呂揮が澪の呼び出しを受け、明亭へと赴いたのは夜も更けた時分だった。
 待っていて、という言葉と共に通された澪の私室。
 もちろん、待つつもりであったし、そのことに不満のひとつもあるわけではない。
 けれどその日、何気なく腰を下ろしたベッド、何気なく転んだその上で澪を待つその時間は、
呂揮にとってはとても長く感じたのだ。


 大体、久しぶりなのである。
 多忙さゆえに会えない日々が続いた、そしてその忙しさは、今夜で終わりになるはず…呂揮は
それを知っている。
「………、ふ…」
 身じろぎをすると、ほんのわずかにベッドのスプリングが動く音がした。
 顔を枕に埋める。さっぱりと清潔に整えられた寝具に残る恋人の気配。
 ゾクリ、と身体の芯に熱が生じた。枕に顔を埋め、横むきに寝そべりながら切なく両膝の内側同士を
擦りつける。振動が腰にきて、思いの他甘い声が漏れた。


 もうすぐ、会える。
 もうすぐ、触れることができる。
 ――――でももう、我慢できない。


 身体が疼く。心が切なく痛む。動悸が跳ね、全身に血が巡ると寂しさが少し紛れる気がした。
「っん、……ぉ、………澪……」
 ひとりきりで恋人の名前を呼ぶ。返る声は無い。寂しい。けれど、身体は自身が紡いだ名前の響きに
反応をして熱を上げた。
 くちゅくちゅと控えめな音が立つ度に息が上がっているようだ。

 片手で自らゆるめた下肢の間を慰めながら、もう片方の手は黒のインナーに伸び、尖り始めた胸の頂を
ゆるく掻いた。びくん。身体が跳ねる。
 自慰をしながら、頭の中では記憶が巡っていた。心はただひとりの相手を思い、自分自身の記憶に
嬲られるのだ。正しく気、記憶の中の恋人に。
「っも、…イ、っちゃ、…っあぅ、…う、うぅう、ン…!」
 自身の指を恋人のものだと思いながら、呂揮は身体の疼きに耐えかね、腰を震わせながら達した。









 部屋の外にある人の気配を感じるのが遅くなった。
 それは、事後の気だるさに身を任せていたせいでもあるし、その人物の気配に警戒心を煽られる
ことが無かったせいでもある。
 けれどぼんやりとしていた頭は、カチャリと音を立てたドアの動きで覚醒を強いられた。
 ば、と飛び起き、衣服の乱れを整えてベッドを下りようとした呂揮だが、それよりもドアが開く方が早い。


「お待たせ。ただいま、いい子にしていた?」
「……あ、おかえり…なさい。澪マス、お疲れ様…です」
 微笑と共に向けられた言葉に、呂揮はかろうじて、動揺を押し殺しながらの返事を口にすることができた。
 ぱたん、とドアが閉まる。そして施錠の気配。
 ゆっくりと呂揮の傍に歩み寄った澪が、そ、と片手を顎先に伸ばしてきた。

「………潤んでる」
 ちゅ、と目の端にキスが下りた。寂しかった?という問いかけに、呂揮が首を振ろうとして、澪自身に阻まれた。
 口付けられ、目を閉じる。
 そっと顔を傾けて唇を薄く開くと、期待したものが口腔内に忍び込んでくる。

「…、ふ、…、ぁ…」
 くちゅ、ちゅ。水音が響いた。
 澪の両手が呂揮の腰下へと伸びた。ぐ、と尻朶を掴み、揉む動きで腰を引き寄せる。
 くぐもった喘ぎがキスの合間に零れ、呂揮が切なく眉根を寄せる。尻朶の間に指が食いこみかける度、びくんと
震える感度のよさ。澪が口付けを解き、そ、と呂揮の耳元に囁きをふきこんだ。

「寂しかった…?」
「―――――!」

 舌先が、真っ赤になった耳朶をぺろ、と舐める。
 思わず澪の胸を押し返すように手をかけた呂揮だったが、その手に力が入ることは無かった。
 そ、と自分にされたように、澪の耳元に唇を寄せる。

「寂しかったです…、澪マスに、会いたかった……触ってほしかった」
「可愛いことを言うね。嬉しいよ、…呂揮」
「んっ、…、澪マス、…っ、…み、お…」

 ぴちゃ、と濡れた音が頭の芯に直接響くようだ。ゾクゾク、とした甘い痺れが項を下りて腰にまで重く響く。
 ふらつきかけた身体を押され、もつれるようにふたり、ベッドに横たわった。
 呂揮を押し倒した澪が、間近に見下ろして微笑んだ。

「ねえ…呂揮」
「何で、しょうか…?」
「見たいな?」
「――――」

 呂揮が目を見張る。
 情欲に潤みかけていた目を見張り、恋人から寄越された言葉を頭の中で反芻した。
 呂揮は察しがいい。澪も十分にそれを把握している。
 けれどたまには、きちんと言葉にするのもいいだろうと、言葉はさらに重ねられた。



「今度は目の前でして見せて。どれだけ呂揮がさみしい思いをしてたのか俺に教えて」








「っん、…、ぁ、…」
 ベッドレストに背を預け、下肢を覆う布の類は全て脱ぎ落し。
 よく見えるようにして、と寄越された澪のおねだりを、呂揮は健気に叶えた。

 両足を開き、恋人の視線を感じながらの自慰。
 片手で自身をゆるく扱いてみせるが、視線と――――今は、身を焼くような羞恥とに嬲られ、
熱は先ほど以上に呂揮を痺れさせた。

「そこだけ?こっちはシてないの…?」
「あぅっ、ン、っあ、あっ、澪ッ…!やだ、そ、こぉ…」
 とろとろと先走りが零れ、その下を濡らしていた。
 澪が片手を伸ばして、体液をソコに馴染ませていく。

「このくらいなら邪魔にならないだろう?呂揮はソッチに集中しなさい、いいね?」
「っ、……は、…ぃ、っあ、アッ、あぁ、…ッ…!」

 くちゅくちゅ。自身を扱く動きだけではなく、澪の指と自分の身体の間で立つ音が鼓膜に届き。
 一気に熱が上がった。
「っあ、イ、っく、イく、…澪、…み、お、ッ!やっ、や、ッ、―――――あぁああっ!」
 ゾクゾクとした快感が腰に溜まり、爆発する寸前に、呂揮の視界の中でやわらかな色の髪が揺れた。
 達する直前に、先端が熱い粘膜に覆われた。呂揮は狼狽しかけるが、衝撃に耐えかねて身体はそのままで
達してしまう。

 焼けつくような快感に声さえ出ないほどだ。は、は、と短く息をしていた呂揮が、その直後目を見張った。
「――――っぃ、あ、っ、や、あぁぁ!?澪ッ、…は、…っ、離、ッ、だめ、だめえぇぇ!」
 達したばかりのものが、根元まで熱い粘膜に包まれ、濡れた音とともに引き抜かれ、口の中で扱かれる。
 そしてあろうことか、精液を吐き出してヒクつく先端にすいつかれ、残りの精液を啜りとられた。
 指で弄られていた場所には、二本の指が宛がわれて中にねじ込まれた。

「やっ、やぁああっ、澪ッ、だめ、イ、ったばかり、…や、あ、あっ、…ッ、…!」

 敏感な内壁が、澪の指の関節まで認識できるほどにぐりぐりと弄られ、曲げられる。
 突き上げるような射精感を煽る場所に、ひたりと指先が宛がわれた。


「だ、め、ソコ、だめ、壊れちゃ、っあ、澪、許し、許し、て…」
「かわいい呂揮。寂しくさせてごめん、代わりに…いっぱい愛してあげる」
「っあ、あぁあああ!」
「ひとりでイった数の三倍、イかせてあげようね。何回イったのか教えてくれる?」
「!っ、ひ、しらな、知らな、っ、ああああ!やー!」
「うそつき。じゃあ想像しちゃうよ…?何回かな…三回くらい?じゃあ、九回イってみようか」
「っひ!?…してな、…っ、してな、い、ですっ、二回、しかッ…」
 そう、と澪が言った。ぐ、と指で奥を突き上げてぐちゃぐちゃと掻きまわしながら。


「じゃあ六回。たりなければもっとあげる…、いっぱい味わって。俺が呂揮を愛してるって、身体でちゃんと
覚えるんだよ?」










 繋がった瞬間の感覚を何と表現すればいいのか。呂揮は一瞬だが、たしかに自我を失った。

「――――ッ、あ、ぁ…」
「呂揮?大丈夫…?」

 ふ、と意識が白くなりかけ、それを澪の手が引き戻す。頬を優しく撫でて、ちゅ、ちゅとなだめるように
口付けを落とす。
 何度も何度も繋がりを持ったが、今日は特に全身を蕩けさせるほどの愛撫を施し、泣きだすまで
焦らしきってからの挿入だった。当然、恋人のかわいい姿に煽られきっていた澪もなかなかに辛い
思いはしたのだが、こうして繋げてしまえば、そんな時間は些細なものだと心から思う。
 ぴとぴと、と頬をすこし叩かれて意識を戻した呂揮が、蕩け切った表情で見上げてきた。
 感じすぎて零れる涙を隠しもせず。

「…、ぉ、…み、お、…中、…すご、…っ、あ、ア、……っや、動いて、ない、のに、きもちい…!」
「ン。俺も、気持ちいい。呂揮の中、絡みついてくるね…」
 くい、と腰を押しつけてみれば、びくんっ!と背を浮かせる呂揮だ。
「そこ、っ、あぁああっ、イ、っ、澪、み、ぉ、あ、あ、イ、っ、…っちゃ、う、うそ、クる、っあ、ぁ…!」
「いいよ、イきなさい」

 引き抜く寸前まで腰を引き、間髪いれずに根元まで。
 角度を違わず、呂揮の『イイ場所』を抉った澪が、さすがに、は、と上ずった吐息を零した。
 中を犯されて達した呂揮が、きゅうきゅうと澪のものを締めつけ、快感を煽ってくるのだ。
 何よりも自分の身体の下で泣き喘ぐ恋人というものは、それだけでも理性を揺さぶり欲情を煽るもの。
 行為の中にあっても、呂揮を慈しみ自分を失わない澪が、ちらりと瞳に少しだけ、浮かべたものがある。

 穏やかなだけではない情愛。

「!?そ、…そんな、っあ、待って、少しだけ、休ませ、て、っあ、あああんっ!」
 思わず逃げようとする身体逃さずに。
 ぐちゅぐちゅと音がたつ激しさで攻め立てた澪が、触れられないままに涙を零していた呂揮のものに
絡んで刺激し始める。
 達したばかりの身体に、キツいほどの快感を与えられた呂揮が髪を振り乱して喘いだ。
 腰の奥を、いつもよりずっと固く感じるモノで貫かれ、痛いほどの快感を煽られる苦痛と喜びに。
 全身を愛される快感に。
 指の先まで痺れるほどの快感が全身に廻り、恋人の腕にかけていた呂揮の指がシーツの上に
滑り落ちた。く、と指がそこに立てられ、真っ白なシーツに深いしわが刻まれる。
 背を浮かせて喘けば、今度は胸の尖りに刺激を受けた。
 逃げ場のない快感は、呂揮を続けざまの絶頂に追いやろうとする。
「やだっ、やだぁあ、イかせ、ない、で、澪、み、お、一緒、…一緒、に…ッ、俺だけはやだ、っあ、
あああ!ダメ、イっちゃう、み、お、…み、ぉ……!」
「いいよ、一緒に…」
「っぁ、―――っ、く、っ、あ、あぁぁああっ…ん!イく、イっちゃう、っあ、あぁああ!」

 びくん、と呂揮の腰が跳ねあがった直後。
 互いの下腹の間でびくりと震えたモノから少量の精液が零され、呂揮の喘ぎは塞がれた。恋人の唇に。
「…ッ、…、!」
 長い長い、絶頂。
 先ほどからイきっぱなしにさせられた呂揮が、今度こそ、その長く続く絶頂の余韻に身を落とすことを
許された。
 繋がりを解かぬまま、ぴたりと肌を合わせ、上の口でも繋がりながら味わう至福の時間。
 きゅうきゅうと恋人を締めつけていた内壁が、徐々に蕩けていく。
 くたり、と身体がベッドに沈んだ。―――――が。

「ッ、ん、…、ッ、…は、ふ…」

 口付けが次第に激しくなり、腰の奥でくちゅりと精液がかき混ぜられた。
 一度おさまりかけた快感が呼び戻されかけ、潤みきった紫の瞳がすがるように澪を見上げてきた。
「あ、…まさ、か、…っ、…うそ、…ッ、澪、っあ、ア、…ッ、ま、って、待っ…」
「待たない。もう一度」
「―――――!」
 ゾクリ、と、注ぎ込まれた囁きに全身の肌が粟立つ感覚。
 その声は低くかすれ、ゾクゾクとするほど色っぽい。
 呂揮はこのとき、確かに恋人の『本気』を感じた。
 突き上げるような幸福感を感じ、呂揮は両腕を澪の背に回した。





 夜明けが来なければいい。
 しまいにはそんな言葉すら、心に浮かぶ余裕も消えた。
 抱かれ、抱きつぶされ、また起こされて。獣のように貪り合う夜は、朝日の訪れと共に終わりを告げた。
 







おしまい!







・・・・・・・↓そして翌朝(昼)の一こま。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ところで、呂揮」
「何ですか?澪マス」
「うん。すごく気になったんだけど、聞いていい?」
「?」
「ひとりでシてたときのおかずは何だったのかな〜って気になって。呂揮ってあんまり、自分からこうして
欲しいって言わないからね。どういうプレイが好きなのか、恋人としては気になるじゃない」
「……………………………ハイディング!」
「サイト」
「はなしてくださいっ、澪マスッ!いいかげんセクハラにも度がすぎますよ!」
「あはは、呂揮は照れ屋でかわいいね。言葉で言えないなら、身体で…」
「ひゃっ!…っ、う、ッ、…やっ、澪マス!どこ、触って…!」
「どこを触ってるか聞きたい?ええと、呂揮のこ」
「言わなくていいです!っあ、や、ソコ…っ」
「昨日の今日だからね…どこもかしこもすぐ熱くなる」
「や、ぅ、澪マス、はなして、俺、もう…無理、です…」
「試さなくちゃわからないかもよ?出るかどうか調べてあげる」
「あっあっ、あ、ぁああ…!」



いちゃいちゃ萌え。

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* * *

という訳で、某様より澪×呂揮でSSを頂いてしまいました!!!!
ズキュ━━━━(゚д゚*)━━━━ンvvバキュ━━━━(゚д゚*)━━━━ンvvv
正にこんな感じですホントマジで!
実は自分、自キャラを書いてもらうのも描いてもらうのも嫌いではないっていうか
むしろ大好きですすみませんレベルなため本当に嬉しかったです、
ありがとうございましたぁあああああああぁぁぁあああ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

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