「韓遂様・・・ううう・・・私は・・・どうすれば・・・」
成公英は一人部屋で蹲って静かに泣いていた。曹操殿の部下になった今でも馬超に
遭遇するチャンスなどなかなか回ってこなかった。
なぜ韓遂様は私に生きろとおっしゃったのですか!これでは死んでいるも当然です!
そのとき、
「成公英殿、成公英殿はおるか?」
どこかで聞いた事のある男の声が部屋の外から聞こえた。低い、男の声だった。
成公英は不思議に思い、外に近づいた。

「お・・・お前は!!!」
その男はかつて韓遂と協力した馬超の部下、ホウ徳、字は令明という男であった。
その男は昨日、曹操に投降したようだ。理由は本人曰く馬超と意見が対立したかららしい。
詳しい事はわからないが、成公栄にとっては理由などどうでもよかった。
 あの憎い馬超に協力した男が今ここにいる。気分がいいわけが無い
「お前は何のためにここに来た!!私を殺しにきたのか!韓遂様ではもの足りないのか!
帰れ!帰らぬのなら私がお前を殺してやる!!!」

成公英はさらに彼を侮辱した。
「お前はどうせ魏に降りたのは偽装であって後に馬超のところに戻るつもりだろう!
そんなことはこの私が許せん!今ここで死ぬがよい!」
すると成公英は懐に隠していた短剣を取り出し、ホウ徳を一刺ししようと彼に走り近づいた。
ホウ徳はそれをかわし、成公英の背後に回り、短剣を持った両手を思い切り叩き、短剣を叩き落した。
そして、成公英を押し倒した。すると突然、成公英が狂ったかのように気を取り乱し始めた。
「やめろ・・・!!やめてっ!!もうやめて!!!乱暴にしないで!ちゃんと言う事聞くから・・・・っ
!!お願い・・・もうあのときみたいに乱暴しないでください・・・」
いつもの冷静な成公英はそこにはいなかった。そこにいたのは、少年か少女の年頃の者が
大人に対して恐怖心を抱き、取り乱している様子の成公英であった。
ホウ徳はその尋常ではない怯え方に何かを感じた。
(こいつ・・・トラウマでもあったのか・・・?)
ホウ徳はそのまま短剣を部屋の机に置き、怯える成公英をあとに部屋を立ち去った。

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