「ああ、今日はいろんなことがあったわね〜」

聖マンゴの病院の喫茶室で がクリーム・パフェを美味しそうに頬張りながら言った。

「ほんと、ほんと。でも一番ビックリしたのはネビルとロックハート先生に会ったことだな・・・。」

ロンはデザート・スプーンをちょっと傾けて興奮した声で三十分ほど前の出来事を思い出していた。


ハリー達は現在、客のまばらな六階の喫茶店で優雅にパフェを頬張りながらのんびりと談笑を交わしていた。

ここに来るまで、五人は五階で珍客に二人も出くわしていた。

一人は一時期魔法界を騒がせた、カリスマ的存在の(実はただのてだれの詐欺師だったが)ギルデロイ・ロックハート、

もう一人はなんと、同じクラスメートのネビル・ロングボトム!


二人はヤヌス・シッキー病棟の長期療養の病棟のしかも同室にいた。

ロックハートは 達が二年のときの先生で、トム・リドルの事件で彼は散々な目に遭い、おまけに自らの魔法の未熟な呪文で

脳に決定的な損害を与えてしまったのだった。


だが、ハリー、 は自分たちの人生を永久に消し去ろうとした?先生に、さほど同情しておらず(彼はその時、彼女がロックハートの頬を叩いたのを思い出し、こっそりと含み笑いをしていたほどだ)、ロンだけがちょっと気がとがめてるようだった。


一方ネビル・ロングボトムは、祖母と共に、死喰い人に拷問された自分の両親のお見舞いに来ていた。


ネビルはハリー達が病棟に居合わせたことにとても当惑し、今にもどこかに逃げたそうにしていたが、祖母に「ここに両親が入院しているのを恥じるべきではない!」と一喝され、

何とかその場に留まっていた。


ロングボトムの大奥様(ネビルの祖母のこと)はハリー、 のことを高く評価しており、「孫がいつもあなた達のことを

大変褒めておりますよ」と言って嬉しそうに握手を求めてきた。



ロングボトム夫妻は現段階では、過度の記憶喪失に陥り、息子や姑の顔も識別できない酷い状態であったが、

ネビルやロングボトムの大奥様は定期的にお見舞いに訪れ、話しかけても決して返答をしない両親に

辛抱強く話しかけるのだった。













ホグワーツに戻る日が刻一刻とせまるある日ーー。

シリウス・ブラックはモリーおばさんが「むっつり発作」と呼んでいるものを引き起こしていた。


彼は無口で気難しくなり、しばしば何時間もバックビークの部屋に閉じこもった。

こうなるといくら実妹のジェニファーが、慰めてもいっこうに効果はなく、それどころか部屋から「一人にしてくれ」

と追い返される始末だった。



ハリー、 はそんな彼の気持ちが痛いほどよく分かった。


二人はシリウスをまた、あの老いぼれ妖精と一緒に残していきたくなかった。


二人はまた、奇妙なことにホグワーツに帰りたくないという一致した意見を持っていた。


アンブリッジの圧制ークィディッチの終身禁止ーーー。

それに は寂しかった。


クリスマス休暇ではルーピンと始終会えるし、ミナ伯母やジェニファー、シリウスもいる。

だが、学校に帰れば彼女は一年もあの古城に閉じ込められ、これらの人々と文通さえおろか出来なくなるのだ。



唯一の慰めは、ルーピンがプレゼントしてくれた二匹のモモンガだった。


シリウス、ハリー、 は時間の許す限りロイとジームズ(二匹のモモンガの名前)

の躾や飛行の訓練をしてそれぞれの憂鬱を紛らわした。






そして迎えた休暇最後の日ーーー。

シリウス、ハリー、 、ジェニファー、ロン、ハーマイオニーは小サロンで、小規模なホイスト・ゲーム(トランプの勝負)をやっていた。

側にはロイ、ジームズがぬくぬくとふかふかの毛を逆立てて空き椅子で眠っていた。


ディーラー(カードを配る人のこと)のジェニファーが参加者全員にカードを十三枚ずつ配り、最後の一枚だけ表向きに配った。

ホイストでは二人一組でチームを組むので、 はハーマイオニーとペアを組んでいた。


これまでのところ、始めての勝負ながらつきがまわって、 、シリウスが交互に勝ち続いていた。


シリウス、ジェニファー組はカードを穴の開くほど見つめながら、にやりと不適に微笑む 、ハーマイオニー組

と向かい合っていた。

今のところ、一番強いカード「A」はまだ出ていない。(ホイストではカードの強さは「A,K,Q,J,10,9,8,7,6,5,4,3,2」の順だ。つまり、切り札のAは一番強くて必ず勝てる。)

このゲームではトリック数(トリックとは、全員が1枚ずつカードを出した状態。一番強いカードを出した人がそのトリックの勝者となる。トリックで勝つ事を「トリックを取る」と言う。)

が多いチームが沢山、得点をもらえる。



、ハーマイオニー組の得点は10点、シリウス、ジェニファー組の得点は9点だ。

あと1ラウンド(13トリック)でゲームは終了だ。



シリウスがカードの隙間から熱っぽく を見つめている。

そしてしばらくして、彼は「よし、これでゲームは終わりにしよう!」

と短く呟き、 の方を見てにんまりとほくそえんだ。


「私の切り札だ。」


シリウスはそう冷静に告げると、テーブルの上にバンッと得意げにAのカードを置いた。




「ああーーー負けた・・・・逆転ね・・・。」


次の瞬間、カードはあっという間にテーブルから片付けられ、 、ハーマイオニー組は見事、

シリウス、ジェニファー組に敗北した。


「失礼だがーーゲームはもう終わりですかな?それならよろしい。ポッター、 、お前たち二人は

 ここに残れ。後の者は席をはずしていただきたいんだが・・・。」


いきなりドアがバーンと勢いよく開かれ、旅行用マントを羽織ったセブルス・スネイプ教授が姿を現した。


皆はそそくさと何も言わずに、シリウスが血走った目でスネイプを睨みつけるのを恐々と見ながら部屋から

出て行った。


「あのーー何かお飲み物は入りませんか?」

ジェーンが愛想よくスネイプに声をかけようとした。

「ジェーン。早く向こうへ行くんだ。」

すかさずシリウスがグイと彼女の前に進み出て、スネイプの視界からジェニファーを遮った。

「座るんだ、ポッター、 。」

ジェニファーがおずおずと後ろ手に戸を閉めて、出て行くとスネイプが言った。


「いいかーー」

シリウスが天井に向かって大声で叫んだ。

「スネイプ。ここで命令を出すのは辞めていただきたいな。なにしろ私の家なのでね」

スネイプの顔がわずかに赤くなった。

、ハリーは驚いて彼を見やった。

「ところでなぜ、君がここにいるのかねー我輩は二人に話があるといったのだがね」

スネイプはいぶかしげに、だが、歯をむき出して嫌悪の表情を浮かべて尋ねた。

「私がハリーの名付け親だからだ。」

シリウスも嫌悪の表情をむき出しにして、スネイプに突っかかった。

「我輩はダンブルドアの命でここに来た。」

スネイプはフンとせせら笑うと、告げた。

「しかし、ブラック。よかったらどうぞいてくれたまえ。気持ちは分かる。かかっていたいのだろう?」

「はっきり言ったらどうだ?」

シリウスはイライラしていた。

「あー別に他意はないのだがねーー君が騎士団のために何も役立つ・・」

「先生、話題を逸らさないで下さい!!」

がスネイプとシリウスの一触即発の危機を察して、これ以上ない冷たい声で言った。

「あ、ああーーで、用件だが校長がポッターに伝えるようにと我輩をよこしたのだ。」

スネイプは の冷たい声にハッと我に帰り、話題を元に戻した。




彼はハリーに校長が「閉心術」を学ぶように望んでいる事を伝えた。



しかもその「閉心術」の教師はセブルス・スネイプ本人ときたものだからこれはたまったものじゃなかった。

シリウスも 、そしてハリー本人もあまりのことにしばらく呆然として口が聞けない状態に陥った。


ハリーは助けを求めて、シリウスの顔を見上げたし、 は他人事とは言え、「ダンブルドアは何を考えているんだろう!?」

とわけの分からない気持ちに襲われた。



「ああ、 。君の用件とは「例の薬」のことだ。作り方を演習する。以上、これで話は終わりだ」


スネイプは旅行用の黒マントを翻し、立ち上がりかけた。

「ちょっと待て!」

シリウスが叫んだ。

「何で校長が教えないんだ?」

シリウスが歯をむき出して唸った。

「たぶん喜ばしくない仕事を委譲するのは校長の特権なのだろうな。」

スネイプはにやりと笑って言った。

「ああそうかーー」

シリウスが椅子を回りこんでグイとスネイプの目の前に立ちはだかった。

「そういうことならーーもし君がこの授業を利用してハリーを辛い目に合わせていると聞いたら、

 私が黙っていないぞ!」

「泣かせる話だねえ・・・。」

スネイプが嘲って笑った。

「全くーーブラック。こいつの傲慢さときたら日増しに父親に似てくるようだ・・・。先が思いやられるとは思わ・・」


火薬に突然、マッチが投げ込まれたかのようについにシリウスの癇癪球が爆発した。


「おい、スニベルス」

シリウスが 、ハリーが止める隙もなくサッとジーンズのポケットの中から杖を引き抜き、

スネイプの顔に突きつけた。

「警告したはずだぞ。貴様が足を洗ったなどとは私は信じないからな!校長が信じてるとしてもな!」

シリウスの目がぎらぎらと危険な光を帯びて光った。

「なら何故直接校長に言わないのかね?それとも母親の家で六ヶ月も暮らしている奴のことなど

 真剣に取り合ってくれないからかね?」



「ところで、私には今も到底理解出来ないことがあるんだが、分かるか?何故お前のような、陰険な人の嫌味しか言えない野郎をーチェンが気に入って連れ歩いていたかということだ。」


シリウスは半ば馬鹿にしたように思い出して言った。

「おやおやーーそれでは聞くがその我輩の親愛なるご友人に、愛しい恋人を永遠に鼻先から奪われた阿呆な輩はどこのどなたでしょうな?」

スネイプは負けずにここぞとばかり、いや〜な思い出を蒸し返すようなことを言ってやった。

「つけあがるなよーースニベルス。」

シリウスは猛犬のように怒り狂って吼え、杖をピタリとスネイプの喉元に押し付けた。

「ここで殺人騒ぎを起すつもりかねぇ?ブラック。」

スネイプはにやりと笑った。

「ほんとうにお陀仏したいようだな?」

シリウスの目はカッと燃えあがった。彼は杖を持っていない開いているほうの手でげんこつを作ったり、戻したりした。

「どうぞやるのならーやりたまえ。ただし、そこにいるえー、大事な形見を傷つけたくないのならな。」


スネイプは冷や汗をかきながら、ちらりと心底恐怖に陥っている を見やって言った。


スネイプはいつの間にか、シリウスの腹に杖を押し付けていた。


「やめろ!(やめて!)」

ハリー、 が一斉に悲鳴を上げ、シリウス、スネイプの間に割って入ろうとした。

「放せハリー。この野郎に一発お見舞いしてやらないと気がすまないー!!」シリウスが叫んだ。



空き椅子で気持ちよく眠っていたロイとジームズがそのけたたましい物音にびっくりして、目を覚まし不機嫌そうに

キーキー泣き声を立て始めた。


「ハリー、そこを退け!」

シリウスは大きく吼え、彼を押しのけようとした。

、怪我をしたいのか!?」

スネイプは激しい声で、 を怒鳴りつけた。

だが、仲裁者の二人は細い肩を怒らせ、昂然と彼ら大人の怒りに立ち向かった。






「治った、全快だ!」

ちょうどそこへ、運良く無事退院できたウィーズリー氏と夫人が小サロンに入ってきた。ウィーズリー氏は顔中にこにこのし通しでバーンと景気よくドアを開けた。


が、入り口でウィーズリー夫妻は目の前の戦慄な光景に冷たい電流が体中を駆け抜けた。


夫妻の目線の先の、当事者と仲裁者はぴたりとそのままの形で地面に根が生えたように立ち尽くした。


「な、なんてこった」

ウィーズリー氏の顔からいっぺんに笑顔が消えた。

いまやハリー、 は渾身の力でスネイプ、シリウスの二人を引き離そうと両手を広げ、間に突っ立って固まっていた。

数秒後、目撃者が入ってきたことに二人は正気を取り戻し、サッと杖を下ろした。


それからスネイプは物も言わずにウィーズリー夫妻の側を通り過ぎ、静かにサロンのドアを閉めて出て行った。


「何があったんだ?」

スネイプの後姿を血走った目で睨みつけているシリウスに、ウィーズリー氏が尋ねた。

「なんでもない。アーサー、昔の学友とちょっとした親しいおしゃべりさ。」

シリウスは無理やり顔に笑顔を作り、ウィーズリー氏に告げた。



ハリー、 はぐったりとして側の椅子につかまって体を支え、先ほどのことを恐ろしそうに思い返していた。






その夜の晩餐は、ウィーズリーおじさんの快気祝いとして盛大なものとなるはずだった。


はウィーズリーおじさんの真向かいに座り、彼と親しそうに言葉を交わしていた。

フレッド&ジョージは父親が無事退院できたのが相当嬉しくて、いつもの洒落たジョークにも一層力が入り、

出席者全員を爆笑の渦に巻き込んでいた。


ルーピンは上品にトカイ産ワインをすすり、ハーマイオニーと談笑していた。

ところが、ハリーの名付け親であるシリウス・ブラックはむっつりと顔をしかめていることが多く、

フレッド&ジョージのジョークにも無理に声を上げて笑う始末だった。


が「お替りはいらないの?」と愛想よく彼に微笑みかけて、デザートのルバーブのゼリーを

すすめても「え、何か今言ったか?」とトンチンカンな返事が返ってきたので、 は思わずハリーと目配せしてしまい、

「よっぽど昼間のことが答えているのだろうか?」と同情を禁じずにはいられなかった。





その夜遅く は冷たい夜気が肌に刺し、なかなか眠れずにいた。

これにはブラック家の暖房システムが影響していた。

だいたい、 の部屋の暖房システムは18世紀のものがそのまま使われていたのである。

ロココやバロックの装飾を施したみすぼらしい白色磁器のストーブが室内にニ、三個置かれ、火口に近いところからではなく

廊下側から順番に暖められるという始末。


若い にとって前々からこのストーブはすこぶる不満の種だった。

実家のブラン城では、カッフェルオーフェン(ペチカに似たタイル張りの暖炉)が各部屋に取り付けられ、

部屋全体に素早く暖房が行き渡るように工夫されていた。







次回、シリウスの気持ちに微妙な変化が・・・。





































































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