狂ってしまえ。

 

来るんじゃなかった。
プロンテラの西付近を通りかかったオレは今日の今この場所に来たことを後悔した。
後悔の元凶は今のオレの視線の先・澪マスん所のギルドメンバーと、莉良と呂揮。
こっちチラチラ見てコソコソ話して。
ものすごく何か企んでますな気配漂いまくり。
関わったら最後だとオレは背中を向けた。

『バックステップ!!』
『バックステップ!!』

莉良・呂揮・二人そろってバクステ連打でこっち迫って来んな。
「コト捕まえたー!」
「リィさんすみません確保させてもらいます!」
莉良がオレの首にしがみついて呂揮の腕がオレの腰に巻きつく。
ただでさえ混雑して暑っ苦しいプロンテラで密着してくんじゃねえよ。
「お前ら・なんでこんな所にまだいんだよ。澪マスんとことギルド狩り行くんじゃなかったのか?」
『幼児趣味についていけない』だの『セクハラに耐えられないだの』ってお前らが
フザケタ理由でギルド抜けてったのってもうかれこれ30分以上も前だろ。
準備に時間がかかったっつっても遅すぎじゃね?
「だって澪マスが来なくて出発できないだもん。ねーねーコトー澪マスに連絡とってよ」
「あ?お前がすりゃいいだろ莉良」
「お願いしますリィさん!ギルドチャットで話しかけてもwisしても
 全然無反応で本当に本当にすっげー困ってるんです!」
「知るかよ・お前らでなんとかしろ」
頼み込んでくる呂揮の腕を引き離そうとしたオレの右手をがっしと掴まれた。
「そんな冷たいこと言わないで!あたしたちじゃだめだけどリィ君が話しかけたら絶対返事してくれるはずだから!」
そう言ってそのまま右腕にしがみついてきたのが澪マスん所のクリエイターの四季奈。
そんなまな板胸押し付けられても嬉しくねぇし。
「マジで頼むよリィ〜『どこほっつき歩いてんだバカマス』とか一言でいいからさぁ」
左腕にしがみついてきたのは同じく澪マスん所の拳聖・朱罹。
………………お前ら。本気でうぜぇわ。
「反応ないっつーなら・オレが話しかけたって同じだろ?」

《そんなことない!!!!!!!!》

全員示し合わせたようにハモるな。
「澪マス来るまでコト人質ね〜」
人質ってなんだよ莉良。いつまでも首にぶらさがってんな・重てぇんだよ。
他の奴らは離れたはいいものの、wisはまだかwisはまだかという視線を投げかけている。
オレがwisするまで自由にさせるかとかそう言うことかよ。
「…返事返ってこなくても文句言うんじゃねぇぞお前ら」
呆れ半分で澪マスにwisを飛ばした。

『どこほっつき歩いてんだバカマス』
オレの考えに反して少し遅れて返事が返ってきた。
『何の用かな?空気読めないリィちゃんよ。むしろ謀ったか?』
『別にオレは用なんてねぇし謀ってもいねぇよ』
何の事を言ってるんだか全く分からなかった。
『琉風』と一緒だと言うまでは。
なるほどな。
オレが琉風と一緒にいる絶妙なタイミングでwisしてきたから『謀った』ってことか。

『…………澪マス、それルール違反じゃね?』

オレの頭の中で『まさか』と『やっぱり』が交錯する。
何も接点のない筈の澪マスが琉風と一緒だと言うことを聞いてもさほど驚きはしなかった。
ムカつきはしたけどな。
3日前の攻城戦、オレは『用事を思いついた』ってロクでもない理由で戦線を抜けた。
本当の所はオレを引き抜こうとあきれるくらいしつこく言い寄ってきたハイウィザードが、
琉風を拉致したことを匂わせる言動をしてきたからだ。
本当のことはもちろん言わない。
オレが一人で行くって分かれば、あんたあっさり砦捨ててオレを助けようとするだろ?
そういう人だって分かってるから・オレはあんたの傭兵でい続けるんだけどな。
だから戻ってきて理由を聞いてきたあんたに黙秘を決め込んだ。
澪マスの性格からして珍しくあっさり引き下がったと思ったら水面下でちゃっかり情報収集してたのかよ。

『そう怒るなリィ。確かに雇い主と傭兵という間柄とういうだけでそれ以外は一切関与はしないって
約束にはなってる。でも今回は間接的にしろうちのギルドに関わったがために傷ついた人間がいるんだ。
マスターとして放置という訳にはいかないだろ』
ムカついてるのはそこじゃない。
理由も告げずに攻城戦を抜けたことといい、そのことについて詳しい理由を話さないことといい、
明らかにルール違反をしているのはオレの方だ。
それにも関わらずそれらのことを問い詰めようとしない。
それに澪マスのことだ、琉風と話をしたんならオレとの関係が
決して友好なものではないことにも気がついたはず。
なのにそのことにも一切触れて来やしねぇ。
ジュノーで会った、世間を何も知らなさそうな虫唾が走るくらい純粋な瞳をしたモンク。
汚してやりたくて衝動的に犯した。
それ以降続く強制的なカラダだけの関係。
あんたのことだ。全部知ってるんだろう?
なのにオレに何も聞かない。何も言わない。

『そんなに心配なら来るかい?俺は構わないよ』
『あんたが来ないとオレはここから動けねんだよ』

これ・最後まで伝わってねぇかもな。

『………?………リィ』

澪マスがオレの名前を呼んでくるが目の前に立った男がいきなり
古木の枝を束で折ってきて返事どころじゃねぇ。
折った奴はとっとと逃げて行き、出てきた大量のモンスターが
一斉に一番近くにいた莉良を標的にした。
「邪魔だ・どけ」
オレは首にまきついている莉良の腕を掴むと力任せに放り投げた。
「……ぁ……!」
受身を取りながら莉良が石畳の上を転がり呂揮がそれを助け起こす。
多少痛いのくらいは我慢しろよ。この集団相手にするよかずっとマシだろ?
しかしどんだけいんだ?深淵、レイス、ミノ、亀。あーもう数えきれね。
っつかスリーパー。プロンテラに来てまでお前の顔なんて見たくもねえよ。
「コト…コトーーーーーーーッッッ!!!!」
莉良があの声で叫ぶと絶対その後盛大に泣くんだよな。
泣くんじゃねぇって・お前泣いたら面倒くさいんだよ色々と。
あー…しかしどうすっかこれ。同時相手になんてしてられねぇし、かといって逃げる訳にもいかねぇし。
バクステでひとまず距離をおくかとか考えたのは1秒あるかないかか。
モンスターの群れの中から人間の手が突然伸びてオレの腕を掴んだ。

『インティミデイド!!』

目の前のモンスターが醜く歪んで目の前の景色が変わっていく。
噴水があるってことはプロ中央あたりか。
足をしっかり踏みしめたと同時にオレは短剣を引き抜いて、オレをここに連れてきたローグに向けた。
後方に退いたローグはまだ懲りずに持っていた数本の枝を取り出しそれを折った。
召喚されたヒルウインドとヒドラを放置したままローグは蝶の羽を握りつぶして消える。
…こんな微妙なの残して消えて何がやりたかったんだあいつ。
ヒドラを短剣で一突きにし、拾い上げた石をヒルウインドの脳天にぶつけて
こちらの注意を向けさせる。一気に間合いを詰めようと大きく踏み込んだ。

『ワープポータル!!』

一歩踏み出したオレの足元が青白く光りだす。
ヒルウインドの背後でプリーストが笑顔でオレに手を振っていた。
「いってらっしゃーい」
「…こんのクソ聖職者が」
ヒルウインドに歓迎される前にオレは足元に湧いた
ワープポータルでその場から強制退場させられた。


「こんにちは。待ってたよ」
「…やっぱてめぇか」
飛ばされた先の場所には二度と顔も見たくないと思っていたハイウィザードが笑顔で迎えた。
「うん。首都の枝テロもワープポータルの指示もぜーんぶ僕の指示だよ」
さも嬉しそうに聞きもしないことまでべらべらしゃべって来てオレの不機嫌度は最高潮に達した。
枝テロに乗じてオレを都合のいい場所まで誘導。闇ポタ送迎。
何もかもてめぇの思惑通りって訳かよ。
その上ここに着いたとたんに喉もとに当てられた片手剣。眉間を狙う矢。背中で構えられた槍。
随分と手厚い歓迎っぷりだなおい。
向こうから何か言う前にオレは手にした短剣を床に放り投げていた。
袖口につけていたエンブレムを引きちぎられるとギルド機能が死んでさっきまで
あれだけやかましかったギルドチャットが聞こえなくなる。
「阿修羅撃たれた身体のお加減はいかがですか?」
「おかげさまで。君がうちのギルドに来てくれてたらすぐに全快しちゃってたかもね」
皮肉を込めて敬語を使ってやってもオレが捕まえられて気分がいいのか挑発に
乗っても来ねぇでニコニコ顔で返してきやがる。ますます気に食わねぇ。
「琉風も一緒に追いかけてたんだけどもうその必要ないね。すっかり
 警戒されちゃったのか全然捕まらなくなってたんだ」
…こいつまだ琉風を追い回してたのか?
「琉風の名前聞いただけであからさまに表情変わったね。そんなに好き?」
「黙れ」
「僕が思ってた通りライトグリーンの瞳すごく綺麗だったよ。
 犯されながらやめて嫌だって泣いて叫んでる時なんか特にね」
オレはその澄ました顔面に唾を吐きかけてやった。
「黙れっつってんだよ」
オレの喉元の剣に力をこめようとした騎士をハイウィザードが静かに制する。
「いいよその顔。それでこそ僕が欲しい理だ」
顔を拭ったヤツは怒るどころかいっそ嬉しげだ。
「いい加減あきらめるっていう言葉覚えたほうがいんじゃね?」
「あきらめないよ。YESって答えるまでここにいてもらうから」
だとするとオレ一生ここから出られねってことだな。
オレは今のギルドを離れるつもりも、澪マス以外の人間を雇い主にするつもりもねぇんだよ。
まぁ、かといって大人しくここに一生いるつもりもねぇけど?

『おい』

ギルド機能は死んだがそれ以外はまだ生きてる。
大丈夫かとか生きてるかとか死んでないなら返事しろとか叫ぶようなwisが大量に
響く中で一つだけやけに静かでためらいがちに聞こえる声。

琉風。

『おいってば!返事しろよ!』
『…聞こえてねえ』

オレは琉風にwisを返していた。
『なんだよ聞こえてんだろ!?今何処に居るんだよ』
『お前には関係ない所』
『澪さんから大体の事情は聞いてる』
『あんの馬鹿マス余計な事言いやがって…』
『何処にいるんだよ。澪さんが情報が少なすぎてあんたの場所が絞れないって
 言ってるんだ。今居る場所の特徴とか教えて欲しい』
あれだけ手痛い目に遭っておきながら自分からまた首を突っ込んでくるとかどういうつもりだよ。
『知るか。知ってたとしてもお前には絶対教えねぇ』
『言わなきゃ助けに行けないだろ!』
助ける?オレがお前にシてきたこと、忘れたわけじゃねぇだろ?
大嫌いなんだろうが・オレが。
『だったら助けに来なきゃいいだけの話だ』

そのままwis拒否にしてやり即座に澪マスにwisを飛ばした。
『おい馬鹿マスこら』
『あーリィじゃない。意外と元気そうだね。良かった良かった』
『琉風にwisさせたの澪マスだろ』
『そうだよいけなかった?』
『あんた阿呆か?なんでよりにもよってアイツなんだよ』
『はいはいはい、その辺はまず置いておいておこうね。まず状況報告しなさい。
 現段階で把握してること、見えるもの聞こえるもの。どんな小さなことも全てだ』
言ってやりたい事は山ほどあったが確かにグダグダやってるヒマではない。
オレは連れて行かれた部屋の柱に手錠で拘束されながら今の状況を知りえる限り伝えた。
『OK分かった。助けにいくから寂しいだろうけど少しの間我慢して待ってなさいね』
『琉風は連れてくるなよ』
『自分の状況おいといても琉風が心配かい?リィも優しいね』
『そんなんじゃねぇ。しかも「も」ってなんだよ』

「おしゃべりはここまでね」
オレの左耳のピアスが外されwisが完全に遮断された。
初心者修練所を出た時に渡されたライセンス。
それを身につけることでwisをはじめとした様々な恩恵を使えるようになる。
人によって様々な形をしてるがオレのライセンスが左耳につけているピアス。
…思ったよりバレんの早かったな。
「ギルドに所属すると大抵ライセンスってギルドエンブレムに
 仕込む人が多いんだけど、君はそうじゃなかったんだね」
「何で分かった」
「僕も似たようなものだから。ほら、これがそう」
右手にはめていた指輪を外して側のテーブルの上に置く。
そしてギルドエンブレムすらも一緒にテーブルの上に置く。
「お前マジで頭おかしいんじゃねえの?」
部屋にいたメンバーを外に出した上にエンブレムとライセンスを
外して連絡手段を自分から絶つとか普通やるか?
「だってせっかく理と二人っきりになれたんだもの。誰にも邪魔されたくなかったんだよ」
「残念だったな。近いうちに超邪魔な奴が来るぞ」
「もしかして誰か助けに来てくれるって思ってるの?ここがどこだかも分からないのに?」
確かにオレはここがどこだか知らねぇ。
でも澪マスはオレの言った情報に対し『分かった・助けに行く』と言った。
完全に場所を把握した上に勝機がある証拠だ。
コイツなにを根拠か知らねぇけど全てにおいて甘く考えすぎじゃね?
「まぁもし邪魔が来るとしても。その前に君を堕としてしまえばいいんだし?」
「そんなフヌケた考え方だからいつまでたっても砦持てねぇ宿なしギルドなんだよ」

ビシャッ。

さすがにこれには頭にきたらしい。
テーブルに置いてあったコップに入っていたものをオレの顔面に浴びせた。
舌で舐めても匂いも味もしない。
「水かよ。どうせなら酒でもひっかけろっての」
「違うよ。水よりもお酒よりもずーっといいもの」
そこでやっと自分がハメられた事に気づいた。
「…てめぇ………」
オレもコイツをフヌケだの罵れねぇな。
酒でもない水でもない。
これは・媚薬だ。
「堕ちてもらうよ理。僕のところまでね」
オレの所に近づいて両手をオレの頬に添えて撫でてくる。
「もうかなり効いてるみたいだね」
「……ッ…」
ズボンの上から股間触ってきやがった。
コイツ相手に馬鹿正直に反応返してんじゃねぇよこの糞ムスコが。
「ねぇ…犯したい?僕のこと」
「てめぇを?冗談じゃねぇ」
「君の返事一つで好きなこといーっぱいさせてあげるのに」
即効性のヤツなのかクスリはかなり効いてきてる。正直ブチこみたくて堪らねぇ。
「そろそろたまらなくなってきたんじゃない?すごいつらそうだよ?」
つらいったらねぇよ。なのになんで目の前にいるのがてめぇなんだよ。
「…触んな」
そう言ってもコイツはやめるどころかしつこく撫でさすってきやがる。
「意外と固いんだねー。あの琉風って子以外とSEXするのはそんなに嫌?」
「てめーの好きになるのが気に食わねえんだよ」
「でも…今君のこと楽にしてあげられるのは僕しかいないんだよ?」
甘ったるい声で話してくんじゃねぇよ耳障りだ。
こんなフヌケた男の所有物になるとか考えただけでも胸糞悪ぃ。
てめー犯すくらいならゾンビに掘られた方がまだマシなんだよ。
「触んじゃねぇっつってんだろ」
「こうすると気持ちいいでしょ?僕の中も、すごーく気持ちいいんだよ…」
完全におっ立ってるオレのモノの形を確かめるように触るというか、揉んでやがる。
「マジ殺すぞ…てめ…」

ばぎっ!

ドア口で大きな音が聞こえてドアが吹き飛んだ。
立っていたのは・琉風。
「……さ…わるな……触るなぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
入った途端見たことないような形相で怒鳴り散らす。
…なんだそれ・オレが他の男に触られてんのが気に食わねぇってことか?
この状況で逆ってことはねぇか・触られてんのは明らかにオレだしな。
お前オレのこと大嫌いなんじゃないのか?
それで怒って触るなとか馬鹿かお前は。
それを聞いて妙に気分がヨくなったオレもまた・馬鹿か。
澪マスの詠唱中断魔法を受けた直後に琉風の指弾でアイツがオレの上から吹っ飛んでいく。
ほらな?言ったろ超邪魔な奴が来るって。
澪マス見た時の真っ青な顔。正にヘビに睨まれたアレだな。
それよか澪マス。オレあんたに言ったよな・『琉風は連れてくるなよ』って。
何連れてきてんだよ。オレの言葉完全無視か。
とか言おうとする間も与えず人の腹の上に全体重かけて乗ってきやがって。
「お助けに上がりましたよ?おーひーめーさーまっ!」
「…………マジ重てぇわ澪マス。太ったんじゃね?」
おまけにオレが言いもしてないのに媚薬使われてることも既にご承知済み。
「リィ。『苦しい』だろうけどもう少しだけ我慢して?」
そうでなきゃ『苦しい』なんて言葉出てこないだろ。
「太った」という言葉に軽く腹を立てていたのか思いっきり人の腹にクるような
反動のつけ方をして立ち上がるとなにやら琉風とwisで話しはじめた。
wisで話すってことはオレに聞かれたくないことなんだろう。
琉風連れてきた上に今度は何企んでんだ。
あー…自己主張の激しいムスコのせいで考えまとまらねぇ。
wisが終わったのか一つの足音が遠ざかっていく。
そして近づいてくるもう一つの足音。そのままどっかとオレの膝の上に座り込む。
遠ざかった人間とこちらに来た人間。オレは全く真逆に想像していた。
目の前に居たのは澪マスではなく琉風。
どうせなら下半身晒してもっと上の方に座れ。ついでに腰も振れ。
膝から感じる琉風のケツの感触に手の骨砕いて手錠外して、滅茶苦茶にシしてやりたくなる衝動にかられる。
「何・顔面阿修羅でも食らわすのか?」
「媚薬…使われてるって聞いた」
「…あんの馬鹿マス・ほんと余計なことしか言わねぇな」
さっきのwisがそうか。まぁロクな話はしてないと思ってたがな。
「かなり堪えてるって。だから……」
言うなりオレのベルトを外しにかかり、
見てて手伝いたくなるような不器用な手つきでオレのモノを引き出す。
「おいおい…どこでそんなフシダラなこと覚えてきたわけ?」
「あんたが教えたんだろ…!」
ためらいもなく・咥えてきた。

ちゃりっ。

手首が思わず動いて鎖が音を立てる。
声が出ちまいそうだった。自分の手に爪を立ててなんとか堪える。
「んっ…んっ……」
琉風の顔を見るとオレの顔を見ないようにして舌で舐め上げている。
半分しか咥えてないのにそれでも相当苦しいのか涙目で。
しかも下手糞だな。
そういや琉風にしゃぶらせた事なかったか。
手錠さえなかったら頭押さえつけて喉まで咥えさせて目茶苦茶に動かしてやんのに。
あーでも。下手糞なりに舐められてたらそろそろヤバくなってきた。
「…おい、口離せ」
返事もせずにしゃぶり続けている。
「離せっつってんだよ」
首を振ってるってことは離す気なしってことか。
人が親切で離せって言ってやってんのに。
「…馬鹿がっ…」
とうとう我慢しきれなくなりオレは琉風の口の中にブチまけた。
「ん…んんっ…!」
やっと琉風が口を離して激しく咳き込む。
「離せつってんのにいつまでもしゃぶってるからだ」
「あんた…よくこんなの平気で飲んでるな」
「さんざんしゃぶり回しておいてとどめにこんなの呼ばわりかよ」
こういう状況が読めたから離せって言ってやったのに
離さないで勝手にムセた上に『こんなの』と来たもんだ。
覚えとけよ・手錠外れたらオレが満足するまでてめぇの
ケツ穴徹底的に使い込んでやるからな。
マジで手の骨砕いて手錠外そうかと考えていた時。琉風のズボンの
ポケットから少しはみ出ている物に気づいた。
確か澪マスが琉風に渡していたカギ。多分オレの手錠のカギだろう。
…これは骨砕かないで済むか。
オレのモノを扱きながら琉風が緩めたズボンの中に手を入れると
カギがさらにポケットからはみ出す。
琉風が屈めば完全に外に出そうだな。
「そろそろお前もウズウズしてんじゃね?」
「…うるさい」
「うるさいなら塞げよ。両手は忙しいみたいだから・口使うしかなさそうだな」
「少し黙ってろよ」
「それともハズカシイ言葉で感じるとかか?それだったらいくらでも」
「いいから黙れよ…!」
挑発に乗った琉風が唇を押し当ててくる。
屈んだ拍子にカギが立った状態で地面に付く。琉風は気づいていない。
オレが腰を浮かすとケツの下にことりと倒れた。
押し当てただけで動かない琉風の唇を深く合わせて舌を絡めながら
ケツの下にあるカギを少しずつ上に移動させていく。
「ん……っ」
その間に琉風の片手がズボンの中に突っ込まれていた。
膝を立てて琉風の手に当ててやるとケツ穴に突っ込んで指を抜き差ししているのが分かる。
何ためらいがちな動かし方シてんだよ。オレがやってる時みたいにもっと音立ててかき混ぜろって。
「ふ…ぁ…」
琉風が唇を離した時、カギは丁度肩の辺りまで来たところだった。
「オレのこと犯すつもりか?」
琉風は何かを言おうとして口をつぐむ。
どうせ違う、と言いかけてやめたんだろ。
今お前がシようとしてることはオレが一番最初にお前をレイプしたときと変わらねぇもんな。
考えてることまで同じかどうか知らねぇけど。
「神に忠誠誓った神罰の代行者様が逆レイプかよ」
「んっ…あ…あぁッ………あぁぁッ…………!!」
肘まで移動させたカギを一度押さえ込んで止める。
手元狂ってカギが変な場所行っちまいそうだった。
フェラもキスも下手糞なくせにココだけは非のつけようが無い。
奥まで呑み込んで吸い付くように締め上げてくる。
コイツの動かし方全部がオレを悦ばせてるって言えばそんなつもりないって自信満々に答えんだよな。
無自覚もいいとこだ。
オレの腹に手を置いて腰を揺する琉風を眺めながらようやく指でカギを摘んだ。
静かにカギ穴に通してようやく片手が自由になる。
「お前まだイってねぇだろ」
もう片方の鍵穴に差し込んで外しながら半分まで下ろされた琉風の
ズボンからチラチラと見えるモノに視線を注いでやる。
「うるさ…んっ…はっあぁっ」
「触れよ。自分でシたことくらいあんだろ?」
「やだっ…してないっ……あぁっ」
シないじゃなくてシてない?マジかよ。自分でヌいたこともないのかこいつ。
「ならオレが触ってやるか?」
「い…らな…あんたの手錠…絶対外さないからッ…あぁっ」
「まぁ、別にいいけどな?」

がしゃん。

「もう外しちまったから」
オレの自由になった手を見て驚いたあの琉風の顔。
本当に気づいてなかったんだな。そんなにオレのモノ
いじってケツ穴かき回すのに夢中だったってことか?
「どうしてっ…やっ…ああああぁぁっっ」
「さぁ…どうしてでしょう?」
好き放題やりやがって。泣かされる覚悟・できてんだろうな。

* * *

「やだぁッ動かないでっ抜いてっやだぁっやぁっ抜いて抜いてヤァァァァッッ!!!」
琉風の声は泣き声に近かった。
オレが中に出したのを掻き出さないまま再開したら身体に残ったままで
動かされるのが苦しいのかずっと嫌がり続けている。
「お願い出さないでっ中は嫌だっやだっやぁっやだぁぁぁぁッッ!!!!!」
オレの動きが速くなってイくのが近いのを感じ取ったのか盛んに首を振る。
世には「抜かずの3発」なんて言葉があんのにお前はもう1発目でギブか。
「やぁっやぁっやめて出さないでっ!離して離してっ!やだぁっやだぁっ!!!」
オレは腕の中でもがく琉風の身体を抱きしめたままその奥に流し込んでやる。
「やぁっやぁぁぁぁッやぁぁっヤァァァァァァァッッッ!!!!!」
開かされた足がびくびく震えてオレの身体に巻きついてきた。
離してって叫んでおきながらその矛盾な行動はなんなんだよ。
「いっ…やだぁ…ア…アァ…」
腕を緩めて琉風の顔を覗くと涙でぐちゃぐちゃ。
「ふ…ぁ…」
涙を拭って頬を撫でてやるとそうされるのが好きなのかオレの手に頬擦りしてくる。
「…やっ…!」
オレがなおも抜かずに動き出したのに穏やかになりかけた琉風の表情が泣きそうな顔に変わる。
「や…やぁぁぁぁッッ!!」
「まだだ。オレはまだ満足してねぇ」
「やぁっだめっもうだめっやだぁぁ!!抜いてっ逃げないから抜いて!中の出させてやぁぁぁッッ!!!」
必死に懇願する琉風を見て少しだけ考える。
このまま続けて泣かせまくっても良かったんだけどな。
考えが変わってオレがモノを引き抜いた。
「あ…はぁ…はぁッ…ぁ…」
手足をだらりと投げ出して琉風は荒い息を繰り返している。
「出させてやるよ。自分で中のモノ掻き出せ」
「んっ…ぁ…」
今嫌がれば中に残したまま・また突っ込まれると分かったんだろう。
指をケツ穴に突っ込んで、中のものを掻き出し始めた。
よく見えるように琉風の腰を持ち上げて足を開かせると琉風のケツ穴からオレの
出したものがくぷくぷとスケベな音を立てて背中の方にまで伝っていく。
「前も一緒に触れ」
「…あ…あッ…」
「オナニーしろって言ってんだよ」
顔が紅くなった所を見ると意味はひとまず分かってるらしいな。
やだやだダダ捏ねるだろうと思ってたら意外にも素直に空いてる左手をモノに添えて扱き出した。
「ふぅ…んっあっはぁっ…」

しっかしたどたどしい動かし方だな。本気でこいつ自分でヌいたことねえのか?
聖職者やモンク僧は戒律が厳しい反動で禁欲なんてあってないようなもんだろ。
オナニーもシたことない。オレに会うまでSEXもシたことがない。
オレから言わせりゃコイツの方がよっぽど異端だな。
まぁ人前でオナニー見せてりゃ戒律も異端もクソもねえけどな。

「ああぁぁッ…!」
オレがケツ穴に指突っ込んでる際の部分を舐めてやると持ち上げた腰が動いた。
その反応が面白くて何度も舐めてやると腰を断続的にビクビクさせてくる。
「やだ…指…もうやだぁっ…」
「指が嫌なのか?」
「やだ…やだ…」
「なら抜け」
指を抜いて真っ赤になってる琉風のケツ穴に舌を当ててねじ込んでやる。
「やぁっ違うッちがっやだぁっやぁぁぁぁッッ」
何が違うのか、何を欲しがっているのか分かってる。
分かっててオレは知らないフリを続ける。
「指も舌も嫌なら何が欲しいんだ?」
「アレ…ほしっ…」
「『アレ』なんて言葉で誤魔化すな」
「や…ぁ…」
「お前のこのスケベなケツ穴にちんぽ突っ込まれたいんだろ?」
「………!!!」
ダイレクトな言い方がかなり効いたのか顔どころか耳まで真っ赤だ。
「違うのか?このままずっと舌で遊んでやるか?」
ヒクヒクしてる入り口を舌でつついてやる。
「あ…違うっ…いれてっ…入れてっ…」
「何をだよ。指か?舌か?」
「違うっ…おねがい…入れてっ…」
「だから何をだよ」
「入れてっ…ケツ穴にちんぽ突っ込んでぇっ!!」
恥ずかしそうな顔で叫ぶ琉風のケツ穴になおもオレは舌を這わせる。
「ちんぽだったら誰のでもイイってことか」
「やだっ……違う……違うっ!!」
「外に転がってるハイウィザードの突っ込ませるか?それとも…」
「やだやだやだやだやだぁぁッッッ理っ理のがいいっ…理っ…!」
琉風の声がオレの名前を呼ぶ。
コイツがオレを名前で呼んだの初めてじゃないのか。
「理がいいっ…理…理っ…」
「…もっと欲しがれ」
「入れて…いっぱいっ…理の…理…っ」
「もっとだ・もっとオレを欲しがれ」
「やだやだやだぁっもう焦らしちゃやだぁっ!理のちんぽ入れてっ!いっぱい突いてっ!
 理っ理っことわ…りっ……あぅっ…あっ…アアアァァァッッッ!!!」
ヒクついてるケツ穴に望みどおりに咥えさせてやると大声張り上げて首にしがみついてきた。
「あっ…あ…こ…とわり…ことわり…理っ…理…理…理っ…」
耳元で喘ぎ混じりにオレの名前を呼び続ける。
「琉風」
オレが耳元で名前を呼び返してやるとさらに強くすがりついて擦りよってきた。
「理…理…理っ…ことわ…りっ…あぁっあんっはぁぁっあァァッッ」
奥を軽く探っただけで激しくよがって声を出してくる。
「あぁっあぁっ気持ちいいっきもちいいっきもちいぃよぉっ」
オレの首に縋って腰を振り、それに合わせてオレが動かすとイイ所に
強く当たるのか琉風の声がますますデカくなる。
「あっあぁっ理っ…こと…わ…りぃ…あぁっあぅんっひゃんっひゃぁぁぁんっっ!!」
オレは夢中になって動いていた。
クスリのせいなのか、もう分からねぇ。
ただ目の前の琉風のことしか頭になかった。
琉風・お前マジ最悪だ。
オレに触ってたアイツに触るなって怒ったり。
オレの相手を他のギルメンがスるって言えば腹立てたり。
仕舞いには俺のことどんどんおかしくしてくと逆切れ始める。
それが心地よくて仕様が無い。
そうやってもっと怒ればいい、もっと腹を立てればいい。
オレのことだけで頭がグチャグチャになってしまえばいい。
大嫌いなお前に対してそんな感情を持つなんて正気じゃ考えられねぇと思わね?
おかしくなってくってオレのこと責めるお前が・オレをどんどんおかしくしてるって分かってんのか?
おかしくなるってんならおかしくなっちまえばいい。


そのままオレに狂ってしまえ。


「イくっイクっ…あぁぁっアァァッアァ…!…アアァァァァァッッッ!!!!」
琉風がイったと同時に中をきつく締め上げられる。
「………ッ……」
オレが中に出し切ったころには琉風はすっかり大人しくなっていた。
半身を起こそうとしてすがりついている腕に阻まれる。
意識飛ばしてるはずなのにがっしり首にしがみ付いてビクともしねぇ。
ケツ穴に突っ込んで中のを出してやるとほんの少し動いただけ。
背中に腕を回して抱きしめて少しだけ力が緩んだか緩まないか。
無理やり振りほどくのも面倒になって琉風をしがみつかせたまま仰向けになった。

びちゃっ。

「…………」
背中がめちゃくちゃ冷てぇ。ついでに腹も冷てぇ。
オレが出したのだのコイツが出したのだので身体もソファもぐちゃぐちゃだったなそういえば。
もう使えねぇだろうなぁこのソファ。まぁオレのじゃねぇしどうだっていいけどな。
一服しようとしてポケットを探るも煙草の箱はマッチごと没収済み、だったか。
あー…煙草吸いてぇ。
きしっきしっ。
しばらく琉風を抱えたままボーッとしてると廊下を誰かが歩いてくる音。
きっとこの部屋に入ってきてオレの顔を覗き込んでくる。
「どう?楽になった?」
ほらな。やっぱり。
ソファの背の方から澪マスが顔を出している。
「オカゲサマデ」
「琉風は完全に参っちゃったか」
オレがその辺に投げ捨たモンクの上着を拾い上げると琉風の身体の上にかけている。
「随分泣かせたみたいだね。いくら可愛いからってこんなになるまでいじめちゃ駄目だろリィ」
意識を飛ばした琉風の涙のあとを指でなぞった。
「あんたがそう仕向けたんだろーが」
「仕向けたとは心外な。俺はちゃんと選択の余地を与えたよ?琉風がその中で
 リィの性欲を自分の身体で受け止めることを選んだだけの話で」
じゃあその『作戦通り』みたいな笑みはなんだよ。
「それにリィも琉風が相手で嬉しかったでしょ?」
「別に」
「本当。2人そろって可愛い天邪鬼さんだ」
「2人ってどういうことだよ」
「はい」
澪マスがそれに答えずにオレに煙草の箱を差し出してくる。
…煙草吸いたいなんて言葉に出した訳でもねぇのになんでわかんだよあんた。
やっぱり変な電波飛ばしてんじゃねえの?
そんなことを考えながらその中の一本を引き抜くと出されたマッチで火をつけた。
その残り火で澪マスも煙草をふかし始める。
「澪マス・煙草やるっけ」
「たまーにね」
ふー。と煙を吐いて澪マスが答える。
「リィ」
「何だよ」
「レイプする時はキスはしないよ」
「あ?」
オレが喉を逸らして肘掛に腰かけている澪マスの横顔を見上げた。
「もしキスする時はする方がされる相手のことを一方的に好きな場合」
首だけ横を向いてオレの顔を見下ろしてくる。
「相手がキスを受け入れればそれはもうレイプじゃない」
「…莉良に聞いたのか」
『レイプする相手にキスってするもんか?』
莉良に以前オレが聞いたことだ。
「別に何も聞いてないよ?ふと思いついた時に目の前にいたのがたまたまリィだったってだけ」
オレの言った言葉真似てやっぱ聞いてんじゃねぇかよ。
「何が言いたいんだよ」
とっくに吸いきってしまって短くなったオレの煙草を取り上げると、
澪マスのまだ半分以上残っていた吸いかけをオレに銜えさせてくる。
「リィも、琉風も。どっちも大事で大好きってことだよ」
「……………」
オレは貰った煙草を大きく吸い込んでため息と一緒にに大きく煙を吐き出した。
「だからオレは・あんたが大好きで大嫌いだなんだよ」
「うん、わかってるよリィ」
澪マスはオレの短い髪を軽く指先に絡めて、軽く睨み付けるオレに笑った。



 

 

 

 

 

 

 

 

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