タイトル『泣いてもいい時』
泣き虫だったあの頃
毎日些細なことで
私は泣いてばかりいた
同時に自分がそんな弱い自分のことを一番
大嫌いだった。
あの日も同じように泣いていた。
原因を思い出そうとしても
もう忘れてしまった。
それくらい単純で些細なことだったんだろう。
それなのに私はどうして泣いてしまうんだろう。
「やっぱりこんな自分、嫌い。」
小さく呟いてやっと顔をあげる。
「今日はちょっと遠回りしていこう。」
涙を乾かそうと私はいつもと違う道を行った。
するとそこには楽しそうに野球をしている男の子がいた。
私はなんとなくそこに腰を下ろした。
理由なんてわからないけれど。
「はぁ……お前はまったくダメな奴だなぁ。」
しばらく見ていると彼はキャッチも出来ない
打ってもボールに当たらない。
てんで野球がダメみたいだった。
結局監督にしかられて。
「あぁ……泣いちゃうんじゃないのかな、あの男の子。」
私は小さく呟きながらその男の子を眺めていた。
ずっと眺めていたけれど彼は、そんなそぶり全く見せる様子はない。
それどころか彼はずっと笑顔だった。
相変わらず楽しそうに野球を続けようと輪の中へ戻っていく。
「どうして……そうして泣かないの?」
不思議でたまらなかった。
私なら間違いなく泣いてしまうだろう。
「あのこ……は強いのかな?」
そんな自分がまた小さく見えて嫌いになって
また涙があふれてくる。
そんな自分が大嫌いなのに……
なんて悪循環なんだろう
「どうしたんだ?泣いてるみたいだけど。」
俯いて膝を抱えていると
誰かの声がふってきた。
驚いて顔をあげるとそれは、
さっきまで私が見ていたあの男の子だった。
「あなた……。」
「あなたは……強いのね。あんなにしかられたのに、笑っているんだもの。」
そう呟いて私は目を伏せた。
彼に言ったのか、それとも私自身の独り言なのか……。
「そうなのか?おいら、よくわかんないけど。」
うーん……
彼は少しだけ考えているような唸り声をあげていたが
すぐにまた笑って言った。
「やっぱりわかんない。でも野球、楽しいから。」
思いもつかなかったその男の子の言葉に
私は動揺する。
「なに……それ……?」
「だから、野球が楽しいから自然に笑っちゃうって、そういうこと。」
しかられたって怒鳴られたって野球のことならいいんだ
彼には何のためらいもなかった。
当たり前のようにそう言ってのけてしまう。
「そんな、そんな……こと。じゃあ泣いたりしないの!?」
どうしてか悔しくて。
私は泣いてるのに彼は笑ってる。
それだけのことが何故か悔しくて。
出てきた言葉はこんな言葉だった。
「泣くのは……泣くのは……う〜ん。」
また考え込んでしまった彼は
難しいことはよくわかんねーけど、と
小さくため息をつきながら
でもやっぱり彼は笑ってこう話したんだ。
「泣くとしたら嬉しい時!甲子園で優勝できたらおいら泣いちゃうかも!」
嬉しい時……?
「野球が大好きだから、どうせなら辛いことや悲しいことじゃなくて
嬉しいことで泣きたいかも、おいら。」
そんなこと考えたこともなかったな。
泣くのは弱いことだってずっと思ってた。
でもそれは、違った。
「私も嬉しいときに、泣けるかな?」
いつも泣いてばっかりだけど。
私がそうたずねると彼はもちろん笑ってこう答えてくれた。
「もちろん。」
だけど、と彼はひとつアドバイスをくれる。
「その時にいーっぱい涙を流せるように、涙はとっておくといいぞ。」
「うん!」
だからね、私はそのとき誓ったの。
嬉しいこと以外で泣かないって。
気持ちよくいーっぱい涙を流せるように……
「良かった。やっと笑顔に戻った。女の子はやっぱり笑ってる方がかわいいぞ。」
変わらない笑顔で私に微笑んでくれる彼は
やっぱり強い人だと思った。
「それじゃおいら、野球あるし戻るから!良かったら君の名前教えて?」
「私は……私は、
。」
「
ちゃんか、そっかぁ。可愛い名前だな。」
覚えておくね、と彼はそう言って去っていく。
「……走るのはやいじゃん。」
そして見送るその後姿に、私は思い出したように叫んだ。
「名前は?あなたの名前を教えてー!」
「おいらは八嶋中!」
この人が甲子園で優勝したら
―――私泣いちゃいそうだな。
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初めてやっすぃーの夢小説書きました。
一度途中まで書いたのにフリーズして全部消えちゃいました……
話はやっぱりちょっと違う感じになりました。
つぅかもともとのお相手さんは六本木先輩だったんですけど
書いていたら途中で、笑顔といったらやっすぃーじゃね?と思い出し
少し修正しながら書き上げました。
どうせ泣くのなら嬉しいことで、または好きな人のことで泣け!を
コンセプトにしました。これは前のもこれのも一緒です♪
……ところでこれ、恋愛してるのか?
Created by
DreamEditor