アナタの幸せに 5話
第一印象がとにかく最悪だったのは今でも覚えている。
口を開けば神経を逆なでする言動、腹の立つ行動。
そんな男に愛を囁きまた愛を欲しいと思うなど、その時の自分は想像すらしていなかった。
その上幼い頃既に会っていたという事実に運命的なものを強く感じたし、『愛してるよ』と言ってもらえたのはすごく嬉しい。
これで杜若と自分は結ばれたのだ。
心も――――そして即効カラダも。
甘酸っぱい時間もそこそこに性行為になだれこんだこの現状。
今まで割と身持ち固めでいたのに、特別な相手が出来たとたん何やってるんだろうという冷静な思考もある。
(でも。そういうのもうどーでもいいや。今はただ)
「ん!?…………ンッ……ぅ」
口付けたまま杜若の手が腰に回るといきなり臀部を撫でてくる。
「ん、あふぅん、んぅぅ…」
そのままぎゅぅ。と指を食い込ませて何度か揉みしだいた後、人差し指は迷うことなく秘部をつつきはじめた。
「……はじめからそこっ……あ・あっ・あんっあっ」
唇を少しだけ離し抗議してくる艶司の頬に唇にと杜若はキスを繰り返せば、それだけで艶司は小鳥のような鳴き声を上げる。
「だって一番重要なのってココでしょ。俺にとっても艶司にといっても」
つらっと言ってのけた杜若の手は無遠慮に臀部を揉み続ける。
秘部をつついていた人差し指はいつしか腹の部分で執拗にねぶってきた。
「あんっんっんぁあっ」
「オナニーも全然してなかったんだ」
更にいやらしい質問をなげかけられても、艶司の表情に羞恥の色はない。
ちょっとだけ面白くなさそうに眉をひそめただけだった。
「なんでそんなのわかるのさ……」
「分かるよ〜触ったら。全然イタズラしてもらえなくてさみしかったのぉって訴えてくるんだもん」
「そんなことっ……きゃんっ!」
抗議しようとしたところで下半身の冷たく感じ、短い悲鳴を上げながら腰を浮かせる。
後ろを向くと、どこから取り出したのか小瓶の中身を艶司の双丘めがけてどろどろと垂らしていた。
「きゃんっ。とか艶司わんこみたい」
「冷たいっ!ちゃんと手であっためてよ!」
「そうしようかなーって思ったんだけど。いじってる内に艶司のココすぐ熱くなるだろうからいいやーって」
「……んぅっあっんんっっ」
確かに冷たいのは最初だけで、すぐに熱さと共にぬるつく感触が秘部へと伝わってくる。
「あ……アぁ……あンあんっ」
小瓶の中身でぬるぬるにされた秘部を人差し指・中指・薬指の3本が上下に大きく動き、その上下の動きが徐々に狭く、
小刻みになっていく。
「あっあっあっ……ンぁ……あうぅぅぅぅんっ!」
秘部に振動を与えられるような指の動きが止んだと思うと、いきなり中指を根本まで入れられる。
密かに待ち望んでいたと言ってもいいそれはすぐにじれったさとなって艶司を煽った。
(イヤ、イヤ。もっとして。指増やして。いっぱいココに乱暴して)
杜若の言うとおり、黒松の元に身を寄せてからというもの性行為とは無縁の生活を送っていた。
椚にたしなめられたのもあるが、何より一緒に暮らす黒松に性の気配を感づかれる事がなんとなく気恥ずかしかったからだ。
それが今、杜若の指の動きに早々に焦れてその先を求めている。
自分で思っている以上に欲求が溜まっていたことを自覚せざるを得なかった。
「今度から俺とSEXしない日はいっぱいオナニーしてね。俺にこういう風にされてるとこ想像しながらこういう感じで」
「あァァァァァァァンッッ!」
突然秘部の指を激しく抜き差しされ、いきなり与えられた刺激に艶司はそれだけで達してしまう。
「えーんじ」
達した余韻にヒクつく秘部に指を入れたまま、杜若は艶司の顔を覗き込む。
「……な、なに」
「指1本で今イったでしょ」
「ちょっとだけ……だもん……あっあっあっ」
言い訳をした所で高まる身体は抑えようがない。
達した後も指の動きは止まらず、ある意味『おあずけ状態』だった身体はすぐに次の絶頂を求めて杜若の指を締め付ける。
「ちょっとなの?じゃあ次はもっと激しくイけるように次は指2本にしよっか。イったら今度は3本って増やして」
「あぁっんああぁぁぁッ」
言われたとおり秘部の指を2本に増やされ、心地よい圧迫感にたまらず腰を左右に振ってしまう。
「あ〜あ〜嬉しそうにお尻振っちゃってぇ。そんなにココがいいの?」
ココ、と言いながら秘部の奥へ奥へと押し込まれる指の動きが止まらない。
「…ぁぁぁッそれぇっゆびでぐりってッあぁっあんっあんあんあんあんッッ」
「え〜好きなんじゃないの?えっちなこと言われながらこうやってぐりぐりぐりーって」
「あぁぁぁぁぁぁんっっっ!!!」
奥の気持ちいい箇所を指先で文字通りぐりぐりと押しつぶされ一際高い悲鳴が上がる。
「あんあんあんっあぁんっあんあんあぁぁぁぁんっっっ」
そこからはもう秘部から抜き差しされる指だけに意識がいってしまい、
艶司の口から零れるのは意味を持たない嬌声ばかりになった。
「あっまたっ…きちゃうきちゃうあぁんきちゃうぅぅっ」
「いいよーきちゃっても」
「…!!……いやいやぁっ!それいやぁぁっ………っ!?」
急に指の動きを止められ戸惑うのもつかの間、艶司の耳元に囁かれる低い声。
「うーそ。ココだけいじられまくって女の子みたいにイキたいクセに」
「それ、はぁッ……」
ただただ秘部を弄られるだけでイってしまったのは正直気持ちよかったからだし、やめて欲しいなんて微塵も思っていない。
ただなにもかもこの男の思うままなのが癪で『イヤ』などと口先だけの言葉を発してみただけだ。
艶司のそんな心情を見透かした杜若の指の動きはすぐに再開し、先ほどよりも一層激しくなる。
「イきなよ艶司。えっちな声いっぱい出してイって見せて」
「あぁっあぁっきちゃうきちゃうっあんあんあぁぁぁぁんっっ!!」
それこそ女のような高く甘い声を張り上げまた射精せずに達してしまう。
「は〜い、イったから約束どおり次は指3本ね〜」
「ンあぁぁぁぁぁッッ」
ぐりゅ、とさらに指を増やされ3本の指がやや強引に捻じ込まれるが、ただただ気持ちよくて嬌声しか出ない。
「あんっあぁんっあぁっゆびぃっあンッッ」
もっといっぱい動かしてほしくて腰をくねらせると、それに応えるようにナカの指が乱暴に蠢きはじめる。
「あんっあんっあんっあんっ」
(気持ちいい。もっと、もっと。もっと)
秘部を指でぐちゃぐちゃにされながら既に立ち上がっていた雄を杜若の腹部に擦り付けたのはほとんど無意識だった。
「だ〜め、艶司」
「……ひんっ……!?」
急に身体が浮き、杜若の上に乗りあがる形になっていた艶司の身体は軽々抱き上げられ、
そのままころりとベッドの上へ仰向けに寝かせられた。
「俺のお腹使っておちんちん気持ちよくしようとしてたでしょ。ソレはまだだーめ」
「へ?……ひゃぁんっっ!」
自分で雄を腹部に擦り付けた行為を自覚する間もなく、杜若の舌先で雄ぺろりと舐めあげられた。
短い悲鳴を上げるも、愛撫はそれ以上貰えずにすぐに離れていってしまう。
雄を放られてしまったさみしさを感じる暇なく秘部の指の動きは激しさを増していく。
「ココをいじるのは3本指でイってからね……どうせすぐでしょ」
「そんなことっ……ひゃっ……やぁぁぁぁぁぁぁんっっ!」
ぐちゃぐぷぐぷぐぷぐちゃぐちゃぐぷっ。
雄には少しも触れてもらえないまま、ただただ秘部だけをかき混ぜられる。
「いやぁんっいやんっあぁぁっやぁんそれいやぁぁぁぁぁぁっ」
「嬉しいくせにイヤイヤとか心にもないこと言っちゃってぇ」
「へんになるのっきもちよすぎてへんになるのっソレへんになっちゃうのぉっああぁんきちゃうまたきちゃうぅぅぅっっ!」
「じゃあ見せてよ。艶司が変になっちゃうとこ」
「あ、ア…アァァァァ………………………!!!!」
喉をいっぱいに逸らし、無意識に腰を浮かせて艶司は3度目の絶頂を味わっていた。
「あぁんっあぁんっ…ア………ひゃぁぁあっ!うぅぅぅぅんっっ」
ずっと放っておかれた雄をいきなり根本までしゃぶられ、あっけなく杜若の咥内に精を吐き出してしまう。
「あぁあっ………うく…ぅ…ぅン…ン……」
入りっぱなしだった秘部の指はやっと引き抜かれ、余韻を残すソコは艶司の意思とは関係なくヒクつきが止まらない。
「はぁ……ン……はぁ……あぁんっ」
余韻で呆けていた時間はほんの僅かで、休むまもなく今度はころんとうつぶせに倒されてしまった。
「なに……あッ」
「ん〜艶司の肌きもち〜い」
項を甘噛みされながら艶司の背中に感じるのは杜若の厚い胸板の感触。
「んッン……あぁッあ、ン……」
シーツの心地いい手触りを楽しみながら後ろからは杜若に抱きしめられる。
前後に気持ちのいいものに挟み込まれ、艶司はそれだけで小さく喘いでしまっていた。
艶司が身じろぐたびにシーツが雄に擦れ、さらに上からのしかかられれば緩く圧迫される。
「そのままシーツでこすこすして」
「あァッあっ…」
言われるまま腰を揺らして雄をシーツに擦り付けるといっぱいいじくりまわされた秘部に再び杜若の指が這う。
「ああぁぁぁぁんっ」
秘部に指が3本同時に入ってくるのに合わせて艶司は強めに雄をシーツに押し付けた。
その様子を楽しそうに眺めながら杜若は身を起こす。
杜若が離れていって人肌が恋しくなるが、見下ろす男の欲情した視線に艶司の身体は熱を帯びたままだ。
「いっぱい動いていいよ艶司。シーツの『さわり心地』いいでしょ?」
(ちょっとなにその見物体制!シーツにモノこすりつけてる僕がすっごいバカみたいにみえちゃうじゃん!
何が『さわり心地』だよオナニーに最適シーツとか言いたいわけ!?ばか!えっち!!変態っ!!)
「あっあぁっひぅっうぅんっあうあうあうぅぅっあ…くゥゥぅんッッ…」
思い描いた言葉は何一つ伝わらず、杜若の視線を感じながら艶司は腰を押し付け雄をシーツに擦り続ける。
秘部に入れられた杜若の指は先ほどのように激しく動かされることはなかったが、
艶司の大胆な動きのせいでめちゃくちゃにかき回されているように錯覚していた。
「イっちゃうイっちゃうっあぁっあんアんあァァァイくぅ…………!!!!」
身悶えるようにしながら甘い泣き声と共にシーツへたっぷりと精を吐き出す。
「ア……アァ……ッ」
達している間も男の視線を痛いほど感じ、秘部の方もまたこっそりと達していた。
「びちゃびちゃ」
「あッ……」
シーツに広がったシミをなぞる杜若の指先をボーっと見つめていると、ずい、と顔を近づけてこられた。
「えーんじ。そういうぽやっとした顔はぁ、SEXが終わった時にするものでしょ?」
「……ひゃぁぁあっ!?」
ものすごい力で抱きかかえられたと思うと今度は仰向けに寝転がされる。
「もぉっさっきからヒトのこところころころころって荷物みたいにっ……!」
「艶司のカラダ余すとこなく食べたいんだもーん。だから、明かりつけていいよね?」
「え、ちょっ」
艶司の了承もなく杜若はさっさとベッドサイドの明かりつけてしまう。
眩しさに艶司は手の甲で顔を覆うが、その間に腰を軽々持ち上げ足は左右に大きく広げられた。
確認するまでもなく何もかもを杜若にさらけ出すような形になってしまっているだろう。
「顔隠したっていろんなとこ丸見えな訳なの。きゃー艶司のえっちー」
「明かりがまぶしいの!大体えっちな格好させてるの誰だと……!」
漸くまぶしさに慣れてきたのか手を外して杜若に抗議した艶司の声が途切れる。
晒されたのは杜若もまた同じだった。
自分とは全く違う筋肉質で均整のとれた身体。
何度も抱きしめてくれた腕、欲に満ちた色で見下ろす瞳。
杜若の全てから目が離せない。
「ぼくの……ぼくのっ……」
手を伸ばし、指の甲で杜若の髪の毛を撫ぜながらうわ言のようにつぶやく。
「ぼくだけの……杜若」
「―――――」
「ひゃんっ!」
短く悲鳴を上げ我にかえれば、下半身に感じる熱くて固い感触。
「もぉ、艶司がやらしい目で俺のこと見るから〜」
「あ、あっあっ…………あんっっあうっあぁんっあぅぅぅんっっ」
秘部にぐりっぐりっと断続的に熱いモノ――杜若の雄を押し当てられると、途端に艶司の口から甘ったるい声が洩れてしまう。
「もっとね〜色々したいって思ってたんだよ?あと3・4回くらいは女の子イキさせちゃおうとか、
もしかしたらほんとに膨らむんじゃない?ってくらいおっぱいもみもみしたりとか、
乳首とかもいっぱいいじったり吸ったりしたかったし。結局一度もしてもらってなかったお口でご奉仕とかさぁ」
「あぁっあンっあぁんっあぁぁんっっ」
会話の間に杜若の雄の先端は艶司の秘部を徐々に圧迫しはじめる。
少しでも身を進めれば入ってしまう体制と言葉嬲りに、艶司は達したばかりの雄からだらだら先走りを垂らして喘ぎ続けた。
「でもそんな事どうでもよくなっちゃった」
「ひっあっ……………あァァァ…………ッッッ!」
秘部をいっぱいに広げて入ってくる。ずっとずっと待ち望んでいたモノ。
「そういうの、もうどうでもいい。早く艶司が欲しい」
表に裏にところころころころ転がされ、性生活を暴かれながら愛撫され。
了承もなしに明かりをつけられ恥ずかしい格好で裸を見られ。
とどめに視姦されたと言いがかりをつけられた上で前戯とかどうでもいいと言い放たれる。
これではムードも何もあったものじゃない。
それなのに。
「ぼくを……あげる」
杜若の胸板を撫で回しながら強請る声は想像以上に甘い。
「うん。全部ちょうだいね」
「…………あうぅぅぅぅぅんっっ!!!!」
熱いモノで一思いにカラダを突き刺されるような感覚。
艶司がやけにうるさく感じたのは、自ら上げた嬌声ではなく心臓の音のほうだった。
きっとこれ以上は無理だというくらい杜若と密着して抱き合っているからだろう。
「あっあっあっあんっ……あぁぁんッッッ!!」
最初は馴染ませるように緩い抜き差しを繰り返していた杜若の雄が、ふいうちのように奥の部分を強めに突いてきた。
「ココ……俺が指でいっぱいいじったところ、こうやってズコズコしたら艶司何回イっちゃうかなぁ」
「ア……アァッ………ァ……!!」
「あ、1回目」
達してしまった事はすぐに杜若にばれてしまう。
「さっきからココばっかりでイって、艶司本当の女の子みたい」
「だってきもちよくなっちゃうんだもん……あっ……アァァァァァァーーーーーッッ!!!」
動かされた場所が指で何度も達したイイ場所だったせいもあり、艶司は悲鳴に近い嬌声を上げてまたのぼり詰めてしまう。
「2回目。そんなに気持ちいい?」
「あぁっあぁんっいぃっいぃっあぁんいぃっ」
「俺もねーすごく気持ちいいよ……すぐ出ちゃいそうなくらい」
淡々とした言葉とは裏腹に秘部を蹂躙する杜若の雄は熱く固い。
相手も達してしまうほど興奮している。その情欲は他でもない自分が与えているのだ。
そんな事を意識してしまえば、艶司の身体は浅ましいほど簡単に追い上げられた。
「……っちゃうっまたっいっちゃうよぉっいっちゃういっちゃうぅぅっっ」
やっと絶頂を訴えられたと思うと、ぬるんと艶司の雄に杜若の指が巻きつく。
杜若を快楽まみれにさせてやりたくて腰を前後に揺らすも、雄を握っている杜若の指が
余計に擦れて快楽を与えているのか貪っているのか分からなくなる。
「ひゃ……ァ……いくっいくうぅぅっあんっあぁぁぁぁぁぁ…………ッ!!!」
ベッド自体がゆれる程激しく軋み、数度激しい動きで艶司はまた精を吐き出してしまうが、あまりの激しさに意識が一瞬遠のく。
「ア……!んっ……んぅ……ン……!」
呼吸もままならないほどのキスで意識を引き戻され、指で散々嬲られた秘部の奥の奥を大きく一度突き上げられた。
「ン……ン……ンゥッ………ッ……!!!!」
唇を塞がれていたせいで達してしまっても声が出ず、口の端から零れてくるのはくぐもった声。
艶司の足の間からは涎でも垂らしているかのようにだらしなく精がシーツへと流れ落ちていった。
「…………んぁっっ!あついっあついよぉっあぁっあっあぁんあんっっ」
唇が離れていった後もいいようにナカで暴れまわる雄にされるがままになり、艶司の身体はまるで子うさぎのように跳ねる。
どんな風に扱われても杜若が真っ直ぐに自分だけを求めてくれるのが、艶司にはそれが心地よくて仕方が無かった。
「あー…出そー……」
「で……っ…んぁんっあっ」
杜若が達しそうになっていることを知ると、反射的にきゅうきゅう。とナカで暴れまわる雄を締め付ける。
「艶司のえっちぃ。俺がイくとこそんなに見たいの?」
おどけた口調の中に確かな欲を感じ、煽られた艶司は断続的な締め付けを繰り返す。
「イって、イってよ、僕と一緒にイってぇっ」
鼻にかかった声で強請れば瞬間耳に感じる熱い吐息。
「いいよ。艶司のおねだり俺断れないもん」
ちゅ。と頬にキスする仕草はとても優しいのに、奥を突いてくる雄の動きはこんなにも荒々しい。
「ひぁっあうっあうぅんっっ……あっあ……ッ…………!!!!」
大きく開いた口から最後に洩れたのは声なき声。
艶司が腹の上に精を撒き散らすと同時にどくどくとナカに注ぎ込まれる熱いモノ。
「ア……ッ……ひぁあぁぁっ!?」
共に果てたという余韻もさめぬまま杜若が身体を引き、そのまま抜かれる―――とと思われた雄はぐぷんとまた根元まで突き入れられる。
「あ、あっ、あ……ァ……」
吐き出された精を出さぬまま、お腹のナカを文字通り『いっぱい』にされる感触。
「勃ってるの、分かるよね」
聞こえた声は達した直後とは思えないほど熱を帯びている。
「俺がどれだけ興奮してるか艶司なら分かるよね、ほら」
「あぁぁっあんあんあんっあぁんっ」
何度もイかされた筈なのにナカで感じる熱さと大きさに、まだ足りない。という気持ちが頭をもたげる。
「……ぼくも、まだいっぱい欲しいよぉ……」
ぐりぐりと肩に額を擦り付けながら甘えた声を出せば、それに応えて繋がっている部分がくちゅくちゅと粘着質な音をたてはじめる。
「あっあっ……あっア……ンっあぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ」
小刻みな出し入れから突然ずん。と音でも聞こえてきそうなほど強く突かれ、艶司の華奢な身体は大きく揺さぶられた。
ぐぷぐぷぐぷっぐちゃぐちゃぐぷぐちゃぐちゃっ。
「あぁぁぁーーっ!あぁぁっあぁぁっあうあうあうっひぃんっあぅぅんっ」
聞こえてくる音が秘部を突かれている音なのか、雄を杜若の腹で擦られる音なのか、
杜若の精がおなかの中をかき混ぜられる音なのか分からない。
雄で滅茶苦茶にされるのが気持ちよくて、ただただ艶司の口から出るのはいやらしい声。
自分の秘部が、杜若の雄によって激しく暴かれていく。
ソレ以外のことなんてもう何も考えたくなかった。
「ひんっあぅっあうぅぅっあっあぁぁぁぁぁーーーーーーッッ!!」
イク。と意思表示すらろくに出来ない。
獣のような鳴き声を上げ艶司が精を放つと、同時に艶司のナカにもまた熱いモノたっぷりと流し込まれていく。
「アぁっア、アァァ…………!」
べろり。頬を舐め上げる仕草に感じるのは杜若の本能的な性欲。
(あぁ、またおなかにいっぱい出されたままでナカをめちゃくちゃにされちゃうんだ)
「は、はぁ……あぁんっ!」
そんなある意味期待していたのに反し、杜若はずるりと雄を引き抜いてしまった。
「……………………へ?」
艶司の口から思わず素っ頓狂な声が出る。
「いきなりなに?どーゆーことっ!?」
全く予想していなかった態度に嬌声ばかり上げていた艶司はやっと意味のある言葉を発した。
「ねえ、どうしよ艶司」
先ほどまで激しく求めていた者とは思えないどこか無機質な声に艶司が視線を上げると、見下ろす杜若の顔には表情がない。
「なんかね、艶司が欲しいのが全然とまんなくなっちゃった」
無意識なのか意図的なのか。杜若の手が艶司の喉もとを滑る。
「欲しい。艶司のこと全部。欲しい。壊したい。欲しい。壊したい――――どうしよう。ねえ」
「…………」
矛盾だらけな言葉の端に感じたのは狂気。
首もとにかかった手がそのまま締め上げ艶司を殺してしまっても不自然がないくらいだ。
本来なら恐怖を覚えるであろう狂気を目の前にしても、当の艶司は口をへの字に曲げただけだった。
「ん」
艶司が両手を差し伸べてきた意味が分からなかったのか杜若は2・3度瞬きする。
「にぶいなぁだっこしてっていってるの」
「この流れでそれ言っちゃう艶司ちょおかっこいー」
「今おねだりしてるのに明日だっこねとかなんの冗談さ!!うだうだいってないではやく僕のことぎゅーってしてっ!!」
「…………はぁーい」
意表をつかれたか毒気を抜かれたか。返事をした杜若の声色から狂気の感情は既にない。
言われるままその腕を艶司の身体に回した。
「もっとぴっとりくっついて!包み込むように!でも優しくぎゅーってするの!」
「そこにえっちなオーラは出しちゃだめですかー」
「いいけどすっごくすっごく大切なもの扱ってますっていう気持ちの方を前面に出さなきゃだめだからね」
「えっちなオーラは背面かー……こーお?」
「うん……そう」
やたらと注文をつけてくるのに文句を言うでもなく杜若は小さな身体を抱きすくめると、
気持ちよさそうに目を閉じ艶司はそれを享受する。
しばらくの間杜若の逞しい胸板に頬ずりしていたが、やがて艶司はぽそっと口を開いた。
「壊したいとか、ばかじゃないの」
「うん、でも壊したくなっちゃった」
「やっぱばかだよ……全然わかんないとか、言わないけど」
相手を置いてきぼりにした一方的な愛情。かつての艶司なら知っていた。
ただ、今は違う。
やさしく見守ってくれること。
上手にできたらくちゃくちゃって褒めてくれること。
駄目なことは駄目って怒ってくれること。
自分を大切にしてって言ってくれたこと。
前に進みたいって思わせてくれたこと。
ありがとうって言ってもらえること。
頼ってくれること。
黙って隣に立ってくれること。
そっと背中を押してくれること。
たくさんの形のたくさんの愛情を今は知っている。
だから自分がこれから杜若に嫌というほど教えていけばいい。
今まで自分を見守ってくれた人達が艶司にしてくれたように。
『愛してるよ』と。
ただそれだけのことだ。
「ん、んーっ…………あっ」
しばらくの間杜若の胸に頭を擦り付けていたが、思い立ったような声を出してもぞもぞ動き出す。
「交代しよ」
「交代?」
「もぉわかんないかなぁ、今度は僕がぎゅ―してあげるって言ってんの。お前でっかいんだからもちょっと下におりてよ」
「元気いっぱいだね〜艶司。散々あんあんいってイきまくったクセにまだイかせ足りないのー?」
「………………………………はぁ?」
聞き返した艶司の表情に羞恥は無く、あるのは逆切れという名の怒りだった。
「なにいってんのあんなんで足りるわけないじゃん!!!!僕はね、今の今まで自分でも
ドン引きするくらいのSEXとは無縁の生活してたの!この僕がだよ!?
あの程度で満足してるなんて思ったら大間違いだからねっ!」
「きゃー艶司すてきーだいてー」
清清しく言い放った艶司に向かって若干棒読みで杜若がぱちぱち手を叩いていると、その頭を両手でぐいぐいと押さえつけられた。
「ほらいーから!いつまでも見下ろしてないでおーりーてーっ!」」
「ねー艶司ー。これ俺が下にいってるんじゃなくてただ艶司が上に移動してるだけだと思うの」
確かに先ほどから必死に杜若の頭を抑えて下に移動させようとしているのに、体格の違いか杜若は全く動いておらず、ただ自分だけが動いてベッドヘッドに頭をごちりとぶつけただけだった。
「ううううるさいっ!分かってるならさっさと下にいってよ馬鹿っ!!!」
「あぁん艶司の愛がいたい〜」
ぽかぽかと頭を叩かれながらももぞもぞと身体を下に移動させ、艶司の胸あたりまでおりた。
「これくらい?」
「うん。そのままじっとしててよ」
「んー1分くらいならがんばる。それ以上になったらおっぱいぺろぺろしちゃうかも」
そう言いながらも大人しくしている杜若へと腕を伸ばし、胸に抱くように引き寄せた。
(あ……悪くない。かも)
普段見上げる立場の男を見下ろし、その胸に抱く行為は思いのほか心地いい。
ずっと昔に出会っていて、とっても大好きだった『おにいちゃん』。
そして今は気に食わない、そしてたまらなく愛しい男。
湧き上がる杜若への独占欲を認めながら、額へそっとキスを落とす。
「離してなんてあげないんだから」
「……」
「あンっ……ばかぁ……」
返事の代わりに乳首を舐められ、貶しながらも拒絶せず杜若の頭を何度も撫でてやる。
「離れるつもりなんてないもーん」
おどけた物言いながらも決して逃がすまいと身体に巻きつく杜若の腕。
全てに安堵し、艶司は貪る指と舌に再び身を任せた。
* * *
「んー…ん、ん〜?」
カーテンの隙間から差し込む光を避けるように唸りながら背中を向けた杜若はすぐに異変に気づいた。
「……うそぉ〜ん」
自分だけしかベッドにいなかった事実に間の抜けた声を出し、ベッドサイドにあるライセンスを手繰り寄せた。
『ぐっもーにんまいすぃーとはにー』
『げっこんな朝早くに誰のwisかと思えば!』
『ねえ艶司っていまどこ?』
『プロの東カプラに移動中。お前のとこのお風呂勝手に使わせてもらったから。
あとさ、僕いつもはちみつ入りのシャンプー使ってるから次までに用意しといてね』
『わかった。そんでもってなんで東カプラに移動中なの?』
『空間移動使うためだよ。東カプラがお前のお屋敷から一番近いし』
『もしかしてもう帰っちゃうの?』
『もしかしなくても帰るよ。黒松の朝ご飯つくらなきゃなんないもん』
『えええええパパのごはんのためだけに恋人置いてきぼりとかひっどーい!杜若泣いちゃう!』
『だって黒松ってば僕がいなかったら朝ごはんコーヒーだけで済ませちゃうんだよ?
昨日下ごしらえとかなんにもしないで来ちゃったから急いで帰んないと!』
『艶司ってばどこまでもパパらぶなんだからっ朝っぱらからベッドでいちゃいちゃとかするの楽しみにしてたのに〜』
『もう大の男が情けない声出すなっ!別に今日はできなくても今度でもいいじゃん』
『え?』
『今日は帰るけど、ちゃんとうちの朝ごはんの準備してからならもうちょっと長くいれるだろうし、
お前の言う、その、いちゃいちゃとか朝にしたっていいし』
『ごめん艶司よく聞こえなかったからもう一回言って。いちゃいちゃの部分を特にくわしく具体的に』
『うぅぅうるさいっ!とにかく今日はこのまま帰るからね!!』
『え〜ならせめていちゃいちゃの詳細だけでも聞かせてよ〜』
『何度聞かれたって絶対に言わないから!…………そういうのは、wisじゃなくてすぐそばにいるときにっていうかベッドで……』
『たまにはさめてくるデレ部分のせいで俺の下半身がえっちな意味で大変なことになりそうなんだけどどうしたらいいと思う?』
『しっ…知らない馬鹿っ!wis切るから!またねっ!!!』
言うだけ言ってぶつりと切れるwis。
それきり艶司からの声はなく、杜若はもぞもぞとベッドに寝なおす。
「『またね』か……」
ぽそっと独り言を呟く。
恋人は側にいないのに、ひどく幸福な気持ちでそのまま一人寝に入る――――――筈だった。
『……………………………………………………………………あのさ』
少しもたたない内に届くものすごくきまずそうな艶司からのwis。
『なぁに〜こっち戻ってくるの?ぎゅ〜もいいけどぐちゃぐちゃがつがつとかでもいいよ〜』
『あ、うん……違う!そうじゃなくて!!今うちに着いたんだけどなんかギルメン全員いて……その、杜若を今すぐ連れてこいって』
『へーーーーぇ?』
『な、なにさ』
『要するに俺のとこ行ったって事もえっちしたのもらぶらぶ関係になったのもぜ〜んぶ皆にばればれでなによぅちゃんと紹介しなさいよ〜ん的な?』
『………………うぐっ』
『はい図星ー。艶司としてはさっきのwisできれーいに終わりたかったのに予想以上にたきつけられてwisせざるを得なくなっちゃったってとこでしょ〜うわぁちょお恥ずかしい〜艶司今どんな気持ち?ねえどんな気持ち?』
『あぁぁああああもううるっさいっっ!!!!だらだらしゃべってるヒマあったらさっさと起きろ!それから!
今から皆の分の朝ごはん作らなきゃならないから途中市場で買い物してきて!いっぱいあるからちゃんとメモしてよ!』
『え〜杜若ひりきだからいっぱいなんてもてない〜』
『お前が非力とか何の冗談さ!今から言うからね!』
「バナナに淡白なソース……あぁん愛の量が半端ない〜」
口調こそ面倒くさそうにしながらも右手は既にサイドテーブルにあるペンを走らせ言われたものをしっかりと書き込んでいる。
『じゃあ今言ったのちゃんと全部買ってきてよね』
『はぁ〜い』
『あとね』
『なぁに〜お買い物の追加〜?』
『杜若、愛してるよ』
やはり杜若の返事も待たずにwisは切れてしまいそれっきり何も話しかけてこない。
「本当、ちょこちょことはさんでくるねぇ」
一言そう呟くと、寝室を後にした。
「おはようございます、お出かけですか?」
吹き抜け階段から降りてくる杜若の姿を見つけ、執事がふかぶかと頭を下げる。
「おはよ。今から買い物いってくる。俺のハニーが使いっ走りを命じてきたから」
「左様でございますか、いってらっしゃいませ」
「あとさ、はちみつ入りのシャンプー用意しといて」
「かしこまりました。杜若様」
「ん?」
杜若がドアの隙間から顔だけを出して見せれば、微笑んでいる執事と目が合う。
「お幸せそうで何よりでございます」
「でっしょー?」
誰も見たことがないようなくったくない笑顔で一言返し、杜若は屋敷の扉を閉めた。