純白のウェディングドレスをまとい、ティアラやパールやリボンやら花などに
うずもれたフラーは燦然と輝いて見えた。
新郎のビルも花嫁に負けずとてもかっこよく見えたし、結婚式は極めて順調に進行するかと思われた。
「奴らよ、逃げて!」
だが、夜まで続いた披露宴の真っ最中にオオヤマネコの守護霊が式場に現れた後、フェリシティー伯母が大声で叫び、
隠し持っていた煙球を投げつけて侵入者を錯乱させるまでの間だけだった。
ゲーゲー咳き込みながら目と鼻をこする侵入者のデスイーター、急いでを逃がす
ルーピンとトンクス、ハーマイオニーの開いている腕をつかんだロン、そして、
の腕をしっかりとつかんだハリー。
パニックになって逃げ惑うその他の招待客達に紛れて、四人はいっせいに姿くらましをして消えた。
今、四人はマグルの世界のトテナム・コート通りを急ぎ足で歩いていた。
は生まれてこのかたこんな場所にきたことがなかった。
ハーマイオニーや自分を冷やかすパブ帰りの無礼な酔客、まだ礼服姿のままのロンを見て
耳障りな笑い声を立てる若い女性達、そして、極めつけは小さな二十四時間営業の
みすぼらしいカフェ。
どこか腰を落ち着ける場所を探していたハーマイオニーのすすめで、しぶしぶこの店に入ったのだが何もかもが彼女を失望させた。
赤や白の無機質なプラスチックのテーブルには油の染みがついていたし、ハーマイオニーが
注文した灰色のカプチーノは見るからにまずそうで、一口飲んだロンは何ともいえない顔でカップをおしやった。
はだんだんとルーマニアの古城やロンドン郊外の立派なお屋敷が懐かしくなってきた。
あそこでは泡立てた生クリームをのせたウィンナコーヒーがいつでも飲めたし、テーブルや銀器は
一点の曇りのないように磨かれていた。
「あのさあ、ハーマイオニー。ここから漏れ鍋に行くって手もあるぜ。あれはチャリング・クロスの近くに・・」
「ロン、ヴォルデモートが魔法省を乗っ取ったのよ。危険すぎるわ」
二人の話を透明マントにくるまって聞きながらハリーとは自分達のポリジュース
薬の効き目が消え、両手両足や髪の色がもとに戻りつつあるのを感じていた。
「どこか人目につかないような場所を見つけて姿くらまししましょう。そして、地方の方に逃れるの。
そこからなら騎士団に伝言を送れるわ」
ハーマイオニーはカプチーノにちょっとだけ口をつけて飲み干すと言った。
「じゃ、君、喋る守護霊とか出来るんだ!それはそうと、騎士団のメンバー、奴らに捕まっちゃいないかな?
奴ら、けっこうあの煙で錯乱してたようだったから捕まえる余裕があったかどうか疑問だけど」
ロンは夫が騎士団に所属しているの方をちらちらと眺めやりながら言った。