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『絶対可憐チルドレン』の二次創作短編

(2008年 投稿分)

『僕はハロウィンの由来を知ってるから......』
単行本14巻収録の四コマ漫画を元ネタとして
『『お・と・こ』の物語』
単行本14巻収録の四コマ漫画を元ネタとして
『三人のお義母さんになる人』
2008年51号サンデー掲載エピソードを元ネタとして
『お前には心底ガッカリだ』
単行本15巻収録の四コマ漫画を元ネタとして
『赤・青・紫』
単行本15巻収録のエピソードを元ネタとして
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『僕はハロウィンの由来を知ってるから......』

「いきましょう、少佐」
「あれ?」
「少佐はいつものカッコのまま?」

 今日はハロウィン。
 三人の少女は、こった仮装をしていた。それぞれ髪まで染めてバベルの三人娘に扮した上で、さらにハロウィンっぽいキャラを演じているのだ。

 三人とも、色々と苦労しているらしい。

 薫役のカズラはミイラ男のコスプレだが、包帯は自前だ。体の一部を触手化して包帯にしているらしい。下半身を触手として使ってしまった結果、腰から下は地面に埋めて誤摩化していた。

 誤摩化すと言えば、紅葉も大変である。眼鏡つながりで葵役をやっているようだが、年齢的に離れ過ぎている感じがある。本人もそれは理解しているらしく、少佐の視界の左下隅にコソッと入るような感じで、しかもウインクで誤摩化そうとしていた。

 そして、紫穂役の澪。演じているキャラの特殊な帽子にあわせて、入りきらない頭のてっぺんを部分テレポートで別の場所に移動させている。だが、これは彼女にしてみれば造作無いことだった。むしろ、もともと笑うのが得意でない彼女は、素直な明るい表情を見せることのほうに努力を要していた。

 そして、そんな三人に対して。
 少佐は、普通に学生服を着ているのだった。

「いや、僕は
 ハロウィンの由来を知ってるから
 派手な仮装をするのは、どーもね」
「日本でいうところの
 お盆のようなものだって?」
「え、そうなの?」

 紅葉の言葉に驚く澪。
 八月に海に行ったときの少佐の様子を思い出し、少佐にとって『お盆』は特別なのだろうと思ったのだが......。
 そういう意味ではなかった。

    1939年頃。
 
    「そーだわ!!
     ハロウィンはみんなで仮装して
     お菓子をねだる日にしましょう!!」

「まさか世界中に広まるとは」
「「「マジ!?」」」




(僕はハロウィンの由来を知ってるから......・完)

(初出;「ザ・グレート・展開予測ショーPlus」様のコンテンツ「展開予測掲示板」[2008年10月])

 転載時付記;
 「ザ・グレート・展開予測ショーPlus」様で行われていた「ミッション企画(ミッション1)」に参加した作品です。
 当時の「ザ・グレート・展開予測ショーPlus」様のトップ絵に関連したSSですので、「ザ・グレート・展開予測ショーPlus」様のコンテンツ「画像掲示板」内「10月TOP」(及びコンテンツ「雑談・議論掲示板」内「[109] 【覚悟】ミッション【完了】」)も参照して頂けたら、幸いです。

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『『お・と・こ』の物語』

 その男は、デパートで買い物をしていた。
 ピシッと着こなしたスーツの上からでも、胸板の厚さがよくわかる。ジムなどで相当鍛えているのだろう。
 服の上方に目を向ければ、キリッと整った顔立ちだ。『甘いマスク』という言葉も『武骨な』という言葉も相応しくないが、それでも、筋骨隆々としたボディには適したハンサム顔が、そこにあった。
 すれ違った女性たちが、ポーッと見とれてしまうくらいの男。
 しかし、彼自身は......。

(ったくもう!!
 ノーマルの常識ってサイアク!!
 こんなブサイクな恰好じゃ
 生活できないわよっ!!)

 と思ってしまう、アブノーマル。
 仲間の女性からも『趣味の方、直せ』と言われているオカマ。
 マッスル大鎌である。




    『お・と・こ』の物語




「はい。
 ちゃんと買ってきたわよ」

 デパートから出て、ビルの裏側に回ったマッスル。
 そこで彼は、待ち合わせの相手に、商品を手渡した。

(ありがとう)

 相手は、直接の言葉ではなく、テレパスで感謝の意を返してくる。
 マッスルの仲間であるエスパー、ヤマダ・コレミツだ。
 かつては美少年だったコレミツだが、傭兵時代に負った傷のために、その面影は全く残っていない。顔の下半分は包帯で覆い隠しているが、左目から額へと伸びる手術跡のために、まるで怪物のようにも見えてしまう。
 あまり都会の人混みの中に出るべきではないと思ったのだろうか、彼は、マッスルに買い物の代理を頼んだのだった。

「それじゃ、アタシはジムへ行くから......」

 コレミツに手を振って歩き出そうとしたマッスルだが、その足が止まる。

 ドカッ......! ボスッ!!

 人と人とが殴り合う音が聞こえてきたのだ。
 コレミツがここで待っていたように、ビルの谷間は、都会の中でありながらも、一種のエアーポケット。
 後ろめたいこと、後ろ暗いこと、軽犯罪なども行われている。

「......やあねえ〜〜」

 音のする方に視線を向けると、少し離れたところでの騒動が目に入ってきた。
 当然、それは、ボクシングや格闘技の殴り合いではない。
 ケンカである。
 いや『ケンカ』とすら言えないかもしれない。
 学生服を着崩した不良学生たち――高校生のようだ――が、数人がかりで一人の小学生を痛めつけているのだった。
 
「これだから......ノーマルって連中は......」

 おそらく、カツアゲか何かの成れの果てなのだろう。
 なまじ、その少年に気概があって、腕っぷしにも自信があったから、こんな状況になっているのだろう。
 だが、いくら少年が強かろうと、『多勢に無勢』な上に『大人と子供のケンカ』である。『孤軍奮闘』という言葉すら程遠い状態になっていた。

「あれじゃ......弱いものイジメと同じね」

 マッスルの脳裏に、かつての自分の姿が浮かび上がった。
 まっとうな趣味(注:マッスル視点)で、まっとうな恰好(注:マッスル視点)をしていたマッスルに、周囲の人間は、理不尽なこと(注:マッスル視点)を言って石を投げつけたのだ。
 それとは事情が違うとしても、それでも、見て見ぬフリは出来ない。
 
「少佐なら......
 『残念ながら完全にノーマルだ。
  なにかしてやる義理はないね』
 ......とでも言うのかしら。
 でも......」

 マッスルは、コレミツの方を振り返り、声をかけた。

「手助けするわよ。
 これで今日の買い物の『貸し』は
 チャラにしてあげるから......
 あなたも一緒に行くのよ?」


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 多少ケンカに慣れているとしても、それは、高校生同士の抗争レベル。
 しょせんは、チンピラ学生である。
 マッスルやコレミツの敵ではなかった。

「フン......」

 地面にノビている不良たちを見下ろしながら、立ち去ろうとするマッスル。
 コレミツも、彼に続く。
 だが、そんな二人の背中に、少年が言葉を投げかけた。

「あの......お名前は?」

 少年は日頃は『お名前』なんて言い方はしないが、それでも恩人に対しては、そういう言葉を使うべきだと思ったのだ。
 小さく振り向いたマッスルが、これに応じる。

「こっちはコレミツ。
 私の名前は......大鎌よ」

 これはパンドラのミッションでもないし、今は、わざわざ『ノーマルに合わせたブサイクな恰好』で、目立たないようにしているくらいなのだ。
 マッスルは、『マッスル大鎌』ではなく、ただ『大鎌』とだけ名乗った。
 オカマ口調は残ったままだったけれども。


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「......ということがあったんだ」

 河原の土手で、体育座りで二人で並んで。
 ちさとに向かって、東野少年が昨日の出来事を語っている。
 その瞳には羨望の色が浮かんでいる......と、ちさとには思えた。
 彼は、自分を助けてくれた二人を『男らしい』と感じて、自分もそうなりたいと思ったのだろう。
 ちさとから見れば、東野は今でも既に十分『男らしい』のに。
 東野の話に出てきた二人――ちさとは二人とは面識がないので想像上のイメージ――とだって、きっと、肩を並べられるくらいだ。
 三人が並んでいる姿を思い描いて、ちさとは、クスッと笑いながら、つぶやいた。

「大鎌(おおかま)さんと、
 東野(とうの)くんと、
 コレミツ(これみつ)さんと。
 ちょうど三人で......
 『お・と・こ』の物語ね!」




(『お・と・こ』の物語・完)

(初出;「ザ・グレート・展開予測ショーPlus」様のコンテンツ「展開予測掲示板」[2008年10月])

 転載時付記;
 「ザ・グレート・展開予測ショーPlus」様で行われていた「ミッション企画(ミッション2)」に参加した作品です。「ザ・グレート・展開予測ショーPlus」様のコンテンツ「雑談・議論掲示板」内「[109] 【覚悟】ミッション【完了】」も参照して頂けたら、幸いです。

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『三人のお義母さんになる人』

「......ともかく、皆本はんが
 ウチらをお嫁さんにしてくれるって
 わかっただけでも朗報やな」

 ちょっとした騒動が終わった後で、つぶやく葵。
 その『騒動』とは、薫の『お義母さん』発言・皆本の対応・紫穂のツッコミで構成されたもの。
 たわいない一場面ではあったが、これで葵たちは、『三人のうち一人とは結婚するつもり』という言質をとった気分になっていた。

「そうだな......」
「なんや、薫?
 ノリが悪いやんか。
 三人一緒じゃないと嫌なんやろうけど、
 でも、こればっかりは......」

 葵は、薫に声をかけながら、その肩をポンと叩く。いつもほどノリノリではない彼女を心配したのだが、そんな二人に、背後から別の言葉が投げかけられた。

「大丈夫よ」

 振り向いた葵が目にしたのは、ソファーに座っている紫穂。
 紫穂は、ポッキーを食べながら、何かの本を読んでいる。

「皆本さんを外道にせずとも......。
 三人で一緒に、
 皆本さんのお母さんを
 『お母さん』って呼べる日が来るわ」

 手にした本から視線を逸らさないまま、話を続ける紫穂。

「ホンマ!?」
「ホント!?」
「ええ!
 だから私にまかせて」

 葵だけでなく薫も目を輝かせるのだが、二人とは別の意味で、紫穂の目もキラリと光っていた。


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 そして。
 時は流れて......。


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「おめでとう!」
「おめでとー」
「おめでとー」
「おめでとう!」

 親族・同僚・友人・知人などから祝福される新郎新婦。
 しかし、その『祝福』の声に少しぎこちなさも混じっているのは、事情を知る者も混じっているからであろうか。
 新婦は、それを誰よりも理解しているはずだった。なにしろ、新婦はサイコメトラーなのだから。
 そして、新婦の親友である二人は......。

「なんで......?
 なんで紫穂ひとりが皆本と結婚できて......」
「......ウチらは皆本家の『養女』なんや!?」

 参列客の中で涙を流していた。

 二人は、あのとき紫穂が読んでいたのが漫画本だったことを知らない。その内容も、あまり詳しくは知らなかった。
 だから、『その漫画ではヒロインの一人が養父母に対して「お養父さんお養母さん」と言ったり「お父さんお母さん」と言ったりしている』ことも、知らなかったのである......。




(三人のお義母さんになる人・完)

(初出;「ザ・グレート・展開予測ショーPlus」様のコンテンツ「展開予測掲示板」[2008年11月])

 転載時付記;
 2008年51号サンデー掲載エピソード『家に帰ろう(1)』を元ネタにした、この作品。投稿したのは、翌週のサンデー発売日でした(その時点では、まだ私は翌週のサンデーを読んでいませんでした)。
 その後『お義母さん』発言がバーゲンセール状態になるとは、思ってもみませんでした......。

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『お前には心底ガッカリだ』

 パンドラの一員、黒巻節子。
 念写イメージをトリガーにして夢を見せることが出来る能力者。
 そんな彼女のところにやってきたのは、仲間の一人、藤浦葉だった。

「エロい夢見せてよ。
 ネタはこのグラビアアイドルで」

 彼が手にしているのは、明石好美の写真集。
 最近では露出度を減らして、オタク受け路線に変更したと言われているアイドルだ。

「直球だなコイツ。
 エロって......
 どんなのがいいわけ?」
「コスプレとかそんなの!」

 コスプレ。
 それこそ、明石好美の最近の方向性である。
 だが葉が持ってきたのは、少し古い写真集のようだ。まだ明石好美が正統派グラビアアイドルをしていた頃のもので、表紙の写真も水着姿。

(ふーん......)

 普通のコスプレを望むなら、最新版の写真集を用意するはず。
 だが、わざわざ違うのを持ってきたということは、葉の希望は、一般的なコスプレとは違うのだろう。 
 だるそうな顔をしながらも、そこまで気を利かせた黒巻は......。


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「ホラ、葉クーン。
 兵部少佐のコスプレだ・ぞ」

「次は、真木さんだ・ぞ」


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「あーあ」

 表情を変えないまま、しかし内心で残念に思う黒巻。
 今、彼女の前で寝ている葉は、目から涙を流し、『うっわ』と苦しそうな寝言。
 どう見ても、うなされていた。
 どうやら、少佐のコスプレも真木のコスプレも、葉の好みに合わなかったらしい。

「おまえには......」


 どちらも、わざと上半身のみにしておいたのに。

 下半身は、ナマ脚が完全に露出。さらに学生服やワイシャツの間から、キュートなショーツもチラチラ見えるようにしておいたのに。

 このギャップやチラリズムが理解できないなんて......!

 しかも少佐の学ランなんて、袖が長過ぎるようにして『男物を一時的に借りた女のコ』の雰囲気まで匂わせたのに。

 このシチュエーションも堪能できないなんて......!


「......心底ガッカリだ、葉!!」




(お前には心底ガッカリだ・完)

(初出;「ザ・グレート・展開予測ショーPlus」様のコンテンツ「展開予測掲示板」[2008年12月])

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『赤・青・紫』

「せんせー。賢木せんせー」

 バベルの廊下を歩く賢木修二は、呼び止められて、後ろを振り向く。
 そこに立っているのは、チルドレン三人娘。

「ん、なんだ?
 外出許可なら出してやったろ」

 彼女たちは、子供になってしまった皆本と共に遊びに行った。賢木は、そう思っていたのだが......。

「出かける前に、
 ちょっと聞きたいことがあってさ」
「センセが子供の頃って
 何が欲しかったん?」

 子供らしい純真な瞳で、薫と葵が問いかけてくる。

「子供の頃に欲しかった物?
 ......ああ、そういうことか」

 大人の皆本ではなく子供の皆本へ。
 子供同士ということで、何かプレゼントしたいのだろう。

「そうだな。
 俺が子供の頃は......」

 と答えかける賢木だが、それを紫穂が遮った。

「ダメよ、薫ちゃん、葵ちゃん。
 センセイと皆本さんじゃ、趣味が違い過ぎる。
 ......参考にならないわ」
「おい!?」

 賢木が反論する間もなく、

「それもそうだな」
「子供ゆーても色々おるもんな」

 薫と葵の視線は、賢木の隣へと移動する。
 そこでは、柏木朧が、優しい笑顔を浮かべていた。

「そうねえ。
 女のコと男のコじゃ、
 興味の対象も違ったけど......。
 私たちが子供の頃って、
 スーパーカーとかブームだったわ。
 消しゴムだけじゃなくて
 クイズ番組にもなるくらい。
 ......そうでしたわね?」

 賢木に同意を求める朧。
 年齢不詳で通している彼女であるが、『私たちが子供の頃』という言葉からすると、『皆本や賢木と同年代』という意味になるだろうか。

「そ、そうですね」

 実際、賢木は朧の言葉を肯定してみせた。
 それは賢木や皆本が子供の頃ではなく、実は1970年代の話だ......と、ちゃんと理解しながらも。




    赤・青・紫




「あれ?
 ケンはんやんか」
「何やってんだ、
 いい年した大人が、こんなところで?」

 買い物をしていたケン・マクガイアは、聞き覚えのある声を耳にして、後ろを振り向く。
 そこに立っているのは、チルドレン三人娘。

「オー!
 『チルドレン』は、
 やっぱりチルドレンなんですネー。
 まだまだオモチャが欲しい年頃なのデース」

 場所はデパートのオモチャ売り場だ。
 勝手に納得するケンだったが、これは誤解。

「違うわ。
 私たちは、皆本さんへの
 プレゼントを買いにきたの」

 皆本が子供になってしまったので、同年代の男のコが喜びそうなものを買いに来たのだという。

「オー!
 それは大変ですネー。
 でもプレゼントの選択は正しいデース。
 私も子供の頃、車のプラモデル、よく作りました。
 でも......ここにあるのはチョット違いマス!」

 親切なアドバイスをするケン。
 昔のプラモデルは、今と違って、単色だったのだ。
 それを塗装するのも楽しみの一つだった。

「そっか。
 それじゃ、そーゆー昔ふうのを
 探した方がいいかもしんねーな」
「おーきに!」

 そう言って、立ち去る薫と葵。
 紫穂も続いたが、ふと立ち止まって、振り返る。

「アドバイスの御礼に、
 私からもアドバイスするわ。
 ケンさんもプレゼント買いに来たんでしょ?」
「オー!
 アナタ私の心よみマシタネ?」
「違うわ、初歩的な推理よ。
 ケンさんがこーゆーの
 自分で買うとは思えないから......」

 そのとおり。
 ケンは、本国の母親へ送るプレゼントを買いに来たのだった。

「日本らしい人形?」
「そうデース。
 コノゴロハヤリの人形は、どれデスカ?」
「うーん......。
 コレがいいと思うわ!」

 紫穂は、素直に悪気なく、流行のフィギュアを指さすのだった。


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 そして、帰宅後。

「え?
 僕にプレゼント?」

 皆本少年の前に、それが差し出された。

「今なら子供同士だもんな」
「ウチらのおこづかいでも
 プレゼント買えるから、
 いい機会やと思って」
「いつも御世話になってる御礼よ」

 それは、丁寧にラッピングされており、ピンク色のリボンがかけられている。

「ありがとう」

 その場の『早く開けてみて』という空気を読んで、皆本少年は、リボンをほどく。
 包装紙を破らないように丁寧に剥くと、中から出てきたのは......。

「......プラモデル?」

 ミニカーにしては完成されていないし、プラモデルにしては、中途半端に出来上がっている。
 しかし天才少年の皆本は、「この十年の間に、こういう『親切設計』になってしまったのだ」と理解したのだった。
 
(ここまで組まれていては、
 あんまり作る楽しみも
 残ってなさそうだけど......)

 実際、サッと仮組みするだけで、一応の形が完成してしまった。

「どや?」
「カッコいいだろ?」

 女性のように滑らかな、美しいライン。
 同時に、男性のような力強さも感じさせる。

「......うん」

 シェルビーコブラと呼ばれるスポーツカーだった。
 少しだけ味気なさも感じるのだが、それは未塗装状態のためなのだろう。
 だから......。


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「男のコなら、やっぱりブルーやろ。
 ......ウチのベレー帽の色やで!」
「何言ってんだ、葵。
 コブラって言ったら赤だろ、赤!」

 色を塗りましょう。
 そう言って、皆本少年に迫る二人。
 紫穂は、一歩、出遅れてしまった。

(葵ちゃん! 薫ちゃん!)

 心を読むまでもない。
 二人の顔には、『わたし色に染めてね』と書いてあった。
 だから、紫穂も負けずに、言ってみる。

「えーっと......紫色は?
 紫色っていうのはどうかしら」

 だが......。

「紫色?
 あんまり車には使わない色じゃん」
「わざわざ、
 そーゆー色で塗ろうなんて
 ......そんな奴おらんやろ」

 薫と葵には反論されて、

「そうだね。
 これには......ちょっと紫は合わないかな」

 含意に気付かぬ皆本少年にも、却下されてしまう。

(負けた......)

 珍しく敗北を味わう紫穂であった。




(『赤・青・紫』完)

(初出;「ザ・グレート・展開予測ショーPlus」様のコンテンツ「展開予測掲示板」[2008年12月])

 転載時付記;
 「ザ・グレート・展開予測ショーPlus」様で行われていた「ミッション企画(ミッション3)」に参加した作品です。「ザ・グレート・展開予測ショーPlus」様のコンテンツ「雑談・議論掲示板」内「[109] 【覚悟】ミッション【完了】」も参照して頂けたら、幸いです。

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