〜初めに〜
・一応孫静キュンは大人ぶってるショタっ子。
・孫静キュンは孫策・孫権の年下の叔父。
・つまりは孫静キュンはまだ10台前半

以上を踏まえた上でご覧ください。



とある雪原。
この地が今回僕達が戦うことになった場所である。

敵は暴虐ぶりで悪名高い董卓率いる西涼軍だ。
正直、僕は今回の戦いはあまり乗り気ではない。
何故なら、僕は弓兵隊を指揮している。相手は西涼軍。

これが何を意味しているか。

―――柵が壊されたら僕はやられる。
孫家に産まれた者としては、戦場で死ぬのは何よりの名誉。
でも、僕はまだ死にたくない。

「幼台、何をぼさっとしている!しっかりしないと死ぬぞ!」

「す、すみません、兄様…」

兄様の率いる騎兵隊が僕の部隊を追い抜いていく。追い抜きながら兄様が馬上から檄を飛ばす。

「私は先に突撃をかける。幼台、支援を頼むぞ!」

兄様は言い終わらないうちに、敵陣に切り込んで行った。

「に、兄様を支援します!ぜ、全員敵軍に向かって矢を放てっ!」

勇ましい兄様とは対照的に、僕は贔屓目に見たとしても臆病であることに間違いない。
その時、兵の慌てふためいた声が響いた。

「孫静将軍!三方向から敵が!」
「え、ええっ!?」
「旗印には張遼、高順、候成とあります!」
「そ、そんな!?」

将軍である僕が動揺してはならない。
兄様から常日頃言われていることだけど、正直無理がある。

「どけどけい、我等の邪魔だてをするなら容赦はせんぞ!」

気が付くと、兵のほとんどは雪を赤く染める屍と変わり果てていた。

「孫静将軍、ここは一旦退きましょう!将軍が死んでしまっては部隊が成り立ちません!」
「う、うん、分かった!ひ、退け、退くんだ!」

僕や生き残った兵達は、生きたい、ただその一心で自陣を目指して退却を始めた。


「み、みんな、陣まであと少しだっ!何とか生き延びるんだ!」

僕は必死に兵を鼓舞した。
いや、自分にそう言い聞かせていただけかも知れない。

もうすぐ陣に着く。何とか助かったんだ。
そう思ったとき。

「孫静将軍、て、敵の伏兵でs…ぐあぁっ!?」

僕の隣にいた副将が一刀両断される。
いくら僕が将軍だとしても、こんなに酷い死体は見たことがない。
…当分肉料理は食べられないかもしれない。

そんなことを考えてしまうのは、多分僕の部隊が僕一人を残して皆殺しになってしまったからだ…と思う。

現実逃避している僕をよそに、敵兵が道を開けた。どうやら敵将が僕の前に歩み寄ってくるようだ。
ああ、僕はここで死ぬのか…

「あらぁ…どんな勇ましい将軍様かと思ったらこんな可愛いボウヤだったなんて、意外ねぇ?」

僕の前に現れた敵将は、とても美しく、そして、その…とても、よ、妖艶な女性だった。

「私、このボウヤが気に入っちゃった。この子の尋問は私がするわ。あなた達はこのまま陣を攻めなさい。」

彼女は僕を見つめながら僕の顎に手を添えると、兵の方を見ずにそのまま指示を出した。
こんなに美しい女性なのに、兄様にもひけを取らない用兵ぶりだなんて…

「さあ、邪魔な奴らはいなくなった事だし、こっちに来てもらうわよ?」

「…は、はい…ですが…僕はこれでも孫家の人間です。僕はどんな拷問にも耐えて見せます。」

「拷問なんてするつもりはなかったけど…その生意気な態度、ますます気に入っちゃった。
さあ、そこに座ってもらうわ。」

彼女に連行された僕は、戦場からかなり離れたあばら家に来ていた。
彼女に促されるままに床に腰を下ろした僕に、彼女が上から視線を落としている。

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