<僕の夏休み> 長女:美月 その4
「……彰ちゃん、私で、本当にいいの?」
ため池に入って泥だらけの僕はお風呂に入ることになった。
僕が抱きついたので、こちらも泥だらけの美月ねえは、いっしょに入ると言ってついてきた。
美月ねえと二人でお風呂──ものすごく恥ずかしくて、昨日までの僕だったらきっと逃げ出しただろうけど、
今日の僕は、今日からの僕は、恥ずかしいけど逃げ出さない。
母親と一緒に入るんじゃないんだから。
お姉さんと一緒に入るんじゃないんだから。
──この世で一番好きな、異性と入るのだから。
でも、美月ねえは、まだちょっとためらいがあるようだった。
「あのね、彰ちゃん。さっきは勢いでキスしちゃったけど、まだ間に合うのよ。
私、彰ちゃんより八つも年上だし、世間知らずだし、それに……。
……私、彰ちゃんが思ってきたような女じゃない、って自分でも思うもの」
服を脱ぎかけて手が止まった美月ねえは、視線を反らしながら言った。
「――私、本当は、子供っぽいし、性欲強いし、嫉妬深いし、すごくすごくいやらしい女なのよ……」
「……」
「昨日の晩、あんなふうに彰ちゃんにせまった、はしたない女が本当の私なのよ。
彰ちゃんがほしくて、彰ちゃんと赤ちゃん作りたくて、あんなになっちゃう女が、美月なのよ」
「……」
「彰ちゃんのこと考えて、毎日オナニーしていたことだってあるんだからっ……!」
「……美月ねえ……」
「彰ちゃんが、お母さんやお姉さんのように思っていた女なんかじゃ、全然ないのよ……」
「美月ねえ、ううん、美月さん――「彰」って、呼んで」
「……え?」
僕は、はじめての呼び名――美月さんと彼女を呼んだ。
この先、「美月ねえ」にかわって、ずっとずっと彼女をそう呼ぶことを確信しながら。
「僕は、もう、美月さんのこと、お母さん代わりや、お姉さんだと思ってないよ。
美月さんは、僕の、一番大好きな女の人。――お嫁さんで、恋人。
だから、美月さんが、どんなに子供っぽくても、嫉妬深くても、いやらしくても、大丈夫。
僕は、美月さんの全部が好きだから。好きになるから。――だから、美月さんの全部、僕に見せて」
僕は、勢い良く服を脱いだ。
これから、奥さんになってもらう女(ひと)相手なら、裸になったって平気だ。
「彰……さん……」
美月さんは、ためらいがちに僕のことを呼んだあと、今度はもっとはっきりとことばを発した。
「彰さん……」
そうして美月さんは、止めかけてた手を動かして服を脱ぎ、僕に生まれたままの姿を晒した。
それから、僕らは、お風呂場で、お互いの身体を洗いっこした。
子供のころ、「美月ねえ」と入った時のように、一方的に身体を洗われるんじゃなくて、
僕も「美月さん」の身体を洗う。
これから交わって子供を作る「つがい」の身体をお互いの手と肌で確かめるように、
美月さんは、僕の胸板や、太ももや、おち×ちんを丁寧になでさすり、
僕は、美月さんのおっぱいや、お尻や、あそこを撫で回した。
「……美月さんのここ、濡れてる……」
「……彰さんだって、おち×ちん、こんなじゃない……」
真っ赤になって言い合うのも、二人の間では、はじめての経験だった。
──僕たちは、そのままバスタオルだけをまとって、美月さんの部屋に入った。
「美月さんの部屋、奥のほうに入るの、はじめてだ」
「あんまり見ないでね、恥ずかしいわ……」
美月ねえの部屋は、二部屋ある。
手前の机などがある部屋には何度も遊びに行ったことがあるけど、
その奥の短い廊下を挟んだ奥の寝室には入ったことがない。
ベッドに並んで腰掛けた美月さんの言うとおり、部屋にはなかなか「恥ずかしい」ものが満ち溢れていた。
日本の青少年なら誰でも一度はお世話になったことがあるという、
「巴里書院」のエロ小説の黒い表紙がずらりと並んだ本棚。
なまめかしい下着がディスプレイしてある箪笥。
セーラー服やらチャイナドレスやらから始まって、名前も知らないエッチな衣装がつるされたクローゼット。
「わ、私、本当に変態さんで、二十四にもなって男の人も知らないのに、こんなもの集めちゃって……」
話してて、分かった。
美月さんは、エッチなことでしか、自分を解放したり、ストレスを解消できない人間だ。
それも一番好きな相手との遠慮のないセックスでしか、全部を解き放てない。
でも根が真面目すぎる美月さんのセックスできる相手は、結婚の相手のお婿さんしかない。
でもそのお婿さんが、一番好きな相手でなければ、遠慮のないセックスが出来る相手じゃなければ、
──美月さんは永遠に満たされない。
満たされないまま、「志津留本家の跡取り娘」の仮面をかぶり続けて生きていってしまう。
そして、いつか壊れてしまうにちがいない。
……なんだ。
美月さんが幸せになるには、ひとつしかないじゃないか。
僕が──美月さんが一番好きな相手──が、お婿さんになって、美月さんの性癖を受け入れる。
たった一つしかない、その選択肢は、僕にしか選べない。そして今の僕にはたやすいものだった。
真っ赤になってうつむく美月さんを抱き寄せて、唇を重ねる。
いつもおっとりと、悠然としている才色兼備のお嬢様が見せない、焦りととまどいの表情。
──これは、美月さんが「自分の男」にしか見せない表情だ。
僕は、僕が知らない美月さんが、もう全然恐くなかった。
だって、それは、世界中で僕一人しか知らない美月さんだから。
僕だけが独占する美月さんだから。
「んあっ……そんな、いきなり……」
唇を割って舌を差し入れると、美月さんは抗議の声を上げた。
でもそれは、すぐに甘くとろけた。
「……彰さんは……エッチな女……嫌い?」
「……わからないけど、――エッチな美月さんは大好き!」
「――!!」
キスを続けながら美月さんの手を取って、僕の性器を握らせる。
「ほら、美月さんと一緒にいて、僕のおち×ちん、こんなになっているよ……」
もちろんこんな台詞、生まれてこの方言ったことなんかないけど、なぜかすらすらと出てきた。
こうすると、美月さんが喜ぶ──美月さんの「つがい」は、それが分かるから。
「ああっ……彰さんったら……」
好きなように、心のままに振舞っていいと、「夫」から促された美月さんは、
心の檻に閉じ込めていたものを解き放った。
淫らで、積極的で、生々しい、美しい牝を──。
「ふわあぁ……美味しいよぉ……彰さんのおち×ちん、すっごく美味しい……」
僕の股間に顔をうずめた美月さんは、夢中でそれを吸いたてながらささやき続ける。
「うわっ、そんなにされたら、すぐにイっちゃうよ……」
「いいのぉっ! いっぱいイッちゃっていいのよぉ……!
美月のお口に、彰さんの精液、いっぱいドピュドピュしてえっ……!
彰さんの美味しいザーメン、美月、一滴残らず全部飲んじゃうからぁ……」
隠語を並べてうっとりとした表情になる美月ねえは、
ことば責めをするのも、されるのも、大好きな性癖の持ち主だ。
なら、そのお婿さんも、それが大好きになればいい。
「ふうん、美月さんったら、処女のくせに、精子大好きなんだ」
「はいっ、美月、彰さんのザーメン、大好きですっ……すごく、すごく欲しいのぉっ……!
「昨日のは、美味しかった?」
「はいぃっ! とってもとっても美味しかった……。
彰さんの精液、濃くって、量も多くて、すごくすごく良かったです……」
瞳をとろかせて熱にうなされたようにささやく美月さんは、
他の人が見たら別人か、気が違ったかと思うことだろう。
でも、僕は、僕だけは、これも美月さんだと理解できる。
「……後でたっぷりあげるよ、美月さん。でも、今日は、先に「お定め」をしよう」
「あ……はいっ……お、「お定め」っ……しましょうっ!
彰さんの赤ちゃん、作りましょうっ……!!」
美月さんの瞳がさらに熱っぽい興奮を浮かべて輝いた。
「うわ、美月さんのここ、もうとろとろ……」
ベッドの上で下肢を大きく開いた美月さんは、さすがに恥ずかしいのか、両手で顔を覆った。
僕の言う通り、美月さんのあそこはとろけきっていた。
憧れの人の女性器が、目の前にある。
そしてそれは、僕を受け入れたくて蜜を吐いて待っていた。
僕の男性器は、それを見て、限界までカチカチになった。
「来て……、彰さん。ここ、ここよ。
彰さんがおち×ちんを入れて、子種さんを出すのは、美月のここ。美月のここにちょうだい……」
美月さんが、熱っぽい目で僕を見る。
「うん。……美月さん、僕、今、美月さんのお婿さんに、美月さんの男になるよ……」
僕はまだ結婚は出来ない年齢だけど、美月さんと交わるということは、子供を為そうとすることは、
原初の昔から言うところの「つがいの儀式」、婚姻以外の何者でもなかった。
「はい……。美月を、彰さんのお嫁さん、彰さんの女にしてください……」
美月さんも、同じ事を考えていたのだろう、大きく太ももを開いた動きに、ためらいはなかった。
「……いくよ……」
「はい……」
痛いくらいに張り詰めた僕の性器は、とろけだしそうなくらいに濡れそぼった美月さんのあそこに沈んでいった。
つぶつぶ……。
ちゅくちゅく……。
「んっ──!」
美月さんは、わずかに眉をひそめた。
「あ──」
僕は、美月さんが、まだ処女だったということに今更ながら気がついたけど、
僕のおち×ちんは、つるり、という感じで美月さんの中に入りこんでしまった。
「い、痛い? 美月さん……」
「ううん、大丈夫。あなたのお嫁さんは、全然平気よ」
美月さんは、腕を伸ばして、僕の首を抱いた。
くいっと引き寄せて、口付けを誘う。
それは、美月さんなりの痛みのまぎらわし方だったかもしれない。
僕たちは、繋がった場所は動かさずに、無言で激しいディープキスを続けた。
二枚の舌が、貪欲な蛇の交尾のように絡み合う。
やがて、唇と唇を、唾液で繋がらせながら離れた美月さんは、にっこり笑った。
「うん、これで、もう全然痛くなくなりました。――彰さん、美月をたくさん犯して……」
美月さんが、再び妖しい牝の雰囲気をにじませ、僕はそれに興奮した。
「くふっ……んあっ……すごい、すごいの、彰さんっ……。彰さんのおち×ちんがすごいのっ……」
交わる動きを再開すると、美月さんの淫らなことばも再開した。
本棚に並ぶ「巴里書房」の影響か、
美月さんは、セックスとはそういうことを言いながらするものだと思っているらしい。
最初――昨日の晩は「美月ねえ」とのギャップにびっくりして恐くなったけど、
僕は、僕のお嫁さんになった「美月さん」には、そうした違和感は感じなかった。
「僕の女」は、こういう人で、――それがとっても魅力的。
僕は、美月さんのことばに応えて耳元でささやいた。
「美月さんのおま×こも、すごいよっ……。僕をきゅうきゅう締め上げて離さないもん」
「それはっ……。彰さんの、子種さん、欲しいしっ……」
「あなたのお婿さんは、今日まで童貞だったんだよ。――そんなにしたら、すぐイっちゃうってば」
「!! いいのぉ! イっちゃってもいいの! 彰さんは、美月のおま×こでイっちゃっていいのっ!
彰さんの童貞ちょうだいっ、美月のおま×こに彰さんの童貞精子さん、ちょうだいっ……!!」
美月さんは、僕のささやきに激しく反応した。
「んん……、でも美月さん、僕たち、今、コンドーム使ってないから、
僕が美月さんのおま×この中でイっちゃったら、赤ちゃんできちゃうよ……」
「――!!!」
美月さんは、ぎゅっと僕に抱きついてきた。
腕を回して僕の頭を引き寄せ、足で僕の腰の辺りを挟み込む。
仔を孕みたがっている牝が、射精しようとする牡を逃すまいと取る姿勢──。
「いいの……。彰さんは、美月相手に避妊なんかしちゃだめっ……!
美月にたくさん種付けして、彰さんの子供をいっぱい産ませてっ……!!」
それは、子作りのための交接のものにしては、淫ら過ぎることばと交わりだったけど、
僕ら夫婦はそれでよかった。
「あっ……もう、イっちゃうよ、美月さん! 僕、美月さんの中に精子出しちゃうっ!!」
「ふあぁっ! 来て、来てぇっ、彰さんっ!!」
びゅくっ、びゅくっ。
どくん、どくん。
頭の芯まで響くような律動と心臓の音をたてて、僕は美月さんの中に射精した。
それを一滴もこぼすまいとでもするように、美月さんは僕にぎゅうっとしがみついた。
「んふぅ……っ!」
絶頂を迎えたのは僕が先だったけど、それを受け止めた美月さんはもっと大きな絶頂を迎えたようだった。
「――うわあ、すごいや。美月さんのあそこ、僕の精子でぬるぬる……」
セックスを終えたあと、僕は好奇心にかられて、
僕に射精されたばかりの美月さんの女性器を覗き込んだ。
美月さんのあそこは、綺麗に整った形をしていて、ピンクの粘膜が汗と蜜液でてらてらと輝いていた。
「も、もうっ……彰さんったら……。恥ずかしいこと言わないで……」
美月さんは、真っ赤になった頬を自分の手を覆いながら、抗議の声を上げた。
「ええー。美月さんは、僕におま×こ見られるの、嫌いなの?」
僕は、意地悪くささやいた。
「……大好きです。彰さんに、美月のおっぱいや、おま×こや、お尻の穴、全部見られたいです」
美月さんは、さらに真っ赤になりながら、はっきり答えた。
「じゃあ、僕がもっとよく美月さんのおま×こを見えるようにしてよ」
「はい……」
美月さんは、足を大きく広げ、右手を自分の性器に這わせた。
白魚のような指が、ためらいもなく自分の生殖器を割って広げる。
僕に──自分のお婿さんに、女の子の一番恥ずかしいところをよく見せるために。
「見てください、美月のおま×こを。今、彰さんが子種さんをくれた私のおま×こを」
美月さんのあそこの中は、美月さんの透明な蜜液と、僕の白い精液の入り混じった粘液でいっぱいだった。
破瓜の血は、蜜液に薄まって、わかるかわからないかくらいのピンク色になっている。
「これ以上はダメ。……あんまり広げると、彰さんの子種さんが私の中からこぼれちゃう……」
「大丈夫だよ、僕の精子、こんなにねっとり美月さんの中に絡みついているもん」
実際、僕が射精した白濁の汁は、自分でもびっくりするくらいにどろどろに濃くって、美月さんの膣壁にこびり付いていた。
蜜液といり混じっている分も、固まりかけたゼリーのような粘り気を保ったまま美月さんの性器の中にとどまっている。
多分、半分以上はもう、今見えているところよりももっと奥のほうに流れ込んでいて、
美月さんの子宮の中に入り込もうとしているところだろう。
僕は、自分の牡としての力を再認識したような気持ちになって、いい気分になった。
その自信と、美月さんの女性器を間近でみた興奮とで、僕のおち×ちんは、またむくむくと大きくなってしまった。
「まあ……」
僕のお嫁さんが、驚いたように僕のおち×ちんを見つめる。
「美月さん、僕、もう一回したい。今度は、その──後ろからして、いい?」
「ふふふ、いいですわよ。今美月の中にあるのと同じくらい、いい子種さんをいっぱい下さい」
僕は、美月さんの白くて綺麗なお尻を抱えて、二回目のセックスを始めた。
後ろから犯される後背位は、美月さんの好みに合っていたらしく、僕のお嫁さんはたちまち絶頂を迎え、
僕は美月さんの中に、さっきに負けないくらい濃くて量のある精液を放った。
「……言ったかもしれないけど、私ね、すごく嫉妬深くて、いやらしい女なの……」
二人の記念すべき最初の交わり──立て続けに四回もしてしまったけど──の後、
僕たちは、汗にまみれた裸身をベッドに並べて横たえていた。
濃密な、でも長い長い「夫婦のはじめてのセックス」の間に、いつの間にか当たりは夕方になっていた。
遠くで鳴き始めたヒグラシの声を聞きながら、僕たちは天井を見つめて語らっていた。
「ずっと、彰さんとこうなることを夢見ていた。
――ううん、今でもそう思っている。結ばれる前よりもずっと強く……」
「美月さん……」
「彰さんを独占したい。彰さんをずぅーっと私のものにしたい。
毎日こうして彰さんのおち×ちんおしゃぶりして、おま×こにおち×ちん入れてもらって、
彰さんの精液飲んだり、いっぱい私の中に射精してもらいたい……。
この部屋にあるエッチな本以上のことを、彰さんが私にしてほしいし、私も彰さんにしたい……。
──こんな女は、嫌……?」
「――大好き!!」
僕は、天井を見つめたまま、傍らに添い寝する美月さんの手をぎゅっと握った。
指を絡めあうようにしてつなぐと、美月さんは、ほぅっと安堵のため息をついた。
「……だから、いいんだよ、美月さん。僕の前ではどんなにエッチになっても。
志津留の娘だからだとか、三姉妹の長女だからだとか、そういうのは他の人の前だけでいいの。
僕は、美月さんの「男」だから、美月さんの「女」の面を全部見せていいから。
僕は、美月さんの全部が大好きだから……」
ウソじゃない。
僕は、先ほど僕の身体の下であさましいまでに乱れた女性が大好きだった。
僕を相手に一切の隠し事なしに心と身体を開いてくれた「美月さん」は、
母親的な、姉的な存在としての「美月ねえ」よりもずっとずっと愛おしかった。
「彰さん……」
「……美月さん、泣いてるの……?」
「うん……すっごく嬉しいの……。一番好きな人が、ありのままの私を受け入れてくれて……」
「美月さん、言っておくけど、僕も、すっごくいやらしくて嫉妬深いよ。
美月さんをずーっと独占したい。志津留の「お定め」のためじゃなくて、僕がそうしたいから、
美月さんといっぱいセックスして、何人でも僕の子供を産ませたい……」
「嬉しい……。美月は、一生、彰さんだけのものになるから、彰さんも、一生、私だけのものになってね」
「うん! 絶対に!」
「私、毎年、あなたの赤ちゃん産むわ。この広いお屋敷が狭くなるくらい、たくさんあなたと私の子供を産むの……」
「美月さん……」
「彰さん……」
僕たちは、示し合わせたように身体を半身に起こして互いに見つめ合っていた。
どちらともなく、お互いの手が伸びて、互いの性器に触れ合う。
僕の指は、僕のお嫁さんのあそこをなぞり、
美月さんは、美月さんのお婿さんのおち×ちんをきゅっと握った。
似たもの同士の夫婦は、自分たちの無意識の動きに気がついて、照れたように笑いあって、
──もう一度、セックスすることにした。
「――んんっ、彰さんったら、おいたをしたらダメですよ……」
──僕に乗っかっている美月さんが抗議の声をあげた。
僕の顔を見て、ではない。
僕のおち×ちんを愛撫しながらだ。
「ええー? 美月さん、ここ舐められるの、好きでしょ?」
僕は、上になってお尻をこちらに向けている美月さんの女性器から口を離していった。
僕と美月さんは、俗に言うシックスナインの形になっている。
「……んんっ、大好きっ……だけど、今は朝のお勤めの時間ですよ」
美月さんは、ちゅるちゅると僕の性器を舐めたてながら言った。
「――彰さんの精液は、お腹の中の赤ちゃんと同じ材料ですもの、
赤ちゃんが丈夫に育つのに、一番いい栄養なんです。
だから、彰さんの朝一番の取れたての精液、たくさん美月に飲ませてください」
おち×ちんの先っぽを咥えた美月さんは、茎の根元に這わせた指でくりくりとしごきたて、
僕を射精させようと責めたてる。
「うわ、もう出そうだ──美月さんもイかせてあげる」
僕は美月さんのあそこにむしゃぶりついた。
「ああっ、ダメです、彰さん。この体勢で私がイったら、お腹の赤ちゃんがつぶれちゃいますっ」
美月さんは身をよじって悶えた。
僕の胸の上には、大きく膨らんだ美月さんのお腹がある。
妊娠八ヶ月の、大きなお腹が。
「大丈夫、僕が支えてるから、美月さんは、いっぱいイっていいよ!」
「ああっ……彰さんっ……!!」
僕と美月さんが達するのは、今日も一緒だった。
「――彰、はやく行かないと遅刻するよっ!」
陽子が靴を履きながら、僕を急きたてる。
二学期から、僕は、こっちのほうの高校に転入した。
正式に結婚できる年齢になるまでの間も、美月さんと離れたくないからだ。
それに、お腹の中にいる父親として、美月さんの側でやれることは全部したいから。
陽子と同級生と言うのはちょっと不思議だけど、
まあガキの頃から「兄弟」みたいなものだから、新しい高校にもすぐに慣れた。
美月さんが僕の子供を孕んだので、もちろん、よその支族の男の人との婚礼の話もなしになった。
無駄足を踏まされた婆さまは、おこるかと思ったけど、にやりと笑っただけだった。
まるで、そうなることはお見通しだった、と言わんばかりに。
まあ──その、星華ねえや、陽子も含めて、僕と美月さん以外の全員が
「こうなる」と思っていたらしいんだけど……。
「陽子、お弁当は持った?」
美月さんが、台所から手を拭きながら出てくる。
さきほどベッドの中で僕に見せた痴態が嘘のような、穏やかなで清浄な雰囲気──「美月ねえ」だ。
美月さんは、僕と二人きりの時以外、決してあの「美月さん」の顔を見せない。
誰もが彼女に求める「志津留の跡取り娘」の姿は、より強固に、理想的に美月さんを覆っている。
でも、今の美月さんは、もうそれを全然負担に思っていないようだった。
本当の自分──「美月さん」を全部さらけだす相手がいるから。
「――あっ、忘れてた」
「うふふ、陽子はほんとあわてんぼうさんねえ」
「まったくだ」
「……あ、彰と美月ねえは、のんびりしすぎだいっ! ──もうっ、先にバス停に行っているよ!」
陽子はぱたぱたと駆け出した。
「うふふ」
──玄関で、一瞬だけ、二人きりになった。
それを見逃さず、「美月ねえ」は、「美月さん」に戻った。
「……彰さん、早く帰ってきてくださいね。
今日は、美月を縛ってお浣腸してください……」
「……お腹の子供に障るからダメ!」
「ええっ? この本には全然大丈夫だって書いてありますわよ」
美月さんは、『HRスレッド保管庫・文庫版』というエロ文庫を取り出して言った。
エロ小説集めとそこに書いてあるプレイの実践は、美月さんのライフワークだ。
でも、小説ならではの過激でエロエロすぎることもやりたがるので、嬉しいけど、ハラハラもする。
とりあえず、今はあんまり過激なことはできない。
──もっとも毎日十分すぎるほど激しくセックスしちゃっているけど。
「とにかく、それはダメ!」
「……じゃ、彰さんを縛ってお浣腸……」
「も、もっとダメ!」
「意地悪……」
拗ねたように、甘えるように上目遣いで僕を見る美月さんのこの表情は、
世界中で僕だけが見ることができるものだ。
「うーん、じゃ、帰ってきてから、何か考えよう!」
そのことに感謝しながら、僕は美月さんにキスをした。
よくわからないけど、本家のある御山の具合も、最近はぐっとよくなったらしい。
十分に志津留の血が濃い、力を持った、新しい当主が生まれようとしているから。
当分は、志津留が「お定め」に振り回されることもないだろう。
新しい世代は、自分が一番好きな人と結ばれればいい。
──僕と美月さんのように。
季節はもうすぐ桜の咲くころ。
五月晴れの頃には、僕と美月さんのはじめての子どもが生まれる。
長女になるのか、長男になるのかは調べてないけど、
どちらにせよ、弟や妹が何十人もいる子になることはまちがいない。
<美月編>FIN