もし空が
色だったら、



color 02





姫翼。主として暗殺を生業に、歴史の闇に隠れるようにして存在してきた一族だ。
元を辿れば戦国時代頃まで遡るとかのぼらないとかいうけど、正直どうでもいい。

曖昧な伝承が多い中、これだけははっきりと今の姫翼にも伝えられている。
なぜ自分たちの祖先が人殺しをするようになったのか、その理由。


姫翼の人間は総じて瞳の色が違う。
青、赤、黄、オレンジ、朱、黄緑、水色、金、銀…とにかくほんとうに様々な。
(稀に普通の日本人らしく黒い瞳を持つものも現れるらしいが、今の姫翼では”異端”として、分かった途端”消される”らしい。)
故に祖先は人里離れた山奥に集落を作り、ひっそりと暮らしていたそうだ。

けれどある日、悲劇は起きた。
その存在を不吉に思った人間達の手で集落が焼き払われたのだ。
それならば何故今姫翼は存在しているのか。…簡単だ、生存者がいたから。
それが暗殺組織としての姫翼家初代当主・紫翠と翡翠。
忌まわしい事に自分と弟の名と同じ、双子の姉弟だった。
そして2人は誓った。自分たちから大切なものを奪った黒い瞳の奴らをけして許しはしない、と。
奴らを根絶やしにするまで戦い続けるのだ、と。




湯気で曇った鏡に手を滑らせる。
露になる己の顔…瞳の色。
暗いほうへ向かう思考を断ち切りたくて、鏡から目を逸らした。
髪を束にして絞り、乱雑に水気を払う。
太腿まで伸びた髪は水気を含むととても重い。
(……切ろうかな。)
実際、戦いの時にも邪魔でしかない。
髪を掴まれ体勢を崩すことも、そう珍しいことではなかった。
(それでもきっと…切れないんだろうな。)

『もったいないよ、紫翠。そんな綺麗なんだから、もっと伸ばそうよ。』

そう笑う双子の片割れの顔が、眩しすぎるから。


ずっと昔の紫翠と翡翠は2人で生き残ったのに、何故私は1人で生き残っているんだろう。
もし4年前…自分がもっと強かったなら。
あなたは今でも、私の傍で笑っていてくれた?

ねえ―――翡翠。





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(2007.08.30)





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