憧れたりもしたものだったが、微かに唸りを上げる空調の作動音以外何も聞こえないというのは、予想外に寂しい
手持ち無沙汰なティアナだが、術式の復習をする気になれず、だからといって寝入ってしまう気にもなれず、ただ、ソファに座って出しっぱなしの書類を眺めていた
何度も読み返したなのはが出してくれた反省点のレポート・・・既に暗記している自信もあったが、今は字面を追っても一つも頭に入ってこない
「・・・はぁ」
溜息も何度目だろうか。ばさり、と書類を放り出して、ティアナは天井を仰いだ
『・・・子供じゃないんですから』
『っく・・・ぅ・・・な、何でも無いんです、本当に、何でも無いんです・・・っ!』
背伸びをして、強がってみせて・・・本当に、自分を見ているようだった
本当は泣くほど弱い癖に、本当は泣くほど辛い癖に・・・そんな彼の内心に、自分は気付けなかったのか
「当たり前よね・・・私なんかが気付いてあげられるわけ、無いじゃない・・・」
そんな呟きと共に自分を嗤い、ティアナはがっくりと項垂れた
今はただ、地球に住んでいるフェイトの使い魔:アルフとの相談がうまく纏まることを祈っている
できることならば、その末に、フェイトとも話して、二人の悩みが抜本的に解決されればそれがベストだ
時計を見る。既に時刻は深夜と言っても良い
眠ってしまおうかとも思うのだが・・・それでも、眠気はわいてこない・・・不意にドアが開けられて、小さな足音が部屋に入ってきた
- 418 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:42:10 ID:QL4sMQFz
- 「あ・・・ティアさん。まだ起きてたんですか・・・?」
「ん、うん・・・まぁ、ね。ちょっと寝付けなくて」
白々しい言葉で誤魔化しながら、ティアナはエリオの顔をそっと伺った
赤い目元には涙の名残が見て取れるが、顔付きはすっきりしている・・・悩みは解決したのだろうか?
「アルフさんとは?」
「はい、相談して・・・フェイトさんとも、話したんです。あの、ティアさん」
「ん、何?」
「・・・すみませんでした。困らせちゃって・・・それと、ごめんなさい」
がばっと頭を下げるエリオに、ティアナは少し驚いた
中庭で泣いていた所に声を掛けたのは確かだが、それとは他に、こんな風に大袈裟に謝られるような憶えはないのだけど・・・?
「今朝、生意気言っちゃいましたから・・・だから、ごめんなさい」
「・・・あぁ」
どうやら、ティアナの手を払い除けた時のことを言っているらしい
同じ事を謝ろうとしていたティアナは苦笑を浮かべて、エリオに言った
「エリオ、少し座りなさい」
「・・・はい」
叱責は覚悟の上・・・そんな硬い顔のエリオがティアナの対面に座ろうとする・・・が、
「違うわよ。今日はこっち」
ティアナは、正面に座ろうとしたエリオを制して、自分が座っているソファの座面をぽんぽんと叩いた。隣に座れ、というつもりである
エリオは首を傾げながらも、促されるままにティアナの隣に腰掛けた・・・そして、ティアナは前を向いたまま・・・エリオの顔を直視するのは照れくさくて、そのまま彼に謝った
「エリオ、今朝の事は良いわよ。謝らなきゃならないのは私の方だから・・・ごめん、エリオ。馬鹿にするつもりは無かったんだけど、子供扱いにしちゃって・・・」
- 419 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:42:42 ID:QL4sMQFz
- もしも自分が言われた側だったとしたら、あれは耐え難い侮辱だった・・・ティアナは、真っ向から向き合ってそれが言えない自分の卑小さを嗤いながらも、
小さな騎士に向かって、頭を垂れた・・・エリオは、慌てた様子で両手を振りながら、
「あ、違うんです、違うんです!僕があんな生意気な事を言ったのも、ティアさんに見透かされていたのを誤魔化したかったからで、だから、悪いのは僕なんです」
・・・見透かされていたのを誤魔化したかった・・・?その言葉に、ティアナは思わず目を丸くしていた
今までの、無理な背伸びをしていた態度とは少し違う・・・自分以外の誰に対しても素直だったエリオだが、今は何だか、自分に対しても少し素直なようだが・・・?
「・・・キャロとフェイトさんと、3人で話したんです。僕とキャロは、ずっとフェイトさんの為に頑張ろうって思ってて、
それが、空回りというか、擦れ違っていたことにやっと気付いて・・・」
ただ、フェイトに笑顔で居て欲しかった・・・小さな二人は、ただそれ“だけ”の為に六課に志願したと言っても過言ではない
だけど、フェイトとしては、エリオとキャロのそんな一生懸命な姿を誤解していた・・・自分が母親として無能な所為で、二人に無理をさせている・・・そんな風に思っていた
互いを気遣いすぎる余り、心に距離ができていることに気付いていなかった・・・いつの間にかできていた心の溝を埋めるために、三人はじっくりと話し合ったのだ
「・・・本当は・・・ヴィヴィオにも、ちょっとだけ嫉妬してたんです。フェイトさん、ヴィヴィオと一緒にいると笑ってる事が多かったから・・・
僕達が一生懸命頑張ってもできない事を、ヴィヴィオは自然にできていたから・・・だから、ティアさんに今朝からかわれた時も、ムキになっちゃって・・・」
「そう、だったんだ・・・」
「でも、僕達には僕達ができるやり方で、フェイトさんの為に頑張れますし、フェイトさんもちゃんとそこを見ててくれるって、約束してくれましたから。
だから・・・これからも、よろしくお願いします。ティアさん。僕とキャロは、やっぱりまだまだ子供で・・・スバルさんとティアさんには、いつも助けられるばかりですから。
――― あ、でも、いつか、もっと大きくなったら、きっとティアさんの力にもなれるように頑張ります!」
エリオは、そう言って笑顔を浮かべた・・・子供らしい、明るい笑顔だった
(楽しいよ。人を理解できるのって)
不意に、スバルの言葉が脳裏で蘇る
- 420 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:43:19 ID:QL4sMQFz
- 3年前の訓練校時代、ハリネズミのように武装していたティアナの心に、自分が傷付くのも厭わずずかずか近寄ってきた相棒の気持ちが、少し分かった
ティアナは、エリオの屈託の無い笑顔に吊られるように口元を綻ばせると、赤毛の上に掌を乗せた
今朝と同じ、“子供扱い”の筈だが、エリオはただ、されるままに、少しくすぐったそうに撫でられている
「ゆっくりで良いわよ。あんまり駆け足で強くなってくれたら、私達なんかあっさり追い越されそうだし・・・それに、あんまり無理したらなのはさんに怒られるわよ?」
私みたいに、という言葉に、エリオは少しだけ唇の端を引きつらせた
模擬戦の最中、ティアナが“撃墜”された時の事は、未だ記憶に新しいのである・・・その真意を知った今でも、あの時のなのはは少々怖かった・・・
「まぁ、その時までは“お姉さん”をアテにしなさい。ね?」
“お姉さん”という言葉を口にすれば・・・エリオのことを“異性”として意識して、一人でドキドキしていた自分が何だか馬鹿みたいに思えてきた
勿論、エリオのことは、一人前の頼れる騎士だと思っている・・・だけど、それ以上に、可愛い“弟”として、守ってやりたいし、力になってやりたい
頭を撫でられているエリオは、その言葉に少し頬を赤くして、頷いた
「は、はい。よろしくお願いします。ティアさん・・・あの、それじゃあ早速相談したい事があるんですけど・・・」
「ん?何、どうかしたの?」
「実は・・・フェイトさんに、“たまには甘えて欲しい”って頼まれたんです・・・あの、そう言う時はどうすれば良いと思いますか・・・?」
エリオとしては、恥ずかしいのでどうやって逃れれば良いでしょうか?という意味合いの質問であった
だが、ティアナはにやりと唇を歪めると、問答無用の素早さで隣に座っているエリオの頭を抱え込み、有無を言わさず膝の上に乗せた
誰がどう見ても、膝枕の格好である。膝の上に置かれたエリオの横顔に、ティアナは彼女なりのアドバイスを教えてやる
「そんなの、甘えれば良いじゃない。遠慮せずに」
「ティ、ティ、ティ、ティ、ティアさんっ!?」
頬に当たる生足の柔らかさと温かさ。女性特有の甘やかな香りにふわりと包まれて、エリオは慌てた。大慌てに慌てて身を起こそうとしたが、そうは問屋が卸さない
「こらエリオ、喋ったらくすぐったい。これも練習よ、甘える練習。私相手でこんなにオタオタしてたんじゃ、フェイトさんだって困っちゃうわよ?」
- 421 名前:小さな騎士:2008/02/04(月) 21:43:50 ID:QL4sMQFz
- 吐息が腿に当たる感触と、自分にしては意外なほど大胆な手を打ったことに、ティアナも頬を紅潮させていたが・・・エリオは耳の裏どころか、首筋まで顔を真っ赤にしていた
それでも大人しくなったのは、抵抗は無駄だと悟ったからだろうか。それとも、頬から伝わる柔らかな温かさが脳の奥まで回ったからだろうか?
「・・・あの、ティアさん・・・」
消え入りそうな口調のエリオが呼び掛けてきた。ティアナは優しく髪を撫でてやりながら、
「ん、何?」
「・・・あの・・・ティアさんは、僕にこんな風に甘えられて・・・嬉しいですか・・・?」
「や、や、やーね、エリオ。これも練習って言ったでしょ?私は別に、そんな、甘えられて嬉しいなんて・・・」
エリオからの思わぬ問い掛けに、ティアナはしどろもどろになりつつも否定しようとした、が・・・
こうして、可愛い弟に膝枕をして、頭を撫でてやるというのは・・・正直、悪くない。嫌なことなど何一つ無い。何だか落ち着くし、ずっとこうしてやりたいような心地良さがある
「まぁ・・・でも、悪くないわね。こんな風にしてあげるの・・・甘えられたいフェイトさんの気持ちも、ちょっと分かるわ」
「そう、ですか・・・あの、ティアさん」
「んー?」
「・・・もう少し、こうさせて貰っていても、良いですか・・・?」
返答はなく、ただにっこり笑って、頭を撫でてやった
やがて、少年は安らかな寝息を立て始めると、ティアナもうとうとと上体を揺すりはじめ・・・やがて、彼女もソファに座ったまま、エリオを膝に乗せたまま、眠ってしまった
眠り込んだティアナの胸と腿に顔を挟まれたエリオが悶々とした一夜を過ごしてしまったことを、こっそりと明記しておこう・・・
- 422 名前:26-111:2008/02/04(月) 21:45:14 ID:QL4sMQFz
- 数え間違い、20レス使用でした
もうちょっとだけ続きます。後編は多分明日にでも投下できると思います
「諜報者〜」の続きはちょっと煮詰まりました・・・
では、スレ汚し失礼しました
- 423 名前:B・A:2008/02/04(月) 21:50:00 ID:sov3l0nq
- >>422
GJです。
毎日殺伐としたエリオばっか書いているので、こういうの読むと和むなぁ。
- 424 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 22:02:28 ID:RbqrhLpw
- >>422
GJです。後編がとても楽しみです
- 425 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 22:11:43 ID:UFPeXMGl
- >>422
GJ!!
このカプは良い……。甘えられるティアナがここまでGJだとは……。
- 426 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 22:26:25 ID:X8MAHSAK
- >>422
ぐっ、GJです。ティアナしっかりお姉ちゃんしてますね。
本当に面白かったです。
- 427 名前:三浦:2008/02/04(月) 22:30:41 ID:Xyrjf3pA
- >>322
何故かシグナムの話が嘘臭く思えてしまうのは、9話のアレに良い印象が無い自分のせいですハイ。
ルー結局逮捕されちゃいましたか。さてさて二人の行く末は……楽しみに待ってます。
>>422
ヴァイス派なんですけど、この組み合わせも悪くないですねぇ。
そう言えば、前編の感想レスで誰かが『ティアエリ』って書いたのを『ティエリア』って読みそうになって一人で笑った。
ところでこれから投下するけど大丈夫ですかね。
- 428 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 22:31:35 ID:n0P+blkx
- >>386
初代スレの頃から非エロ書かれてたからね
そうじゃないとスレが回らなかったし
まぁ、初代スレのまったりなノリの好きだったけどね
陵辱が大好きな人だけどw
>>422
乙です!
- 429 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 22:32:19 ID:n0P+blkx
- >>427
良いと思いますよ。
- 430 名前:三浦:2008/02/04(月) 22:33:29 ID:Xyrjf3pA
- どうも、ではこれから投下させて頂きます
StS後の時間軸、メインキャラは1歳ずつ年取ってます。
オリ×フェイト オリ×スバルの予定です
ヴァイス×ティアナ、グリフィス×シャーリー他ノーマルCP前提。
今の所エロは無しです。
- 431 名前:Mago di blu senza fine Act.2‐1:2008/02/04(月) 22:34:04 ID:Xyrjf3pA
- 突然の来訪者、アルバトロス・レヴェントンとジャルパ・スタンツァーニの二人を招き入れたフェイトは、とりあえず執務用の机から離れ、二人にはドア側にある低いテーブルの周りに備えられた来客用の椅子に座ってもらう。
自分も腰を落ち着けてティアナがお茶を入れて戻ってくるのを待った。
「そちらの仕事の方は良かったのですか?」
沈黙が場を支配していた中、アルバトロスが話を切り出した。
「ええ、報告書の作成は終わらせていますから。重要な物は殆ど片付けました。
ちょうどあなた方の情報を、書類で確認しようと思っていたところだったんです」
「じゃあさ、タイミングバッチシだったってわけじゃん♪ アルバもそこまで気を張らなくていいんじゃない?」
フェイトの返答にジャルパがぱぁっと表情を明るくする。それに対してアルバトロスは呆れ顔で溜め息を付いた。そして……
「いでっ!」
ジャルパの頭にゲンコツを落とした。
「本当なら最初に連絡を入れるはずだったのだが、こちらの手違いでこのような形になってしまった」
アルバトロスが再び頭を下げた。
「いえ、そこまで気にしていませんから。頭を上げてください」
「フェイトさん。お茶をお持ちしました」
ちょうどいい具合に、ティアナが紅茶を入れたティーセットとクッキーの乗った皿を、トレイに積んで戻って来た。
「ありがとう。とりあえず、あなた方もどうぞ」
さすがにこれ以上は切りがない。ティアナも戻ってきた所で、フェイトは話題を変えようとこちらから話を切り出すタイミングを窺う。
「いっただっきまーす♪ ん〜おいひ〜♪」
「じゃあお言葉に甘えて、頂きます」
ジャルパが満面の笑顔でクッキーに手をつけ、飲み込まないうちにミルクと砂糖を多めに混ぜた紅茶を一気に飲み干した。
アルバトロスの方はあくまで態度を崩さず、静かに紅茶をストレートのまま口へと運ぶ。
食べ方一つで人から感じる雰囲気が分かる物だと思いながら、ティアナはレモンを、フェイトは砂糖を一さじ入れて紅茶を口に運ぶ。
「レヴェントン執務官は、どうしてわざわざこちらへ出向かれたのですか?」
これを聞くのに、随分と遠まわしな事になってしまったと思いながらも、フェイトはようやく話題を出す事が出来た。
- 432 名前:Mago di blu senza fine Act.2‐2:2008/02/04(月) 22:34:48 ID:Xyrjf3pA
- 「さっき、こいつが言った通りですよ。
書類を相手にデータだけを確認するよりは、直接会ってみる方が得られる情報は多いし、任務中に作戦や連携を組みやすい。
俺の勝手な理屈にすぎませんが、持っている魔法と戦歴を見ただけで相手を知ることなんて出来ない。魔法、戦闘技術と共に戦うんじゃなく、『それを使う人間』と共に戦うんだ。
だから、俺とジャルパは大概こうして顔を合わせる事から始めています。ランクも階級も関係ない、戦う場所に立てば一人の魔導師である事に変わりは無いはずですから」
アルバトロスの言い分に、フェイトとティアナは素直に感嘆した。
執務官と言うのはもっとこう事務的、あるいは作業的な姿勢で応対するような印象が前々からあった。
と言ってもフェイトの場合、執務官と言えば義兄が真っ先に思い浮かぶわけだが、それでもアルバトロスのようなタイプの人間には出会う事が少ない。
いたとしてもそれはクロノよりももっと人生経験の豊富な、悪く言えば老成した人ばかりだった。
見たところ若いのにと思うが、低く見積もっても4〜50代にしては余りにも若々しすぎる義母の事が一瞬頭を過ぎった。
「ところで、レヴェントン執務官ってお幾つなんですか? 見たところ20代半ばから上あたりだと思うんですけど」
フェイトの心を読まんばかりのタイミングで、ティアナが質問を投げかけると……。
「ぶっ……クククク……アハハハハハハハ♪」
ジャルパが突然腹を抱えて笑い出した。椅子の上に膝立ちの状態で背もたれに頭を押さえつけながら、ドンドンと背もたれの上を叩いて、体を震わせている。
「ハハハハハひーっ! あーもうサイコー♪ やっぱアルバってそれくらいに見える?
でもさー、ホントのトシって全然下なんだよ。まー僕のほうは、たぶん君たちが思ってるより上なんだけどねごふぁっ!」
大笑いしながら開けっぴろげに話すジャルパの顔面に裏拳を見舞うと、アルバトロスは溜め息を付きながら口を開いた。
「別に気にはしてないけど、これでも俺はまだ二十歳だ」
『えぇっ!!?』
二人の反応に、アルバトロスとジャルパは表情こそ違えど予想通りと言った素振りを見せた。
「フェイトさんと……同い年……」
別におかしいと言う訳ではないのだが、やはり雰囲気的にはそう見えない。
「ちなみに僕は18〜♪」
と、ジャルパは付け足す物の、アルバトロスほどのインパクトは無かったらしく、二人とも反応は薄い。
ここにはいない悪ノリでセクハラをする某関西弁や、天然入ってる勇者王もどきなど、ジャルパに近いノリの人間は見慣れていると言うのも多分ある。
「とにかく年齢の話は置いといて、任務の確認だけして置きましょう」
- 433 名前:Mago di blu senza fine Act.2‐3:2008/02/04(月) 22:35:26 ID:Xyrjf3pA
- フェイト、アルバトロス両名に通達された任務は、武装組織の鎮圧である。
この組織の活動が目立つようになってきたのはおよそ3ヶ月ほど前。
J・S事件以降裏のルートより流出したガジェット・ドローン、そして戦闘機人技術を保有しており、一般の武装隊だけでは手を焼いているらしい。
「私に命令が来る事は想像が付きますけど、なぜ他のエースには命令が降りてこなかったんでしょう?」
「この組織に関してのデータは充分じゃない。不確定要素が大きすぎることからの人選だろう。失礼な言い方になるが、過ぎた破壊力はデメリットも大きい」
仮になのはやはやてが基地ごと敵を殲滅させたとして、敵が質量兵器を保有していた場合に情報が行き届かず、最悪暴発させて都市の一つ二つが壊滅と言う可能性もある。
非殺傷設定があっても物理的な破壊だけは食い止めようが無い。アルバトロスはそう言いたいのだろうと察した。
「しかも今回、隠密行動メインの少数精鋭でやんなきゃいけないみたいだしね〜。あと1人か2人ぐらいならいいっつってたけど、さすがに悪魔ちゃんと夜天ちゃんは論外だしー」
「そこから頭を離せ……。こちらとしては室内戦で機動力のある人材が欲しい」
そう言われて、ティアナの頭には腐れ縁の魔導師が思い浮かんだ。
「一人、良さそうなのいますけど?」
「マジ!? やったね! 願ったり叶ったりじゃん♪」
ジャルパが手放しで喜びアルバトロスの肩を叩いて同意を求める。
「じゃあ、連絡を頼めるかな?」
「災害救助隊に問い合わせては見ますけど、確実に捕まるとは限りませんよ?」
フェイトが同意する物の上手く行かなかった場合の事をどうするか、それとなく聞き返す。
「その時は4人で行こう。無いものをねだっても仕方が無い。
少なくとも君達二人は、俺たちを捨て駒にする気はなさそうだし、信頼するよ」
アルバトロスはどこか含みのある調子の言葉を残して、あとは5日後の任務に備えると言う事でフェイトの部屋を立ち去った。
「嵐のような二人でしたね……」
ティアナは呆れた風に呟いた。
「あの人たちからは、なにか異質な感じがする……。今度の任務、用心したほうがいいかもね」
フェイトの言葉にティアナは無言で頷いた。全ては5日後に始まる……
>>続く
- 434 名前:三浦:2008/02/04(月) 22:36:02 ID:Xyrjf3pA
-
前回の投稿で微妙に反応が薄くて戸惑いながらも2話目投稿しました。
オリキャラ2名、ひとまず敵対はしません。次回はスバルともう一人伏兵入れて戦闘行きます。
スレ進むの早すぎです……。書くの遅い方なんで微妙に辛いっす。
- 435 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 22:51:15 ID:MKurhtMU
- こういうことを書くとスレの雰囲気を乱すからあまり気が進まないのだが……
オリキャラってこんなに市民権あったっけ?
ここのスレって俺が覚えている限り、オリキャラに厳しかった気がするんだが
色々と対策はあると思うけど、そういったことが話題に上っていなかったと思うので
どう?
- 436 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 22:51:59 ID:n0P+blkx
- >>435
どうでもいい
NGにすればおk
- 437 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 22:52:27 ID:JvNSavRG
- >434
乙。フェイスバ共に、オリキャラと絡ませる作品は既出なので、頑張って差別化して下さい。
- 438 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 22:54:51 ID:JvNSavRG
- >435
だから、対策として受け入れられるキャラ作りを心がけているんですよ。
- 439 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 22:57:00 ID:jWtDpsQw
- まあまあオリキャラでもいいじゃないか
- 440 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 23:02:39 ID:K+iZQWtH
- オリキャラは大嫌いだから基本読まずにスルーしてるけど偶に質のいい面白い作品があるから困る
最近だと甘党とか愚者とかはかなり引き込まれて読んでしまった
- 441 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 23:08:03 ID:wOF1dxKb
- >>440
その二つってオリキャラなしじゃ成立しないしな
愚者の方はオリキャラが多すぎな気もするが、レジアスや地上本部にスポットあてる以上
仕方ないしな
- 442 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 23:08:48 ID:MKbLFiUe
- オリキャラってだけで叩くというか批判する気はない。
まぁつまらなかったら読まなくなっちゃうが、それはオリキャラ云々には限らないし。
オリキャラが居ようが、面白ければ職人に感謝の気持ちをこめてGJするだけよ
- 443 名前:( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc :2008/02/04(月) 23:10:48 ID:xBpd0wpn
- オリキャラといえば私のリニスやレンなんかもほとんどオリキャラみたいなもんですが、
どうなんでしょうかねぇ。
まぁキーキー騒ぐ前にテンプレ10回読んで回線切れって言うのには賛成ですが。
注意事項
・捏造あり過ぎ
・アリサが主役です。そのはずです。でも書いてる方も「これじゃシグナムが主役じゃねぇか」と思ったのは事実です。
・はやてが少し欝です。はやて&ヴォルケンリッターファンの方注意。警告したぞ! いいな!?
・あぼーんキーワードは「燃え上がる炎の魔法使い」
- 444 名前:燃え上がる炎の魔法使い 6-01/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/04(月) 23:11:45 ID:xBpd0wpn
- 『Divine』
リング状の垂直魔法陣が、レイジングハートの軸線上に展開する。
術式が起動した時点で、オレンジに輝く魔力光が、眩く、大きく、集束する。
『Buster』
オレンジ色の光が槍となり、シグナムに向けて撃ちだされた。
燃え上がる炎の魔法使い〜Lyrical Violence + A’s〜
PHASE-06:Overture des Sturzes(後編)
『Schallumzug』
シュッ
驚愕に眼を見開きながら、シグナムは迷わず、回避を選択していた。
閃光が、ほんの一瞬前まで、シグナムのいた空間を凪いだ。その時、既にシグナムの姿
は空中に在ったが、ピンクがかった赤紫の髪の毛がひと房、千切れてその場に舞った。
「……面白い」
シグナムは少し戦慄したように汗をかきながらも、口元で笑みを浮かべ、レヴァンティ
ンを構えなおす。
『Revolver set』
その間にも、アリサは次の術式を、レイジングハートに展開させていた。
「いっけぇ!」
『Ray lance, Burst shot』
レイジングハートを中心に、環状に集束した高速魔力弾を、次々に撃ち出す。
「レヴァンティン!」
『Patronenlast!』
レヴァンティンがカートリッジを撃発する。
シグナムは、次々に迫る弾丸を、縫うように避ける。パンツァーガイストを併用しつつ、
シールドでいくつかを逸らしながら、アリサに迫る。
『Fire slash』
レイジングハートが、燃えるような鮮やかなオレンジ色の光を纏う。
「はぁっ!」
「このっ!」
バチバチバチバチッ
強烈に火花を放ちながら、レイジングハートとレヴァンティンが交錯する。
絶望的に近い体格差もあり、アリサは徐々に圧される。だが。
「何!?」
驚愕の声を出したのは、シグナムの方だった。レヴァンティンが、レイジングハートの
斬撃魔力に揺さぶられ、不気味な振動をシグナムの手首に与える。
「レヴァンティン!」
「レイジングハート!」
その判断を下したのは、2人ほぼ同時だった。
『Schallumzug』
『Flash move』
お互い、急機動で後ろに下がり、間合いを取る。
その隙に、アリサは次の術式を起動させていた。
「このっ」
『Divine Buster』
オレンジ色の光の槍が、シグナムに向かって撃ち出される。
- 445 名前:燃え上がる炎の魔法使い 6-02/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/04(月) 23:12:15 ID:xBpd0wpn
- 『Schallumzug, Doppelt』
シグナムはもう1段急機動を重ね、それを回避する。
『シャマル』
そうしながら、シグナムは、念話でシャマルに語りかけた。
『蒐集を』
『え? でも、あの子はもう、1回……』
シャマルは、戸惑った声を返す。闇の書のシステム上、同じ人物のリンカーコアを2度
抜いても意味が無い。
『違う、結界魔導師の方だ』
『でも、はやてちゃんが見てるのに……』
シャマルは、困惑気に言い、ちらりとはやての方を見た。
「でりゃあぁあ」
『Burst shot』
十数連発のアリサの射撃が、シグナムに向けて放たれる。
「くっ」
シグナムは一気に急降下し、地表スレスレを高速でアリサに迫る。
『Protection, Dual excise』
オレンジ色の光の盾が、アリサの左手に出現し、シグナムの突撃を阻む
『どの道、主はやてには事の経緯を説明しなければならない。ならばもご覧になっていた
だいた方が話が早い』
『そう……ね』
シャマルはまだ困惑気な色を見せつつも、同意の返事を返すと、覚悟を決めたように、
喉を鳴らして、ユーノに視線を向けた。
「残念だな、バニングス」
「えっ?」
アリサと凌ぎあいながら、シグナムは、静かにそう言った。
「以前に会った時は、魔力の不利を補って余りある、センスの持ち主だった。だが、今の
お前は、並みのミッド式魔導師以上ではなくなった。以前よりも、与し易い」
「なっ!?」
シグナムの言葉に、アリサは眼を見開き、顔色を変えた。
「このぉっ」
『Fire stasher, Dual excise』
レイジングハートは、吹き上げるタイプの炎ではないが、セラミック赤外線バーナーの
ように、確かに燃え上がった。
「はっ」
しかし、シグナムは剣を滑らせ、アリサの斬撃を逸らせる。
『Schallumzug』
シグナムは急機動をかけると、自ら間合いを取る。
「レイジングハート!!」
『Ray lance, Burst shot』
アリサが激しく撃ち上げるが、シグナムは、今度は接近はせず、等距離を保ちながら、
それをかわして行く。
「レヴァンティン!」
『Patronenlast!』
アリサの射撃が途絶えた瞬間、シグナムはレヴァンティンにカートリッジを激発させる。
『Schlangeform』
レヴァンティンが、何かを外す金属音を立てたかと思うと、カッターの刃の様に等間隔
のビーズのように外れた。それは軸の部分にワイヤーが通って、一直線に繋がっている。
- 446 名前:燃え上がる炎の魔法使い 6-03/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/04(月) 23:12:55 ID:xBpd0wpn
- 「げっ」
アリサは、眼を円くして、思わず身を引いた。
『Drachen leichter Schlag』
「飛龍・一閃!」
炎のような閃光が走り、蛇のような竜のような紫電が迸る。
「っ!?」
『Wheel Protection』
反射的に魔力光の盾を生み出し、それを受け止める。
バチバチバチバチッ
シグナムの射撃は相殺されきれず、稲妻状の火花を撒き散らしながら、アリサのシール
ドと凌ぎあう。
「くっ……このぉっ……」
アリサは両手でレイジングハートを握り、シールドを支える。
シュルルルッ
蛇龍のようなシュランゲフォームのレヴァンティンが、アリサに迫り、巻きつくように
して取り囲む。そして、文字通り巻きつこうと締まり始める。
「ラウンドシールド!」
緑色の魔力光が、ラウンドドーム型の盾を形作り、アリサ自身のシールドの反対側に出
現する。
レヴァンティンが巻きつき、両のシールドに軋みを上げさせながら、締め上げる。
ミシ……ミシ……
「あ、アリサちゃん!」
すずかが、声を上げた。
すずかを庇うようにリニスが立ちはだかりつつ、結界破りの術式を展開していたが、す
ずかがアリサの名前を呼んで、その前に出かけた。
「動くな、すずか!」
アリサが、反射的に怒鳴り返す。
「で、でも……」
「アンタが一番防御が無いんだから、リニスから離れちゃダメ!」
表情を歪ませながらも、アリサは言う。
すずかはおろおろしたように周囲を見渡してから、
「はやてちゃん!?」
と、はやてを見て、声をかけた。
「ちゃ、ちゃうねんこれは……こら! シグナム! ええ加減にせぇ! レン! シャマルも
……シャマル!?」
上空を見てレンに怒鳴り、そして、自らの傍らにいたはずのシャマルを怒鳴ろうとして、
シャマルの姿がそこになく、はやてはうろたえる。
「ぐぁぁぁっ!? あぁぁっ!!」
「ユーノ!?」
突然上がった苦悶の声に、アリサが、そして、シグナムとレン、それに当人以外の全員
が、そちらに意識をとられる。
「好きありや!」
「ぐっ、プロテクション!」
上空でぶつかり合っていた2人。アルフがユーノに気をとられた瞬間、レンが、アルフ
の懐めがけてジルベルンメタリッシュを突き入れた。
文字通りの間一髪で、アルフの紅いシールドが、それを受け止める。
- 447 名前:燃え上がる炎の魔法使い 6-04/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/04(月) 23:13:14 ID:xBpd0wpn
- 「ぐぐっ……くっ……」
「ごめんなさい……闇の書、蒐集!」
シャマルが、ユーノの背後にいた。苦悶に呻くユーノの胸から、輝くリンカーコアを浮
かび上がらせる。
『Sammlung』
闇の書のページが開き、そこに魔術式が書き込まれていく。そして、その度に、ユーノ
のリンカーコアが萎縮していく。
ページはかなりの勢いで、埋められていく。苦悶に呻いていたユーノは、やがてぐった
りとし始めた。それでも、アリサに張っているラウンドシールドを維持するため、右手を
掲げ続ける。
「ユーノ! このぉぉっ」
『Barrie jacket Purge』
ドズンッ!
レヴァンティンの巻きついた領域を吹き飛ばすように、オレンジ色の閃光と共に、魔力
の残滓が霧状になって吹き出した。
バリアジャケットを構成する魔力の一部を変換し、破壊にまわしたのだ。
そして、それが晴れた後から。上半身は、白いジャケット部分がなくなり、袖なし・首
元を覆うレオタード状の水色のスーツのみの状態になり、そして、オレンジ色に、昼なお
煌々と輝くレイジングハートを持ち、アリサが、怒りの表情で、現われる。
ギロッ、アリサの眼がシグナムを睨んだ。
「いかん、レヴァンティン!」
シグナムがそう判断するが早いか、────
「レイジングハート!」
『Cartridge load』
すばやく装填されていた新しいカートリッジを、レイジングハートが撃発させる。
CVK-695Dの2連チャンバーの尾栓から、2個の空カートリッジが排莢される。
『Revolver set』
レイジングハートの周囲、円周上に魔力弾が集束する。だが、それは先ほどまでとは比
べ物にならないほど、高出力のものだった。
『まずい、シャマル、主と共に転移を、レン、自力で脱出できるな!?』
『大丈夫や』
『了解』
表情を険しくするシグナムがそう伝えると、レンとシャマルは即答した。
「吹っ飛ばして!!!!」
『Divine clasher, Burst shot』
オレンジ色の光の、鋭い槍が、シグナムめがけて次々に連射される。
閃光が、あたりを灼(や)き尽くした。
ガコンッ
レイジングハートの圧力逃し弁が開き、余剰圧力が水蒸気と共に排出される。
「やった……のか?」
結界が解かれた周囲を見渡して、アルフが呟くように言う。
「いえ。逃げられました。直前で、転移」
リニスが、険しい表情で、言う。その足元に、すずかがうずくまっていたが、ふっと顔
を上げる。
「はやてちゃんは……」
「ゆっ、ユーノ! ユーノ!!」
- 448 名前:燃え上がる炎の魔法使い 6-05/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/04(月) 23:13:42 ID:xBpd0wpn
- すずかがキョロキョロとしながら言いかけた言葉は、アリサの取り乱した言葉にかき消
された。
アルフとリニス、それにすずかも、慌ててユーノを振り返る。ユーノは、駐車場のアス
ファルトの上に、倒れ伏していた。
「なんだ……?」
「子供が倒れたのか?」
周囲から、通行人や図書館の利用者が、何事か集まりだした。
「あ、いやそのちょっと、足引っかけて転んじゃいまして、大したことじゃないです」
アルフは、慌てて、愛想笑いで取り繕う。そして、ひょいと片腕でユーノを抱えた。
「ご迷惑おかけしました〜」
リニスはそう言って、笑顔で軽くお辞儀をしつつ、アリサとすずかの手を引き、駆け出
すアルフを追って、そそくさとその場を離れる。
『エイミィ! エイミィ!』
図書館の館内に駆け込み、アルフは険しい表情に戻りつつ、念話でエイミィを呼び出す。
『アルフ?』
果たして、エイミィからの返事はきた。
『本局に中継ポート開けさせて!』
『えっ、ど、どうしたの!?』
『説明は後、早く!』
エイミィにそう伝えながら、リニス達と一緒に、女子トイレに駆け込む。
「リニス、長距離転移行くよ」
「ええ」
リニスも頷く。
紅と、黄金色、2つの魔法陣が重なって展開し、5人は光の中に消えた。
- 449 名前:燃え上がる炎の魔法使い 6-06/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/04(月) 23:14:10 ID:xBpd0wpn
-
「………………」
八神家。
5騎の守護騎士は主の前に跪いて──ザフィーラは人間形態──いるが、当の主人は、
電動車椅子ごとそっぽを向いている。
そこに流れる雰囲気は、まるで通夜の様に重々しいものだった。
「あ、……あの、はやてちゃん……」
「言い分けなんぞ聞きとない!!」
シャマルが声をかけようとするが、はやてはけんもほろろに言い返す。
ウィィン、モーターの音がして、はやては騎士達の方を向いた。
だが、その表情は、まるで般若のように、怒りに満ちていた。
「あたしは言った筈や! こんな事望んでへん! 誰かを傷つけたくなんかあらへん! そ
うやなシグナム!?」
「は……確かにお聞きいたしました……」
反論を許さないと言う勢いのはやてに、シグナムはただそれを肯定する。
「闇の書の力なんかいらへん! ただ、平和に静かに過ごせたらええ! そうも言ったな、
シャマル!?」
「はい……言われました……」
シャマルも、神妙な面持ちでそう言うだけだった。
「あたしは、皆の事信じてた! 大切な家族やって思ってたんやで! ヴィータ!!」
「うん……いえ、はい……」
ヴィータは落ち込んだように、肩を落として俯いている。
「それが、いつの間にこんな事になっとるんや!? どうして勝手に蒐集始めてたんや! ザ
フィーラ! レン!」
「面目次第も、ございません」
ザフィーラもまた、ただ静かにそう言う事しか出来なかった。
「しかもよりによってすずかちゃんの友達と喧嘩しとるなんて! これじゃ世間様に顔向
けできへんやんか!! どないしてくれるん!!」
「しかし、主はやて……」
「あたしたちは、はやての為に……」
シグナムとヴィータが、何か言いかけたが、はやては、それを遮り、軌って捨てる。
「うっさい、聞く耳もたん、言うたやろ!」
いかに落ち着いて見えようと、はやては所詮9歳児である。否、そもそも────
「だいたい……」
はやてがさらに何か言いかけたとき、すっと立ち上がり、はやてに近付いた。
パンッ!
振り上げられた手が、はやての頬を打ち据えていた。
「レン!?」
残りの4騎が、驚愕の声を上げる。ヴィータが、思わず立ち上がった。
「誰のせいで、みんなこんな必死になってる思うとるんや……」
レンは、しかし、震えながら、低い声で、そう言った。
「平和で静かに暮らせたらええ……そもそも、誰がその状況を不可能にした思うてるんや」
「えっ!?」
紅くなった頬を押さえつつ、はやては、戸惑った声を上げ、レンを見上げる。
「主はやて」
シグナムも立ち上がり、深刻そうな表情で言葉を発する。
「主の下半身麻痺、それは単なる神経性の物ではありません。幼少の頃より闇の書が消費
する魔力によってリンカーコアが侵食され、その影響として出てきたものなのです」
- 450 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 23:14:39 ID:nZoTMf8J
- 名前の時点でなんというかオリキャラが脂っこくて読みにくい
- 451 名前:燃え上がる炎の魔法使い 6-07/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/04(月) 23:14:43 ID:xBpd0wpn
- 「そ、そんな……」
愕然とするはやてに、シグナムは続ける。
「そして、闇の書が本格的に発現し、起動状態になったことで、それが現在、加速してい
るのです」
「ここまでにさんざん、自覚症状、あったはずやで。石田医師(センセ)も、そう言うてた。
けどはやてちゃん、それ、隠してしまいよるから、適切な治療、できへんねん」
「それは……」
シグナムとレンの言葉に、それまで強気だったはやてが、一転、萎縮したような態度に
なり始める。視線を下げてしまう。
「私達が起動して、その時からちゃんとはやてちゃんが不調を、私達や石田先生に言って
いてくれれば、私の治療技術や、この世界の化学療法でも、はやてちゃんにその寿命を全
うさせる事ぐらいは、できました」
シャマルも立ち上がり、切なげな、悲しげな眼で、言う。
「しかしながら、主はむしろ我々が起動して以降、積極的に自覚症状を隠されるようにな
ったとも、石田医師から聞き及んでいます。そして、残念ながら、我々がこのことに気が
ついたときには、手遅れだったのです」
シグナムは、むしろ自分を責めるように、そう言った。
「あたしたちははやてが死んじゃうなんて絶対嫌だった!」
ヴィータも言い、そして、ザフィーラと共に立ち上がる。
「解決策は二択。主がこのまま死に行くのを見送るか、命に背いても闇の書を完成させ、
主に魔力を与えるか……」
「それで、あたしらは後者を選んだっちゅうことや。闇の書が完成さえすれば、主の魔力
を侵食することもなくなるし、そうすれば、はやてちゃんの脚も動かせるようになる」
ザフィーラの言葉に、レンが、穏やかに続けた。
「…………」
はやては、俯いたまま、しばらく沈黙を置く。
「申し訳ありません、主。事が済めば、どのような処罰をなさろうとも、甘んじましょう。
ですから、今しばらくだけ、我らの不義、お許し下さい」
シグナムは改めて跪き、そう言った。
「シグナム……」
はやては、ぽつり、と、口を開いた。
「はっ」
「リンカーコアやったか、抜かれた人間は、どうなるんや? 死んでしまうんか?」
はやては、そう、静かに、問いかけた。
「いえ、よほど乱暴にやれば、あるいは最初からその事を目的とするなら話は別ですが、
通常は、しばらくの間意識障害があるだけで、自然に回復します」
シグナムは、少し呆気にとられたようにしつつ、説明した。
「せやったら、1人も、命だけは奪ってないんやな?」
「はい、我々も、主に殺人者の汚名だけは着せないよう、それだけは、慎重に」
聞き返すはやてにシグナムは、力強く断言した。
「シャマル」
「は、はい、なんでしょう?」
はやては、次に、シャマルに問いかける。
「闇の書が完成すれば、あたしは歩けるようになる、これもホントか?」
「えっと、足の麻痺は神経自体のダメージにもよるので、完全に回復するかは、100パー
セントではないですが……ただ、闇の書が完成すれば、浮遊も飛行も魔法で出来ますから、
自由に動く事は可能です」
- 452 名前:燃え上がる炎の魔法使い 6-08/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/04(月) 23:15:08 ID:xBpd0wpn
- シャマルは、少し逡巡しながら、そう答えた。
「最後に聞く……闇の書が完成したとしても、みんなは変わらずに、ここにいてくれるん
やな?」
「それは、もちろんです。我らシュッツリッター、闇の書の主と共に」
シグナムが、きっぱりと答えた。
「それやったらええ……シグナム……後の判断は、将であるアンタに一任する……」
「主?」
シグナムは、意外そうな声を出した。
そして、はやては、顔を上げる。
その瞳からは、既に、止め処もなく、涙が溢れていた。
「あたしかて……あたしかて、自分の脚で歩きたい! 誰の迷惑にもならず、1人で自由に
動き回りたい! それに……それに……」
うわぁぁぁぁっ、と、はやては声を上げた。
「もういやや! 1人になりたくない! まだ死ぬのだって嫌や! 死んだらまた、1人ぼっ
ちや! もう、1人は嫌や! 寂しいのは、いやなんや!!」
「はやてちゃん……」
「はやて……」
「はやてちゃん……」
「主……」
シャマルの、ヴィータの、レンの、ザフィーラの声が重なる。
「かしこまりました、主はやて」
シグナムは立ち上がり、直立不動の姿勢で、言う。
「我ら守護騎士、例えこの身に代えましても、主の願い、かなえましょう……!!」
- 453 名前:燃え上がる炎の魔法使い 6-09/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/04(月) 23:15:56 ID:xBpd0wpn
-
Dec.19.2005(JST)────時空管理局本局・中央医療センター。第33集中治療室、前。
ガラス張りの室内を見渡せる廊下に置かれた、ベンチの上で、アリサは静かに目を閉じ、
腰掛けていた。
バサッ
その肩に、突然、何かがかけられた。薄手の毛布だった。
「な、なに!?」
驚いて、顔を上げ、キョロキョロと見回す。
視界に、クロノが入った。
「なんだ、起きてたのか」
クロノは、缶コーヒーを手に、そう言った。
「心配になるのはわかるが、君も横になって、きちんと休んだ方がいいぞ」
クロノは、缶のタブを起こしつつ、言う。
「いいの」
アリサはそう言って、また、身体を丸める。
「あたしがやられた時も、ユーノはずっと、こうして待っててくれたんでしょ?」
どこに向けるでもないが、真剣な眼差しで、アリサは言う。
クロノは、缶コーヒーを煽りつつ、横目でアリサを見る。
「始めてあった頃は、長続きしそうのない凸凹コンビだと思ったが」
「どうもアンタ、一言多いわね」
クロノの言葉に、アリサはクロノを横目で睨む。
「でも、意外と、相性のいいカップルなのかもしれないな」
クロノは、そう言って苦笑した。すると、アリサは僅かに、顔を紅くする。
「当たり前よ、あたしとユーノはね、プレシアの事件のときから、攻防一体のコンビだっ
たんだから!」
誤魔化すように、不機嫌そうに声を荒げつつも、言葉では全く否定していない。
「そうだな……」
クロノは短く言って、もう一度、缶コーヒーを煽る。
しばらくの、沈黙。
「力に溺れた……」
「ん?」
アリサの呟くような一言に、クロノは聞き返す。
「あたしは、さんざん言われてる通り、魔力資質なんか三流未満だから、技術でそれをカ
バーするよう努力してきた……うん、自分で言うのも変だけど、そのつもり」
「君が努力してるっていうのは、認めるよ」
アリサの言葉を、クロノははっきりと肯定した。
「けど、カートリッジ使って、魔力に不安がなくなった途端、それが全部頭ン中から消え
ちゃった……1発当てれば終わりだ、って」
自分を責めるように、アリサは、低い声で、言う。
「僕としては、あの問題システムキットを使いこなしたってだけでも、充分だと思うけど
な」
「アンタにフォローされると、かえって背筋に寒気が走るわね」
感心したような声を出すクロノを、アリサは横目でじろりと見た。
「そりゃ、酷い誤解だ」
クロノはアリサを見て、困ったように眉を下げる。
「あのシステムの力を使えたのは、レイジングハートのおかげ。あたしは、何も考えずに
振り回してただけ……」
- 454 名前:燃え上がる炎の魔法使い 6-10/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/04(月) 23:16:17 ID:xBpd0wpn
- そこまで言うと、アリサは、顔を手で覆った。
「そのせいで、ユーノをこんな目に……」
嗚咽混じりの、声が上がる。
「…………」
朴念仁と言われて幾星霜、クロノはかける言葉も見つからず、アリサの嗚咽混じりの愚
痴を聞いていた。
「でも」
アリサがひとしきり自責の言葉を発した後、クロノは、言葉を発する。
「こう言っては失礼かもしれないが、君達のおかげで、闇の書の持ち主も解った。これは、
収穫だ」
「どうするの? あの、はやてって子を捕まえる?」
アリサは顔を上げ、クロノに問い質す。
「最終的にはそうなるが、すぐには無理だ」
「どうして!?」
驚いたような、少し憤りの混じった声で、アリサは聞き返す。
「君達の記録の通りだとするなら、演技でなければ、闇の書の主、八神はやては、蒐集活
動を認めていなかったことになる。それじゃあ、拘束できない」
「うーん…………」
クロノが言うと、アリサは不機嫌そうに、うなり声を上げた。
「守護騎士たちは、基本的には、魔術式だからね。人間と同じように罪を問えるのかと言
うと、疑問があるし。それに、守護騎士たちだけを潰しても、闇の書本体がそのままじゃ、
意味が無い」
「うー…………」
「まぁ、仮定として、守護騎士は捕まえるにしても、なまじな戦力を投入しても、あの守
護騎士たちにはかなわないし、逆に蒐集を進めさせてしまう結果になるからね。連中も、
管理局と敵対する覚悟は、出来ているだろうし」
クロノはそこまで言って、軽く息をついた。
「間もなく『アースラ』も運用可能になる。そうしたら人を投入して、一気に内堀まで埋
めるさ」
クロノは言い、缶コーヒーの最後のひとくちを、大きく煽った。
「ひとつだけ、お願いして良いかしら?」
アリサが、クロノに向かって、険しい目つきで、言葉をかけた。
「何だい?」
クロノが聞き返すと、アリサは、一度、ICUの中の、ユーノに視線を向けた。
「連中ぶっ潰す時は、私も一緒に行くから」
笑顔の欠片もなく、かといって悲壮でもなく、アリサはただ鋭い目つきで、そう言った。
クロノは、困惑気に軽く溜息をついて、言う
「本来は問題なんだろうが……止めないよ」
- 455 名前:燃え上がる炎の魔法使い 6-11/10 ◆kd.2f.1cKc :2008/02/04(月) 23:19:32 ID:xBpd0wpn
- >>444-449, >>451-454
今回は以上です。
前回で一箇所訂正。
>>272で夜を跨いだはずなのに日付が12/17のままになっています。
当然ですが
Dec.18.2005────13:12。
の間違いです。
保管の際に修正願えたらと思います。申し訳ありません。
- 456 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 23:27:00 ID:arwzUzTw
- >>435
オリキャラ嫌ならスルーしなされ。
嫌いなものをわざわざ読む必要はあるまいさ。
まぁ…異常に能力高い厨設定みたいなオリキャラはさすがに勘弁願いたいが。
- 457 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 23:31:53 ID:Z/7d9vv2
- エリック・サンタ・cold slepper・教導!・ビターパラッド・愚者・シガー氏
それに自己申告により( ゚Д゚)氏…
同じオリありでも、三浦氏のは何かが決定的に違うような
- 458 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/04(月) 23:41:41 ID:ThKocyRQ
- 敵キャラとかボスキャラなんか
オリキャラ出さなきゃどうしようもないんじゃないか?
- 459 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 00:00:30 ID:D3DxBjc+
- >>458
ボスや雑魚はおKでは?どうせ消えるし…
ただ…メインキャラと絡むのがどうかと……
メインキャラと絡んで濃いエロが無いならオリキャラじゃなくても…
オリキャラでもエロがあるならおKでは?エロパロ的にね?
- 460 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 00:06:14 ID:VnV1Iiid
- 基本的にオリジナルがあると告知されたものはタイトルでNGワードにしてるので問題ない。
- 461 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 00:08:47 ID:j6flRxou
- >>455
GJです。はやての決断が恐い。ハッピーEDだといいんですね。
つかやっぱ展開がますます読み取れないです。
その分楽しみも増えるんですが。
>>458
オリキャラ出すにしても、あまり目立たず、かといってものすごいモブにもならず
またスポットキャラとして本編の雰囲気を壊さないようにしているからじゃねいかと。
自分も投下してよろしいでしょうか?
- 462 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 00:11:18 ID:swLHT+D/
- クセの強いオリキャラも、例えば某クロフェイ長編の黒幕の様に、敵として設定すると物凄く輝いたりするしな。
- 463 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 00:11:20 ID:Ylp8jq3a
- 家紋
- 464 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 00:11:43 ID:LzoG8pxY
- おけーはやくとうかして
- 465 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 00:12:14 ID:4ndO4U2Y
- まずネタ・物語ありきで、展開上オリキャラが必要な分には構わないけど、(教導!とか愚者とか)
いわゆるオリキャラありきで既存キャラとカプ組ませる目的、
悪く言えば自己投影目的が透けてみえてたりすると歓迎されないね。
まぁ結局の所はどれだけ読者を引き寄せられるかなんだけど、
やっぱりネタありきでオリキャラはスパイス程度に、って方が概して面白い。
- 466 名前:44-256:2008/02/05(火) 00:12:51 ID:j6flRxou
- 投下します。
・時系列はJS事件後〜6課解散の間の秋くらいです。
・消費スレは5
・非エロです。
・主要キャラはヴィヴィオ、スバル、アルトそして
6課の貴重な男分3人+1匹の計7人でお送りします。
・癒し系SSを目指したくて。
- 467 名前:キャット・サプライズ(1/5):2008/02/05(火) 00:14:45 ID:j6flRxou
- ある秋晴れの日
例によってヴィヴィオはなのはが仕事の間、ザフィーラにかまってもらっていた。
そしてザフィーラに抱きつきながら、ヴィヴィオはこう言った。
「ザフィーラってフサフサしててあったか〜い。ヴィヴィオもザフィーラみたいになりたいな〜」
「ぬぅ、しかしヴィヴィオはヒトだからな、我やアルフのような獣ではないのでそれは難しい」
そこに訓練を終えたスバルと作業服姿のアルトが偶然通りかかった。
スバルとティアナの魔法戦における絶妙なコンビネーションは地上本部に勤務する魔導師の間では
有名だったが、スバルとアルトのコンビネーションは別な意味で有名であった。
2人がまわりを巻き込み爆発するそのお祭りパワーはまさに
「管理局のリーサルウェポン」「地上本部のBAD BOYS」「機動6課の48時間コンビ」
という多種多様な二つ名で呼ばれているくらいだ。
最近やらかした主なこととしては、先月開催されたミッド地上本部の
「第46回グレイト・ヤマモリング・ナポリパスタン・ショー」いわゆる大食い大会に
スバルがゲリラ的に出場してぶっちぎりの1位になるどころか
ノリで地上本部が備蓄のために保持していたコンバット・レーション半年分
を空けてしまいかけたことくらいである。
もちろんスバルや周りの観客を盛り上げ、セコンドとしてガンガンにアシストしたのはアルトである。
- 468 名前:キャット・サプライズ(2/5):2008/02/05(火) 00:16:24 ID:j6flRxou
- 奥にいる1人と1匹の会話を聞いていたアルト
「『ザフィーラみたいに』なりたいね…そうだスバル!私いいこと思いついちゃった!」
「〜?」
疑問系の顔になるスバルであったが眼は明らかに輝いており楽しそうだ。
そうしてアルトはヴィヴィオに話しかけた。
「ヴィ〜ヴィオ〜♪『ザフィーラみたいに』なりたい?」
「うん、なりた〜い!」
「何なら私の部屋に来てみる?『ザフィーラみたいに』してあげるよ!」
「アルトさん、もしかして『アレ』!?ナポリパスタン・ショーの懸賞金で買った」
「うん『アレ』!本当なら先月のパーティーのためにとっといたヤツ」
「あの時なのはさんがヴィヴィオを早く寝かしつけちゃってチャンス無かったですもんね〜」
「よし、そうと決まれば、ヴィヴィオおいで!『ザフィーラみたいに』してあげるから」
「スバル、あとはよろしくー!私はそこら辺のヒマなヤツを連れてくる!ギャラリーはたくさんいないとね♪」
「ラジャー!(敬礼)」
- 469 名前:キャット・サプライズ(3/5):2008/02/05(火) 00:17:28 ID:j6flRxou
- 数分後、アルトの部屋の前にエリオ、グリフィス、ザフィーラ、ヴァイスが集められた。
「いったい何なんですかアルトさん?キャロとコンビネーションの練習が」
「僕も本局にだす報告書の期限まであと1時間切ったんだけど」
「ただでさえ他の機動課のヘリまで修理依頼がまわってきて、整備部は大回転だってのによ。
つまらない用だったらヘリや機材の修理、全部お前に押し付けるぞ。」
「我も早く隊舎やヴィヴィオの護りに徹っしたいゆえ」
アルトいわく、非常に「ヒマなヤツ」らが部屋の前に並んでいた。
そんな3人と1匹に対してアルトは人差し指をふって
「チッチッチ、そんなアンニュイな思いはこれを見て吹っ飛ばせ!!どうぞ!」
そうしてスバルと共に部屋から出てきたのは、ぬこ…もとい三毛猫の着ぐるみを着たヴィヴィオであった。
確かに『ザフィーラみたいな』ケモノではあったが、趣向はだいぶ違う。
程良くタレた三毛猫の顔を頭にあしらい、大きくフサフサした耳がピンと立っている。
そして首には愛らしい赤い鈴のリボンが付いていた。
そして手はモコモコしており、足も普段の華奢なヴィヴィオの足と大きく違い非常にモフモフして大きかった。
その中で聖王特有の綺麗なオッドアイをぱっちりさせた可愛い顔が目につき
愛らしいぬこの着ぐるみと非常にマッチしていた
(これ以上の描写は各々の想像におまかせします)
- 470 名前:キャット・サプライズ(4/5):2008/02/05(火) 00:18:48 ID:j6flRxou
- 初めて着るぬこの着ぐるみを恥ずかしがってか
ヴィヴィオはしっぽを掴んだ手を目の前でちょっともじもじさせて
「に、似合うかな?」
と4人に聞いた。すると以下の反応の通りである。
「う、うん、かわいいよ!ヴィヴィオ(キャロにも着て欲しい!)」とエリオ。
ヴァイスは感動のあまり漢泣きに泣き(ちっくしょー、今すぐツンデレガンナーに
没収された盗撮用カメラを取り返さねば!!)などと考えていた。
グリフィスは顔をできるだけそむけて「えー、あー、似合うかな(ムッツリな僕にこれはキツイ)」
そしてザフィーラは一言「…無論だ(ワレハシュゴジュウ、ヤマシイオモイナド。ワレハシュゴジュウ、ハレンチナオモイナド。ワレハ…)」
各々が総じて好意的な回答をすると、ヴィヴィオはここで巨大な爆弾を投下した。
『ありがとう!そう言ってくれるお兄ちゃん、大好き!!』
そう言って百万ドルの笑顔でヴィヴィオは微笑んだ。もちろん両方のニャンニャンしたこぶしを口元に寄せてである。
(演技指導スバル、言語指導アルト)
エリオは照れて、顔をより赤らめ「キャローーー!!」と言い
ストラーダで壁に穴を開け、一直線に訓練場のキャロのもとへ飛んでいってしまった。
ヴァイスは「ビバぼっ、萌え!!」というよくわからない単語を発し、5m先まで吹っ飛んだ。
グリフィスは「ゴメン!このままここにいたら犯罪に走りry)…」などと言って窓から飛び降り
(*ここは3階です)
そしてザフィーラは…もはや魂はその身を離れアルハザードへ導かれようとしている。
アーメン。
- 471 名前:キャット・サプライズ(5/5):2008/02/05(火) 00:20:19 ID:j6flRxou
- 崩壊した戦線の状況を見てアルトはこう言った。
「まさかここまでの爆弾になるとは思わなかった、聖王ってやっぱすごいねー」
「本当ですね、ここまでやらかしたら、もう・・・一回やりますか♪ヴィヴィオ可愛かったし」
「うん、そうだね。今度はヴィヴィオがいつも持ってるウサギのぬいぐるみをモチーフにして…」
そういってスバルとアルトがあれやこれやを述べているとヴィヴィオがこう言った
「ねぇ、スバルお姉ちゃん、アルトお姉ちゃん。なのはママはこれ見たら何て言ってくれるかな?」
「あっ、そうだね!なのはさん見せに行こう!訓練場にいるはずだから!」
「よっしゃー!いざゆかん訓練場へ!」
そうして3人は仲良く訓練場へ向かっていった。
完
- 472 名前:44-256:2008/02/05(火) 00:22:18 ID:j6flRxou
- 以上です。前作のゲンヤSSから一気に癒し(?)を目指してみました。
それでは失礼します。
- 473 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 00:33:12 ID:Ylp8jq3a
- >>472
>(これ以上の描写は各々の想像におまかせします)
省いちゃらめぇー
- 474 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 00:36:23 ID:fSw6WZRd
- >>472
GJ。
ねねねねねねねねこおおおおおおお!!
いやああ!!食べちゃらめええ!!
と大混乱に陥る司書長を幻視した。
- 475 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 00:37:24 ID:Daf3rrUy
- >>462
個人的には彼はスカより10倍、マッドな悪役キャラだった。
オリキャラもあれくらい合えばいいんだがな。
- 476 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 00:52:35 ID:2gDOQ5tR
- >>472
GJ!
つーかいろいろ駄目な奴らばっかだなwwwww
>>474
どれだけトラウマなんですかあんたはw
- 477 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 01:12:29 ID:vWrtyehK
- ネコ役となった娘を食べる魔王様を幻視したわ
どうでもいいがなぜ聖王様は炉ばかりなのか?
- 478 名前:B・A:2008/02/05(火) 01:22:56 ID:Ch4Nynq6
- >>472
GJです。ヴィヴィオ+きぐるみ+「お兄ちゃん」というSLB並の破壊力で野郎どもを撃沈。
あの後、キャロはエリオに何されたんだ? ナニされたのか?
>>475
あいつは個人的には好かないけれど、悪役として大成功でしたよねぇ。嫌われてこその悪役というか。
ではでは、僕も投下しておkですか?
- 479 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 01:26:01 ID:QsSgsZpJ
- この数時間大量やね。
どうぞー。
- 480 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 01:26:16 ID:yeSrvufl
- >>476
そりゃ1期では子猫に追い掛け回され
二期は二期で、きっと無限書庫であのぬこ姉妹に喰われただろうしな(性的な意味で
あれ、淫獣のくせに捕食者側にまわってないぞこいつ
- 481 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 01:27:37 ID:LzoG8pxY
- よっしゃこい
- 482 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 01:31:07 ID:HdLia3Ud
- 支援
- 483 名前:B・A:2008/02/05(火) 01:33:02 ID:Ch4Nynq6
- よっしゃいくぜ(某勇者の声で)。
注意事項
・エリオ×ルーテシア
・非エロ
・本編改編。いわゆるIFというやつです。
・強引な展開や独自の解釈、勝手な捏造が多々含まれます。
- 484 名前:Ritter von Lutecia 第9話@:2008/02/05(火) 01:35:07 ID:Ch4Nynq6
- 体が重い。
足が言うことを聞かないし、左肩はまた脱臼していた。
強引にはめ込んだら身を裂くような痛みが走った。右目もさっきから見えていない。
あのシグナムと戦ったのだ。五体満足で済んでいるだけでも僥倖といえる。
彼女に能力リミッターが課せられていなければ、あそこで倒れていたのは自分の方だ。
「来たね」
不意に現れた人物にエリオは身を強張らせる。
腰まで届く金色の髪、ルビーのような赤い瞳、透き通るような白い肌、
正常な美意識を持つ男ならまず間違いなく美人だと答える美貌。
だが、今のエリオにはまるで悪魔か何かのように思えて仕方がなかった。
「待っていたよ、エリオ」
「フェイト・・・さん・・」
重い体に鞭を打ち、ストラーダを構える。
後、何分だ?
後、何分でルーテシアを乗せたヘリが飛び立つんだ?
「そこを・・・どいてください・・・・」
「ダメって言っても退かないよね」
あっさりと、フェイトは道を明けた。
拍子抜けするエリオに、フェイトは慈母のような微笑を浮かべた。
「あの娘のところまで案内してあげる。だから、少しお話しようか?」
- 485 名前:Ritter von Lutecia 第9話A:2008/02/05(火) 01:37:48 ID:Ch4Nynq6
- 人が1人通るのがやっとの獣道を歩く。
自分の前を歩くフェイトの後姿に、エリオは一瞬ルーテシアの姿を重ねた。
そう、アルトセイムの森の中を探検した時も、ルーテシアはフェイトのように先頭を歩いていた。
「本当はね、エリオを止めるつもりで来たんだ。これ以上、エリオに罪を重ねて欲しくはかった」
「なら、どうして僕を逮捕しないんですか?」
「それじゃ、エリオが納得しないってわかっているから。
ううん、そうじゃなくて、エリオが自分を許せなくなる・・・・かな?」
フェイトの言葉はどこまでも優しい。聞いていて心地よくなるような涼やかな声は、それ故に容易に心の中に染み込んでくる。
「だって、エリオは優しい子だもの。どんな理由があろうと、誰かを傷つけた自分を許せるはずがない。
けれど、エリオの一番はあの娘だから、あの娘のためならエリオはまた人を傷つける。
どれだけ苦しくて嫌なことでも、あの娘のために何度だって傷つける」
エリオの根幹にある矛盾。
ルーテシアを守りたいという思い。
ベルカの騎士としての誇り。
その相反する思いがエリオの心をすり減らし、壊していった。
「私もね・・・・エリオと同じくらいの時に、大切な人を救おうとしたんだ」
愛する母プレシアの願いを叶えるため、自分自身をも犠牲にしようとした。
本当は傷つけたくないものたちを傷つけた。そこまでしても、プレシアは振り向いてくれなかった。
彼女が見ていたのは、自分のオリジナルであるアリシアだけ。
願ったのはほんのささやかな幸せなのに、その願いすら無残に踏みにじられた。
「その人は、最後まで私のことを見てくれなかった。それでも良いって思っていた。
それでも、あの人の力になれるのなら、私は何にでもなろうとした・・・・・けれど、あの人はそれすらも求めてくれなかった」
その生き方は、エリオと同じであった。ただ一つ違うのは、ルーテシアはエリオを受け入れてくれたが、
フェイトは大事な人に拒まれたということだけ。
- 486 名前:Ritter von Lutecia 第9話B:2008/02/05(火) 01:39:40 ID:Ch4Nynq6
- 「それでもね、後悔はしていないんだ。精一杯やった結果が今の私なら、私は自分を否定しない」
思いを達せられなかったことをフェイトは是と言う。
大切な人を守れなかったことをフェイトは是と言う。
その気持ちがいったいどこから出てきているのか、エリオにはわからなかった。
「それで・・・良かったんですか? 大切な・・・・フェイトさんのお母さんだったんでしょ!」
「ううん、今でも悔やんでいるよ。だから迷うんだ。迷って、苦しんで、みっともなくあがいて、それが今の私なんだ」
捨てれば良いってわけじゃない。逃げれば良いってわけでもない。ただ受け入れて、認めるだけで。きっかけ一つで、世界は素晴らしいものに変わるとフェイトは言う。
そう、自分はそれすらしなかった。愛する人以外の全てを捨ててしまった。
彼女のためなら、他の何もが必要ないと思っていた。けれど、それは間違いだ。
たった一つ、絶対に捨ててはならないものがあった。
思い返されるのは幼き日の自分。
かつてエリオが思い描いた理想。
その源となった誓い。
『僕は・・・僕はいつか騎士になる! 騎士になって、悪い奴からママのことを守るんだ!』
あの時は、ただ愛する人のそばにいたいという願いからだった。その願いは形を変えて、今でもエリオの胸の奥底で燻っている。
それがどんなに歪なものでも、エリオにとってはかけがえのない思いだ。
だから、伝えなければならない。
誓いに秘められた意味を、願いの先にあるもの。
あの小さな女の子に、伝えなければならない。
「これから何をするのかはエリオの自由だよ。けど、これだけは忘れないで。
新しい自分を始めるには、今までの自分を終わらせなきゃいけない。それができるのなら・・・・・」
不意にフェイトは振り返り、エリオの体を抱きしめた。
甘い香りが鼻をくすぐり、強張ったエリオの体から力が抜けていく。
こんな風に抱かれるのは、いったい何年ぶりだろうか?
「ちゃんと自分で終わらせて、それから始めなさい」
「おかあ・・さ・ん・・・」
エリオの頬を涙が伝う。
ごめんなさい。
迷惑かけてごめんなさい。
あなたの騎士になれなくてごめんなさい。
そして、こんな僕を愛してくれてありがとう。
ありがとう、お母さん。
- 487 名前:Ritter von Lutecia 第9話C:2008/02/05(火) 01:41:30 ID:Ch4Nynq6
- 不意に、2人の前に魔法陣が展開する。
中から飛び出したガリューは、その鋭利な爪をエリオ目がけて振り下ろした。
「エリオ!」
フェイトはエリオを突き飛ばし、瞬時に起動させたバルディッシュでそれを受け止める。
「行って・・・・その先にあの娘がいる!」
「フェイトさん!」
「行きなさい、エリオ!」
「・・・はい!」
踵を返し、エリオは獣道を昇って行く。追うこともできただろうに、ガリューはあえてエリオを無視した。
「わざと行かせましたね」
「・・・・・」
ガリューに与えられた命令はエリオを行かせぬことだった。しかし、ガリューはその命令を聞かず、わざとエリオを見逃した。
自分でもよくわからないが、彼を主のもとへ行かせねばならない気がしたのだ。
そして、気付けば自分はこの金髪の魔導師と対峙し、あろうことか挑発するように指を曲げていた。
「そうですね、子どもの喧嘩に親がでしゃばるわけにはいきません。それに・・・・・」
フェイトがバリアジャケットを構築し、静かな闘気をその身にまとう。
歓喜の震えがガリューの背筋を走った。同時に、心の中で主に詫びる。
召喚蟲でありながら、その命に背き、己の欲を優先したことを謝罪する。
エリオとの戦いを通じて、ガリューには一つの思いが芽生えていた。
エリオはもっと強くなる。やがては、自分すらも追い越してしまうだろう。
だが、自分は召喚師ルーテシアを守る召喚蟲。その誇りに賭けて、二度の敗北を許すわけにはいかない。
故に、彼が上を往くならば、自分は更なる高みを目指さねばならないのだ。
そのためにも・・・・
「一度、あなたとも戦ってみたかった」
あのエリオを育てた女と、戦ってみたかった。
- 488 名前:Ritter von Lutecia 第9話D:2008/02/05(火) 01:43:04 ID:Ch4Nynq6
- 約束の10分が過ぎ、ヴァイスはヘリを離陸させる準備に入った。
シグナムはまだ戻ってこない。別に帰還はまたなくても良いと命じられていたが、心配なことに変わりはなかった。
「大丈夫かな、姐さん」
『心配ですか?』
「ま、尊敬する上司だからな。それよか、エンジンは温まったか?」
『問題ありません』
「よし、こっちはこっちの仕事といくか」
『OK. Take off. Standby』
ゆっくりとプロペラが回り、ヘリが浮上する。
ストームレイダーという管制AIが搭載されているおかげで、揺れはほとんど起きなかった。
『後方より、当機に高速で接近する物体あり』
不意にストームレイダーが告げ、ヴァイスはレーダーを確認する。確かにもの凄いスピードで近づく影が映っている。
鳥にしては影が大きいし、乗り物にしては小さい。魔導師が飛んできていると考えるのが妥当だ。
いったい何が向かってきているのかと後方カメラの映像を呼び出し、ヴァイスは絶句した。
「マジかよ!?」
そこに映っていたのは、傷ついた体を風に晒しながらも、
まっすぐにこちらを目指して飛んでくるエリオの姿だった。
to be continued
- 489 名前:B・A:2008/02/05(火) 01:44:48 ID:Ch4Nynq6
- 以上です。
当初の予定では、ここでフェイトが全力全開(ライオットザンバー+真ソニックフォーム)でエリオを「ちょっと、頭冷やそうか」とぶっとばし、
エリオは薄れる意識で飛び立つヘリを見るというオチにする予定でした。が、それだと魔王2号だという脳内会議の結果により、急きょエリオを導くキャラに変更となりました。
シグナムのおかげで自分の矛盾を自覚したエリオはフェイトのおかげで迷いを断ち切れましたが、彼が見出した捨ててはならなかったものが何かは次回に持ち越しです。
- 490 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 01:51:37 ID:HdLia3Ud
- GJ!!です。
母は強しの回でしたね。今後の流れが一切読めないので楽しみですw
でも、外道なエリオも見てみたいwルーテシアはガリューとエリオさえいればよくて、エリオもルーテシアさえ
いればいいみたいな。
- 491 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 01:58:18 ID:LzoG8pxY
- よし、このまま行けばルーテシアENDまでもう少しだ。
あとはスナイパー一人ぶち殺せば二人の甘い幸せな時間が待っているぞ、頑張れエリオ! 負けるなエリオ! ゴールまであと一歩!!
基本的にエリオはそこまで好きじゃないけど、このエリオは良いですね。
見も心も傷つきながら戦う姿が悲壮感漂っててステキです。
- 492 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 02:20:15 ID:LqwRJuKf
- 皆さん毎度乙
- 493 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 02:41:32 ID:8mv3zZ/q
- えっ、ママンそれでいいのかよぅ?
うーむ、最終回までじっくり見させていただきます。
- 494 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 06:40:56 ID:UcSM6hH6
- >>490
外道なエリオと聞いて、
ルーキャロと重婚、他にも魔王以下養母部隊長スバティア寮母全員ヤりこまし、
(酢飯は放置プレイ)
聖王にエロ教育施しながら管理局の影の実力者として君臨する
エリオを幻視してしまった。
- 495 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 07:01:06 ID:4ndO4U2Y
- >>489
GJ! フェイトをママと呼ぶエリオ可愛いよ。
本編だとどこまでも親子未満のまま巣立ちしちゃったし……
でも理由はどうあれあんだけ大暴れしたんだから叱らなきゃダメッスよフェイトさん。
今のエリオ肯定したらどこまでも堕ちてくだろうし……いや、手遅れか。
- 496 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 07:10:38 ID:d5Q+3nWB
- >>422
GJ!
ティアかわいいよ、ティア。
後編も諜報者の続きも投下楽しみにしてます。
- 497 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 07:37:34 ID:j6flRxou
- >>489
GJです。あれっ?フェイトさんと戦ってるのエリオじゃなくてガリュー?
もはや展開が読めない、だがそれがいい(ニヤリ)
- 498 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 07:42:06 ID:RczL1ylU
- だがまだちょっと期待してる。このエリオ全肯定な流れを
空気を読まない部隊長がフルボッコで吹き飛ばしてエリオをずるずる引きずって帰るエンドをな!
キャロから戦闘時のルーの言葉を聞いて、フェイトが調査してルーの母親を特定保護、
回復させる方法やらルーテシアと共に過ごせるような状況を整える。
その一方でシグナムがエリオを叩き伏せて連れ帰り、周囲を信じず独断行動した結果は、
自分に犯罪歴がつき、無駄に管理局員を傷つけ、六課に汚名を浴びせただけだったと言う。
エリオは酷く落ち込むが、ルーテシアはエリオが自分のために頑張ったことを本当に感謝していて、
全く無駄ではなかったのだと知る……というシグナム分岐エリルー純愛エンドを勝手に妄想してみた。
- 499 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 07:55:40 ID:Nqk1up7W
- >>489さん
いい話乙&GJ
>「ちゃんと自分で終わらせて、それから始めなさい」
「おかあ・・さ・ん・・・」
エリオの頬を涙が伝う。 ごめんなさい。
迷惑かけてごめんなさい。
あなたの騎士になれなくてごめんなさい。
そして、こんな僕を愛してくれてありがとう。
ありがとう、お母さん。
一期を思い出しつつ、エリオの感情にジーンと来ちゃいました。
後編も期待してます。
- 500 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 08:11:41 ID:bC7e7Urd
- うん、やっぱフェイトさんは激甘が似合う……w
怒らなきゃ駄目なのは重々承知なんだよね……でもできないんだよなぁ、それが可愛いんだけど
- 501 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 08:13:26 ID:IkEXi1lp
- >>462
個人的にはクロなの長編とこのはやて中編に出てくるオリキャラが好き。
- 502 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 08:14:17 ID:KClU7yL4
- >「おかあ・・さ・ん・・・」
こんなに良いとは思わなんだ。
GJ。
- 503 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 09:39:27 ID:sFtfn+ik
- >>422
GJ!
いやっほう!!続きキター!!!!
エリティアのあま〜い生活にやられました!!!
この二人本当にいいコンビだなあ。恋人になる日も(ry
>>489
こちらもお待ちしてました。フェイトママン・・・
やっぱり「おかあさん」と呼ぶところが切なくて仕方がないです
本当にエリオはフェイトさんに助けられて良かったなあ
GJ!
- 504 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 10:45:29 ID:90Mnczyu
- 偶然なのはとフェイトの部屋に居合わせてしまった為に、二人のお風呂に付き合わされるエリオ
二人の魅力的な体に思わず股間のストラーダが反応してしまい、エリオはそれを隠そうと必死になる
二人は妙にそわそわしているエリオを心配し、何とかして自分達の近くに来させようとエリオの腕を引っ張るもエリオが抵抗し、足が滑って三人がくんずほぐれつ浴槽で絡み合うそこで二人が目にしたのは、皮を被ったビンビンの股間のストラーダでした…
- 505 名前: ◆6BmcNJgox2 :2008/02/05(火) 11:39:22 ID:0jm7p0oH
- こんな時間に空気を読まずに投下さしてもらいますorz
・大人なのは×子供ユーノと言う電波を受信し、あれこれ試行錯誤を繰り返した結果がこれ
・エロあり(逆レイプ?)
・アニメ本編の設定との矛盾? そんなの関係ねぇ!(某芸人風に)
- 506 名前:ユーノくんと不思議なお姉さん 1 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/05(火) 11:40:08 ID:0jm7p0oH
- なのはが初めてユーノと交わったその晩、ユーノの口から衝撃的な事実を聞かされた。
「なのは…実に言い難い事なんだけど…僕…今日が始めてと言うワケじゃないんだ…。」
「え……。」
なのはは絶句した。なのはは愛するユーノに初めてを捧げたと言うのに
ユーノの初めての相手とは一体何者なのかと……
「と言っても…それはもう随分昔の事だし…なのはと会うよりも昔の事…。
それに殆ど逆レイプも同然だったし…相手がどんな人だったかも覚えて無いんだ。」
「な〜んだ…逆レイプじゃ仕方ないよ。てっきりユーノ君が浮気したのかと思っちゃった。
それにずっと昔の事なんでしょ? 私がユーノ君の初めてじゃなかったって言うのは悔しいけど…。」
それなら仕方が無いとばかりになのはは内心悔しいと思いながらもそれ以上ユーノを咎める事は無かった。
しかし、やはりユーノは申し訳無さそうにしている。
「ごめんなのは…いずれは言っておかなきゃならない事だと思っていたから…。」
「大丈夫だよ。気にしないで…。今は私がユーノ君と一緒にいるんだから。」
なのはとユーノはお互い9歳の時に出会った仲である。それよりも前のユーノを逆レイプするなんて
一体どんなショタコン女なんだろうと内心なのはは考えていたが、直ぐに考えるのを止めた。
それから数日後…なのはは何時もの様に自主トレーニングに励んでいた。
教導隊の一員として若手魔導師を鍛える立場にある身故、自分自身も
しっかり鍛え込んでおかなければならない。もはや日常と化した自主トレーニング。
それでも気を抜かず鍛錬に精を出していたのであったが……
「ん? 何か天気が思わしくないな〜。」
先程まで晴れていたと言うのに何時の間にかに空に雨雲が掛かって来ており、
ゴロゴロと雷の音さえ聞こえて来ている始末。勿論他の物がサンダーフォールの
魔法を使っている様子も見られず、純粋に自然現象による物なのだろう。
そうなのはが考えていると…次の瞬間なのはの全身が強烈な光に包まれた。
雷がなのはに向けて落ちたのであろうか? もはや悲鳴を上げる暇さえ無い。
なのははこのまま雷の電流によって死んでしまうのかと思われたが………
「こ…ここは?」
なのはが気付いた時、彼女は見た事も無い山奥にいた。今は止んでいるが、
先程まで雨が降っていたのだろう。周囲の土や木々が濡れている。
「何で私がいきなりこんな山奥に? 確か訓練場にいたはずなのに…。」
なのはは一体何が起こったのかさっぱり分からなかった。
誰かの手によって転送魔法が使われた様子も見られない。
そして一体ここは何処なのか…とにかく誰かいないのかと
一人濡れた山道をトボトボと歩いていたのだが…そこである物を発見した。
- 507 名前:ユーノくんと不思議なお姉さん 2 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/05(火) 11:40:39 ID:0jm7p0oH
- 「あ! 危ない!」
岩壁の近くで小さな子供が何かしており、その真上から巨大な岩石が落ちて来ていたのだ。
小さな子供は恐怖の為に足がすくんでいるのか…その場から動こうとしない。
このままでは小さな子供は岩石に潰されて死んでしまう。そう思った直後、
なのははその岩石へ向けて攻撃魔法を発射し、さらに自身も飛んで小さな子供を抱き抱え
その場から飛び去った。攻撃魔法は岩石を粉々に吹飛ばし、飛び散った破片も
プロテクションによって防いだ為子供に怪我は無かった。
「お…お姉ちゃん…ありがとう…。」
「坊や大丈夫…って…ん?」
自分が助けた小さな子供の顔を見た瞬間なのはは驚いた。肩まで伸びた金髪に
緑色の瞳をした…まるで女の子の様な顔をしたそれはそれは可愛らしい男の子だったのだが…
同時になのはにとって見覚えのある顔でもあった。そう、子供の頃のユーノに似ているのだ。
「(でも…まさかね…。)」
目の前の男の子はなのはの記憶にある子供の頃のユーノよりもやや幼い。
と言うか何よりも今のユーノは立派な大人だ。きっと他人の空似なのだろう。
なのははそう考えていたのだが…男の子の方は首を傾げていた。
「どうしたの? 僕の顔に何か付いてるの?」
「い…いや…何でも無いよ。それよりこんな所で何をしてたのかな? まだ小さいのに…危ないよ。」
なのはは優しく男の子を注意するが、そこで男の子は先程の岩壁を指差して言った。
「僕はあの地層を調べてたんだよ。何か埋まって無いかな〜? って…。」
「へ〜まだ小さいのにしっかりしてるんだ〜ってそうじゃない! 坊やみたいな
小さい子供がこんな山奥に一人でいるなんて危ないでしょ?」
なのははなおも男の子を注意するが、男の子は表情を変えずに答える。
「一人じゃないよ。だってここにお姉ちゃんがいるじゃない。」
「私は数に含めちゃダメだよ! とにかく坊やが一人で山奥にいるなんて危ないよ!」
「じゃあお姉ちゃんはどうしてここにいるの?」
「え……。」
これは痛い所を突かれた。そもそも自分が何故こんな山奥にいるのかなのはも分かっていないからだ。
「それにお姉ちゃんだって一人みたいじゃない。お姉ちゃんも一人じゃ危ないよ。」
「私は良いの! もう大人だから!」
なのははおっぱ…胸を張って力強く答えるが男の子は不機嫌そうに頬を膨らませていた。
「え〜? お姉ちゃんずるいよ〜。」
「ずるくない。って言うか私がいなかったら坊やは岩に潰されて死んでいたかもしれないんだよ。」
「あ…それは…ごめんなさい…。」
「うんうん子供は素直が一番。」
- 508 名前:ユーノくんと不思議なお姉さん 3 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/05(火) 11:41:08 ID:0jm7p0oH
- 何だかんだで素直な所もある男の子の頭をなのはは笑顔で優しく撫でるが
初めて会った相手のはずだと言うのに不思議と見知った相手と会話している様な
何かをなのははこの男の子から感じていた。と、その時だ。
突然何の脈絡も無く男の子が倒れたのである。
「え!? どうしたの!?」
慌てて男の子を抱き上げようとするなのはだが…ここである事に気付く。
「う…凄い熱! それに服がこんなに濡れてるじゃない!」
周囲が濡れているのを見れば分かる通り、先程までここは雨が降っていたと思われる。
その雨の中を雨具も無しに地層調査等を一人でやっていたのだろう。
そうなってしまえば全身びしょ濡れになって体が冷え、発熱を起こしてうのも無理は無かった。
「寒いよ……お姉ちゃん…寒いよ……。」
男の子は苦しそうに身体を振るわせる。顔色も悪い。恐らくは先程までは地層の調査に熱中していた故に
全く気にはしていなかったのであろうが、なのはと会った後で気が緩んだ事が原因で
自身の熱を自覚したのだと思われる。
「た…大変! とにかく何とかしなきゃ!」
なのはは男の子を抱き抱え、何処か濡れていない場所へ運んで寝かせた。
「寒いよ…お姉ちゃん…寒いよ……。」
「待ってて…今火を付けてあげるからね!」
苦しそうに寝ている男の子に自分が着ていた上着を被せ、なのはは
周囲から集めて来た薪に軽く攻撃魔法を当てて火を付けようとするが
先程まで雨が降っていたと思われる故に湿気っているのか火が付かない。
しかもその間にも男の子はどんどん衰弱して行くのだ。
このままでは下手をすれば命の危険さえある。
「ああ…寒いよ…寒いよぉ…。」
「そんな! また熱が上がってる! それに火も中々付かないし…どうすれば良いの!?」
なのはは必死だった。しかしそれでも解せない所もある。それは何故自分が
この男の子相手にここまで必死になっているのか? である。
確かに時空管理局の魔導師として人を助ける事は当然の事だ。しかし……
それとは関係無しになのはは必死になっていた。何故?
相手はただユーノに似ているだけなのに…ただの他人の空似だと言うのに…
何故自分はこうも必死になってしまうのか…それが分からない。
ただこれだけは分かる。この子を絶対に助けなければならない。
この子を死なせてしまっては絶対にいけない。もしこのままこの子を死なせてしまう様な
事になれば…絶対に取り返しの付かない事になる。そう言う予感を感じさせるのだ。
「もうこうなったら…これしかない…。」
なのははある決断をし…服のボタンを外した。
「大丈夫…私が…坊やを温めてあげるからね…。」
- 509 名前:ユーノくんと不思議なお姉さん 4 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/05(火) 11:41:55 ID:0jm7p0oH
- なのはが取った行動。それは裸になって自らの肌で温めると言う物だった。
なおも苦しそうに寝ている男の子の目の前で服を脱ぎ捨て、その美しい肌を露としたなのはは
次に男の子の服も脱がし始める。男の子の服は濡れているのだ。火を焚けない状況では
ますます男の子の身体を冷やしてしまう事になる。何よりも…人肌で温める為には
直接相手の肌に触れる必要があるのだ。だからこそなのはは丁寧にかつ迅速に男の子の服を脱がした。
「うわぁ…可愛い…なんて言ってる場合じゃないよ。」
下着や靴下まで全て脱がし終えた後…なのはは男の子の可愛らしい裸体に一瞬興奮してしまった。
女の子の様な顔をしているのだけども…首から下を見れば男の子だと分かるその裸。
しかし…だからこそなのはにはとてもとてもこの上無い程にまで可愛らしく思えた。
「寒い…寒いよぉ…。」
だがその間にも男の子は苦しんでいる。故になのはは優しく男の子の身体を抱いた。
「私が温めてあげるからね…。」
「え? んん!」
男の子が虚ろな目でなのはを見た時、そこでやっと初めて自分の置かれている状況に
気付いたのだろう。目の前にいる裸の女性に驚きを隠せないでいたが…その直後…唇を奪われた。
「ん…ん…ん…。」
なのはは男の子の体を優しく抱きしめながら唇同士を密着させ、さらに口の中に舌を滑り込ませ
絡ませて行く…。こういう体験は初めてなのだろう。男の子も戸惑っている様子であったが
熱で衰弱してる為に体が思うように動かないと思われる。
「んぁ…。」
「どう? 少しは温まった?」
なのはが唇を離した時…二人の口の間には唾液の架け橋が繋がっていた。
そしてそれを繋げたまま優しく訪ねるなのはだが…男の子の目には涙が浮かんでいた。
「うん…温かいよ…でも…どうしてこんな事するの?」
「それはね…坊やを温めてあげる為だよ。」
なのはは今度は男の子の顔を自身の豊満な二つの乳房の間に埋め込んだ。
こうして男の子の体を満遍なく温めてあげるつもりらしい。
「ん…ん…ん…。」
「ほ〜ら温かいでしょう?」
やっぱり顔を乳房に埋められるのも初めてなのだろう。男の子は戸惑っている様子であったが…
次の瞬間男の子は顔をなのはの乳房の谷間から出し、左乳の乳首に吸い付いたのだ。
「きゃ!」
なのはの体が思わずピクンと震えた。そして男の子は乳を吸い出さんばかりに吸い続ける。
「(う…うぁ…上手……何で…こんなに感じちゃうの…?)」
幾ら乳首が敏感な所だと言っても男の子の吸いっぷりは凄まじい物がある。
ここまで感じてしまうのはユーノと交わった時に吸い付かれて以来の事であった。
- 510 名前:ユーノくんと不思議なお姉さん 5 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/05(火) 11:42:28 ID:0jm7p0oH
- 「坊や…ママが恋しいのかな? そんな事してもまだ出無いよ。」
「僕にはお母さんは…ううん? お父さんもいないんだ…。」
「え…。」
寂しそうな顔で言う男の子になのはは一瞬驚きの顔を見せた。この子も孤児なのだろう。
そう言えばユーノも育ての親はいても産みの親はいないと言う話を聞いた事がある。
そう考えるとますます他人の様な気がしない。不思議な物だとなのはは思った。
「わかった。じゃあ今だけは私が坊やのママになってあげる。だから…沢山温めてあげるからね…。」
「う…うん…ありがとう…。」
男の子はまるで赤ん坊に戻ったかのようになのはの左乳首に吸い付き始めた。
その上さらに小さな左手で右乳の方を握り締め、あろう事か乳首さえ弄くり始めたのだ。
「(うあ! 凄! この子上手…。どうして? まだ子供だからこういうのって初めてでしょ!?)」
なのはは驚きに耐えなかった。まだ子供だと言うのにどうしてこうも上手なのだろうと。
これはもはや天性の物としか言い様が無い。何よりもまるでユーノとエッチをしている時の様な
感じがする。相手はただユーノと他人の空似なだけの赤の他人だと言うのに…。
と、そこで自分のお腹に固い物が当たっている事になのはは気付いた。
良く見て見るとそれは男の子のモノ。まだ毛も生えてないし、皮に包まれた幼いモノであったが
男の子の可愛らしい顔からは想像も出来ない程大きくて…そして硬く勃起していた。
「うわ〜…坊やのオチンチンって凄く大きいんだね。」
「あ…な…何をするの?」
「フフフ…坊やのオチンチンも温めてあげる。」
男の子は慌てていたが、なのはは優しく微笑みながら男の子の幼いモノを
自らの豊満な乳房の間にゆっくりと挟みこんだ。俗に言う『パイズリ』である。
そして両手で乳房を持ち上げながら男の子のモノを扱いて行くのだ。
「あ…やめ…ああ…。」
「どう? 温かいでしょう?」
乳房でモノを扱かれると言う初めての感触に男の子は戸惑い、身体を震わせていたが
なのははなおも優しく…かつ大胆に扱き続けた。
「温かいよ…でも…でも…やめてよ…オシッコ出ちゃう…あ!」
幼いモノを扱かれていく内に男の子は尿意を感じた。と次の瞬間、
男の子の幼いモノから真っ白な濃い精液がまるで水鉄砲の様に勢い良く発射され
なのはの顔面を白く染め上げていた。男の子はまだ幼いと言うのに異常すぎる程である。
「な…何この白いの…オシッコじゃないよ…。」
「フフフ…これは精子って言うんだよ坊や。」
「せいし?」
男の子は始めて見る精子に戸惑いを隠せないでいたが、なのはは自らの顔にかかった
真っ白な精液を美味しそうに嘗め、幼いモノを手で掴みながら男の子の身体を跨いだ。
- 511 名前:ユーノくんと不思議なお姉さん 6 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/05(火) 11:43:07 ID:0jm7p0oH
- 「男の子のオチンチンって言うのはね? おしっこ出したりする以外に
こういう使い方があるんだよ…。」
「え? 何をするの? あ…やめて!」
先程派手に出したと言うのになおもカチコチに硬いままの男の子の幼いモノを
掴んだ状態でなのはは自らの股を大きく開いた。初めて見る女性のソレに
男の子も思わずビックリしてしまっていたが、なのはは男の子の幼いモノを
自らのソレにゆっくりと押し付けた。
「こうやってね…女の子のオマ○コに入れたりするんだよ。」
「え? 入るの…? あ…ああ…ほ…本当に入ってる……。」
自分の幼いモノがなのはのソレの中へゆっくりと沈み込む様を見て男の子も驚いていたが…
直後に襲い来るのはこの上無い程の快感だった。
「あ! あああぁ……。」
「どう? 気持ち良い?」
「ああぁぁぁ…。」
もはやどう言って良いのか分からず、男の子は頬を赤くしながら喘いでいた。
先程幼いモノを乳房に挟まれていた時も男の子は今まで感じた事の無い何かを感じていた。
しかし今はそれ以上に凄まじい。男の子の幼いモノをなのはのソレが満遍無く包み込んでいるのだ。
なのはの体温がそのまま男の子の幼いモノに伝わり…男の子を温める。
「それじゃあ動かすよ〜。」
「え? ああ!」
なのははゆっくりと腰を動かし始めた。これも男の子にとって初めての経験。
幼いモノが己を包み込んでいるソレと擦れ合うのである。
「気持ち良い…気持ち良いよ〜…。」
「それに温かいでしょ?」
「うん…温かい…温かいよぉ〜…。」
男の子はなのはの身体を抱きしめ、なのはも男の子を抱き返した。
そしてなのははなおも腰を激しく動かす。だがなのはは不思議な何かを感じていた。
エッチはただ一人…ユーノとしかしないと決めたはずなのに…この男の子と
している事に何の罪悪感も感じないのである。一体何故……そう疑問に思っていた時だ。
「アッ!!」
今度はなのはが喘ぎ声を上げた。良く見ると男の子の方も腰を動かし始めていたのだ。
しかもまだ小さい子供とは思えない程激しい。
- 512 名前:ユーノくんと不思議なお姉さん 7 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/05(火) 11:43:42 ID:0jm7p0oH
- 「アッ! なっ! 凄!」
「お姉ちゃん! 気持ち良いよ! 気持ち良いよぉ!」
男の子はますます激しく腰を動かし、今度はなのはが逆に突き動かされた。しかも…
「や! おっぱ…ああ!」
男の子は腰を激しく動かしながら…またもなのはの乳首に吸い付いたのである。
「凄い! 凄いよ坊やぁぁぁ!」
この男の子は初めてなはずだと言うのに何故こうも凄いのか…なのはには分からなかった。
「(で…でもこの感じ…誰かに似てる気がする………そうだ…ユーノ君! ユーノ君に似てるんだ!)」
なのはを激しく突く男の子の様が…なのはにはユーノと被って見えた。
しかしこの男の子はユーノでは無い。似てはいるが…赤の他人。全くの別人…のはずなのだが…
何故こうもこの男の子はユーノに似ているのだろう……それが全く不思議で仕方が無かった。
「あ…あ……あ………ああああああああぁぁぁぁ!!」
結局なのははイってしまった。相手はまだ小さな子供だと言うのに………。
しかし同時にある事に気付く。それは男の子が元通り元気になっていると言う事だ。
なのはが抱く以前はあんなに衰弱していたと言うのに……。
「気持ち良いよ! 気持ち良いよお姉ちゃん! 気持ち良いよぉ!」
「あっあああー!! あー! あー! 凄! 坊や凄っ! ああああああー!!」
男の子は元気になってますます夢中になって腰を激しく動かし、なのはを何度もイかせた。
もはやすっかり立場が逆転してしまっていたのだ。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…。」
「ねぇ…お姉ちゃん…大丈夫?」
男の子はすっかり元気になっていたが、そのせいで逆になのはは中々立ち上がれなかったが、
何はともあれ、これで男の子が無事で良かった。二人が何度も交わっている内に
雨で濡れていた周囲の地面や男の子の服も乾いていたし、後は山を降りれば良い。
「お姉ちゃんありがとう。」
「こちらこそ…坊や本当に凄かったよ。」
なのはは男の子の将来が楽しみであり…同時に心配してもいたが、二人は笑顔で手を繋いだ。
「そう言えば…坊やの名前は何て言うのかな?」
「え? 僕の名前?」
ここまで激しく交わりあったのだから…これも縁。名前を聞いていても罰は当たらないはずだが…
「僕の名前はユーノ=スクライア。でもスクライアは部族名だから…ユーノで良いよ。」
「え……………。」
- 513 名前:ユーノくんと不思議なお姉さん 8 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/05(火) 11:44:43 ID:0jm7p0oH
- なのはは絶句した。この男の子の名前もユーノ=スクライア。
顔が似てるだけじゃない…名前まで一緒とは凄い偶然…ってレベルの話じゃない。
そしてさらにある事になのはは気付く。それはユーノと名乗った男の子の首に
紐に括り付けられた赤い宝石が下げられていた事。あの時はとにかくこの男の子の
身体を温める事に一生懸命で気付かなかったが…これは間違い無くレイジングハート。
かつてユーノが持ち、後になのはの手に渡ったレイジングハートである。
「と…言う事は…………。」
ここまで来てなのははやっと気付いた。今置かれている状況に………。
しかし、次の瞬間なのはは光に包まれ…男の子の前から忽然と姿を消していた。
「あ…お姉ちゃんが…消えちゃった……。」
突如姿を消したなのはに男の子は呆然とするしか無かった。
「………………。」
なのはが気付いた時、最初にいた練習場に戻っていた。
あの一連の事態は一体なんだったのか…なのはにはさっぱり分からなかったが…
とにかく元の場所に戻る事が出来て良かった良かった。
「でも…あれって一体何だったんだろう…。」
自分の部屋に戻った後もなのははあの時の余韻に浸っていた。一体あれは何だったのか…と…。
そこでなのはは以前本で読んだある記述を思い出した。
それは極稀に自然現象的に時空に穴が開き、そこに吸い込まれ別の時代や世界に
飛ばされてしまう事もあると言う物。97管理外世界の日本で言う所の『神隠し』が
そうであるし、また『バミューダトライアングル』と呼ばれる海域で船や飛行機が
行方不明になるのもそれが原因と言う。その本を読んだ時にはオカルトだと真に受ける事は
無かったが、今なら分かる。なのはが経験したこの一連こそ…自然現象的に開いた時空の穴によって
過去に飛ばされ…そして元の時代に戻って来たのでは無いか? きっとそうに違いない。
あの男の子も…恐らくはユーノに良く似た他人では無く…昔のまだ幼かった頃のユーノなのだろう。
「え………って言う事は…………。」
なのははそこである事を思い出した。最初にユーノが言っていた『なのはと会うより以前に
謎のショタコン女に逆レイプされちゃった事件』の事を……………
あの時の男の子が本当に過去の幼かった頃のユーノと言うのならば…………
「あ…アハハハハハ……アハハハハハハハハハハハハハ!!」
なのはは笑った。もはや笑うしか無かった。無理も無い。ユーノの童貞を逆レイプして
奪って行った謎のショタコン女とは…………なのは自身の事だったからである。
これで笑わずして何としようか!
- 514 名前:ユーノくんと不思議なお姉さん 9 ◆6BmcNJgox2 :2008/02/05(火) 11:46:12 ID:0jm7p0oH
- 「そっか…私か……私はショタコン女か! アハハハハハハハハハハハハ………はぁ……。
でも……子供のユーノ君も……凄く可愛かったな〜………。」
なのはは幼いユーノの裸を思い出し……少し興奮した。かつてはロリコンと呼ばれる人種を
気持ち悪いと考えていたなのはだが…今なら少しだけ許してもいいかもしれない…。
きっと今の自分も似たような気持ちだから………そうなのはは考えていた。
それから一時するのだが…なのははある事が頭に浮かんでいた。
「そ…そう言えば…もし私が時空の穴に吸い込まれたりしてなかったら…ユーノ君は
どうなってたんだろう………。」
あの男の子が本当にユーノだとして……なのはが助けなかったら……
もしかするならば…あの落石の下敷きになって死んでいたのかもしれない。
そうで無くても山中で熱を出して倒れ、誰にも助けられないまま衰弱死していたかもしれない。
そう考えれば考える程……なのはは怖くなった。もし自分が時空の乱れによって
過去に飛ばされていなければ…ユーノは死んでいたかもしれないからだ。
あの時点でユーノが死んでいたとすると…なのはとユーノが出会う事は無かった。
ジュエルシード事件は起こらなかったかもしれないが…プレシア=テスタロッサは
恐らく別の方法でアリシアを蘇らせようとし、それによってフェイトは
最後まで道具と使われ、今の様に管理局で執務官をやるなど絶対に無いだろう。
そして夜天の魔導書事件。なのはとフェイトと言う存在を欠いた事によって
凄惨な結果になっていたかもしれない。当然のごとくはやては死に、下手をすれば
闇の書の手によって97管理外世界そのものが消滅していたのかもしれない。
さらにスバルやエリオ・キャロが管理局に入る事も無かっただろう。
ジェイル=スカリエッティ事件を解決する事も出来なかっただろう。
あの時ユーノが死ぬか生存するかで…後の未来に天と地程の差があるでは無いか。
「でも…これで本当に良かったのかな?」
なのはにまたも新たな疑問が浮かぶ。そもそも過去を変えて歴史を改変すると言う行為は
罪悪とされている。ならばなのはが意図的では無いにせよ過去のユーノと接触し
その後の運命を大きく変えてしまった事は結果的にはともかく、本来の歴史を改変する
罪悪になるのではないか? そう考えていた。しかし…こうも考える。
「けど…私が過去のユーノ君を助けたからこそ『今』があると言うのなら…
こういうのも実は『歴史の必然』だったのかも…。」
そう、一連のなのはによる過去の改変そのものが…歴史の必然であったとしたら…
それは決して罪悪にはなり得ないのではないか? なのはの知る現在に至るまでの
歴史そのものがその証拠である。
「ま…どっちにしてもこの際どうでも良いか…。きっとあの後であのユーノ君も
昔の私と出会って…ジュエルシード事件や夜天の魔導書事件を経験する事になるんだね…。」
なのはは手に頬を当てて窓の外を眺める。既に空には丸々とした月が浮かんでいた。
おしまい
- 515 名前: ◆6BmcNJgox2 :2008/02/05(火) 11:47:15 ID:0jm7p0oH
- 最初はユーノがロストロギアで子供に戻って、
なのは「ほ〜らなのはママのおっぱいだよ〜。」
ユーノ「わ〜落ち着いてよなのは〜。」
って言うおちゃらけた内容の予定でしたが、結果的にこういう感じになりました。
タイムスリップネタとしても過去にも二度やりましたが
過去ニ作が人為的な物かつ歴史の改変を防ぐと言う話でしたが、
今回は逆に自然現象的な物かつ歴史が改変されたからこそ『今』がある
って言う感じにしました。
- 516 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 12:04:52 ID:A31V0xaU
- エロなのに最後はノスタルジーに浸るなのはさん
GJですた
- 517 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 12:11:51 ID:Ch4Nynq6
- >>515
GJ!
なのはさんエロすぎ。というか笑えた。
で、読み終えた後、「ヴィヴィオのクラスメイトを喰う高町なのは」という電波を受信した。
誰か書ける人いないかなぁ?
- 518 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 12:35:37 ID:yeSrvufl
- >>515
あえて言おう、なのはさん自重wwwww
GJ!
- 519 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 12:39:51 ID:90Mnczyu
- >>517
つまりショタコンななのはさん!?
フェイトに内緒でエリオに深夜の秘密特訓とかしてそうだ
- 520 名前:三浦:2008/02/05(火) 13:54:07 ID:mBnp/hER
- 感想と返信返し一気にやりますか。超亀レスですけど
>>489
フェイトさんを魔王にしないのは正解ですよ。やりたい放題フリーダムはなのはさんだけで沢山です。
ただ、微妙にガリューのシーンで、フェイトの台詞が一つ二つだけですが、ガリューのものに見えてしまいました。
喋らないのは分かっているのですが、いつ喋っても可笑しくない雰囲気ではあるんで、多分私の考えすぎなので気にせんで下さい。
>>515
だいたいの展開は読めていましたが、ここまでエロいなのはさんは想像出来なかった。
もしかしてあのカミナリはフェイトさんがこっそり「なのはを殺して私も死ぬ」って勢いでサンダーフォールやったのか?
などと思った私はバカです。
それと感想くださった皆さんありがとうございます。
私のせいでオリキャラ論議になってしまった節があって申し訳ない気分ですが。
やはり、本編とは毛色の違う性格のキャラクターを作ろうとすると地雷になりますか。
本編の男キャラはみんな似たり寄ったりなヤツばかりだと思ってます。
聞き分けの良すぎる男の子か、マッシヴな体格した渋い男のどっちかしかいない。
例外はヴァイスとスカぐらいで。大人クロノとヴェロッサは出番が少なすぎて、深い所まで分かりませんでした。
これでも一応、自己投影とか厨能力にならんようにとは思ってます。
おそらく最初にメタギャグ発言させてしまったのが一番不味かったのでしょうね。
他の投下SS、もう一度よく読みながら勉強しますよ
- 521 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 14:04:16 ID:umlyYPc5
- 14:10頃から投下しまふ
- 522 名前:ておあー:2008/02/05(火) 14:11:48 ID:umlyYPc5
- 時間だ。てかちょっと遅れた。
前回レス下さった方、ありがとうございました。
エリキャロでラブラブかつエロエロなSSの希望に対して善処すると返答したのですが、俺にはあのちびっこカップルのエロが
今ひとつ想像できませんです。脳汁の分泌が停止中です。如何ともし難いです。悩みます。
そんな感じで日々を送っていると持病の『ムシャムシャすると変な話を書かずにはいられない病』が発病しました。
今回の注意
・非エロ
・時期的には三期が終わった後
・八神家とガリューメイン
・蟲的なものが苦手な方は注意
・登場人物がほぼ全員そこはかとなく頭のネジをリミットブレイク
読む側も頭のネジを緩めて何も考えずに読むのが肝要だと思われます。アウトな方はオプティックハイドをお願いします。
- 523 名前:魔法集団リリカルやがみけInsecterS:2008/02/05(火) 14:12:40 ID:umlyYPc5
- 休日。朝。八神家。
ヴィータが牛乳を飲もうと冷蔵庫を開けると巨大な芋虫が入ってました。
ヴィータはビックリして思わず冷蔵庫のドアを閉めてしまいました。
きっと今のは何かの見間違いであろうと、思い直し再び冷蔵庫を開けると
なんとそこには巨大な芋虫がヴィータに複眼を向けていたのです。
ヴィータは思わずドアを閉めましたが、きっと疲れていて見えもしないもの見てしまった
のだと思い直し覚悟を決めて改めて冷蔵庫を開けました。
するとそこには巨大な芋虫がこっちに複眼を向けて口をキシャーってしているのです。
ヴィータはビックリして冷蔵庫のドアを閉めましたが、きっと幻覚を見たに違いない、
最近あまり寝てないから見えもしないものが見えてしまったのだと思い直し、
冷蔵庫を開けました。するとそこのには巨大な芋虫が入ってたのです。
驚いたヴィータは気がつけば冷蔵庫の扉を閉めていましたが、気のせいだと思い直し
再びドアを開けると、やっぱり巨大な芋虫が口をキシャーってしているのです。
思わず扉を閉めてしまいましたがきっと幻覚に違いありません、最近寝てなかったから。
と、思い直し冷蔵庫を開けると、やっぱり巨大な芋虫が入ってるのです。
思わず冷蔵庫を閉めたヴィータでしたがこれは何かの間違いに違いない。
疲れているから見えもしない者が見えたのだと思い直し冷蔵庫を開けると
そこにはなんと巨大な芋虫が・・・、うわっと思い冷蔵庫を閉めましたが
きっと疲れのせいで幻覚を見たに違いない、と自分に言い聞かせ再び冷蔵庫を開けると
なんと巨大な芋虫が複眼を向けながら口をキシャーってしているのです。思わず冷蔵庫の扉を閉めましたが
きっと気のせいで、何かと見間違えをしたのだと自分に言い聞かせ……
「いつまでやらせんだ、この馬鹿作者ーっ!!」
ま、待って! これコピペが元ネタだから! もうちょっとで全部改変し終わるから……ちょ、こっちくんな……アッー!!
バキッ ドカッ メメタァ……
……魔法集団リリカルやがみけInsecterS、始まります。ぐへぁ。
- 524 名前:魔法集団リリカルやがみけInsecterS:2008/02/05(火) 14:13:11 ID:umlyYPc5
- そんなわけで、見慣れた冷蔵庫の中に見慣れない『それ』を見つけたヴィータは、逡巡したあげくもう一度だけ冷蔵庫のドアを
開けてみることにした。右手にアイゼンを構え、左手で恐る恐るドアを開けてみる。
キシャー
無言でドアを閉めたヴィータは、頼れる相棒に問いかけてみる。
「アイゼン……今の見たよな」
『その……私には視覚にあたるものがないので『見た』かと言われると困るのですが……』
「あー、ごめん……とりあえず、この冷蔵庫の中に『何か』がいたよな」
『居ましたね』
「……」
『……』
「……アレ、何だと思う?」
『……掴みかねます』
記憶を辿ってみる。
確か昨日シグナムが食料の買い出しに出かけているはずだ。彼女が買い物を済ませて家に帰ってきたのはヴィータより前であり、
ヴィータはそれから今まで冷蔵庫のドアを開けてはいない。つまり、アレがシグナムが買ってきた純然たる食糧で、近いうちに食卓に
あげられるためにこの冷蔵庫に入っている可能性も0%ではない。もちろん限りなく0%に近いのは間違い無いが、じゃあ残りの
99%前後にどのような可能性があるのかと言われると全く想像がつかない。
「ていうか、食糧だとしたらぜってー食いたくねえし……」
『私、今自分がデバイスに生まれて良かったって思いました』
冷蔵庫の前で立ち尽くす一人と一機。するとちょうどその時、話題に上った烈火の将が台所に姿を現した。
「何をボーっとしているんだ、ヴィータ。それにアイゼンまで起動させて」
「あのさ……シグナム」
「なんだ?」
「お前、昨日買い物に行った時にさ……何か変なもん買ってきたりしたか?」
「……はあ?」
問われたシグナムは怪訝そうな顔を見せる。
「私が買い物に行く際は、渡されたメモに書かれた物以外は買わないようにしている。それはお前も知っているだろう?」
その通りである。
いわゆる『はじめてのおつかい』で店の主人達の巧みな話術に乗せられて大量の食材を買わされて以来、彼女が買い物に行く際には
いつもはやてかシャマルが買ってくる物のリストをメモに書いて渡しているはずだ。それにたとえシグナムが買い物下手でも、
さすがにあんなマニアックな食材(かどうかはまだ大いに疑問だが)を買ってはこないだろう。
「それに最近はアギトがついてきてくれるからな。万が一にも買い物を失敗する事はない」
「あー……そっか、そうだよな……」
先の『JS事件』で知り合い、このほどシグナムの嫁……もとい八神家の新たな一員として加わった古代ベルカの純正融合騎である
アギトは、長く放浪生活を続けていたとは思えぬ適応力で新たな生活に馴染み、今でははやてに次ぐ家事の達人である。
- 525 名前:魔法集団リリカルやがみけInsecterS:2008/02/05(火) 14:13:36 ID:umlyYPc5
- ※特別付録・ヴィータ謹製八神家家事能力ランク(管理局魔導師ランク式)
はやて 総合SS
アギト 総合S
シャマル 掃除・洗濯AA+(総合ではF)
ザフィーラ 総合A(推定)
ヴィータ 総合C+
リインU 総合C
シグナム 総合E
(ちなみに平均的な専業主婦のランクはB程度、総合Eは奥さんが病気で入院したので家事をせざるを得なくなったがまずどこに何が
あるかわからなくて悪戦苦闘する中年男性レベル)
当然買い物の際にも彼女の才は遺憾なく発揮されており、彼女がついていて斯様な得体の知れぬ物が買われたとは考えられない。
しかし、だとすればアレは一体何だというのだろう。
「どうした? お前、今朝はちょっとおかしいぞ」
「かもしんねーな……視力とか」
「……ヴィータ。本当に大丈夫か?」
「それを確かめてーから、ちょっとあの冷蔵庫のドアを開けてみてくんねーか、シグナム」
「……冷蔵庫?」
シグナムは『何を言っているのかさっぱり意味がわからない』とでも言いたげだったが、それでも長年の付き合いからかそれを
口には出さず、ヴィータの脇をすり抜け冷蔵庫の前に立った。
「この冷蔵庫がどうかし……」
キシャー
シグナムは言いかけた言葉を飲み込むと、開けたばかりのドアを閉める。
ばたん、という音がやけに大きく台所に響いた。
- 526 名前:魔法集団リリカルやがみけInsecterS:2008/02/05(火) 14:14:09 ID:umlyYPc5
- 「……ヴィータ」
「……なんだ、シグナム」
「……あれは何だ?」
「……知らねえよ。昨日買い物に行ったのはお前だろ?」
「……私は何も知らんぞ」
ヴィータもシグナムも、守護騎士ヴォルケンリッターとして数多の戦場を経験した歴戦の猛者である。
故に普通の女性であれば確実に絶叫するであろうこの状況下でも取り乱したりはしない。しかしさすがに長い守護騎士人生の中でも
こんな経験はなかった。
無言のまま二人が見つめ合う。先に動いたのはシグナムだった。
「アレが外に出ないよう見張っていろ。ちょっとレヴァンティンを取ってくる」
「おう……っておい、どうする気だ?」
「知れた事、むしタイプにはほのおタイプの攻撃がこうかはばつぐんだ」
シグナムがグッと握り拳を作る。
「いや、だっていきなり殺すのはダメだろ! 生きてるんだぜアレ!?」
「アレは不法にこの家に侵入しているのだ。この家に忍び込んだ愚かな賊がどうなるか、その身にしっかりと刻んでやらねばならん」
「不法も何も、そもそも法律が適用されるような生き物じゃねーだろ、どう見ても!」
「ならばどうする。管理局にでも通報するか!? 『冷蔵庫のドアを開けたら巨大な蟲がいました』と!!」
「いやだからなんでそんな怒ってんだよ!? お前虫嫌いなのか?」
「ああ嫌いだな。お前もあんなウネウネした気持ち悪い生物に情けをかけるのはよせ、今にワイヤーみたいなものを射出してくるぞ」
「そんなもん出す蟲なんていねえよ!」
「いるのだ! やたら巨大で獲物を絡みとって強烈な力で締め上げてから捕食しようとしてくるような蟲が!!」
「……シグナム、もしかして実体験でもあるのか?」
シグナムの動きが止まる。
「……まあ少しはな」
「……よく生きてたな」
「……いや、実はテ……ゲフンゲフン、なんでもない」
「あー、なんかだいたいわかったよ」
ヴィータは溜息をつきながらアイゼンを待機フォルムに戻した。
「とりあえず他の皆も起こそう。一応アタシ達以外の誰かが買ってきて冷蔵庫に入れた可能性もあるわけだし……何より爆殺するに
しても冷蔵庫を巻き添えにしたらはやてに怒られる」
「だがそうなるとアレを冷蔵庫から引っ張り出して庭にでも運ばねばならんぞ……というか爆殺ってお前、さっきあれだけ私を止めて
おきながら言う事がエゲツなさすぎるだろう」
「だってワイヤー出すんだろ? そんなのこえーじゃんかよ。ていうかアレに触れるなんてアタシは絶対嫌だぞ」
「だからこの冷蔵庫ごと棺桶代わりに奴にくれてやろうと言ったのだ……いや、待てよ。今思いついたのだが、ザフィーラに
運ばせればいいのではないか?」
「あ、それいいんじゃね。よく考えたらアイツ人型にもなれたよな、最近ずっと犬のままだからすっかり忘れてたよ」
本人が聞いたら血涙を流しそうな会話を口にする二人。
ちなみにザフィーラが最後に彼女らの前で人型になったのは二ヶ月前に切れた電球を取り替えた時である。アギトは彼が人型に
なれる事をまだ知らない。
- 527 名前:魔法集団リリカルやがみけInsecterS:2008/02/05(火) 14:14:32 ID:umlyYPc5
- 「そういえば知っているかヴィータ。あいつ我々の前ではほとんど狼の姿を通すのに、テスタロッサの使い魔と逢う時は人型に
なっているらしいぞ」
「誰がそんな事言ってんだよ。シャマルか?」
「いや、ユーノだ。デートの前に無限書庫の手伝いに来ていた彼女を人型で迎えに来たと言っていた」
いつの間にか本題を忘れた二人がそんな話をしていた時、台所に三人目の小さな人影が現れた。
「アギトか」
「おー、おはよアギト」
「おはよう、シグナム、ヴィータ……あれ……うーん?」
名前を呼ばれた烈火の剣精は二人に生返事を返しながらキョロキョロと台所を飛び回る。
「どうかしたか?」
「探し物なら手伝うぞ」
「いや、探し物っていうか……なんか覚えのある魔力を感知したから来たんだけど……でもいるならここに入ってきた瞬間に分かる
はずだし……」
「魔力?」
「誰のだ?」
「シグナムは直接会った事ない奴だよ。ルールーの召喚蟲で、ガリューって名前なんだけど……」
「「召喚……蟲?」」
「……なんだよ、二人とも?」
シグナムとヴィータが同時に冷蔵庫を指差す。
「冷蔵庫がどうかしたのか?」
「いや……」
「まずは開けてみろ」
「はあ……?」
アギトは『何を言っているのかさっぱり意味がわからない』とでも言いたげだったが、それでも嫁への愛情からかそれを口には
出さず、二人の脇をすり抜け冷蔵庫の前に立った。
「この冷蔵庫がどうかし……」
キシャー
「うおおおーっ、猛れ、炎熱ーっ!!」
冷蔵庫が炎に包まれ爆ぜた。
◆
- 528 名前:魔法集団リリカルやがみけInsecterS:2008/02/05(火) 14:15:19 ID:umlyYPc5
- 「……それで、本当にコイツはガリューなのか?」
「魔力反応は確かにガリューだと思うんだけど……」
二十分後。リビング。
台所の消火活動(氷結系魔法の便利さを全員が再確認した)と謎の巨大生物の救出活動を終えた八神家メンバー全員は、外皮が
焦げて真っ黒になった巨大芋虫を囲んでの緊急会議を行っていた。
「ヴィータはどないや? その召喚蟲とは一回戦り合ってるんやろ?」
八神家の主であるはやてがヴィータに質問する。
実は早朝に皆の食事を作るべく起きだしてきた彼女は、ヴィータの前に既に冷蔵庫の中の光景を確認していたが『せやけどそれは
ただの夢や』と判断し『ここが夢ならもう一度寝れば逆に現実に戻ってくるだろう』という謎理論からベッドに戻っていた。今と
なってはその判断が冷蔵庫と内蔵されていた食料品の全滅という悲劇を招いてしまった事を内心で後悔する彼女だが、冷蔵庫の中に
未知の巨大生物が居た事よりも冷蔵庫が壊れた事を気にする辺りはさすが短いながら尋常でないほど起伏に富んだ人生を送ってきた
だけの事はあると言えるかもしれない。
「うーん……でも直接ぶつかったのはその時だけだから……あんまり覚えてないよ」
「そうか……でもそれにしたって朝もはよからこんな格好でうちの冷蔵庫におる理由はわからんしなあ……」
生焼け状態の芋虫は、現在シャマルとリインUの手によって治療が為されている。本来ならシャマル一人でできる作業のはずだが、
『ぶっちゃけあまり直視したくない』という女性らしい意見により二人で交代交代での治療となっていた。
現在治癒魔法をかけているのはシャマルで、先ほどまで涙目で治療を担当していたリインUはザフィーラのモフ毛に顔を埋めて心の
安定を図りつつ鋭気を養っている。
「あの……はやて……さん」
「おお、なんやアギト」
とはいえ治療を完了させた後はどないしたもんか、とはやてが思案に暮れていると、アギトが話しかけてきた。
「その……ごめんなさい。冷蔵庫、買い換えたばかりなのに……」
芋虫の代わりに爆殺された冷蔵庫は、実はつい先日買い換えたばかりの新品である。家族が新しく増えるという事で、新たに
大容量の最新型を買ったのだった。
一応保証書は保管してあるが、さすがに消し炭を持っていって新品と交換して貰う訳にはいかないだろう。また新しく買いに行く
しかあるまい。幸いはやてと騎士達の五人で十年間、途中からはリインUも加わった六人が働いた分の稼ぎは危険手当なども加わって
膨大な額になっている。冷蔵庫の一台や二台、訳はない。
- 529 名前:魔法集団リリカルやがみけInsecterS:2008/02/05(火) 14:15:47 ID:umlyYPc5
- 「んー、まあ火は家が燃える前に消し止められたしそないに気にせんでええで」
「あと天井がちょっと焦げちゃったのと……」
「それも後で塗り直せばええよ」
「それからはやてさんがテンパってバッテン……リインなしで氷結魔法を使ったせいで誤射して貫通した壁とその先の隣三軒……」
「アギト、あそこの壁だけ他と微妙に色が違うのわかるか?」
「え? ……あ、確かに」
「以前あそこをゴキブリが這っとってな、シグナムが紫電一閃で壁ごとお隣さんを吹き飛ばしたんや。まあ何が言いたいかというと、
この程度のトラブルはうちでは日常茶飯事、謝る必要なんてちっともあらへんゆうことや」
家だって一軒や二軒はどんとこいである。
「……」
「ああ、でも普段はそうゆう事をやる前はシャマルがちゃんと結界張っとるで。それにその一件以降うちの隣近所はみんな引っ越して
もうたから今朝吹き飛ばしたのはただの空き家や。怪我人の心配はあらへん、モノなら金で何とでもなる。何も問題はあらへん」
「……ていうか、なんで非殺傷設定にしてないのさ?」
「いや、だって非殺傷やったら死なへんやろ、ゴキちゃんが」
「蝿叩き使おうよ! スリッパでもいいよ!!」
「だってほら、そんな事しとる間に逃げるやん」
「……シグナムが吹き飛ばしたお隣さんは?」
「……」
「ちょ、なんで無言になるのさ!?」
「……嫌な事件やったね」
「なにその台詞!? そんな台詞聞くくらいならまだ無言の方が百倍マシだよ!!」
「……アギト、ええことを教えたる。お金で何でもできるわけやない……でもお金があればほとんどの事はできるんよ」
「黒いよっ! 真っ黒だよこの人っ、もうやだ助けてダンナーッ!!」
「あはは、冗談やって。家が吹っ飛んだ時、ちょうどお隣さんは外出中でな。うまい具合に難を逃れたんよ。ちなみに示談もちゃあんと
成立しとる。今はエルセアの方に新しく一戸建て建てて暮らしとるはずや」
「え!? そ、そっか。よかった……あ。でももしその人が家にいたら……」
「……」
「ごめんなさい! 私が悪かったですホントすいません! だから目を逸らさないでー!!」
「……まあ、そうなってた場合は……な♪」
「何その音符!? 怖いよこの人! さん付けしたくなくなってきたけどさん付けしないといけない気がするよ!!」
「嫌やなあ。私らもう家族やんか、他人行儀にさん付けする必要なんかあらへんで」
「そんな笑顔でこっちを見るのやめて! お前ももう共犯者だよ的な意味で家族って言葉を使うのやめてー!!」
「きゃああああああぁーっ!!」
その時シャマルの絶叫がリビングに響いた。
- 530 名前:ておあー:2008/02/05(火) 14:17:05 ID:umlyYPc5
- うあ、家事能力ランクがずれた。
今回は以上です。お付き合いくださった方、ありがとうございました。
うん、続き物なんだこれ。たぶん終始こんな調子で進行していきます。芋虫だからって糸吐いて緊縛プレイとかもないです。
あとはやてとアギトの会話シーンを書いてる途中ハリセンボンの「角野卓造じゃねえよ!」ってネタが頭に浮かんできたのはなぜかしらん。
- 531 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 14:22:33 ID:DxjanDb4
- >>515
「な〜んだ…逆レイプじゃ仕方ないよ。」
この一言が最大に吹いた。いいのかよ!?
- 532 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 14:26:00 ID:U15jHqJy
- >>489
少しお話しようか?でフェイトさんがエリオをフルボッコにしてくると思ったのに><
でも、フェイトさんは殺るもとい戦るときは戦る人だと思うんだが
しかし、どう決着をつけるのか気になる
>>530
吹いたwww
- 533 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 14:29:42 ID:U15jHqJy
- >>531
実際どうしようも無いwww
- 534 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 15:16:27 ID:HdLia3Ud
- >>530
ガリュー何やってるんだw
芋虫の次はサナギかな?
- 535 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 15:22:14 ID:LzoG8pxY
- >>530
とりあえず今後来るであろうハチャメチャ展開に期待大ですね、そして幼虫はガリューがルーに産ませた子と予想してみる。
でもやっぱシグナムは萌えるよな、買い物下手なところが特に。
なんかシグナムのエロ書きたくなったけど良いアイディアが出ねえ。
- 536 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 15:28:06 ID:h/GheNC6
- >>530
GJです
駄目だ、この一家w
しかし、みんな書くのが速くて羨ましいな
ホント、試験とかなくなればいいのに
- 537 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 15:33:32 ID:+GID8hUK
- シグナムはエロに関しては漫画向きのキャラだな
色んな理由で
- 538 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 16:20:12 ID:2hYPvcR1
- >>515
GJです。
<一連のなのはによる過去の改変そのものが…歴史の必然であったとしたら…
タイムトラベルものはその影響パターンで大きく3つに分類できるらしい
過去改変=未来も変化というドラえもんパターン、親殺しのパラドクス発生
過去改変=平行世界へ分岐というドラゴンボールパターン、上記のパラドクスを回避するために考案
過去改変がそもそも不可でタイムトラベラーの行動自体が歴史に織り込み済みの運命パターン 今回はこれですね
なお分かりやすくするためそのパターンの出てくる有名作品を出していますが元祖というわけではないです
>>530
GJです。ガリューメインと八神家とは珍しい
しかし、冷蔵庫にいるのは一体何なのか?ガリューのそのものとは確定してない
子供といっても相手は?ということになるし続きに期待です
- 539 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 16:50:53 ID:yeSrvufl
- >>538
ここで、ガリュー×メガーヌという説を提唱してみる。
そういや前に一回あったっけか。
- 540 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 17:11:19 ID:83tDSqUB
- するとメガーヌさんは卵を産むのだろうか…
- 541 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 17:14:09 ID:HdLia3Ud
- 子供は普段は人間で戦闘時にバトルスタイルへ・・・みたいになりそう。
どこのゾアノイドだよw
- 542 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 18:21:21 ID:yeSrvufl
- きっと、変身!の掛け声とともにヒーローに変身するんだよ。
- 543 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 18:24:44 ID:z2xt3WXm
- 車椅子隔離未亡人(まだ若い)に蟲が卵を孕ませるってどんだけ陵辱系なんすかwww
- 544 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 18:30:10 ID:d5Q+3nWB
- >>530
GJ、派手に笑わせてもらいましたw
続きも楽しみです。
- 545 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 18:39:29 ID:yeSrvufl
- >>543
しかし、それはそれでいいと思わないかい?
- 546 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 18:50:05 ID:j6flRxou
- >>530
GJですwバロスwwwwwwwww
つかガリューがなぜ冷蔵庫に?
そして「むし<ほのお」って、ネタが面白いです。
- 547 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 19:25:21 ID:4ndO4U2Y
- シュツルムファルケンはひこうタイプだしな
- 548 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 19:40:53 ID:83tDSqUB
- だがちょっと待ってほしい
ガリューが「ふしぎなまもり」をもっていれば
なのはさんのはかいこうせんを始め、六課の大体には勝てるのではないか
…将とアギトは鬼門…
- 549 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 19:54:10 ID:6sk2ejtf
- >>548
なのはさんはあくタイプだから無理
- 550 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 19:57:52 ID:aIJBEOOL
- このシグナムは小学生に混じって、ポケモンとかムシキングとかに熱中してそうだw
- 551 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 20:02:46 ID:h/GheNC6
- それでボロ負けしてそうだw
- 552 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 20:03:36 ID:j6flRxou
- >>550
「何、してるんですかシグナム?」
なんていわれて驚いてるフェイトに
みつかった日にはもう生きてはおれんだろうな。
- 553 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 20:05:11 ID:ssnzj/NF
- 一瞬小学生に交じってサッカーしてる健全なシグナムが浮かんだが
身体動かすの嫌いそうだからダメか、と直ぐに反証してしまった俺は相当毒されている
- 554 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 20:07:27 ID:AY+xm+rk
- >>552
見てぇwwww
シグナムとフェイトさんの絡みは好きだわぁ
- 555 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 20:12:48 ID:Y7kF7h28
- 三番、指名打者、シグナム。
- 556 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 20:18:27 ID:TkD3VsUU
- スバティアを書くはずがいつの間にかなのティアになっちまったー
- 557 名前: ◆vyCuygcBYc :2008/02/05(火) 20:28:48 ID:/QmHL6SP
- 初のSS投下をしてみたいんですが、エリオものなので少し迷ってます。
現在B・Aさんの見事なエリオSSが連載中なので尻込みしてしまう部分があるのですが、投下しても構わないでしょうか?
- 558 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 20:30:31 ID:ssnzj/NF
- 尻……バッチこい
- 559 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 20:35:59 ID:wJ2ey2gM
- 注意書きを忘れずにな。カモン。
- 560 名前: ◆vyCuygcBYc :2008/02/05(火) 20:50:20 ID:/QmHL6SP
- では、行ってみます。
初めてのSS投下となりますので、拙い部分は勘弁して下さい。割とお約束通りの平凡なストーリーです。
注意事項
・非エロ
・原作IFもの
・エリオ主人公(但し出番少なし)
・軽くとらは3の設定を流用
・鬱展開多し
・展開の、原作からの矛盾点などは虚数空間へスルーして下さい。
・NGワードは「Little Lancer」でお願いします。
- 561 名前:Little Lancer 一話 1/7 ◆vyCuygcBYc :2008/02/05(火) 20:54:04 ID:/QmHL6SP
- 閃光が剣士へと襲い掛かった。左後方の完全なる死角からの一閃は常人では目視することも儘ならない。
殺傷設定であればベンガルトラでさえ一撃で屠り去るで在ろう必殺の刺突を、烈火の将は物憂げに払い飛ばした。
槍手は弾き飛ばされながらも両足で地を掴み、愛槍ストラーダの切っ先を剣士へと向ける。
剣士も又、愛剣レヴァンティンを槍手へと突きつける。
槍手と剣士の距離は約10m、剣と槍なら間合いの利は槍に在る。
―――第97管理外世界のとある武道の一説には、剣を持って槍に対するには三倍の技量が必要とされるという。
無論、魔法世界出身の槍手がそんな理を知るはずもない。
だが、その直感が告げていた。剣士の技量は己の三倍を遥かに超えている、と。
ましてやこれはデバイスを用いた魔導士の戦い。尋常の武の理など通用する筈も無い。
剣士にとっては彼我の間合いなど何の問題にすらならず、10mも10cmも共に即死圏だ。
烈火の将は遥かな高みにある。
槍手は汗で湿った掌でストラーダを握り締める。
烈火の将は無言だ。ただ視線で、何処からでも掛かって来いと告げている。
遠い。だが、辿りつかなければならない。
「参ります」
ただ一言告げて、槍を構えた。
『Form Zwei』
槍手の闘志に呼応して、ストラーダがデューゼンフォルムへと変形と遂げる。
推進ノズルからの魔力噴射によって最高速度を得る為の機動攻撃形態だ。
独立稼動が可能な総ての推進ノズルを後方に向ける。
生半可なフェイントの類が通用する相手では無い。ならば最短最速の一撃を相打ち覚悟で見舞うのみ。
ストラーダが主のリンカーコアを通じて周囲の魔力を吸収していく。
その吸収量が限界に達した時、ブーストデバイス・ケリュケイオンからの増幅魔力が流れ込んだ。
「Speerangriff!」
地を蹴ると同時に、槍手はストラーダと共に自ら一棹の槍となって突撃した。
魔力噴射の音に掻き消されて既に聴覚は無い。
限りない緊張の中で、周囲の風景がスローモーションのように流れていく。
正面にはレヴァンティンを正眼に構える烈火の将の姿が。
そして今当に剣士の咽喉を愛槍が抉ろうとした刹那―――
―――剣士の姿が消失した。
- 562 名前:Little Lancer 一話 2/8 ◆vyCuygcBYc :2008/02/05(火) 20:55:14 ID:/QmHL6SP
- 「―――?」
槍手には驚愕するだけの猶予も与えられなかった。
剣士は風にそよぐ芒のような動きで必殺の刺突をかわすと、槍手の隣へと並び、愛剣の鎬で突進してくる槍手の背をそっと押した。
「……!?」
全魔力を前方への推進へと使い、強化魔術まで重ね掛けていた槍手は、既に自身の体勢の制御で精一杯だった。
その上に背後からほんの微かな加速が与えられ、総ての均衡が破壊された。
突進の速度そのままに姿勢を崩して倒れ込み、自身の全魔力を注ぎ込んだ運動エネルギーを消費尽くすまで転がっていった。
全身を激しく強打し、指一本動かすことさえできない。
せめて左掌の中の槍を手放さないようにすることが、槍手としての最後の矜持だった。
「ここまでだな」
剣士―――機動六課ライトニング分隊副隊長、「烈火の将」ことシグナムは、槍手の咽喉に切っ先を突きつけ、厳かに訓練の終わりを告げた。
「はい、……ご指導、ありがとうございました」
槍手は息も絶え絶えになりながらも槍を杖として立ち上がると、師である剣士へと一礼する。
朝の訓練の後、槍手がシグナムに個人的な指導として立ち合いを望むのは既に恒例と化していた。
「シャワーを浴びて早く着替えて来い。解ってるだろう。……今日は、エリオの三回忌だからな」
はい、と槍手―――機動六課ライトニング分隊ガードウイング、キャロ・ル・ルシエ二等陸士は頷いた。
彼女は踵を返し去っていくシグナムの背中を見送り、今は亡きエリオ・モンディアル一等陸士の形見である槍型デバイス・ストラーダを抱きしめ―――
一筋だけ涙を零した。
- 563 名前:Little Lancer 一話 3/8 ◆vyCuygcBYc :2008/02/05(火) 20:56:10 ID:/QmHL6SP
- エリオ・モンディアルの墓はミッドチルダ北部・聖王教会本部脇の共同墓地の一角に在る。
ジェイル・スカリエッティ事件の発生した新暦75年9月19日は、既に三年もの過去へと過ぎ去っていた。
だが、JS事件は未だ解決しておらず、機動六課の面々の心には深い傷痕を残したままである。
閑静な共同墓地の静寂を破ったのはけたたましいヘリのローター音だ。
ヴァイス・グランセニック陸曹長の操縦するJF-704式ヘリは、ゆっくりと共同墓地に隣接した飛行場へと着陸した。
ヘリから現れたのは正装に身を包んだ機動六課の面々。
彼等はエリオの墓の前に整列すると、部隊長八神はやての号令に従って一斉に敬礼をした。
身じろぎ一つする者は無く、青空の下に教会の鐘の音が鳴り響く。
機動六課部隊長、八神はやてが菊の花束を手に進み出た。
「エリオ、あれからもう三年になるんやな―――見ての通り、機動六課のみんなも、ミッドチルダの街の人々も、みんな元気で平和に暮らしとる。
……みんな、エリオが守ったんやで―――」
はやての顔が、沈痛な泣き顔に歪む。うな垂れて、はやては心の底から詫びた。
「堪忍な、エリオ。スカリエッティは……まだ、捕まっとらんのや。ほんま、堪忍な……
絶対、機動六課の皆でスカリエッティ一味の残党は捕まえるさかい、絶対絶対絶対捕まえるさかい……
絶対仇は討つさかい……安心して眠ってな―――」
その先は言葉にならず、はやては顔を伏せてしゃくり上げるようにして泣いた。
迷子になった、小さな子供のような泣き方だった。
背後からもすすり泣く声が聞こえる。あれから三年が経つにも関わらず、六課の面々には未だエリオの墓前で涙を流すものが多い。
一斉に黙祷を行い、各々がそれぞれ持ち寄った花や菓子を墓前に供えた。
最初に進み出たのは戦技教導官、兼スターズ分隊隊長の高町なのはだ。
八歳になった愛娘ヴィヴィオの手を引き、泣きじゃくり今にも崩れ落ちそうな、執務官フェイト・T・ハラオウンの肩を支えながら墓前に進み出た。
彼女は静かに墓前で手を合わせる。
これは彼女の生まれ故郷の作法であり、聖王教会の墓地に於いては不似合いなのが、彼女は故人を偲ぶ際には敢えてこの方法をとる。
これが、一番心が篭る気がするからだ。
ヴィヴィオも母の隣で神妙な顔で手を合わせている。
なのはは無言だ。静かにうな垂れて、三年前の悔恨を噛み締める。
それでも堪え切れずに、嗚咽が漏れた。
ヴィヴィオは滅多に見せることの無い泣き顔を見せる母の背を、静かに撫でた。
フェイトはエリオの墓碑を直視することすらできず、俯いたまま泣きじゃくっていた。
エリオの墓前にてフェイトが正気を無くしたように涙を流すのは何時もの事である。
「ごめんね、ごめんね、エリオ……許し、許―――」
今回も又、彼女はエリオに許しを請うことすら出来なかった。
自身がエリオを死地に追いやり夭逝させたという自責の念は、彼女の魂に刻まれた消えない傷痕だった。
- 564 名前:Little Lancer 一話 4/8 ◆vyCuygcBYc :2008/02/05(火) 20:57:12 ID:/QmHL6SP
- 「やっほ、エリオ」
連れ添って進み出たのはスターズ分隊の名物コンビ、スバル・ナカジマとティアナ・ランスターだ。
十九歳になった二人は共に背丈も伸びて、今ではなのは、フェイトらと変わらない程になっている。
スバルは花と共に、大きなチョコ菓子の袋を供えた。
「エリオは私と同じ、六課の大食いメンバーだったからね〜。チョコビーン、沢山食べてね」
ティアナはスバルを小突くと、自らの花を供えた。
「ごめんね、コイツ馬鹿のまんまで。そろそろ二十歳なんだから、食べても縦じゃなくて横につくだけって注意してるんだけどね」
「もう、なによー、私はまだまだ成長期なんだから」
笑ってふざけあってるように見える二人だが、その瞳は涙を湛えている。
その後も参拝は続く。シャリオ、ヴァイス、グリフィス、ヴォルケンリッターの面々―――
ユーノやリンディ、アルフらと機動六課以外の参拝者の姿もちらほらと見られた。
そして最後に、キャロ・ル・ルシエと現ライトニング分隊フルバック、執行猶予期間中ながらライトニング05へと着任したルーテシア・アルピーノが進み出た。
キャロの肩に翼を小さく畳んでその身を丸めたフリードリヒが留まっている。
ルーテシアはここ三年で背も伸びて、JS事件当時は同じ位だったキャロの身長を大きく上回っている。
キャロも以前に比べて背は伸びたものの、同年代の少女達の中では小柄な方であり、その瞳には未だ幼さを残している。
ルーテシアは静かに目を瞑ると、自分を救った幼い騎士のことを想う。
キャロはストラーダを待機上体からスピアーフォルムへと変化させ、花と共に墓前へと供えた。
そのまま、ひざまずいて祈りを捧げた。
ぽたり、ぽたり、と墓前に銀の雫か流れ落ちては弾ける。
「エリオくん、ストラーダ、ずっと借りぱなしでごめんね……
わたし、まだまだエリオくんみたいに上手くストラーダを使えないけど―――
きっと、エリオくんみたいに上手にストラーダを使えるようになるから、だから……ストラーダのことは任せてね。
わたし、エリオくんが成りたかった立派な騎士になるから、きっと、きっと成るから……
だから、見ていてね、エリオくん」
彼女はひざまずいたまま、身じろぎ一つせずに祈りを捧げ続ける。
一人、また一人と参拝者が墓地を去っても彼女は彫像のように動かずに、祈りを捧げ続けた。
キャロはエリオをの墓参りに訪れた際には、必ずストラーダを墓前に備え、日が落ちるまで祈り続けるのだ。
それが、彼女の精一杯エリオの偲び方だった。
「おい、行かないのか?」
シグナム専属の融合騎であるアギトが、キャロを見つめるシグナムに声を掛けた。
「ああ、すまない」
「ったく、何ぼーっとしてんだよ。ほら、ゼストの旦那のとこに行くぜ」
ルーテシア、シグナム、アギトの三名は、同じくJS事件にて二度目の生を散らした騎士ゼスト・グランガイツの墓前へと向かう。
彼も又、ここ聖王教会付属墓地の一角に葬られたのだ。
シグナムはもう一度、エリオの墓碑を振り返った。
そこには尚も祈りを続けるキャロの姿がある。
それは、侵しがたい静謐な光景だった。
『Erio Mondial 新暦65〜新暦75
命を賭してミットチルダを救った幼き騎士
我々は君を忘れない』
エリオの墓碑には、そんな言葉が刻まれている。
- 565 名前:Little Lancer 一話 5/8 ◆vyCuygcBYc :2008/02/05(火) 20:58:24 ID:/QmHL6SP
- 必殺を期した刺突が、シグナムのレバンティンに撃ち落とされた。
キャロは踏鞴を踏んでよろけながらも何とか踏み留まり、その場から尚も刺突の三連撃を繰り出す。
シグナムはそれを体を左右に振るだけの小さな動きでかわすと大上段からレバンティンの一撃を見舞う。
キャロはそれを辛うじてストラーダの柄で受け止めた。
押し潰さそうになるのを、プロテクションの重ね掛けで何とか留めると、そのまま後ろへと飛び下がった。
今日もまた、シグナムのキャロへの個人指導は続いている。
シグナムが指導を始めた三年前に比較して、キャロのストラーダの扱いは長足の進歩を遂げていた。
それでも、未だ三年前のエリオには到底及ばない。
断言するなら―――彼女には才能は無かった。
そもそも、ストラーダはエリオの為だけに生み出された専用デバイスである。
エリオの持つ鋭敏な感覚と、優秀な反射神経があって、その機能を十全に引き出すことができるのだ。
その第三形態はエリオの電気変換資質を最大限に強化するための形態であり、資質を持たないキャロには発現させることすらできない。
第二形態を制御できるようになるまでにも二年もの時を要した。
デューゼンフォルムの強烈な突進力はキャロの細腕では制御することが出来ず、発動させるたびに槍に振り回されて全身打撲で地に伏せるのが常だったのだ。
それでも、キャロは諦めなかった。自身にストラーダを扱う才能が無いことを知りつつも、それでも努力を続けた。
ただ只管に、愚直な繰り返しを行うことによって、苦行でしかない積み重ねによって、その身にストラーダの扱いを刻みこんでいったのだ。
エリオが一日で会得できた技術ならば、キャロは十日を掛けて己のものとした。
何時も自分の傍にいてくれた小さな騎士の姿は、今も目蓋の裏に焼きついている。
少しでもその姿に自分を近づけようと、弛まぬ精進を、文字通りの血の滲む努力を続けてきた。
キャロはデューゼンフォルムからサイドブースターの噴射の勢いを得て、ストラーダにて横薙ぎの斬撃を繰り出した。
刺突から意表をついての斬撃だが、無論そんなものが通用するシグナムではない。
体を沈みこませて斬撃の下を潜り、キャロに肉薄した。
キャロが己の失策に気付いたのも束の間、至近距離からの一撃を食らい彼女の意識は暗転した。
「目が覚めたか?」
意識を取り戻すと、目前にはしゃがみこんで顔を覗き込むシグナムの姿があった。
心配そうにキャロを見つめていたフリードが、安心したようにクキュル〜と鳴いた。
視界の端には、ヒーリングを終えて去っていくシャマルの姿が見える。
「はい……今日もご指導、ありがとうございました」
体を起こすと、キャロはシグナムへと一礼する。
彼女達の稽古は、必ずキャロが行動不能の状態になるまで続くのだ。
これは、シグナムなりの気遣いだった。
一度ストラーダを握ったキャロは、自らの魔力が枯渇し、立ち上がれなくなるまで懸かってくるのを止めない。
勿論、そんな暴挙を連日続ければ遠からず再起不能になるのは間違いはなく、なのはの教導にも障りが出るだろう。
だからシグナムは、敢えて強力な、だが後に引きずらない魔力ダメージでキャロを叩き伏せることによって訓練を打ち切るのだ。
「無理は絶対にしないでね」とは彼女達の教官であるなのはの言である。
キャロも尊敬するなのはの言葉を無為にしようとは思っていない。
それでも、エリオのように成らなければならないという強迫観念が彼女を急き立てるのだ。
「しっかり休息をとっておけ。午後からの高町教導官の訓練には万全で挑め」
シグナムはそう言い残して踵を返した。
バトルマニアで知られる彼女だが、こんな痛々しい戦闘訓練を望む筈も無い。
だが、エリオの遺した槍に縋ることで己を支えているキャロの苦痛を和らげるためには、この方法しかない。
シグナムは、過去のエリオとの、本当に楽しかった訓練の日々を回想した。
- 566 名前:Little Lancer 一話 6/8 ◆vyCuygcBYc :2008/02/05(火) 20:59:15 ID:/QmHL6SP
- 少年は、真っ直ぐな瞳で烈火の将を見つめていた。
気合の掛け声と共に、稲光のような突きを見舞う。
その太刀筋は、少年の曇りない瞳を映したのように爽やかだ。
シグナム少年の刺突を、己の刺突をもって相殺した。
槍と剣の切っ先が火花を散らす。
その勢いに圧倒され、体格に劣る少年―――エリオ・モンディアルは弾き飛ばされた。
しかし、体のばねとストラーダの魔力噴出を用いて、空中で一回転して危なげない着地を決めた。
「お前は、まるで山猫のようだな」
シグナムは口の端に笑みを浮かべてその動きを賞賛した。
彼女の言う通り、エリオの動きには猫科の肉食獣を思わせるしなやかさと俊敏さがあった。
「まだまだ行きますよ」
エリオもにっ、と少年らしい笑みを浮かべて、更に挑み懸かる。
機動六課フォワードメンバーで最も小回りの利く機動性を持つ彼は、ソニックブームを用いて稲妻のような速度で左右からの攻撃を仕掛ける。
常人には目視することすらできないこの攻撃を、シグナムは全て攻撃軌道を先読みすることによって防御していた。
数十合と繰り返された攻防が一瞬だけ途切れる。
「ここまでか? ―――なら、こちらから行くぞ」
シグナムはレバンティンに炎を付加し、上段からエリオへと撃ちかかった。
瞬間、エリオは歴戦の将であるシグナムでさえ予想外の挙動に出た。
攻撃態勢に移ったシグナムの股下を潜って背後に抜けたのだ。
ストラーダにしがみ付き、床すれすれを伝うように股下を抜けたその動きは、エリオの矮躯を最大限に活かした戦法だった。
背後に抜けたエリオは槍強力な魔力噴射によって立ち上がり、無防備なシグナムの背後を襲う。
通常の勝負ならばこれで勝負ありだ。
だが相手は烈火の将シグナム。彼女は冷静を失わずに振り向き、必殺の一撃を受け止めた。
「成るほど、面白い。だがこの程度では―――」
シグナムの言葉をエリオが遮る。
「ここからです」
エリオは闘志を込めて、そう言い切った。
刹那、エリオは自らの相棒であるストラーダから両手を離した。
その右手は拳を形造り、紫電を漲らせている。
ストラーダをレヴァンティンで受け止めているシグナムは、一瞬だけ対応が遅れた。
その間隙をついて、真の必殺の一撃が繰り出される。
その名は―――
「紫電、一閃!!」
訓練場に爆炎が巻き起こった。
- 567 名前:Little Lancer 一話 7/8 ◆vyCuygcBYc :2008/02/05(火) 21:01:54 ID:/QmHL6SP
- 爆煙が晴れる。そこには、シグナムにレヴァンティンの切っ先を咽喉元に突きつけられたエリオの姿があった。
「やっぱり、まだまだシグナム副隊長には敵いませんね」
「そうでもないぞ。私もまさかシュランゲフォルムを使わされるとは思わなかった」
レヴァンティンは剣状のシュベルトフォルムから鞭状連結刃のシュランゲフォルムへと変化していた。
シグナムはシュランゲフォルムに変化したレヴァンティンで、ストラーダを受け止めたままエリオの一撃を防御し、そのまま反撃に転じたのだ。
「エリオ、最後にお前が使ったあの技だが」
「ああっ、ごめんなさい! 勝手にシグナム副隊長の技を真似しちゃって」
エリオは恥ずかしそうに頭を掻いた。
エリオの放った最後の技は、シグナムの必殺技である紫電一閃を自己流にアレンジしたものだった。
炎と雷と種別は違えど、共に先天的な魔力の属性を付与して一撃の威力を大きく増幅する大技である。
「でも、まだまだですね。シグナム隊長の紫電一閃には遠く及びません」
エリオはしゅんと項垂れた。
そのバリアジャケットの右腕部分が破損している。
魔力制御の未熟なエリオでは、その巨大な攻撃力を制御しきれなかったのだ。
「いや、私もこんなに早く技が盗まれるとは思わなかったよ」
シグナムが意地悪げにそう言うと、エリオは益々小さくなった。
そんなエリオをシグナムは優しげな瞳で見つめ、手を伸べた。
エリオは立ち上がると、心の底からの敬意の篭った視線でシグナムを見つめ、こう告げた。
「僕は、シグナム副隊長みたいな騎士になりたいんです。
―――シグナム副隊長は、僕の理想の騎士なんです」
- 568 名前:Little Lancer 一話 7、5/8 ◆vyCuygcBYc :2008/02/05(火) 21:02:41 ID:/QmHL6SP
- クールなようでいて、正面から賞賛されることに慣れていないシグナムは、あまりに真っ直ぐなエリオの瞳に気恥ずかしさを覚えて視線を逸らした。
「ん……気持ちは嬉しいが、私は剣を振るしか能の無い役立たずだ。
目指すなら、なのはやテスタロッサのような、誰しもから尊敬されるような連中がいいぞ。
それに、お前は槍手で私は剣士だ。手合わせの相手は出来ても、技の指導もほとんどできない。
聖王教会の騎士団に槍の名手の知人が何人かいる。技術指導の相手が欲しいなら紹介してやるが―――」
言葉を濁すシグナムに対して、エリオは首を振った。
「違うんです。シグナム副隊長のような華麗な技が使えるように成りたいのは勿論ですが。
……僕は、何よりも、シグナム副隊長のような立派な騎士の魂が欲しいんです。
シグナム副隊長やヴィータ副隊長達が、主の八神部隊長に忠誠を尽くす姿は、いつも僕の目標です。
僕も、何があっても大切な人だけは守り通す力を持った、騎士になりたいんです」
シグナムはエリオの瞳を見つめ、微塵の翳りもないその眼から、彼が本心からそう願っていることを知った。
感動で、心が震えた。
シグナムはくしゃくしゃとエリオの頭を撫でて告げた。
「小さな騎士エリオ。私は、お前のような真っ直ぐな魂を持った少年に理想の騎士と呼ばれた事を、心の底から誇りに思う。
お前がその真っ直ぐな魂を失わなければ、お前は必ず望む通りの騎士となることができるだろう」
「はい、ありがとうございます!」
エリオは嬉しそうに、本当に嬉しそうに頭を下げる。
その姿を見て、シグナムの悪癖である悪戯心が動いた。
「エリオ、騎士には仕えるべき主が必要だ。お前は、誰に仕える騎士になりたいんだ?」
エリオは、その問いにも真っ直ぐな返答を返した。
「僕には、まだ、シグナム副隊長達のような、主と呼ぶべき人は居ません。
でも、守りたい人は居ます。キャロです。
友達だけど、パートナーだけど、それでいて僕の家族のような―――僕の兄妹のような。
そんな、そんなキャロを守る騎士になりたいんです」
エリオはそう、胸を張って言い切って―――
それから、少しだけ恥ずかしそうに頬を掻いて笑った。
- 569 名前:Little Lancer 一話 8/8 ◆vyCuygcBYc :2008/02/05(火) 21:03:35 ID:/QmHL6SP
- エリオとの訓練を終えて、シグナムが自販機の前で缶コーヒーを飲んでいると、ヴィータがやってきた。
「シグナム、もうエリオの訓練は済んだのか?」
「ああ、今日の手合わせは終わったよ」
そう告げるシグナムの頬には、普段クールな彼女には珍しい小さな笑みが浮かんでいる。
「どうしたんだ? 今日はやけに機嫌がいいじゃんか。何かいい事でもあったのか?」
「へぇ〜。そりゃ珍しい。何があったんだ?」
からかうような口調で問うたヴィータに、シグナムはこの日のエリオとの会話の内容を話した。
話が進むにつれて、最初は面白半分に聞いていたヴィータの表情から、何時の間にかからかいの笑みが消えていた。
神妙な表情で、ヴィータはシグナムに告げた。
「あたし達は、幸せものだよな」
「ああ」
「闇の書の執行者として悪事を重ねて転生を繰り返すだけだったあたし達が、最高の主はやてを得て、大事な友と仲間達に出会って」
「奪うことしか出来なかった我々が、人に何かを与えることが出来るようになるとはな」
ヴィータは再びからかうような口調で問う。
「お? シグナムも教導の楽しさに目覚めたか? 教官資格取るか?」
シグナムは手をひらひらと振って否定する。
「いや、私に教官なんて小器用な真似はできない。エリオにも手合わせの相手をしてやるので精一杯だ。
でも、人を教えることの楽しさには目覚めたよ。
必死になって技を盗もうとしてくれて、私を理想の騎士だと呼んでくれる。
そんな後達がいるなんて、騎士としてこんなに嬉しいことはない」
窓から見える青空を見上げながらシグナムは続ける。
「私達が、何かを残すことができるようになるなんてな。
ヴィータ、私達も最早永遠の存在じゃない。人と同じように限りある命を持つことができた。
私は、この限られた命の中で、主はやての為に戦って、戦って戦って、その果てに逝けるなら、何一つ遺すものが無くとも悔いは無いと思っていた。
そんな、戦うしかできない私から、技を、騎士の在り方を受け継ぎたいと言ってくれる少年がいる。
ああ。本当に―――私達は果報者だ」
ヴィータは無言で缶コーヒーを自販機で買うと、プルタブを空けてシグナムの掌の中の缶にコツリと合せた。
―――その数日後、悪夢のようなジェイル・スカリエッティ事件が巻き起こることになろうとは、その時の彼女達には知る由も無かった。
一話はここまでです。
二話は引き続き過去編、この物語のJS事件の顛末です。
- 570 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 21:07:13 ID:ClkgXxUC
- 全英が泣いた
- 571 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 21:13:09 ID:TkD3VsUU
- >>560
とても初めてとは思えん
向いていないと知りつつ槍を振るうキャロの姿に不覚にも熱くなったGJ!
- 572 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 21:23:16 ID:AY+xm+rk
- エリオは更にもう一度Fの技術を使ってコピーされてるのか?
- 573 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 21:24:53 ID:j6flRxou
- >>560
GJです。泣きました。キャロが必死だけどその分痛々しい゚(ノД`)
いったい何があったんだ!
この先を知るのが怖いけども次回がすごい読みたいです。
- 574 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 21:39:55 ID:zcWSXRdU
- GJ
エリオだと思って読み始めて>>562の最後で震えが来た
- 575 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 22:04:27 ID:6KrQz4lk
- エリオが……エリオがぁぁぁぁ……(;;)
くっ……六課の女性陣を悲しませやがって……。
騎士は、守り抜くために自分が生き抜いてこそ騎士なんだぞぅ……orz
- 576 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 22:04:42 ID:LOylsRVA
- >>560
面白いよこれ、大したもんだ。心を込めてGJ。
描写に小技が効かせる書き方かと思えば、素っ気ない表現なのに深かったり。引き込まれた。
もっと読みたいと思わせられるな。
- 577 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 22:07:41 ID:UMrvF9v7
- >>560
初めてとは全く思えないな
引き込まれて続きが読みたくなるGJ
>>574
俺も同じ様にエリオだと思ってた
- 578 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 22:36:13 ID:ssnzj/NF
- >>560
ここに投下するのが初めてであって分量はこなしてきた
と思い込みたい出来。ちくしょう、尻を張るぞ。続きを期待
- 579 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 22:38:32 ID:Nqk1up7W
- >>560
初作品でこれは凄い…
これからも応援させてもらいますGJ
560氏とエリルーのSSには心を打たれた
本当にGJ
- 580 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 22:45:11 ID:r9u4uR+T
- >>560
ちくしょう自分の最初思い出して嫉妬した
自分もやる気でてきた、ケリュケイオンはどうなった?、GJ
- 581 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 23:13:02 ID:PT1BcG10
- >>560
GJ!!これは2話以降もwktkせざるを得ない・・・・・・・。
- 582 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 23:46:02 ID:wpCBL6fK
- 今までエロオ・モンデヤルって呼んでてすいませんでした
- 583 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/05(火) 23:52:07 ID:B2hblBpA
- >>560氏
GJ!
ていうか>>579のIDが地味に凄い件
- 584 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 00:13:19 ID:wA95sr5y
- >>583
残機が1コ増えてるなw
- 585 名前:タピオカ:2008/02/06(水) 00:27:08 ID:1gs2qINA
- >>560の◆vyCuygcBYc氏が面白すぎて投下しずらいだろ。常識的に考えて。
でも投下しようと思います。いけます?
- 586 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 00:28:07 ID:LPm80klq
- かまわず行くが良し!!
- 587 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 00:29:20 ID:KAXG34Ef
- welcome!
- 588 名前:タピオカ:2008/02/06(水) 00:32:33 ID:1gs2qINA
- それでは、注意事項。
・猫娘と11娘の話
・エロくも何ともない
・捏造が酷い
・時は本編少し前
そして、この場でひとつ前の話について訂正を載せておこうと思います。
未来で保管作業する司書さんがた、申し訳ないです。
前回の話で、タイトルと>>60と>>62の「優しい夢を見れるように」という言葉を「優しい夢を見れるよう」に、
>>63の1行目、18行目、21行目に入っている「ATF」を「AMF」に直してもらえないでしょうか。
- 589 名前:タピオカ:2008/02/06(水) 00:34:33 ID:1gs2qINA
- 「優しい夢を見れるよう」 承の話 前編
落ち着いたリニスが通されたのは客間らしい一室であった。
薄い蛍光じみた明かりで、むき出しの岩壁と人工的な内壁が混ざった通路と比べれば、そこはずいぶんと普通の部屋だ。
広さも明るさもある。造りの良い調度品は手入れもされていた。
無論、アジト全体を包むAMFはこの客間にも及んでいる。それでなお魔力のみで造り出されたリニスは平然としていた。
これで、負荷がかかった状態だ。AMFの制約から離れた時、また目覚めてすぐに見せた暴走状態になるのだろう。
つまるところ、AMFさえかかっていれば沈着冷静なリニスが、弱ったジュエルシードの手綱を握れると言う事だ。
(PT事件でほとんどのジュエルシードが暴走したらしいが……九つ一緒くたで暴れるとあれほど強いか)
「どうぞ」
「……どうも」
ウーノがリニスの手前、テーブルへと茶を一杯差し出した。
スカリエッティと、リニスが向かい合う座席。
スカリエッティの背後には、ウーノ、トーレ、チンクが控える。古参の右腕と、緊急時のリニスの抑え役だ。
一応、プレシアの杖はトーレが持っている。
「さて、お互い聞きたい事があるだろうが、まずは君の質問から答えよう」
「………今はいったい、いつです?」
「プレシア・テスタロッサの状況的死亡から、8年が経つね」
「それほど……」
「フェイト・テスタロッサは現在フェイト・T・ハラオウンと名を変えて管理局執務官として活動中だ。その使い魔アルフは前線を引き、家庭に重点を置いているようだね」
「ハラオウン…? …クロノ・ハラオウン……」
手をつけていない茶の水面をじっと眺めながら、リニスが呟くのは杖の過去で見た少年の名。
時の庭園の崩壊に立ち会った少年の片方だ。
「その母親リンディ・ハラオウンが、プレシア亡き後に彼女を養子にしてね。今では幸せな生活を送っていると言うわけだ」
「養子……ですか」
想い焦がれた娘が思いもよらぬ事態になっているのに、リニスが素っ頓狂な顔になる。
常に余裕を持ち、涼やかな彼女からすれば、かなり呆けた表情だ。
しかし幸せな生活を送れている、と信用しにくい人間の口からであれ聞けたのだからそんな表情にもなろう。
胸の奥に安堵の波紋。
それが全身を包む前に、ざわり、と熱い感情がリニスに湧いた。
フェイトに、会いにいかなければ。
それが今のリニスの存在意義。
「もう一度、フェイトに会いたい」
その願いの成就にのみ、今のリニスは在るのだ。ならば、例えAMFという枷でもこの衝動は抑えられない。
九つの声がリニスに囁く。今すぐに探しに行くぞ、と。
その激流のような思念の波を必死で制して、リニスは続ける。
「フェイトは今、どこに?」
「言えないね」
リニスの瞳から理性と知性が弾け飛ぶ。席から乱暴に立ち上がる。が、そこで止まった。
トーレとチンクも動く。が、リニスの静止に伴って構えるだけに終わる。
「……失礼しました。少し、取り乱してしまい」
「いいや、心中、お察しするよ」
また緩やかな動作で席に着くリニスの目の色は、厳しいが品性を取り戻したものだ。
内心では暴れ狂うフェイトを想う衝動に苦しんでいるのか、瞳は険しい。
トーレは精神的にリニスが何かと闘っていると感じ、チンクはリニスが情愛を溢れさせていると見る。
- 590 名前:タピオカ:2008/02/06(水) 00:35:40 ID:1gs2qINA
- 「ここはどこですか?」
「それも言えない」
「成程、あなたは私をここから出すつもりはありませんね」
「ご名答。悪いが、監禁させてもらうよ」
ハッキリそうと分かるようにリニスが歯を噛んだ。
今のリニスはロストロギアである。杖の過去から垣間見たジェイル・スカリエッティという人物であれば手放すまい。
加えて、次元犯罪者であるのだから、リニスなどという部外者を捨て置けない。
「今度はこちらから質問させてもらおうかな」
「……どうぞ」
「君はどうして杖から出てきたのかな?」
「ジュエルシードの目的は分かりますか?」
「使用者の願いを叶える事」
「では、使用者がいないと?」
「ジュエルシード自身で使用者を探すね。あぁ、虚数空間では、それができないと言うわけか」
「その通りです。結局、プレシアの杖に収められた九つのジュエルシードは、杖の内部に使用者を自ら作りだしました」
「それが君か。それで、君はジュエルシードに何を願ったのかな?」
「………もう一度、フェイトに会いたい」
「君はプレシア・テスタロッサの使い魔と見ていたのだが?」
「その通りです。契約内容は、フェイトの教育」
「それはそれは。教師をやってるうちに情が移ったというわけか」
「いけませんか?」
「いいや、美しい愛だと思うよ」
「………」
「クックックッ、そう怪訝な顔をしないでもらいたい」
「私をどうするつもりです?」
「正直、どうしようかと悩んでいる。分解してジュエルシードだけを抜き出すと言うのも芸がないからね」
「え……ジュエルシードが目的で、杖を引き上げたのではないのですか?」
「いや、ただの偶然だよ。杖を手に入れたのは」
一瞬だけ、キョトンとしたように目を瞬かせ、それからリニスは慌てて眉を凛々しく吊り上げる。
クスリと、スカリエッティが笑った。
「ならば、私をフェイトの所に放してくれませんか?」
「残念だが出来ない相談だ。ジュエルシードを野放しにするほど大らかにはなれないね。それに、ほら、なにせ私たちは悪の秘密結社みたいなものだからねぇ。やはり女の子の1人や2人、監禁していないと」
「面白い所帯になったものですね、ジェイル・スカリエッティ。後ろにいるのがウーノ、トーレ、チンクならば、最低あと2人がいるわけですか」
「今、12人の父親さ。はて、君は私を見たことがある風に言うのだね」
「オブジェクトリーディング」
リニスがトーレの持つプレシアの杖を指さす。
おや、とスカリエッティが一言。
「君は生前に私を知っていたわけはないのかね?」
「はい」
「では、プレシアの研究については本筋を知らなかったのかな?」
「……プレシアが何を研究していたのか知らされず、フェイトの教育のみを任されていました」
「クックックックッ……ハッハッハッハッハッハッ」
ひとしきり、スカリエッティの笑い声が続く。
場の全員が、ただ黙して収まるのを待った。
- 591 名前:タピオカ:2008/02/06(水) 00:36:30 ID:1gs2qINA
- 「蚊帳の外だったわけだ」
「だから、どうだと言うのです」
「哀れだね」
「それでもフェイトと、アルフと過ごした時間は素晴らしかった」
「私を憎まないのかな?」
「八つ裂きにしたいほど苛立ちます」
「それは恐ろしい」
「しかし、感謝に似た気持ちもあります」
「失敗作が出来たからかね」
「殺しますよ」
AMFは、効いている。それでもなお、トーレとチンクを凌いでスカリエッティを惨殺し得る鬼気が漲った。
トーレがインパルスブレードを、チンクがスティンガーを現す。ウーノも思わずスカリエッティをかばう構え。
リニスの殺意の収束先であるスカリエッティ一人が余裕を持っている。手だけでナンバーズ三人を制して続けた。
「失礼、優秀な執務官を掴まえて、少々口がすぎた」
「………」
「さて、ウーノ、彼女に部屋を。ああ、監禁すると言っても手荒に扱うつもりはない。くつろいでくれたまえ」
「………」
「世話は、そうだね、ディエチをつけさせようか」
「分かりました、こちらへどうぞ、リニス様」
未だ不愉快そうな心情を隠さず、スカリエッティを一睨みした後、リニスはウ−ノについていく。
目くばせするまでもなく、その後ろにチンクとトーレが控える。
残ったのは、手つかずの茶と、スカリエッティだけ。
「母親だな、あれは」
母親のいない男が、どこか楽しそうに呟いた。
あるいは、ひょっとすると、もしかすればその呟きは羨望の響きが、あったかもしれない。
◇
やや薄暗い通路を、ウーノたちに先導されて歩いていれば、前から話し声がやってくる。
全員、女の子だ。
来ているスーツもトーレとチンクと同じものである。
セイン、セッテ、ノーヴェ、ディエチ。戦闘訓練の帰りになる。
「おー、ウー姉……って、ありゃ、そちらはどちらさま?」
「ドクターの客人です、失礼のないようにね」
「リニスです……女の子が多いのですね」
「12人全員、女性ですよ」
「それはまた……華やかです」
「あたし、セインです」
「ノーヴェです」
「……ディエチと言います」
「セッテです」
- 592 名前:タピオカ:2008/02/06(水) 00:37:12 ID:1gs2qINA
- 明らかな好奇心を持って、セインが覗きこんでくるのに、リニスは苦笑じみた笑顔で返す。
ディエチも、興味があるようにリニスをぼんやりと見つめていた。
そしてセッテは無関心な風、ノーヴェも歓迎している雰囲気はない。
「ディエチ、リニス様の身の回りについては、あなたに任せますからついてきなさい」
「分かりました」
粛々と、ディエチがウーノたちに加わって行ってしまうのを見届けて、セインとセッテ、ノーヴェが残る。
「はは〜ん、きっとあの人、ウェンディが持って帰ったって言う杖に関係してるんだろうね」
「どんな関係があるってんだ?」
「いや、そこまでは分かんないけどさ……」
「ウェンディがあんな風になった原因みたいだし、そんな杖、叩き壊したい」
「おーおー、妹思いだねぇ」
「ちゃかすな。あんなウェンディ、初めて見た」
「そりゃ、あたしもさ」
「虚数空間で何があったんだ……?」
「そりゃ、」
「落ちたのでしょう」
セインの言葉を引き継いで、セッテが入ってきた。
ずっと、リニスが去って行った方向を見やったまま。セインとノーヴェの会話に入ってなお、まだリニスの後ろ姿があった方を見ている。
「うん、あたしもセッテの言う通りだと思うな」
「ふぅん」
「セッテ、あの人に興味あんの?」
「え」
まるで表情は変化しないが、驚きが多少混じったセッテの声。ずっと視線をリニスの方へとやっていたセッテが、ようやくセインへと向き直る。
「ずっとリニス様の方、見てたからさ」
「……優しそうな、お方だと思っていました」
「そうか? 怖い顔してたじゃないか」
やはり、ノーヴェに歓迎の空気はない。
だから、リニスを歓迎しようと思っているセインとしてはセッテの見解が少し嬉しかった。
◆
「こちらがリニス様のお部屋になります」
一人の生活空間としては大きな部屋だった。
ただ、やはり良好な状態を保っている整った部屋だ。こちらの調度品も、派手な物はないが質が高い。
清潔感のあるそんな風景に、リニスがポカンとなる。
「それでは部屋の説明を……」
「……」
「リニス様?」
「あ、いえ、その、もっと牢屋見たいなのを想像していたものですから……」
「そこまで手荒に扱いません」
- 593 名前:タピオカ:2008/02/06(水) 00:38:09 ID:1gs2qINA
- 一通り、ディエチからの説明を受ければ、さながらマンションの一部屋のように風呂も台所もついていた。
淡々としているディエチの所作は無駄が少ない。
「何か足りない物あれば言ってください」
「食材は支給されるのですか?」
「いえ、ダイニングがありますので、そこで出来たものをあたしが運んできます。そろそろ夕食ですが、持ってきましょうか?」
「いえ、まだ構わないです……あれ?」
手を振りながら、リニスが自分で自分を見下ろす。腹具合は、減ってもないが満ちてもない。
とどのつまり、ジュエルシードに依存しているのだから食事と言う概念がないのだろう。
だが、食べようと思えば食べられるようだ。この場合はもはやエネルギーの摂取ではなく、娯楽の話になってしまうだろう。
使い魔時代、食欲があったのを思い返して淋しい気分になる。
「分かりました。必要になったら言ってください、作ってきます」
「あなたが料理番なのですか?」
「おおよそは、ドクターが作ります。料理は、ドクターの趣味のようなものですのから。とても美味しいです」
「そ、そうなのですか」
リニスの中でスカリエッティに、ちょっぴりアットホームなイメージが付与された。
当人は比喩で言ってたが、本当に12人の父親のように振舞っているのだろうか。
「12人全員が、スカリエッティがどのような人物か、分っているのですか?」
「はい。次元犯罪者ではありますが、特にそれがどうとも……」
「そうですか……」
期待していたわけではないが、こうなるとリニスがここを脱出するのは不可能に近いだろう。
つまりそれは、フェイトとの再会が無理という事。苦しげに、リニスが眉根を寄せる。
存在の理由を閉じられて、苦しくないはずがなかった。ただ、それでも暴れ狂ってしまおうとまではリニスは思わない。
全権がスカリエッティに握られてしまっている。彼が自分をどうするかを待つしかないようだ。
「あなた達は、孤児か何かでしょうか?」
「いえ、戦闘機人です」
「戦闘……機人?」
ここから、リニスはディエチより戦闘機人について深い所まで説明を受ける。
全てを聴き終えてから、難しい顔でしばし考えに沈んだリニスはディエチへ、
「一緒に食事をしましょう」
という言葉を投げかける事になる。
◇
あ、歌。
歌が聞こえる。
またか。
昨日眠ってる時にも、聞こえてきたな。それで、そうだ、落ちた時の事を思い出すんだ。
これ、夢?
そうだ、夢だ。
落ちた時の、夢。
この歌が聞こえたからあたし、虚数空間を潜ってみたのに。
恐かったな……
あれ、恐かった?
違うよ。
恐いよ、今も。
何が恐いんだろう。この歌?
歌じゃない。落ちた事が忘れられないから、恐いんだろうな……
恐いよ。
……恐いんだ。
- 594 名前:タピオカ:2008/02/06(水) 00:38:54 ID:1gs2qINA
- 血を吐くようにそれだけを自覚して、薄い殻を破るように目が醒めた。
訓練スペースの傍らで丸まっていた体を起こす。
近場ではデュエチとセインが気楽そうに話をし、遠めにノーヴェがディードとセッテと攻撃の動作を交えて詰めた話をしている。
ウェンディといえば、何もしていないでお昼寝をしていたかと言うと、そうではなく何もできないのだ。
昨日ライディングボードを虚数空間に落としてきた彼女は、現在待機中。とは言え、そのライディングボードの代えは簡単に利くので今日中にスカリエッティから渡される事になっている。つまり、今日のウェンディはお休みなのだ。
「起きた?」
「おはよっス」
にこやかに手を振るセインへと、ウェンディも手を振り返す。その表情は、昨日、虚数空間から帰ってきた時の放心状態からほど遠い。
ほど遠いが、いつもの元気に陰が差している。セインも、ディエチもそんな妹の様子に不安が滲む。
「……ウェンディ、元気がない?」
「なに言っんスか! あたしは元気いっぱいっスよ!」
勢いよく立ち上がって、ディエチやセインへと陽気なステップ。
元気はある。いつもの軽快さだ。
ただ、どこか暗さがウェンディの雰囲気に一枚、はさまっている。そこには触れずに、そっとしておくしかないだろうとセインもディエチも思う。
「そう……」
「ディエチの方が元気ないじゃないっスか」
「そう……?」
「うん、あたしも今日のディエチ、ちょっと変だな、と思った。あ、別に悪い意味じゃないんだ。何か、戸惑ってる?」
「……うん。ちょっとだけ、戸惑ってるかもしれない」
セインとウェンディが小首をひねったので、ディエチがぽつりぽつりと語るのはリニスの事である。
昨日、今日に渡ってリニスについていたディエチだが、今まで接してきた者たちとハッキリと違うのだ。
簡潔に表せば、優しい。
一番近い感覚で、ルーテシアが自分たちに接する雰囲気に似ているが、やはり違う。リニスの場合はルーテシアのように自然体とまでいかない。ある種、ゼストから向けられる憐憫の情のようなものが微かにある。
が、やはり違う。
人として、接されていると、ディエチは気付かない。
そう、扱われた事がないからだ。
「ふーん……いい人なんスね、その、リニス様って」
「そう、みたい」
「セッテも優しそうって言ってたからね、実際にそんな方なんじゃない」
「……で、リニス様って、誰っスか?」
昨日、そっとされていたウェンディが最後までディエチが最後まで喋ってからそう訊くのだった。
「ドクターの客人だって。詳しい事は良く分からないけどね、ドクターからはこのアジト内では監視付きで自由にしていいって言われてるよ」
「それ、ドクター的な監禁じゃなかったっスかね?」
「リニス様自身、監禁されていると言っていた」
「何者っスかね?」
「あたしはね、きっとウェンディが持って帰ってきた杖に関係してると思うんだ」
「あの、杖っスか……」
子供じみたセインの推論に、ウェンディの目に影がよぎる。怯え。それをディエチは見逃さない。
「杖は、いいじゃない……実際に、リニス様の部屋に、行ってみる?」
「へ、行っていいのかな?」
「さぁ。でも、姉妹みんなに会ってみたいって、リニス様が言っていた」
「あ、じゃあ、行く行く」
ディエチからの提案に、セインもウェンディも驚いた。セインはハイハイ、と手を挙げて体で表現。
ウェンディは少しためらったが、行くと返事をする。ディエチの心にちょっとした波紋を作った事と、そして杖について今のままではいけないと思うから。
- 595 名前:タピオカ:2008/02/06(水) 00:39:48 ID:1gs2qINA
- 「コォラ! サボるつもりか!」
そんな3人へと、ノーヴェが割って入ってくる。
セッテ、ディードが組になって模擬戦をしているの置いておき、さながら委員長じみたセリフを乱暴に。
「ちょっとだけ、ちょっとだけだからさ」
「ちょっとも何もない! いいからセッテとディードを見てやれ!」
「なら、私が見よう」
「チ、チンク姉!?」
いつの間にか、最小のナンバーズがいた。唐突に現れた親愛なる姉に、ノーヴェが途端、大人しくなる。
セインたちに対するピリピリした態度も消えうせ、むしろさっさとリニスの所へ行ってしまえと言わんばかりだ。
それを見上げて、チンクがノーヴェへ提案。
「ノーヴェ、お前もリニス様の所へ行ってくるといい」
「え、な、なんで?」
「……そうだな、具体的に理由は言えないが、きっとお前のためになると、思う」
「いいよ、あたしは。ここでチンク姉と一緒にセッテとディードを見てる」
「リニス様に、興味はないか?」
「別に……あたしはチンク姉と一緒がいい」
「……そうか」
心なしか、残念そうだ。それをノーヴェは感じ取ったが、何故そうなるのかまでは分からない。
だから、チンクが残念そうになって、ノーヴェも残念な気持ちになる。変な連鎖だった。
ただ、2人はとっても姉妹らしい姉妹なだけ。
「えーっと、まぁ、うぅんっと……行ってくるね!」
「あぁ、いろんな話をして、いろんな話を聞くといい」
「チンク姉は、リニス様について何か知ってるんスか?」
「……………いいや、特に何も」
隻眼をそらして、チンクがセッテとディードの方へ行った。その後をノーヴェがついていく。
チンクに不自然さを感じながらも、ディエチはウェンディとセインを伴って、訓練スペースを離れた。
リニスの部屋は、アジトの奥の方だ。
一応、逃げようとした時に面倒な場所に作られてある。
「リニス様、ディエチです」
外から内へとマイクを通す。インターホンのようなものだから、完全にマンションの一角のようであった。
そんなディエチに対して、返ってくるリニスの声はちょっと怒っている。
『ええ、入ってきてください。それよりディエチ』
「はい」
『様づけは、必要ないと言ったじゃないですか』
「……申し訳ありません」
『そんな言葉使いも必要ありません』
「……はい」
きょとんと、セインが目を瞬かせる。どうも、リニスは自分たちと差をつけた付き合いをしたくないようだ。
それがセインにはとても好感が持てた。そしてこんな風に、付き合い方について文句を言う者を、他に知っている。
「まるでウェンディみたいだね」
笑いながらセインがウェンディの肩を叩く。
そう、ウェンディとリニスの呼称のこだわりは似ている。ディードがいちいち姉様と自分たちを呼ぼうとするのを、無理やり「ウェンディ」と呼び捨てさせているのだ。
だがセインに肩を叩かれた当のウェンディの顔は、愕然としたもの。唇が、肩が、震えている。
「ど、どうしたの?!」
「な、なんでもないっス……なんでも……」
- 596 名前:タピオカ:2008/02/06(水) 00:40:39 ID:1gs2qINA
- ディエチに続いて、セインを押しのけるようにウェンディもリニスの部屋へと入っていく。
「なんでもない」とは自分に言い聞かせているようにしか聞こえなかった。
部屋には、ずいぶんと香ばしく甘い匂い。
「いらっしゃい、ディエチ」
「こんにちは、リニス……」
「おや、今日は他にもお客さんですね。良かった、もうそろそろクッキーもできますし、恥ずかしくないおもてなしができます」
「こんにちは、リニス様」
「あなたは確か、セインでしたね。えっと、もう1人は……」
「ウ、ウェンディっス……」
ウェンディが、後ずさる。リニスに笑顔を向けられ、笑顔で返そうとして失敗していた。
ダメだ。この声は、ダメだ。
「リニスです、よろしくお願いしますね」
「……あ、あの、そうだ、よ、用事を思い出したっス! ライディングボードが……」
柔らか態度でリニスが一歩ウェンディへ歩み寄るのを皮切りに、ウェンディが弾けるようにそう言った。
いけない。この声は、いけない。
目を決してリニスに合わせようとせずに、ウェンディはまるで堪え切れなくなったように走り去ろうとする。
明らかに、逃げようとしているとしかとれず、セインがウェンディの肩を掴んだ。
「急にどうしたの?」
「な、なんでもないっスよ。ほ、ほ、ほら、ドクターの事だからさ、も、もうライディングボード出来てるかもしれないじゃないっスか……」
「ドクターなら、まぁ、そうかもしれないけど……」
「だから、あ、あたしは日を改めるっス……セインは、ゆ、ゆっくりすればいいっスよ」
たどたどしすぎる妹の様子に、セインも不審にしか思えないが、存外強くウェンディに振りほどかれて、結局行かせてしまった。
リニスのみならず、何年も一緒に過ごしているセインとディエチさえキョトンとしてしまう。自動的に閉まるドアを眺め、リニスが苦笑。
「嫌われてしまったのでしょうか」
「そ、そんな事ありませんよ、リニス様。ウェンディ、ちょっとうっかりしてるものですから」
「おや、ディエチからは、セインが一番ドジの多い姉妹だと聞いていましたが」
「な! ディエチ、そんな事喋ったの!?」
「……つい」
頬赤らめながら、セインが目をそらすディエチを睨む。ディエチは、少し笑っているようだ。珍しい。
「ディエチからいろいろと聞かせてもらいました。そして、もっと聞きたいと思っています」
かちゃり、かちゃりと3人分、カップを並べ始めるリニスの姿は昨日やってきた人間とは思えないほどこの部屋に馴染んでいた。
もはや、ここは「家」と言っていいほどの空気が流れている。そう考えて、セインが戸惑った。
「家」とは何だろう、と少しだけ夢遊するような思考。
そんな思考からすぐに我に返ってセインは慌てた。ぼんやりしすぎだ。
「あ、リニス様、そんな事は自分がしますよ」
「何を言っているんです。ここは私に宛がわれた部屋なのですから、私が歓迎の準備をせずどうするのですか」
「い、いえ、そもそもリニス様はドクターのお客人ですし……」
「セイン」
「は、はい」
カップを並べ終えたリニスがセインを真正面から見詰めてきた。
吸い込まれるように、その瞳からセインは目が離せない。
厳しいような、優しいような、悲しいような、温かいような、淋しいような、リニスの双眸。
「私の事は、リニスと呼んでください。それに丁寧な対応も、要りません」
「へ……」
「そうですね、簡単な話、友達づきあいしてください、と言うところでしょうか」
「……」
- 597 名前:タピオカ:2008/02/06(水) 00:41:19 ID:1gs2qINA
- 不思議そうに、セインが逡巡。堅苦しいのが苦手なのは、ナンバーズ中一二を争うのだ、そんなリニスの申し出は有難い。
単純に、いいのかなぁ、とセインは思ったわけである。だからディエチへと、そう言葉にする。
「い、いいのかなぁ……?」
「あたしは……いいと思う、思わないじゃなくて、そうしたい」
あまり感情を表さないディエチにしては、確固たる自己を以てセインに応えた。
だから、セインも嬉しそうに一つ頷いた。
「分かったよ。よろしく、リニス」
「はい、よろしくセイン」
キッチンに備えつけられたオーブンから、焼けたクッキーを取り出してはリニスの破顔。歓迎の、笑顔。
「クッキー作れたんだ……」
「これでも料理には自信があります」
「あ、いや技術的な問題じゃなくって、物理的な話で」
「あたしがいろいろ取ってきた……一人だと暇だから、食材を出来るだけ持ってきてって」
「ナンバーズ全員に、会いたいと思っています。しかしながら、歓迎のために出来ること、料理ぐらいしかないものですから」
「歓迎するつもりだったけど、歓迎されちゃったわけか」
セインが苦笑じみた表情で、嬉しそうに席に着く。ディエチも。
リニスがカップに茶を入れる様子が優しすぎて、穏やかすぎて、何よりも女性的すぎて、セインが思いつく。
「家」では、お母さんが迎えてくれるものだ、と。
◆
ライディングボードは、出来あがっていた。もともとスペアのパーツはいくらかあったのだから、ほとんど組み上げるだけだったと言うのがスカリエッティの言。
そんな軽い言い分のくせに、これほどの高性能なのだから彼の天才ぶりが良く分かる。
そう、高性能だ。きちんと、間違えようもなく高性能である。
なのに、ウェンディはそんなラインディングボードを駆りながら違和感ばかり。
チンクやノーヴェ、セッテとディードのいる訓練スペースとはまた違う訓練スペースでの事。
ライディングボードで縦横無尽に空を走るウェンディは、あれほど心地よかった中空で居心地が悪かった。
そして、何よりも、
「歌が……耳にちらつくっス……」
あの歌。杖の歌。リニスと同じ声。つまり、リニスと同じ歌声。だから、リニスの歌声。
逃げてしまったが、やはりそれが正解だったとウェンディは思う。
恐い。
落ちるのが、恐い。
それを彷彿させる歌声だから、リニスさえ今は恐い。あの杖は、ここにきてもうリニスの物だろうとウェンディは確定する。
つまり、リニスのせいで落ちた。だからと言って、当たり散らすではなく、ウェンディは逃げた。単純に、落ちたのは自分が調子に乗ったからだと、考えている。
速度を出して、その怯えを振り払おうとしても、歌の幻聴は余計に鼓膜から離れない。
しょせん、幻聴だ。速度を出すのは、楽しい。空は、気持いい。
そう念じて、以前は快感でさえあった滑空を思い出す。それでも、今見えている景色が、今聞こえている歌が、ウェンディを蝕んだ。
「恐い…恐いよ……」
各段に、ウェンディは空が下手になっていた。
- 598 名前:タピオカ:2008/02/06(水) 00:43:02 ID:1gs2qINA
- 終わりです。
ここ最近、他の職人さんの話を読んで、よぉく分かりました。
派手さが足りん。
もうちょい、こう……何とかしようと思います。
再見。
- 599 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 00:55:09 ID:2A1qvQML
- 乙です。数の子かわいいよ数の子
しかしタピオカ氏の人物描写は凄いな、声が自然に脳内再生される
- 600 名前:B・A:2008/02/06(水) 01:23:11 ID:5gI4otXQ
- 前の人が投下して既に30分。そろそろ良いですね。
注意事項
・エリオ×ルーテシア
・非エロ
・本編改編。いわゆるIFというやつです。
・強引な展開や独自の解釈、勝手な捏造が多々含まれます。
- 601 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 01:25:00 ID:0MNIgid/
- 使い魔自体は肉体を持ってるんでAMF下でも通常の行動は問題ないんだろうな
- 602 名前:Ritter von Lutecia 第10話@:2008/02/06(水) 01:25:24 ID:5gI4otXQ
- 時間は少し前後する。
頭上を越えて飛び立つヘリを見上げ、エリオは地面に膝をついた。
間に合わなかった。
追いつけなかった。
無力感と絶望感に打ちひしがれ、エリオの心が闇に沈んでいく。だが、その体はまだ諦めていなかった。
ボロボロで動かすこともままならないというのに、エリオの体はヘリを追いかける。
追いつくはずがない。
一歩進むだけでも苦痛なのだ。
これ以上の無茶は死に繋がるかもしれない。
それでも、エリオは前に進む。前のめりに倒れながら、一歩一歩前に進む。
ルーテシアのもとに行く。
その決意に、エリオの心は応えた。
「まだ・・・・終わってない・・・・」
木にもたれかかりながら、ストラーダを構える。
瞬間、鋭い痛みが右腕に走った。
「ぐうぁっ!」
右腕が異様に膨らみ、どす黒く変色していた。
そうだ、この腕はスバルとの戦いで骨折していた。しかし、ちゃんと治癒魔法で治療したはずなのに。
「どうして・・・・ルーに・・治してもらったのに・・・・・」
『魔法だって万能ではない。傷がぶりかえすこともある』
それだけ、自分は無茶をしてきたということだ。もうこの腕では、ストラーダを握ることもできない。
「だから・・・なんだって言うんだ・・・・!」
コートを破いて右手をストラーダの柄に括りつける。
こうしている間にも、ヘリはどんどん遠ざかっているのだ。これくらいの傷で足止めを食らっている場合じゃない。
- 603 名前:Ritter von Lutecia 第10話A:2008/02/06(水) 01:27:10 ID:5gI4otXQ
- 「ストラーダ・・・・ヘリまで飛ぶよ・・・・」
『承服しかねる。これ以上の負荷は君の死に繋がる恐れがあるのだぞ』
「それでも、行かなきゃならない。ルーに伝えることがあるんだ」
シグナムに意地を貫けと言われた。
フェイトに自分で終わらせろと言われた。
その約束を果たすためにも、ルーテシアのもとへ行かねばならないのだ。
『君は、いつも私の意見を聞かないな。私がいつも、どんな思いで君に力を貸していると思っているんだ?』
いつだって無茶をして、限界まで魔力を引きずりだす手伝いをさせられているのは自分なのだ。主を最も傷つけているのは自分なのだ。
それがデバイスの役目であるが故に、ストラーダにはどうすることもできない。それが堪らなく悲しかった。
その上、死ぬかもしれないような無茶に力を貸せと言うのか。
『私にこれ以上、家族を傷つけさせろと言うのか、エリオ!』
それが自分の存在否定に繋がるとわかっていても、ストラーダは言わずにはいられなかった。
ルーテシアを守りたいというエリオの意思は尊重する。だが、それ以上にストラーダはこの無謀な主を傷つけたくはなかった。
彼は信頼すべき主であり、大切な家族なのだから。
「ごめん、ストラーダ。けど・・・君と一緒なら、きっと飛べると思うんだ」
例え、どれだけ遠く離れていようと、このデバイスとならばきっと辿り着ける。
自分と彼は一心同体。力を合わせれば、きっと不可能はない。
「だから・・・お願いだ、ストラーダ!」
エリオの魂の叫びが、ストラーダの電子頭脳に僅かなノイズを走らせる。
一拍の間を置いて、ストラーダは答えた。
- 604 名前:Ritter von Lutecia 第10話B:2008/02/06(水) 01:29:14 ID:5gI4otXQ
- 『・・・・・先ほどの戦闘でカートリッジを全て使い切っている。補充を頼めるか?』
「ありがとう」
主思いのデバイスに感謝し、懐を探る。たったそれだけの動作で腕に痛みが走り、手にしたカートリッジをこぼしてしまう。
拾おうかとも思ったが、その時間すら惜しくてすぐに新しいカートリッジを取り出した。
手が震えるせいでうまく装填できない。折れている右腕で柄を支えて何とか一発を装填し終えた時には、
既にヘリは豆粒ほどの大きさになっていた。
「ストラーダ、僕をルーのところに。その名のままに僕が往くべき道となれ!」
『Jawohl Mein Bruder(了解した、我が兄弟)』
強烈な加速Gに体が軋む。
まるで高速で壁にぶつかったかのような衝撃。質量を伴った風がエリオの前に立ち塞がり、
全身がバラバラになったかのような錯覚にエリオの意識が暗転する。
その時、ありえないことが起こった。
『Panzergeist』
吹き付ける風が止み、エリオは意識を取り戻した。
飛んでいるというのに、風の手応えがない。
何かが行く手を塞ぐ風から守ってくれている。
「ストラーダ?」
『死なせはしない、大事な家族なんだ。我が名に賭けて、騎士エリオを
フロイライン・ルーテシアのもとへ届ける! 届けてみせる!』
アームドデバイスにはミッド式のようなオートガード機能は搭載されていない。
術者の危機に対して、このように防御魔法を唱えることなど本来はありえないことだ。
ストラーダのエリオを思う気持ちが、デバイスの機能をも超えた奇跡を起こしたのだ。
「ストラーダ・・・・・いくよ、ストラーダっ!!」
辛うじて力の入る左手で、自分を守ってくれる相棒をしっかりと握る。
煙のように魔力残滓をまき散らしながら、エリオは空を駆け抜けた。
- 605 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 01:30:14 ID:J69JvRgO
- 支援
- 606 名前:Ritter von Lutecia 第10話C:2008/02/06(水) 01:30:24 ID:5gI4otXQ
- 「あんの馬鹿! ぶつかったらどうする気だ!」
まっすぐにこちらへ向かってくるエリオに、ヴァイスは悪態をついた。
このままではぶつかってしまう。機体に穴なんて空けられたら堪らんと、ヴァイスは後方ハッチを開放した。
更に衝撃に備えて、ほとんど使ったことのないホールディングネットを展開する。
直後、機体が大きく縦揺れを起こした。
「いったぁ・・・・・」
「こんの馬鹿エリオ! ストームレイダーに傷がついたらどうしてくれんだ!」
「す、すみません・・・・・」
ホールディングネットを突き破り、運転席まで突っ込んできたエリオにヴァイスはどなる。
できることなら首絞めでもかけてやりたいところだが、さすがに運転中なので自重した。
「エリオ・・・・」
荷台にいたルーテシアは、突然乱入したエリオの姿を見て言葉を失った。
力なく垂れ下った右腕。傷つき血を流す右目。全身傷だらけで無傷な個所はどこにもない。
(また・・・私のせいで・・・・エリオが・・・・)
エリオが痛む体を無理やり起こしてルーテシアのもとへと向かうと、まるで何かに怯えるように後退する。
だが、すぐに後退する空間がなくなり、ルーテシアはエリオに抱きしめられた。
- 607 名前:Ritter von Lutecia 第10話D:2008/02/06(水) 01:32:11 ID:5gI4otXQ
- 「ルー・・・やっと・・・追いついた・・・・・」
抱きしめた腕にはほとんど力が入らなかった。
シグナムとの死闘、そして飛んでいるヘリに突っ込むなんて無茶をやらかしたのだから、当然と言える。
本当に、自分でも無茶をし過ぎたと思っている。
「ダメだよ・・・・私といたら、またエリオが傷つくよ・・・・もう、エリオが傷つく姿なんか・・・・見たくないよ・・・・」
「それは、僕もだ・・・僕だって、君の泣き顔は見たくない」
互いを思うが故に、2人は傷つけあうことしかできなかった。
まるで山嵐だ。お互いを求めあいながら、その針が邪魔をして抱き合えない。一緒にいることができない。
けれど、山嵐はいつか傷つかない距離を覚える。その位置ならば、決して傷つかず、いつもそばにいられる。
「ルー・・・僕は、ずっと間違っていたんだ。君を守るためなら、他の全てを犠牲にしても良いって思っていた。
けど、そこには僕自身も含まれていた」
守ることに固執するあまり、その本質を見誤っていた。
何もかもを犠牲にするべきではなかった。
たった一つでも、彼女以外に譲れないものがあったのに。
自分という、彼女とともにあらねばならぬ存在が。
「それが、君を傷つける結果になるとわかっていても、僕は立ち止まれなかった。怖かったんだ、君を失うことが」
恐怖は強さを求め、強さは更なる不安を呼んだ。
自分なんてどうでもいい、とにかく彼女を守る。その一点だけを求めた。
そのために、仲間も、理想も、全て切り捨てた。
致命的な間違いを、自分は犯してしまった。
「それでも・・・・僕はもう戻れない・・・やり直すことはできても、犯してしまった罪は消えない。
きっと僕は、これからも君を傷つける形でしか守れない」
それを自覚することが、エリオにとって今までを終わらせることだった。
自分は万能の魔法使いではない。
無敵の騎士でもない。
ルーテシアという1人の少女を守りたいだけの、ただのエリオでしかない。
- 608 名前:Ritter von Lutecia 第10話E:2008/02/06(水) 01:33:30 ID:5gI4otXQ
- 「それでも・・・僕は君を守りたい。だって・・・・・」
願いには、必ず行きつく先がある。
ルーテシアを守りたいという思いが照らす道、その先にあったのは・・・・。
「僕は・・・君と生きていきたいんだ」
どれだけ傷つこうと、君のためなら耐えられる。
どんなに苦しくても、君と一緒なら乗り越えられる。
1人で戦うわけじゃない。
1人で苦しむわけじゃない。
幸せも苦しみも、全部まとめて2人で背負いたい。
それが、エリオにとっての新しい自分だった。
「私も・・・エリオと一緒にいたい・・・・」
小さな唇から、かすれるような声が漏れる。
「でも・・・ダメだよ・・・・私なんかといたら・・・ダメ・・・・」
「ルー!?」
「きっと傷つけるから・・・・死にたいってくらい苦しい目にあうから・・・・だから・・・・・」
ルーテシアの周りに魔力が集まっていく。
意図の読めない行動にエリオは戸惑い、ルーテシアの思いに気づいたヴァイスは沈黙したまま涙した。
「私のことは・・・・忘れて・・・・」
ルーテシアがエリオと体の位置を入れ替える。直後、風船が破裂するような音がしたかと思うと、エリオの体は宙を飛んでいた。
そして、開きっぱなしのハッチから空中へと投げ出される。
「ルゥゥゥゥッ!!」
遠ざかるエリオの声を振り払うように、ルーテシアはヴァイスに言った。
「見た?」
「ああ。君を捕まえた管理局局員を吹っ飛ばす瞬間を、バッチリとな」
「じゃあ、いいです。扉を閉めて」
「・・・・・あいよ」
- 609 名前:Ritter von Lutecia 第10話F:2008/02/06(水) 01:35:34 ID:5gI4otXQ
- 電撃と衝撃弾がぶつかりあい、爆発の余波で木々が揺れる。
仕留めきれなかったと悟るやいなや、ガリューは加速、そのままフェイトの懐に入り込み、神速の乱撃を放つ。
「くっ・・・」
腹部に2発食らった時点でバックステップを踏み、大きく後退。
後コンマ5秒反応が遅ければ、5発は食らっていた。こちらの予想を遙かに上回るガリューの速さに、
フェイトは素直に称賛の言葉を送る。
「大したものですね、私よりも速いなんて」
こうなれば、真ソニックフォームを使うしかない。能力リミッターのせいでライオットが使えないのが痛いが、
今のままではそもそも決定打を与えることができない。
そう考えていた時、不意にガリューが構えを解いた。
「どうしました、まだ戦闘は終わっていませんよ?」
「!!」
斬りかかろうとするフェイトを手で制し、ガリューは明後日の方向を向く。
その先には、隊舎に戻ろうとするヴァイスのヘリが飛んでいた。
次の瞬間、ガリューはヘリ目がけて飛翔した。
いったい何があったのかとフェイトも後を追い、そこで初めてエリオがヘリから落下したことに気づいた。
「エリオ!?」
重力に引かれ、もの凄い速度でエリオは落下していく。ストラーダを構えて飛ぼうとしているようだが、ブースターはガスが切れたコンロのように小さな火花を散らすだけだった。
そのままエリオは地面に吸いこまれるように落ちていき、あわや激突というところでガリューに抱きとめられた。
「うぅ・・・・うぅ・あぁぁ・・・ああぁっぁ・・・・」
2人に追いついたフェイトが見たのは、ガリューの腕の中で嗚咽するエリオの姿だった。
頬から涙を流し、遠ざかるヘリに向かって救いを求めるように片手を伸ばす。
居たたまれないその姿に、フェイトはかける言葉が思い浮かばなかった。
いったいヘリの中で何があったのか、その場にいなかったフェイトにはわからない。
だが、いずれにしてもエリオの望んだ形でなかったことだけはわかる。
「ルゥゥゥゥッ!!」
絶望に打ちひしがれるエリオの叫びに、空は何も応えなかった。
to be continued
- 610 名前:B・A:2008/02/06(水) 01:36:02 ID:5gI4otXQ
- 以上です。
入りきってよかったぁ。
- 611 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 01:42:50 ID:LPm80klq
- ガリューが強いぜ……エリオの負けたから俺の中ではザコ扱いだったんだが、まさかフェイトを苦戦させるとは。
ともかくGJです。
互いを傷つけない為に寄り添う事ができないなんて、悲壮な愛ですね。
この先ルーにどんな展開になるのか気になってしかたないです、最高に期待してます!!
- 612 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 01:45:18 ID:J69JvRgO
- GJ!!です。
エリオォォォ!!そしてルーテシアは優しさ故に・・・。
感想が支離滅裂ですが今の私の精神を物語ってますw
先が本当に読めないw
ここからどうなるのか楽しみです。
- 613 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 01:50:35 ID:0MNIgid/
- ガリューが強過ぎw
でも決着が見えてきましたね
- 614 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 01:54:14 ID:mKuI7mgE
- GJ!!!!!
こういうことになったか……
しかしヴァイスの兄貴は台詞だけで癒されたぜw
- 615 名前:30スレ690:2008/02/06(水) 01:59:35 ID:0w5AYDTV
- GJです!ヴァイスのアニキっぷりがグレイト!!
余韻も冷めませんが済みません、ですが今がタイミングなので投下します・・・・
ええ、思いついたのを次回予告風に纏めました。推奨BGMは〜FLY INTO THE NIGHT〜です。
- 616 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 02:02:26 ID:LPm80klq
- ってか用量大丈夫か!?
- 617 名前:30スレ690:2008/02/06(水) 02:02:28 ID:0w5AYDTV
-
「さぁ、伝えよう・・・・この世界に、己の終わりを。そして来る新たな世界に、其の始まりを!」
「ふざけるな!私はまだこの世界に求めるものがある!そしてそんな世界に用など無い!」
stsから数年後、管理局開設至上最悪の事件となるそれは、何気ない日常における一人の少女の優しさから始まった・・・・・・
ヴィヴィオ「セラちゃん、危ない!!」
クラスメイト「ヴィヴィオちゃん・・・・その光は・・・・・!?」
彼女の見せた魔力光(ひかり)によってトリガーが引かれるのは、かつて最高評議会が企んだこの歪んだ世界の大編成。
ミッドチルダ一般人「レジアス中将の居ない、もう杜撰でしかない管理局に、このミッドチルダを任せておくことなんて出来ないんだよ!!」
管理世界一般人「今こそ聖王の下に新たなシステムを構築すべきだ!でなければこの世界達を守ることなんて出来ない!」
聖王の再来により引き起こるのは、一枚岩のベルカ聖教すら二つに引き裂く戦乱。
カリム「幾ら聖王のクローンとはいえあんな小さな子にどれだけ大きな責任を押し付ける心算なんですか貴方方は!!」
ベルカ聖教司祭「何も彼女が全て引き受ける必要など無い。だが、考えてもみたまえ。もし、『彼女』がこの世界の現状を見たらどう思うかおね。」
- 618 名前:30スレ690:2008/02/06(水) 02:02:52 ID:0w5AYDTV
- 呼応して立ち上がるのは聖王朝時代に彼女を支えた12の聖騎士。
管理局員A「馬鹿な!?今は無き『王の聖騎士団』が何故ここに!?」
管理局員B「も、もう駄目だ・・・・・・・・」
管理局員C「くそぉ、誰か『円卓の鬼神』とか『片翼の妖精』とかを連れて来てくれよ!・・・・・・・・・何ならリボン付きだって!」
管理局員D「最後のはともかくあの二人はベルカ戦争の人間だろ!?無理だよ!もうお仕舞いなんだよ!!」」
そして再び現れるベルカの最終兵器。明かされるのは無限書庫にすら記載されなかった最重要機密。
スカリエッティ「私が使ったのはあれを造る為に建造されたプロトタイプ。だからミッドチルダなんて敵地に存在したし、簡単に見つけることが出来たのさ。」
同上「君は不思議に思ったことは無いかい?あの近接戦主体のベルカが何故戦艦なんて砲撃が主体のものを建造したのかを。」
フェイト「まさか、あの『揺り籠』は!?」
原作・脚本:都築真紀
監督:草加啓造
新たなキャストを迎えて放たれるシリーズ最新作、『魔法少女リリカルなのは VIVIO』。20××年、放送予定。
己が持つ『正義』同士がぶつかり合った果てにあるのは、この世界の存続か、新たな世界の到来か。・・・・それとも・・・・・・・・
「この世界がどういうものか、よくわかってる。けどせめて・・・・・それでもせめて、この世の人々に少しでも多くの幸が・・・・あらんことを・・・・・。」
- 619 名前:30スレ690:2008/02/06(水) 02:05:49 ID:0w5AYDTV
- 多分わかる人には分かる予告を聞きながら書きました。
そういえば結構中の人多いな・・・この間もシグナムがレーヴァテイン振るってたし・・・
ええ、スタッフ云々はジョークです。本気にしたら駄目です。ついでに続きは未定です・・
見苦しかったらすみません・・・
- 620 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 02:07:13 ID:0MNIgid/
- 次スレの季節だね
- 621 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 02:28:07 ID:+NlHfazg
- 見苦しいってレベルじゃねーぞ
- 622 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 03:19:30 ID:lZJWQEVd
- >>619
ごめん。AYAKASHI並みについていけないorz
- 623 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 03:50:54 ID:1gs2qINA
- >>610
GJ!
いいねぇ。エリオは男前で、ルーテシアもヴァイス伝いで自分を犠牲にエリオを表舞台に帰らせようとしてる姿がいじらしい。
愛だね、愛。B・A氏の愛が溢れてるよ。
- 624 名前:30スレ690:2008/02/06(水) 03:52:17 ID:0w5AYDTV
- >>622
うん、すいません説明が足りませんでした・・・・・・。
えー、前々からあった、ヴィヴィオが聖王だってことが周りに知れてその結果、ベルカ聖教会から
何からどうするかについて世界が割れて、その結果大戦乱という結果に・・・・・という話です。
えー、勿論背後で蠢く存在だとか、それがいったい何を考えてるだとか、上にあった聖騎士とは
聖王に仕えてるから『聖』騎士だとか、何で昔の人が居るかと言うと守護騎士と同じようにプロ
グラム的な存在だとか、最後は揺り籠がグレン○ガンばりに○○するだとか・・・・
思い返せばぶっ飛んでるどころか、大気圏を突き抜けてロストインスペースな設定ばかりでした・・・・
正直ごめん・・・・・・・
あ、そういえば『なのは』なのにヴィヴィオとかの出番あってなのは本人の出番がないや
- 625 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 04:39:08 ID:+xucVJje
- >>タピオカ氏
GJ! こういう話は和むなぁ。今後の展開楽しみでしょうがない。
ナンバーズもそれぞれの反応が初々しくて困る。ウェンディとかセインとか。
派手さが無いと言いますが登場人物達も今はまだ現状把握に追われてますしこれでいいかと。
てかドクター主夫かよwwww パパ頑張りすぎwww
>>B・A氏
なんでこんなにもすれ違うのか……
傍から見て苛立ちを超えて呆れてしまうのもまた青春の一形態。
確かにこれならフェイトが叱ってたら話のテンポ悪くなってたかもしれないね。
そうだよなぁ、エリオは賢い子だからいつだって罪の意識が付き纏ってたんだろうなぁ。
しかしガリュー強いな。ヴィータにもふっとばされてたのに
- 626 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 09:04:24 ID:Esmz/Fpj
- >>610
貴様、なんてことをしてくれた!?ストラーダの台詞が熱すぎて涙が止まらないぞ!!
GJだ!!
- 627 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 09:22:30 ID:btAzG3Cc
- >>560
エリオがいったいどうしてしまったのか・・・
過去編を見たいような見たくないようなものすごく複雑な気持ちです
GJ!
>>610
GJ!
ガリューもエリオもいいよ!
もう二人とも良すぎます。そしてルーテシア!君って子は・・・
とにかく先がものすごく気になります。
- 628 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 09:46:40 ID:08eff8si
- 容量やばい。現在496kbだ。
次スレたててくる。
- 629 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 09:56:08 ID:08eff8si
- ☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第50話☆
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1202259018/l50
たてたお
クロススレのリンク、流れが高速すぎて、毎回追うのが大変なので
倉庫のトップページのほうを張っておいた。
ページ開いたらすぐ現行スレッドへのリンクがあるのでこっちの方が便利かも知れん。
- 630 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 10:37:06 ID:Zbcu/fLe
- >>629
乙かれさん
- 631 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 10:59:51 ID:X/3txcHz
- >619
ベルカ戦争って、そっちのかよw
- 632 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 18:12:49 ID:/l8kB0bF
- @異次元対策
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- 633 名前:名無しさん@ピンキー:2008/02/06(水) 18:13:39 ID:/l8kB0bF
- @異次元対策
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