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「んっ…」
異物感に眉を顰めると、皺が寄った眉間に唇が触れる。
「痛くないか?」
心配そうに覗き込んでくる男は、いつもの傲慢さからは程遠い表情を浮かべていた。
全ての肌を晒した自分とは対照的に、服を着ている姿が何となく悔しくて足を吾郎の腰に絡めた。
「いいから…早く」
指で蹂躙された内部は熱く蠢いて、更なる刺激を求めている。
床に放り出されたシャツを掴んでいた手を、吾郎の首に回した。
続きを強請るような仕草に瞠目した男は、嬉しそうに笑うと汗が滲んだ額にキスを落とした。
「いくぞ」
「んっ…」
ぐいと熱いものが入ってきて、更に足を広げさせられた。
「…っ」
内部を割り開かれる感触に、涙が滲んでくる。
「ん、んっ…」
動きが止まり、吾郎は大きく息を吐いた。
「全部入った」
「…」
何と答えていいのか分からず視線を彷徨わせると、髪を撫でられた。
「好きだ」
「…うん」
顔中にキスをされて思わず笑い声を上げると、繋がった下肢がぞくりと震える。
「…っ」
「動くぞ」
「うん」
頷いた寿也にもう一度口付けた吾郎は、白い腿を抱え上げた。
体勢が変わり更に奥まで男を咥え込まされると、思わず声が洩れた。
「あっ…」
今まで聞いたことのない甘い声に、笑みを浮かべた吾郎が緩やかに腰を揺らし始めた。
「んっ…んんっ」
熱いようなむず痒いような感覚に眉を寄せ、吾郎の手を握りしめると強く握り返される。
「…くっ」
「んっ…!!あっ、ああっ!!」
激しく腰を突き上げられ、内をかき回されるとぬめった音が部屋に響いた。
「やっ…あっ」
痺れたような熱が繋がっている部分から全身に回り、足の指が震える。
ぐずぐずに溶けた内壁の、ある部分を擦られるたびに甘い悲鳴が零れた。
「や、ダメっ…そこ…っ!!」
「ん?どこ?」
寿也が快楽を感じている場所を知っている男が、その場所を切っ先でかき回す。
「ああっ…!!」
互いの腹を汚していた寿也の屹立から零れた粘液を拭い、
浅く速い呼吸を繰り返す唇に塗りつけた吾郎は更に腰を動かした。
「…っ!!」
抜き差しされるたびに接合部から聞こえる粘着質な音と、二人の荒い息遣いが昼下がりの部屋に響く。
「やっ…あっ!!ああっ!!」
「寿也っ、寿っ…!!」
無意識に逃れようとする肢体を押さえつけ、内部を深く抉り込むと寿也がぎゅっと目を瞑った。
「あっ!!!あ、ああっ…!!」
腹に熱い飛沫が飛び散ったと同時に、下肢に力が入って吾郎が眉を寄せた。
「うっ…くっ…!!」
「んんっ…!!」
熱いものが内部で弾けて、汗を滴らせた男が脱力して覆いかぶさってきた。
「…大丈夫か?」
「うん…」
汗で湿った髪を撫でられ、噛み締めていた唇を優しく舐められた。
「…ごめんな」
「何が?」
「こんなところでやっちまって…」
「…」
ふと視線を動かすと、付近には寿也のものを主とした服が散乱しており、吾郎に至っては靴を履いたままだ。
「なんか…犯罪みてぇだし」
「…そうだね…じゃあ、責任とって」
「ん?」
「向こうで…もっと気持ちよくして」
吾郎の寝室を指差して笑うと、深く口付けられた。
「後悔するなよ?」
「うん…」
頷いた寿也から自身を引き抜こうとした男が、ふと動きを止めた。
「…何?」
「…」
「やっ…あっ!!ああっん!!何っ?」
いきなり激しく揺さぶられて、寿也が悲鳴を上げる。
「お前の顔、エロすぎ」
「もっ…バカっ!!あっ」再び甘い息遣いが満ちた部屋の外では、主人の声を聞いた白いブルドックが首を傾げていた。
『あっ、ああっ!!吾郎君っ!!』
『寿っ…』
部屋に入れてもらおうとドアを引っ掻いていた彼女は、背後の気配に顔を上げた。
見上げた先には、後ろが透けて見える青年が苦笑を浮かべている。
唇に指を当てて首を振る動きに、首を竦めた彼女は家主が食事の支度をしているキッチンへと走り降りていった。