双方共にやる気満々で突撃していったが、水兵達はものの数分もしないうちに

リョウマ達に高い樹上に放り投げられたり、顔面や腹に強烈なパンチやキックを食らって

こてんぱんにやっつけられていた。

砂爆盗はこの隙にいそいそと太陽のモニュメントまで走ったが、

背後から何者かに狙撃されてうずくまった。

「貴様を地獄に送ってやる!」

黒騎士は抜かりなくブルライアットの引き金に手をかけたまま唸った。

「しゃらくせえ!てめえをこの首切り刀で切り刻んでやらあ!」

腹を押さえて立ち上がった砂爆盗は捨て台詞をはき、ウォーッと

巨大刀を振り上げて向かってきた。

だが、黒騎士の腕が数段上であり、巨大な首切り刀も

たちまち取り押さえられて弾き飛ばされ、ブルライアットで肩へ二太刀も浴びせられてしまう。

焦った砂爆盗はずた袋をどんと叩いて、大量の砂の爆風を吹きかけようとしたが、

「氷の慟哭!!」とどこからともなくが放った氷のアースを食らって

逆に吹っ飛ばされてしまう。

「む、伏兵か!」

砂爆盗は片手を前に突き出した女戦士を見止めて叫んだ。

前からはブルライアットを突き出した黒騎士が、後ろからは鴛鴦斧を構えたがせまった。

窮地に立たされた砂爆盗は、何かこの場を切り抜けるものはないかと目をこらし、

くまのぬいぐるみを拾いにやってきた幼子に目をつけた。


「てめえら、動くな!こいつがどうなってもいいのか?」

どこまでも卑怯な砂爆盗は、何も知らない幼子の首に刀を突きつけて脅した。

「何てことを!」

はその手口に怒り、黒騎士もブルライアットを構えたまま留まった。

「やめろ!」

やっと水兵達を片付けてやってきたリョウマ達は悲壮な声で叫んだ。

「そこの五人も一緒だ。動くんじゃねえ!!」

砂爆盗は幼子をしっかりと羽交い絞めにしたまま三者を睨みつけた。

「あいも変わらず人質はお前の十八番だな」

黒騎士は鼻で笑うと皮肉っぽく言った。

「銀河の守護戦士、剣を捨てろ!お前もだ、小娘!その斧を下げな!」

「くっ!」

はくやしそうに唇をかみ締め、鴛鴦斧をがしゃりと投げ捨てた。

「それでいいんだぜ、聞き分けのいいお嬢ちゃんよ!!」

砂爆盗はにやりとほくそえむと、幼子を小脇に抱えたまま、どんと

ずた袋を叩いて大量の砂の爆風をに吹きかけた。


彼女は「キャーッ!」と悲鳴を上げ、今度はかなり遠くに吹っ飛ばされて

またまた植え込みに突っ込んで姿が見えなくなった。


「ブルブラック、聞こえねえのか?てめえも捨てろと言ったはずだぜ」

「人質だと?そんなものいらぬ心配だ」

彼はが吹っ飛ばされた植え込みをちらりと見た後、

盗人に向けて冷たく言い放った。

「今の私の頭にはお前らを倒すことしかない」

「て、てめえ・・本当にこいつがどうなってもいいのか・・」

「そのようなこと、私のあずかり知らぬことだ・・」

砂爆盗はさっきよりもっと首切り刀を幼子の首に突きつけたが、今の復讐に燃える彼には

一向に効き目がないらしい。

ブルライアットを突き出してせまる黒騎士に、レンガの階段横で成り行きを

見守っていたゴウキやサヤは金切り声を上げて止めるように叫んだ。

両者との距離が着実に縮まった時、リョウマは体を張って黒騎士を止めにいった。

二人は激しく言い争いながら肩で押し合い、隙ありと砂爆盗に大量の砂の爆風を吹きかけられてしまった。

「馬鹿め、仲間割れをしている暇があるのか!?」

砂爆盗はすっ転んだ二人を見て高笑いをした。

ツツジの咲き乱れる茂みを、抜き足差し足ではっていたハヤテは今だとばかりに

牙を放った。

緑色の閃光が斜め後ろから砂爆盗の頭上を直撃し、次の瞬間、ハヤテの素早い

飛び蹴りが炸裂した。

すたっと人質の幼子のもとに降り立ったハヤテは、彼女を抱えると

盗人が大の字に伸びている間に連れ去った。


「この野郎!」

怒った砂爆盗はずた袋をどんと叩いて、勢ぞろいした四人の戦士達に大量の爆風を吹きかけようとしたが、

その爆風は木々の間を曲がりくねってやってきた氷のアースの前に砕け散った。

「てめえ、再起しやがったのか!?」

ぜいぜい息を弾ませてやってきたに砂爆盗は腹が立って叫んだ。

「待て、お前を倒すのはこの私だ・・」

黒騎士も腹を押さえながら立ち上がった。

「うるせえ、このくたばり損ないが!!」

だが、先ほどの砂の爆風の衝撃で、何度もタイルの上に叩きつけられた

黒騎士は、首切り刀を手に突進してきた砂爆盗の攻撃をもろに食らって倒れてしまう。

まだタイルの上にむなしく転がっていたリョウマは、ふとそこにブルライアットと鴛鴦斧が

転がっているのを見つけた。

「黒騎士、!!」

リョウマは二つの武器をつかむと、それぞれの持ち主目掛けて投げつけた。

黒騎士は首切り刀の二太刀を地面を転がって避け、も大きくジャンプして

リョウマからの武器を見事にキャッチした。

黒騎士は高く飛び上がると、そこから黒い長剣をぶんと振り下ろした。

途端に、黒の衝撃が砂爆盗の体を駆け抜け、彼は膝をついてうずくまった。


重傷を負わされた砂爆盗はそれでも太陽のモニュメント目掛けて走っていき、

ふうふう言いながらずた袋をひきずってモニュメント目掛けて投げつけた。

しかし、そこには頼みの綱の銀河の光はなく、彼は絶望的な心境に陥った。

そして、ブルライアットの刀傷でずたぼろだった彼は、次の瞬間、背後から音もなしに近づいてきた彼女に氷柱の剣で

ざっくりと切りつけられて倒れた。

「お、女・・貴様・・」

「お前にはこの死に方が最もふさわしい」

は振り返った彼にもう一太刀浴びせると、氷柱の剣を斜めに構えたまま、

憎しみをこめた目つきで言い放った。

「うああ〜っ!!」

砂爆盗の断末魔が上がった。

リョウマ達は目を見張り、思わず後ろに飛びさすった。

黒の衝撃と氷柱の剣で切り裂かれた大きな体は、あっという間に血液まで凍らされてしまい、

彼はあとかたもなく粉々に砕けて、この世から姿を消していた。






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