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「…何か、今日は豪華だな」
その日の夕食は、いつもの三割程度豪華なメニューだった。
昼過ぎから吾郎に激しく愛された下肢には力が入らなかったが、寿也は気力でテーブルについた。
「今日はお祝いなのよ」
「お祝い…ですか」
「えぇ」
何のお祝いかは、聞かないことにして二人は夕食に手をつけた。
「あ、そうだ」
和やかに食事をしていると、家主がふと口を開く。
「二人ともいつの間に帰ってきてたの?」
「えっ…」
「いつの間にか二階にいるから、ビックリしたわよ。お茶に誘っても返事がなかったし…」
「…すみません」
「…疲れて寝てたんだよ」
「ふぅん」
床から吾郎のベッドに移動した二人は何度も抱き合い、
泰造が夕食だと部屋をノックするまで寿也は泥のように寝入っていた。
「あ、そうそう」
「今度は何だよ」
「アンタに用はないの。角のパン屋さんが、腰を診て欲しいって言ってたわよ」
「そうですか…明日行ってみますね」
「腰が痛いのは自分のくせに…ってぇ!!」
テーブルの下で足を踏まれた男は、涙を浮かべて加害者を睨んだ。
「どうかした?」
「いえ、別に」
「そう?」
楽しそうに食事をする家主には何もかもお見通しなのかもしれない、と寿也はこっそりとため息をついた。
翌日。
往診を終えた寿也は足音も荒く、道を歩いていた。
(吾郎君のバカ…!!)
診察にいったパン屋の主人は、寿也の顔を見るなりニヤニヤと笑みを浮かべて言った。
『おや…先生、昨日は随分と激しかったみたいですね』
『え…』
『探偵のダンナに、もう少しお手柔らかにって言っておいた方がいいですよ』
『…』
『首。見えてますぜ』
『…っ!!』
咄嗟に吾郎が吸い付いていた場所に手を当てると、患者は爆笑した直後に腰を庇って涙を浮かべていた。
土産だとパン屋の女将から貰った焼きたてのパンを手に、角を曲がると立派な馬車がアパートの前に停まっていた。
「…?」
馬車から降りてきた男は、寿也に気付いて会釈をしてくる。
「こんにちは。茂野所長はいらっしゃいますか?」
「薬師寺さん…」
先日とは違い、上質の上着を着た男は穏やかに微笑んだ。「今まで通り、公爵家は俺が継ぐことにしました」
大貫に呼ばれていた薬師寺は、ついでに探偵と医師に挨拶をしようと寄り道をしたらしい。
「そうか。アイツはどうするんだ? 」
相変わらず昼の惰眠を貪っていた男は、先日のように寿也に叱られて衣服を整えて客に相対していた。
「インドに行くそうです」
「インド?」
お茶を運んできた寿也は、首を傾げた。
「えぇ、インドで病院を手伝って欲しいと言われていたらしくて…軌道に乗るまで行ってくるそうです」
「なんだ、振られたのか」
「吾郎君…」
容赦ない探偵の言葉に薬師寺は苦笑した。
「違いますよ。眉村が帰ってきたら、結婚しようと約束しました」
「…良かったですね」
「えぇ」
「丸く収まって良かったな…よし、寝るから帰ってくれ」
「え、ちょっと…」
大欠伸をした男は、そのまま寝室に消えていった。
「…すみません」
「いえ、突然お邪魔した俺が悪いので、気にしないでください」
苦笑した薬師寺に、寿也は頭を下げた。「もう…失礼だよ。吾郎君」
薬師寺を見送った後、ベッドで横になっている男に寿也は眉を顰めた。
「…」
「聞いてるの?」
「聞いてる」
「子供じゃないんだから、ああいうの良くないよ」
「分かってるって」
「えっ…」
ベッドに腰掛けていた彼はあっという間に引き倒されて、唇を塞がれた。
背中に回された手が、寿也のシャツを捲り上げて素肌を弄り始める。
「ちょっと…」
「何だよ」
「明日も往診に行くから…ダメ」
抱きすくめる腕から逃れようとすると、腰を押し付けられた。
「俺、こんなになってんのに…」
硬くなった下肢を押し付けられて、寿也は顔を赤らめる。
「昨日、いっぱいしたじゃないか…」
「足りねぇよ…俺がどれくらいお前のこと抱きたかったと思ってんだよ」
「…」
「な…?いいだろ?」
「…っ」
耳元で熱く睦言を囁く唇が首筋を這い回る感触に、寿也は肩を震わせた。
「今度は優しくするから…なぁ…いいだろ?」
「本当に?」
「ん?」
「昨日はヤダって言ったのに、止めてくれなかったじゃない」
「あの時の『イヤ』は分かりにくいんだよ…」
「じゃあ…これから分かってくれる?」
「…もちろん」満面の笑みを浮かべた男の背中に腕を回しながら、寿也はうっとりと目を閉じたのだった。
*END*
ヘナン・ゾイル様!!ありがとうございました〜〜〜〜〜〜〜〜〜vvvvv(*T∀T*)
至極の素敵ゴロトシミステリーvvv(うっとりv)『探偵事務所バッテリー』のゴロトシも本当に可愛くてvvv
お話を戴いた直後から「続き続き!ハァハァ…vvv(*´∀`*)」と鬼のように催促しながら(スイマセン)
毎週毎週とっても楽しく読ませていただきましたvvそして背景絵を描くのも本当に楽しみでvv
「このシーンもv」「このシーンもv」とすんごい小分けにしたくてタマリマセンでした!(正直)
ぶっちゃけサンデで毎週毎週打ちひしがれて来た私には『日々を生き抜く希望』のようでしたよ(*T∀T*)
本当にありがとうございました〜〜vv(感謝vv)
そしてまた彼らに再び逢える日が来る事を…心のどこかで待ってますvv(*^ω^*)
素敵ゴロトシに出会えるヘナン・ゾイル様のサイト(EstEstEst)はコチラです☆