:
吐精して覆い被さってきた吾郎は、満足そうな息を吐いて寿也の首筋に顔を埋めた。
「重いよ」
文句を言いつつも、寿也の手は吾郎の汗ばんだ背中をゆったりと撫でている。
「俺が重いなら、お前が上に乗れば?」
にやりと笑った男は、先程まで掴んで揺さぶっていた腰を不埒な指先で撫でた。
「…お断りします」
ふいと顔を背けると、逸らされた首筋に熱い唇が触れる。
「前は乗ってくれたじゃん」
「…っ、あれは…酔ってたし…」
「ふぅん」
眇めた目で見下ろされて、寿也は吾郎の目を覆った。
「もう忘れてよ…恥ずかしいし」
「…忘れるには、エロ過ぎたんだけど」
「…」
以前、診療が立て込んで疲れ果てていた寿也は
患者の一人から差し入れられたブランデーで酷く酔った挙句に、
吾郎をベッドに引きずり込んだことがある。
引きずり込まれた吾郎の方にも激しく求められ、
引きずり込んだ張本人も未だに顔を赤らめてしまうような痴態も晒した。「俺は嬉しかったけどな」
毛布に隠れてしまった髪に口付け、しなやかな手触りの髪を指に巻き取りながら吾郎は笑った。
「いっつも俺からばっかり迫ってるから、お前からも欲しがってくれて嬉しかったぜ?」
「…」
「奥手な寿も可愛いから、いいんだけどな。まぁ…ヤリ始めるとすげぇエロくなるけど」
「…誰のせいだよ」
「俺のせい?っていうか、そもそもエロ過ぎるお前のせいだし」
「責任転嫁」
「はいはい、俺が悪かったから布団に入れてくれよ。寒い」
「さ っきまで熱いって言ってたくせに」
肩を竦めた寿也は、布団を引き上げて吾郎を促す。
「お前、やっぱりあったかいな」
同じ布団に潜り込んで寿也を抱き寄せた吾郎は、白い肩に口付た。
「君の方があったかいと思うけどね」
苦笑した寿也はするりと吾郎に抱きついた。
「あのさ…」
「ん?」
「別に…その、吾郎君とするのが、嫌とかそういうんじゃないんだ」
「え…あぁ、うん」
指を絡めて胸元に顔を埋めた寿也は、軽く息を吐いた。
「君とこうなるまで、立場的には逆だったわけじゃない?」
「うん」
「だから、さ…何ていうか…その…抱かれる立場から誘って
『いやらしい奴』とか思われたら、嫌だなって思ったりしてただけなんだ」
「誘ってくれるのは、大歓迎だぜ?」
「…うん」
赤くなった項に唇を落とし、愛しい肢体を引き寄せる。
「あのね…」
「ん?」
「好き、なんだ」
「へ…」
滅多に聞くことができない寿也からの告白に、吾郎は思わず呆けたような顔をしてしまう。
「君と抱き合うのは…好きだよ。凄く気持ちよくって…溶けちゃいそう」
「寿…」
「だから…もっと、溶かして?」
腰を擦り付けられて、吾郎の下肢がぐっと熱くなった。
「…その台詞だけで、イキそうだぜ」
「それはダメ」ふふっと笑う寿也に口付けた唇が再び全身を這うのに、そう時間はかからなかった。
:
: