タイトル『譲れないもの』












「ワイはどうしたらエエんやろなぁ……」

乾いたような笑顔を浮かべて彼は空を見上げる。
私に心配かけまいとしていた彼はいつも笑顔だった、
そんな彼の始めてみせる寂しそうな背中

負けないでよ
















勉くんは今、自分の進みたい道と親の勧める道とで迷っていた。

「ワイは野球を続けたい、野球が好きなんや。けど親の寂しそうな顔は見たくない」
グラブの入った袋を見つめてそう呟く。
親御さんは勉くんが一流大学へ進学すると当たり前のように信じきっていた、
そんな期待に満ちた目を向けられると何もいえなくなってしまう、
そう勉くんは言っていた。
昔から勉強の出来た勉くんには
それだけの期待という名のプレッシャーがかかっている。

そんな親の気持ちを踏みにじるように感じてしまっているのだろう
勉くんは未だに“プロ野球の道に進みたい”と言えないでいた。

「……」

なんて声をかけたらいいんだろう。
わからなかった。
でも……でも!

「自分で決めた道だけど、やっぱり応援はしてほしい」
苦しそうな顔を帽子で隠し
には心配かけたくないのに……つい弱音はいてまうなぁ」
男なのに情けないなぁワイ、そう勉くんは自嘲した。




「私は応援してるよ!」
「……え?」
いつの間にか声にしてしまった。こんなつらそうな姿、見ていられない。
「どんなに誰が何かいっても私だけは応援してる!」

私なんてまだ壁も見つからないところにいる。
夢も見つかってない私に比べたらずっとずっと先を見つめてる、
やりたいことのために一生懸命な勉くんを、だからこそ応援したい。

「今の勉くんは輝いてる、やりたいことがある勉くんは格好いいよ!」
「……

驚いているのかしばらく固まっていたけれど
勉くんはふっと優しい笑顔になる。

「家族だけやあらへん、ワイの周りはみんなワイが有名大学に進学するとおもとる
そのひと声ひと声がプレッシャーになって苦しくなる中で
だけはワイの本当の気持ちを知っとる、
だけは応援してくれとるやないか、
それだけでワイがどれだけ救われてる思ってん」

勉くんにぎゅっと抱き寄せられた。

「こんなに が真剣に応援してくれてたなんて思ってなかった、悪かったなぁ」
優しくぽんぽんと背中を撫でてくれる手。
嬉しかった。
あぁ私はこの人の傍にいていいんだなって、
凄く安心した。

「ワイ、やっぱり親に話すわ。ワイは野球がしたい、野球がつづけたい……って」
反対されるのはやっぱり辛いけど、なんとしても説得する
そう勉くんは言う。

「うん!負けないでね!」








迷いのなくなった勉くんの顔
きっとやりたいことが私にも
見つけられるような気がした

















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8/22
久しぶりの更新でした。10やってたら館西くんに萌えたので…(笑)


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