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04 高い山に降る雪。近景より鮮やかな遠景。

「ちょっと、頭冷やしなさい」

その声は、その意味からすれば驚くくらいに、暖かかったのに。

・・・・・。
お部屋で、ひとりにされるのは耐えきれなくて。
でも、修ちゃんと一緒にいるのも辛かった。

「散歩してくる」
思わず、外に出て。でも。

視線は、部屋にいても外にいても、あまり変わらずに足元に落ちる。
自分が意地を張ってるの、わかってるけど。

・・・。空気が、肌を刺す。
それは、部屋にいるときとは違う。
きゅっと、身が縮むような冷たさは、あたしを、責めてるみたいで。

道行く人がすぐ傍にいても、あたしがひとりでいることはお部屋の中と変わらない。
暖かいお部屋に、帰りたい、のかな。
修ちゃんのいる、お部屋に。

・・・迎えに来て、ほしいのかな。
わからない。
当てもなく歩いていた道を外れて、小さな公園のブランコに腰掛ける。

ふうっと、大きく溜め息をついた。
大きく吐けば、大きく吸うことになる。・・・きぃんと、冷える。
・・・。

吸い込んだ息を、ふっと吐いたら視線が上がった。
遠くに、雪を冠した山。

きれい、だ。

張りつめた、身の引き締まるような冷たさ。
明るい、雪の真白。

それはとても、鮮やかで、大きくて、遠くて、・・・正しくて。
それは、あたしを責めるようなものじゃなかった。
もっと、ずっと圧倒的で。ただただ厳然と、そこに在って。
ちいさな意地なんて、なにも関係がないほどに強くて。

あたしは立って、息をもう一度吸って、吐いた。
この白い息は、あの真白の雪と、つながっている。
きゅっと、こぶしを握る。

あんなふうに、美しい、ひとりで立つ、何か。
そうありたいと、望めるあたしを胸の中に抱いて。
あたしは山に背を向けて、修ちゃんのいる家に向かった。

素材:Silverry moon light さま
お題:百人一首で100のお題 さま

田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士のたかねに 雪は降りつつ
 
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