DA会合跡地の「必要の部屋」から遠く離れた廊下は今や、人っ子一人いやしない。

ギィィ−−木の軋む音とともに長年使用していない空き教室の閂のかかった扉が開いた。


「行ってしまった・・みたいね。でておいで。 。もう大丈夫よ。」


そうスネイプ(もとい、伯母)はしゃがみこんだ姿勢で後ろを振り返り、ささやいた。


「あぁぁ・・助かったぁ・・。」

は安堵のため息を漏らし、がさごそと木机の下からお尻から先に出てきた。

「あぁああ・・・でも、ハリーが、ハリーが!!」


だが、安堵したのも束の間、彼女はハッとある重要な事実を思い出し、苦しそうにうめいた。

「彼がーー捕まってしまったの!!ああ、伯母さん、マズイのよ〜〜私、私達、彼と私が今回の事件の首謀者なの!!」


はもう絶望のきわみの声で、髪をかきむしり、目の前であっけにとられている伯母に詰め寄った。

。落ち着いてさいしょっから話して御覧なさい。」

伯母はじだんだ踏んでいる彼女の両腕をつかみ、安心させるような声でなだめた。

「数ヶ月前に、ハリーと私はアンブリッジの圧制に抵抗するためにーある秘密会合を企てたんです。DAと名づけて。

 そこで沢山の私達の計画に賛同した学生皆と、防衛術の授業の実践訓練をやってたんです。ところがーー今夜、

 いきなり部屋に屋敷僕妖精が現れて「アンブリッジが来る。逃げてくださいって」警告しに来たの。それから

 あとはーー皆、ちりぢりに逃げてーー彼が捕まってしまったの。」



「やっぱりねーーだから、あの連中、凄く興奮してたんだわ。」


フェリシティーは顎に手をあてて何か納得したように頷いていた。


「何?何ですって?」

その伯母の奇妙な行動に は合点がいかぬという顔で聞き返した。

「いえ、だからね、あのしもべ妖精に警告させたのは私なの。さっき言ったでしょう?興奮して、犬のようにそこらを嗅ぎ回っているスリザリンの連中から何があったか聞き出したって。
 
 それで大変だって思って慌てて、階下の厨房に飛び込んでドビーを呼び出したわけ。彼はすぐに厨房から消えて、あなたたちに警告しに言ったわ。

 これでおわかり?さ、時間がないから急ぐわよ。なんならあなたはこのまま、寮にお帰りになってもいいけど。」


伯母は話し終えるとすっくと立ち上がり、教室の外へ出て、にやりとして、その場に立ち尽くして唖然としている に呼びかけた。


「そんな!とんでもありません。このままおめおめと寮に帰るなんて出来ません!!」


彼女は腹ただしそうに叫んだ。


「そうこなくちゃ。」

伯母はにこりと笑ってウィンクした。







「さあ、ここよ」

「何ですか?これ?」

「見れば分かるでしょ。スワンの彫刻よ。」

「校長室への裏口。」


数分後、伯母(スネイプに変装した)と は廊下を駆け抜けて(もちろん、まだスリザリン生がたむろしている可能性があるので)

辺りに目をこらし、「嘆きのマートルのトイレ」前にある大きな純白のスワンの大理石の彫刻の前に立っていた。

「チング(友達)」

伯母はさっと周囲に目を凝らし、誰もいないことを確かめると彫刻に向かって合言葉を唱えた。

するとすぅーと白鳥の胸部がぽっかりと割れ、大人一人がゆうに入れるほどの空洞が出来た。


「行って。」

そう口走ると伯母は先に を中に突っ込み、その後からすぐに自分も続いて空洞に飛び込んだ。


ドスン!!と大きな音がして二人は暗闇の中へ到着した。


自分達の頭上からかすかに明りが漏れ、何人もの人の話し声が聞こえてきた。彼女らの着地地点より少し離れたところに冷たい、石の階段があった。


「あなたのお友達のハリー君は今頃、ここにいるわ。あの女はまっさきにここにしょっぴいて行ったでしょうからね。」


フェリシティーはそれから「耳をもっと近くに寄せて」と囁き、横でぺたんと座り込んでいる彼女に手招きした。



「とうとう、あの忌々しい女のしっぽをつかんだのよ!!(彼女は酷く興奮していた)。少し、時間を頂戴ね。大事なことだから。

 あなたのお友達のハリー君が、この夏、リトル・ウィジングで吸魂鬼に襲われたのは知ってるわね。

 あの事件、気になって調査していたらーーーーあんなとこに吸魂鬼が現れるものですか!アイツよ!あの女が

 吸魂鬼を差し向けたのよ。アズカバンの総合管理の部署に出入りした人を記した名簿の中にあの女の名前があったわ。

 吸魂鬼が現れたのと同じ日づけにね。アイツはアズカバンの総合管理の目を欺いて、吸魂鬼をはなったわ。

 総合管理の看守(ディメンターじゃなくて人)があの女が監獄に突然、視察に来て、それから飲み物を振舞ってくれたってー

 だけど、その後の記憶が全然、ないってーーそう私に証言したの。あ、そろそろ皆さん、集まったようね。」



上からがやがやといっそう話し声が酷くなって、階下の彼女達の耳に届いた。

「ここからでも十分、話し声は聞こえるわ。あなたを連れてきたのはその為」


伯母はそう言うとにっこりと微笑んで、杖に明りを点し、その場にくつろいだ。



冷たい石の床がスカートを通り越して、じわっと肌に冷たく浸透した。


「どうしてここに連れてこられたかわかっているだろうな。」

ファッジの声だ!!何故、彼がここに??

の心臓は激しく高鳴った。


「はーいいえ」

ハリーがつんけんとした態度で答えている。

「いいえ?どうしてここにいるかわからんだと??」

「はい」


「全く、君のご友人と言い、君といい、どこまでも傲慢なことだ。ええと、 が今夜ここに来ないのは

 あの子は逃げおおせたーそういうことだな?」


ファッジは太った体をゆすりながら、いらいらと言った。


「はい、申し訳ありません。大臣。どうもあの子は逃げ足が速くてーそれにとても狡賢い、嫌な子ですわ〜」


アンブリッジは誠に残念至極の表情で、ぺこりと大臣に頭を下げ、馬鹿丁寧な声で謝っていた。


マグゴナガル先生は「あの子はそんな子じゃありません!」といいたげにフンと鼻を鳴らし、怒って横を向いた。


ざまあみろーーハリーはにやにやと心の中で笑った。


一年のとき、フレッド&ジョージとともに悪戯をやって、フィルチをまんまと出し抜いていた彼女だ。


そんな簡単に捕まるもんかーー。


「あの子ときたらーまぁ、逃げるのは超の一流。そして、おまけにその途中、何の罪もないスリザリン生、二人に

 呪いをかけました。逃げるのをジャマしたという理由でね。まあぁー何と傲慢な嫌な子でしょう。許すまじ行為ですわ!!」

アンブリッジは皆の気に障る甲高い声を出し、調子に乗って を好きなだけ、大臣や校長、副校長の前で侮辱し始めた。




「ドローレス、よけいなおしゃべりは謹んでもらいますよ。」

とうとう、見かねてマグゴナガルの冷たい声が、アンブリッジのガマ笑いを見事に切り裂いた。


「私の生徒を侮辱するのは最も許しがたい、卑怯な行為です。これ以上その、綺麗なお口が止まらないようでしたら出て行ってもらいます。

 たとえ、教師であろうがですね。よろしければ、ここにいる皆さんの愉快なお顔をご覧になったらいかがです?」



マグゴナガルは言葉に毒々しい皮肉をこめ、すっきりとしたようだった。


彼女に言われてみて、ハッとアンブリッジはしゃべるのをやめて、周囲を見渡した。


ダンブルドアはデスクに座ったまま、氷の微笑を浮かべ、マグゴナガルは額に青筋を浮かべて突っ立っており、

その横のアンブリッジと共についてきたキングズリーは漠然としたなんともいえぬ表情で彼女を見つめていた。


ファッジでさえ、太った体を揺するのをやめて、ポカンと口を開けて彼女を見つめていた。



「ええ、まあ、そうでしょう。大臣。どうぞ。」


アンブリッジは皆の(特にハリーの)冷た〜い凝視に出会って、サッと口をつぐんでファッジに水を向けた。


「ああ、では続きだ(大臣はこほんと咳払いをした)。では、ポッター。校内で違法なグループ組織が発覚したのは

 初耳だといいたいわけだな?」


「はい、そうです」


ハリーの答えに大臣はだんだん顔が赤くなってきた。


「どうもらちがあかん。」大臣はイライラとしていた。

「通報者を連れてきましょう。そうしたほうが早いですわ。」

「うむ。君のいうとおりにしよう。」



数分後、アンブリッジがその通報者とやらを連行してきた。



「マリエッタ・エッジコム嬢です。ファッジ大臣。この子が夕食後、あたくしの部屋にやってきて

 ポッターや の陰謀を全て話してくれましたわ。そして、あたくしに「必要の部屋」で彼らの秘密会合が

 行われるだろうからと話してくれました。」


アンブリッジは勝ち誇った顔で、大臣に報告した。


あの子だったのかーーーーー!!!!



そうかーチョウはとんでもない友達を連れてきたものだ!!


、ハリーの胸は途端に怒りで波打った。


ロンの言うとおりだったーーー はいまさらながら深く後悔した。

何故、あの時、ロンのいうことを聞かなかったのだろう??

彼はーあいつは怪しいと、私達にはっきりと言ったではないか!!


ああ、あの時、どんなに嫌な顔をされようと追い返したらよかった!!


ああ、何て馬鹿だったんだろう!!


の目から静かに涙がほおを伝って流れた。


フェリシティー伯母はそんな彼女を黙って抱きしめてくれた。




だが、奇妙なことにチョウの友達のブロンド巻き毛は両手で顔をおおい、一度もこちらと目線をあわせようとしない。

おかしいぞーーハリーはいぶかしんだ。

泣いているのか?



「さあ、さあ、さすが、煙突飛行ネットワーク、監視人のエッジコム夫人の娘だ!!君のお母さんは校内の暖炉を見張るのを手伝ってくれてね、

 いい子だね。さあ、顔をあげてご覧。どうしたんだい。さあ、こりゃなんと!!!」




ファッジは優しい父親のような態度でマリエッタに接し、顔を上げさせようとした。


が、次の瞬間、見事にずっこけて暖炉、すれすれに腰をついた。



「いやはやーー誰がーーーこんな!!」


ファッジはびっくり仰天で、尻餅をついたまま、叫んでいた。




ーー裏切り者はお前だーーー



皆、部屋にいる皆という皆が彼女をぽかんとした顔で見つめた。


彼女の顔は酷いおできだらけで、つんと上向きな鼻からピンク色の頬まで紫色の膿んだぶつぶつが


顔を我が物顔に突っ切っていた。



「というわけでー」

アンブリッジが苦々しい顔で、しぶしぶ大臣に事の次第を語り始めた。


「あたくしの部屋で話している最中に、この忌々しい呪いが効いてきたのです。それからこの子はおしのように、押し黙ってしまって。」



「ああ、ミス・エッジコム。そんなぶつぶつは気にしないで話してご覧。会合の目的は何だね?参加者は誰かね?」


ファッジが、気ちがいじみた優しさで、彼女に問いかけたが、マリエッタはがんとして口を割らなかった。

おびえた目でしくしくと泣くだけだった。


「可愛そうにー逆呪いはないのかね?この子の舌が自由になるように。」

「はい、大臣、この忌々しいのはどうにもならないんですのよ。」




ファッジがブロンド巻き毛を撫ぜ、アンブリッジにもどかしげに問いかけたが、彼女も万事休すといったところだった。


ハリー、 はハーマイオニーの呪いの技術の素晴らしさに、まさに、感無量といった気持ちになった。



「でも、この子がしゃべらなくてもその先はあたくしが、ご報告いたします。」


とアンブリッジはぴしゃりと言った。






それからアンブリッジはーホッグズ・ヘッドのパブで「ウィリー・ウィーダーシン」という男が

ハリー達の話を立ち聞きしていたことを証拠にあげた。



「だがのう、ドローレス、それは違法にならんじゃろうて。ご記憶じゃろうがーハリー、 嬢のホグズミード会合は

 魔法省令ー学生の違法組織の禁止じゃったかのう?ああ、そうじゃ。その二日前に行ったのじゃろう。

 じゃからー二人はホッグズ・ヘッドで何も規則を破っておらんのじゃよ。」



ファッジ、アンブリッジ、そして供述文書作成のため、隅で一心不乱に筆記していた下級補佐官、パーシー・ウィーズリーは

まるで雷にでも打たれたような顔をした。



「そして、その後、仮に彼らが会合を行っていたとしてもそれに対する、何か確たる証拠は

 ありますかな?」

ダンブルドアは酷く余裕を持って告げた。


その時、ハリーは急に横でさわさわと言う音を確かに聞いた。

「証拠?」

アンブリッジが馬鹿にしたように笑った。


「まだチェック・メイトじゃありませんのよ。駒はわたくしの手中にあるのをお忘れですか?

 さあさあ、エッジコム。いい子だからどのぐらい会合が続いていたかお言い。そうだ、頷くか、

 首を縦に振りなさいね。この六ヶ月、定期的に会合はありました?」



そうアンブリッジは興奮した声で急かした。




部屋の全員が彼女を見つめた。


「何故?どうして?どうして嘘をつくの??馬鹿な子だ!」


晴天の霹靂で、彼女は首を横に振っていた。


「んまあ、どうして?どうして嘘を?」


首を絶対に縦に振る!と確信していたあてがはずれて、酷くアンブリッジは取り乱し、わめきまくった。


「首を横に振ったのはどういうこと??説明おし!」


「まあ、通常ですとノーと言う場合、首を横に振りますわね?ですから、ミス・エッジコムが

 まだ人の知らない方法で合図を送っているのだとしたら。」


今度はマグゴナガル先生が勝ち誇った顔でいう番だった。


「しかし、まだこちらには切り札がございますのよ。ファッジ。上手く言い逃れたようですがね。

 ミス・パーキンソン、彼女が に襲われて西の廊下に転がっているとこをマルフォイ君が

 見つけましてね。彼女が必要の部屋を捜索し、手に入れたものですわ。」



「なんと!」


ファッジはうやうやしく差し出されたアンブリッジからの羊皮紙を読み終えて、素っ頓狂な声を上げた。

「DA軍団!!ダンブルドア軍団とな!ほっほ〜これは、これは異なこと!!」

「でかしたぞ、ドローレス。さてさて、キングもどうやらお納めの時が来ましたな。」


ファッジは太った体を上下に揺らし、満面の笑みでダンブルドアに向き合った。


「そうじゃ。ポッター、 軍団じゃなかったの。わしじゃ。今回の首謀者はわしじゃ。組織したのはこのわしじゃ。

 残念じゃったのう。ファッジ大臣。」



「今夜がその会合の最初だったのじゃよ。だがしかーし、明らかにエッジコム嬢を招いたのは不運のつきでしたな。」


ダンブルドアはそう言うと、朗らかに微笑んだ。


「ではーーやっぱりあなたはわしを陥れるつもりだったのだな!!」


ファッジが喚いた。


「そうじゃ」


「ダメです!!」


ハリーが大声で叫んだ。



「ダメよ!!そんなーーそんな、私達をかばって!!校長先生!!」


階下では が伯母の側で空しく喚いていた。


「静かにおし!」

フェリシティー伯母がぴしゃりと制した。


「騒ぐと、上の連中に気づかれるでしょう。」


そういうと伯母は石の階段をしのび足で上がり、ぴたりと木のドアの前でしゃがみこんで待機した。




「逮捕だ!!ほっほ〜今夜、あなたを逮捕する。ウィーズリー書き取ったか??」


「はい、閣下。」

「よろしい、では今の報告書をふくろう速達便で送れ!!ほっほ〜〜これは愉快なことだ。

 ポッター、 嬢の退学のかわりに、とんでもない方を逮捕することになったな。

 ダンブルドア、残念だな。お前をこれから魔法省に連行する。そこで正式に起訴され、アズカバンに留置される。」



ファッジは体をぴょこぴょこ揺すって、嬉しそうに跳ねた。その間にパーシーは猛烈なスピードで報告書を仕上げ、石のドアへとすっ飛んで姿を消した。


「さあ、神妙にするんだな。」ファッジは横目で合図し、闇払い二人がすかさず杖を剣のように抜き、ダンブルドアにちらつかせた。

「いやじゃの。わしは神妙にひかれてはいかん。まだまだやりたいことがあるでの。」


ダンブルドアはいたづらっぽく呟いた。

「な、なんだとーもう我慢ならん。ええい、シャックボルト、ドーリッシュ、かかれ!!」

ファッジが杖を抜き、それを指揮棒のように振り回した。


バーン!!


その時、木のドアが蝶番も吹っ飛ぶような勢いで開けられた。


「校長は神妙にひかれてはいかないとおっしゃる。」そこにはにこやかに微笑んだフェリシティー婦人が立っていた。


あの木の回転ドアはダンブルドアの大きな本棚だったのだ。


二人の闇払いはずっずっと急に駆け出したので、体の均衡を失い、床につんのめって倒れた。


「あれ、大臣、あの女です。ダンブルドアのスパイです。この女も連行してください!!
 
 この女もーDAに協力していたに違いありませんわ!!」


アンブリッジは狂ったように喚いた。



「そうだーーよし、二人を連行せよ!!かかれ!!」


ドーン!!!





部屋がふっとぶかの勢いで、何かが破裂した。



ファッジの命令するかいなかに、フェリシティー伯母が後ろ手に持っていた点火した煙球を思い切り部屋の中央に投げつけたのだ。



その間にあちらこちらに閃光が飛んだ。



煙球はもの凄い音で爆発し、ハリー、マリエッタはマグゴナガル先生にとっさに頭を押さえられ、地面に伏せた。


銀器が吹っ飛び、煙球がバンバン、バチバチと緑や赤の閃光をあげて次々とあちらこちらで爆発するので


さすがの闇払い達も身動きできず、恐ろしさに床にはいつくばって伏せていた。




煙でげほげほとむせて身動きできないハリーは頭上でかすかな声を聞いた。


「よくお聞き、ハリー。「閉心術」の訓練を一心不乱に行うのじゃ。よいな」



よいな・・よいな・・よいな・・ダンブルドアの声はまるでレコードのように何度も再生されて彼の耳をくすぐった。





ハリーはその答えを聞きながら、もうろうとする意識の中で倒れた。




「あいつらはどこだ??」


煙球の勢いが収まり、真っ先に床から起き上がったファッジはわめいた。

「わかりません」

キングズリーが頭を抱えながら起き上がり、呟いた。

「姿くらまししたはずはありません!!」


顔がすすだらけになったアンブリッジが叫んだ。



「階段だ、階段を探そう!!」


ドーリッシュはそう言うなり、石のドアに向かって体当たりし、姿が見えなくなった。


キングズリー、アンブリッジもすぐその後を追った。



やがて、三人は階段を突っ切り、大きな正面扉をこじあけ、外に躍り出た。



「それではごきげんよう。皆さん。」


そこには神々しい光の中にフェリシティー・チェンが何かに跨って三人を見下ろしていた。


「ペガサス、ペガサスだ!!」


ドーリッシュは感激に打ち震えてその場で動けなくなった。


「ドーリッシュ、何をぼやぼやしてるの!!さあ、捕まえなさい!!あらキングズリー!!あなたも!!」


アンブリッジは目の前の、美しい翼の生えた純白の大きな白馬になんら、歓喜の念も起こらなかったようだった。


彼女は素早く杖を上げ、「インカーセラス、縛れ!!」と唱えた。


途端にその美しい白馬は怒りのうなり声をあげ、ざっと地面を蹴って杖から飛び出した太い縄目を避けた。

アンブリッジは負けじと杖を、剣のように振り回し、空中にいくつもの縄を鞭のように放った。


フェリシティーは巧みにペガサスを操りながら、自分は杖を大きく振って紅い炎の壁を作り、

追ってきた縄を次々と焼き払っていた。




やがてペガサスは空高く舞い上がり、完全にその姿を消した。

「くやしい、よくもあの女・・・!!」

アンブリッジは歯軋りし、悪態をつきまくった。









「魔法省令 ドローレス・ジェーン・アンブリッジは本日、アルバス・ダンブルドアに代わり、本校の校長に就任した。」



こんな掲示が翌朝、さっそく張り出された。


翌日、生徒達はものすごい興奮のしようで、ダンブルドア逃亡のニュースをしゃべりまくった。



どのようにして、噂が広まったか、定かではないが、ダンブルドア、そしてその側近の凄腕のスパイの女が

闇払いを二人、下級補佐官、高等尋問官、魔法大臣をやっつけたと言う話はいたるところで囁きかわされた。




昨晩、ペガサスにまたがった女を見たと証言する生徒、そして不死鳥らしきものが空を飛んでいたと

夢見る口調で解説する生徒まで現れる騒ぎだった。









 


















 


 

 











 

 

 


 

 
 

 

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