今、ソフィア達は全身ずぶぬれになって急遽下船を強いられていた。

なぜなら、ソフィア達や他のアメリカ人連中の乗った船が謎の黒ずくめの集団に

襲われたからだった。

全身黒ずくめの装束の集団はアラブ系だったが、海賊でもなく、エヴリンが持っていたパズルボックス

だけを狙って乗り込んできたようだった。

ソフィアとエヴリンは大事な仕事道具であるスケッチブックや原稿、発掘道具、本、着替え

などを船に置き去りにしてしまった為、道中立ち寄ったオアシスのバザールの

でイスラム風の服と移動用のラクダなどを手に入れた。


ところどころ砂が混じった突風が吹きつける中、ソフィア、エヴリン、リック、

ジョナサン、カイロ刑務所の所長達は静寂に包まれた暗闇の砂漠をラクダに乗って進んだ。

昨日から何キロもの距離を横断した為、ソフィア、エヴリン、所長、ジョナサンはラクダの背でうとうとと

眠りこけ、暗緑色のカフィーヤ(アラブの男性が被る布とバンド)を巻きつけたリックだけが

鋭い目を光らせて起きていた。


リックの思惑通り、少し離れたところの岩盤では黒ずくめの男達が馬に跨って

こちらを油断なく見据えていた。


「奴は思ったより手強い」


紺色のカフィーヤに黒のローブをまとった部族の長らしき男は険しい顔で侵入者達を

見下ろしながら呟いた。


翌日、日が高く昇り、ハムナプトラへの道が開けたのでソフィア達は「失われた砂漠の都」

に足を踏み入れた。


早速、遺跡の地下へロープを使って飛び降りると、ソフィア達はエヴリンが見つけたアヌービス像の足元あたりを

堀り始めた。


途中、アメリカ人連中と発掘場所の取り合いになったり、ジョナサンが槌を振るってクロッケーの真似事をした為、

天井から変な石棺がドスンと落ちてきたり、突然、所長が精神錯乱の発作を起こして死んだりと幾つかのアクシデントに見舞われたりはしたが、

何とか本日の発掘作業は終了した。


立派な石柱がそびえる遺跡跡で野営しながらエヴリン、ソフィア、ジョナサンは突然死した所長のことをあれこれと話し合った。


「だって昨日までとても元気だったのよ、なのに何で遺跡の中で?」

「慣れない場所にきたから、血圧が上がって動脈硬化か心臓発作を起こしたのかも」

「あの色ボケ親父は、しょっちゅうソフィアやエヴリンにちょっかい出してたからな」


「アメリカ人の連中もついてない。雇ったエジプト人連中が遺跡から吹き出た酸に巻かれて死んだってさ」

ここで見回りにいっていたリックがやってきたエヴリンの横に座った。

馬のいななきと気味悪い突風が起こったのはその直後のことだった。



「ただの風にしてはやけに生暖かくなかった?」

「古代の呪いは本当ってわけか」

ソフィアは黒のパズレーショールで肩を包みなおすと、横にいたジョナサンとひそひそと話し合った。



「もうっ、兄さん、それにソフィアまで!やめて頂戴!私は見えないもの、触れないものは信じないわ」

「とにかく用心することだな」

エヴリンが不気味な前兆を振り払うかのように否定したが、リックまでもが

猟銃をしっかりと担ぐと警告した。


馬のいななき、火薬のきなくさい匂い、砂埃をけりあげる無数の足音が聞こえたのでリックは

エヴリン、ソフィアに猟銃と脇の吊りバンドに挟んでいたピストルを握らせると

「ここにいろ」と命じて駆け出していった。


ソフィア達から離れたアメリカ人連中のテントはとっくに襲撃され、

寝ぼけ眼のまま出てきたアメリカ人達は六連発銃片手に謎の黒ずくめの集団と渡り合っていた。


リックについていったエヴリンとソフィアは猟銃とピストル片手に右往左往し

どうすればいいのか途方に暮れていた。


「エヴリン、後ろ!」

「ああ~っ!!」

ソフィアは馬のいななきとせまる蹄の音に気づいて悲鳴をあげた。

驚いたエヴリンの銃が暴発し、弾は見事、猟銃を握った黒ずくめの男に命中した。


一方、ジョナサンもウィスキー片手に岩の陰に潜んで向かってくる

黒ずくめの集団を闇討ちしていた。


ソフィアは死んだ黒ずくめの男が握っていた湾曲した黒い柄の剣を分捕ると、

向かってきた敵の馬を斬りつけて乗っていた男を落馬させた。


リックは黒ずくめの集団の長とピストルで渡り合っており、一時も気が抜けない状況だった。

ようやく黒ずくめの集団の長がリックのピストルを弾き飛ばし、リックが発炎筒を手に

持ったところで決着はついた。



「攻撃中止!」

「我々はこれ以上血が流れることは望まぬ」

黒ずくめの集団の長は発炎筒を手にしたままのリックを、仲間の黒ずくめの男

と湾曲した剣で渡りあっているソフィアをさっと眺めると警告した。

「全員死にたくなければ、即刻この地を立ち去れ!」

「一日しか猶予は与えぬ」


その言葉にソフィアと剣を交えていた男はぱっと彼女から

刃先を離すとその長のもとへと駆けていってしまった。


「引き上げろ!」

馬に跨った黒く波打つ髪に額にに神聖な入れ墨を施した長はリック、ソフィアを

最後に一瞥すると手綱を取り、もと来た道へと帰っていった。













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