プリとAXのお話。
その後。
瑠玖さんは副作用の出た海月とヤっちゃった事が判明し。
そのせいでチェインを振るう腰に力が入って無かったのだと分り。
と言うか、瑠玖さんは俺が二人の事を気付いてるの知らなかったんだなぁ。
見てれば分るんだけど。俺だけかな、知ってるっていうか気付いてるの。
まぁ、ギルドの奴らに言うっていうのは本当に冗談だけど。
同性愛だって、幸せならいいんじゃないのって俺は思う訳だから。
あの二人は幸せそうだし、いいんじゃないのかな。
時々羨ましくなったりもするしなー。
普段の華楠があんなだし。
まぁそれはいいんだけど。
そんなお疲れ気味な瑠玖さんとPv部屋中を駆け回って遊んで来た。
途中で瑠玖さんへばっちゃって、俺が支援してあげたりして。
もうちょっと遊びたかったけど、Pvで対人攻撃するのを趣味にしてる嫌な奴らが
複数乱入して来たから渋々帰って来た。
瑠玖さんの怒りも納まったみたいで、帰りは手を振ってくれたっけ。
うん、やっぱ瑠玖さんは優しい。
家に帰ろうと歩いて居たら呼び止められた。
ポニーテールのアサシンクロス。由伊だった。
「やほー、蓮」
「おう、珍しいな。こんな時間に」
立ち話もなんなので、また噴水前に移動してベンチに腰掛ける。
時刻は夕刻。日が沈みかけた頃だった。
「ちょっと露店見てたのよ。蓮は?お家帰る所?」
「そ。つぅかさ、由伊。毒瓶なんだけどさ」
「ええ、使ってみた?」
どうだった?と言わんばかりに由伊は顔を近付けて来る。
「まぁな。威力は半端無かったよ。だけどよ、副作用。あれ、毎回なのか?」
「副作用?あぁ。どんなの出たの?」
「どんなのって。異様に寒がったり異様に熱がったり大変だったけど・・・?」
なんだ?どんなのって。種類があるとでも言いたげな。
「そう、それならまだなんとか出来る方ね」
「なんだよ、種類あんの?」
「そうねぇ、アタシの知ってる限りでは少しあるわね」
「へぇ、そうなんだ」
由伊はそうは言ってもその種類については教えてくれなかった。
まぁ、俺も聞かなかった。
もう一度、華楠に毒瓶を飲ませる気はないから。
「お前も毎回その副作用に悩まされてる訳か」
「あぁ、アタシはそこんトコは慣れたから平気。くらっとするくらいよ」
「慣れるもんなのか」
「仮にもアサシンですもの。毒に耐性はついていくのよ」
由伊は片目をぱちりと瞑ってみせる。
男のウィンクはなんとも言えないな。
今のは見なかった事にしよう。
「そう言うもんか」
うんうん、と由伊は頷いて居る。
と、そこへ。
『たぬきメンバー!絢音嬢のホム、とろりが進化したぜ!みんなで祝おうじゃないかー!』
上機嫌なギルドチャットが飛んできた。
あやねんのホムか。あやねんも莉煌さんと狩り頑張ってたのかな。
『おっけー。集合場所とかよろしくー』
返事してみる。
「蓮?どうしたの?」
「おお、悪い。ギルチャ。何か祝い事あるらしくてさ。今日は宴会かな」
「あら、おめでたいわね」
「じゃあ、悪いけど俺行くわ」
立ち上がる。由伊も移動するのか、立ち上がった。
いつも思うが、こいつは俺より背が高い。
こうして向き合って立つと見上げなければならない。
それなのにオカマって・・・なんか勿体無いなぁ。
「またねー、蓮」
「おう、またなー」
軽く手を上げて背中を向ける。
とりあえず家帰って少し部屋ん中片付けて、集合場所待ちだな。
祝い品はどうしようかなぁ。倉庫になんかあればいいけど。
あやねんは色々持ってそうだからなぁ。あげるもの悩むな。
とか色々考えながら家の前に着き。ドアを開けて驚いた。
「華楠・・・」
「あ・・・お、おかえり」
何故か分らないが華楠がまだ俺の家に居て、俺のパンツをたたんで居た。
華楠の言い訳によれば。
昨日世話になったから家の中の事をしてくれていたのだそうだ。
んで洗濯をして、乾いたモノをたたんで。それから帰ろうと思って居た矢先に、
丁度俺が帰って来てしまった、と言う事らしい。
タイミングが悪いと何故か怒られた。
自分の家だもの、自分のタイミングで帰って何が悪いのか。
まぁ、宴会の集合場所も飛んで来たトコだったので、一緒に移動する事になった。
「いい?昨日の事は誰にも言わないでよ?絶対に!」
「言わないって」
否、言う訳が無い。
誰があんな可愛い華楠の事を人に漏らすもんか。
俺だけの胸に仕舞っておくんだ。
あやねんへの祝い品は月並みだけどカード帳にした。丁度倉庫にあったから。
自分で開けようと取って置いたのか、売ろうと思ってたのかは忘れてしまったけど。
こうやって役に立ったからいい事にしておこう。
夜の露店街。食べ物露店の並ぶ一角。
指定された居酒屋露店へ行くと見知った連中が一角を陣取っている。
丁度あやねんの隣が空いていたので、座った。華楠も隣に座って来る。
「こんばんは、蓮さん、華楠さん」
「こんばんは、絢音」
「こんばんわーあやねん。とろり進化だってね。おめでとう」
「ありがとうございます」
おめでとう、と言うとあやねんは嬉しそうに笑った。
周りを見るともう酒を飲んで居たり、つまみを食って居たり。
既に宴会状態だった。
瑠玖さんと海月の姿が無いけど、いいんだろうか。
一応あの二人がマスターとサブマスターだよなぁ。
今日これを仕切ってるのはフェイだけど。
「絢音、これ。とろりのご飯。これだけしか集められなかったんだけど」
「うわー、嬉しいです。ありがとうございます、華楠さん」
華楠はあやねんにセルーが入ってるんだろう皮袋を渡した。
これだけって言ってるけど、結構入ってるぞ、あれは。
確かとろりはセルーを食べる。
暇があれば、一人でおもちゃ工場に通っていたのはこれだったのか。
エンジェリング目当てなのかと思って居た。
「あやねん、俺はこれ。色気なくてごめんね」
「きゃあ、いいんですか!」
「うん、貰ってー」
俺もカード帳を手渡す。
あやねんは開けるかどうか悩んでいるようだった。
ひとまず保留、と言う事にしたのか足元にあったカートに入れる。
「絢音、何飲んでるの?」
「オレンジジュースですよ」
「酒じゃないんだ?」
確か、あやねんも20歳は越えてたはずだけど。
「お酒はまだなんか慣れなくって。さっき少し飲んでみたんですけど。ダメでした」
「私もジュースにしようかな。すいません、リンゴジュース下さい。ひとつ」
華楠が近くを通った店員に注文をする。
折角だから俺も・・・。
「れーん。お前は酒だろう。飲むだろう?」
どん、と目の前にグラスを置かれ、有無を言わさず注がれる。
うーん、フェイも出来上がってるなぁ。
「なぁ?フェイ。瑠玖さんと海月は?」
「あぁ、まだマスターが寝てるらしくて。起きたら来るんだって」
寝てる?
遊び疲れて寝てしまったのだろうか。まさか、子供じゃないんだし。
「いいからいいから、飲もうぜ。ほら、かんぱーい」
カチン、と無理矢理にグラスをぶつけられて飲めと急かされる。
まぁ、飲めない訳じゃないんだけど。
思いながらグラスに口をつけて傾ける。
うん、旨い。旨いと思う。
しかしだ。
俺はすこぶる酒に弱い。すぐ酔ってしまう。
何でもかんでも面白くなってしまうのだ。
「なんだよ、華楠。お前ジュース飲んでんの?」
「何よ、悪い?笑ってんじゃないわよ」
華楠がジュースを飲んでいる。
ただ、それだけの事が可笑しくて笑って居たら、ようやく瑠玖さんと海月がやって来た。
「あ、来た来た」
「マスター、おつかれーっす」
「こんばんわーマスター」
「遅ぇよ、瑠玖さんー」
重役出勤だ。
そう思ったら、自分の思った事が今度は面白くなってしまってまた笑いが止まらない。
「やだ、もうこいつ。キモイ」
「蓮さんて笑い上戸なんですね」
両隣で華楠とあやねんが喋っているのもくすぐったい。
瑠玖さんと海月があやねんに祝い品を渡した。
海月からは何かカード。瑠玖さんからはとろりの被り物だった。
あんなのあったんだ。知らなかった。作ったんだったら面白いな。
「もう、あんたは。いつまで笑うのよ。水でも飲みなさいよ」
「水?酒あんのに水飲むの?」
華楠の言う事が面白い。
目の前に酒があると言うのに、何故水を勧めて来るのだろうか。
あやねんがとろりの被り物を頭に乗せた。
「すげー、進化前のとろりが頭に乗ってる」
「それと進化した後のとろり連れて歩いてたら最強じゃね?」
「絢音可愛いー」
「いいなぁ、それ私も欲しかったー」
「それって効果なんだっけ?」
あやねんの頭の上のとろりを見ていたら、凄く触ってみたくなったので。
「あやねん、それちょっと触らして?」
「あ、はい。いいですよ」
頭からとろりを降ろして、あやねんは俺に渡してくれる。
受け取るとそれは少しひんやりしていた。
感触はぷにぷにとしてて柔らかい。本物もこんな感じなんだろうか。
触っていると段々面白くなって来て、本物には出来なかった事をしてみた。
それは。
片手の平に乗せて、上に手を添えて。そのままぎゅうっと押し潰す事。
一体どうなるのか一度やってみたかったんだ。
中に入ってる丸いモノがどうなるのか。見たかったんだけど。
これは作り物だからなのか、それも一緒に楕円形に潰れた。
「きゃー!!!」
「あんたは何やってんのよ!」
「いって!」
あやねんが悲鳴を上げて、華楠は俺を思い切り殴って、俺も悲鳴を上げた。
それを見てなのか、周りのみんなが笑う。
涙目になったあやねんにとろりの偽者は奪われて行った。
うん、もういい。用は済んだ。
「マスター、サブマスターも来てメンバー揃った事だし」
フェイが椅子の上に立ってグラスを掲げる。
真似をして俺もグラスを掲げた。周りのみんなもやる事は同じ。
隣で華楠が笑って居たけど、何の事かさっぱり。
「それではみなさん!ギルドメンバー絢音嬢のホムンクルス、とろりの進化を祝いましてー」
『乾杯!!』
カシャーンともガシャーンともつかない複数のグラスのぶつかる音。
乾杯した後は一気と決まっているので、グラスの中の液体を飲み干した。
あれ?おかしい。
喉がカァってならない。熱くならない。
つぅかこれ、水だ。水。
まさか。
「ばーかっ」
「お前ー!」
さっき華楠が笑って居たのはこれだったのか。酒のグラスと水のグラス。
一体いつの間に取り替えたんだよ。
「あんた酒飲むと煩いから、水でも飲んでなさいよ」
「いいじゃねぇか、こんな時くらい飲ませろよ、酒ぇ!」
「そうだぜ、飲ませてやれよ」
酔っ払いが味方に付いた。この押し問答はいつまで続くやら。
少しだけ。縮まったような気がする、君との心の距離。
終。
==========================
ブラックトリップ(BL毒瓶ネタ)の裏っかわです!
蓮と華楠はこうだったんですよっていうお話ですね。だもんで重複している話もあります。
なるべく全く同じにならないように話切ったつもりなんですけどどうでしょうな。
華楠に出た副作用は海月がアサシンギルドで聞いて来たやつの2番目でした。
蓮と瑠玖は華楠も海月も同じモノが出たと思ってますけどね。
ヤったヤらないって話になればそう思うよねー。
して、やっぱりなんですが。ノーマルでも攻め側がヘタレ傾向です。どうした事か。
蓮の場合は無理矢理ヤっちゃって嫌われたくないってのが強い訳ですけど
それがヘタレやっちゅうねん!って言うね。いつか叶うといいね、蓮。
ツンデレ相手だと難しいかもしれないけど。あぁ、そうそう。
ツンデレ。どうですかね、ツンデレ具合なんかは。個人的にツンデレは好きなんですが
自分が書くとなると難しい事この上ないですわ。ただの機嫌悪い人になってる気がしないでもない。
も少しツンデレの作品を見た方がいいですかね。ツンデレって言ったら
戦国無双2の石田三成くらいしかぱっと出て来ない私終わってる・・・?
もしかしたら、メインキャラのお話以外にサブキャラのお話が出来るかもですー。
ここで書くなっていう話だけどもwww
今回出て来た由伊筆頭に、他にも名前付きのキャラが居てですね。
なんか勿体無いなぁとか思ったりして。設定とかは大してしてないんですけど。
カップリングになるか、普通の話になるかは謎ですが。
ザフィはちょっと書きたいんだよなぁ・・・うふふー。
では。蓮と華楠の毒瓶話でした。
少しでもニヤニヤとして戴けたら幸いです(゚∀゚)
20100202/まつもとゆきる。
モドル。