「どうかしたのか?」
「え……いやなんでもないって。」
最近の朱緋真は何かこそこそしているように見える。
今もそっと後ろに何かを隠し苦笑いを浮かべながら
視線を泳がせて。

「ほ…本当に何でもないってば!それより幻術の修行しないと俺!」
つい疑うような目をしてしまった俺に朱緋真もとても焦っていたようだ。
でも真相を教えてくれるつもりはないみたい。
それなら……














大好きな人のことだから













朱緋真のことならどんな小さなことでも気になってしまう。
本当にこんなやりとりだけでも不安になってしまう自分がここには確かにいるのだ。
俺はそれとなく注意して朱緋真の様子の観察を始めた。
観察といっても一緒に住んでいるし,そんなにたいしたことではないのだけれど…



「今日俺,ちょっと師匠のところに行ってくるな。頼まれごとしちゃってさー…。」
自分でやればいいことなのにさ…などとぶつぶつ文句を垂れながら朱緋真は俺にそう告げた。
苦笑する俺を横目に見て笑うなよーと少しだけ頬を膨らます朱緋真。
相変わらずの可愛らしい反応にまた思わず小さな笑みをこぼしてしまう。
「笑うなってば!」
このままでは堂堂巡りになりそうなので俺はそっと朱緋真の背中を押した。
「そろそろ遅れるんじゃないのか?彰欄にまた怒られるぞ。」
「わーっ!やばい!行ってくるな!」
朱緋真は下駄をカタカタ大きく鳴らしながら山のほうへ向かって走り出す。



「……ん?」
部屋に戻ってしばらくしてふと俺は朱緋真の机の上に何か見慣れないものを見つけた。
それは小さな帳面でこれは……

「あの時隠してた帳面…だよな。」
必死に隠そう隠そうとしていたあの朱緋真の様子が克明に蘇える。
どんなことが書いてあるんだろうか……
「俺に隠すほどの内容って…なんなんだろう。」

いくら心を許している仲でもやっぱりそこは踏み入ってはいけないところだと
俺もやっぱり躊躇してしまった。
恥ずかしいというのもあるし,知られたくないことというのもあるだろう。
「やっぱり勝手に覗くのはまずいよなぁ……はぁ。」
結局迷いに迷ってあげく答えも出ず俺はずっとうなりをあげていた。
「あー……くそっ!」





「青樺……?」
あまりに集中しすぎていたのか何時の間にやら朱緋真が帰ってきたことにも気づかなかったみたいだ。
手元にはあの帳面…。
「あ…えっと……。」
とっさのことに上手い言い訳も思い浮かばず俺もその場に固まってしまった。

「……」
お互いに何と口にしていいかもわからず黙り込んでしまって
気まずい空気が流れる。
「……」

「それ…俺の日記みたいなもの…なんだけど。」
結局先に沈黙を破ったのは朱緋真の方だった。

「あ…そう…なんだ。なんていうか…あの時俺にこれ隠してた…だろ。それで…」
そんな俺の言葉を聞いてはっとした顔をした朱緋真に
俺も慌てて取り繕う。
「ただちょっと…朱緋真のことだから気になって…でも見てないから!」
どう思われるかが心配でうつむいてしまった俺がそっと盗み見すると
驚いたような表情で俺を見ている朱緋真と目が合った。

「あ……」
小さく声を漏らすと照れたような恥ずかしそうな朱緋真の表情が映る。
そしてその帳面の内容について少しずつ話し始めた。
「実は…青樺と同じ勉強してみたいって。ううん,青樺と同じこと知りたいって…思った。」
はにかんだ笑顔で話す朱緋真だが,俺は全く話が読めない。
「それとこれと…どういう関係があるんだ?」
「…とりあえずそれ,読んでみろよ。」
相変わらず赤らめた頬で照れたような顔をしながら朱緋真は俺に言った。
いわれるがままに俺もその帳面をそっと開いた。

『やさいのそだてかた

みずとお日さまのひかりがたいせつ
ざんぱんなどのひりょうがあるとなおいい。
……
………』





「これって……」
他にも俺が勉強していることと同じようなことがいくつかその帳面には記されていた。
もちろんそれだけ勉強している俺ほど詳しいわけではないけれど
朱緋真なりに一生懸命調べたのであろう。

「その…俺も青樺と同じこと知りたいって単純にそう思ったんだ。」
それで…とその帳面を指差した。
「本当に単純なことだけど…好きな人と同じ事知りたいって。思ったんだ…よ。」
そんな可愛らしい朱緋真の言葉を聞いて俺の顔は思わずニヤけてしまった。

考えていることは
同じだったんだ。

「俺も…朱緋真のこともっと知りたくて帳面…見ようとしちまったんだ。」
「青樺……」

どちらからともなく俺たちはそっとお互いを抱きしめた。
シンプルなことだけど
好きな人のことを知りたいって単純なことだけど
そんなことが一番嬉しい。





―――どんなことより一番に。
















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6000hitプレゼントはみずきさまへ。
青樺×朱緋真のラブラブ同居生活でした。果たしてクリアできているんでしょうか?
私のできるだけのラブラブ路線を目指して書きました。
それにしては糖分控えめな感じもするのですが…。
気に入っていただけたら幸いでございます。
拙いものですがもらっていただけると嬉しいです。

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