が操るバギーは猛スピードで、ころがるように夜空を駆けていた。

「出掛けに、DAのメンバーに廊下をパトロールしろと言ったんだ」

「皆、今頃、デス・イーターに撃たれてないか心配だ」

ハリーは神話の復讐の女神のように、狂気にかられてバギーを飛ばす彼女に

こっそりと言った。

、あそこにとめておくれ」

ホグワーツ城がうすらぼんやりと見えてきたとき、後部座席からダンブルドアが、

指示した。


そして、は搭の屋上の銃眼つき防壁に、バギーを着地させた。

ハリー、ダンブルドアは次々に飛び降り、目をこらして辺りをうかがった。


「誰もいませんね・・・」

が漆黒のペガサスに、ここで待っているように伝え、

二人の側に降り立った時に言った。

「闇の印が打ち上げられたならば、争った後が必ずあるはずじゃが・・」

ダンブルドアもいぶかしそうに言った。

その言葉どおり、城の内側に通じている螺旋階段への扉はしっかりと閉まっていた。


「ダンブルドア先生?しっかりして下さい!」

ハリーは慌てて、苦しそうに手で胸をおさえ座り込んだダンブルドアを抱きとめた。

「毒の後遺症で五臓六腑が弱ってるんだわ。早くどこかで休ませてあげなければ!」

はハリーの腕から逃れ、搭の暗い隅で嘔吐しはじめたダンブルドアを悲痛そうに眺めながら

言った。

「ハリー、君が行ってスネイプ先生を探してきておくれ」

胃の中のものを皆、出してしまうと、ダンブルドアはかすれた声で命じた。

「何があったのかを話し、わしのところへ連れてくるのじゃ」

「でも――」

ハリーは尻込みしていた。

「わしに従うと誓ったはずじゃ――さぁ、急ぐのじゃ!」

ハリーは螺旋階段への扉を開けようと急いだ。

だがしかし、扉のライオンのノッカーに手をかけたとたん、

扉の内側から誰かが走ってくる音が聞こえた。


「二人とも、隠れなさい・・」


ダンブルドアは即座の判断で命じた。


二人はお互いに目をあわせて、それからじりじりと扉から離れた。



「エクスペリアームス!」


なぜだ・・体が・・体が動かない・・。

あっと思った瞬間、二人に金縛りをかけられたような感覚が襲った。

乱暴に押し開けられた扉・・なだれこむ一人の男子生徒。


「こんばんは、ドラコ」

「終わりだな、校長先生」


そこには風に乱されたプラチナ・ブロンドのドラコ・マルフォイが杖をかまえて

立っていた。ダンブルドアの杖は呪文の衝撃で吹き飛ばされて見えなくなった。

ハリー、に無言呪文をかける隙に、奪われたのだ。


「ここにいるのはお前だけか?」

「わしのほうこそ聞きたい。君一人の計画かね?」


マルフォイはちらと暗い隅につながれた、ペガサスとバギーに目をやり、

他に味方の人間がいないかと確かめているようだった。



「違う。こっちにはデスイーターがいるんだ。援軍が今にも押し寄せて来るぞ」

自分とダンブルドア二人だけだと分かると彼は、勝ち誇ったように宣言した。

「ほう・・ほう」


しかし、ダンブルドアはまるで、悩み相談を聞いているかのように穏やかな口調で相槌を打っている。


「なかなかのものじゃ・・しかし、失礼ながら、その援軍とやらは

 なぜ、ここに来る気配がないのかね?」


「そっちの護衛に出くわしたんだ。スパイの女が真っ先に気づいて爆竹を鳴らしたので

 城中の人間をたたき起こすはめになった。だけど、多勢に無勢だ。

 おっつけここに来るだろう。僕は――先に来たんだ。僕にはやるべきことにある」

自分の心の中を見透かされてドラコはちっと舌打ちした。

「おう・・それなら、早く済ませねばならんの」

だが、ダンブルドアはそれが何のことか検討がついていたが、取り乱す様子もなかった。







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