闘鬼神の一振りのもと、毒使い霧骨はあっさりと殺された。
「愚かな・・この殺生丸に人間ごときの毒が効くと思ったのか・・」
闘鬼神をかちゃりと鞘に収めると殺生丸は卑怯な不意打ちを
仕掛けた死人に吐き捨てるように言い放った。
「殺生丸様〜!大丈夫でございますか?」
彼に下がっていろと言われ、背後で氷の矛をなぎ払って大吹雪で
毒の煙を蹴散らしていた姫が駆け寄ってきた。
「案ずるな。何もない」
殺生丸は彼女をちらりと眺めると、一言短く呟いた。
「かごめ〜!!」
「犬夜叉、それに子狐妖怪・・」
真紅の火鼠の衣をはおった殺生丸の弟が血相を変えて飛んできた。
「殺生丸、それに姫!」
犬夜叉は半壊の小屋の前でたたずむ異母兄とその連れを見て驚愕した。
彼はそれからいてもたってもいられぬ様子で半壊の小屋の中に
飛び込み、絶句した。
「てめえら、かごめ達に何しやがった!?」
たちまち犬夜叉の怒りが爆発する。
「酷い言いがかりね、犬夜叉。お前こそ、法師やその連れがこんなになるまでどこで何をしていたの?」
「あの者達は死人が放った猛毒にやられています。早く解毒しないと命が持たない」
「それから、殺生丸様と私はただたんに助けに入っただけ。誤解しないで欲しいわね」
姫はぎろりと犬夜叉を睨みつけると、これ以上恨まれてたまるかといいたげに言い放った。
「本当よ・・その二人が助けてくれたのは・・」
「かごめ・・」
本来持っている強い霊力のせいか、比較的動ける状態の彼女が苦しい息の下から弁明した。
それを聞いた犬夜叉の表情はさっと変わり、殺生丸は面白くなさそうに「助けたわけではない。話の邪魔になる奴がいたから片付けただけだ」
と釘を刺す始末だった。
「あの琥珀とかいう小僧の匂いがこの辺りに満ちている」
「奈落は近いのか?」
(たくっ、犬夜叉の野郎、俺のこと無視しやがって・・)
彼らの背後のブナの木が生い茂る茂みでは七人隊の一人、蛇骨がしゃがんで待機していた。
(にしても、何だ?あのすかした野郎と連れの雪女は・・あんな奴ら追っ手にいるなんて聞かされてねえぞ・・)
(しかも、色男の方は霧骨を虫けらのようにばっさりとやりやがって・・)
「誰?そこにいるのは!!」
二人の話に気を取られていた姫が死人の気配を察知し、茂みに向けて氷龍叉戟を
放った。
「うあっ・・あっぶね〜!」
六角結晶の冷気弾が蛇骨が今まさに隠れていたブナの木に直撃した。
彼は腰を抜かし、ほうほうのていで逃げていった。
「もう一人男の死人が隠れていたみたいです。今の話聞かれてたかも」
姫は矛を手に殺生丸に報告した。
「犬夜叉、それだけ聞けば充分だ。行くぞ、」
殺生丸は姫からの報告を受けると、くるりと背を向けて歩き出した。