肩を並べて歩けるようになりたい。
旺珂は今も上を目指してどんどん進んでいくから
俺も遅れないようについていきたい。
そして少しでも・・・










追いつきたくて。。









俺は旺珂を追いかけて西域まで来た時から覚悟を決めていた。
だから,今みたいな夜中でも俺は必死に剣を振っている。
おいていかれるわけにはいかない。
そんな焦燥感がまた俺の心を煽っていた。
ひたすら剣を振った,少しでも強くなるために。
強くならなくては,旺珂においていかれてしまうから・・・




そんなことを考えて無我夢中で剣を振り回していたのがいけなかったのだろう。
俺は振り上げざまに頬を少しだけ切ってしまった。
「痛っ〜…。」
鮮明な赤い血がたらたらととめどなく流れてきた。
手で擦ると,手にも掠れたような跡をつけた。
でもこんなことでくじけているわけにはいかない。
立ち上がってまた剣を振ろうとすると,近くに人影が見えた。
剣を構え,警戒していると見覚えのある姿が・・・
「旺珂…ど…どうしたんだよこんな夜中に。」
俺はとっさに頬の切り傷を抑えた。
こんなの見せたくない,俺は強くならなくちゃいけないのに・・・
でもやっぱり見抜かれてしまうんだ,旺珂には。
「青樺,その頬の血はどうした?」
手で隠していてもその下から血はどんどん流れ出す。
「・・・俺,少しでも早く追いつきたくて剣振ってたんだ…
でも夢中になりすぎて肌…切っちゃって。」


旺珂が俺の手の上に手を重ねてきた。
「青樺,焦るな。」
短い言葉だったけど,なんだか凄く心に響いた。
俺が黙っていると今度は傷口にやわらかく触れて
「強引に追いつこうなんて考えなくてもいい,ゆっくりでも…俺はお前を見捨てたりしない。」
そんなことを言った。周りが静かな分,旺珂の声ははっきり大きく響いた。
「でも・・・」






すると今度は旺珂は俺の手をとって剣を握らせた。
そして立ち上がらせると俺に剣を振ってみろと言う。
言われるままに振り下ろすと早速渇が飛んできた。
「少しでも強くなりたいのであれば,俺の言うことをきちんと聞いて稽古をしろ。」
そんな風に言ってまた構えが甘いだの,隙だらけだのいろいろと
キツイ言葉を浴びせられた。
そして俺はまた少しずつ少しずつ稽古にのめり込んでいった。
「やはりお前は俺の大切な男だ・・・」

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