『ゆうべはおたのしみでしたね』03

「……エナ。ティエナ」 「う……」  自分の名前を呼ぶ声にティエナは意識を取り戻すと、うっすらと若緑色の陰毛を生や した股間が目の前で左右に揺れていた。 「ロザリー?」 「ようやくお目覚めですか。あなたが早く起きないものだから、大変なことになってい ますよ」  大変なことと言われても、ティエナは何のことかわからずに視線をあてどなくさ迷わ せた。そして、ロザリーの股座から自分の下半身を覗き込んだ瞬間、 「ひゃぁあああっ」  と、素っ頓狂な声を上げて驚いてしまった。  あろうことかロザリーが剃刀を片手にティエナの陰毛を剃り落としていたのだ。 「ななななな何やってるのロザリー!? おおおおお落ち着いて!」 「あなたこそ落ち着いてください。急に動いては危ないではないですか」  しかしその言葉とは裏腹にロザリーは器用に剃刀を動かして、ティエナの柔肌を傷つ けることなく恥丘に茂る紫色の毛を剃っていく。 「あわわ、あう……うぅ」  気が動転してしまったティエナは身動きすることもままならず、ただひたすら恥毛が 剃られていく音と感触に耐え続けなければならなかった。 「ロ、ロザリー、こんなことやめてよ。だいたい、何であたしが下の毛を剃らなくちゃ いけないの!?」 「単なる私の趣味です」 「趣味かい!」  腹立ち紛れの一言と共に飛び起きようとしたティエナだったが、身体をロザリーの脚 で押さえつけられて身動きが取れなかった。 「もちろん趣味と言うのは冗談で、最初は勝手に気を失ったあなたに対するお仕置きや 悪戯といった気持ちで始めたことなんですよ。ただ、陰毛を剃っている内にいつの間に か未知の嗜好に目覚めた……なんてことはありませんよ?」 「うわぁっ、変態だよこの人!」  よくよく目の前にあるロザリーの股間を見てみると、そこは確かに湿り気を帯びて滴を 落とし、ティエナの胸元を濡らしていた。 「わ……すご」  ロザリーの身体が上下に動く度に、割れ目が微かに開いて中の秘肉を垣間見せる。桜色 に色づいた陰唇が艶かしく光っているのを、ティエナは自分の置かれた状況を頭の片隅に 追いやって見とれてしまった。 (ロザリーもあたしみたいにいやらしい気持ちになったりするんだ)  普段は朴訥として、性欲の欠片も無さそうなエルフの少女が欲情しているのを初めて見 たティエナは、得も知れない興奮を覚えて胸が熱くなった。 「ティエナ? どうかしましたか?」 「べ、別に何でもないよ……」  誤魔化すように口ごもって、ティエナは目の前で妖しく揺れる花弁から視線を逸らそう とした。ちょうどその時、 「あっ、やぁああっ!」  滑らかな恥丘の局面に生えた陰毛を一度に剃り上げられ、ティエナは大きく喘ぎ声を上 げながらおとがいを反らした。 「何という声を出すんですかあなたは」 「そんなところ触られたら声だって出るって!」 「そんなところとはどこを指しているんです? 具体的にどうぞ」 「言えないってば!」  興味津々といった様子で尻を左右に振るロザリーに猛反発しながらも、度重なる辱めに ティエナの頬はおろか全身が羞恥で赤く染まっていた。  ロザリーはそんな恥じらいの気持ちをさらに煽るように、裂け目の縁を剃刀で繰り返し なぞっていく。 「ひうっ、あ、んっ、はあっ、もうやめ、ロザ、リ……あっああっ」  いい加減やめて欲しいとロザリーに言いたかったが、実際にティエナの口から漏れ出た ものは鼻にかかった吐息でしかない。  その悩ましげな声に思うところがあったのか、ロザリーが振り向いた。 「ティエナ、まさか剃られながら感じているのでは?」 「っ!? そ、そんなことないよっ……んぅっ」  口では否定しながらも、鋭い刃の感触が肌の表面を通り過ぎるだけで抗いようのない快 感が身体を震わせた。 「はぁんっ、ひゃっ、あっんっ、や、やだっ、また声出ちゃうよ……んんっ」  毛が剃られていく度に神経が剥き出しにされているような感覚に襲われ、ティエナは頭 がおかしくなりそうだった。  毛穴のひとつひとつが敏感になり、落ち着きかけていた肉体が再び発情する。 「やぁ……ふぅんっ、んっんっんふぅっ」  自然と溢れた愛液が淫裂を濡らして剃刀の滑りをよくすれば、ロザリーの手つきがさら に大胆になった。  彼女は陰毛を剃りながらクリトリスを刺激して、ティエナを悦楽の頂点に追い込んだ。 「あ……っ! んっ、んぁああっ、あ――――っ!」  切なげに眉根を寄せて声を荒げ、ティエナが割れ目から愛液をほとばしらせる。  淫らな飛沫がロザリーの顔面にかかったが、彼女は気にすることなく陰部に最後に残っ た柔毛の一房を剃り落として、深々とため息を漏らしつつ呟いた。 「本当にあなたという人はとんだ淫乱王女ですね。下の毛を剃られて、はしたなくも達し てしまうとは」 「今日のロザリーはイジワルだぁっ」  ティエナが精一杯の主張を叫んだ所で、ロザリーがようやく身体から離れてくれた。 「さあ、すべて剃り終えましたよ」  ティエナの身体を抱き起こしてその背後に回ったロザリーが告げた。 「ああ、嘘……。いやだこんなの」  否応なしに無毛の股間を見せつけられたティエナは、激しく頭を振った。  必死になって股を閉じようとするが、ロザリーによって無理やり脚を大きく開かされて それも叶わない。  何も隠すものがなくなった陰部は、自分のすべてを晒しきっているみたいでひどく頼り なく思えた。 「ですが、可愛らしいではありませんか。まるで小さな子供の頃に戻ったようですね」  熱い吐息をティエナの耳の中に吹きかけて、ロザリーは剃りたての恥丘を人差し指と薬 指でそっと撫でた。 「あっやっ、ロザリー、ダメっ。今、そこ感じやすくて触られると、ひぁああんっ!」 「触られるとどうなるんですか?」  甲高い声でいななくティエナの反応を見れば、答えを聞くまでもなかった。剣を扱うわ りに華奢な肩が打ち震え、愛撫に翻弄されて唇を噛み締める姿がいじらしい。  ロザリーは2本の指を使って割れ目を左右に広げて中指を潜り込ませると、粘度の高い 蜜液が指に絡みつく。そして、その液体をやや複雑な形をした花びらに馴染ませるように 指で擦り付けて花弁全体を刺激した。 「んはぁっ、あっ、ふぁ……は、ひぁっ――――!」  甘いものが混じった声音を愉しみながら、ロザリーは緩急をつけて陰裂を撫で回し、不 意に膣口に指先を挿入する。 「ひゃぁうんっ、ロザリー、そこダメだよっ! そこは感じすぎちゃうから入れちゃダメ だってば! んひぁあああああっ!!」  大きく背中を仰け反らせるティエナを抱き止めてから、膣内の壁を引っ掻くように抽送 を繰り返して愛蜜を泡立てる。細やかな肉襞が長細い指を締め上げて、奥へ奥へと誘った。 「あぁ……いっ、あっ、あーっ! ……あふぅ、ああぁあ」  ロザリーは目の前で小刻みに震え続ける肩に唇を寄せて淡くキスマークを残し、空いた 片手でティエナの乳房を揉み上げた。 「乳首が硬くなっていますねティエナ」 「んくぅっ、ぁんんっ、胸が……熱いんだよっ、はぁ、はぁ、ああぁ……」  柔い膨らみとは対照的に痛々しいほど赤く充血した肉の実をロザリーは指先で弄ぶ。摘 まれた小ぶりの実は指の間で押し潰され、引っ張られては形を変えていく。  多少乱暴な手つきでも今のティエナには程よい刺激なのか、乳首を責められるのと合わ せて膣内が収縮した。 「あんんっ……ロザリー、も、もうやめてってば! あたし、これ以上何かされたら気が 変になっちゃうよ!」 「何を言っているんです。あなたがいけないんですよ。そうやって淫らに乱れて私を誘惑 するんですから」 「ふあっ、んん! それは別にあたしのせいじゃないでしょ!」 「私をその気にさせた責任、取ってくださいね」 「い、いやだよ! あっ、あぐぅっ!」  しかし、もはや何を言っても無駄な様子で愛撫を止めることのないロザリーにティエナ は絶望した。 「さあ、そろそろ口を閉じて。こんな時にお喋りが過ぎるのは無粋というものです」 「んーっ!」  まだ何か言いたそうだったティエナの顔を強引に振り向かせ、ロザリーは彼女の唇を塞 いで黙らせた。目を白黒させるティエナをよそに、ロザリーは思う様に口内を舌先で舐め 回して、甘く苦い唾液の味を堪能する。 「んん、んっむっ、あむ、んふぅ」 「んっ、ふむ……はっ、はふっ、ろざ、り、くるし、あっ」  呼吸さえもままならず、ロザリーにされるがまま口の中を犯されていく内、ティエナの 瞳が情欲に焦点を失いかけていた。額に浮いた汗に上気した頬、濡れた唇が少女を年齢以 上に大人びて見せてひどく蟲惑的だった。 「あ……むっ、んっ、んくっ、んぁ……」  初めて体験する濃厚な口づけにほだされて、無意識の内にティエナも舌を動かし始めた。 「んはぁ、さすがです、ね。んっんむっ、覚えが早い」 「そ、そんなつもりじゃ、んんんっ」  まるで剣戟を交わしているかのように舌と舌をぶつけ合っては絡め取り、お互いが相手 のものを屈服させようと押さえつけようとする。しかし、最後にはロザリーが上手だった のか、ティエナの舌を自らの口の中に誘いこんできつく吸い上げた。 「ん――――っ! ぁんっ、むっ、んんっ!」 「んふぁっ、はっはっはぁっ……ふぅ」  熱く火照った肉厚の粘膜をしゃぶり尽くし終えて、ロザリーは唇を離した。口の中に残 った二人分の唾液を名残惜しそうに嚥下して、飲みきれない分は惚けた顔をしたティエナ の口に注ぎ込む。 「さあ、存分に味わって飲むんですよティエナ」 「あ……、んっ、んっ、んく……はぁ」  暗示をかけられたようにティエナが素直に唾液を飲み込む様子を見て、ロザリーは満足 そうだった。身体の向きを変えて、今度は真正面からティエナを抱きかかえるようにして より一層密着度を高める。 「性欲に希薄なエルフをここまでふしだらな気持ちにさせるとは、あなたは本当に罪作り な人だ」  この時ロザリーの乳首もまた硬くしこり、快感を求めて腰を押し付けていることに半ば 夢心地に浸っているティエナは気づいていなかった。  エルフの少女もまた発情していることを知っていれば仕返しする機会がティエナにもあ ったが、気づかれる前にロザリーは彼女を責め上げようと愛撫の手つきを早める。  処女膜を破く限界まで指先を膣奥へと埋没させ、肉襞を弄り立てた。 「はぁあっ、深いよぉっ! お、お腹の中が、気持ちよすぎっ、あっ、はぁんっ!」  いやらしく鳴り響く水音がティエナの感覚を剥き出しにさせた。ロザリーの指が引き抜 かれ、再び挿し込まれる動きに呼吸を合わせる。 「はっはっはっ、あっあっあっああっ」  ふたつのリズムが重なり合うにつれて、ティエナの体内で何かが爆発しそうな感じがし ていた。今日何度も体感した絶頂を今また迎え入れようと全身が悦びに打ち震える。 「やっ、あぁんっ、また何か来てるよっ! んはぁっ、か、身体がぞくぞくしてるっ!」 「そこでイく、もしくはイきそうと言ってみて下さい。あなたなりにアレンジすると尚の ことよし」 「そんなっ、あっ、あぁっ!? ふぁっ、ふわぁっ、もうイくっ、イっちゃうっ!」  知ったばかり言葉を叫ぶことで興奮度が高まっていく。  あと一押しで感情の昂ぶりが溢れ出そうとしていた時に、ティエナは無防備の肛門を貫 かれた。膣内に意識を寄せていただけに、思いがけない一撃が快感の頂きへと続く階段を 一気に駆け上らせた。 「やだぁっ! ロザリー抜いてよ! 壊れちゃう! 壊れちゃうよぉっ!!」 「心配することはありません。後は自分の中で沸き起こる感覚に素直になるのです」 「はっ、はうぅっ、んん……んっ! んくぅうううぅぅぅっ!!  排泄器官を犯す未体験の感覚にティエナの目の前が真っ白になった。 「さようなら古いティエナ、こんにちは新しいティエナ。新世界へレディゴーですよ」 「最後の最後で萎えるようなこと言うなあっ、あっ、あぁあ――――あぁああああっ!!」  怒りとも喜びともつかない微妙な声をティエナは張り上げた。  脳内で火花となって弾ける圧倒的な激情に耐えかねて、ロザリーの身体を強く抱きしめ た。だがそれでも足りず、目の前にあった長くてしなやかな耳に噛みついて歯を食いしば った。 「――――――――っ!!!!」  耳はロザリーにとって性感帯だった。ただ触れられただけでは何も感じないが、あまり に強すぎる刺激には性欲を覚えずにはいられない部分。  そこを歯型が残るほど噛み締められたことで、ロザリーは意識が途切れてしまった。真 一文字に口を閉ざし、大きく目を見開いたまま石像のごとく硬直する。 「ん……ロザリー? 大丈夫?」  絶え間なく襲いかかってくる昂揚感に荒い息をつきながらも、友人の様子に気が付いた ティエナはロザリーの両肩に手を置いて揺り動かすが何の反応もなかった。 「ロザリー! ロザリーってば!」  返事がない。ただの屍のようだ。 「おお、ろさ゛りよ。しんでしまうとはなさけない……って冗談言ってる場合じゃない!」  冷水を浴びせられたように興奮が一気に静まり、ティエナはロザリーを目覚めさせよう と彼女の頬を何度も叩いた。 「しっかりして!」  白皙の肌が真っ赤に腫れ上がるほど叩き続けていると、指がロザリーの耳に触れた。そ の次の瞬間、エルフの少女がさざ波のように痙攣し始める。 「ロザリー?」  身体の震えは次第に大波へと変化していき、振れ幅が最高点に達したところで動きが止 まった。そして、両の目尻から涙が零れたかと思うと、顔の中心からは鼻水が零れ、口の 端から大量の涎が、両耳からは怪しげな汁が溢れ出した。 「うわぁああああっ!」  異様な光景に本能的な恐怖を覚えてティエナは後ずさった。 「耳!? 耳がいけなかったの!?」  叫びながら地面に視線を向ければ、ロザリーの股間から愛液混じりの小便が垂れ流れて いく。その量は毒に冒されていた時のティエナの比ではない。あっという間に踵が浸かる ほどの水溜りが出来上がった。  最も感じやすい耳を噛みつかれたことがよほど衝撃的だったのだろう。15年間溜め込ん できたあらゆる液体をすべて流し出さんばかりの勢いだった。 「あわわわわ」  大変なことをしてしまった、とティエナが恐れおののいていると、ロザリーの股間から 淡い光を放つ石が産み落とされるのが見えた。 「あ、あれは!」  ティエナは恐る恐る手を伸ばしてその石を掴み取ると、頭上高く持ち上げて叫んだ。 「テッテテテテー、風の精霊石を手に入れた!」  思いもかけない発見に目の前の惨状を忘れてティエナは破顔した。  今まで精霊剣が発する精霊石の反応を頼りに旅を続けていたが、いつまでも見つからな かっただけに、初めて目の当たりにする秘宝の輝きに眩しささえ覚えた。 「こんな身近な所にあったら逆に見つからないはずだよ」 「……確かに、すぐそばにありながら簡単には取り出せませんしね」  聞き慣れた声がして、ティエナはさらに喜んだ。 「ロザリー! 良かったあ! も、もう平気なの?」 「ええ、何とか。危うくお花畑の向こう側へ逝ってしまう所でしたが」  危うげな発言をするのにも体力を消耗するのか、ロザリーはふらついて今にも倒れそう だった。すぐさまティエナは彼女のそばに近寄って肩を支えた。 「今日はもう休んだ方がいいね」  「いいえ、お楽しみはこれからですよティエナ」  心配して言った言葉を否定されて、ティエナは怪訝な表情を浮かべた。そんな彼女に対 してロザリーはゆっくりとした口調で自分の考えを告げる。 「もしかすると、エルフ族が精霊石のひとつを私の身体の中に隠していたように人間たち もまた精霊石を誰かの体内に収めているのではないでしょうか」 「それはないんじゃないかな。さあ、早く寝ようよ。明日から次の精霊石を探す旅に出な きゃいけないんだから」  何故か悪い予感がしたティエナは回れ右をしてロザリーから離れたが、話はまだ終わっ ていなかった。 「例えばあなたが精霊剣に炎の力を宿せるのは、あなたの身体に隠された炎の精霊石によ るものだと私は思い至ったわけですが」 「だからそんことないってぇええええ!?」  ロザリーのどこにそんな力が残っていたのか、ティエナが振り向いた時には押し倒され ていた。ティエナは馬乗りになってこちらを見下ろすロザリーを必死になってなだめよう とした。 「おおおおおお落ち着こうロザリー」 「おおおおおお落ち着いていますともティエナ。私はいたって異常なまでに正常です」 「それ正常って言わない!」  一見すると普段と変わらない平静とした表情のロザリーだったが、ティエナには完全に 目が座っているようにしか見えなかった。  先ほどの悪い予感が身近な危険となって、ティエナの背中に嫌な汗を流れさせる。 「もしかしてロザリーってば怒ってるの!?」 「怒っていませんよ。ええ、怒っていませんとも。決してあなたに恥をかかされた意趣返 しをしようなどとは考えていませんよ? 何しろエルフは穏やかで慎みがあって思慮深い 戦闘民族なんですから」 「何か矛盾してるよー! そりゃあロザリーには悪いことしたと思うけど、あたしだって 散々恥ずかしい目にあったわけだし、おあいこでしょ!」  ほとんど泣きそうな声音でティエナが弁明を試みるが、ロザリーの暴走は止まらない。 わざと見せつけるように指の間接を鳴らし、高らかに宣言した。 「こうして、お楽しみの時間はティエナの身体から精霊石が見つかるまで続くのでした」 「さらりと不吉なこと言わないでよ! ……あ、いやっ、あっああぁああんっ!」                                      (Fin)

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