<!DOCTYPE HTML PUBLIC "-//W3C//DTD HTML 4.01 Transitional//EN"> <html lang="ja"> <head> <META NAME="ROBOTS" CONTENT="NONE"><META NAME="ROBOTS" CONTENT="NOINDEX"><META NAME="ROBOTS" CONTENT="NOFOLLOW"><META NAME="ROBOTS" CONTENT="NOINDEX, NOFOLLOW"><META NAME="ROBOTS" CONTENT="NOARCHIVE"><META NAME="LIBWWW-PERL" CONTENT="NONE"><META NAME="LIBWWW-PERL" CONTENT="NOINDEX"><META NAME="LIBWWW-PERL" CONTENT="NOFOLLOW"><META NAME="LIBWWW-PERL" CONTENT="NOINDEX,NOFOLLOW"><META NAME="GOOGLEBOT" CONTENT="NOINDEX, NOFOLLOW"><META NAME="GOOGLEBOT" CONTENT="NOARCHIVE"><META HTTP-EQUIV="ROBOTS" CONTENT="NOINDEX"><META HTTP-EQUIV="ROBOTS" CONTENT="NOFOLLOW"><META NAME="robots" CONTENT="none"><META NAME="robots" CONTENT="noindex"><META NAME="robots" CONTENT="nofollow"><META NAME="robots" CONTENT="noindex,nofollow"><META NAME="robots" CONTENT="noarchive"><META NAME="libwww-perl" CONTENT="none"><META NAME="libwww-perl" CONTENT="noindex"><META NAME="libwww-perl" CONTENT="nofollow"><META NAME="libwww-perl" 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<br> <div class="txt"> <table width="600" border="0" cellspacing="0" cellpadding="0" align="CENTER" style="border-width: 0px;"> <tr> 幼い頃、母はこの家を出て行った。<BR> 俺は父とともにその背中を見送った。寂しそうだけど、決して振り返ることのなかった背中。母の顔や声、それよりも真っ先に思い出すのはいつもその背中だった。<BR> 「どうして母さんは出て行ったんだ?」<BR> 俺が聞くと、父はこう答えた。<BR> 「きっと共にいてやれる時間があまりにも少なかったせいだろうな」<BR> そういう父の顔は母と同じく寂しそうだった。2人はどちらも同じ寂しさに満ちていたのだ。もちろん、俺も。<BR> 寂しいなら、どうして別々に暮らすのだろう。<BR> 共にいたいのならもっと一緒にいればいい。ずっと離れずにいれば不安になることもないしあんな風に泣いたり怒ったりする必要なんてないのに。<BR> 俺は思ったが、口には出さなかった。全てはもう遅すぎた。それくらいは子どもの俺でもわかっていた。父は俺と暮らし始める。母はきっと2度とここへは戻ってこないだろう。<BR> 一緒にいればいいのだ。<BR> いつも互いの顔が見える位置に暮らしていれば、いつだって相手が何を求めているかわかるし、共に助け合うことも簡単だ。寂しくもなんともない。好きな相手だったらなおさら。<BR> 俺はこのとき結論に達した。<BR> 愛するひととはいつも一緒でいなくてはいけないと。そしてその考えは、それから今まで変わていない。<BR> <BR> <BR> <BR> 父が海外に赴任することになったことを転機に、もう一度あの家で俺ひとりで暮らすことになった。幼いころに暮らしていたあの懐かしい一軒家に。<BR> もともと父の転勤にあわせていろんな場所を転々としてきていたが、海外なら俺が住む場所を変える必要もない。だったら昔暮らしていたあの家に戻りたい。幸いなことに、その願いはあっさり通じた。<BR> 俺が喜んだのは懐かしさのほかに、もうひとつ目的があったからだ。<BR> あの家の近くには幼馴染がいる。<BR> 昔よく一緒に遊んだちいさな女の子。<BR> 相棒。<BR> 本当は「武藤遊戯」という名前だったけれど、俺は彼女をそう呼ぶ。<BR> まだ俺が小さくて相棒と一緒だったころ、遊ぶのはいつも俺の家か近くの空き地の草はらだった。<BR> 俺の家には父が趣味で集めた世界のゲームがいくつもある。もちろん俺もゲームは大好きだったし、相棒もそれらを見て目を輝かせていた。<BR> 俺たちはいつだって一緒だった。いつでも2人でゲームをして、2人で笑いあって遊んだ。今でも思い出すと嬉しくなる。幸せだった。母があの日出て行くまでは。<BR> あの日からしばらくもしないうちに父は家を後にした。ちょうど転勤だということもあったが、それを告げる父の顔はどこかほっとしてたように思う。きっと母との思い出が残るこの家にあまりいたくなかったのだろう。<BR> だけど俺にとっては大問題だ。相棒に会えなくってしまう。<BR> 焦って幼い俺が考え出した結論は、相棒を一緒に連れて行くことだった。<BR> いつものように遊びに来た相棒を俺の部屋に閉じ込めて、時間がきたら一緒に連れて行こうと計画した。<BR> 今思えば、単純で馬鹿げてる。<BR> 相棒をたったひとりで部屋に閉じ込めてしまうだなんて。当然相棒はたくさん泣いて抵抗して、その声を聞きつけた父によって俺の計画は失敗に終わった。結局俺たちは引き離されることになった。<BR> これではあの日去っていった母や父と変わらない。互いの顔も見えずに1人きりにして、思いが通じ合えるものだろうか。今でも反省する。<BR> だから今度こそ過ちは繰り返さない。<BR> こぼれそうなくらい丸くて大きな目。かわいらしく俺を呼ぶ声。なのにたまにやんちゃして、男の子ぶったりしてみせる。全てが俺は大好きだった。その相棒にまた会える。<BR> 再会のときはすぐにやってきた。<BR> 越した挨拶がてらに相棒の家に立ち寄ったとき、一瞬だったがその姿が見えたのだ。だが、声をかける前に相棒は小さな声をあげ、たちまち階段をかけあがってしまった。<BR> 「こら、遊戯!アテム君に挨拶しなさい!…ごめんなさいね、あの子照れてるみたいで」<BR> 「…いいえ、構いません。またいつでも会えます」<BR> 俺はその後姿の残像を目で追い続けた。現実はなんとも素晴らしく俺の想像を裏切っていたのだ!<BR> それから数度相棒の家を訪ねたが、いつも相棒は上へあがって隠れてしまっていた。だが幸いに、ここへ来て通い始めた高校は相棒と同じ高校だ。<BR> クラスは違っていたが、時たま廊下ですれ違うときに見かける相棒の姿に心を吸い寄せられる。やはり相棒はあの日からずっと俺の中で揺ぎ無い存在だった。<BR> しかし、時折しゃべっているあのクラスメイトは誰だろう?<BR> 放課後から家に帰るまではどこへ行っているのだろう?<BR> 付き合っている友人の数は?<BR> 俺以外に知り合っている男の数は?<BR> 知らないことが多すぎる。やはりあまりに離れている期間が長すぎたように思う。その埋め合わせはしなくてはならない。<BR> 実行に移すにあたって、大切なのは準備だ。<BR> そのうえで絶好のタイミングで行わなくてはならない。<BR> 昔から計算し、計画をたててあれこれ考えるのは好きだった。これが愛しいひととの生活をするために必要なことならなおさら。何度か考察した結果、完璧なものとするにはいくらか時間がかかったが全く苦にも感じなかった。<BR> あとは実行して、成功するだけ。<BR> <BR> <BR> <BR> 「--ええ、はい。急に気分が悪くなったみたいで。大丈夫です、俺がちゃんとついてますから…はい、それじゃあ失礼します」<BR> 通話をきると、俺は振り向いた。<BR> 眠っている相棒。その手をそっと取って、用意していたものをとりだした。<BR> 冷たい金属の手錠。それを相棒の手首にはめる。<BR> がちゃり。<BR> 続いて、俺の片方の手にも。<BR> がちゃり。<BR> 閉めた鍵はポケットにしまう。そろそろ片手をあげてみれば、つながった鎖が軽い音をたてる。静かな部屋にひびく無機質な音。鎖は曲線を描いたあと、相棒の手にたどりつく。<BR> 「相棒」<BR> その言葉を口にするだけで、この心はきよらかな喜びにうち震えてしまう。<BR> 全ての準備は整ったのだ。<BR> もうこれで俺たちをさえぎるものはなにもない。好きなだけ、いつでも一緒にいられるのだ。物理的にも、心理的にも。これはなかなか名案だと思う。<BR> そのときちいさく唸る声がして、相棒の唇がわずかに動くのがみえた。<BR> ああ、もうすぐ薬が切れる頃だったな。俺はじっと見守る。<BR> 軽く身じろぎしてから、ため息のような声が漏れた。まぶたが動き、やがてゆっくり現れる紫色の目。やはり綺麗だ。この目はまったく変わっていない。<BR> 数度瞬きを繰り返すと、とろんとしていた目がだんだんと生気を取り戻す。少しの間のあと、はっと大きく見開かれた。<BR> 「おはよう相棒」<BR> まともに会えたことが嬉しくて、がまんできずに呼びかけてしまった。<BR> 小さくあがる悲鳴に似た声。なにかに歪んだ表情。俺の姿をようやく捕らえたのか、身体を起こすと飛びのくように離れようとした。<BR> 途端に俺たちをつなぐ鎖が音をたて、それを阻む。<BR> 「おいおい、少し痛いぜ」<BR> 相棒は信じられないという目つきで、鎖と己の手を交互に凝視した。そんなにめいっぱい引っ張られると俺の手も引っ張られるのでさすがに少し痛い。鎖を少し長めにしておいてよかった、と俺は苦笑した。本当はもっと短くしたかったが、考えてこの長さがベストだと思ったのだ。<BR> 「な…なに、これ…」<BR> 声はすこし震えている。「これ、どういうこと!?」<BR> 相棒は叫んでいた。<BR> そして叫んでから自分の言葉に怯えたようにあたりに目を配り、可能な限り鎖を伸ばして距離をとろうとする。<BR> あんまり急につれてきたからびっくりしてるのか?それにしてもそこまで離れたがるなんてちょっと寂しいぜ。<BR> 「これはな、相棒とずっと一緒にいたいから作ったんだぜ」<BR> 俺は相棒を落ち着かせるために話しはじめた。<BR> 「え…」<BR> 「俺も考えたんだ。なにしろ離れてる間が長かったからな。だからその分、」<BR> 安心させるために微笑んでみせる。<BR> 「これならこれから離れることもないだろう?」<BR> 相棒は呆然としたような顔で俺の顔を見ていた。<BR> 驚いてるんだな。しょうがない。でも仕方ないだろう?俺はずいぶん離れてて少しも待てなかったんだ。相棒もそれは同じだろうし、きっと許してくれるだろう。それより俺は俺が知らなかった時間を過ごしたお前の話をいろいろ聞きたいんだ。なにを考えて誰と過ごしたのか。全てを知りたい。求めるなら、俺だってその全てを差し出して構わないんだ。<BR> 「なあ、腹減らないか?さっき相棒が持ってきてくれた飯があったよな。相棒も夕飯食べてないんだろ?」<BR> でも、焦ることはないぜ。時間はたっぷりあるからな。<BR> 「そうだ、あとで相棒の話を聞かせてくれよ。離れている間、俺の知らないことがどのくらいあったのか知りたいんだ」<BR> 俺は笑って、相棒をテーブルに招いた。<BR> その手は相変わらず柔らかで温かい。<BR> <BR> <BR> <BR> 相棒が持ってきてくれたママさんのお手製料理は、ビーフシチューだった。<BR> そういえば昔相棒の家に遊びにいったとき、すごく美味い飯をご馳走になったことをよく覚えている。ふたつの皿に盛るととても美味そうにみえた。やっぱりこれも例外ではなさそうだ。<BR> そうか、今朝からほとんどなにも食べてなかったな。<BR> 安心感からか、急に空腹になった。<BR> 「食べようぜ」<BR> 笑顔で呼びかけたが、隣の相棒はぴくりとも動かない。<BR> 俯きがちで、スプーンに手をつけようともしなかった。<BR> 「相棒?せっかくママさんが作ってくれたんだから、食べないと悪いぜ」<BR> 俺は口をつけながらその様子を見守っていたが、それでも相棒の手は動かない。<BR> ママさんの料理はやっぱり美味い。食べたがらないなんて、相棒はビーフシチューが嫌いになったんだろうか?それとも腹が減ってないんだろうか。<BR> 手をのばして、相棒の顎をつかんだ。「ひっ」と息を呑むような声がもれる。そんなにびっくりしなくてもいいじゃないか。<BR> スプーンで相棒のぶんのシチューをすくうと、口元につきつける。実をいうと、一度やってみたかったんだよな。こういうの。本当は相棒に食べさせてもらうのが理想だったんだが。<BR> 「ほら、口をあけてくれ」<BR> 相棒はこわばった表情でじっと俺を見つめていたが、しばらくするとためらいながらも小さく口をあけた。スプーンをくわえさせると、つらいのか目の端が少し滲んでるのがみえる。<BR> やっぱり嫌いなのか?<BR> しかし、喉が嚥下していくのを確認して口から離すと、ようやく自分の前にあるスプーンに手をつけた。あとは無言で口へ運ぶ。<BR> なんだ、やっぱり腹が減ってるんじゃないか。<BR> 安心すると、俺もまた食べるのを再開した。相棒はこちらを見ず、まさに夢中で食べていたがその横顔を見るだけでも俺は幸せだった。<BR> その後2人とも食べ終わったところで、皿を洗おうと席をたつ。父と生活している間、家事は大体俺がやっていた。こういうのも慣れたものだ。<BR> 流しにもっていこうとすると、当然鎖でつながった相棒もついてきた。相棒は汚れた皿をじっと見つめて、不安そうな顔をする。<BR> 「気を使わなくてもいいぜ。俺が全部やるからな」<BR> 俺はお前に家事なんてさせない。全部俺の役目だ。<BR> 思えば、父は家のこともほとんど母にまかせきりだった。きっとそういうところも母の不満がたまる原因だったのではないかと思う。だから俺が全部やれば安心だ。<BR> それに皿が割れたりしたら相棒が怪我をするかもしれないしな。<BR> 皿をすすいでいるとつながった手首が引っ張られる感触がした。なんだ?構ってほしいのか?<BR> 「ああ、すぐ終わるからもう少し待ってくれ」<BR> 相棒が求めているとわかると、俺も嬉しい。<BR> 少々雑になってしまうが急いで洗いものを済ましてしまい、振り向いた。すると、相棒が後ろのカウンターに向けて手を伸ばしているのが見えた。カウンターの上には鎖をいじるときに使った工具箱がそのままにおいてある。<BR> 「相棒?」<BR> 声をかけるとびくっと身体が固まるのがわかる。<BR> 何やってるんだ?…ああ、そうか。出しっぱなしでしまおうとしてくれたのかもな。<BR> 「あまり触ると危ないぜ」<BR> 工具箱のなかにはペンチやらドライバーやらがたくさん入っている。もし手でもすべったらあっさり怪我をしてしまうだろう。散らかっていたそこらのものを箱にしまうと、棚の上に戻した。<BR> ほかになにがあっただろうか。相棒が怪我をするようなものはなるべく手の届かないところや物置においておかないとな。<BR> 俺が片付けているあいだ、相棒はいい子でじっと黙ってそれを見つめていた。<BR> <BR> <BR> <BR> 「さあ相棒。離れている間のことを、俺にぜんぶ話してくれ」<BR> 口にだしてから奇妙な高揚感があった。<BR> 相棒のことを今まで何も知らなかった分、たくさん知るべきことがある。その全てを聞くのが嬉しくもあり、怖くもある。もし相棒がまったく俺の知らない領域にずっと浸かって抜け出せなくなっていたとしたらどうするか?<BR> もちろん俺は相棒の全てを受け止める自信はあるのだが。そこから引っ張りあげる自信も。<BR> しばらく待ってみたが、相棒は何も話さない。「相棒?」と促すと、はっとしたようにこちらを向いた。長いまつげがせわしなく瞬きする。<BR> 「…ねえ…」<BR> 一番最初は蚊の泣くような小さな声だった。<BR> 「どうしてこんなことするの?」<BR> 俺は面食らった。<BR> どうして、とはどういうことだろうか。いったい相棒はなにが言いたいのだろう。<BR> この鎖は俺とつながって、つまりいつでも俺と一緒じゃないか。ただ一緒にいたいだけだ。わかってくれてなかったのか?<BR> 考えて、言葉を選ぶ。<BR> 「どうしてって…なにも俺は閉じ込めたりしていないだろ?」<BR> 相棒はきっと顔をあげて俺をにらみつけた。<BR> 「してるじゃないか!現にボクをこうやって縛り付けてるじゃないか!」<BR> なんだって?俺はますます驚いた。<BR> 違う。縛り付けているんじゃない。<BR> 「ちっちゃいころにキミはボクを閉じ込めてたけど、あれよりずっとひどいよ!一体キミはなにがしたいの?ねえ!!」<BR> 小さいころ?ああ、あのことは確かに俺が悪かった。反省してるんだ。本当だ。<BR> だから…考えて俺はこの方法を選んだんだぜ?こうすれば1人きりにさせずに一緒にいられると思ったから。それに俺は今のお前のことを知りたいんだ。言っただろ?俺が知らない間のことを知って、もっとお前のことを理解したいのに。<BR> 「ねえ、どうしてなの?わからないよ!今すぐボクを帰して!!」<BR> 相棒は?相棒は俺と一緒にいたくないのか?<BR> なあ、どうして…わかってくれないんだ?<BR> 相棒。<BR> もしやお前にとって俺は…もう小さい頃の思い出のひとつになってしまっているのか?俺の思いはまったく変わっていないというのに。<BR> …遊戯!<BR> 「--俺は」<BR> 息を呑む気配がする。瞬間的に頭に熱が宿った。<BR> 「俺は違う!」<BR> 気がつけば俺は飛びかかっていた。<BR> 悲鳴があがる。<BR> その場に押し付けて馬乗りになる。掴んだ腕、服のうえからもその身体は柔らかかった。加えて、なだらかな線を描いている身体。膨らんだ胸元。<BR> そうだ、子どもじゃない。もう相棒も俺も幼いあの日からずいぶん時間がたっているのだ。<BR> 「…ぃやっ!いやぁっ!!」<BR> 鋭い声が耳に響く。組み敷いた身体がめちゃくちゃに跳ね回った。<BR> 俺は身体を押さえつけてその口をふさいだ。自分の唇で。その瞬間びくりとまた跳ねて、動きがとまった。やわらかく、甘い唇。こんな状態でありながらも、頭のどこかで歓喜がめぐる。<BR> 俺は本能で相棒を征服しにかかった。<BR> 手をさまよわせて、服の中にもぐりこませる。その下にある肌はもっと熱くてなめらかで、手に吸い付くようだ。ずっと触れていたい。夢中で柔らかな感触を貪り、さらに求めようと上へ上へと動かす。ああもっと、もっと欲しい!<BR> そのときだ。<BR> 喉の奥のくぐもった声を聞いた。相棒の声だ。何度も身体を押して跳ね除けようとしている。<BR> …意識がだんだんクリアになってきた。唇を離すと、すぐに相棒が苦しそうに咳き込む。その頬には涙がぼろぼろこぼれている。<BR> 俺は。<BR> 途端に頭がすうっと冷えていく。体温がどんどん冷えていくのがわかった。なんてことを。<BR> 俺はなんてことをしようとしていたんだ?<BR> 「…すまない」<BR> 自然と謝罪の言葉がでた。<BR> そうだ。こんなこと、間違ってる。無理やりに押し倒そうとするなんて。<BR> 俺が求めていたのはこんなことじゃない。<BR> 「すまない相棒…こんなこと、よくないよな」<BR> 相棒は呆けたような表情で見上げていたが、はっと気づいて顔を輝かせた。<BR> 「…じゃあ、」<BR> 俺は頷いた。<BR> <BR> 「ああ。愛のあるセックスから産まれたんじゃなかったら、がっかりするだろうしな」<BR> <BR> まったくその通りだ。危うく愛のない行為を相棒に強いてしまうところだった。<BR> 相棒を悲しませたくはない。そうだ、だって俺は相棒を愛している。<BR> すべては愛があった瞬間から産まれるのだ。<BR> きっと俺もいつかは愛があった父と母がいたから産まれたに違いない。そうでなければ、悲しすぎる。そうだろう?<BR> 胸のなかにあった欲望の炎がだんだんと小さくなっていく。ただ愛しい。それだけなんだ。俺は小さく安堵のため息をついた。<BR> 「…だから、当分2人きりだな」<BR> まだ大きな目には涙がこぼれつづけてる。怖がらせたな、すまない。<BR> そっと抱きしめた身体が小さく震えていた。<BR> お願いだ。泣かないでくれ。お前が泣いていると不安になる。大丈夫だ、俺は待てるから。お前と2人きりで一緒にいることだって同じくらい幸せなことなんだ。本当だ。誓ったっていい。だから。<BR> 胸にわきあがる愛しさに苦しくなる。甘い痛みが心地よかった。<BR> <BR> ああ、相棒。いや、遊戯。<BR> 俺はお前を愛している。<BR> <BR> <BR> </div> <center> <a href="kimiai01.html">←</a> <a href="index.html">Top</a> </center> </tr> </table> </div> <br> <br> <br> <br> <br> <br> </body> </html>