シューベルト/八重奏曲

リチャード・キング(1989)
CD(SONY CLASSICAL SBK62 655)

シューベルト/八重奏曲ヘ長調Op166、D803
   〜2つのヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、
    コントラバス、クラリネット、ホルンと
    ファゴットのための

 クリーヴランド八重奏団
 エーリヒ・A・アイヒホルン(ヴァイオリン)
 ジュディ・バーマン(ヴァイオリン)
 エドワード・オーモンド(ヴィオラ)
 ブライアン・ダム(チェロ)
 スコット・ヘイ(コントラバス)
 セオドア・ジョンソン(クラリネット)
 リチャード・キング(ホルン)
 ロナルド・フィリップス(ファゴット)
  録音 1989年

 クリーヴランド管弦楽団のメンバーで構成されているクリーヴランド八重奏団によるシューベルトの八重奏曲です。
 シューベルトの八重奏曲は演奏に1時間もかかる大曲で室内アンサンブルのための交響曲といえます。1824年に書かれており「未完成」と「ザ・グレート」の間になります。シューベルトはホルンを大切にした曲が多いのですが、この曲にも重要なメロディーを吹かせています。
 第1楽章は前奏のアダージョから明るい響きを出しています。アメリカの夜明けのようです。続くアレグロでは素晴らしいアンサンブルが聞かれます。アイヒホルンのヴァイオリンとジョンソンのクラリネットが素晴らしい響きで感動的です。続くリチャード・キングのホルンは滑らかな演奏で、アメリカのホルンらしい豊かな響きを出しています。展開部も緻密なアンサンブルで素晴らしい演奏です。この楽章では同じ音型が楽器を変えて幾度も繰り返されます。再現部はファゴットに始まって主題が各楽器に受け継がれながらホルンのソロが高らかに歌われて終わります。第2楽章:アダージョはジョンソンのクラリネットで始まる感動的な主題がきれいです。そしてファゴットが重なるユニゾーンの美しい響きは格別です。中間部ではホルンのソロが朗々と歌われますが、ヴァイオリンとの対話も大変きれいです。チェロのソロは透明感が素晴らしいです。ファゴットもよい響きです。コーダのコントラバスのピツィカートはよく響きます。
 第3楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェは快活なスケルツォです。アイヒホルンのリードするアンサンブルは軽快な演奏をしています。さわやかさと美しさをもつこのスケルツォを見事にまとめています。トリオの演奏は絶品です。ホルンの高音がよく響きます。クラリネットとファゴットが大変よい響きを出しています。素晴らしいスケルツォです。第4楽章:アンダンテは主題と7つの変奏曲、シューベルトの歌劇「サラマンカの友人」から使われた主題に始まります。クラリネットとヴァイオリンが良い響きで演奏しています。第1変奏のファゴットとホルンの絡みもきれいです。第2変奏の管楽器はよい響きです。リチャード・キングの吹くホルンの第3変奏は滑らかで深い響きです。木管とヴァイオリンもきれいです。続くチェロの第4変奏もまた素晴らしい響きです。後半の演奏も絶品です。変化に富んだ7つの変奏曲は名作といえましょう。
 第5楽章:メヌエットはこの曲の中でも最も美しいといえる楽章です。この響きの良さはシンフォニーの演奏で培われてきた伝統からくるものでしょう。クラリネットの美しい主題が歌われ弦楽器、ホルンに受け継がれていきます。キングのホルンは明るく伸びやかでよい響きです。トリオのクラリネットとファゴットの響きも素晴らしいです。 第6楽章:アンダンテ・モルト〜アレグロはシューベルトの音楽の美しさがあります。劇的な前奏に続くアレグロは見事なフィナーレです。これはクリーヴランドらしい素晴らしいアンサンブルです。ジョージ・セルの統率力が受け継がれてきたような緻密な演奏で時には斬新な響きも聴かれます。大絶賛したい演奏です。
演奏時間62分22秒。


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