「ハグリッド!!今までどこに行っていたの??」ハーマイオニーが悲鳴に近い声を上げた。

四人は現在、ハグリッドの掘建て小屋の中にいた。

ホグワーツでは生徒の夜間の外出は禁じられているので、無論、ハリー愛用の透明マントにくるまって

ここまでやってきたのだ。



「その傷は?いったい何があったの?」

ハリーはやっきになって問い詰めていた。


久しぶりに姿を現したハグリッドは顔のあちこちに紫がかった痣や、どす黒い切り傷をこしらえていた。

は心配のあまり、手を伸ばしてハグリッドの傷の具合を調べようとした。

「何でもねぇ・・・あ、痛ぇ!触らんでくれ・・・」

ハグリッドはそう呻くと、彼女の華奢な手を払いのけた。

「何でもないはずがないだろ!酷い状態だ!ポンフリーのとこへ行ったほうがいいよ!」

ロンがやっきとなって言い張った。

「言ったろうが・・・何でもねぇ・・・」

ハグリッドは断固として頑なに口を閉ざした。





「まあ・・・かけろや。お前さん達がこんな時間に危険を承知で来てくれたんだからな。これほど嬉しいことはないやい。

 待ってろ。茶を入れてやる。それから、寒かったろう?ブイヨンでも食うか?」

しばらくの気まずい沈黙の後、彼は何とか笑顔を浮かべて言った。


「ねえ、何があったか、ちゃんと話してくれるわよね?私達、どれだけ心配したか!!私、正直言ってもう、グラブリー・ブランク先生の授業には

 あきあきなの!!つまらない動物ばかり持ってきてね・・・アンブリッジのお顔を伺ってるようで仕方ないの!

 ハグリッド!やっぱり飼育学の先生はあなたしかいないのよ。その大事な先生がこんなに怪我して戻ってきてーーー

 一番身近な生徒にも事情を話してくれないなんて!!」


ヤカンをかけに行こうと立ち上がった、ハグリッドにこれまでにない激しい口調でまくし立てると、 は机に突っ伏してワッと泣き始めた。

「おい・・おい・・・嬢ちゃん・・・ 嬢ちゃん・・・そんなに泣かんといてくれ・・・なあ・・・

 ああ・・お前さんに泣かれると、俺は弱いんだ・・・なあ、頭をあげてくれや・・・それにお前さんを泣かしたことを

 ブラド夫人に知られたら、俺は申し訳がたたねぇ・・・」


突然、泣き出した彼女に、ハグリッドはヤカンをかける手が止まり、慌てふためいた。


が、 は実際には泣いてなどいなかった。

どうもこの状況では、他の三人がなだめたり、すかしたり、脅したりしても彼は決して真実をその口から語ろうとしないと感じたので、

彼女は女の人がよく使う、泣き落としという方法で彼の口を割らせようと芝居を打ったのだ。


「ハグリッド、これでもーここにこれだけ心配してくれる生徒がいるのに話してくれないのかい?」

そんな の芝居に気づいたのか、気づいてないのか分からないが(ハーマイオニーは気づいていた)ロン、ハリーは

いいチャンスだとばかりに彼に突っ込んだ。

「しょうがねえ・・うんにゃ・・全部話してやる・・・ただし、他の誰にも言うなよ。約束出来るな!」

その数分後、ハグリッドは困惑しきった顔で、重〜い口を開いた。

「ありがとう!」

はそれを聞くと、素早くテーブルから顔を上げ、にっこりと微笑んだ。

「あいや!お前さん、泣いてなどなかったんかい!!う〜ん、こいつは一本やられたわい!!まあ、

 そいつはおいといてな・・俺はこの夏、マダム・マクシームと巨人に会いにいっとったんだ。」


ハグリッドは酷くびっくりした顔で、 を眺めたが、すぐに平常心を取り戻してこの夏の出来事を四人に事細かに話し始めた。

それによると彼らは、ディー・ジョンのあたりで魔法省のずっとつけてきていた密偵を撒いて、ポーランドの国境を通過し、

ミンスクのパブで偶然にもミナのところの御者を務めている、吸血鬼の男と言い争いをしたのだが、その男は最終的には

親切に彼らにウィスキーとラムのロースト、マッシュポテトをご馳走してくれたということだった。



「そいで、一ヶ月後に俺たちはようやく巨人の本拠地にたどり着き、そこの頭に貢物を二、三、贈った。

 挨拶代わりにな。巨人の頭はカーカスといってな・・・貢物がえらく気に入ってな・・永遠の火の枝だが・・・

 奴は英語がしゃべれねぇのでーー通訳の巨人を交えて、俺とオリンペの話を熱心に聞いてくれた。

 だがな、その晩、何もかも駄目になった。巨人同士の内乱がおきてな。カーカスの首が吹っ飛んで

 翌日、俺たちが新しい贈り物を持って行った時、新しい頭が洞窟の入り口にすわっとった。

 こいつがまた、ゴルマゴスだ。えらいくせものでな。俺たちの話を聞く前にーー俺が貢物をさし出そうとした

 瞬間にだ。気がついたらーー奴の仲間に俺は、逆さ吊りにされとった。

 むん?どうやってそいつから逃れたからかって?オリンぺが慌てて連中に、結膜炎の呪いを放ったんだ。

 マダムは実に勇気があるお人だ。だが、さあ、厄介なことになってな。奴らに不利な魔法をつこうたんだ。


 巨人がなーー魔法使いを憎むのはそこなんだ。俺たちは逃げた。しかしなーーダンブルドアが

 俺たちにこの任務を任せたんだ。逃げるわけにはいかねぇ。俺たちは三日後に再び、巨人に会いに行った。

 そしたらーーそこに誰が来とったと思う?マクネアだ!あの野郎は俺たちを尾行しとったのに違いない。

 あいつがゴルマゴスに先手を打ってーー「ダンブルドアでなく、「例のあの人」側につくように」と説得したのかもしれんな。

 何せ奴らは似ている。殺すのが大好きなんだ。そんで俺たちは傷ついた連中ーーあ〜ゴルマゴスが頭になるのに反対して

 半殺しの目に遭わされた巨人、7人だ。そいつらに何度も会いに行った。そいつらは俺たちの話に納得してくれた。

 だがな、連中はゴルマゴスを恐がって、俺たちとかかわるのを嫌がってるようだった。

 でも、俺たちはやるべきことをやった。校長先生の言葉も伝えたし、それに何人かは耳を傾けた。

 あとはゴルマゴスに反対の連中が、山から下りてきて、ダンブルドアが友好的だということを

 思い出すかもしれん・・・」



ハグリッドはそこで話を締めくくった。

「今はーーヴォルデモートに対抗する為に、こっちの陣営は物凄く大変なのが良く分かったわ・・。

 そのーー一人でも味方を得ようとする時に、闇の陣営側が汚い手を使って、そうさせないようにするし・・・」


ハーマイオニーはそう悲しそうに呟くと、暖かいブイヨンの入ったマグを持ち上げてゴクリと飲んだ。


ドンドンドンドン!!


「誰だ??」

ハグリッドが後を恐々と振り返った。

戸を誰かが激しい勢いで、連打している。


ハーマイオニーが「ヒッ!」と声を上げ、マグを床に落とし、こなごなに割ってしまった。

「あの女だ!」

ロンが窓のカーテンごしに揺らめく、ずんぐりした背の低い影を見つけて唸った。

「はよう、裏口から出ろ!早く!」


ハグリッドは青ざめ、小屋の裏の勝手口の小さなドアを開けると、四人に合図した。

「そのマントを着てな。早く行け!」

ハグリッドは小声でそういうと、部屋を三歩で横切ってギャンギャンさっきから吼えているファングの首を掴んだ。

「ちょいと待ってくれ!中にデカイ犬がいるんだ。こいつを抑えるんで!ちょいと待ってくれ!こら、ファング!静かにしろ!!」

そうハグリッドは大声で呼びかけながら、ハーマイオニーの割ったマグを慌てて、床板のゆるんだ所に隠し始めた。




そして、小屋から無事に逃げおおせたハリー達がしばらくたってハグリッドの小屋を訪れ、あの晩のことを

聞き出してみると、案の定、あそこに来たのはアンブリッジだった。

彼女は査察の日程の連絡と、何故、遅れて学校に戻ったのかをきつく問い詰めたとのことだった。

ハリー達は査察にはゾッとした。絶対に合格しないに違いない。危険動物を連れてきて落第点をつけられる彼の姿がすぐに頭に浮かんだ。

ハーマイオニーだけは「何が何でもあの女からあなたを追放させない!授業計画を作ってあげるから!」と息巻いていた。


 

それから十二月のある、雪のしとしとする晩のこと。

授業は残り少なくなり、もうすぐクリスマス休暇がせまっていた。


DAはハリー、 が額を突き合わせて相談した結果、休暇の間は「お休み」ということになった。

なにしろ、DAメンバーのほとんどが家に帰省するからだ。


ハーマイオニーは両親とスキーに行く予定だったが、これがロンには腹がよじれるほど可笑しかったらしい。

マグルが細い板切れを足に括りつけて、山の斜面を滑り降りるなど初めてだったのだ。

一方、ロンは「隠れ穴」に帰る予定で、 は今年は居城に帰らずに、ロンドン郊外のグリモールド・プレイスに滞在する予定だった。

何でもジェニファーとシリウス兄妹に、伯母も交えてクリスマス・イヴを過ごすらしい。


ハリーは数日間、妬ましさに耐えていたが、クリスマスにどうやって家に帰るのかと

ロン、 に聞いたとき、そんな思いを吹き飛ばす答えが返ってきた。

「だけど、君も来るんじゃないか!僕、言わなかった!?ママがもう何週間も前にそう言ってきたんだぜ。

 君も招待するようにさ!」


「それにロン、あなたのお母様は決していい顔をなさらないと思うけど。ほら、シリウスと険悪なムードだし・・・

 でもね、伯母様やシリウス、それにジェーンはハリーをグリモールド・プレイスに是非連れて来るようにだって!

 数日前にそう手紙で、言ってきたわ!何でも大規模なホイスト・パーティをやるんですって!

 ああ、絶対に来てくれるわね。もちろん、ロンのお母様の招待のほうが先だったけど。」

 


ハーマイオニーは「まったくもう」という顔をしたが、ハリーは嬉しさのあまり、頭に被っていたフェルト帽を天井に放り投げて

万歳したい気分だった。


「隠れ穴」はもとより、名付け親と と一緒にクリスマスを過ごすと考えただけでワクワクした。

ロンは「ママだって、いくらシリウスと仲が悪いって言っても、彼が君の名付け親なんだから、君がグリモールド・プレイスに行きたいと頼んだら決して嫌だと言えないしな」

と楽観的に言ってくれた。



そうこうしてるうちに、休暇前の最後のDA会合が来た。

ハリーはその日、早めに必要の部屋に足を踏み入れた。

松明がぱぁあっと灯り、ドビーがクリスマスの飾りつけをしていた。

百余りの金の飾りだまが天井からぶら下がり、銀モールが部屋のあちこちにぐるりと取り付けられていた。

「ああ、こんばんは!ハリー・ポッター様!ようこそ、必要の部屋へ^^ドビーめが少し雰囲気を変えてみました!

 どうです?お気に召していただけましたでしょうか?」

ドビーはにこにこと笑って、ハリーに話しかけると、最後の銀モールの一つを飾りつけようとしていた。

「ああ、うん!最高だ!見違えるほどだよ!君が全部、やったのかい?」

ハリーは驚いて、声が上ずった。

「はいっそうでございます。ところで 様はまだのようですね?」

ドビーは、いつも同じタイミングで部屋に入ってくる彼女の姿がないことに気づいた。

「ああ、今日は僕、はやめに来たんだ。」

ハリーは言った。

「そうですか!だったらいいものをお渡ししましょう!」

ドビーはそういうと、ぱちんと指を鳴らした。

「これは?」

ハリーは一瞬、ポカンとした。

彼の腕の中には、真っ白な椿の花束が出現していた。

「世界で最も完璧な花。中国人が賛美してやまない、椿の花でございますよ!

 これを 様に渡して上げて下さい。ドビーめからといわずにあなたからだと。

 きっと喜ばれますでしょう!椿の花は今が最も綺麗な時期でございます!

ドビーめはこの花を嬢様のために、とっておきました!嬢様はこの花が大好きでございます!

ルーピン様もこの花を嬢様に贈られ・・」


ハッと上機嫌で喋っていたドビーは、つい口を滑らしてしまった。

ドビーは真っ青な顔で、姿を消してしまった。

それと入れ替えにルーナ・ラブグッドが入ってきた。


「綺麗だね。あんたが飾ったの?」

ルーナがぼーっとした顔で挨拶した。

ハリーは慌てて花束を後ろに隠した。

「違う。屋敷しもべのドビーさ。」

「ヤドリギだ」

ルーナが白い実のついた、大きな塊を指差して夢見るように言った。

ハリーの真上にその木はあった。

「ヤドリギにはね。ある伝説があるんだ。」

ルーナは真面目腐って言った。

「ヤドリギの下で男女が口づけを交わすと、その二人は永遠に結ばれるんだってさ。

 ま、あたしには関係ないし、どうでもいいことだけどさ。ナーグルがくっつくのもそのせいさ!それぐらいヤドリギは神聖視されてるんだ。」


本当だろうか。

ルーナがべらべらと宙に向かってしゃべっている最中に、ハリーはぼんやりと考えた。


だが、その時、運悪く、沢山のDAメンバーがぞろぞろと到着したので、ハリーは花束を床に置き、

皆と向き合った。

最後の練習は妨害の呪文だ。

最終的にネビルは、珍しくこの技を体得出来た。

その他のメンバーも長足の進歩を遂げた。

このぶんだと次はー守護霊呪文へといけそうだな・・・。とハリー、 は考えた。



「ああ、今日のDAは今まで最高だったわ〜皆、すごい進歩!特にネビルは。」


DA会合終了後、クッションを集めながら は言った。


「そうだね。ルーナもかなりよかったし、あのスミスもかなり熱入ってたね!」

ハリーは防衛術の本をかき集めながら嬉しそうに言った。


ロン、ハーマイオニーは一足お先に帰っていた。

「このヤドリギ、綺麗ね。グリモールド・プレイスに帰ったら、是非飾ろうっと」

はつかつかとヤドリギの下に立つと、愛しそうにそれを見上げた。

「僕より、君のほうがグリモールド・プレイスが我が家になっちゃったみたいだな」

ハリーはヤドリギの下に来ると、そう言って、彼女をからかった。

「ええ、そうかもしれないわね」

はにっこりと悪びれずに笑った。

「ジェニファー(ジェーン)はシリウスと当分の間、グリモールド・プレイスで一緒に暮らすんだって。

 何でも兄妹水入らずの時間を過ごしたいからだそうよ。」


「へぇ〜そうなんだ。そうだよね、あの二人今までずっと離れてたからな〜よかったじゃないか!」

部屋は 、ハリーの楽しそうな笑い声で包まれた。


そして、一瞬の沈黙の後、彼はヤドリギの後ろに隠していた花束を取り出した。

「これ、あげるよ。」

彼は照れくさそうに、サッと花束を隣に座っていた彼女に差し出した。

「えっ!?ほんとに・・これくれるの?ありがとう!」

突然のことに、 は感激のあまり、声が上ずった。

彼女は花束を受け取ると、そのいい香りのする白椿に顔をうずめた。

「これを持ってると、気分はお父さんの故郷にいる感じ」

はうっとりと言った。

「ホグワーツを卒業したら、お父さんの国へ行くんだろ?」


「うん。自分でお金を貯めて行くの。ハーマイオニーやロン、それにハリーもよかったら一緒に行こうと思って。

 卒業旅行みたいなものよ」

は今からそのことを考えて、うきうきとした気分で言った。

「君は一杯、夢があるみたいだな・・僕は将来、あれしたいとかこれしたいなんて夢はないのに・・」

ハリーはぼんやりと言った。

「あら、夢がないなんて嘘だわ。四年の時、闇払いの仕事をやりたいって言わなかった?」

は熱心に言った。

「まあ・・うん・・そう言ったけど・・でも、今はいいんだ。君にどうしても言わなくちゃいけない

 ことがあるんだ」


ハリーはそこでありったけの勇気をかき集めて、静かに彼女に言い放った。


「何?何なの?何か秘密の話なの?」

ハリーの態度が変わったことに全く気づいていない彼女は、茶目っ気たっぷりの笑顔で彼に向き合った。

「ああ、秘密の話だよ」

彼はそこでごくりと生唾を飲んだ。

「僕、ずっと君が好きだったんだ・・」


「え、どういう意味?」

の声が少し上ずった。

「これ以上、隠すのはやめるよ。 。君が大好きなんだ。

 あのさ・・初めて漏れ鍋で会った時から君のことしか考えられなくなったんだ!」


「ああ、言わないで!それ以上言わないで頂戴!」


言葉の意味がわかった は苦しそうに叫んだ。

「言わずにはいられないよ!」

ハリーは声を張り上げた。

彼はガシッと、彼女の両腕を掴んで激しい口調で言った。

「この五年間、君が大好きだった!僕がどれほど君が好きか言葉で

 表されない程だよ!ねえ、僕のことはどう思ってる?聞かせてくれ!」

しばらくいや〜な沈黙が続いた。 は恐くて、顔をあげられなかった。


「わ、わたし・・そういうふうには・・ハリーのこと、思ってないの・・友達としては大好きよ。

 だけど・・・」

「でも、これからそうなるかもしれないってチャンスもない?」

ハリーは熱っぽく、あきらめきれない調子で彼女に詰め寄った。

「ダメよ!ハリー。残念だけど、あなたの気持ちにこたえてあげることは出来ないわ。

お願い、もう二度とこのことを言わないで・・」

は可愛そうだと思いながら、必死に声を励ました。


再び、いや〜な沈黙が流れた。

ハリーは唇まで真っ青だった。

そして、その目はぎらぎらと異様な光を帯びて、輝いていた。

は生涯、この時の彼の顔を忘れられない気がした。




「ルーピン先生なんだね?君が好き・・いや、愛してるのは・・」

ハリーがやっとのことで低い声で言った。

「ええ・・そうよ。私には彼しか考えられないの」

今更隠しようもなく、 は正直に言った。

「で、でもね・・私、男友達の中でハリーが他の誰よりも好きよ。ね、だから、今日のことがあっても

 親友でいたいの」

は彼のほうに身を乗り出して熱心に、言った。


ハリーはそれを聞くと、にがにがしげに笑った。笑うしかなかった。

「親友!?君のそういう感情じゃ満足出来ないよ・・僕が欲しいのはその答えじゃない!君が現在、ルーピン先生に捧げている感情が

 欲しいんだ。ああ、だけど君は到底無理って・・」

ハリーはがっくりとうなだれて、彼女から顔を背けた。もう彼女の顔なんか見たくもなかった。自分が惨めだった。

「ほんとうにごめんなさい・・ハリー。許して・・」

はこういうしかなかった。

「いいよ。許すことなんて何もない」

ハリーはそう言い放つと、スッと掴んでいた彼女の両腕を離した。

「初めから何もなかったんだ。 が僕のことを思ってくれてたと感じた時も全部、僕の勘違いだったってわけだ。じゃ、お休み。 。」

彼はこれまでにない冷たい口調で言い放つと、くるりと踵を返し大またで必要の部屋から出て行ってしまった。


「待って・・そんなつもりじゃ・・」

あとにはどうすることも出来ず、はらはらと大粒の涙をこぼす が取り残された。









 










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