タイトル『120パーセント!』















「う〜ん……なんだか気が乗らないからパス」

くっついては離れくっついては離れ
そんなことを繰り返して意味なんかあるのだろうか、
つい昨日まで好きあっていたと思っていた2人が
翌日になって当たり前のように
『嫌いになったから別れた』
なんてポロポロ涙をこぼして泣き腫らす。

そんな周りを見ていたら当たり前のように
変わらないものなんてないのだろうと思えた。
そのときに熱くなっても冷めてしまうものならいらない、
後で悲しい想いなんてするくらいなら
軽い気持ちで、楽に付き合えばいい。
1人の人を失って喪失感に苛まれるくらいなら
たくさんの人に愛をもらえばいい。

そうすれば、寂しくない。泣くこともない。





そう思っていたのに……














「そう、それじゃあ仕方ないね」

どうしちゃったんだろう……。
特別用事があるわけでもなかったけれど
そんな男の子の誘いに応える気にはなれなかった。
考えてしまうのはたった1人のことばかり。
否定してもかき消そうとしても彼の笑顔と言葉が脳裏から離れてくれない。



「僕と付き合って欲しいな」
「いいけど、知ってるでしょう?私、お付き合いする人を絞る気はないって」
「構わないよ、でも寂しくないの?」
「寂しくなんかないわ、付き合ってる男の子がいっぱい声かけてくれるもの」
「そう、それじゃあ僕はその分を少しずつ、埋めていきたいな」



そうしたら最後には僕だけでいっぱいになるよね、と
彼は悪びれもなく笑う。
そんなのは迷惑だといったのに


これは僕の勝手だから、 ちゃんは他の彼と同じように僕を扱ってくれて構わない


ほぼ強引に決められてしまったのに
なんだか嫌な気はしなかった。
それを否定しなくちゃと思うのに、心のどこかで喜んでいて。








「はぁ〜……」

彼からのアプローチは、私にとって魔性だった。
どうしてか落ち込んでいるときに限ってメールが届いたり
かと思えば急に連絡が途絶えたり

どうしてか私の心を掴んで放さなかった。

まるで私を試すかのようで
気に入らないのに、どうしても気になってしまう。
彼の言葉を思い出すだけで顔がほころんでしまのは何だろう、
1人に入れ込んでしまったら寂しいだけだって、わかってるのに……。






ダメだ、彼のこと、忘れなくちゃ
彼とだけはこれ以上、付き合っているわけにはいかない
きっといつか自分が惨めになる
それが、わかるから














私はその日、別れを切り出そうと塔哉くんを呼び出した。
今じゃなければ決意が鈍ってしまう、そんな気がして。
「塔哉くん!私……あの!」

そのときの私は初めて、恋愛関係で本気を出していたのかもしれない。
俯いて、拳を硬く握りしめる、声が震えた。
「どうしてそんなに悲しそうな顔をしているの?」
その先がどうしても言えなくて口をつぐんでしまった私にふってきたのは
そんな彼の寂しそうな声だった。

私は思わず絶句した。

「僕は ちゃんにそんな顔をさせるためにお付き合いを申し出たんじゃないよ」
塔哉くんは私の手をとって微笑んで
ねぇ笑って、と頭を撫でて優しく抱きしめてくれた。



……ぎゅっ



おずおずとその抱擁に応える、
そんな自然な自分の行動に、涙が出てきて……

もう嘘はつけないな、と思った。







「好き!別れるなんてやだ!」







まるでそんな私の答えがわかっていたかのように頷いて
塔哉くんは背中を撫でてくれた。
あぁ私はこの人が好きなんだって
そう思ったら好きはいっぱいいっぱい溢れてきて
心の中におさまらないくらい。

だってきっと寂しくなるって思った、
誰か1人になんて絞ったら
別れるときに寂しくなるって、
それなのにそんな私の見えない予防線を
あなたは当たり前のように踏み越えてきたから
そんな気持ち、どこかにいっちゃったの。



「ねぇ ちゃん、僕だけで、埋まった?」
「……もう!収まりきらないよ!」







大事なのは未来じゃない、
きっと今、だよね!















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061014 部長とはもっと本編で交わりたい




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