『桜の咲く前に』01

 若緑色に萌える桜並木の通りをひた走るふたつの人影は、今日これから卒業式を迎えよ うとしている保科と黒羽のものだった。  自宅を出るのが遅かったのか、ふたりは余裕のない顔をして、踏みしめられた土の道を 走り抜けている。保科が先頭を行き、黒羽はその後ろについていたが、いつしかふたりの 間の距離が開いていった。 「ほら、急がないと遅刻するよ!」 「ま、待って、学子……」  保科に遅れまいと懸命に後を追う黒羽だが、すっかり息が上がって、今にも足が止まり そうだった。元々、体力のない黒羽にとって朝から全力疾走で登校するのはつらかった。 「学子……私、もう、走れない……」 「早いよ! さっき家を出たばっかだろ!」  保科に叱咤されて懸命に足を動かすが、いつのまにか彼女とは手を伸ばしても届かない 距離まで離れてしまっていた。そんな様子を見かねたのか、保科が立ち止まってくれた。  前を走っていた保科にしても、すでに呼吸は乱れている。日頃から研究三昧で運動して いないだけあって、体力面が弱いのは黒羽と同じだった。 「学子、お待たせ……はぁ……」  もう少し走らなければ時間に間に合いそうにないが、ようやく追いついた黒羽は肩で息 をつき、長い前髪に隠れた顔が少し青ざめていた。 「黒羽、無理させてごめん。……うん、こうなったら、あとは歩いて行こう」 「でも、学校に遅れちゃう」 「だからさ、近道しよ。こっちこっち」  黒羽は保科に手を取られて、雑草の生い茂る桜並木の中へ入ると、人ひとり分が歩ける 程度のあぜ道を進んだ。  木陰にかすかな清涼感を覚えながら息を整えると、黒羽は歩きながら保科が話し始める のに耳を傾けた。 「この道って、学校の裏庭に通じてるんだ。遠回りみたいに思えるけど、まっすぐ突っ切 るからいつもの道よりも早く学校に着くよ。……ちょっと歩きづらいし、靴や靴下が汚れ るからあんまり使いたくないんだけどさ」 「そうなんだ……。でも、いつの間にこんな道を通れるって知ったの?」  小学生の頃から今まで何千回も歩いた道の脇に学校までの直通路があるとは、黒羽は思 いもよらなかった。 「黒羽が入院してた頃に……たぶん、寂しそうにしてたあたしに付き合ってくれたんだと 思うけど、風切と西京が一緒に帰ってくれて、その時に教えてもらったんだ」  どうやら風切たちは暇さえあればこの雑木林に立ち入って遊んでいたらしく、たとえ歩 けなさそうな道でも、どこからどこへ通じているのか把握しているようだった。  そのおかげで保科は1秒でも早く黒羽のいる病院へ見舞いに行くことができたし、今は こうして学校までの近道に利用できるのだ。 「だいたい、あたしたちってこういう所で遊ばなかったから、色々ともの知らないよね」  子供の頃から保科は機械いじりが好きで自宅の研究室にこもることが多く、黒羽は部屋 に閉じこもって怪しげなオカルトに手を染めていた。ふたりでいた時も、どちらかの家の 中で遊んでばかりだったために、子供らしく町内を探検するといったことはなかった。 「……そうね。私たちって、ずっと住んでる町のことをけっこう知らないかも」  インドア派と言えば聞こえはいいが、実は不健康児もいいところに黒羽は苦笑した。  もっと外で遊んでいれば体力もついていたかもしれなかったが、それは今さらのこと。 だから、これからはもっと別の形で外に出よう。 (たとえば、デートしたり。私たち……恋人同士になったんだし、高校が始まるまで時間 はたくさんあるから、いっぱい遊べるよね)  仲のいい友達だった頃とは違う、もっと親密な関係でなら買い物ひとつでさえ、もっと 楽しくなるはずだった。  黒羽は嬉しそうに思いをめぐらせていたが、保科が押し黙って同じように何か考えごと をしているのに気がついた。その様子が気になって、雑草のついた朝露に足元が濡れるこ ともかまわず、保科の隣に並んだ。 「どうしたの?」 「うん……。あの道で学校に行くのって今日が最後だから、ちゃんと通った方がよかった かなって思ったんだ」  すっかり木の影に隠れて見えなくなった通学路へ保科が感慨深げに顔を向けた。  4月から通う虹浦大学付属高校は、虹浦中学校とは自宅を挟んで反対側に位置している ために、小学生の頃から9年間歩き続けた道とは今日でお別れだった。  もう少し時間に余裕をもって歩いていれば、今までの登下校にあった様々な思い出に浸 っていたかもしれなかった。 「そっか。ごめん……学子」 「謝ることでもないよ。どうせ帰りに通るんだからさ」  卒業という別れの日も相まって黒羽は簡単に落ち込んでしまったが、保科が元気づける ように笑うと、握る手に力を込めてきた。  その手の温もりに満たされながらも、黒羽はいまひとつもの足りなさを感じていた。  それは何だったか。黒羽は起きてからの出来事を思い返してみた。  朝、卒業式当日だというのに寝坊して、慌てて幼なじみで恋人の家に迎えに行くと、同 じように保科も寝坊したのか、母親にせかされながらパジャマ姿で朝食をとっていた。そ れから黒羽は着替えを手伝ってあげて、もつれあうように家を出たのだ。  そこから先は思い出すまでもない。全力で学校まで走ろうとして息切れを起こし、こう して保科に手を引かれながら見知らぬ道を歩いている。  ここまでで、やはり何か忘れものがあるように思えた。だが、ハンカチやティッシュは 持っていたし、鞄から人型の怪しげなキーホルダーが取れていることもない。保科の写真 を収めたペンダントもきちんと胸元にぶら下がっていた。  こうなると、この違和感は物ではない別の何かにあるのだろう。たとえばそう、歩き慣 れない道を通っているように、普段していないことがあるはずだった。 「あ!」  唐突に閃いて、黒羽は立ち止まった。  あまりに大きな声だったせいか、保科が驚きの表情を浮かべて振り向いたが、ようやく 思い出したことに衝撃を受けた黒羽はその顔すら目に映っていなかった。 「私たち……今日はまだ朝のキスしてない……」  たったそれだけのことだが、黒羽にとっては何よりも大事なことだった。  受験前に保科に告白して、めでたく恋が成就してからというもの、お互いの気持ちを確 かめるように始めた日課を忘れるとは、よほど朝が忙しかったせいに違いない。 「学子、キス……しよ」  もはや学校も卒業式も忘れて、黒羽はただひたすら保科と唇を交わすことしか考えられ なくなった。思い込んだら周りのことが見えなくなる性格は、保科と恋人になってから、 さらに加速しているようだ。 「な、何を言い出すんだよ。そんなのしてる暇なんてないだろ」 「でも、いつもしてることなのに……」  照れくさそうに後ずさる保科を見て、黒羽は口を尖らせた。  朝昼晩、場所を問わず、ふたりきりでいる時は必ずキスをしている毎日なだけに、絶好 の機会を前にして、いまさらやめるわけにはいかない。  いつの間にか道を外れて林の奥へ逃げようとする保科を、黒羽はひと際大きな木の幹に 挟んで追い詰めた。 「ね……いいでしょ」 「だ、ダメだって! 黒羽とキスすると時間かかるだろ! それで遅刻したら、クラスの みんなに怪しまれるじゃん!」  自分たちが正式に付き合い始めたことを同級生に知られていない、といまだに思ってい るのは保科だけだった。  とりたてて恋人として交際していることを公言したわけではないが、察しのいい人間な ら、ふたりの雰囲気から気づいているはずだ。  それなのに交際がばれることが恥ずかしいのか、言い訳めいたことを並べ立てて、逃げ 場を失ってもまだ観念しない恋人に黒羽は伝家の宝刀を取り出した。 「学子……私の言うことなら何でもするって言った」 「それはっ! ……そうだけど」  その台詞に諦めざるを得なくなったのか、保科がいよいよ弱気になったのを見て、黒羽 はとどめの一言を口にした。 「学子はしたくないの……?」 「……したい」  本音を聞いた後はもう言葉はいらなかった。  大木に背中を預けた保科の両頬に手を添えると、黒羽はそっと唇を近づけた。 「んぅ……」  保科と唇を重ねると、ほのかに甘い匂いがした。その匂いにつられて、黒羽は保科の口 内に舌先を潜り込ませると、ふっくらとした柔らかな桜色の粘膜を刺激した。  それを合図に保科も自らの舌を絡ませて、口の端からいやらしい水音が立つほどお互い の舌を舐めあった。  次に黒羽は少し顔を離して保科に目配せすると、その意図がきちんと伝わったのだろう、 彼女の唇が舌を挟み込んで前後にしごいてくれた。 「ん、んむ、はっ、はぁ……んんっ」  お返しに黒羽も保科の舌を自分の口の中へ導くと、甘噛みしながら唇でしごきたてた。  唇を重ね合いながら溢れてくる唾液を貪るようにすすっていると、自然と保科の胸に手 が伸びた。最近は揉まれる機会も多くなったせいか、薄く平らだった乳房に心なしか肉づ きが増えた気がする。中のブラジャーごと強めに揉み上げると、保科が切なそうな声を上 げた。 「あっ、やぁ……ダメだってば。キスだけにしないと学校に間に合わなくなるだろぉ……」  淫らな口戯に酔いしれてもまだ理性があるのか、保科に手を払われて胸板から退けられ た。だが、いちど欲情に火がついた黒羽は気持ちに収まりがつかず、今度は保科のスカー トの中に手を突っ込んだ。  すぐに指先が繊細な肌触りのショーツをとらえ、軽く押してみると布地に包まれた柔肉 がかすかに震えた。 「そこはっ!? く、黒羽ぇ……時間ないんだからやめ……んんっ!」  うるさく言う保科の口を再び唇でふさいで黙らせると、空いた手で保科の両手首を掴ん で、抵抗しないよう頭上高く木の幹に押さえつけると、黒羽は本格的に愛撫に集中した。  下着越しに保科の恥丘を強く擦りつければ、縦に走ったスリットが浮かび上がった。そ の谷間に指を収めるようにして上下に動かし、摩擦を繰り返して保科を責め立てる。 「ふぅんんっ、んぷぁっ、んむっ……んっんっんんっ」  唇を閉ざされたまま、喘ぎ声をくぐもらせて保科が刺激に頭を揺らした。顔を間近に寄 せているせいでその表情はわからなかったが、鼻の頭に赤みが差したように見えた。  黒羽は年相応に成長した胸を、服にしわがつくのもかまわず保科に擦りつけた。すでに 硬く尖っていた乳頭が千切れそうなほど身を寄せると、痛いくらいの快感にお尻が悶える。 「学子……やっぱりエッチね。いっぱい可愛い声出して、そんなに気持ちよかった?」 「バカぁ……そんなことよりパンツが汚れちゃっただろぉ……」  確かに指先で感じ取れるほどに下着が濡れてきた。湿り気を帯びた縦裂に布地がくい込 んで、指を荒々しく動かすと濡れ音が聞こえてくるほどだった。 「黒羽、もうやめよ? このままだと恥ずかしくて学校に行けないじゃん」  保科に哀願されると、黒羽はショーツの端に指を引っかけて、華奢な腿と膝の中間あた りまで下着を降ろした。 「これなら汚さなくても済むから安心……」 「なわけないだろ! いつまでもこんなことしてたら、本当に学校に行けなくなるじゃん かっ!」  確かにこれ以上はやり過ぎだが、それでも黒羽は恋人の乱れる姿がもっと見たかった。    露出した保科のわれ目を指で押し開くと、薄い粘膜が蜜液を滴らせていた。黒羽はその ぬめりを指全体にまぶし、陰唇を何度も弄りたてる。その内に保科の鼻息が荒くなって顔 をくすぐった。  甘い痺れに抵抗する力も失ったのか、保科の体がもたれかかってくると、黒羽は彼女の 手首を離した。戒めを解かれた保科がますますその身を黒羽に預ければ、密着度が高まり、 黒羽の豊かな乳房を押し潰した。  保科の呼吸と心臓の鼓動に合わせながら淫裂に指を這わせて、時おり皮を被った肉芽に 触れると、跳ね上がる心音と漏れ出でる熱い吐息、何よりも淫猥なよがり声が黒羽を愉し ませた。  太腿を濡らして靴下まで垂れ下がるほどに保科の愛液が溢れるのを見て、黒羽は膣内へ 指を沈めようしたが、そこで保科は弾かれるように顔を上げて、左右に首を振った。 「やっ、やめろよ黒羽っ、入れちゃダメぇ……」  本当に最後の一線を越えるのが嫌だったのか、今にも泣き出しそうな保科に黒羽の指が 止まった。小さくえずく保科の背中をさすってあげる。 「入れない。入れずに触るだけだからいいでしょ?」  その言葉どおり膣口の縁をくすぐるだけで済ませると、保科も安心したのか長く息を吐 いた。しかし、黒羽はそんな保科の反応を見ながら少しずつ指先を膣内に挿入していく。 緩やかな快感のせいで保科は気づかなかったが、第一関節ほど指が入るとさすがに異物感 を覚えて顔を歪ませた。 「これ、入ってる。入ってるよっ」 「入ってない……。きっと、学子の気のせい」  黒羽はさりげなく指を抜いて、誤魔化すように陰唇を弄った。だが、愛液で滑りがよく なっているせいで、意図的にしなくても勝手に指先が膣内に入り込んでしまう。 「嘘つくなよっ。黒羽の指の……ふぁっ、先っちょ……入ってるだろぉ!」  もちろんわざと入れているのは確かだったが、保科に文句を言われたのを逆恨みして、 黒羽は意地悪をしたくなった。 「学子……ひどい。どうしてそんなこと言うの? 入ってるっていうのは、こういうこと でしょう……?」 「っ! ひぁああああっ!」  黒羽が肉壷の最奥へ向かって一気に指を挿入すると、保科が木の葉を震わさんばかりの 嬌声を上げて背中をのけ反らした。 「バカバカバカっ! 入れないって言ったじゃんかぁ!」  だだっ子のように保科に胸を叩かれて、黒羽はいったん膣口付近まで指を引き抜いた。 「だって、学子が聞き分けのないこと言うから。ね……これなら入ってないでしょ」 「ん……ぁ、そう……かな?」 「そうよ」  指先を浅く出し入れして黒羽は保科を翻弄すると、彼女の目は蕩けて、快楽に溺れた頭 では挿入具合の基準が判断できなくなっているようだった。 「ん……何だか黒羽の指が……ひぁっ、けっこう入ってる気がする……」 「でも、こうやって奥まで入れちゃうのにくらべたら、こんなの全然入ってない……」  もういちど黒羽が深々と保科の秘裂を貫いて、中の肉襞をかき混ぜるように指を立てて 動かした。 「ふぁああっ……ふゃあああっ、だからぁ入れるなって……くろばねぇっ」  そうやって指を挿入しては抜く行為を繰り返していくと、次第に保科のろれつが怪しく なってくる。黒羽はさらに指の動きを早めて、保科に抵抗する間も与えなかった。 「あっあっあっ、黒羽っ、これ……絶対入れてるだろっ」 「うん……入れてる。学子の中に私の指が出たり入ったりしてるよ」 「バカぁ」  もはや騙すことなく抽送運動を激しくすれば、快感に保科の足腰が震えて今にも崩れ落 ちそうだった。黒羽は彼女のお尻を手を回して固定すると、ついでに後ろのすぼまりにも 指を挿し入れて腸内を犯した。 「あんんっ、はっあっああっ、そんなところまでダメだって……やぁあっ」  保科が涙と涎を撒き散らして嫌がってはいたが、黒羽にはひとつの確信があった。 「じゃあ、やめる? 学子が本当にやめて欲しかったら……もうしないから」  黒羽はあえて冷たく突き放し、前後の穴を貫いた指を引き抜こうとする。これで指が抜 けきってしまえば快楽は終りなのだと思い知らせるように、じっくりと焦らした。 「抜いて……んんっ、もっと早く抜いてくれってぇっ」  だが、その言葉とは裏腹に、黒羽の指を淫肉で挟み込んで逃がそうとしないのは保科の 方だった。 「やっぱり、やだ……! やだよっ。だって……あたし、あたし、んんぅっ」  許しを乞うように保科が唇を求めてくると、黒羽は喜んでそれを受け入れた。口と膣と 尻穴、その3箇所からいやらしい水音と分泌液を垂れ流せば、保科の制服や下着が取り返 しのつかないくらい汚れてしまっていた。  それは黒羽も同様で、胸元は涎でべたついている上に、自分自身の下着が触るまでもな く濡れそぼっているのがわかった。  だが、今のふたりにそんなことを気にする余裕はなく、黒羽は思い通りに保科を誘導で きたことだけでも満足していたし、保科は下腹部に疼く悦楽の波に悶えて何も考えられな かった。 「イきたいのよね学子は……。おマンコとアナルを弄られてイきたいんでしょう?」 「うんっ、うんっ!」  うって変わって嬉しそうに頷く保科を抱きしめて、黒羽は彼女を絶頂へと導くために抜 きかけた指を入れ直した。最後だけあって手加減なしで責め上げると、保科が悦びの声を 震わせる。 「あんっ、あんんっ、あっあっ、くぁ……ふぁああ!」  高校の合格発表の当日、初めての契りを結んだ時から今になっても保科の見せる反応は 初々しさを失っていなかった。何十回、何百回と体を交わらせても、常に違った新鮮さを 見せて黒羽を飽きさせない。  気がつくと、共に絶頂を迎えたいのであろう保科が快楽を引き出そうとしているのか、 黒羽は体のあちこちをまさぐられていた。 「私のことはいいから。今は学子にだけイってもらいたいの……」  額と額をくっつけ合って、優しくキスをしてあげると、ようやく保科が落ち着いた。  早朝から、しかも野外で卑猥な行為に耽っていることに加えて、それを受け入れてしま った自分を恥らって悩ましげに眉根を寄せる保科の表情だけでも、黒羽は達してしまいそ うだった。  保科はと言えば、そろそろ限界が近いのか、その体が小刻みに痙攣し始めた。 「やっ、はっ、ああっ、んあぁああっ、頭が……変になっちゃう!」  今までに何度も見てきた絶頂の前ぶれに、黒羽は膣内と腸内に挿入した指の腹で、互い の感触がわかるほど薄い会陰部をきつく挟んだまま、肉壁をえぐるように引き抜いた。 「ダメ! 黒羽っ、来ちゃう! 来ちゃうよぉっ! あっあっああああぁぁぁぁっ!」  甘美な声をほとばしらせて保科が前のめりに崩れ落ちて、黒羽は彼女を支えきれずに尻 もちをついた。 「学子……」  脱力した保科の頭を撫でて、乱れた髪をとかしてあげると、気持ち良さそうに彼女の目 が細まった。その表情がたまらなく愛おしくて、抱きしめる腕に力を込めた。  そのまま黒羽は草葉の臭いよりも濃厚な性欲の匂いに時間を忘れて酔いしれた。

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