「己の欲するままに行けい!」
夕闇迫る戦場に響く号令、董卓軍と馬騰軍の戦いはこの号令により勝敗は決した。
主力である馬超・?徳は李儒の毒、そして騎馬軍団の波状攻撃の前に倒れ捕縛された事により戦線は崩壊、馬騰軍は散り散りになり、ある者は抵抗の末捕縛され、また、ある者は降伏した。既に戦場は董卓軍による殲滅戦と化していた。その中を二人の将が駆け抜ける。
その二人の名は馬鉄と馬休。総大将馬騰の息子である。敵の追撃を免れたのであろう、その鎧兜は傷が付いていない所を探す方が難しく、二人の乗る馬、そして彼等自信にも疲労の色が浮かんでいた。
「くそっ!超兄貴と?徳殿が捕まるなんて…」
馬鉄の顔が怒りと悔しさに歪む。その目には悔しさからか涙がにじんでいる。
「泣くな鉄!まだ終わってない。全員が捕まった訳じゃない、まだ岱兄貴も親父もいるんだ。俺達が逃げ延びて親父達と合流して、その後あいつらを倒して超兄貴達を助ける。いいな?」
そう言って馬鉄をなだめる馬休の顔もまた苦渋の色に満ちている。兄達と共に戦場に出、敵将と互角に戦えど、彼等はまだ十代の少年なのである。感情を抑制しきる事などできる筈がない。
 そうして戦場からの離脱を図る二人の前に馬に跨った一人の影が立ちはだかる。その後ろには『董』と描かれた旗を持つ一団の姿が見える。
「敵!?」
「そんな…待ち伏せされてたのかよ」
自分達二人にこの一団を突破する余力は残っていない。二人の顔を絶望が支配する。と、その時立ちはだかっていた影の主が声を上げた。
「そこの二人!馬騰の息子、馬鉄と馬休で間違いないわね!?」
 その影から発せられたのは幼い女性の声であった。董卓の一団とそれを率いる謎の少女の出現に馬鉄と馬休は警戒する。
「人に名前を聞くときはまず自分から名乗るのが礼儀だぞ、女!」
「無礼な!女ではない。董卓が孫娘、董白だ!」
 気分を害した、と言った感じで答える少女・董白の言葉に馬鉄と馬休は言葉を失った。
「私はちゃんと名乗ったぞ!お前達は馬鉄と馬休か!?」
 最初より明らかに苛つきが混じった声で董白が再度訪ねる。
「い、いかにも!俺が馬騰が息子、馬鉄!」
「そして俺が馬休だ!」
 その返事を聞くと、董白は馬を走らせ馬鉄、馬休の元へと近づく。馬鉄、馬休側からは遠くて見えなかった董白の顔が段々と露になっていく。その顔は年相応に幼く、敵の武将二人に近づいているというのに余裕の笑みを浮かべていた。

その笑みに警戒する二人を余所に、董白は馬から降り、品定めをするようにしげしげと二人の顔を眺める。
「ふむ、若干泥や何やらで汚れてはいるが……悪くないな、合格だ」
そう一人ごち、董白は先ほどまでの笑みとは違う、年不相応などこか妖艶な笑みを浮かべた。
 ――蛇だ。ゾクリとするような色気を醸し出す笑みを浮かべる董白に対し、馬鉄達の脳裏にそんな言葉が浮かぶ。
「どうした?呆けたような顔をして。私の顔に何かついていたか?」
 その言葉にハッと我に返り、慌てて身構える二人を見て、董白はクスクスと笑った。その笑顔には既に年不相応な妖艶さは無く、年相応な少女らしい笑みであった。
「そう身構えるな。何も取って食うわけじゃない。ただ、お前達と勝負がしたい」
「勝負……だと?」
 董白の言葉に訝しげに眉根を寄せ、馬休が尋ねる。
「そうだ。お前達と私の一騎打ち。お前達の内どちらかが勝てば軍を引こう。ただ私が勝てばお前達は私の物になる。どうだ?悪くない賭けだろう?」
「女相手に二対一だと?ふざけるな!」
自分達と同じ年齢であろう少女を相手に二人で戦う。その発言に男としてのプライドを馬鹿にされたように感じ馬鉄が吼える。
「失礼な奴だ。お前達は満身創痍、対して私は万全の状態だ。このぐらいしなければまともな勝負などできないだろう?それに……」
 そう言って董白は後ろの騎馬隊を見やる。
「それ以外にここから抜ける方法は無いぞ?ここで私と戦い死中に活を見出すか、それとも後ろの騎馬隊に玉砕覚悟でぶつかるか?さあ?どうする」

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