数分後、ハリー、
達はアンブリッジの部屋を慌てて飛び出していた。
なぜなら、管理人のアーガス・フィルチがえらく嬉しそうな顔で部屋に乱入してきたからである。
「鞭打ち許可証♪鞭打ち許可証だ♪ヒヒヒヒッ・・あいつらはずっと前からそうするべきだった。
性悪なジンジャー共の命運も今日までだな。ウヒヒヒッ。」
そう不気味な声で鼻歌まで歌いながら、彼はアンブリッジの事務机から羊皮紙を引っ張り出し
羽が生えたように飛んで部屋を退出した。
「おーおー、あーぶなかった〜」
がハリーの透明マントの中で冷や汗をかきながら呟いた。
「ジンジャーって。フレッド&ジョージのことじゃない?」
「うん、そうだと思う。あの二人みたいな見事な赤毛なんていないからね。」
ハリーと
はアンブリッジの部屋からだいぶん離れた踊り場まで、走ってそれから透明マントを脱ぎ、
フィルチの後をこっそりとつけた。
玄関ホールでは二人の思ったとおり、えらい一騒ぎが勃発していた。
大勢の見物人の生徒が(一部は臭液を被っていた)、何人かの教師と共に
この騒ぎを見物していた。
「さあ、あなた達は学校の廊下を沼地に変えたら面白いーそう思ったわけね。」
ホールのど真ん中でアンブリッジが、少し青ざめた顔をした赤毛の双子を見下ろしていた。
「ああ、そうさ。」
フレッドがことさら悪びれるふうもなく言った。
「先生、許可証です!!鞭も準備してあるんですぐに執行させて下さい!!」
フイルチが泣かんばかりの顔で、アンブリッジの元へ駆けてきて叫んだ。
「よろしいでしょう。アーガス。そこの二人、覚悟は出来ていますね?」
アンブリッジはにんまりとほくそえんだ。
「そいつは御免だね。俺らはおとなしくじいさんにぶたれるつもりはないんだ。」
今度はジョージが言った。
「俺達はもう、こんなとこ糞食らえだ。おまえさんとおまえさんが仕切っているような場所なんかにね。」
双子は同時に声を揃えて言い、ポケットから杖を取り出し、余裕綽々でアンブリッジとフィルチを
交互に指差した。
「アクシオ、箒よ来い!!」二人は同時に杖を振り上げた。
ガッシャ〜〜ン!!
遠くのほうでガラスを突き破るような音が聞こえ、二人のアンブリッジに取り上げられたクリーンスイープが
びゅんびゅんと風を味方に突き抜けてこちらにやってきた。
「あばよ先生。」
「ダンブルドア万歳!!彼こそ真の校長だ!!」
フレッド&ジョージは素早くやってきた箒に跨り、群集に向かって叫んだ。
「そうだ!ダンブルドア万歳!!フレッド&ジョージ万歳!!」
群集の一人がこの場の熱気に浮かされ、叫んだ。
「アンブリッジめ、糞食らえ!」
「そうだそうだ。ダンブルドア万歳!!」
「老いぼれめ、恥を知れ!!」
途端に大勢の群集が盛んに悪態、野次、賞賛をつき始め、アンブリッジとフィルチは
自分達に反抗する勢力が多すぎて、この場で裁ききることが出来ず歯をぎりぎりといわせていた。
「くたばれ!この野郎!」
「魔法省の犬め!」
「アンブリッジの腰ぎんちゃくめ。俺達が受けてきた圧制を思い知れ!!」
あっという間に一部の興奮した群集が、見物人の中にいた尋問官親衛隊に襲いかかり、
すったもんだしながら呪いを掛け捲っていた。
「上の階で実演した携帯沼地をお買いになりたい方はーダイアゴン横丁九十三番地「WWW店」まで
お越しください。」
フレッドが大声で宣伝した。
「我々の商品をこのガマ婆を追い出すと誓っていただいたホグワーツ生には、
特別割引をいたします」
ジョージがアンブリッジを嬉々として指差して言った。
「親衛隊、あいつらを止めなさい!!」
アンブリッジが悲鳴に近い声をあげた時、肝心の親衛隊達は興奮した群集に取り囲まれ、
もみくちゃにされて姿が見えなくなっていた。
「それでは皆さんごきげんよう。」
フレッド&ジョージはにやりと笑って、床を蹴り、空中へと箒を急上昇させた。
生徒達はぴぃぴぃ口笛を吹いたり、拍手をしたりでやんやの喝采を天窓に向かって消えていく二人に送った。
フレッド&ジョージの逃走後、興奮した生徒達は何度もその話で盛り上がった。
東塔の六階には馬鹿でかい沼地が残り、フィルチは渡し舟で生徒を教室まで運ぶ仕事をさせられた。
フレッド&ジョージの例に触発され、大勢の生徒が今や空席になった「悪がき大将」の座を目指して
争い始めた。
一方、フレッド&ジョージが学校を去る前にどれだけ沢山の製品を売りさばいていたかが判明した。
アンブリッジの授業になるときまって大勢の生徒が、突然気絶したり、危険な高熱、嘔吐、鼻血を噴出したりする
奇妙な現象が続発した。
生徒達は憤怒と金切り声を上げて原因を突き止めようとする彼女に、
「アンブリッジ炎です」と鉄面皮で応答し、集団で教室から去っていく始末である。
おまけにこの「アンブリッジ炎騒動」には誰あろう、あの
・
が裏で一役買っていた。
愛すべき兄貴達に、彼女は以前から沢山の「ずる休みスナックボックス」といわれる新製品を
譲り渡され(もちろん売り上げ報酬あり)深く別れの言葉を胸に刻んだ彼女は、
廊下や寮で出会う人ごとに(スリザリン以外でだが)愛想よく声をかけて「スナックボックス」を
売りさばいていたのだ。
美人の彼女に声をかけられて有頂天になったハッフルパフの六年生の男子生徒(クリスマス・ダンスパーティに彼女を誘った張本人)は
スナックボックスを高額で買い取ってくれ、また、憧れの彼女に好意を抱いていたグリフィンドールの一年生は
興奮して、その場で卒倒してしまう始末である。
ハリー、ロンはうすうすこのことに感づいていたようだが、ハーマイオニーは知っているのか知らないのか
見て見ぬふりを決め込んでいた。
もし、シリウス、フェリシティー伯母がこの事件の舞台裏を知ったら、面白がって腹を抱えて笑うかもしれない。
だが、ルーピンに至ってはすぐにはらはらして「君の首が危なくなるようなことはよしてくれ」ときついお言葉を
頂戴するのがオチだろう。