へへっ
笑みが止まらない。
ずっとずっと目標だったことが
自分で出来るような一人前に
なったんだから……
妹に,弟にいい服が買ってやれる!
本当に……嬉しいんだ俺。

















一緒にお買いもの
















「だ…からさ,買い物付き合ってくれよ!!」
キアはファッションセンスが良さそうだから……
なんてまた俺はそんな口実を作る。
素直に甘えればいいのにって思うけど
なかなか出来そうもないからしょうがない。

服も俺と違っていいもの見つけてくれそうだから
だから一緒に買い物に行くんだ。
キアと2人で出かけたいからなんて,絶対に言わない。
そんなことは俺の胸の中にだけしまっておけばいいんだから。
















「でお前の弟と妹の服選びに俺を呼んだわけだ。」
「なんだよ!いいだろ!俺…よくわかんねーし。」
吠えるように言うイェンスにつまらなそうな声でキアはそう答えた。
お前が素直にキアに会いたい!とか言ってくれればなぁ,なんて
わざとらしくしょんぼりしてみせるキア。
「そ……。そう,とか言えばいいのかよ!?」
イェンスはやっぱり素直になれなくてぶすっとした態度を見せてしまう。
「まぁそれがお前だし別に嫌いじゃないぜ。」
くすくすと笑みを漏らすとキアはくしゃくしゃっとそんなイェンスの髪を撫でた。
「からかうな!」











「なぁなぁ弟の服!こんなんとかどう……かな?」
「あぁ,お前なかなかセンスいいと思うぜ。」
たくさんの子供服の中から取り出したのは薄めの緑色に綺麗な白いラインの入った服。
安い服ばかり選んでいたためかデザインで服を選ぶことに不慣れなイェンスが
不安げに自分より一回り小さな服をとって見せると
キアは優しい目でその服を持つ少年に微笑んだ。

弟の服は案外さらっと決まったのだが,問題は妹の服だった。
「これとか……でもなぁ……。」
イェンスは女の子用の子供服を取り出して眺めてはまた戻しを繰り返していた。
どうにも気に入ったものを見つけることが出来なくて頭を抱える。
やはり同性として男の子の服を選ぶのはそんなに難しいことではない。
加えて趣味が似ていることもあり,そんなに悩むことではなかったのだが
女の子の服となると話は別だ。

一方のキアはそんなお兄ちゃんらしいイェンスを黙って見つめていたが,
どうにも悩みこんでいるようなのでしばらくして口を開いた。

「お前女の子に服ぐらいやったことあんだろ?その割にはあんまりセンスいいとは言えねぇな。」
「……。」
それは確かなこと。
だから何も言えなくて言葉に詰まってしまったり。

「あーっ!!男の俺に女の好みなんてわかるかよーっ!」
そんな叫びが空を舞ったりもしたが
キアの助言から妹にも弟とお揃いの橙色が可愛い白いラインのシャツに決めた。
ワンポイントの猫が愛らしい。









「キア!今日はありがとう!」
少し大きな茶の袋を抱えてイェンスが無邪気に微笑み
その袋の中を覗いて頬を緩ませる。
弟妹の喜ぶ顔を想像して素直に喜んでいるのだろう。

「嬉しそうにしてるのは俺にも本望だ。だが……」
キアはにやっと笑ったかと思うとすっとその微笑んだままのあごをもちあげ
その唇に……

「んぐ……っ……あ……ふ……ぅ」
最初から深く甘いキスに捕らわれ息も出来ない。
やっと開放されたかと思えば角度を変えて何度も
何度も……

「……んぅっ。礼くらいしてくれるんだろう?もちろんこれはほんのお遊び程度の。」
「……っ!」
恥ずかしいのか思わずがばっと顔全体を手で覆ってしまったのだが
その中からそっと目だけを泳がせるように覗かせて
「する……それくらいの礼は俺だってするつもりだったよ。」
と聞こえるような聞こえないようなかすかな声でそう一言漏らすイェンス。
それからまたいつものようにぷいっと顔を背けさっさと行く!と
キアの手をとり歩き出す。

「キアも早く歩けよ!……早くしてよ……っ。待てない!」
うずく身体の熱がイェンスをせかす。
久々で……何だかドキドキする。

そしていつものベッドの上に味わうようにお互いキスをむさぼりながら
倒れこんで行く。
そして濡れた声は部屋中をふるわせた……















ようやく帰途に着いたイェンスは早速弟,妹にその茶の紙袋から
プレゼントを取り出す。
緑色と橙色を妹,弟にそれぞれ手渡すと
2人とも顔を見合わせて綺麗な服に歓喜の声をあげた。
弟は早速母親に見せに行き,妹はその場で自分に合わせ鏡と睨めっこ。
しかしその顔は晴れやかだ。

「……ん?」
間違いなく2枚出したというのにその袋はまだ何か入っているように重かった。
ふわふわして……やっぱり何かおかしい。

ごそごそ

手を入れるとやはり何かつかめるものに触れる。
身に覚えのないそれを掴み出すとそれは……

「え……あいつらと同じ服……?」
弟や妹と同じ,また色違いの黒いシャツ。
もしかして……と思うと同時に何か走り書きのようなものが入っていることに気がついた。

「これってキアの……字。」
ぼそっとイェンスはつい独り言を呟いてしまう。
そこにあったメモには

『忘れ物だぜ,こんな時くらいケチるなよイェンス。あ,金は俺もちだから心配すんな』

とちょっと汚い字で書かれていた。

そのメモを見ただけなのに,その黒い服を貰っただけなのに
なんだか胸がいっぱいになってぎゅっと締め付けられるようだった。
でも暖かくて柔らかい気持ちが心の中に渦巻いた。
嫌な気持ちなんかじゃなくてむしろふわふわした不思議な気持ち。

「キア……。」
イェンスの目には緩んだ頬の微笑みと
更に紅みに染まった柔らかな唇と
こぼれそうな大きな瞳にはうっすらと涙も溜まっていた。

「い……つの間にこんなこと……したんだよもうキアはぁ。」
そんな憎まれ口の間もずっと幸せなイェンスだった。

「キアに電話……しよう!ありがとうって。」
また借りが出来ちゃったなぁ,へへっ。




















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何故かまた寝る前に思いついたネタ。
えちーはいつものように長くなりそうなのでカットしました。
それにえちー描写は難しいです(笑)リアルにならない…。
あぁまたまた久々な気がする…いつもそう言ってる気もする。
今回はまだプロット立てたしいいか…3回に分けて書いたのなんて初めてだわ。
それと微妙に甘えさせてみました。
怒ってばっかなのも…つぅか噛み付いてばっかも可愛いけど
ギャップがあるとちょっといいなぁ…って思い切り趣味だし…。

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