i love you baby baby baby baby baby

 

こんこん。

「四季菜?入るぞ」
「はいっ!あっやっぱだめ!入ってきちゃだめだからね彩マス!…はきゃっもうこんな時間!!」
ドアノブを回そうとした手を止め、彩は言われた通りその場から動かずにその向こうにいる四季菜へと声をかける。
「研究中って聞いたけどいったん切り上げてギルド合同会議参加してくれるか?今週ルイーナから
 明亭に攻めてくるギルドがいくつかあるらしいから消耗品関係で四季奈の意見聞きたいんだ」
「ごめんなさいすぐ行くからちょっと待って…はきゃあっ!」
四季菜の悲鳴と共にガシャンとガラスの割れる音がして思わず彩は部屋に入りそうになってしまう。
「四季奈、おい大丈夫か?っていうか何で入ったら駄目なんだ?」
「大丈夫!大丈夫だから絶対入ってこないでね!!」

ぼぼぼぼぼんっ!

「四季奈開けるぞッ!!」
それから何かが爆発したような音が聞こえた瞬間彩は『入ってくるな』という四季奈の忠告を無視し、ほぼ反射的にドアを開く。
「わっ……おわぁぁぁッ!?」
その途端部屋からものすごい勢いであふれ出て来る煙に彩は両腕で顔を覆った。

「おいおい、シャレになんねーオチは無しだぞー?」
合同ギルド会議で明亭に集合したのはいいものの、四季奈が製薬や新薬の開発に利用するための
専用部屋――――通称『研究室』に入り浸ったまま出てこない四季奈を迎えにいった彩までもが
戻ってこないため、追撃役を自ら申し出て様子を見に行った史乃はその研究室からもくもくと煙が出ているのを見て眉を潜める。
「――――彩ッ!!」
煙の中廊下に付しているらしい彩の金髪がちらりと見えたと同時、足早にかけより抱き起こした。
「彩!おい彩大丈夫か!?…………あ…………?」
腕に抱いた彩を見た途端に史乃は絶句し固まった。
そんな史乃をよそに抱き起された彩はうーんと小さく唸りながら目を開く。
「あ…史乃…」
「………………………………………………………………………」
「どした史乃。通りすがりのオークの群れにでも会ったような顔して……あっそれより四季奈!
 四季奈は大丈夫なのか?なんかすげー爆発音が聞こえたんだ!!」
「いやなー…四季奈が心配なのはまぁ分かっけどあんたはまず自分の心配してもいーと思うぞー?」
「別に俺は何も………………ん?」
史乃に言われて彩は違和感に気づいたらしい。
「なんで俺の服こんなぶかぶかなんだ?ってかなんか史乃がすごくでけえ!」
「服と俺がでかくなったんじゃなくてなー」
「あっ!!!」
がぶがぶの服に反するような身体と大きくなったかのように見える史乃。
彩はやっと自分が今置かれている境遇を理解する。
「もしかして…俺が小さくなったのか?」
両手を目の前に驚愕しているであろう彩の表情はあどけなく、触れる金髪はいつもよりもふわふわで柔らかい。
どういう訳か幼い子供の姿になってしまった恋人を前に史乃は複雑な笑みを浮かべるしかなかった。
「そーゆーことだなー。随分新手の赤ちゃんがえりっつーかなんてゆーか」
「赤ちゃんがえりじゃねえし!俺はただ四季奈を呼びに行って…」
「彩マスごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!!」
部屋の奥から走ってきた四季奈が2人の前でずさーっとスライディングしながら正座し、ふかぶかと頭を下げる。
「ちょっと危ない薬品使ってて部屋中そのガスで溢れかえってたの!私がきちんと説明しなかったせいでこんなことになっちゃって!!」
「そんなことより四季奈!お前は大丈夫なのか?」
「私は研究前に事前処置してたから大丈夫なの!でも彩マスが…!」
「お前が無事ならいいんだ。ごめんな四季奈、入ってくるなって言ってたのに俺はやとちりしちゃって」
四季奈の無事を確認すると安心したようににっこりと笑い、それからしゅんとうつむいた今は
子供の姿の彩に顔を上げた四季奈はきらきらと瞳を輝かせる。
「自分の事よりも私の事真っ先に心配してくれるちっこい彩マスかっこかわいい…♪」
「四季奈戻ってこーい、彩マス元に戻す方法ねーのか?」
「はッそうだ!萌えてる場合じゃなかった!」
思考がどこかに行きかけていた四季奈だったが、史乃の一言で我に返る。
「えっと浴びた煙の濃度と今の外見年齢から逆算して…」
机の上に積みあがっている本の1冊を取り出しものすごい勢いでアルケミスト系独自のものであろう
公式を書き始めた四季奈の冷静さを見るに、どうやら元に戻る方法はあるようだ。
少しだけホッとしつつ彩を膝の上に乗せて史乃はそれを見守っていたが、すぐ目の前にある
彩のつむじが無性に可愛らしくてつんつん指でつついてみる。
「どした?」
「んー…」
「うっはくすぐってぇって史乃」
見上げる仕草の可愛らしさに思わず抱きしめて頬ずりすると、彩が膝の上でくしゃくしゃと笑いながら拒まず史乃の赤毛を撫でている。

「……………………」

四季菜の手が止まり、涎の垂れそうな勢いで凝視している事に気づいた史乃はおーいと四季菜に声をかけた。
「逆算してどーなったんだー?」
「あぁぁぁあああうん、もうちょっと待ってね!」
「顔にやけてなーに考えてたんだかー」
「別に史乃君のお膝にちょっこり座ってるちっこい彩マスのほっぺにすりすりしてるのに
 ろりしょたちっくな妄想なんかかきたてられてないよ!そんなこと全然ないから!!」
「お前絶対それかきたてられてるだろー。俺がお隣露店で何度お前のそーいう顔
 見てきたと思ってんだー?彩マス、ちょっと四季奈から離れてっかー」
四季奈を作業に専念させるため、距離を置こうと史乃は彩の脇に手をかける小さな身体を抱き上げようとした。
「…あっ史乃まてだっこはまて!ぱんつ脱げるぱんつ脱げる!」
「あー?」
「あ、脱げた」
抱き上げられた彩の足の間からズボンと一緒に下着がずり下がりぽてんと床に落ちる。
「ぱんつ……脱げ…」
その光景を目の当たりにした四季奈は一言呟きばたっと倒れてしまった。
「おわぁあああああーッ!!四季奈!おい史乃っ俺が露出狂まがいな事やったから四季奈が倒れたーーーーーー!!!!」

* * *

「結局元に戻るのは具体的にいつか分からない、と」
時計はもうすぐ日が変わりそうな深夜、静まり返ったリビングに広げた資料に視線を
やりながら桜子は向かいで残りの酒を煽っている史乃に尋ねる。
「四季奈の計算上だと大体2~3日後くらいになるらしーな。でもあくまで予想計算で
 ぶっちゃけっと今日にも戻るって事もないともいえねーから子ども用の服は着せないようにしてくれーだってよ」
「で、その結果が………」
桜子の視線の先にはがぶがぶの服を身に着けた小さいままの彩が淹れたお茶のマグカップを桜子に差し出した所だった。
「ほららこ、ミルクティー。あんま無理すんなよ」
「ありがとう、でも彩もそろそろ寝た方がいいんじゃないかな。お子様はもうとっくに寝る時間なんだし」
「確かに今身体はお子様だけどあくまで身体だけ……………だし」
狩りにこそ行かなかったものの市場への買い物、夕飯の支度、トメの世話と彩はいつもと
変わらずに過ごしたが、その『大人のサイクル』は小さくなった身体は堪えたらしい。
桜子としゃべりながらふあぁぁと欠伸を混じらせる姿は今にも寝てしまいそうだった。
「俺もそろそろ寝っかな~」
グラスを流しに置いた史乃がひょいっと片腕で彩の身体を抱き上げる。
「ん…史乃?」
目をしょぼしょぼさせて肩に顔を擦り付ける小さな彩に妙な愛しさを覚えつつ、
史乃は眠いせいかほとんど身を預けた状態の彩をよーいせっと抱え直した。
「彩マス、元に戻るまであんたが寝る場所俺の部屋な」
「いいけど…なんでだ?」
史乃の肩に軽く手を回しながら首を傾げてみせる彩に桜子が代わりに答える。
「そうした方がいいと思うよ。今日の会議で例のギルドがおかんむりって澪が言ってた事だし」
「あー…」
桜子の言う『例のギルド』というのは理をはじめとし琉風や、彩自身も迷惑を蒙った事のあるハイウィザード・艶司のいるギルドの事である。
前回明亭に他ギルドと一時共闘でも組んだのかかなりの勢力で攻めてきたのだが、最終的にはそれを退けてしまったのだ。
相手の方はと言えば完全に負かすつもりだったところがそんな結果になってしまい
相当腹を立てているらしいというのはもちろん会議に参加していた彩も承知の話である。
「うん、わかった」
自分の今の状況が戦力になるかを冷静に考え、史乃の提案を受け入れた。
―――かに見えたが、史乃にべったりとくっついている彩は逆に史乃と一緒に寝ると
甘えている子供のようで、なんとなく同じ印象を持ったのだろう史乃と桜子は『同じ事考えてたな』と、
彩の見えない所で顔を見合わせ笑い合った。

「ほれー」
「あははっやっぱベッドもでっけー!」
やはりがぶがぶのパジャマに着替えた彩は史乃の腕から離れてベッドに転がる。
「だからそれはあんたが今ちっさいからだろー?」
明かりを消してベッドにもぐりこむと、彩はいつものようにぴっとり寄り添ってくる。
その身体は片腕ですっぽり収まってしまうほど小さくなってしまっているが。
「元々史乃ってがっしりした体格だったけど俺が小さくなったせいでもっともっと逞しくなったような感じするな」
笑いながら抱きついてくる今の彩は子供そのものなのに。
それなのに少しだけ高く甘い声に小さいながらも抱きしめるその腕から感じるのは愛しい人の気配。
恋人なんだから当然だという言い訳と今は紛れもなく子どもの姿という背徳感が同時に史乃を襲う。
夜遅くまでの露店やらPT狩りやらでここ数日2人きりになる機会が無かったのもあり想像以上に溜まっていたらしい。
今は抱いてはいけないというこの状況が更に史乃のケダモノゴコロに拍車をかけていた。
「史乃」
すり、と名前を呼んだ彩の柔らかい金髪が顎に触れた感触でぶちりと何かが切れる―――前に史乃は素早く彩の身体を抱き上げた。
「史乃?どこ連れてくんだ?ちょっ…!」

「あれ…史乃どうしたの?」
ドアを開けた呂揮は丁度寝ようとしていた所なのか目を擦りながら目の前に立っている史乃を見上げた。
「ん」
史乃が抱いている彩を差し出すようにしてきたので呂揮は怪訝そうな顔をする。
「元に戻るまで史乃が一緒に寝るって話じゃなかったっけ」
「犯罪防止にご協力よろしくー」
「うん、すごくよく分かった」
史乃の言わんとしている事を把握したのか呂揮は受け止めるように彩を代わりに抱き上げた。
「彩マス、という訳なんで俺と寝ましょう」
「何が犯罪防止だよわけわかんねーし!!」
「色々彩マスの知りえぬ葛藤があるっていう事ですよ。ほら、史乃から手を離して下さい」
「やだやだやだー!史乃っちゃんと説明しろよ!」
「説明するっつってもなー…」

小さくなったにも関わらず彩に欲情してSEXしたくなりました。

――などと馬鹿正直に言う事など出来ず言葉を濁すが、彩の方は史乃のまともな
弁解を聞くまでテコでも動くかいうように呂揮にだっこされたまま史乃の腕にしがみつき離れようとしない。
子供になってもごまかしを許さないアクアマリンの瞳は健在だった。
「分かりました彩マス、じゃあこうしましょう」
これはどうなだめても無駄と踏んだのか呂揮はため息を一つついて切り出した。

* * *

「魔女砂乱獲行ってくる。琉風・時計ポタあるか」
「うん、あるよ」
キッチンでホットミルクを飲んでいた琉風が2階から降りてきた理に視線を移し立ち上がる。
「理、今日は何時ごろ帰ってこられそう?」
「先週の消費が激しかったから今日中には無理だな」
「分かった彩マスにそう伝えておくね…あ」
ワープポータルを出そうとブルージェムストーンを取り出した琉風は思い出したように居間の隅を指さす。
「ねえ理、そこにあるマットの仕舞い場所分かる?俺片付けようと思ったんだけどどこにあったのか分からなくて」
「っつーか今日も使うハメになるんじゃねえの?」
そう言いつつ琉風の指さす先にある大きなマットを理は軽々と肩に抱え上げた。
昨夜、呂揮の提案により居間にマットを敷きそこで全員雑魚寝をしたのだ。
彩と一緒に寝られなくなった史乃の真意を濁す意味で言った『万が一のハイウィザード
艶司の襲撃から小さい彩を全員で守るため』を少なくとも琉風は完全に信じていた。
「そうか。彩マスが戻るまで2~3日かかるんだっけ…でも今日から深夜組と早起き組に
 分かれちゃうし皆で一緒に寝るのは大変だと思うよ。史乃が今日はケダモノにならないように
 頑張るとか言ってたけどそれと何か関係あるのかな?俺よく分からなかったけど」
「へーぇ・どこまでもつんだか」
「理分かるの?」
マットを元の場所に戻してきた理が琉風の物言いにただ口の端を上げて笑うだけで返すと、ぐるりと周辺を見渡した。
「彩マスいねえな」
つい先ほどまで台所で棚磨きをしていた筈の彩の姿が見えない。
皿の上には彩が作ったであろう野菜とベーコンのキッシュを一切れ口に放り込みながら理が尋ねると、
琉風も漂う匂いに誘われキッシュを小皿に取りながら答える。
「露店街見に行くって言ってた。今は狩りもいけないしその間ずっとホームだけにいるのも退屈だからって」
「一人で行ったのか」
「俺も心配したんだけどらこさんと行動範囲を人通りの多いプロンテラ中心部だけって
 約束してた。ライセンスの他にホームの住所書いた迷子札も首に下げたし史乃も近くで
 露店出してるから大丈夫かなって。トメさんもついてるし」
「迷子札・か。彩マスがよくそんなの素直に持ったな」
「その、らこさんが『私と手をつないで歩くのと迷子札首からぶらさげるのとどっちがいい?』って…」
「なるほど・把握シた」

「くしっ!…うぅ、風邪かな…おっもう一切れいくか?トメさん」
そんな噂の的になっていることなど露知らず、彩は噴水の近くのベンチに腰掛けながら
リンゴを食べ終えたトメに新しいものを分け与えていた。
「なんか色んな店通りすがるたびにいっぱいもらっちゃったな」
元々誰にでも気さくに話しかける彩自身の性格と見かけが小さくなったのも相まってか
露店を見て回るたびにアイスクリームだのキャンディだのクッキーだのとお菓子を貰い荷物袋はぱんぱんになっていた。
トメに食べさせているリンゴもその1つである。
「そうだ、史乃がいつもの露店出してる筈だから差し入れがてら行ってくるかな」

ピィッ!

史乃の名前が出た途端、機嫌よさそうにリンゴを食べていたトメが不満を含む声で鳴き始める。
「狩りに行けなくて退屈だよなトメさん。元に戻るまでもうちょっと我慢な?」
そのトメの声から不満の感情を読み取った彩は恐らくトメからすれば見当違いな事を言いながら立ち上がろうとした。
「うざ、邪魔」
「あっ!」
その声と共に彩がいきなり横から蹴飛ばされて地面に倒れてしまう。

ピィィィッ!!!

「あーもう鳴き声も五月蝿い、さっさとどっか行けよもぉ」
艶司に向かって高く鋭い声で鳴くトメに向かって『しっしっ』とでもいうように手を振りながらベンチの背に身を預ける。
「こーら艶司、狩場混んでて効率でなかったからって小さい子に八つ当たりしちゃだめでしょ?」
「知らない。そこは僕がいつも座ってる場所にそのガキが座ってるのが悪いんだよ」
「うー…」
「ごめんね?うちの姫が今日ちょっとご機嫌斜めで――――」
苦笑混じりに倒れた彩を抱き起こしたハイプリーストは彩の首から下がる小さなプレートを僅かに見て目を細めた。
「艶司」
「なにさうるさいなぁ」
「この子色即是空のマスターだよ」
顔を背けたまま不機嫌そうな返事をしていた艶司は聞いた事のあるギルドの名前を耳にして
ハイプリーストに腕を掴まれ逃げようとしている彩を見る。
「こいつが?どう見たってそいつガキじゃん」
「ほら見てよ」
「…!」
やや強引に彩の腕を引いて艶司に袖口のエンブレムを見せた。
「ギルド・色即是空、職位・ギルドマスター。ライセンスはこれかな?ほら間違いない『彩』だ」
「なんでこんなに小さくなってる訳?」
「さぁね。でもライセンスは絶対に偽れないからこの子が『彩』なのは間違いないはずだ」
「どうして小さくなったのはこの際どうでもいいや。ねぇ、こいつ人質にして琉風おびき寄せちゃおうよ!」
「この件に関してはとっても頑張り屋さんだよね艶司…」
「だって琉風狙えば理もついてくるでしょ?一石二鳥じゃん」

『レックスディヴィーナ』

普段なら確実に決まっていた筈の罠は小さくなったことで身体能力が低下しているせいかハイプリーストに先手を打たれてしまう。
スキルを封じて子供の力では振りほどけない力で腕を掴まれた彩は、自由なもう片方の手でひゅぅっと指笛を吹いてトメにサインを送る。
少しだけ迷うように周辺を飛び回っていたトメはやがてある方向に向かってまっすぐに飛んで行った。
「まぁそういうことになっちゃったから大人しくしててもらえるかな。色即是空マスターさん」
「…っ」
軽い脅しのつもりなのか喉元に腕をかけて少しだけ力を強められ、途端に彩は青ざめた顔で避けようとする。
「ん?もしかしてこういうことされるのトラウマだったりとかするのかな」
あきらかに変わった彩の態度を確かめるようにハイプリーストが喉に手を当てると怯えたように震える彩の身体。
「何こいつ、首絞められるのだめなんだ」
明らかに怖がっている表情に気を良くしたのか艶司はハイプリーストを押しのけるようにして喉に手をやると、首を振って彩は抵抗した。
「やだ…やっ…!」
「あははっそうだったんだ!じゃあ琉風をおびきよせるまでずっとこうしてやろーっと」「………っ」
恐怖のせいなのか最後には声さえも上げなくなったがなおも首を振る彩の喉を艶司が楽しそうに両手で押さえつける。
「散々人のことコケにしてさ。いい気味」
すっかり気分をよくした艶司が首を絞めている所を周囲に見られないようにさり気なく隠しながらハイプリーストはブルージェムストーンを取り出す。
「憂さ晴らしするのはいいけど死なない程度に尚且つ移動した場所でね。プロンテラは彼らの拠点だし見つかったら厄介―――」

『トマホーク!!』

「わぁッ!!」
突然飛んできた斧が地面に突き刺さり、驚いて手を離した艶司から逃れた彩はトマホークを投げた史乃へと飛びついた。
「トメが騒ぐからもしかしてと思った……ら……………」
「…史乃?」
肌から伝わるのではないかと言うくらいにぴり、と張りつめた雰囲気を史乃から感じ取った彩が不安そうに名前を呼んでくる。
そんな彩を一度抱きしめ、それから庇うように自分の後ろへと移動させた。
「史乃…史乃、史乃っ」
ジーンズを引っ張って何度も名前を呼んでもただ大丈夫とでも言うかのように後ろ手で
ぽんぽんと優しく肩を叩くが、背中を向けたまま全く彩と視線を合わせようとしない史乃に彩の不安は一層募る。
「えっとさ、無かったことにしてもらえないかな?」
何やってんだよあいつ逃げたじゃないかと癇癪と起こし八つ当たりで叫んでいる艶司を
宥めつつハイプリーストは人が集まり始めた周囲を一瞥し、小さく肩を竦めながら史乃を見てそう言った。
「こんな首都のど真ん中で騒ぎ起こすとお互い色々まずいだろうし。いつもの戯言だと思って見逃してもらえたら嬉しいんだけど」
「―――――ねよ」
「え?…………あ…ぐっ………!」

史乃はカートから出した斧で聞き返してきたハイプリーストをためらいもなく薙ぎ払うと艶司に向かって斬りかかった。
「わぁぁぁッッ!!!」
間合いを詰めるのが速く、かわす事も出来ずに艶司は両手の甲で顔を覆った。

『セイフティウォール!!』

史乃の攻撃で噴水の縁に叩きつけられたハイプリーストがスキルを放ち緋色の柱が艶司を瞬間的に守るが史乃の一撃であっけなく崩れ去ってしまう。
腰が抜けてしまったのか座り込んだまま動けない艶司を側で見下ろす史乃の瞳は血のように紅い。



「死ねよ」



はっきりと、そして史乃をよく知る人間ならば耳を疑いたくなる程冷たい声で言い放つと再度斧を振り上げた。
「史乃っ!!」
斧が艶司へと振り下ろされる前に後ろから彩が史乃の足にしがみつく。
「駄目だ史乃!駄目だっ!!史乃…史乃ッ!!!」
必死に名前を呼ぶ声に史乃は応え、漸く彩と視線を合わせた。
透き通った彩のアクアマリンの瞳にまるで浄化でもされるかのように史乃の怒りを帯び
血のような色だった瞳は鮮やかな優しさを宿すカーマインへと戻っていく。
「あや…」
「史乃、大丈夫だ。俺は大丈夫だから」
恋人の名前を呼んで手にした斧を落とし、力なく座り込んだ史乃の頭を抱えるように抱きしめ彩はその赤毛にキスを落とした。

「冒険者に子供が襲われたというのはここですか!?」

誰かが通報したのか騒ぎを聞きつけたのか、騎士団から派遣されたであろうロードナイトとナイト数人が近づいてくる。
足早に駆け寄り史乃を抱きしめている彩を引き離すように抱き上げた。
「よーし怖かったな僕。もう大丈夫だ」
どうやら暴動を起こしたのは史乃で、彩がその襲われた子供と思われてしまったらしい。
「…史乃!!…っ…」
ハイプリーストと艶司の姿はすでになく、幼い姿である今史乃の弁明は難しいと思ったのか口をつぐむ。
何の抵抗もせずロードナイトに連行されていく史乃の背中に駆け寄り抱きしめてやりたい気持ちを抑え彩はwisを送った。

『澪!!事情は後で説明するから今すぐプロに来てくれ!!呂揮とデート中なのわかってるけど緊急事態なんだ!!』

* * *

「あいたたた…本気で殺るつもりだったなアレ」
テレポートで逃げおおせたハイプリーストは自らにヒールを施しながらライセンスを取り出す。
PTを組んでいる艶司の現在位置を確認し、それからうーんと苦笑しながら項垂れPT会話に合わせた。

『あのね艶司、ポタ出してる時間惜しかったから蝶の羽渡したんだけどさ。なんでベインスなんかに行っちゃってるのかな』
『ちょ…ちょっと勘違いして名無し狩りに来た時にセーブしちゃっただけだってば!』
『今ベインスポタないんだ。行くまで待ってて』
『やだやだやだやだこんな時に一人でいるなんてやだっ!早く来いよばかぁ!!!』

ベインスの片隅にある建物の影に座り込みハイプリーストに向かってそう叫んだ艶司の身体は小さく震えていた。
あの時色即是空のギルドマスター――――彩が止めていなければ自分は間違いなく殺されていた。
明らかに殺すつもりで攻撃しようとしてきた史乃を思い出し自分を抱きしめるようにして縮こまる。

『死ねよ』

まるで何か下等動物か何かを見るように冷たい視線で見下し、言い放った声と言葉が頭から離れない。
「…早く来いよもぉ…………怖い…怖いよ……早く来て………っ………!?」
ふと後ろに感じた気配で振り向くと、その人物は艶司が待っているハイプリーストではなかった。
「はぁいこんにちは~アナタの杜若ちゃんで~す♪」
「…………うぅっ………」
いつの間にか傍に立っていたロードナイト・杜若を見た艶司の顔は泣き出す寸前の子供のようにくちゃっと歪んだ。
会うたびにからかって、人の神経を逆なでするような事ばかりする男。
艶司にとっての杜若はそんな認識だった。
いつもだったら毒の一つでも吐いて杖で殴っている所だったろう。
だがある意味顔見知りであるこの男の顔を見たとたん、緩みかかっていた涙腺を
どうにも出来ずに艶司はそのままぼろぼろと泣き出してしまった。
「ふ…ふぇぇぇ………」
「あっれ~会った途端泣いちゃうとか再会がそんなに嬉しかったの?杜若ちょぉ感激~♪」
「なんで…出てくるのがお前なんだよばかぁ!うっうぅっ…」
そのままぐすぐすと泣き続けている艶司の前に屈むと杜若は両手を差し出して見せる。
「んーと、とりあえずぎゅ~ってしてあげよっか」
「さっさとしろよばか責任とればかばかばかばかぁっ!」
「はいはいぎゅぅ~♪」
毒づきながらも杜若の胸に飛び込み抱きつく艶司を両腕でしっかりと包み込み抱きしめると、
完全に気が緩んでしまったのかしゃくりを上げて艶司は泣きはじめた。
「うっうぅっ…ふぇ…っ…」
どさくさにまぎれて頬や額にキスをしても、逆に人肌が恋しいのか艶司はますます杜若に擦り寄ってくる。
「あはは~気分転換にって狩場変えたらなんかいい目に遭っちゃった~♪」
そんな事を言いながら気分よく抱きしめていた杜若は、ふと艶司の身体が震えていることに気づいた。
「ぷるぷる震えて何か怖い目にでもあったのかな?」
「理のギルドにいるWSが…斧で殴りかかってきたんだ」
いつものからかいを帯びたものではなくこの男にしては珍しくどこか優しい口調だったせいだろうか、
艶司は自分でも驚くくらい素直にその問いに答えていた。
「WSっていうと史乃か~」
「それから僕に…僕に死ねって…」
言っている内にまた思い出して恐怖したのかまたぼろぼろと涙を零す。
「怖かった…本当に…本当に殺されるかもって…!」
「普段優しい人間ほど怒らせたら怖いよ~?それに史乃の髪と瞳…あの深紅は正に
 狂気の色だもの。おいたもほどほどにしないと本当に殺されちゃうかもね~?」
「煽るなよ!お前なんか大嫌い!!!」
「あはははは~嫌われちゃった~杜若超しょっくぅ~」
言葉で罵るものの一向に離れないでくっついたままの艶司を杜若は気分よく抱きしめ続けている。
「嫌い嫌い嫌い!!僕に会うたび意地悪ばっかりしてひどい事言って…大っ嫌い!!」

「えぇ~よくいうでしょ、大好きな子ほどいじめたくなるって。あれあれ」

「…………………え?」
胸に顔をうずめたまま拳で杜若の鎧を叩いていた艶司がふと顔を上げた。
杜若の言動に驚きのあまり涙も引いてしまったのか、目を真ん丸にして見上げている。
「俺君のことだーいすきよ?」
「!!!!!」
繰り返される突然の告白に艶司の口はぱくぱくと動くだけで言葉が出てこない。
「艶司って俺の初恋の人にちょっと似てるんだよね~清楚で賢くて優しくて……あれ?おかしいな似てるとこないやあはは~♪」
「ばかぁぁああああッッ!!!」
暗にあばずれで馬鹿で意地悪だと言われやっと出た罵声と共に杖で殴りかかろうとした時、
背後からハイプリーストが攫うように艶司を抱き上げる。
「迎えに来たよ艶司」
「………!…遅いっ遅い遅い遅いっ!どれだけ待たすんだよ!!」
「ごめん」
抱きつく艶司を抱きしめ返し、ハイプリーストは杜若を睨み付ける。
「艶司に近づくな。何度言わせる気だ」
「近づいたんじゃないも~ん。俺がここにたまたまいたら偶然会っただけだも~ん」
どこまで本当かわからないような言動の杜若を冷たく一瞥してハイプリーストはワープポータルを唱える。
「ね~ね~艶司」
ふいに杜若に名前を呼ばれ、もう一度毒づいてやろうとハイプリーストの胸に顔を埋めていた艶司は勢いよく振り返った。
「うるさいば…………ンっ…!?」
艶司の言葉が途切れ、ハイプリーストは目を見開く。
「…!!」
抱き上げられたままの艶司に口付けていた杜若から引き離すようにハイプリーストは
距離を置くが、満足したのか杜若は唇を舐めながら微笑んでいる。
「忘れないでね、俺艶司のことだーいすきよ?」
「五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿いっ!!!」

「―――――あ、似てる所あったあった」
2人がワープポータルで消えてしまった後、思い出したように杜若がぽん、と自分の手のひらを拳で叩く。
「『ほっとけない所』がそっくりだった。ねぇ奏、俺の…リトルプリンセス」

* * *

「…………なんっっっなんだよあの理由はぁっ!!」
騎士団を出てややしばらく。第一声を発したのは彩だった。
それを言われた澪は一つ小さなため息をついた後ぷぅっと頬を膨らませている彩を呆れた表情で見ながら口を開いた。
「俺は一番適切だと思う方法を選んだだけだ。薬で小さくなっているなんて理由、
 騎士団の方たちがはいそうなんですねなんて簡単に信じてもらえる訳ないだろう」
「だからってもう少しマシな言い訳考えられなかったのかよ!内縁関係にあるお前と呂揮の
 養子候補として俺が首都に遊びに来てて今日メンバーの史乃に子守をお願いしていて
 騒動に巻き込まれたとかなんだそれ!俺は義理とは言えお前の息子扱いになってたんだぞ?」
「彩、なんならパパって呼んでも構わないぞ」
「誰が呼ぶかぁっ!!」
「聞いたかいママ、息子がパパって呼んでくれないんだ」
「しかも呂揮を勝手にママとか呼んでんじゃねええええ!!!!」
「澪マス、もうそれくらいにしてあげましょうよ…」
泣きまねをしながらさり気なく抱きついてくる澪を困った表情をしながらも呂揮は振りほどかずに宥める。
「おい、史乃もなんか……」
そこまで言って彩は史乃の表情を見て言葉を切る。
「やれやれ」
カーマインのその瞳は何を映すでもなく、ずっと黙り込んだままでいる史乃に向かって澪は懐から出した一枚のメモを差し出した。
「この場所に着いたら俺の名前を出すといい、ちゃんと案内してくれるはずだ。少しそこで彩と休んでおいで」
「…………」
相変わらず無言ではあったが俯いたままの史乃がそこでやっと澪の方を見る。
「史乃にはその時間が必要だろうからね。自覚はあるだろうけどひどい顔だよ、『ホームのお兄さん』がそんなんじゃ莉良も琉風も心配する」


「……本当に大丈夫なんでしょうか」
途中で別れ、小さくなっていく彩と史乃2人の姿を見送りながら呂揮は心配そうな表情で隣の澪を見上げる。
「史乃があんなに思いつめた顔してるの俺初めて見ました」
「そうだね、でも大丈夫。彩が一緒なんだから」
ね?と優しく笑いかけると不安そうにしていた呂揮も少しだけ笑顔を見せて頷いた。
過去の出来事に縛られ苦しんでいる時に彩の優しさで救われた呂揮だからこそ澪の言葉は確信となり安堵させた。
「それにしても…騎士団を誤魔化すためとは言えパパママごっこは想像以上に楽しかったよ。もうちょっとやりたかったな、ねえママ?」
「とかいいながらさりげなく俺の尻を揉まないでくださいってば!」

* * *

住所の通りの場所に建っていたのは小奇麗な宿で、言われた通りに澪の名前を出すとやはり小奇麗な部屋へと案内される。
ダブルベッドの所を見るに恐らく呂揮と過ごすために取った部屋だったのだろう。
それでも譲ってくれた澪に対し悪い事をしたと気遣う余裕は今の史乃にはなかった。
「史乃」
名前を呼ばれ、史乃はベッドに座っている自分に対し膝立ちでやっと視線の合う小さくなった恋人を見る。
「どした?俺史乃に助けてもらったから何も怪我してないんだぞ、なのになんでずっと
 辛そうな顔してるんだ?騎士団の取り調べで何か嫌な目に遭ったのか?」
「騎士団では事情聞かれただけで嫌な事なんてされてねーって。ただ…何にも変わんねーなって」
「何が変わんないんだよ」
「暴力でモノ言わせようとしてたんだ、同じじゃねーか………一羽と俺、何が違うんだって」
一羽という名前が出ると、少しだけ彩の表情が硬くなる。
「彩が止めなかったらマジであのハイウィザード殺してたかもしれねー…あんたの
 首に残ってた絞められた跡見つけた瞬間マジで死ねって思った」
まだうっすらと喉に残っている絞められた紅い痕を労わるように指で撫ぜる仕草は優しいのにその表情は険しい。
「感情任せで暴走して…守るどころか今小さくなっててそれどころじゃねーあんたに心配までかけて。本当…情けねーったらねーよ」
吐き捨てるように言って項垂れた史乃の頬に彩の小さな手が添えられる。
いつもよりもずっとずっと小さな手の筈なのにその時の史乃にはやけに大きく感じた。
その小さな手に促され顔を上げれば額に落ちる彩のキス。
「史乃は史乃だ。他の誰とも同じなんかじゃない」
抱きしめキスを繰り返すその仕草はどこまでも優しい。
「それにさっきみたいに暴走しそうになったら俺がちゃんと止めてやる。何度だって止めてやるから」
「あんたさー…俺が怖くなったりしねーの?」
「なんで俺が史乃の事怖がんなきゃいけないんだよ」
怖い、怖くない以前にそんな事あり得ないとでもいうような彩の物言い。
人を偽らせない、そして絶対に嘘をつかないアクアマリンの瞳。
史乃にとってこれ以上信じられるものなど存在しなかった。
「愛してる史乃」
気持ちが満たされていくのを感じながら頬ずりしてくる彩を抱きしめる。
自分のどんな姿を見ても受け入れてくれるどうしようもないほど愛しい存在を。
「惚れたのがあんたで本当に良かった」
面と向かって言われると照れがあるのか顔を僅かに赤らめるが、無表情に
近かった史乃に笑顔が宿ると彩はそれ以上の笑顔と、そしてキスで応えた。
「史乃」
「…彩」
互いに名前を呼び合い、啄むようなキスから深い口づけへ、そして―――――。

(ベッドIN。なんてできるわけねーよなこの状況で)

今までもよくある展開ではあったが今の彩の見た目は子供である。
中身はあくまで彩だけど流石に今ヤったら犯罪だろー。などと葛藤としている間に、
彩の方は顔を傾け花びらのように可愛らしい唇を史乃の唇に重ね『恋人のキス』を施してきた。
「ちょ、彩…」
「えいっ!」
小さく丸い舌が史乃の口腔内に入ってきた時、慌てたように彩から距離を置こうとするが
すぐに彩が距離をつめてきて、体制を崩したそのまま史乃が押し倒されるような形になってしまう。
どちらかというと小さな身体が史乃の上に乗りあがったというほうが正しいかもしれない。
「まてまてたんまたんまー!」
服を脱がせようとしてくる彩の手を慌てて史乃が止めさせる。
史乃の上で跨ったままもぞ、と動く彩に下半身が反応しそうになるのを大きく深呼吸することでなんとかやりすごした。
「えーと、ナニしよーとしてんだー?」
「史乃とSEXしようとしてる」
「そんな小さくなってんのに流石に無理だろー?それは元に戻るまで待って…」
「待ちたくない。今すぐ史乃としたい」
「するっつったってなー…」
「史乃は…身体が小さくなったった俺とじゃ嫌なのか?」

子供相手にとどんなに言い聞かせようとしても哀しげな顔でダメ?と首を傾げて訪ねてくる彩に、
ちくしょーかわいすぎんだろーとあっけなく理性はそぎ落とされる。
「嫌な訳…ねーし」
そう言って史乃は上にのっかる彩の後頭部に手を回すとそっと引き寄せ深く唇を合わせた。
「んっんぅぅっ…」
普段着ている服を無理やり身に着けているため少し緩めてやればすぐに彩の身体から滑り落ちていく。
裸になった恋人はやっぱりどう見ても子供で、背徳感は拭えないのに薄桃色に染まった肌に指を滑らせむしゃぶりつきたくなる衝動が襲う。


(あーもー、彩相手なら犯罪者になってもいーか。)


身長差で史乃の上に座っていても頭が胸に来る程度なので脇に手をかけ抱き上げると、丁度目の前に来た薄い胸に吸い付いた。
「あッあンっんぁ…んッ…」
上がるのは甘く、そしていつもよりも高い声。
「ちっせーのにいっちょまえに硬くなってんなー」
「あ…あンっ…あぁ…ッ…」
交互に吸いぷつんととがった彩の乳首を間近にしながら鎖骨から喉をべろりと舐め上げてやれば、背を逸らして気持ちよさそうな声で彩が鳴く。
大人に子供がイタズラされるというシチュエーションにも確かに煽られている自分自身に
苦笑しつつも彩だからと心の中で言い訳し、親指で両乳首を押しつぶしながら上下に擦ってよがる恋人の姿をたっぷりと愛でた。
「彩、膝立ちできるかー?」
「…ん?」
「こーしたいから」

言われた通りに史乃の足を跨いだ状態で膝立ちになると、片手でひとつかみに出来そうなほど小さな臀部をふにふにと揉んでやる。
「あっあんっ」
小さな声と共にそれが左右に揺れ、双丘を指で割り開きながら秘部を指で擦ると史乃の指先は蜜に覆われた。

(小さくなってもちゃんと濡れんだなー…)

そんなことを考え感心しつつも丹念に指で入口を慣らしていく。
彩の方は膝立ちのまま史乃の胸によりかかり、それを受け入れようと大きく息を吐き出した。
「気持ちいー?」
「うん…うんっ……あンっ!」
人差し指を入れられた状態でもとろんとした表情が崩れないところを見ると痛みはないらしい。
ぴったりと胸に顔をくつけている彩を少しだけ離れさせ、すっかり可愛らしい大きさになってしまった雄をゆっくりと撫でてやる。
「あんっあ…ぁ…ンっ…」
手のひらに雄をすりつけてくる動きに合わせて撫でてやると本当に気持ちよさそうに揺れる彩の腰。
彩の身体は史乃が愛した記憶をくまなく覚えていたものの秘部はやはり狭く、
指1本だけでもまるで雄を根本まで受け入れた時のように締め付けてくる。
「うわーやっぱせっまいなー」
「史乃の…入んない?」
「おいおいそのちっさい身体で突っ込まれるつもりだったのかー?」
「だってただ舐めてるだけじゃSEXじゃないし…」
「そーゆーSEXもあるんだぞー。よいせっとー」
「あんっ……う……わぁっ!?」
秘部から一度指を引き抜き彩の下半身くるりと反転させれば史乃の目の前には足を開いたまま彩の秘部が晒される。
「史乃、ジーンズぱんぱんだぞ」
「あー…きっついから出してくんねー?」
彩が間近にある硬く張りつめているであろう史乃の雄をジーンズ越しから手のひらでぽむぽむと軽く撫でられるだけで正直かなりクる。
指で愛撫し濡れる秘部を前に舌なめずりして言った史乃の声は自分でも驚くほど情欲を帯びていた。
「よっと………うわ!史乃のいつもよりすっげーでけー!」
「だからあんたが小さくなっただけだってー」
「あんっ…!」
ジーンズを寛げ取り出した史乃の雄はすっかり立ち上がっており、感嘆の声を上げて
凝視している彩の秘部をぺろんと舐めてやれば途端に甘い声を吐き出す。
「このまま俺の舐めてほしーんだけど…届きそうかー?」
シックスナインの体制から彩の身長に合わせて史乃が身体を更に起こすと彩はんしょ・んしょと史乃の雄へ一生懸命顔を近づけようとしている。
足を広げて史乃の目の前で恥ずべき場所をこれでもかというくらいに晒しつつ
己の雄に向かって舌を出している姿は幼いながらも卑猥だった。
「うーん…届いたけどデカすぎて多分全部は口ん中入んないな。どうしたらいい?」
「無理して咥えなくていーからはみ出した所は手でヤって?」
「あ、そっか。こうか?」
「そーそー、先っぽは舌でなー…」
「んッ…」
なんだか何も知らない子供にいかがわしい事を教える悪いオトナな気分になるが、
ちゅるちゅると先端の先走りを啜られるのがあまりにも気持ち良くてやめろなどとはとても言えない。
背徳感よりも既に勝ってしまったケダモノゴコロはこの先二度とないかもしれないというこの状況を楽しみはじめていた。
「し…しのっ…ゆび…そうされるとちゃんとできなっ…あんっ」
再び入れられた人差し指が奥を突くたびに咥えたままくぐもった声を上げていた彩が雄を唇に押し当てたままで訴える。
「ここイジるのやー?」
「やじゃな…あぁンっ…気持ちいぃっ…」
「イッパイ舐めて彩。あんたにしゃぶられるとすげー気持ちいい」
「う…うんっ…」
自ら施す愛撫が気持ちいい。といわれるとやはり嬉しいらしくこくんと頷くと素直にまた口に含んだ。
言われたとおりに咥え切れない部分は両手で扱く。
「あんっ…あふ…ぅんッん…むぅ…」
鳴き声を我慢できずに口を離してしまうがまたしゃぶろうとする姿が、秘部を舐める度に
歯を立てまいとするのがいじらしくて、もっと見たくて抜き差しを繰り返す。
「んぅぅっんぅっふぅっんっんぅッ……!」
今なら雄でなければ届かない最奥に指だけでも届き、ソコを突いてやる度にとろとろと秘部から蜜が溢れていく。
掻き出すように指を抜き差しし続け、じゅるじゅるとわざとに音を立てて蜜を吸い上げ彩の、そして自身の興奮を煽った。
史乃の胸に小さな雄を擦り付けるようにして腰を揺らす彩の声は次第に高く大きくなっていく。
「あんッ…イく…イくぅ…史乃…しのっ…ア…アァ……………!!!」
耐え切れないように史乃の雄から口を離して震えしなる彩の身体。
精通はないらしく小さな精器から滴り落ちるものはなかったが、秘部から蜜がどぷりと
あふれ出ていくのは史乃だけが知っている彩がイった時のそれだった。
「…ッ………」
その反動で両手が強めに史乃の雄を握り込み、不意打ちじみたその行為で史乃もまた達し、
口を離してしまった彩の顔に、胸にとその精を吐き出した。
「あァ…ア…ンっ…」
そのまま彩は史乃の達した雄を胸に抱えるように手を添えぷるぷると震え絶頂の波を受け止めている。
ナニにしがみついてんだよと心の中で呟きながらも史乃は彩がイク姿を存分に堪能した。
「ごめ…ちゃんと飲めなかった…」
「いやー今のは俺が不意打ちだったわー…すげー気持ちよかったから」
「俺も…気持ち良かった」
嬉しそうに微笑みつつも手で精を拭いながらぺろぺろとそれを舐める姿に史乃の
下半身はしっかり反応し、さーてこれからどーしたもんかなーなどと思いながら彩の体を抱き起した。
「いっ…」
「あ、悪ぃ痛かったか?」
抱き起こした瞬間彩が辛そうな顔をしたので抱き上げた腕を緩めてやるが、そのまま史乃の胸にもたれかかってしまう。
「彩?」
「なんか体…ヘンな感じ…」
「……!!」

『何か変化があっても絶対慌てないこと。どんな状況になっているのか落ち着いて様子を見て』

四季奈の言葉を思い出してwisを思いとどまり、腕の中にすっぽりおさまっている彩の様子を伺った。
難しそうな顔をしているが痛がったり苦しそうにしている様子はない。
「彩、まだヘンな感じかー?」
しばらくした後また名前を呼ぶと、史乃の胸に何度か顔を擦り付けてから彩がゆっくりと顔を上げた。
「うぅんもう大丈夫…なんだったんだ今の。関節がぐきぐき言ってたっていうか………あれ?」
伸ばしてきた史乃の手に自らの手を重ね合わせた彩は疑問じみた声を出す。
ついさっきまで倍近くあった筈の史乃の手が今は一回りの大きさくらいしか違わない。
「史乃の手、なんか小さくなったか?」
「そーじゃなくて、あんたがでかくなったんだろー?」
そう言って元の姿に戻った彩を抱きしめる。
彩もまた抱きしめ返し、史乃の背中にぽんぽんと叩いているのはどうやら抱き心地を確かめているらしい。
抱きついたまましばらく史乃の背中を撫で回していたが一通りやって納得したのかうん、と小さく頷いた。
「いつもとおんなじだ。やっぱ俺元に戻ったのか」
「関節ぐきぐきとか言ってたけど身体とか大丈夫かー?」
「ちょっと痛かったけど今はもう平気」
「そっかーなら良かった」
「うん、だからさ」
唇を啄んできた史乃の肩に手をかけ押し倒しながら彩はその上に覆いかぶさる。
「だから続きしよ史乃。次は史乃のでイかせて」
「あー…」
本当ならば四季奈に戻ったことを報告しねーとなどと考えるも、反応し始めた雄を指で
撫でさすりながら誘ってくる彩にその優先順位は奈落の底へと落ちていく。
「俺も…彩のナカで沢山イきてー」
もうずっと長いこと抱いていなかったような性急さで引き寄せる史乃に微笑みながら彩は身を任せる。
「沢山イって史乃。一緒にいっぱい気持ち良くなろ?」
耳元で囁く愛する恋人の声はケダモノの理性を完全に奪い取った。

* * *

「え?彩マス元に戻ったのっ!?」
怪しげな煙を吐いているポーション瓶を握りしめたまま四季奈は明亭の研究所にやってきた史乃の顔を驚いたように見た。
「完全に元に戻ったの?途中で止まったとかそういうの無かった?」
「戻ったと思うぞー?あの締まり具合はいつもの感じだったしなー、うん」
「えっ何何?っていうか彩マス本人はどうしたの?もしかして体調悪いとか!?」
少し離れた所にある本棚を探している四季奈に後半部分は聞こえていなかったらしい。
「ちょっと疲れてるみてーだけどまーそれは大丈夫だと思うぞー?」
「ダメダメ思うで片付けちゃ、今回のは想定外の出来事なんだからね!」
そう言ってどん、と用意した本を史乃の前に積み上げ筆記用具を取り出す。
「彩マスが元に戻るとき史乃君そばにいた?」
「あー、まーな」
「じゃあ詳しい経過説明してって」
「説明?」
「うん、私の論理上だと彩マスが元に戻るのには後最低でも2日はかかる
 はずだったのにどうして早く戻ったのか、その経過にヒントがあるかもしれないから
 どこでどういう行動とったのか覚えてくる限り詳しく教えて欲しいの」
職業的な探究心からなのかえらく真面目な顔で訪ねてくる四季奈に、困った様子で史乃は頭を掻く。
「まー覚えてるには覚えてっけど本当にいーのか?」
「うん、よろしく!」
「最初はキスからだったな」
「ふんふん最初はきす……きっ!?」
ぴくん、と書く手が止まる。
「それから裸にして俺の上にうつ伏せに彩マス乗っけて…あーその前に胸も吸ったか。キスの詳細も言ってった方がいいのかー?」
「史乃君それってもしかして……せっくすとかそういうのしちゃってたのかなぁ?」
「まー厳密にいうとおーらるせっくすとかそーいうのじゃねーのかな」
「はっ………………………」
「続き言ってもいーか?俺の上乗っけた彩マスの足をこーゆー感じで広げてそれからー」
「はきゃあぁぁぁぁぁぁあああああろりしょたえっちぃぃいいいいいいいいい!!!!!」

「ろりしょたときたかー…流石に否定できねーなっつか。だからいーのかっていったろー」
部屋から出て行った後もなおハキャーと叫び続けている四季奈に勿論聞こえる訳もなく、
騒ぎを聞きつけたのか出て行った四季奈の代わりに澪が研究室に入ってきた。
「彩が戻ったんだって?詳細が気になったから話に混ざろうと思ったんだけど――――その様子だともう大丈夫みたいだね」
「お蔭さんでー?」
先ほどの醜態を思い出し苦笑するしかない史乃の向かいに澪は腰を下ろした。
「悪ぃな澪マス。あの部屋本当は呂揮と使うつもりだったんだろ?」
「あぁ気にしなくてもいいよ、今回の事があったからこそあの子のまた違った可愛い所が見られたから」
妖しく微笑む澪になんとなく史乃は呂揮なむーと心の中で呟いていた。
「走り去ってった四季奈から詳細ぷりーずって言われたんだけど聞ける状態じゃねーし何かに書いといた方がいいのかー?」
「書いた所で恐らく1行も読めないだろうね。話の端々で大体の事は理解できただろうし多分大丈夫だろう」
「おっけーおっけー。んじゃ問題ねーってことで戻るとすっかー」
「お疲れ様史乃」
「ってかまだまだこれからだけどなー。宿戻って第2ラウンドってやつー」
「あぁ、なるほどね」
「らこには今日は戻らねーって伝えたし今夜はもー朝まで耐久しかねーよなー」
言いながら立ち上がって蝶の羽を取り出した。

「とゆーわけで、あんたの『息子』もらいまーす♪」
「あぁ、うちの『息子』をよろしく」

すっかりいつもの調子に戻っている史乃に調子を合わせ澪は笑いながら蝶の羽で彩の元へと戻っていく史乃を見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

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