「英よ・・・お前は生きていくんだぞ・・・。」
「韓遂様!!!!」
韓遂様は亡くなった。私の目の前で。
あの日、韓遂様は馬超という名の男と共に手を組み、曹操を討とうと戦った。
しかし韓遂様は曹操と旧知の仲だったからなのか、戦わずに談話をしていた。
そんな場面を見たあの男は怒り狂い、敗れてしまった戦の後に韓遂様が裏切ったと
勘違いをして韓遂様の片腕を切り落としたのだ・・・・・・!!!
あの男の顔が腕を切り落としたその時、とても恐ろしく鬼畜にみえたのだ。
そして今、韓遂様はお亡くなりになった。原因は逆賊どもに襲われてしまい、負傷を
負ってしまいそのまま傷がもとでこの世を去ってしまわれたのだ。
だが・・・私は賊どもが憎いのではない。いくら韓遂様が強かったとしても片腕の無い男
が賊と満足に戦えるわけが無い。
そう、韓遂様を殺したのは・・・馬超・・・あの男と言ってもおかしくないのだ。
私は今、曹操殿のもとにいる。ここに降りた方が身の安全にもなるし、
曹操殿は私を大層気に入っているからでもあった。そして何といってもあの憎き馬超に再び相まみえんかもしれぬからだ。
成公英は今は亡き韓遂の腹心であった。韓遂の部下達が散り散りになった時も最後まで付いて行ったほどの非常に誠実で忠誠を誓っていた人物であった。
曹操の前であっても成公英は韓遂に対する忠誠は失っておらず、曹操の目の前でも気を遣う事などほとんど無く、ただ仕事をこなしている為か魏の人々は成公英を無愛想な人物だと思い、疎んでいた。
「英様!いつまでも悲しんではいけません!私にも離れ離れになった子供たちがいます。
でも、その事にずっと悲しみに明け暮れないで今を生きていく事も大事だと思いますよ!」
声の主・・・蔡文姫は匈奴に攫われ、匈奴の王の妻にされ子供をもうけたが曹操によって故郷に呼び戻されて今は曹操の城で過ごしていた。そんな彼女の励ましを成公英は快く思わなかった。
「あなたの子供たちは会える可能性が少なくても、今も生きています!!しかし私の韓遂様はもうこの世にいないのです!!!そのような表面的には優しい言葉をかけないでください!!!!
どうせ心の中では私のことを私よりも可哀相で不幸な人だと思っているでしょう!!!私の部屋から出て行ってください!」
すると蔡文姫は大声で泣き始め、成公英の部屋を出て行った。
曹操は困り果てた。
あの蔡文姫の説得に応じない成公英をどうにかしたかったのだ。
このままでは成公英がいくら有能な人物でも他の者との交流が断たれてしまってはうまく軍事に利用が出来ない。
さて・・・どうすればいいものか・・・。すると、曹操の目の前にある軍師が現れた。
その男の名は賈?(カク)、字は文和という男だった。
「くくく・・・曹操様・・・成公英殿はかなりの無愛想な方ですね。私がどうにかしましょう。
・・・確か上司は韓遂殿だったようですね・・・そんな韓遂殿に対してかなり誠実な人物。
そう・・・英殿は韓遂殿が亡くなった事を今も嘆き悲しんでいる。私の勘ですと
さぞあの馬超に対してそう良い感情を持っていないでしょう。なぜなら馬超は韓遂殿が私の離間の計に
嵌ってしまったときに怒り狂い、片方の腕を切り落としたそうですよ・・・
ですから、呼ぶのはどうでしょうか・・・」
「馬超をか?」
「いいえ、違います。馬超だとかえって成公英殿を亡き者にしてしまいます。成公英殿では馬超には勝てません。
なんせ、英どのは・・・決定的に馬超に負けてしまう部分があります・・・かの王異殿のような例外もありますが・・・。
ですから・・・先日この曹操軍に投降した馬超と深いかかわりをもつあの男を英殿に会わせるのはいかがでしょうか?
きっと英殿はどのような形であれ積極的に軍事や参謀に関わるでしょう。あの馬超を思い出して倒そうと必死になって
我々に協力してくれます。」
「しかし・・・そうすればその投降した男を殺すかもしれないぞ・・・。」
「そんなこと、有り得ませんよ。曹操殿も知っていますでしょう。あの男の実力を・・・」
確かにその男は馬超の部下であり、曹操と戦った。その実力はかなりのもの。
撞関の戦いでも恐ろしいほどの活躍をしており、曹操も部下にしたいほどの男だった。
「では・・・その男が英を殺すかもしれぬぞ?」
「それはそれでいいのです。参謀などいくらでもいます。その男がいかにあの英殿を口説く・・・
いえ、説得するのか楽しみで仕方ありません。くくく・・・」
「そうか・・・では呼べ!!英に会わせることにしろ!!!」
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