「麻痺せよ!」

ハリーの放った閃光が真っ直ぐにスネイプの足を直撃し、

彼はもろともその場につんのめって倒れた。

「スネイプ先生・・何を・・」

その衝撃で気絶していたはぼんやりと意識を取り戻した。

「そのまま立って、彼女をこっちによこすんだ」

ハリーは息をはずませながら命じた。彼は矢のように飛ぶように駆けて、森に転落した

三人の後を追ってきたのだった。

「いいだろう」

スネイプはすっころんでいたが、ぜいぜい言いながら、充分立ち上がれるだけの体力はあった。

「取れるものならな!」

そういって、倒れていた彼女の襟首をつかむと強引に立たせ、

喉元に杖をつきつけた。

「やめて下さい・・ダンブルドアを殺しといてこれ以上何が望みなんですか。もう充分でしょう?」

は弱弱しく言った。彼女は極度の疲労が高じ、心身ともに参っていた。

「黙れ、黙らないとお前を殺すぞ!」

スネイプは狂気をはらんだ目で、彼女の首を羽交い絞めにすると叫んだ。

「彼女を放せ、スネイプ!」

ハリーは脅すように杖を振って叫んだ。

「わからんのか、愚か者、お前が杖を捨てねば、彼女は死ぬぞ!」

スネイプは高笑いした。

「我輩は彼女を連れて行かねばならんのだ」

バーンと衝撃音がして、ハリーは攻撃するまもなく吹っ飛ばされていた。

スネイプは凍りつくような声で言った。

「卑怯者、彼女はあんたの生徒だろう。生徒にそんな真似をして恥ずかしくないのか!?」

ハリーは芝生を血の出るほど強く握り締め、立ち上がりながら罵った。

「手段は選ばない。それがスリザリンの教訓だ」

スネイプはに杖を突きつけたまま、倒れているハリーに近づいてきて言った。

「それに我輩を卑怯者呼ばわりするとはどういう神経だ?卑怯者は多勢で我輩を

 攻撃したお前の父親じゃないのかね?」


ハリーが絹を切り裂くような悲鳴を上げた。


スネイプが彼に情け容赦なく服従の呪文をかけたのだ。


彼はぴくぴくと痙攣し、ころんと地面に転がったまま動かなくなった。



「さぁ、行くぞ!」

「嫌よ、放して!放して!」


スネイプは泣き叫ぶ彼女の喉元に杖を突きつけたまま、引っ張っていった。


「セクタムセンプラ!」

「インペディー」


「やめろ、ポッター!」


突然、スネイプはを突き放し、寝転がったまま呪文をはなった

ハリーに二度、死ぬほどの痛みをあじあわせた。

「無言呪文を使えない間は決して我輩に勝つことは出来ん。それに、我輩が

 発明した呪文を我輩にかけるとはどういう神経だ?我輩こそ、「半純血のプリンス」だ!

 貴様の大事にしている教科書のな!そんなことはさせん、許さん!」


スネイプは雄牛のような唸り声を上げ、ハリーの杖を妨害呪文で吹っ飛ばした。

「それなら先生を殺したように僕を殺せ、それが望みだろう?」

ハリーはズタズタに傷つきながらも、最後のプライドまでは失っていなかった。

「スネイプ、あんたはずっとが好きだったんだろう?やれよ、この臆病者。

 ルーピンに先を越され、彼女にそれを伝えることすら出来なかったのに、僕を殺すという大それたことを出来るかどうか疑問だけど」

ハリーは生意気にも相手の最も痛いところをついた。

「我輩を――臆病者というな!」

ハリーは断末魔の叫びを上げていた。

スネイプは歯をむき出し、雄牛のように唸ると

杖を真っ直ぐに憎き仇の息子に突きつけた。

ハリーは頭の中で轟音がなり、星が飛ぶのを感じた。

そして、彼はそのままだらんと手を垂れて、意識を完全に失った。


「行くぞ・・うっ!」

スネイプは積年の恨みを晴らした顔で、疲れきった様子で切り株に倒れていた

彼女のもとへと行こうとした。

だが、そこへ行くまでに目にも留まらぬ速さでの高く掲げた足が大きく

弧をかき、握っていた杖を蹴っ飛ばした。


「もう先生に勝ち目はない」

は木の幹に、杖を突きつけながらスネイプを追い詰めた。

「この厄介な吸血鬼体質も役に立つことはあるわ」

彼女は憎しみを込めた目で彼を威圧した。

彼女の目はぎらぎらと赤く輝き、口からは二本の牙がしっかりと覗いていた。

「ショックで覚醒したのか・・」

スネイプは酷く動揺していた。



「両親やシリウスを死においやった犯人が分かってよかったわ。これは母親の分」

そういうと、は渾身の力を込めて、スネイプの頬を思いっきりぶん殴った。

「これは父親の分」

「これはシリウス兄妹の分」

「これはミナ伯母の分」

「最後はハリーの分」

合計五発のパンチを顔面にぶち込んでしまうと、彼女はいくらか気が楽になりせいせいした。

「死ね!」

それから彼女は苦しみにゆがんだ顔で、口から血をぼたぼた垂らしている

スネイプの横っ面めがけて空中高く飛び上がると、三段蹴りをお見舞いした。

スネイプは叫び声を上げるまもなく、ぐったりと幹によりかかって崩れ落ちた。

だが、ほっとしたのも束の間、今度は後ろから追いかけてきた三人のデスイーターの閃光が

真っ直ぐに背中に突き当たり、彼女は驚愕した顔でうつぶせに倒れた。



「それだけ?他にいいたいことはある?」

だが、完全に吸血鬼へと覚醒した彼女は簡単には死なない。

ゆっくりと後ろを振り返ると、
乳白色の伸縮自在な長い杖を伸ばし、

「ば、化け物だ・・」と恐怖におののく、デスイーターどもに宣戦布告した。









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