長いこと会いに来てくれないし連絡もない。
女の子を誘うことはイェンスにとって決して難しいことではなかった。
むしろ先ほどから女の子からの連絡は山のように入っている。
その度に断る自分がいる。
今もずっと待っているのは女の子からの連絡ではなくて
イェンスがずっと待っているのは
頭からずっと離れない
心の深いところをぎゅっと掴む
軍服の男

「・・・キア・・・」

切実に求めるように,掠れた声が空に紛れてく。














イェンス葛藤の日













そんなイェンスの頭の中にはある考えが巡っていた。
その度に何度も何度も受話器をとってはあるメモの走り書きを見る。
キアの連絡先のメモ。

受話器を耳にあて,電話を回そうと思うのだが
どうしても何処か踏み切れない。
男としてのプライドか,はたまたまだ切り通すシラからか,

「…あー…やっぱ俺には出来ねぇよ…。」
息を呑み,何度も決心をつけたと思っても
震える指がいいように動いてくれなくて・・・
もどかしい気持ちは空回り,ため息はもう数え切れない。

「キアが来てくれないから…全部キアが悪いんだからな!」
大声で叫んでもそれは空へ散るように虚しく響き渡る。

それでもやっぱり会いに来て欲しいのだ。
響き渡った自分の声が何よりそれを物語っている…

もう一度ふるふると何かを振り切るように首を振り
イェンスはまた受話器をとる。
おそるおそる指を落とし,連絡先を何度も確認すると
イェンスは意を決したようにメモを握り締め電話を回した。
もう絶対に受話器を離さない!

逸る気持ちに目を瞑りながらぎゅっと受話器を握り締め
イェンスは呼び出しのコールを聞いていた。











「やっと連絡したな,イェンス」
イェンスがこんなに悩みに悩んで連絡をしたというのに
キアは相変わらずの余裕で答えてくる。
「キア!俺は…」
なんだかその余裕が許せなくてイェンスが噛み付こうとすると
「ずっと待ってたんだぜ,お前からの連絡。」
急に優しくなったキアの声に少し口ごもる。
「誘うのはいつも俺ばっかだからよ,ちょっとヘコんでたんだぜ。」

その一言に照れて,恥ずかしくなって,
「だってそれはキアが!!」
イェンスはついつい荒い口調になってしまう。
それはイェンスの長年の性,素直になることも簡単なことではないようで。

自分と葛藤するイェンスが手に取るようにわかったキアも
「ベッドの中で誘うのは上手になったけどな。」
と意地悪を言ってやる,悩むイェンスも可愛いがいじめすぎるのはちょっと可哀想だ。
するとすぐに元のイェンスに戻り,噛み付いてきた。
「俺は…そんなんじゃねぇっ!!誘ってなんか!!」
しかし今日はかみつくだけじゃないようで…
イェンスは最後にでも,と続け小さい声でぼそぼそと何かをキアに伝えた。
もちろんキアは聞き取っていたが満足できないとでもいうように

「聞こえねぇなぁ。」
とくすくす笑った。受話器の向こうのイェンスを想うと
なんだか可愛くて仕方ない。

「…っ…たまには会いに来いってのっ!」
恥ずかしさに思わず電話を切ったイェンス。
そんな彼には柔らかい笑みが浮かんでいた。

















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久々にゲームを回想でなくプレイしまして
イェンスの可愛さに改めてメロメロになってしまったので書いた作品です。
意地っ張りが自分から男を誘うサマって私にはかなり萌えます。
えぇ,もちろん自分の作品でなんか萌えませんがね(ワラ
意地っ張りが誘うからこそ意味があり
ここぞという時にだけ甘えるからかわゆいのです(ー`*)



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