部屋の向こうから、ひそひそとささやきあう人の声が聞こえた。


「誰?誰なの?」

は緊張状態で今にも切れそうな神経を静め、杖を剣のように構え、

おそるおそる音源の方向へと抜き足、差し足で忍び寄っていた。


「ハーハッハッ!聞いたか?聞いたかい?私らと戦うつもりだよ!他の子に命令してるよ!」


シャンデリアの光がまぶしすぎて、彼女の目に痛いほど反射した。


彼女は目をこすりながら、部屋の向こうにある唯一の黒い扉へと早足で急いだ。


「ああ、べラトリックス、君は私ほどにはポッターを知らないのだ。」


あの声!彼女の全神経が憎悪に唸った!


忘れるものか!私に服従の呪文をかけた張本人!

ルシウス・マルフォイ!


それにあいつ!旧姓、べラトリックス・ブラック。シリウスが最も忌み嫌っている彼の従姉だ。


二人の嘲った笑いが、ここまではっきりと聞こえてきた。



唾棄すべき、けがわらしい残忍な人殺しめ!



「さあ、予言を渡せ。さもないと我々は杖を使うぞ。」


「やれるものならやってみろ!」


ルシウス・マルフォイの挑発と、ハリーの吼える声が響いた。



ハリー!彼はやっぱりそこにいるのだ。


は今すぐにでも飛んで行きたい衝動に駆られたが、向こうは多勢に無勢でこちらから

一人加勢に加わっても不利だろう。



それより、彼らを何とかうまくあの部屋から逃がさなければ!


は狂ったように辺りを見回し、何か使えそうなものがないか探し始めた。




ハリーとマルフォイ達はなおも切羽詰った状況の中、言葉をぶつけあっている。






しばらくして彼女は、何か思案したらしく、シャンデリアの部屋の隅にポツンと置かれていた観葉植物の鉢植えを見つけ、

側へすっとんでいった。



「これで多少時間稼ぎ出来るかな。」


は杖をサッと振って、短くしっかりと呪文を唱え始めた。


「何故、ヴォルデモートは自分で予言を取らないんだ。汚い仕事は皆、お前らに

 やらせてるわけか?」

「小僧!不適にもあのお方の名前を口にするでない!愚かにも混血の舌、おまえのけがわらしい唇でー呼ぶでない!!」

すかさずべラトリックスが腹ただしそうに言い放った。

「何いってるんだ?お前、知らないのか?あいつも混血だぞ。それとも何かい?君たちには

 まさかー自分はずっと純潔だと言いつくろってきたのか?」

ハリーの唇がめくれ、次第に勝ち誇った笑いに変わっていった。

「黙れ!黙れ!」べラトリックスの顔が怒りのあまり、まだらに変化した。

「あいつの父親はマグルだ!母親はスリザリンの血をひく魔女だけどな。」

「麻痺ー」

「べラ、やめんか!」


紅い閃光が彼女の杖先から発射され、ハリーの前髪をさっと掠めた。

ルシウス・マルフォイが慌てて、彼女の手をつかんで呪文を屈折させたのだ。

「馬鹿者!やつの挑発にのるな!お前は黙ってろ!」

彼は素早く彼女の耳元で、厳しく叱りつけた。

「ルシウス、あたしに命令できる立場かい?ふん、えらくご立派になったもんだ。

 あたしの姉さんと結婚しなきゃ、今みたいにふんぞりかえってばかりいられないだろうよ!あんたには後ろめたいことが山とばかり

 あるんだからね。あたしゃ、ぜ〜んぶ知ってるんだ。

 しかも、あんたその姉さんを裏切って、あの吸血鬼の女伯爵とよろしくやってるんだってね?

 いい気なもんだね〜え?違うかい?」

べラトリックスはせせら笑って、とんでもないことを暴露しはじめた。


「黙らないと、いつでもかたをつけてやるぞ。べラ。」


すぐにマルフォイの額に冷や汗が流れ、顔色もどんどん青ざめ始めたが、彼は威圧するような声でぴしゃりと制した。


「そうさね!やればいいさ!ほら、やってごらんよ。あたしの姉さんにたてつく気があればね!」


べラトリックスはひるまずに、切り裂くような笑いを浮かべ、傲然と彼を挑発した。


「もういい。今はそれどころじゃないのだ。いいか。何も言うな。この件はあとできっちりと

 かたをつけてやる!さて、ポッター話を元に戻そう。予言の球をあの方が取る?闇の帝王が自らここに乗り込むだと?

 そいつは少々、話が上手すぎると思わないのかね?闇払い達がうようよしているこの建物に帝王が
 
 姿を見せる?そうだ。ポッターお前の察しの通りだ。スタージスやボードに予言を盗ませたのは

 あの方だ!だが、失敗した。なぜならば、その予言の球を神秘部から取り出せるのはーポッター、

 その予言と関わりがあるものだけだからだ。」


「僕が予言にかかわる人物だって?」


「二人だ。君ともう一人の人物にかかわる予言だ。」


ハリーとマルフォイの攻防戦はそこでやんだ。



「よし、もうそろそろ・・。」

一方、閉ざされた黒い扉の向こう側では異様な気配がうごめいていた。


ドン!!バリバリバリ!!


「何だ?」ルシウス・マルフォイが反応した。


バーーーーーーン!!!


黒い扉は次の瞬間、跳ね飛ばされ、横に吹っ飛んで砕け散った。




皆、あまりの怖さにひるんで動けなくなった。



がらあきの元、扉があった場所から爆発的に成長した「悪魔の罠」の巨大なつるが何本も

にょきにょきと進入してきた。


「悪魔の罠を瞬間的に成長させたようだな。くそっ!誰だ、そこにいるのは!」


ルシウス・マルフォイがじりじりとあとずさりしながら、苦々しく叫んだ。


それと同時にもくもくと黒い、黒い煙幕が流れでてきた。


「逃げろ!!こっちにくるぞ!!」


 

デス・イーターの一人が竜のしっぽのように、動き回る「悪魔の罠」を指差して叫んだ。



「今だ!レダクト!粉々!!」


真っ先に我に返ったハリーがデス・イーターの後ろにそびえたつ木製の棚を杖で指差し、叫んだ。


「レダクト!!」


彼の言葉が条件反射となり、側にいた友人達がいっせいにあちこちの棚を杖で指差し、

叫んだ。





狙いを定めた棚が、爆発し、爆発音に共鳴して、「凶暴化」した「悪魔の罠」が

鞭のように彼らに襲いかかってきた。


「逃げろ!!早く!!」


ハリーのかけ声で、皆、蜘蛛の子を散らすようにあたりかまわず走り出した。


「クソッ!この植物、俺達ばかり狙ってやがる。」

あばたづらのデス・イーターが、ひーひー悲鳴を上げながら怪物のように

まっすぐ自分達のほうに向かってくる植物に悪戦苦闘していた。


「誰か、これを操っている奴がいるのだ!相当な使い手かもしれん。こんな闇の植物をあつかえるなど。」


ルシウス・マルフォイは雨あられと襲ってくる、無数の「悪魔の罠」を

黒い炎で焼き討ちにしながら叫んだ。


「助けてくれ!ルシウス!!」


あっという間にあばたづらのデス・イーターは「悪魔の罠」に

からめとられ、口を塞がれてしまった。


「馬鹿者!足手まといになるな!!」


マルフォイが素早く、杖を振って、あばたづらのデス・イーターを振り落とした。



「つるが馬鹿でかすぎて、私の炎では焼ききれないわよ!!」

べラトリックスがどんどん増殖する、「悪魔の罠」に必死で対抗しながら言った。


「こいつら、無数に生えてきやがる。クソッ、誰だ、俺達のジャマをしやがるのは!」


デス・イーターは次から、次へと雨あられのように襲いかかってくる

「悪魔の罠」に身動きできずに、怒りのうなり声を上げた。







今や、「悪魔の罠」は全長五メートルの大きさに成長して、あちらこちらにつるを振り回して

暴れまくっていた。









そのころ、 は煙幕と悪魔の罠の騒ぎに紛れて、白い猫に変身し、

素早い敏捷性と走力で、ハリー達のあとを全速力で追っていた。





「早く、早く!!」


目の前にハーマイオニーの脚が見えた。


「入ったら扉を閉めろ!!」


ハリーの姿がはっきりと、彼女の目に映った。

二人は物凄い勢いでいくつもの部屋を通り抜け、円形のホールに出る扉目指して走っている。




「コロポータス!!」


ハリー、ハーマイオニーが扉の内側に滑り込み、息たえだえに呪文を唱えようとした。


「ニャ〜〜!!」


その瞬間、グッドタイミングで半分ほど呪文で閉じられようとした扉の隙間に、ひゅうっと猫はジヤンプし、

ポーンとハリーの腕の中に飛び込んだ。




だ!」


ハリーは腕の中に飛び込んできた白い物体に驚愕して叫んだ。


「え?何いってるの?」

ハーマイオニーがぜいぜい息を切らしながら、こっちのほうを見ずに言った。



途端にポンという音ともくもくとした煙が、立ち昇り、ハリーの膝の上に が現れた。


「ふぅ〜あ〜きつかった!危ないとこだったね。大丈夫?」


は額の汗をぬぐい、にこにこと微笑んで言った。

「や、あなた、 だわ!!猫に変身してたのね?びっくり!!

 でもどうやってここへ?」

ハーマイオニーはあまりの驚きとショックに、口を両手で覆って叫んだ。

、まさか来てくれるなんて!!ありがとう!助かったよ!!」


「わっ!」


途端に彼女は床に膝をついた状態で、感激したハリーにがばっと思い切り抱きしめられてしまった。



「開けろ、この野郎、死にてぇのか?」

「そうだよ、開けないとこっちから開けてやるよ!」



ドンドンドンとドアを拳で叩く音が聞こえ、恐怖で三人はそのドアに釘付けになった。


「説明はあと!逃げないと!」

が二人に合図し、三人は床をけって、別のドアへと向けてダッシュした。




別のドアからどどっとデス・イーターがなだれ込んできた。



「チッ、あの方法もたいした時間稼ぎにはならなかったんだわ!」

はくやしそうに舌打ちしてうめいた。

「麻痺せよ!!」

そして素早く彼女は杖を構え、一番先に部屋に侵入してきたデス・イーターに

向けて呪文を発射した。


「エクスぺリアームズ!!」


デス・イーターが彼女の武器を吹っ飛ばそうと杖をあげた。


「妨害せよ!!」

素早くそれに気づいたハリーが杖をあげて応戦した。


「凍結せよ!!」


が左右双方からあふれでたデス・イーターに悪戦苦闘しながら叫んだ。


「エクスぺリアームズ!!」

デス・イーターの一人が体が凍りつく前に、息絶え絶えに呪文を彼女に向けて放った。

「ああっ!」

は情けない悲鳴をあげて床を吹っ飛んだ。


「捕まえたぞ!!」


デス・イーターの一人が彼女のスカートを掴んで、狂喜の叫びをあげた。


!!」

ハリー、ハーマイオニーが怒りのうなり声あげた。


だが、二人とも二人のデス・イーターを相手にしてるので助けにいけそうもない。



「どこ触ってんのよ!!」


男のデス・イーターが逃げられないよう、彼女の手首をつかもうとした。

ナイフのような怒りが彼女を一突きにし、自由がきくほうの脚で、あおむけに寝転んだまま、

男の腹に強烈な脚蹴りを食らわせた。


「ぐわっ!」


と男は叫んで、腹をかかえてその場にうずくまった。


「凍結せよ!!」


すかさず、やっとデス・イーターから離れたハーマイオニーが杖を向けて叫んだ。


男はくずおれた姿勢でその場にうずくまって、そのまま凍りついた。


ハリーは最後のデス・イーターを、「麻痺せよ」と呪文をかけ、


こちらへ全速力で走ってきた。



「大丈夫か?」


ハリーは氷の像と化した男を憎憎しげににらみつけてから、片足で蹴飛ばして、床に転がしながら言った。



「僕から絶対に離れないで。」


彼は出口の扉に向かう彼女の手首をすかさず掴んで、真剣な声でせまった。


「分かった。」


彼女は彼の綺麗な横顔にドキッとしながら素直に答えた。




近くの部屋で悲鳴があがった。



「あっちだ!」


ハリーは叫ぶと の手を握って、やみくもに駆け出した。




「ここにいるのか?」



ハリーは暗い廊下を駆け抜け、悲鳴の上がった扉に手をかけた。



「小僧!いたぞ!!」


「逃がすな!!」



廊下の向こうから、バッと四人のデス・イーターが疾走してくるのが目に入った。





「扉よ、くっつけ!」

「アロハモラ!」


三人が扉の内側に回りこんでドアを閉めようとしたとき、

デス・イーター達が強引に扉を打ち破り、侵入してきた。




「ウィンガーディアム、レヴィオーサー!!」


機転を利かせたハーマイオニーが素早く杖を振って、一番近くにあった机を浮遊させ、デス・イーターの

一人めがけて吹っ飛ばした。



ガァン、ドサリという鈍い音と共に、先頭のデス・イーターにつられて

侵入した三人は 、ハリーが続けて吹っ飛ばした机に揃ってぶちあたり、ドッドッとその場に


痛さのあまり重なって倒れた。


「やった!」


とハーマイオニー、 は冷たい、残忍な喜びに胸を奮わせた。


「危ない!」

だが、ハッと異変に気づいてハリーが叫んだときはもう遅かった。


一番後ろにいたので、机が頭をかすっただけのドロホフが、

意地汚い笑いに目を細め、女の子二人めがけて杖を振った。



はわずかにハーマイオニーの影になって立っていた。


紫の炎が二人の体を吹っ飛ばし、二人は床に重なって倒れた。






ハリーは頭が真っ白になり、次の瞬間、めちゃくちゃに杖を振るって、


思いつく限りの呪いを倒れているデス・イーターを含め、火炎放射のように次々と浴びせた。



の頭の中で轟音がし、星が踊っていた。



上にかぶさっているハーマイオニーはぴくりとも動かない。


「ハーマイオニー?」

彼女は頭をぷるぷると振って、体を彼女の下からはいだしてきた。


「ハーマイオニー!」

ハリーは狂ったように叫び、彼女のもとへ駆け寄った。

「おお、おお、動かないわ!」

は涙声で叫んだ。


「脈があるよ。大丈夫だと思う。」

怒りのあまり異常なほどさえきった頭で、ハリーはハーマイオニーの手を取って調べて言った。



「でも、あいつ、彼女に何をしたんだろう。」


ハリーは「一刻もここから出なきゃ」と呟き、ぐったりしとして動かないハーマイオニーを肩にかついだ。




、君は動けるな。どこも大丈夫だね?」


「ええ、ハーマイオニーの影に立ってから呪文があたらなかったみたいなの。」


彼と彼女は、せっぱつまった声で会話し、出口のドアを脚で蹴って開けた。








ハリー、 はふうふうあえぎながら近くのがらんどうの部屋にたどり着いた。


そこでは床に尻をつき、ロンが天井を眺め、夢遊病者のように意味もなく笑っているのと、


踝が折れて立つことが出来ないジニー、それを支え起こそうとしているルーナの姿が目に入った。


「あれぇ? !!あんたいつのまに!!」

ルーナが目を驚きのあまり、梟のように見開いて言った。

「何とかここにたどりついたの。ある情報提供者がいてね。ジニー!

 どしたの、その怪我!!」

はそう短く告げると、慌てて、今にもふらふらと状態を起こそうとしている彼女のもとへとすっ飛んでいった。


「なんでもない。ちょっとひねっただけ。」


ジニーは強がって、唇を固く結んでみせた。


「なんでもなくないよ。踝が折れたんだ。」

ルーナがその声に覆いかぶさるようにして言った。



「ロンはどうしたんだ?気でも狂ったのか?」

ハリーが床にハーマイオニーを下ろし、ルーナに恐々と尋ねた。


「錯乱呪文をかけられたみたいなんだ。おかしくなっちゃってーここまで連れて来るのが

 大変だったよ。」


ルーナは砂色の乱れた頭を振って、悲痛な表情で返答した。





「やー 。相変わらず可愛いな〜何してるんだい?こんなとこで。

 僕達、モー・クセーを見たんだぜ。分かるか?

 臭い星だよ。」



「えへへへ」とロンは力なく笑い、ふにゃふにゃと立ち上がり、

こちらへ向かってきた。


天井にはふわふわと木星や土星のモデル模型が浮いており、いくつかは欠けたり、大きくぱっくりと

二つに分かれているものがあり、ここで行われた戦闘の激しさを表していた。



「ちょっとやめてよ、ロン!!」


「えへへへ・・いいじゃん。 ・・ちょっとぐらい〜キスしてもいいだろ〜」



ジニーの側にいた、 は後ろから音も無く近づいてきたロンに抱きつかれ、


羽交い絞めにされてしまった。




「ちょっと、あんた、やめなよ!!」

すかさず、側にいたルーナがカチンときてロンに飛びかかり、 から引き離そうとした。

「うるさいな!あっちいってろ!ルーニー・ラブグッド!」


ロンは怒鳴るとすごい力で、ルーナを突き飛ばした。


「お前、何やってるんだ!離せ、離せ!!」

彼女の頬や髪に、べたべたとキスしてまわる彼にハリーも怒りのあまり、山猫のように飛びかかって引き離そうとした。


「離せ、ハリー。いいじゃん。ちょっとキスするぐらい〜あ〜美味しかった。

 彼女の頬ってすごく美味しいんだぜ。君はしてみたことあるかい?えへへへ・・・」


バシッ!


凄い音がして、ロンが から離れた。


ハリーが彼の肩を後ろから掴んで、こっちを向かせ、思いっきり横っ面を張り飛ばしたのだ。



「ふざけるな!早く目を覚ませ!!」


彼は積もり積もった怒りを爆発させ、彼の頬を拳で数回たてつづけに殴りまくった。




は呆然として床に座り込んでいた。





「早く、立って!」


突き飛ばされて床から立ち上がったルーナが、ぐいと彼女の肩をつかんでたたせた。


ハリーはぶすっとした顔で、ロンの肩を掴み、 はジニーを抱え、

ルーナはハーマイオニーを抱えて急いで、出口のドアへと向かい始めた。





「いたぞ!!」


途端に右の扉が開き、べラトリックスが狂喜の叫びをあげて躍り出た。


左の扉からもぞろぞろとデス・イーターが侵入し、彼らの行く手を阻んだ。



「麻痺せよ!!」


、ハリー、ルーナがロン、ハーマイオニーを脇に放り投げ、べラトリックス、その他の三人の

デス・イーターに向かって発射した。
 

呪文は三方向に分散した。


「妨害せよ!!」


「凍結せよ!!」


、べラトリックスの呪文が空中で激しくぶつかり合って散った。



そのまま、 、ハリー、ルーナは次次と呪文を唱えながら、出口に向かって疾走した。



「麻痺ー」

「風よ来たれ!!」

、ハリーが開け放たれた天窓から流れ込んだ、風を利用し空気銃のように

杖から発射させた。


超速の二つの呪文は、追って来た四人のデス・イーターの輪の中央に命中し、

デス・イーターらは慌てて、身をかわした。


体勢を立て直したべラトリックスは、一瞬の隙をついて、「石の呪文」をかけようとしたルーナめがけて

呪文を発射した。




二人より少し遅れて走っていた、ルーナは「あぁぁぁ!」

と悲鳴をあげて、宙を飛び、地面に倒れて動かなくなった。




部屋から部屋へと飛ぶように走る二人を、五人のデス・イーターが

すごい勢いで追ってくる。



「ああっ!!」


開け放たれた扉をぶっとばし、ニ、三歩駆け出したとき、


ハリー、 は床が消えるのを感じた。


二人はそのまま、もんどりうって、ごろごろと石の階段を転げ落ちた。



一番下まで転げ落ちた二人が、顔を痛さにしかめながら上げると、


ぴたりと二人の頭に杖が突きつけられた。


「お遊びはおしまいだ。ポッター、 。」


気取った声が頭上でこだまし、一人のデス・イーターが覆面を脱いだ。


「ルシウス・マルフォイ!」

彼女は苦しい息の下から憎憎しげに、彼をにらみつけながら言った。

「どうもー 君。名前を覚えててくれたとはな。さあ、

 立て。おとなしくすればポッター君にも手をださん。

 立つんだ。」


プラチナ・ブロンドがさらりとゆらめき、彼女は次の瞬間、肩をぐいと

つかまれ、ぐいと顎に手をかけられ、無理やり、マルフォイのほうへ向かせられた。

「確かに 君だ。久しぶりだな。女伯は元気かな?」

彼は冷たい骨の芯まで凍らせるような声で聞いた。

「まだ、伯母様をつけねらってるのね。このーこの下劣な悪党が!」

は怒りに我を忘れ、マルフォイの横っ面を張り飛ばした。

「いたたたっ!!」

彼女は悲鳴をあげた。


「おとなしくしろといったはずだ。さもないと手荒な真似をせねばならなくなるぞ!」

マルフォイはいきなり彼女の後ろ髪を掴み、それから、素早く彼女の上腕部をぎりぎりと後ろ手で

締め上げはじめた。


「彼女を放せ!」


ハリーがマルフォイにつかみかかった。


「黙れ、小僧!」

マルフォイはわめくと、ポンと彼を石の段へと突き飛ばした。


彼は石の壁にどしんと叩きつけられた。



「ハリー!!」

は悲鳴をあげた。

「君を縛らなくてはならないようだ。おっと!下手に動くと首が飛ぶぞ。」


マルフォイは抵抗しようとした彼女の顎に杖を突きつけ、囁くような声で言った。


あっというまにマルフォイの杖から飛び出た一本の縄が、彼女の手首に巻きつき縛り上げた。


「さあ、いい子だ。ポッター。おとなしく予言を渡せ。渡さねば彼女が

 どうなっても知らないぞ。」


マルフォイは、彼女の首に手を回し、杖を彼女の喉元へと突きつけた。


「私を殺すんだったら、殺しなさいよ。そしたら伯母様があんたを殺すわよ!」

は喚いた。


デス・イーター達が大笑いした。

「全く馬鹿な女だ!ミナが助けにくるだと。ほ〜ここにかい。

 助けはこないよ。馬鹿女!」

べラトリックスが勝ち誇ったように叫んだ。


「十、数える間に渡せ。じゃないとこの美しい首が吹っ飛ぶぞ。」

マルフォイは愛しそうにその首をなで、彼に向かって警告した。


「私は本気だぞ。この子を吹っ飛ばすのは実におしいがな。

 ミナ・ブラドには予言を渡さなかったポッターが彼女を

 見殺しにしたとでも言っておこう。そのため、デス・イーターに殺されたとな。」


なんて卑怯な奴!! は歯軋りした。


「わ、分かった!!や、やめろ、予言は渡す。その代わり、彼女をこっちに渡せ!」

数秒間、ハリーは頭の中が真っ白になり、道は一つと震える手で彼に予言を渡すことを決断した。



「いいだろう、返してやる。」

ルシウス・マルフォイの唇がめくりあがり、しっかりと彼女の首を抑えたまま、

空いているほうの手を伸ばした。




ルシウスが徹底的な悪玉になりきってます。ルー先生とシリウスは彼女を助けに間に合うのか?






 
 

 


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