タイトル『箱入り娘』
いわゆる箱入り娘の彼女は
少しだけ早い門限までには
必ず帰っちまう。
そんなところも好きだとは思うけど
たまには少しだけ長く一緒にいたいって
思っちまうんだ。
あいつを知らないところへ
連れてってあげたいって
俺のとっておきの場所に連れてってやりたい
って。
けどあいつは真面目だから
そう思っていた、そんな時だったから
彼女の口から飛び出した言葉に
俺は驚きを隠せなかった。
「え?今お前……なんて言ったんだ?」
「だから今夜は……お父さんたち家にいないからもうちょっと一緒にいたいな……って。」
恥ずかしそうに袖を引っ張る彼女。
「それほ……本当か
?」
心底驚いて思わず2回も確かめてしまった俺に彼女は
嬉しそうに笑みをこぼした。
「本当だよ。それにちょっとくらい怒られても……全然平気だから。」
「だ,だったら今日は俺のとっておきの場所に連れてってやる。」
収まらない胸の鼓動にせかされる俺の手。
彼女の手を少しだけ強引にひっぱってしまう。
「もう,痛いなぁ。」
冗談半分に彼女が微笑む。
少しだけ早歩きで俺達は土手の道を進んでいった。
「ねぇどんなところ?」
彼女が興味津々といった具合にたずねてくるが
これは絶対秘密だ。
初めて夜の道を2人で歩くことに少々興奮しているらしい彼女が
ちょっと可愛く思える。
俺がはたっと足を止めると,彼女も慌てて足を止めた。
目の前には広い湖が広がっている。
「昼の湖も綺麗だけど夜の湖もなかなかいいだろ?」
暗い湖が月の光に照らされる。
水面下に揺れる月。
「うん……綺麗……」
しばらく2人で見入るように広がる湖を見つめた。
言葉はなかったけれど彼女の横顔で嬉しいんだなと
思うことが出来る。
「でも意外だなぁ。」
水面に広がる月を見つめながら彼女がそっと呟いた。
「何がだよ?」
俺も同じように湖を見つめながら聞き返す。
「ミズくんがこんな静かなところ知ってるなんて。」
くすくすと笑いながら彼女は言った。
「うるせぇ。似合わないとか思ってんだろ。」
すると彼女はふと真剣な横顔を見せる。
「そんなことないよ。驚いたけど……なんか嬉しいんだ。」
俺がそっとそんな彼女の方を見ると
彼女も照れた顔ではにかんだ。
「またミズくんの知らないところを知ることが出来たなって。」
「
……」
「本当はずっとずっともう少し一緒にいたいっていつも思ってた。」
彼女はまた水面に揺れる月を見つめながら話し始めた。
「怖い人も多いから夜は出歩くなってお父さんたちによく言われて諦めてたけど……。」
彼女は手元の小さな石を揺れる月に向かって投げた。
月は横に伸びてしましま模様を描いていく……
「こんなに楽しいんだったらちょっとくらい怒られても平気。」
俺の視線に気づくとまた恥ずかしそうにしながら
今度は俺の手をとった。
「好きな人のことまたひとつ知れたって。」
典型的な箱入りで真面目でストイックな彼女。
清楚な感じが綺麗で凄く好きだ。
でもこんな風に時々真剣に想いを伝えてくれるから
単純な俺はまた
彼女に惹かれてしまう。
「俺もまた
のことひとつ知ること,出来たな。」
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ということで連休にも関わらずひとつも更新しないのも寂しいので
ひとつ書いてみました。
昨日の日記の通りのネタです…箱入り娘ネタ。
というかあんまり箱入りを使い切れてない?
ちょっと珍しく幻想的な感じですね…一応それを目指して書いたつもりです。
頑張ってみました……さて遊びに行くぞ!(笑)
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