シリウスの必死の説得の結果、皆(特にフレッド&ジョージ)は重い沈黙を保ったまま聖マンゴに何が何でも

すっ飛んでいくことをあきらめた。

フレッド&ジョージは不機嫌にブスッと黙りこくり、ジニーは手近にあった椅子によろよろと崩れ落ち、

ハリーは(ウィーズリー、ブラド夫人を襲ったという事実に)自責の念に駆られていた。

はシリウスの腕に力なくもたれかかったまま、頭上の柱時計をぼんやりと眺めていた。

やがてシリウスが皆のふさぎこむ気持ちを少しでも楽にしようと、地下室からバター・ビールを持ってきてくれた。

皆、めいめいその瓶を取り、ゴクリ、グビリと瓶を傾け、やりはじめた。

ロンはジニーの肩に手を回し、無言のまま妹を慰めていた。


(もっと強い飲み物が欲しい・・・ラズベリー・コーディアルはどこだろう?)

はそんなことを思いながら、虚ろに部屋全体を見回した。

そして、心配そうな顔で彼女を見やっているシリウスの前でバター・ビールの瓶を手首を動かさずに

グイとあげて一気に飲み干した。


バター・ビールは全員の張り詰めた神経を緩和してくれた。

フレッドは飲み終えるとすぐにうとうとし始め、隣のジョージの肩に頭をもたせかけていた。

ジニーは椅子の上で猫のように丸まって眠っていた。


ロンは両手で頭を抱え、座っていたが半分目が閉じかかっていた。


、君も眠ったほうがいい。」

シリウスは自分の着ていたマントを脱いで、彼女の体を包みながら言った。

「何か変化があったら僕たちが知らせてあげるから・・・」

ハリーも震える声を抑えながらやさしく言ってくれた。

「ハリーは寝ないの?」

は頼りない子供っぽい目で彼を気遣って言った。

「いいんだ。僕、全然眠くないから今夜は起きとくよ。」

「そう、ありがと二人とも・・・」

はその言葉が終わるかいなかのうちに、がっくりとシリウスの肩に頭をもたせかけて眠りに落ちた。



「全員寝ちゃったみたいだね・・・」

数十分後、ハリーはシリウスにぼんやりと言った。

「ああ・・そのようだな。」

彼は苦しそうな顔で浅い眠りについた を、愛しそうに見やりながら言った。


「可愛そうに・・・こんなに苦しんで・・・なのに私は親友の娘に何もしてやれないんだ・・・」

シリウスはハリーに聞こえるか否かの声で、悔しそうに呟いた。

「シリウスのせいじゃない。僕なんだ。僕がーーー」

ハリーは途中まで出かかった言葉をグッと飲み込んだ。

(僕がーー僕がーー彼女や友達を苦しめているんだーーー)

「少なくとも君のせいじゃない。君の警告がなかったらミナやアーサーはもっと酷い状態だったかもしれない」

ハリーが発した言葉の続きを見透かしたかのように、シリウスは答えると彼の肩に手を伸ばし自分のほうへ引き寄せた。





それでも家族の悲しみを知らないシリウスとハリーは、二人で幾度となく顔を見合わせた。




夜中のニ時ごろーー聖マンゴから手紙が届いた。

浅い眠りに落ちていた皆は、飛び上がって我先にと、手紙を覗き込んだ。


手紙の筆跡はウィーズリー夫人とシリウスの妹、ジェニファー・アダムズ・ブラックからだった。


お父様はまだ生きています。

母さんは聖マンゴに行くところです。

じっとしているのですよ。出来るだけ早く知らせを送ります。

ママより


嬢様、私は今、聖マンゴにいます。奥様は未だに意識不明ですが、容態は安定しています。

モリーさんが先ほど到着なさって、私と落ち合いました。

それではーモリーさんが嬢様や他の方を迎えに来てくれるでしょう。

ジェーンより



「まだ生きてる・・・それじゃまるで・・・」


ゆっくりと手紙を読み終えたジョージが言った。

最後まで言わなくとも、ウィーズリー氏が死の境をさまよっているのは明白な事実だった。



容態が安定していると知った も、皆の暗い顔を見て素直に喜べなかった。



そして、再び、皆待ったーー残酷な夜が明けるのをーーーー



翌朝の五時十分ごろーー


ウィーズリー夫人が小サロンに駆け込んできた。


夫人はやや疲れ気味の顔を皆に向け、ウィーズリー氏、ブラド夫人は大丈夫なこと。

それぞれ両人をジェニファー、ビルが看ているということ、それから後で面会に行けますよ。と伝えた。




たちまち皆の憔悴しきった顔にパッと希望の光が差した。

ジョージ、ジニーは立ち上がって母親にギュッと抱きついた。



フレッドは両手で顔を覆い、ドサリと椅子に戻った。

ロンはへなへなと力なく笑い、 は両手に顔を埋め、嬉しさのあまりむせび泣いていた。



その後、皆はまるまる午前中一杯をベッドで過ごした。



午後、厨房で昼食を摂っていると、ホグワーツから続々と皆のトランクが届いた。

皆は着替え終えると、そそくさと迎えに来たマッド・アイ、トンクスが手配した二台の大型(幌なしの馬車)バギーに次々と乗り込んだ。


一台目にトンクス、 、ジニー、ウィーズリー夫人が乗り込み

二台目にハリー、ロン、フレッド、ジョージ、マッド・アイが乗り込んだ。



それぞれ手綱をトンクスとマッド・アイが取り、鞭で軽く大きな黒馬の背を叩くと馬車は走り出した。



馬車はロンドンの、寂れた裏通りの大きな建物の前で止まった。

トンクスがまず、馬車越しからショーウィンドウに飾られてあるマネキンに声をかけた。マネキンがこくりと頷き、

その後、二台の馬車はショー・ウィンドウのすりガラスをすうーっと幽霊のごとく通り抜けた。


初めに一向は地下の停車場に通された。


ありとあらゆる型のバギーや大型馬車が並び、御者が馬に水をやったり毛をすいたりしている。

停車場には名門貴族の夫人や、肉体労働者風の男、外国人などありとあらゆる人種・階級の人間が大勢いた。


ハリーや はそれらに物珍しそうに目を向けながら、ウィーズリー夫人の後に従った。


二階のダイ・ルェウリン病棟で受付を済ませ、 は伯母のところへ、ウィーズリー家やハリー達は

それぞれ別れた。




ブラド夫人はウィーズリー氏とは大分離れた個室に居た。


真っ白な引き戸を開けて中に入るとジェニファーは居なかった。

「ミナ伯母さん・・・」

は引き絞った無地のカーテンを跳ね除け、ベッドでコトリとも音を立てず横たわっている伯母に近づいた。

「伯母さん・・大丈夫?ねえ・・目を開けて・・」

は実際に対面してみるとまた涙がこぼれそうになった。

「大丈夫なのよねぇ・・ねえ?伯母さん・・・」

は伯母の黒髪に指を伸ばし、撫でた。

「ねえ・・・伯母さん・・誰が・・誰が伯母さんをこんな危険な目に遭わせたの?」

無駄なこととは知りながら、 は意識がまだ戻らない伯母に問いかけた。


「あなたの伯母さんをこんなふうにしたのはーーデス・イーターの連中よ」

「誰?どなたですか?」 がびくっとして振り返った。





彼女が伯母の手をとり、泣きそうな顔で伯母を見つめていると背後のカーテンがすっと引かれ

かかとまで届く、スコットランド風のショールをした少々髪が乱れ気味の女が入ってきた。


「あたくしがーーあなたの伯母様をここへ運んだの。あたくしがもし、来なかったら伯母様は彼らに連れて行かれる

 ところだったわ。」

その女は優しそうな目で を見下ろしながら、そっと頭に被っていたショールを取った。


「まあーーーではーーではーーそうなんですか!ではあなたがーーあなたがーー伯母を助けて下さったのですね!!ありがとうございます!!

ああーーあなたは命の恩人だわ!!ほんとになんとお礼を申し上げたらいいかーーーー!!」


は驚きのあまり、声が上ずった。


「お礼はけっこうよ。助けるのはあたくしのお仕事の一つですもの。」


その女は少し照れくさそうに、 が感激のあまり差し出した手を押し返しながら言った。


「それよりよく聞いて頂戴。あたくしはフェリシティー・ 。あなたのお父様の姉です。いいえーー口を挟まないでーー

 黙って聞いてくださらない?ミナはーーこれでーー失神させられたの。」


婦人は厳しい顔で、 に告げるとポケットから淡いブルーの小瓶を取り出して見せた。


「クロロホルム」

はショックで唖然として口を開けたまま、小瓶を受け取ってラベルにかかれた薬品名を読み上げた。


「あなたはこの薬品をご存知ね?本来は手術で麻酔用に使われるものなんだけど。これを大量にかがされたのね。

 吸血鬼に失神術はきかないものだから。」

フェリシティーはきつく両腕を組み合わせて言った。
 


思わぬところでのフェリシティー・ハーカー婦人との再会。シシーは彼女からどのような事実を告げられるのやら・・・。

五巻もそろそろ大詰めになってきましたね。皆さん。よろしければ感想や一言など気軽にお寄せくださいませ。

 

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