ハリーがまだ来ない。 はやきもきした。

「先に帰ってて。金髪を調べてくる」

彼が最後に別れたときの言葉が脳裏をよぎった。



汽車は何十分も前にホグズミード駅で生徒を下ろし、どこかへ姿を消した。

ここはホグワーツの大広間だ。天井からさんさんと輝くシャンデリア、金器が並べられた大テーブル、

そして、今、大勢の生徒たちが、金器に盛り付けられた山のようなご馳走を夢中で平らげている。





どうしたのだろう?何か事故にでもあったのだろうか?


そんなことを考えていたその時、大広間がざわつき、誰かが大股でグリフィンドールの

テーブルに向かって歩いてくるのが見えた。


「どこにいたん、何だ、その顔はどうしたんだ?」

ロンの声で物思いにふけっていた は我に帰った。

ハリーが鬼のような形相でドサッと彼女の横に座り込んだのだ。


「え?どこか変なのか?」

そういわれて、彼はガバッと置いてあった金のスプーンをつかみ、映っている自分の顔をよく眺めた。

「血が飛び散ってるわ」

が酷いショックを受けたような顔をした。

「早くこっちへ来て」

ハーマイオニーは一瞬唖然としたが、てきぱきと「テルジオ―拭え―」と唱え、彼めがけて杖を振った。


「どうもありがと」

ハリーは、顔全体に飛び散っていた血痕が消えたことを確かめると礼を言った。

「僕の鼻、曲がってないかな?」

彼は今度は に向き直って聞いた。

「いつもどおりまっすぐよ、でも何があったの?」

は心底心を痛めているようだった。

「すっごく心配したのよ」

ハーマイオニーも横から言った。

「悪いけどあとで話すよ」

ハリーはジニー、ネビル、その他好奇心の塊でこちらを伺っている

グリフィンドール生の視線に気づいて声を落として言った。


それからハリーはロンの前に手を伸ばし、フライドチキンとコーンブレッドを

引っ掴もうとしたが、それはスッと彼の手から立ち消え、代わりにデザートが現れた。



その後、ダンブルドアの話、新しい教職員の紹介――これにはグリフィンドール生の大部分が憤慨した。

何と校長はあろうことか、セブルス・スネイプを闇の魔術の防衛術に、ホラス・スラグホーンを魔法薬学の

教授に任命すると発表したのだ!


ハリーとロンは二人で呪詛の言葉をぶつぶつと呟いてるし、 、ディーンの鼻腔は憎悪に膨らんだ。


「あいつがルーピン教授を追い出すのにどんな策を用いたか今でも覚えてるよ」

ディーンは 、それに何も知らないジニーと額を寄せておおっぴらにスネイプの過去の手段を

批評し始めた。


「その他の先生もきっと、あいつが呪術でもかけてやめさせるようにしむけたのかもしれないな」

ロンが会話に加わってきて悪態をついた。

「まぁ、僕はもう一人呪われるように願をかけるな」

ハリーも、嬉々として教職員テーブルを眺めながら言った。

ハーマイオニーは彼ならやりかねないとゾッとしているようだった。


「君の鼻、何でああなったんだ?」

ぐずぐずと他の生徒が大広間から出て行くのを見て、ロンは聞いてみた。ハーマイオニーは監督生の義務を果たすべく

一年生を引率するために姿を消したが、彼は残ったのだ。

ハリーはもう一人側にいた とロンに、透明マントでザビニ・ブレーズの後をつけ、マルフォイのコンパートメントに忍び込んだこと、そこで彼に見つかってしまい、鼻 をふみつけられたことを話した。


話を聞いた二人は笑わなかった。それが三人の友情の証だった。


「やっぱりなぁ・・マルフォイの阿呆が鼻を使って、スリザリン生に何かやっているのを見たんだ」

ロンがげんなりした表情で言った。


「ああ、何をやってたか想像できるけど気にしないでくれ」

ハリーは苦々しげに言った。


「ハーマイオニーがこのことを知ったらひっくり返るでしょうね。毒蛇の穴に一人で入っていったようなもんですからね」

最後に が、彼が自分に相談なしで危険な行動をとったことにたいして恨みがましく付け加えた。

それに対して、ハリーは参ったなと首をすくめただけだった。





次の日の朝食前に、ハリーとロンは談話室でハーマイオニーと に出くわした。

彼はそこで初めてあの日の真相を詳しくしゃべってくれた。


マルフォイが闇の帝王から何か重要な任務を任されたことと、スラグホーンのことを

パンジー、ザビニ、クラッブ、ゴイルに話していたことだ。


「あいつは口から出任せを言ってるんだよな?」

ロンは信じられない顔で言った。

「そうねぇ、かっこつけたがるのはマルフォイらしいし」

ハーマイオニーが人差し指を顎に当てて言った。

「だけど闇の帝王の部下になったなんて、そんな大きな嘘をつくかしら?」

はちょっと考え込んで言った。


その後、新しい時間割がマグゴナガルから手渡され、 、ロン、ハリーは一時間目は授業はなかったので


談話室へ行って羽を伸ばすことにした。



「それでマルフォイの金縛りで身動きできなくなっていた時、トンクスと の伯母さんが現れて

助けてくれたってわけか」


ロンは感心したように言った。



の伯母さんもトンクスも校長に頼まれて、僕達がちゃんと汽車を降りてホグワーツに

向かったか確認するように言われていたそうだよ」


ハリーはのんびりと言った。


「じゃぁ、伯母さんは私と別れた後、すぐにホグズミードに向かったわけ?ご苦労なことね」

は気の毒そうに言った。

「一緒にスポーツカーで空を飛んで来たそうだよ」

ハリーはそう言った。


「それから城門のとこでさ、スネイプが僕を迎えに来てたんだけど、君の伯母さんとすごい剣幕で

睨みあってね、トンクスが怖がって側に近づけないような雰囲気だったんだ。

何でも「入院中は素敵なプレゼントをありがとう。あなたでしょう?持ってきたのは?」

「なんのことか我輩にはさっぱりわかりませんな」

って言ってたけど、何のことだろうな。君、何か知ってる?」

ここで長々としゃべっていたハリーは に話を振った。



「伯母さんがスネイプにプレゼントを貰うなんてありえないわよ」

彼女はゴホンときまり悪そうにせきをして言った。


「だって、スネイプが好きなのは私のお母さんだもの。そう伯母さんからマル秘で聞いたのよ。

学生時代、結婚してからもずっと好きだったってね。だから、お母さんにプレゼントを贈るのはわかるけど・・フェリシティー伯母さん

にはありえないわ。きっと別の・・たぶん他の不死鳥の騎士団メンバーが送ったんじゃない。ムーディ先生とかね」



「スネイプが?君のお母さんを好きだったって、うわーそれ、ビックニュースだよ!」


ロンとハリーが「こりゃ大変なことを聞いた」とばかりに二人で騒ぎ始めた。




















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