ハリー、は不穏な動きに気づいて杖をさっと取り出した。
ロンは一瞬遅れて事態に気づき、ビーズバッグに手を伸ばそうとした
ハーマイオニーに飛びついて覆いかぶさった。
隣のボックス席に座った労働者風の男二人が、今までロンの頭が
あったあたりに呪文を発射したのだ。
ハリーは透明マントの影から「麻痺せよ!」と叫んだ。
呪文は大柄なブロンドのデスイーターをひっくり返らせ、もう一人は
突然ふってわいた呪文に焦り、またロンを狙って呪文を発射した。
黒く光る縄が彼目掛けて噴出し、彼は次の瞬間、ぐるぐる巻きにされていた。
怒ったとハリーが失神の呪文を放ったが、呪文はそれて
近くのガラス張りのドアにあたって跳ね返り、逃げ出そうと駆け出したウェイトレス
に直撃した。
「エクスパルソ!爆破!」
もう一人のデスイーターが大声で呪文を唱えるとハリーとの目の前の
テーブルが音とを立てて吹き飛んだ。
その衝撃で二人はしたたか壁に打ち付けられ、杖が吹っ飛んでいき
透明マントが剥がれ落ちてしまった。
「ペトリフィカス・トタルス、石になれ!」
ハーマイオニーが身を乗り出して放った呪文をからくも避けたデスイーターだったが、
今度はカフェに乗り込んできたフェリシティー伯母に後ろからヴァイオリンケースで
頭や肩をバシッ、バシッと叩かれてつんのめった。
「痛え、このアマ〜!」
頭をかかえて喚きながら振り返ろうとしたデスイーターは、踊るようにヴァイオリンケースを振り回す彼女が
繰り出した 強烈な打撃を食らってドサリと崩れ落ちた。
「、ハリー君、大丈夫?」
フェリシティーは、今しがたデスイーターのみぞおちを殴打したヴァイオリンケースを抱えて
ささっと二人が倒れているところに駆け寄った。
「大丈夫です。助けて頂いてありがとうございました」
ハリーは倒れた場所から何とか起き上がりながら杖を拾うと言った。
「伯母さん!」
はここで張り詰めた神経が緩んだのか腕を伸ばすと、必死に駆けつけてくれた
彼女に抱きついて無事を喜んだ。
「ハーマイオニー、あなたは?」
「大丈夫です。ロンも縛られただけで怪我はないと思います」
「そう。間に合ってよかったわ」
フェリシティーは次にぐるぐる巻きにされたロンの縄を魔法で解こうとしている
彼女に声をかけて様態を確かめていた。
「こっちの奴は簡単に見破れたはずなのに。油断してたよ」
「こいつはダンブルドアが死んだ夜にいたの」
フェリシティーがよくみようとうつぶせに倒れていたデスイーターを足で
ひっくり返すのを眺めながらハリーとは言った。
「アントニン・ドロホフ。厄介な脱獄犯よ。脱獄したのはこれで二度目」
フェリシティーはまたかといいたげに呟いた。
「一番初めにハリーが倒したのはソーフィン・ロウルだ」
ハーマイオニーに縄を解いてもらったロンが言った。
「だけど、こいつら、何で私達についてきたの?」
が震えながら額にかかる乱れたほつれ毛をかきあげながら呻いた。
「私にもわからないわ。たぶん、彼らしか知らない闇の魔術を使っての探索やら何やらで
あなた達を見つけたのかもね」
フェリシティー伯母は念のため、杖を取り出すと気絶しているアントニン・ドロホフ目掛けて石の呪文をかけ、
こっそり起き上がって反撃してこないようにした。