彼女は、女の子達の部屋でいそいそと黒っぽい旅行着を脱ぎ、普段着に着替えていた。

「着替え終わった?」

   十分後、手土産の自家製のワインと自家製のゼンメル(ふんわりした小型のハンガリーのパン)の包みを片手にミナとジェニファーが部屋をのぞいた。

「ええ」

「じゃあ、行きましょうか」

三人の女達は連れ立って階段を下りていった。




地下の食堂はすっかりと準備が整っていた。

「ジニ―、ここに座りなさい。」

「フレッド、ジョージ。お客様をおどかすんじゃありませんよ!」

「母さん。僕達そんなことしないぜ!」

ウィ―ズリ―夫人は皆を席に座らせていた。

「ハリー。ミナ・ブラド夫人というとあの有名な科学者のことかね?」

「そうですよ。おじさん。 は夫人の姪なんです。」

ハリーはウィ―ズリ―氏の隣に座って、二人のことを説明していた。

「やっと が僕らと一緒に休暇を過ごしてくれるってわけだ〜」

ロンは嬉しそうに椅子の背もたれにどさっともたれこんだ。

「そういや と休暇中に会うことなんて今までなかったわよね?」

ハーマイオニ―だ。

「私、 のこと日刊預言者新聞で一度だけ見たけど〜とっても可愛い子だったわね。ね、ね、実物はもぉ〜っと

 可愛いんでしょ?」

トンクスが隣りのジニ―をつついて聞いた。

「可愛いし、すごく綺麗な人。トンクスも会えばきっと気に入るよ♪」

ジニーはそう答えた。


「こんばんは。そして、はじめまして皆さん。」

大食堂の扉が開き、ミナ、ジェニファー、 ##name1## が入ってきた。

「ようこそ。お待ちしておりましたよ!」


椅子から立ち上がり、ウィ―ズリ―夫妻が瞳を輝かせて駆け寄ってきた。

「よくいらして下さったわ。私はモリ―・ウィ―ズリ―。そしてこちらが夫のアーサーよ。」

モリ―はそう言って女にしては大きな手を差し出した。

「こんばんは。はじめてお目にかかります。ミスター・ウィ―ズリ―。ミセス・ウィ―ズリ―。ミナ・ブラドと申します。」

彼女はにっこりと微笑むとほっそりした華奢な手で、ウィ―ズリ―夫人の手を握り締めた。

「ようこそ。お会いできて嬉しいです。アーサーです。ブラドさん。あなたは魔法薬学だけでなく、マグルの科学にも詳しいと

 お聞きしました。是非教えていただけませんかね?私はマグルの生活に非常に興味がありましてね・・・」

ウィ―ズリ―氏はミナと握手しながら、嬉しそうにせきを切ったように喋りだした。




「とても綺麗な肌だこと。すみません。私ったらどうしてもそちらの方へ目がいってしまうもので」

モリ―はうっとりとミナのシミ一つない白い肌を見つめて溜息をついた。

「いえいえ、あなたの肌もとても綺麗ですわ。どうしたらそんな風になるんですの?」

ミナもモリ―の肌の美しさをどうしても褒めずにはいられなかった。モリ―の若々しい肌は、とてもじゃないが六人の子供たちの母親だとは信じられなかったからだ。

「だとしたら・・」モリ―は笑いながら言った。

「私はアイルランドに住んでいたことがあるの。あそこには空気にいつもたっぷりと湿気が含まれてるから肌が乾燥しないわけ。」


「ああ〜そうだったのですか!アイルランドは私も姪と一緒に何度か行きましたわ・・・・」

ミナとモリ―は数分後、すっかり打ち解けあっていた。


「モリ―、アーサー!お客様をあんまり長く取り上げないで頂戴!私、さっきからひとことも喋ってないのよ!」

「そうだよ、母さん。僕達にも紹介してくれよっ、あっ、失礼。下さいませだ・・」


トンクス、フレッド、ジョージ、ジニ―、ロン、ハーマイオニ―、マンダンガスの面々が椅子からいっせいに立ち上がり、ミナ達のもとに

駆け寄ってきた。


「こんばんは。麗しき貴婦人様。一度おめにかかりたいと思っておりました。出来ましたら我ら卑しき僕の

 お名前を頭の片隅にでも置いていただけると、大変光栄なのですが・・・。」

フレッド&ジョージが交互にミナの手を取り、そっと手の甲にうやうやくキスした。

「こんばんは。あなたがフレッド&ジョージね。 からいつも聞いてるわ。とってもハンサムで面白いお兄さんが

 できたってね。」

ミナはクスクス笑いながら、双子に手を差し出していた。

「こんばんは、はじめまして 。私、何度かあなたを新聞で見て、一度会ってみたいと思ってたのよ!!

 うわぁお!だけど写真よりズ〜ッと可愛いわぁ〜あっ、私の名前?ニンファド―ラ。ニンファド―ラ・トンクスよっ。

 母親がね、「可愛い水の精ニンファド―ラ」なんて馬鹿げた名前をつけちゃって、だから苗字の方だけ覚えてね。

 そうハリーにもいったんだけど」

トンクスは嬉しそうに何度も、何度も に握手を求めてきた。


「ほぅ〜お前さんが、奴の妹かぁ〜。そういやお前さんのその目、シリウスとおんなじグレーの目だ。

 それさえ見りゃ誰だって分かる。おおっと、よろしくなぁ。俺はマンダンガス・フレッチャ―。

 見たとおりの小悪党だ。」


ダングはミナや よりもジェニファーのほうに特に、興味があるらしかった。


「よろしく。マンダンガスさん。でも全然悪党には見えないわよ。行商人には見えるけど。私のことはジェーンと呼んでください。」


ジェニファーはクスッと笑うと、手を差し出した。


「じゃあ、俺のこともダングと呼んでくれ。あんたはなかなか面白い娘さんだな。気が合いそうだ。」

マンダンガスはにやりと笑うと、大きなざらざらと荒れた手でジェーンの手を握り締めた。


それぞれがミナ、 、ジェニファーと握手と自己紹介するまで相当なる時間がかかったが、どの顔も彼女達に声をかけられた

ことで満足した顔で席に着いた。


「さあ、食べようか。せっかくのシチューが冷めてしまうよ」
 

ルーピンが急いで言った。


「今日は、特別なお客様のためにとびきりの夕食を用意したのよ」

ミナの腕を取りながらモリーが言った。

「特製の牡蠣のシチュー」

「見てご覧。美味しそうだよ」

皿にシチューを次々とよそいながらルーピンが言った。

「皆さん、お口に合うかどうか分かりませんがワインとパンをお持ちしましたの。ここへお邪魔するのに手ぶらではいけないと思いましてね。」

ミナはにっこりと微笑み、大きな包みを開けて湯気が立ち上るパン籠と自家製のワインを取り出してテーブルに置いた。

「これはいい匂いですな〜奥さん。もしかしてゼンメルですかい?俺は昔からこれが好きでね〜」

マンダンガスは嬉しそうにくんくんと犬のように鼻をひくつかせた。

「まあ、ミナ。ちょうどよかったわ。このパンはスープに合いそうだし・・あら。こっちのワインも美味しそう。」

モリ―がシチュー皿を彼女に渡しながら言った。

「ブラドさん。これは地元産のワインですな。いや〜私はこの銘柄はまだ飲んだことがなくてね。」

アーサーはワイン瓶のラベルを眺めながら楽しそうに言った。

トランシルヴァニア産の赤ワインが大人達のグラスに注がれ、シチュー皿が全員に行き渡るとシリウスがワイングラスを軽く上に上げて叫んだ。


「今日に乾杯!!」

皆はその声にビクッとしたが、すぐに


「今日に乾杯!!」

と全員がジョッキやグラスを高々と上げた。

「ありがとう」

シリウスは一礼すると、すぐにワインを一口飲んだ。


しばらくの間、皿やスプーンをカチャカチャと動かす音だけが室内に響いた。

フレッド&ジョージは早速パン籠に手を伸ばし、ゼンメルをちぎって食べていた。

モリ―、ミナはスプーンで牡蠣を掬うと口に運んでいる。

アーサーは美味しそうにワインを味わって飲んでいたし、トンクスはハリーのテーブルの向かい側で食べ物を頬張る間に

鼻の形を変えて、ハーマイオニ―、ジニ―、 を楽しませていた。

「豚の鼻見たいの。やってみてトンクス」

ジニーがせがんでいた。

「ここの牡蠣のシチューは最高だぞ。 、ハリー。遠慮せずに二杯でも三杯でもおかわりするがいい。牡蠣がすっかり無くなっちまう前にな。」

彼女の向かい側
にいるシリウスがこの上ない上機嫌で言った。

「じゃあ、少しだけ入れてくれますか?」

が遠慮がちに言った。

「オッケー。このぐらいでいいか?」

シリウスは彼女から皿を受け取ると、牡蠣を多めに入れてやった。

。ハリー。デザートはいるかい?」

同じく向かい側からルーピンが声をかけてきた。

「うん、先生。カスタードクリームもかけてくれる?」

がにこやかに言った。

「僕も同じのを」

シリウスの隣のハリーが答えた。


「・・・そんでよぅ」

テーブルの端でマンダンガスが涙を流し、息を詰まらせながらしゃべっていた。

ロン、フレッド&ジョージ、ジェニファーはテーブルに突っ伏して大笑いしていた。


「娘さん、ポーカーを知っているか?」

マンダンガスがワインをグビグビ飲みながら話しかけてきた。

「ええ、一応。私、ラスベガスに住んでたことがあるから。」

ジェニファーはゼンメルをかじりながら言った。

「ほぉう〜カジノのメッカ(聖地)かい?俺はモンテカルロ(モナコ)で大博打をやったことがあるが

 娘さん、カジノはやったことがあるかい?」

「ええ、一度だけ、悪友たちに連れられて一晩ですっからかんになっちゃったわ。」

「どうだい?今度俺と勝負しないかい?もちろん賭ける物は何でもいーが。」

マンダンガスがにやりと笑った。

「なあ、お二人さん〜とっても面白そうな話じゃないか〜カジノってやつのことさ。今度俺たちも混ぜてくれないかい?

 あっ、お袋には内緒な。」

双子が身を乗り出して小声でひそひそと言った。

「もちろんロニ―はだめだぜ。俺たちはもう成人だからな。賭け事はOKさ」

ジョージがポンとロンの肩を叩いて言った。


「ちぇっ、分かったよ」

ロンは残念そうに呟いた。


ハリーがスプーンを置く頃にはそれぞれの会話も一段落していた。

(ウィ―ズリ―おじさんだけが、ミナとマグルの生活について延々と談義していたが)

「さて、もうお休みの時間ね」

ウィ―ズリ―おばさんが欠伸しながら言った。柱時計が真夜中の十二時を差していた。

「いや、モリ―まだだ。」

シリウスがハリーの方を向いて言った。

「いいか、君には驚いたよ。ここに着いた時、君は真っ先にヴォルデモートのことを聞くだろうと思っていたんだが」

部屋の空気が一瞬にして凍りついた。

ヴォルデモートの名前が出た途端に皆の顔がさぁーっと引き攣った。

「リーマス、いったい何のことなの?彼にまさか誰も詳しい事実を話してないって言うんじゃないでしょうね??」

ミナがワインを飲もうとしていたルーピンに慌てて聞いた。

「聞いたよ!」

ミナとルーピンが慌しく喋っているのを見ながら、ハリーは憤慨した。

「ロンとハーマイオニ―に聞いたよ!!でも二人が言ったんだ!僕たちは騎士団にいれてもらえないから・・」

「その通りよ。あなたたちはまだ若すぎるの」

モリ―がきっぱりと言った。


「騎士団に入っていなければ質問してはいけないと誰が決めたんだ?」

シリウスが言った。

「ハリーはあのマグルの家に一ヶ月も閉じ込められていた。何が起こったのか知る権利がある!」

「ハリーにとって何がいいのかを決めるのはあなたではないわ!!」

モリ―が怒鳴った。


「シリウス。ダンブルドアが言ったことをよもやお忘れじゃないでしょうね?」

モリ―がかみつくように言った。

「どのお言葉でしょうね?」

シリウスは礼儀正しかったが、戦いに備えた男の雰囲気を漂わせていた。

「ハリーが知る必要があること以外は話してはならないとおっしゃった言葉です」

モリ―が強調するように言った。

「失礼ですが、モリ―。私は今の話からしますとハリーは知る必要があるという事柄ですら、知らないのではありませんか?

 私は に不死鳥の騎士団の全ての経緯を話しました。それに二人はもう子供ではありませんでしょう?

 二人には全てを知る権利があると私ははっきり申し上げます。」

ミナの突然の言葉にモリ―はウッと詰まってしまった。


シリウスはよくぞ言ったという賞賛の眼差しでミナを見ていたし、ハリーは彼女がこのままウィ―ズリ―夫人を打ち負かしてくれればいいのにと一瞬思った。


「ミナ、シリウス。二人は騎士団のメンバーではありません!」

数分たってからモリ―が言葉を選んで言った。

「二人は―二人はーまだ十五歳です!それに――」

「二人は騎士団のメンバーをしのぐほどの苦難を切り抜けて、いや、やり遂げてきた」


シリウスが二人の肩に手を回しながら言った。

「誰も二人がやり遂げたことを否定をしませんよ!」

モリ―の声が甲高く響いた。

「でも―この二人はまだ――」

「ミナのいうとおり、彼らは子供じゃない!!」

シリウスが怒鳴った。

「大人でもありませんわ!!」

モリ―も負けじと怒鳴り返した。

「いいえ、体は成長しきれてなくても精神的にはもう立派な大人ですわ!!」

ミナは上品に、しかし、女伯爵らしい威厳に満ちた声で言い返した。

「それに十五、六と言えば私達はもう結婚してましたわ!!」(当時の貴族階級は十五、十六で成人したとみなされ、(親が決めた相手と)結婚していたらしい)

ミナはそれに一言よけいに付け加えた。

「ミナ。それはあなた方、貴族同士の古いしきたりでしょう?この際それは別にしておいてもらいましょう。」

モリ―は呆れて二人を見比べながら言った。

「シリウス、ミナ。この子達はジェームズ、エイミーじゃないのよ!」

「お言葉だが、私やミナはこの子らが誰かはっきりと分かっているつもりだ。」

シリウスが冷たく言い放ち、ハリー、 の肩を強く掴んだ。


「そうは思えないわ!!ミナはともかくシリウス、時々あなたがハリー、 のことを話すとき、まるでかつての親友が

 戻ってきたかのような口ぶりだわ!!」

モリ―が突っ込んだ。


シリウスの顔は瞬時に真っ赤になり、グッと言葉に詰まった。

「そのどこが悪いの?」

ハリーは不思議そうに聞いたが、 はシリウスと同じように顔が燃えるようにボッと赤くなっていた。


「どこが悪いかといいますとね、ハリー、 。あなた方はどんなにそっくりでもジェームズ、エイミーとは違うのよ!」

モリ―は真っ直ぐに二人を見つめて言った。



シリウスはその言葉にグサッと心臓をえぐられるような痛みを感じた。

ルーピンも今までその言葉に思い当たる節がある行動をとったことがあるので、彼同様痛みを感じていた。


それから三人の激しい議論はアーサーとルーピンの仲裁によって打ち切られた。


「ハリー、 はこの一連の出来事で意見を言うのを許されるべきだろう、もう自分で判断できる年齢だ」

ルーピンが言った。

「皆、分かっただろう?さあ。ジニ―、ロン、ハーマイオニ―。フレッド&ジョージ厨房から出るんだ」

アーサーが大食堂の扉に皆を追い立てながら言った。


たちまち激しいブーイングの嵐が上がった。

「俺たち、成人だ!」

「二人が良くてどうしてぼくはダメなんだ?」

「ママ! がよくて何で私はダメなの??」

「ダメ!!」「もういいから寝るんです!!」

モリ―が大声を出した。

「モリ―、フレッド&ジョージはたしかに成人だ。彼らを止めることは出来ないよ」

アーサーは疲れた顔で言った。

「でも、まだ学生よ!!」

モリ―がまた怒鳴った。

「わかってる。しかし、法律ではもう大人だ」

アーサーは言った。

「そうーーじゃあ――仕方ないでしょう!二人は残ってもよろしい!!でもロン、ジニ―は上へ行きなさい!」

「嫌よ!私もきーきーたーい!!」

ジニーは叫んだが、ロンがその手を無理やり引っ張り、ドアの外へと連れて行った。

ジニーは階段を上がる間ずっと、母親に喚き散らし、暴れていた。

「OK、ハリー・・何が知りたい?」

シリウスは彼を隣に座らせ、口を開いた。

アーサー、モリ―、ミナ、トンクス、フレッド&ジョージは彼らの向かい側に座り、

ルーピン、 はシリウスのそれぞれ右隣、左隣に座った。


話はヴォルデモートのことからー不死鳥の騎士団の活動、ダンブルドア、ファッジが率いる魔法省のこと、デス・イーターのことに

まで及んだ。


その頃には時計は夜中の3時を回り、六枝燭台の蝋燭の灯りが消えかけていた。


「さあ、あなたはこれで充分な情報をハリー、 に与えたわ!さぞかし満足したことでしょう!」


全ての論争が終わり、杖に灯りを灯し暗い階段を上るシリウスをモリ―は、

恐い顔で睨みつけた。


彼女は小刻みに震えていた。


二階までくるとシリウスはルーピンが戸口のところで、ハリーにお休みを言っているのを確認してから、 の髪にやさしくキスをして


「おやすみ。」と言うのを忘れなかった。


彼女の顔は再び燃えるように赤くなった。


ミナはその様子をいぶかしく思いながら、あえて何も言わなかった。

ジェニファーは「なるほど」と納得したように一人微笑んでいた。

知らぬは彼ばかりなりということだ。

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