「足りないな」
「え……?」
「私の好きにと言うなら、好きに侍者を殺しても良いという事かも知れぬ。
節は一体私のどのような行動を好きにして良いと言うつもりか?」
そう言うと舌を伸ばし、耳に差し込んでぴちゃり、ぺちゃりとわざと音を立てる。
おぞましい感触に身震いしながらも、曹節は気丈に声を張る。
「っ、兄上の、望むように、私を……」
可笑しさを堪えきれないのか、身を僅かに竦めながら曹丕は更に問う。
「私を、何だ?」
「私を……妻として、遣って下さい……」
曹節は視界に映る床が薄く滲むのを感じながら、喉の奥から言葉を絞り出した。
「ははは、節がそう望むのであれば仕方ない。皇帝としては抱いてやらねばならぬな」
顎から頬へと滑らせた右手に伝わる熱が、妹の上気の具合を示す。
恥辱に塗れつつも唇を噛み締める横顔を見遣りながら、曹丕は左手を曹節の下腹部へと滑らせた。
「やっ……」
反射的に零れた声、そして曹丕の手を押し留めようと伸ばされた指先に冷ややかな声が飛ぶ。
「拒むのか?ほんの数瞬前の言葉すら翻すとは、皇室の者とは思えぬ不誠実さだな」
腕の中の体が小さく跳ね、手の甲に触れた指が引いた。
その動きに唇の端を釣り上げ笑みを浮かべると、曹丕の指が曹節の体へと伸びていく。
袖のない上着の脇から滑り込んだ手が柔らかな乳房を強く握り締めると、曹節の顔が僅かに歪んだ。
静まり返った広間の中で、何か粘ついたものが這い回るような音と苦しげな女の吐息だけが響く。
床には少し散った滴がいくつかと、無残に引き裂かれた下布。
皇帝然とした曹丕に抱きすくめられた曹節の上着は窮屈そうに歪み、うねる。
曹丕の掌が乳房を揉み、指がその張り詰めた先端を弾き転がす。
震える体の下を辿れば腰布の更に奥に差し込まれた手。
既に秘めるべき場所を守る薄い布は捨て置かれ、綺麗に手入れされたその場所を細い指先が弄っていた。
柔らかな外唇を指の腹で微かに撫で、つつく。
そんな淡い愛撫にさえ、じわじわと快楽の証が滲み出している自分に曹節は悔しさを拭えない。
耳元に聞こえる兄の吐息は、─表情は恐らくはいつも通り飄然としていたとしても─
明らかな興奮の色を伝えていた。
その事実が、尚更に恐かった。
「声を出しても良いぞ?堪えるのは辛いだろう?」
幾度となく繰り返される囁き。
けれど、そう言われれば言われる程、声を出す訳にはいかなかった。
皇帝の妻として、既に滅びに足を踏み入れている王朝であったとしても。
決してその分を外れた姿を晒す事はできない。
ひたすらに声を殺し耐える曹節に業を煮やした曹丕は、突如指に力を込め、秘唇を割った。
指先が既に痛々しい程に膨れた芯に触れる。
「き……っ」
辛うじて悲鳴を堪えるその唇を愛撫で開かせようと動きが激しくなってゆく。
それまでの執拗な焦らし行為を拭い去るように、指が肉芽を擦り、摘み、時には強く挟み。
その度に溜息のような微かな喘ぎと、心の抵抗をあざ笑うかのような蜜が漏れる。
兄の腕の中でただ自分を追い立てるように蠢く指からの感覚に声を殺していても、
まるで小水のようにダラダラととめどなく滴り落ちる愛液が腿を伝い床に薄く膜を張るように広がる。
それでも曹節は声だけは出すまいと唇を強く噛み締める。
ぷつ、と小さな音がして柔らかな皮膚が破れ、紅のような血が顎へと流れた。
女の臭いに紛れた鉄錆の気配に気付いた曹丕が、今にも零れ落ちそうな程に涙を湛えた右の瞳に舌を伸ば
す。
「我慢などせずにおれば、傷など負わずに済んだものを」
哀れむような、馬鹿にしているような。どちらとも取れる声色で囁きながら、
蜜を指先に絡めるように秘唇を弄っていた曹丕が、徐々にその指を後ろへと潜らせてゆく。
「節との子なら構わぬのだが、後々協が面倒を蒙るであろう。此方にしておいてやろう」
くちゅ、と愛液を押し込むような動きで、曹丕の人差し指が曹節の後孔へ不意に押し込まれた。
「ひうっ!?」
「おや、使っていないのか。協は正道の趣味しか持ち合わせていないのであれば夜はさぞ寂しかっただろ
う」
くちくちと蜜を掬い上げては襞を一本一本押し広げるように菊を解してゆく。
僅かな指の動きに合わせ、曹節の唇からはくぐもった声が小刻みに漏れ、体が小さく跳ねる。
きつく締まっていたそこが徐々に指先に吸い付くように蠢き始めると、
曹節の体ももう少し、もう少しと快楽を強請るように緩やかにくねった。
その動きと声を堪能するようにしばし孔を捏ねていた曹丕の指先が、ふと止まった。
「ぅ?」
一瞬の休息に曹節が訝しげな声を上げた直後。
何時取り出したのか、硬く張り詰めた陽根の先がひくつく曹節の尻に押し当てられた。
先程までの愛撫で高まっていた心と体がすうっと冷え切ってゆく。
「っや、いやっ、やめ……」
「私の性分を知っているだろう、節。やめよと言われれば……否、だ」
秘唇を弄っていた左手の指を二本、膣の中へ無造作に押し込む。
突然下腹部に入り込んだそれに導かれた感覚が抵抗の力を緩めた刹那…
ぐちゅ。
溢れる蜜と粘膜がいびつな音を立てながら、曹丕の欲望が曹節を貫いた。
「い、ぐぅむうぅぅぅ……っ」
純潔を捧げた時と同じような、いやそれ以上とも思える痛みが全身を襲う。
両足の間から腹を裂かれるような激痛にも、既に無残に歯で抉れた唇を更に噛み締めて声を止める。
びくびくと痙攣する足の先が自分の吐き出した粘液に少し滑って体が揺れる。
そしてまた走る激痛。
いつ終わるとも知れない責め苦のような痛みは、曹丕の指が秘芽と乳首を弾いても収まる様子がなかった
。
太腿を伝う粘ついた滴は、血か、蜜か。
今にも息絶えてしまうかと思う程に苦しげな呼吸を布の隙間から漏らす曹節の目から涙が溢れた。
「ふむ、切れたか。だが素直にならぬ節が悪いのだから、仕方ないな」
曹丕は事も無げにそう言い捨てると、ゆっくりと腰を引き、押し付けた。
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