「こんなところにいたの。探したよ」
「修ちゃん・・・」
修ちゃんの目が、見られなくて。下を向いたまま固まった。
修ちゃんの手が、あたしの腕を軽く掴む、と、急にその手が離されて。
驚いて顔を上げたら次の瞬間、修ちゃんはあたしの肩を抱いていた。
静かに降る秋の雨。
「こんなに冷えて」
修ちゃんの声は、怒ってるはずなのに優しい。
肩に回してくれた腕は温かい。
ごめんなさい、って言おうと思う息も白くて、あたしは黙る。
隣を歩く修ちゃんに、そっと身体を寄せる。
暖かいお部屋に戻ったら、ごめんなさいって言えるかな。
言えるといいけど、・・・どうだろう。
結局は言わされちゃう、言わせてくれる、けど。
言える、かな。
しっとりと濡れたあたしの袖を、修ちゃんがきゅっと引き寄せた。
「お帰り、祥ちゃん」
そう、だよね。
あたしの帰るところは、いつも、修ちゃんのところで。
「ただいま。・・・ごめんなさい」
修ちゃんの纏う空気が、ふわっと微かに、けれど確かに和らいだ。
「うん」
優しいのに、厳しい声。そう、いつもの。
修ちゃんの胸の大きな屋根に、あたしは暖かく覆われていた。
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