DA開始から二週間ーー 、ハリーはこれ以上ない晴れ晴れとした気分だった。
 
 おかげでアンブリッジの授業もつつがなく受講することができ、彼女の醜悪なギョロ目を覗き込んでも微笑むことすら出来た。
 
 
 おまけに、ハーマイオニーはDAの練習曜日を知らせるとっておきのアイディアを生み出してくれた。
 
 彼女は四回目の会合の後にーーDAの団員一人、一人に偽のガリオン金貨を配って回った。
 
 
 「金貨の縁に数字があるでしょう」
 
 「この偽金貨の数字は次の集会の日付と時間に応じて、変化しますーーーー」
 
 ハーマイオニーは得意そうに金貨を、集まった皆によく見えるように高く掲げ、説明し始めた。
 
 「一人一枚ずつ持っていて、ハリー、 が次の曜日を決めたら彼らの金貨の日付を変更します。私が金貨全部に変幻自在の魔法をかけたから
 
  一斉に彼らの金貨をまねて変化します。」
  
 
  
 「変幻自在術って、まさかーーーNEWT試験レベルの魔法なんじゃないの?」
 
  がびっくり仰天で、親友のIQの高さに目を見張った。
 
 「ええ^^うん^^まあ^^そうでしょうね^^」
 
 ハーマイオニーはちょっと赤くなって答えていた。
 
 「君、どうしてレイブンクローに来なかったんだい? その頭脳で?」
 
 テリー・ブートがあっけにとられて、ハーマイオニーを見つめながら聞いた。
 
 「ええ、組み分け帽子が寮を決めるとき、レイブンクローに入れようか真剣に考えたの。」
 
 ハーマイオニーは言った。
 
 「でも、最終的にはグリフィンドールに決めたわ。」
 
 彼女は実ににこやかな顔で言った。
 
 「あららーー皆、雷にでも打たれたような顔してるのね?はい、じゃあ彼女の偽金貨を使用してもいいってことね?」
 
  はしんとして、何の反応もない群衆に向かって言った。
 
 途端にざわざわとあちらこちらから賛成の声が上がり、群衆はハーマイオニーの差し出す柏細工のバスケットから、偽金貨を一枚ずつ取っていった。
 
 
 DA集会は四回目の会合の後ーーしばらくお休みになりそうだった。
 
 なぜなら、シーズン最初のクィディッチ試合ーーグリフィンドール対スリザリン戦が近づいているからだ。
 
 マグゴナガル先生はこの試合に闘志を燃やし「打倒ースリザリン!」のスローガンを目の前に掲げているようだった。
 
 対するスネイプも負けず劣らず「打倒ーグリフィンドール」の闘志を燃やしていた。
 
 競技場を自分の権限で頻繁に予約し、グリフィンドール・チームの練習をままならなくしたりすることはお手のものだった。
 
 
 
 ある日など、 がマグゴナガル先生とのクィディッチ実況の打ち合わせに行く途中、たまたま西の廊下でスネイプとばったり出くわした。
 
 彼は酷く嬉しそうに自ら「おはよう、ミス・ 。次の試合が楽しみですな・・・」とすれ違いざまに囁き、また、メラメラと見えない炎が体から昇っていてとても怖かった。
 
 
 
 そして迎えた試合当日ーーー
 
 
 ロンは酷く青ざめて大広間の朝食に降りてきた。
 
 
 「大丈夫か?」
 
 ハリーが隣に力なく座った彼を気遣って言った。
 
 「僕、下手くそだ。練習の時もゴールを上手く守れなかったし。」
 
 彼は沈んだ声で言った。
 
 「しっかりしろ!」
 
 ハリーが厳しい声で言った。
 
 「守れたじゃないか!この間、足でゴールを守ったときのことを考えてみろよ。皆、すごいって言ってただろ?」
 
 ロンはこれ以上ないほど惨めな顔でハリーを見た。
 
 「あれは偶然なんだ。意図的にやったんじゃない。誰も見てないときに僕、箒から滑って、何とか元の位置に戻ろうとしたときに
 
  クアッフルをたまたまー蹴ったんだ。」
  
 
 「そりゃーー誰にでも偶然そうなったってことはあるだろ?だけど偶然出来たって思ってたことがーいつのまにか
 
  本当に出来るようになるんだ。もっと自信を持てよ!絶対に守れるさ!」
  
 ハリーがそうやって励ましていたところで、向かい側のテーブルにジニー、ハーマイオニー、 が来た。
 
 三人とも揃いも揃って、赤と金のスカーフ、手袋、バラの花飾りを身につけている。
 
 
 「調子はどう?」
 
 ジニーが自分の兄に声をかけた。
 
 「最悪さ」
 
 ロンはぶすっと答えるとテーブルの上につっぷしてしまった。
 
 「ちょっと神経質になってるだけさ」
 
 ハリーが言った。
 
 「それはいい兆候だわ。試験だってちょっとは神経質にならないとうまくいかないでしょう?ねえ、そうでしょ ?」
 
 ハーマイオニーが屈託なく彼女にその話題を振った。
 
 「ええーーええーーそう思うわ。実況だって最初のときはものすごく緊張したものだわ。要するに大事なのは慣れよ、慣れ。
 
  いざ、グラウンドに入っちゃえばそんなこと忘れちゃうわ。」
  
   は熱々のハムをフォークで突き刺し、グレービーやグリッツと一緒に口の中に放り込みながら答えた。
  
  
「おっはよう〜」

二人の後ろで夢見るようなぬぼーっとした声がした。


「ルーナ!」 が食べるのをやめて、目を上げた。

「驚いたわ。それ、何なの?」

はルーナの頭に乗っかっている、異様な物体を見上げて聞いた。

「これ?見れば分かるでしょ?あたし、グリフィンドールを応援してるの」

ルーナはわざわざ、実物大の獅子頭の被り物を指差しながら言った。

「よく見ててよ」

ルーナが帽子に手を伸ばし、杖でかる〜く叩くと、獅子頭がカッと口を開け、本物顔負けに吼えた。

周りでその様子を忍び笑いをかわしながら見ていた生徒が、驚いて飛び上がった。

「スリザリンの蛇をこいつが噛み砕くようにしたかったんだ!でも、時間がなくてね。まあ、いいか・・・・とにかくがんばれぇ。ロナルド、ハリー!」

「わざわざありがとう」

は悪いと思いながらも、ルーナの被り物のことでクスクスと笑いながら礼を言った。

「あんたも実況、がんばれぇ!」

ルーナはそれには気づかずに、もう一度獅子の頭を機嫌よく杖で叩いた。


「ロン、ハム一切れでも食べとかないと。元気でないよ。」

ルーナがふらりと大広間から出て行った後、 はやさしく彼に勧めてみた。

「いらない。何も食べたくないんだ。」

彼は彼女の厚意を丁重だが、有無を言わせない口調で断った。

「お〜い、ポッター。」

アンジェリーナがやってきた。

「準備が出来次第、競技場に直行だよ。コンディションを確認して、着替えをするんだ。」

「それと 。実況の人はもうスタンドに集合かかってるよ」

アンジェリーナが親切に教えてくれた。

「いけない!のんびり食べてる場合じゃないわ!ありがと。アンジェリーナ。試合、頑張ってね」

彼女は大急ぎでフォークとナイフをガチャリとお皿の上に置いた。


「さてとーー頑張ってね。ロン」

ハーマイオニーは爪先立ちになって、彼の頬にキスしていた。

「ああーーあなたも。ハリー。」

はその様子を見て、連られて気前よく彼の頬にキスした。

「急がないとーー」

はそれから、つむじ風のように大広間を駆けていった。


出口に向かって大広間を戻りながら、ロンは少し元気を取り戻した様子だった。

彼はハーマイオニーがさっきキスしたとこを触り、不思議そうな顔をした。

ハリーのほうは、しばらくボーッとして心ここにあらずの状態だった。

胃袋がひっくり返り、この後まとも箒に乗れるかそればかりが心配になった。





「おはようございます。遅れてすみません。」 は息を弾ませて挨拶をした。走ってきたので、ほつれ毛があちらこちらに飛び出していた。スタンドの実況席にはマグゴナガル、スネイプ、リーがいた。




「大丈夫ですよ。 。時間どおりの到着です。それではまず、あらためて選手確認をいたしましょう。」


マグゴナガルは落ち着き払って,彼女を実況席に座らせ、選手の名前を書いた原稿を渡した。


「スリザリンーーシーカー、ドラコ・マルフォイ、ビーター、ビンセント・クラッブ、グレゴリー・ゴイル、キーパー・・・」

彼女はマイクなしのテストで、スネイプが見ている前でスリザリン・チームの名前を読みあげていった。

「グリフィンドールーシーカー、ハリー・ポッター、ビーター、フレッド&ジョージ・ウィーズリー、キーパー、ロン・ウィーズリー」

いっぽうのリーもマグゴナガルが見守る中、選手の名前を読み上げていた。

「以上です。双方に選手確認致しました。何か間違いはありませんね?」

「相違ない。マグゴナガル先生」

マグゴナガルとスネイプの両名の先生が出場選手の最終確認をし終わると、スネイプは足早に実況席を立ち去った。





その後、スタンドにどやどやと観客がつめかけ、試合開始のブザーの後、実況のリーが試合開始の言葉を告げた。


「それではここで出場選手を紹介します。」

リーの後に、彼女は心を落ち着けてマイクに向かった。

「グリフィンドールーーシーカー、ハリー・ポッター、ビーター、フレッド&ジョージ・ウィーズリー、キーパー、ロナルド・ウィーズリー、チェイサー・・」

グリフィンドール席から歓声が上がった。

「スリザリンーーシーカー、ドラコ・マルフォイ、ビーター・・・」

相対するスリザリン席から、胸糞悪い歌声と歓声が混じって上がった。


「箒に乗ってーー」

の声がやむと、グラウンドに整列した選手を見回して、マダム・フーチが笛を吹いた。

ボールが放たれ、選手十四人が一斉に飛翔した。

ロンがゴールポストのほうに勢いよく飛び去り、ハリーはブラッジャーをかわしてさらに高く飛んだ。

「さあ、ジョンソン選手ーークアッフルを手にしています!なんというよい選手でしょう!僕は何年もそういい続けてるのにあの女性はまだ僕と

 デートしてくれない・・」
 
 
「ジョーダン!」


マグゴナガル先生が叱りつけたが、 のほうはクスクスと笑っていた。

「ほんのご愛嬌でございますよ。先生。盛り上がりますからーーアンジェリーナ選手、ワリントンをかわしたーーモンタギューを抜いた。

 おお、こりゃ速い、速いーーー」
 
 
 リーは目をこらして実況席から身を乗り出した。
 
 
 「ああ、これは痛いです!クラッブ選手のブラッジャーがアンジェリーナ選手を直撃!しかしーーージョージ・ウィーズリー選手の
 
  ブラッジャーがーーああっ!モンタギュー選手の頭にガツーン!」
  
  
 「クアッフルを落とし、ケィティ・ベル選手がキャッチ!ベル選手、アリシアにバック・パス!アリシア選手、行きますー」
 
 
 交互にリー、 の実況が飛んだ。
 
 
「ワリントンを交わしーーアンジェリーナにパス!行けるか?それ行けーーアンジェリーナ!あとはキーパさえぬけばーー

 観客が沸いています。おや?お聞きください。この歌声は何でしょうか?」
 
 
 リーが歌を聞くのに解説を中断した。
 
 
 その途端、スタンドのスリザリン席から大きく、はっきりと歌声が上がった。
 
 「ウィーズリーは守れない  万に一つも守れない  だから歌うぞスリザリン  ウィーズリーこそ我が王者♪」
 
 
 ハッと我に返った とリーが一段と声を張り上げ、ロンを気遣って歌声が聞こえにくくするように計らった。
 
 「さぁーーアンジェリーナ、走るーーーッシューーーーート!!あぁぁーーーーースリザリンのキーパー、ブレッチリーがゴールを死守!」
 
 
 ワリントンがクアッフルを取り上げ、ロンのほうへ近づいてきたとき、また歌声が上がった。
 
 
 「ウィーズリーは我が王者  いつでもクアッフルを見逃した〜♪」
 
 
 「ワリントンがグリフィンドールのゴールに向かいます!さあ、キーパーのロン・ウィーズリー選手初勝負です!」
 
  が慌ててその声におおいかぶせるように言った。
 
 「ビーター、フレッド&ジョージの弟、そしてチーム期待の新星!行けッロン!!」
 
 リーが叫んだ。
 
 しかし、クアッフルはロンの広げた腕を通り抜けて、彼の守備する中央の輪の中をくぐり抜けた。
 
 
「スリザリンー10点」

の声がグラウンドに響いた。

マルフォイはハリーに向かってにやりと、胸糞悪い笑みを浮かべた。

 「10対0でスリザリンーリードしています!運が悪かった、ロン」

 スリザリンの歓声がまた一段と高まった。

 「ウィーズリーの生まれは豚小屋だ〜 いつでもクアッフルを見逃しだ〜♪」

 「おかげで我らは大勝利〜♪」

 

 「そしてーボールは再び、グリフィンドールに!ケィティ選手、ピッチを力強く飛んでおります!」


 いまや会場内を揺るがす歌声で、 やリーの解説もその声にかき消されていた。


 「そしてまたまたワリントン、ピュシーにパス。アンジェリーナがそれを追います。おおっとフレッド?どっちだ?ジョージ、

  どちらかのビーターからナイス・ブラッジャー。ワリントンに当たりました。ワリントン、クアッフル落としました。

  アンジェリーナが拾い、だが、これも落としました。スリザリン、モンタギュー、ボールを奪い、グリフィンドールのポストへと

  向かいました!行け、行くんだ。ロン・ウィーズリー。やつをブロックしろ!!」


 リーはいまや実況席から立ち上がり、マイク片手に声のあらんかぎり叫んでいる。


「ウィーズリーは守れない〜♪」


スタンドではパンジー・パーキンソンが、観客席の最前列でピッチに背を向け、野次馬の胸糞悪い歌声の音頭を取っていた。


「だから歌うぞスリザリン〜ウィーズリーは我が王者♪」


その様子を見た はマイクを手のひらに食い込むまで握り締めた。

(あの忌々しい牝牛め!)

額が押さえつけた怒りで真っ赤になっていた。

(観客さえいなければ、お前の顔を好きなだけ平手うちしてやるのに!!)

現在の得点スコアは20対0だ。だが、この後ロンは敵に二つもゴールを許した。

今や実況だけでなく、グリフィンドールシーカーのハリー・ポッターも激しい焦りに追われていた。

(スニッチはどこだ?まだ出現しないのか?早くこのゲームを終わらせなきゃ)

彼はヒュンヒュンと上空を飛び回り、血眼になって金色の物体を探していた。

。何ボーッとしてるんだ。ほら実況、実況してくれ!!」

リーがボンッと彼女の肩を叩いて言った。

「えーはい、現在、スリザリンが30対0でリードしております。しか〜し(ここで彼女は嬉しそうに声を張り上げた)

 ただ今アンジェリーナ選手、ワリントンのディフェンスを抜き、ゴ〜〜〜〜〜〜〜ル!!グリフィンドール10点!

 そしてクアッフルはスリザリンへ・・・」彼女はその声に我に返り、必死で状況を続けた。


「ウィーズリーの生まれは豚小屋だ いつでもクアッフルを見逃した  おかげで我らは・・・♪」



「スニッチ!!」


が突然、実況席から飛び上がって叫んだ。


「スニッチ到来です!!前方、北の方角に現れました!!」


その声でスタンドの野次と歌声がいっせいに止み、観客が期待と興奮でグリフィンドール、スリザリンのシーカーに注目した。


(え、北、北、あった!!)


ハリーは実況の彼女の声に素早く反応し、スリザリン席のピッチの端にふわふわと浮かんでいる金色の物体目掛けて突進した。


「運がいいな、ポッター。」


ちょうど反対側にいたマルフォイが舌打ちして、サッと箒の向きを変え、ハリーの後を追った。



「さあ、両者のスニッチ奪還戦が始まりました!ゴールポスト目掛けてファイアボルト、ニンバス2001を物凄い勢いで追います。

 スニッチとの距離、わずか10センチ、両者とも手を伸ばしました。行けるか、行けるか?


 あーっと僅差でポッター選手がスニッチをしっかりとつかみました!!エクセレント!!よくやりました!!グリフィンドール勝利。試合終了で〜〜〜〜〜〜〜〜す!!」



はマイクを放り投げ、歓喜の声を上げると、横のリーと「やった、やった」と連呼し抱き合った。


ハリーはホッとして箒の柄を下にやり、グラウンドに足をつけた。


ガッツーーーン!!

その時、まともにブラッジャーがハリーの腰にあたった。


彼は箒から前のめりに放り出され、地面に転がった。


「反則だ!!」


と抱き合っていたリーが、ハッとそれに気づいて叫んだ。


スタンドからも非難、怒鳴り声、野次が飛び交った。


「あなたは何をやってるんですか!?試合終了後にブラッジャーをぶち込むなんて!!アンスポーツマンシップもいいところです!!」


早速マダム・フーチが飛んできて、ブラッジャーを撃った張本人、クラッブをガミガミと叱りつけた。


「あああ、大丈夫?」


アンジェリーナは倒れているハリーを引っ張り上げ、立たせた。


「ああ、大丈夫」

彼は硬い表情だった。

「あいつ、君がスニッチをとった途端に、ブラッジャー強打したんだ。だけど勝ったよ。勝ったんだ。」


アンジェリーナはキッと後を振り返って、マダム・フーチの説教を食らっているクラッブを腹立だしげににらみつけながら言った。


「よし、俺たちも下に降りようぜ」

実況席の片付けを終えると、リーが嬉しそうに の手を引っ張って階段を駆け下りていった。





「ウィーズリーの首を救ったんだねぇ。」

二人が階段を半分以上降りかけた時、グラウンドからマルフォイの声が聞こえてきた。


「あんな最低のキーパー。見たことない。だけど、なにしろ豚小屋生まれだろう?僕の歌詞は気にいったかい?」


「あいつ!」

リーは怒って階段を二段飛ばしで駆け下りていった。


「待って、リー!」

彼女も慌てて階段を駆け下り、声のする方向へと向かった。

「もう少し、歌詞を増やしたかったんだが、韻を上手く踏めなかったんだ。デブッチョにオカメにーーあいつの母親のことを

 言いたかったんだがね」


「役立たずのひょっとこっていうのも上手く韻を踏まなかったんだ。ほら、あいつの父親のことだけどね」


フレッドとジョージの耳がぴくりと動き、一瞬、体が強張った。


「だけど、君はウィーズリー一家が好きなんだろ?休暇をあの家出過ごしたりするじゃぁないか?ポッター、だから君は

 あいつらの家の豚小屋の悪臭もオーケーなんだ。ああ、そうか、ポッター、君の母親の家の匂いを思い出すんだね。

 ウィーズリーの豚小屋がね・・・・」


マルフォイがこれ以上ない、底意地の悪い目つきで言いながら、そろそろと後ずさりした。



次の瞬間ーーー


「ハリー!ハリー!ジョージ!ジョージ!やめてぇえええ!!!」


観客席の下段から の悲壮な悲鳴が上がった。


ハリー、ジョージが物凄い勢いで走ってきて、後ずさりしようとしたマルフォイの首根っこをつかみ、地面に殴り倒した。

それから後はーーマルフォイの悲鳴、ジョージの罵る声、ホイッスルが鳴り、観客が総立ちになって大声を上げている。


それでも、二人は周囲の状況などもおかまいなしに、マルフォイに殴る、蹴るの暴行を加えた。


壮絶な修羅場に一番近いところにいた、 はただ顔面蒼白で、男同士の乱闘に度肝をぬかれて先ほどの悲鳴をあげることが出来なくなっていた。


「何の真似です!」


騒ぎに気づいたマダム・フーチが真っ青になって、慌てて二人に杖を向け、「妨害の呪い」発射した。


その反動で仰向けにひっくり返った二人は、怒りを煮えたぎらせたまま、ゆっくりと起き上がった。


「こんな不始末は初めてです!!城に今すぐ戻りなさい、さあ、今すぐです!!」


マダム・フーチの怒声がグラウンド中に響き渡った。

は真っ青になって、口を両手で覆い、息を荒げたままその場に突っ立ているハリー&ジョージの両名を呆然と眺めた。

彼らはハッと彼女の視線に気づいて、振り向いたが、その瞳は彼女の澄みきった茶色の瞳を通り越し、遠くを見つめていた。

































 


 





 



 














  
  
 

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