「ダンブルドア!!どういうことか私に説明願います!!一晩にーーー6人もしかも、危険人物のポッター、

 に外出許可を与えるなど!!」


、ハリー、ウィーズリー四兄妹が真夜中に次々とベッドを抜け出したことに気がついたアンブリッジは

彼らが校長室から移動キーに乗って、グリモールド・プレイスに発った数分後、目にも留まらぬ勢いで校長室に

飛び込んでまくしたてていた。


「じゃからのう、アンブリッジ先生。さっきからいうておろう。彼らはウィーズリー氏、ブラド夫人が負傷し・・・」


「嘘、嘘ですわ!ダンブルドア、あなたはどうかしてますわ!!」


ダンブルドアはほとほと困っていた。

この石頭の教授に何度、「ポッター、 、ウィーズリー四兄妹が、ウィーズリー氏、ブラド夫人負傷の為、緊急に聖マンゴに

行くことになった」とまっとうな理由を説明しても、教授は彼らをまんまと逃がしたダンブルドアの処置に我慢ならぬ

怒りを憤らせていた。


「校長!」

ピンクのガウンにだらだらと幾つも汗の染みを作り出し、髪を振り乱して激しく憤るアンブリッジからうんざりして、スッと視線をダンブルドアが

逸らした時、隅の大きな本棚から女の声がした。


「おお、来なさかったか。どうぞ入りなされ。」

本棚の後ろの声に救われたダンブルドアは、ホッとして机の上に置かれた銀の杖を本棚目掛けて振った。

「失礼します」

そのやわらかな声とともに本棚が回転し、頭をかがめ一人の背の高い女が入ってきた。

「校長、どなたですの??」

アンブリッジはこんな真夜中の珍客に腰を抜かし、慌てて赤カブのように火照った頬を撫で、グシャグシャになった髪を

手ぐしでそわそわと撫で付け始めた。

「おお、あなたとは初対面でしたの?驚くことなかれ!このご婦人はフェリシティー・チェン・ じゃよ。」

ダンブルドアは得意そうな笑みを浮かべて言った。

「ええーーーえええーーそんな!!まさか!!だってーー 婦人は確かーー死んだーーー」

アンブリッジはひいいっと幽霊でも見た顔で、ニ、三歩驚きのあまり後ろに飛びさすった。

「いいえ、あたくし、まだ死んではございませんことよ。それより校長!」

婦人はアンブリッジを軽蔑した目つきで、チラッと眺めると再びダンブルドアの方を向いて

彼の耳に手をあてひそひそと何か喋り始めた。

その間、アンブリッジは早速何事も見逃さぬ、意地汚い目で 婦人を上から下までじろじろと眺め始めた。

フェリシティー・ 婦人は年齢は三十から四十の間ならいくつと言ってもとおりそうで、

赤茶色のスパイラル・パーマをかけた長髪ーそして、房のついたかかとまで届くスコットランド風のショールをしていた。

漆黒の瞳にふてぶてしそうな顔つきの背の高い美人で、額の巻き毛が卵型の顔を美しく取り囲んでいた。

「うむーーわかった。ご苦労じゃったのう。フェリシティー。」

ダンブルドアは彼女からの報告で、ホッとした安堵の表情を浮かべた。

「では校長先生、あたくしすぐ戻らなければいけないもので。」

フェリシティーはやや鼻にかかった声で丁寧にお辞儀をすると、ドアのほうへと行きかけた。

「ああ、ミズ・アンブリッジ。」

三歩ほど歩いたところでスッと謎めいた笑みを浮かべて、 婦人は後ろを振り返った。

「な、何でしょう?」

アンブリッジは 婦人の謎めいた微笑に、ぎくりとしながらそれでも威厳を持って言った。

「初対面ながらご忠告申し上げますわ。大変余計なことかも知れませんがね」

婦人は魅力たっぷりの毒の含んだ笑みを浮かべて言った。

「あなたーー他人に対するお節介はほどほどになさったほうがよろしいですよ。

 そうしなければーーおあとがいろいろ面倒なことになりますわよ?」

その言葉で、アンブリッジの顔が微妙に青くなった。

婦人はそれを見て、にっこりと満足げな笑みを顔全体に浮かべると

「それではーー失礼致しますわ」

と今度こそ本棚を回転させて出て行った。


「おやーどうしたのかね?アンブリッジ先生、ちとお顔が青いようじゃが・・・」


「いいえーーいいえーー私、普通ですことよ」

数分後ーーー

フェリシティー・ 婦人の毒気にたっぷりと当てられてしまったアンブリッジは

ダンブルドアが心配そうに声をかけても、まともに返答出来なかった。



その頃、グリモールド・プレイスではハリーが集まった皆にもう一度あのときの状況を説明し終わったところだった。

それに、シリウスによるとウィーズリー夫人はまだダンブルドアから夫が負傷したことについて知らされてないらしい。

「聖マンゴに行かなきゃ」

彼が話し終わると、ジニーが真っ先に急き込んで言った。

「そうよ!シリウス、ちょっとゴメン」

シリウスの腕に抱かれていた もパッと彼の腕を振り解き、ソファから立ち上がろうとしたが、


グイと彼の強い力によって腕の中へと引き戻されてしまった。


「何するのよ!急いでるのよ!」


はバッと、今度は腕を乱暴に振り解き、怒った猫みたいに立ち上がった。

「まあ、待て。聖マンゴにすっ飛んで行くわけにいかない。」

シリウスがまた を腕の中に引き戻しながら、言った。

「俺たちが行きたいのならむろん行けるさ!聖マンゴに」

フレッドがカッとなって言い返した。

「俺たちの親父と伯母さんだ!」

ジョージがつっぱねた。



「ではアーサーが襲われたことを病院から奥さんにも知らせていないのに、君たちが知っているなんてどう説明するつもりだ?」

ここでシリウスは を抱きかかえていた腕を解き、すっくとソファから立ち上がって双子に言った。

「そんなことどうでもいいだろ?」

ジョージが歯をむき出して言った。

「よくはない!!」

シリウスが声を荒げた。

それから 、ジニー、ロン、ハリーの見ている前で双子とシリウスの激しいいい争いが始まった。

四人は血の気のない顔で、黙ったまま、足元一面に轢かれている見事なペルシャ絨毯の模様を

じっと見つめていた。



「俺たちや の伯母さんが死にかけてるんだぞ!!それでも行かせないつもりか!?」

「騎士団なんか糞食らえ!!」


「これだからー君たちは騎士団に入れないんだ。世の中には死んでもやらなきゃいけないことがあるんだ!!」


四人の頭の上を双子、シリウスの激しい糾弾が飛び交った。

「口ではいうのは簡単だろうな!ここに閉じこもって!」

フレッドが腕組みしながら皮肉たっぷりに言った。

「そっちの首はかかってないじゃないか!」


「おまえーー!」


「シリウス!!」 が青ざめた。


「やれよーー殴るんなら殴れよ!」



フレッドが言った言葉の矢がシリウスの急所を突いたらしい。

次の瞬間、シリウスの顔から血の気がなくなり彼はむんずとフレッドの胸倉を掴んで拳を振り上げていた。


「シリウス!!」

、ロン、ジニー、ハリーが悲鳴を上げた。


「すまなかった。」

数秒、シリウスはフレッドを血の気のひいた顔で睨みつけていたが、サッと胸倉から手を放して謝った。


「辛いのはわかる。だが、我々全員がまだ何も知らないように動かなければ怪しまれるんだ。

 君たちの父さんや伯母さんは騎士団の極秘任務中に負傷したんだ。それを子供たちが事件直後に

 知っていたなんておかしい。魔法省やその他の筋はどう解釈するだろうか考えて欲しい。

 とにかくモリーからの連絡を待て。」


そう努めて穏やかな口調で言うと、シリウスは再びソファの の隣に、ゆっくりと腰を下ろした。





 
 

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