新学期最初の授業日、あいにく外はイギリス名物のうっとうしい、何日も続く雨とすっぽりした霧のベールに覆われた。
 
「本日の授業を始める前に―−諸君に忘れぬように言っておこう。」

じめっとした地下牢に響き渡り、また聞く者を底冷えさせるような声でスネイプは言った。

「来る六月、諸君らは重要なるO・W・L試験に臨む。この試験では今までに学んだ魔法薬の成分、使用法につき諸君がどれほど学んだかが試される。

 我輩は諸君にせいぜい本試験合格点の「可」を期待する。まあ、クラスの幾人かの愚鈍な生徒を除いてだな・・」
 
 スネイプの何事も見逃すまいとする黒目がぎろりと の隣にいたハリー、それから斜め後ろのネビルを睨みつけた。
 
 「そう、言うまでもなく本試験結果いかんによってはーー次年度、我輩のクラスから去る者が出てくるだろう」
 
 「我輩は最も優秀なる者にしかNEWTレベルの「魔法薬の受講」を許さん。つまり、何人かは確実に別れを告げるということだ。」
 
 スネイプの目が再び、ハリーを見据え軽蔑の笑いを浮かべた。
 
 好きなだけいくらでも笑うがいい。六年目になったら魔法薬学をやめられるんだ。とハリーは胸の中で負けずにせせら笑った。
 
 お生憎様。と も挑戦的にスネイプに向かって顎を突き出した。
 
 彼女はもうとうにNEWTレベルの魔法薬学の授業を受講するつもりなどなかった。
 
  はミナに幼いころから魔法薬学の手ほどきを受けていたので、学年トップのハーマイオニーには負けるがこの数年間良い成績を修めることができた。が、本心は
 
 この教科はあまり好きではなかった。
 
 なので、出来ればハリー同様O・W・L試験終了とともに魔法薬学も終了させたかった。
 
 
 
 
 
 
  魔法薬学終了後、四人は汗だくになりながら廊下を歩いていた。
 
 「ったく、何だよあれ!不公平きわまりないじゃないか!あの野郎!しょっぱなからこの扱いだぜ」
 
 先ほどから熊のようにむっつりと押し黙ってしまって、不機嫌極まりないハリーを横目でみやりながらロンは憤慨した。
 

 
 「そうよ、あなたの魔法薬はゴイルのほどひどくなかったじゃないの。なのにスネイプはバイアン草のエキスを加え忘れたあなたの薬を
 
  使い物にならないって全部消してしまうんだもの。酷過ぎない?」
  
 女の子たちは不満たらたらで文句を並べ立てた。
 
「だけどさぁーー」

イライラを極力抑えながらハリーが口を開いた。

「アイツは一度だって僕に公平だったことなんてないんだ。わかるだろ?」

三人とも答えなかった。

三人ともぶち切れ寸前の彼に火に油を注ぎこむような返答を返すだけの勇気はなかったからだ。

「私、今年は少しはよくなるんじゃないかと思ってたんだけど・・・。だってスネイプは騎士団員でしょう。だから−ー」

ハーマイオニーが小声で三人にしか聞こえない声でつぶやいた。

「馬鹿言うなよ。」

ロンがじれったそうに言った。

「豹の斑点を消すことが出来ても、豹は豹であることに変わりはないんだぜ。」

「だいたい、ダンブルドアはどうかしてるぜ。元デス・イーターの奴を信用するなんて。あいつが例のあの人のために働くのを辞めたって証拠がどこにあるんだ?」

「馬鹿言ってないわ!」

ハーマイオニーがムッとして食ってかかった。

「あなたに教えてくれなくても、ロン、ダンブルドア先生にはきっと十分な証拠がおありなのよ!」

これらの会話が引き金となって、最近めったに起こらなかったいさかいが二人の間で始まった。



「いい加減にしろよ!」

二人のやりとりを見ていたハリーが低い声で怒鳴った。

「いつも角突き合わせてばかりだな。もううんざりだ!!」


「あっ、ちょっとハリー!どこ行くのよ!」

の声をよそに彼は大理石の階段を駆け上がり、あっというまに廊下を疾駆して消えてしまった。


彼はこれといった行き先もなく、一人で廊下を歩き続けた。

「いい気味だ・・何でやめられないんだ・・いつも悪口ばかり言い合って・・あれじゃ誰だって頭に来る・・・・」

彼の頭の中で、ぶち切れた憤懣やるかたない怒りと、ロン、ハーマイオニーのショックを受けた顔、 の傷ついたようなとまどったような顔が交錯した。

そのぶつぶつ口の中で呟いているハリーを柱の影からじっと見つめている人物がいた。

レイブンクローのクィディッチ・シーカーチョウ・チャンだった。



次の闇の魔術の防衛術の時間、ハリーは真っ先に教室に入り、一人で席に座った。

数分後、ロンが入ってきて彼の隣に座った。

「さっきはゴメンな。僕、ハーマイオニーと争うのはやめた」

「そりゃよかったね。」

まだ怒りが解けず、ハリーはぶすっと言った。

「だけど、ハーマイオニーや が言うんだ。僕らに八つ当たりするのはやめてほしいって」

ロンは言った。

「僕は何もーー君たちに八つ当たりなんかーー」

「いいからーそれ以上言うなよ。今のは伝言しただけさ」

ロンはハリーの言葉をさえぎって、椅子に深くもたれかかった。


その後、生徒達がドヤドヤと教室になだれこんできたので二人はそこで会話を中断させた。



そして、生徒達が教室に入ったのにあわせて後ろのドアからアンブリッジが入ってきた。ピンクのふんわりとしたカーディガンを着用し、縮れた栗色の髪には黒ビロードのリボンを結んでいた。


「こんにちは!」

クラス全員が座ったのを見計らって先生が挨拶した。

「こんにちは、アンブリッジ先生」

みんないっせいに挨拶を唱えた。

「さあ、それでは杖をしまって、羽ペンを出してください。」

アンブリッジがやさしく言った。

多くの生徒が暗い目を見交わし、がっくりと首をうなだれた。

杖をしまった後の授業が、面白かったためしなどないからだ。

それから生徒は黒板にアンブリッジが書いた、「防衛術の授業の目的」を書き写し、彼女がその後で読むように言ったスリンクハード著の防衛術の理論という本を読み始めた。

こんなつまらない授業は今まで始めてだった。

あのろくでもないギルデロイ・ロックハートの授業でさえ、これより刺激があって面白いように思われた。

ロンはボーっとして羽ペンをくるくると空中で回し、 は「こんなのやってられない」とでもいいたげにアンブリッジのほうを見ていた。

驚いたことにハリーが彼女の隣のハーマイオニーに目を走らせると、彼女は教科書を開きもせずにじっと と同じようにアンブリッジを見つめていた。

その後、大半の生徒がハーマイオニーや の無言の行動に目を走らせるようになると、今まで頑固に別の方向を見続けていたアンブリッジももはや

無視することが出来なくなった。

「何か質問があるの?」

アンブリッジはたった今、ハーマイオニーに気づいたように話しかけた。

「はい。私はこの授業の目的について質問があるんです。」

ハーマイオニーが言った。

「おやまあ、ミスーー」アンブリッジの眉毛がぴくりとつり上がった。

「ハーマイオニー・グレンジャーです」

「ミス・グレンジャー?きちんと読めばこの授業の目的はわかりますよ」

アンブリッジは猫なで声で言った。

「でもわかりません。この本は防衛呪文を使うことに関して何にも書いてありません。」

ハーマイオニーはぶっきらぼうに言った。

「ミス・グレンジャー。このクラスではあなたが防衛呪文を使う状況なんて存在しませんよ。まさか授業中に襲われることなんてあるとお思い?」

アンブリッジはそういって彼女の発言を跳ね除けようとした。

「魔法を使わないんですか!?」

その言葉をアンブリッジが言い終わるか、言い終わらないうちにいっせいに多くの生徒が彼女にむかって反論した。

「はい、はい、静かに!静まりなさい!」

アンブリッジは手を制して、生徒たちを黙らせようとした。

「防衛術の真の狙いは間違いなく、防衛呪文の練習をすることではないんですか?」

ハーマイオニーだ。

「私は新しい指導要領にのっとって皆さんを教えます。ですから、あなたがたが防衛呪文について学ぶのは、安全で危険のない方法で

ーーー」

「そんな奇麗事!いざとなったら何の役に立つんですか?」

が声を上げた。

「そうだ!僕たちが襲われるとしたらそんな方法ーー」

ハリーも賛同して声を上げた。

それにつらなって他の生徒もやんややんや質問をぶつけ始めた。

「静かに!静かに!私の授業で勝手な発言は許しません!!挙手!ミス・ !ミスター・ポッター!」

アンブリッジが大声で怒鳴った。

二人は負けじと手を上げた。

アンブリッジはわざと二人を無視して、その横で手をあげていたディーン・トーマスを指名した。

「彼らの言うとおりでしょう?先生。もし僕たちが襲われるとしたら危険な方法じゃない」

ディーンは冷静に言った。

「いいですか?ミスター・トーマス。このクラスで襲われると本気でお思いなの?」

アンブリッジはせいいっぱいの作り笑いを彼に向けて言った。


「それはーー」

ディーンは言葉につまったようだ。

「はっきり申し上げると、あなた方は、これまで、大変無責任な魔法使いにさらせれてきました。」

先生はこれまでにない底意地の悪い笑みを浮かべた。

「例えば、教師の中には非常に危険な半獣もいました。」


「黙りなさい!!あなたにルーピン先生の批判をする資格はないわ!」

は彼を思った。すると彼女の中に、これまでにない激しい感情がわきあがった。

「挙手しなさい!ミス・ !それに私に向かって黙れとは何という口の利き方でしょう!」

アンブリッジは怒りのあまりまだらになった顔を彼女に向けた。

生徒は突然、始まった とアンブリッジの言い争いに相当興味をそそられたらしく、もっとよく見ようと椅子から身を乗り出した。

「黙るのはあなたのほうですよ。先生。ルーピン先生は今までにない最高の先生です。」

そのとき、勇敢ながら、ディーンが静かに彼女の発言を弁護した。

「あ、あなたまでなんと言うことを!それに挙手しなさい!ミスター・トーマス!無礼な!いいですか?あなたがたは年齢にふさわしくない呪文

 を教えられてきました。恐怖に駆られ、一日おきに闇の襲撃を受けるのではないかと信じ込まされて・・・」
 
「そんなことはないです!」

「私たちはただーー」

「挙手しなさい!ミス・グレンジャー!!」

こんな調子で多くの生徒から延々と質問が飛び、アンブリッジは授業どころじゃなくなってしまった。

ただ、一度ハリーの突拍子もない質問に皆(アンブリッジも含めて)、肝をつぶした。


「ミスター・ポッター。あなたがたのような子供を誰が襲うと思ってるのです?」

アンブリッジがぞっとするような甘い声で聞いた。

「そうですね〜例えば・・ヴォルデモート卿とか?」

ハリーは思慮深げな声を出した。

クラス中がしんと凍りついた。

「グリフィンドール10点減点です。ミスター・ポッター」

アンブリッジの声は怒りのあまり震えていた。

「ある闇の魔法使いが放たれたうわさは嘘です!」

アンブリッジが叫んだ。

「嘘じゃない!」

ハリーは叫んだ。

「僕は見た。あいつと戦ったんだ!」

「私も見ました。嘘ではありません!あいつは私たちを殺そうとしました!」

がここぞとばかりに叫んだ。皆がいっせいに彼女に注目した。

「罰則です!ミスター・ポッター、ミス・

アンブリッジが勝ち誇ったように言った。

「もう沢山、もう結構です。先ほども言ったようにこれは嘘です!魔法省は皆さんに闇の魔法使いの危険はないと保障します!さて、明日の夕方、二人には私の部屋で罰則を受けてもらいます」

アンブリッジはそういうと、机の端に腰掛けた。

「それでは先生はセドリック・ディゴリーが勝手に死んだ?そう言いたいんですね?」

ハリーがまた発言した。

クラス中がもっと聞き出そうと、いっせいに椅子から身を乗り出した。

「ミスター・ディゴリーの死は悲しい事故です。」

アンブリッジが冷たく言った。

「事故なんかじゃありません。殺されました。彼にーーヴォルデモートに。私は目撃しました」

がハーマイオニーが必死に止めようとしているのを無視して物悲しい、だが、しっかりとした声で言った。

三十人もの生徒は熱心に聞き入っていた。どうやら彼らの話は信憑性があるらしいと感じたのだ。

アンブリッジは無表情で、今にも発狂しそうに思われたが黙って二人を憎しみをこめて睨みつけた。


























 
 
 

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